ほんの累積 平成23年1月

平成23年1月25日

ガサコ伝説「百恵の時代」の仕掛人 長田美穂 新潮社 ISBN:978-4-10-326731-7 C0095

「チャップリンの影」日本人秘書高野虎市 大野裕之 講談社 ISBN:978-4-06-339759-8 C0023

「ヘンリー・ミラーのラブレター」ホキ・徳田への愛と憎しみの記録 江森陽弘 講談社 ISBN:4-06-200180-2 C0095

「河合隼雄 心理療法家の誕生」 大塚信一 トランスビュー ISBN:978-4-901510-75-2 C1011

あらら、気がついたら十日も過ぎていた。なんともう一月も終わり。困ったもんだ、年明けからずっと雪模様が続いている。

「ガサコ伝説」を読み終えてからどうもずっとしっくりゆかない、納まらない。新興宗教の教祖の家という虚飾の家に生まれそだち、虚飾の芸能界を取材する編集者として君臨し、結局25年の永きにわたってつきあいのあった男性は名家そだちのお坊ちゃん。

なんだかずっと「かたち」に拘る世界で生き続けたヒトの話だからかどうか知らぬが、「箱」はうまく作ってあるのに「たましい」が入っているのかいないのかよく解らない状態で話が納まってしまったような気がしてならず。

「この女性がすごかった」というよりも、「ここまで這い上がって搾取されながら生きねばならなかったのか、この時代の女性は」という感じの方がひしひしと身に迫って来る。気のせいでしょうか?

田中澄江か、現代なら林真理子に書かせてみたい。きっとこの「怨念」を彼女なら理解するだろう。著者は自分より10才くらい下か。

世代がちがうからか、いい環境で育ったか、経験がなければ想いは及ばないだろうなあと思った次第。

「チャップリンの影」

来日が5・15事件の時だったとは知らず気付かず。近代の移民の歴史を知るためには非常に役立つ本。

先日に「石原慎太郎」関係の本と並べてみると、もっと面白いはず。

面白いのは、極貧の母子家庭育ちのチャップリンが、広島の富裕な名家育ちの高野を運転手として雇い入れるという皮肉。

著者がチャップリンの研究家というだけあって、解り易く面白く読み易く語っている。素顔のチャップリンを知りたいひとにもお勧め。 学生の頃半分徹夜で「チャップリン自伝」を読みふけったのを思い出した。

けど、これは普通の厚さなのでそこまで疲れません(笑)お勧めです。

「ヘンリー・ミラーのラブレター」

文豪ともなるとここまで自負の念が強いわけ?このヒトだけだろうと言う気はするが。

気の毒みたいだけど笑える。75才のおじいさんが26才の女の子に惚れ込んでラブレターを書きまくる。しまいには彼女は面倒になって封も切らない。本を読まない女の子にとってはじいさんはじいさんでしかないのに、文豪を神様のように慕っている取り巻きに「結婚してやれ」とせっつかれる。たまたまビザ切れで国外退去させられそうなので結婚を承知する女の子は、お友達といっしょに同居でベッドインはなしねと条件をつける。で、三年間の結婚生活。

あけすけな語りを読んでいると笑うしかない。

しかし「ぼくの手紙を持っているとそのうちお金になるよ」云々、やたらと猥談の好きらしかったこのヘンリー・ミラーやっぱり自分の趣味ではなかったなあと、「南回帰線」を数ページで挫折した20年前を思い出す。

今なら読めるだろうか?いや、よしてくれ…。

「河合隼雄」

高校時代、古代文明と心理学に凝って岩波新書や中公新書を読みまくり。「コンプレックス」は覚えがあるがその頃の刊行だったのかと知る。河合隼雄と宮城音弥は何冊も読んだなあ。

ユング派とか箱庭療法とかこの方が日本に紹介したのだと今回知りました。結構最先端?の本を読んでいたのね、その意味ではとてもいい時代に学生時代を過ごせたかもしれないと今になって知る。

いちど講演を聞いたことがなかったっけ?とても明解で面白い語りで感心した記憶がある。

というわけで、なぜかノンフィクションの伝記ものでかたまってしまった今回。

宮部みゆきの「小暮写真館」買おうかなあ、と迷っている。

荻原浩の「砂の王国」もいいのだが。

平成23年1月16日

「風をつかまえた少年」 ウイリアム・カムクワンバ 文芸春秋 ISBN:978-4-16-373080-6 C0098

「悪名の棺 笹川良一伝」 工藤美代子 幻冬舎 ISBN:978-4-344-01902-7 C095

「モップの魔女は呪文を知っている」 近藤史恵 実業之日本社 ISBN:978-4-408-50484-1 C0293

「好き勝手 夏木陽介」スタアの時代 轟夕起夫 講談社 ISBN:978-4-06-216511-2 C0074

その昔娯楽といえば兄弟の教科書の盗み読みくらいしかなかったアノコロ。慰めの一冊に「発明工夫」の雑誌があった。

多分きょうだいが持っていた雑誌の付録だったのだと思う。読める活字がなかったからそれはもうすり切れる程眺めていたものだったけど、結局発明工夫するには脳みそが足りなかった。それでもあのころのワクワク感は覚えている。

