真菌と書いて”しんきん”と読みます。
真菌とは、「カビ」のことです。
カビは、『黴』と書きます。
真菌は、細菌よりも形が大きく、より高等な生物です。
”しんきん”は、信用金庫のことではありません。
キノコは真菌の一種です。
パンを作る時や、お酒を醗酵させるときに使う酵母も、真菌です。
真菌による感染症を、真菌症と呼びます。
真菌症として有名なものに水虫があります。
真菌症の種類
表在性真菌症
深在性皮膚真菌症(深部皮膚真菌症)
深在性真菌症(内臓真菌症)
真菌による感染が皮膚表面や角質で留まる場合 を、表在性真菌症と呼びます。
表在性真菌症は、皮膚表面に感染している真菌を取り除けば治ります。
表在性真菌症の治療には、外用薬として塗り薬を使用します。
白癬
体部白癬
股部白癬
手白癬
足白癬
頭部白癬
ケルスス禿瘡
白癬性毛瘡
カンジダ症
口腔カンジダ症
皮膚カンジダ症
爪カンジダ症
カンジダ性爪囲爪炎
カンジダ性毛瘡
慢性皮膚粘膜カンジダ症
真菌が皮下組織や爪などに及ぶ場合 を、深在性皮膚真菌症(深部皮膚真菌症)と呼びます。
深在性皮膚真菌症の治療には、外用薬で治療困難な場合は、内服薬(飲み薬)を使用します。
真菌が内臓など体内の臓器にまで及ぶ場合 を、深在性真菌症(内臓真菌症)と呼びます。
抗がん剤や免疫抑制剤を投与している患者で起こりやすいのが特徴です。
深在性真菌症の治療には、内服薬を使用します。
真菌薬(抗真菌薬)を正しく選ぶためには、真菌の構造を理解する必要があります。
細菌と真菌の最も大きな違いは、
「遺伝子(DNAなど)を包み込む核があるかどうか?」です。
細胞分裂を行うためには、設計図が必要です。
DNAなどの遺伝子が設計図になるのですが、
細菌⇒遺伝子が細胞の中に何の仕切りもなく入れられています
真菌⇒核と呼ばれる「DNAなどの遺伝情報を包み込む膜」が存在します
感染方法
構造
主な病原体
主な感染症
治療方法・治療薬
誕生の起源・基本構造
大きさ
細菌
体内で定着して細胞分裂で自己増殖しながら、人の細胞に侵入するか、毒素を出して細胞を傷害する
真菌
人の細胞に定着し、菌糸が成長と分枝(枝分かれ)によって発育していく
酵母細胞では出芽や分裂によって増殖する
ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、緑膿菌、コレラ菌、赤痢菌、炭疽菌、結核菌、ボツリヌス菌、破傷風菌、レンサ球菌など
感染性胃腸炎、腸管出血性大腸菌(O157)感染症、結核、破傷風、敗血症、外耳炎、中耳炎など
細菌の細胞に作用、あるいは増殖を抑制する抗菌薬が有効な治療薬で、細菌の特性に応じたさまざまなタイプのすぐれた抗生物質と合成抗菌薬がある
約40億年前・単細胞生物:原核生物
0.5~5マイクロメートル
白癬菌、カンジダ、アスペルギルスなど
白癬(水虫)、カンジダ症、アスペルギルス症
真菌の細胞膜を破壊したり、細胞膜の合成を阻害する抗真菌薬がある
約10億年前・多細胞生物:真核生物
2~10マイクロメートル
細菌のように、核がないために細胞の中に遺伝子がそのまま入れられている生物を、原核生物と呼びます。
真菌のように、遺伝子が核で包まれている生物を、真核生物と呼びます。
ヒトの細胞にも核があり、真菌の細胞はよりヒトに近い構造となっています。
真菌による感染症を治療するためには、病気の元である真菌を退治すれば良いわけで、そのために使用される薬が真菌薬です。
正確に呼ぶなら、『抗真菌薬』です。
抗真菌薬に必要とされることは、「ヒトには作用しないが、真菌には毒性を示す」ことです。
ヒトの細胞はその周りを、細胞膜と呼ばれる膜で囲まれ、内側と外側に分けられています。
ヒトの細胞膜は、主にコレステロールによって構成されています。
脂質として有名なコレステロールですが、人間の体を作り上げるためにも必要不可欠な物質です。
真菌にも細胞膜が存在しますが、真菌の細胞膜はコレステロールが原料ではありません。
真菌の細胞膜は、主にエルゴステロールと呼ばれる物質によって構成されています。
エルゴステロールを阻害してしまえば、真菌は生きることができません。
つまり、エルゴステロールの作用だけに限定して効果のある薬を使えば、ヒトには作用せず、真菌だけに影響を与えることができます。
エルゴステロールを阻害する薬が、『抗真菌薬』ということです。
ポリエン系
アゾール系
キャンディン系
ピリミジン系
服薬や注射による抗真菌薬は、日本には4系統11種類があります。
ポリエン系
ポリエン系抗真菌薬と呼ばれる種類の薬は、真菌のエルゴステロールに結合する性質を有しています。
これによって細胞膜に穴をあけ、真菌細胞の細胞膜を破壊します。
細胞内の物質が外に漏出するため、真菌を殺すことができます。
ポリエン系と言えば、アムホテリシンBが代表格です。
経口投与によって消化管の真菌症を治療したり、注射によって全身に発症している真菌症を改善させたりする薬がアムホテリシンB(商品名:ファンギゾン)です。
経口投与によってアムホテリシンB(商品名:ファンギゾン)を使用する場合、腸からの吸収が関係ない消化管での真菌感染症を治療するときに使用されます。
例えば、「消化管におけるカンジダ異常増殖」などが該当します。
さらに、この場合は既に液体として薬を溶かしたシロップ剤として服用します。
アゾール系
真菌の細胞膜にはエルゴステロールが必要です。そのため、このエルゴステロール合成を阻害することができれば、真菌は増殖することができません。
このように、エルゴステロール合成を抑制することによって真菌の増殖を抑える薬としてミコナゾール(商品名:フロリード)、ケトコナゾール(商品名:ニゾラール)、ビホナゾール(商品名:マイコスポール)、イトラコナゾール(商品名:イトリゾール)などがあります。
アゾール系のグループには
イミダゾール系のミコナゾール
トリアゾール系のフルコナゾール
トリアゾール系のイトラコナゾール
トリアゾール系のボリコナゾール
の4種類の抗真菌薬が含まれます。
現在の主流はトリアゾール系です。
http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/1/17190/2016052723053983673/121_209.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/102/11/102_2915/_pdf