真菌感染症対策は、予防、診断、治療のいずれの面でも、著しい進歩があります。
しかし、侵襲性のカンジダ症や、アスペルギルス症をはじめとする重篤な真菌感染症は、依然として高い頻度の発症率と、死亡率を示しています。
特に、原発性免疫不全症候群(Primary Immunodeficiency:PID)や、後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome:AIDS)等の、免疫不全患者においては、病態や予後を悪化させる重大な脅威であり続けています。
真菌感染症対策の鍵を握っているのは、もちろん、抗真菌薬ですが、質(有用性)・量(種類・クラスの数)ともに、充分とは言えません。
その状況を端的に示しているのが、カンジダ症40%、アスペルギルス症60%、接合菌症40~90%という高い死亡率です。
現在わが国で臨床導入されている抗真菌薬は、成分としてはミコナゾール(MCZ)、フルコナゾール(FLCZ)、イトラコナゾール(ITCZ)、ボリコナゾール(VRCZ)、フルシトシン(5-FC)、アムホテリシン(AMPH)、およびミカファンギン(MCFG)の7種類にとどまっています。
アゾール系
イミダゾール系
ミコナゾール、ケトコナゾール
トリアゾール系
フルコナゾール: fluconazoleイトラコナゾール: itraconazoleボリコナゾール: voriconazole
フロロピリミジン系
フルシトシン(5-FC)
ポリエン系
アムホテリシンB(AMPH)
キャンディン系
ミカファンギン(MCFG)
さらにクラスとなると、アゾール系(イミダゾール系+トリアゾール系)、フロロピリミジン系、ポリエン系、キャンディン系のたった4つを数えるに過ぎません。
それだけに、1つでも主要な抗真菌薬に薬剤耐性の問題が生じたとしたら、真菌感染症の治療にどれほど深刻な影響
を与えるかは、抗菌薬に耐性となった細菌による感染症、どんな事態をひき起こしたかを考えれば明白です。
その代表的な例は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による菌血症であり、死亡リスクは、通常の黄色ブドウ球菌の場合にくらべて倍増したという、メタアナリシスの結果が報告されています。