母国語でない英語の教科書を読み解いて自家発電機を組み立てるという偉業を成し遂げた14才のアフリカの少年。

まだ23才というこの男の子がこれからどのような人生を送るのか。楽しみのような、心配のような。資本主義に汚染されないでね。

「悪名の棺」

これぞノンフィクションという感じである。生前は悪評しか喧伝されなかったこの笹川良一という人物について眼から鱗。是非とも近代日本史を語る必須読書本として読む価値有り。明解かつ冷静な文章が気持ち良い。

「モップの魔女は呪文を知っている」

近藤史恵さん、上手い!このシリーズもまだまだ読みたい!ミステリーとしても上質かつ人生論?としてもじ〜んと来ます。本当に決め台詞があまりに効果的でまいった。

「好き勝手 夏木陽介」

いったん喧嘩をしたなら、どんなに汚い手を使っても勝て!と少年の頃から叩き込まれた、しかし「可愛い顔」の兄ちゃんが映画界にひょんなことから入ってしまった。スタアとなった彼が好き勝手に縦横無尽に跳ね回った思い出を語る。

石原裕次郎は軟派だけど、こちらは硬派。同じ時代に活躍したわけだけど一匹狼タイプで対照的。

浮いた話が全然出ないのは意図的なのかもしれない。

裕次郎よりこちらの方が自分的にはアイドル。昔から元気で精悍なタイプが好みだったのだ。って裕次郎はもう少し年上の世代のアイドルではある。

今年になってから毎週末雪かきで終わっているような気がするのは気のせい?

大寒波のせいでまた朝から雪かき。午前中2時間午後3時間。前回は雪が湿っていて着雪のせいで倒木が頻発したが今日のはパウダースノー。地吹雪になっていったん舞い上がると何も見えない。

午前20センチ、午後20センチ、問題は今夜で、どれくらい積雪するだろうか。

道路に面した路肩部分は融雪しだすとそこにシャーベット状の雪が溜まって壁になる。壁になると駐車場から出られなくなるのでそこは必ず始末する必要有り。

除雪した場所が30分もしないうちにまた雪溜まりになるという、賽の河原状況だがこれを一気に除雪するとなると一苦労なのでやらないよりもやった方が絶対に有利。

といいつつ、今年は3年分くらいの雪かきしたような気がする。松江市でセンター試験受けた学生君たちは大変だったろう。 お疲れさまでした。

平成23年1月6日

「アイダ王女の小さな月」魔法の国ザンス21 ビアズ・アンソニイ 早川書房 ISBN:978-4-15-020523-2 C0197

「半島へふたたび」 蓮池薫 新潮社 ISBN:978-4-10-316531-6 C0095

「電子書籍奮戦記」 萩野正昭(はぎのまさあき) 新潮社 ISBN:978-4-10-328411-6 C0095

「電子出版の構図」実体のない書物の行方 植村八潮 印刷学会出版部 ISBN:978-4-87085-199-3 C0000

魔法の国ザンスシリーズも21冊目って、もうそんな数になったのかと驚く。

がどの作品も駄作がないのがすごいところ。も90才も越えておられるはずなんだが、相変わらずちょっとエッチで駄洒落がさえている。

でまたザンスという世界が拡がってゆくのだから、すごいよなあ。今回は前作の主人公だった派手派手なドラゴンカップルも出て来てレギュラーになりそうな気配。

今回は木の世話を仕事にしているフォーンと夢魔のインブリの旅。アイダ王女の小さな月へと旅立ちます。

「半島へふたたび」

新書で韓国語の学び方を出しておられたのを垣間みて驚いたのだが、相当頭の切れる方らしき印象。

頭をフル回転しなければ生き残ることのできない状況を何十年も続けざるをえないだったのだから当然ではある。で、この本は書いておられたブログに手をいれて出版されたもの。

基本的に朝鮮半島関係には興味がないので自分的には異例なところ。変な観光書より解り易かったかも。

「電子書籍奮闘記」

ボイジャーの社長。検索タグをつけるならば、レーザーデイスクを開発していたパイオニアという会社のこと、CDブック、電子書籍の概念、その「理念」、「青空文庫」の歴史などなど、非常に解り易い語りになっている。

電子書籍の来し方行く末を考えるためには必須な資料になるだろう。

ううむ「ネット・バカ」のあとにこれを読むと、立場の違いで物事の見方がちがうということを如実にあらわしている。ぜひ読んで考えてみたいものである。

「電子出版の構図」

コラム欄をつなげても「本」にはなりにくいということがよくわかる本。「ネット・バカ」に指摘されていた「リンクが多すぎて集中して読めない」状態とはこういうものか。書き手は「時系列にコラムを提示しただけで提示すれば読者には理解できる筈」という思考回路にはまっているらしい。

どういう時系列で語っているのかを常に考えていないと話が理解できないというのは読み手にとってはとても負担だ。

だったら、ぜんぶまとめて論説にしてくれればいいのだけれど、書き手はそんな手なんかかけたくないのだろう。

あるいみ「ネットの書き方」というか「提示の仕方」の典型で「書捨て」なわけで、ネット・バカの論理の流れで行けばどんどんこんな「著作」が増えて行くんだろうなあという感想を持ちながら眺めていた。

うん、ネットブログならばそれでいいけど「本にする」には適さない。なるほど、ネット(=技術)が表現方法をかえてゆくということなんだろう。そこのところ自覚しておく必要あり。

平成23年1月6日

「ネット・バカ」インターネットがわたしたちの脳にしていること ニコラス・G・カー 青土社 ISBN:978-4-7917-6555-3 C0030

「死せる魂」リーバス警部シリーズ イアン・ランキン 早川ポケットミステリ1693 ISBN:4-15-001693-3 C0297

「蹲る骨」(うずくまる ほね) イアン・ランキン 早川ポケットミステリ1700 ISBN:4-15-001700-x C0297

「湖は餓えて煙る」 ブライアン・グルーリー 早川ポケットミステリ1839 ISBN:978-4-15-001839-9 C0297

「ネット・バカ」は現役の小学校教員には是非とも読んでみていただきたい秀逸な本。昔我が子の小学校時分の担当教師に私がキングの「IT」(文庫本)を読んでいるのをみて「まあ、なんと厚い本をお読みで」と感心されたことがある。キングでなくて「厚い」ところを評価されたところでがっくり来たのを思い出すのだが、とりあえずこの本読んでみて欲しい。

先日小学校の子供を持つお母さんたちの雑談を漏れ聞いていたら、小学校一年生の子供達のなかに集中力を欠いた集団が発現しているらしい。一人二人くらいならば、と思っていたら半端でない数なので担任教師の手に負えない数が授業参観の最中に教室から前庭に出てふらふら、二学期を過ぎても「授業」の呈をなさないという話。

「ひどい親がいるもんだ」と思いながら聞いていたのだが、この本を読んでいるとそういう原因とは思えなくなって来た。怖いです。 子供を持つ身でなくとも、ネット中毒の兆候を感じている人は必読の書。う〜む。唸るしかなし。

連日雪かきの単純肉体労働をやっていると余り頭を回転させたくなくなる。と言うことでは似合うリーバス警部シリーズ。 鬱鬱とした話の展開。しかも分厚いハヤカワポケットミステリ。炬燵にはまり込んで活字を追うという設定には非常に似つかわしく。 が、やはりこれは最新作から遡って行く(自分にはありがちな)方法はまずかったかも。

辛いだけだった。イアン・ランキンは自分の嗜好品にはなり得ないらしいことを、知る。ま、いいか。 レジナルド・ヒル、ル・カレ、フロスト警部、は好みなのにねえ、何故だろう。

上記と同じ意味で選んだ「湖は餓えて煙る」これも不渡り。文章に難があるわけでなく、ただ趣味が違う。基本的に鬱鬱と悩みまくる深刻な記憶の世界というのはお好みでないので仕方ないところ。 話的にはちゃんとしておりました。「このミス」で上位でしたっけ。だから選んだんだっけ。

とりあえず、「分厚い早川ポケットミステリを冬の夜長に眼をしょぼしょぼさせながら読む」という目的は達したのであります。 あるいみ雪にふりこめられて幸運であったかも。

友よりDVDがお借りできてそちらも集中して見れたし。ああ、天国天国。

一日だけ子供が置いて行った安物赤ワイン?を飲んで夜中に七転八倒したけど。もうアルコールは体に合わぬらしい、ていうかへべれけになるまで飲んじゃう自分が怖いっす。年明けから反省。