ほんの累積 平成24年5月

平成24年5月31日

「コラテラル・ダメージ」グローバル時代の巻き添え被害 ジグムント・バウマン 青土社 ISBN:978-4-7917-6637-6 C0030

「表裏井上ひさし協奏曲」 西舘好子 牧野出版 ISBN:978-4-89500-149-6 C0095

「先生、モモンガの風呂に入ってください!」 小林朋道 鳥取環境大学の森の人間動物行動学 築地書館 ISBN:978-4-8067-1437-8 C0040

「ファイマンさんの流儀」 すべてを自分で創り出した天才の物理学人生 ローレンス・M・クラウス 早川書房 ISBN:978-4-15-209270-0 C0042

気が散ることが多く、集中して本が読めない。と、まあのっけから言い訳。

「コラテラル・ダメージ」

プロローグで目からウロコが落ちる。おおこれはすごいかも、と思ったらその後が読み続けられず。

こちらの頭が欠陥商品なのか、書き手の方に問題があるのかさだかになし。読めませんでした。

「表裏井上ひさし協奏曲」

もと奥様の書かれた本。なぜこんな本を書いたのか、という事情が壮絶。

或る時期から自分、井上ひさし読む気がしなくなったのはなんとなくそういう雰囲気があったのだろうか。憲法云々あたりからなんだか「あれ?」という感じはあった。

それとは別に、若かりし頃の井上夫妻の姿、時代の描写、いろいろと資料になりそうな記述満載。

この本を借りる同じ日の午前中、若山弦蔵さんがたまたま「ひょっこりひょうたん島」が打ち切りになった事情をラジオで語っていたのを聞いた。不思議なご縁である。

井上夫妻は夫婦というより「同志」であったのだなあと納得する。そして、だからこそ「可愛さ余って憎さ百倍」となる。井上ひさしという人の業とやらも厄介なものであったようである。と、いつつこれもまともに読めていない。この葛藤読むの辛いわ。

「先生、モモンガの風呂に入って下さい」

いつもたのしい小林先生のおはなし。大分語り口に慣れて来た、というより写って来た感じがする。

モモンガを風呂桶に一杯あつめてその中に入るのか、とか猿風呂ならぬ露天のモモンガ風呂があるのか?(動物虐待?)

とか頭の中がぐるぐるしていましたが、実際は違いました。本当は、というのは読んでからのお楽しみ。

標題のとおり今回はモモンガが話題の主人公のひとり?です。自分の好きなアカハライモリ君も登場。

それにしても強力な新入生が入学して来たようで、先生も嬉しいでしょうね。

「ファイマンさんの流儀」

「フェルミ伝」と「オッペンハイマー」読んでて良かった。でないと時代的雰囲気の補足が難しかったかもしれない。

リチャード・ファイマンの学問的実績を明らかに説明するという使命を以て書かれた本。翻訳者が京大の物理学専攻出身というせいもあって、数学物理音痴の自分でも楽しくしかも判った気にさせてくれる良書。もういちど「ご冗談でしょうファイマンさん」再読してみたくなる。

しかしほんとうに女性が好きだったのねえ。まあちょうどそういう時代でもあったわけですけど。ともあれ、高校時代以来の量子物理理論の発展方向とやらをこの本でぼんやりと(なにしろ頭がついてゆかん)伺うことができて両得となりました。

面白かったぜ。万人にとってそうか、とはいえないけど。

平成24年5月23日

「ホーンズ 角」 ジョー・ヒル 小学館 ISBN:9784094084658 C0197

先週のお出かけ車内で(片道4時間なので)キングの中編集Full dark, no stars(星もない真っ暗闇)を腰を落ち着けて、ようやく第一編「1922」を読めたのですが。キングらしいダークでしかも深みのあるお話でした。

1922というのは1922年という意味。農場を経営する男が語り手。

男の奥さんは相続によってこの農場を所有しているけど都会で暮らしたくてたまらない。この夫婦の間には息子が一人いて、この子は恋人が出来たばかりで農場の経営を継ぎたいから父親と一緒で農場から離れたくない。それでも強烈な性格の奥さんはもう土地を売り払う算段まで始めている。

というのでとうとうこの父子、奥さん(=母親)を殺そうとする…。

非常に強烈な現場描写に加え、そのあとどんどん不運のなかに転落して行くこの父子のありさまが凄いです。さすが、キング。

で、ただいまその次の短編「Big Driver」読み始めてます。はなしは、まんま「でかい運転手」

これ読みつつ、先日手に入れてしかし勿体なすぎて読めなかったジョー・ヒルの「ホーンズ」読んでしまった。おおおお!と最初から感動。

なんつう設定や、としか言い様が無い。キングが作品描かなくなったら、ジョーに希望を託そう!とけっしんしましたのですが。

読み終わってみると、やっぱりキングとは似て非なる作家なんだ、と撤回すべきかとも思う。展開が「ポップ」なんです。世代が違うんです。これ良い悪いのはなしでなく。ジョー・ヒルがキングそっくりに書けないように、キングもジョーみたいには書けないのね。当たり前なんですが。納得。

ずごく面白かったけど、これを「めでたしめでたし」と納得させてしまうジョー・ヒルの力量なんなんだという感じ。

平成24年5月12日

「決起! コロヨシ2」 三崎亜記 角川書店 ISBN:978-4-04-110092-9 C093

「関係する女 所有する男」 斎藤環 講談社現代新書2008 ISBN:978-4--06-288008-4 C0236

「雪と珊瑚と」 梨木香歩 角川書店 ISBN:978-4-04-110143-8 C0093

「化合」 今野敏 講談社 ISBN978-4-06-216982-0 C0093

「謎解きはデイナーのあとで 2」 東川篤哉 小学館 ISBN:978-4-09-386316-2 C0093

思いがけなく「コロヨシ2」に出会って内心狂喜乱舞。どうも装幀のデザインがイマイチに思えるけれども。

この物語はライトノベル好きの若い人にも十分受ける話なので、そちらの層を狙ったのかもしれない。

この漫画チックなイラストで高校生あたりが手に取ってくれればきっと三崎ワールドの虜になってくれるだろうと期待する。

それにしても読んでいたら眼前に「塵芥」の華が咲くようなのである。華やかなこと極まりない。

特撮ありCGありの、画像化したら完璧に見ほれそうな格闘技でもあるのだが、そんなことをしたら折角の想像力が萎縮してしまうかもしれぬ。

おなじく異界を描いた「鴨川ホルモー」の映像化、怖くて未だに避けている始末。

お若いかたがたにこの醍醐味を是非味わっていただきたく。

「関係する女 所有する男」

なかなか面白い視点で、それまでのトンでも本をあっさり論破するあたり、自分の勘違いを検証し整理する為にも読んでおきたい本。

未だ進行中の研究課題、というふうなところがまた前向きでいいな。

「雪と珊瑚と」

久し振りに出かけた本屋でみかけ、その週のうちに出会えた。なんという幸運。

ワーキングマザーを主人公にというところで疑問を少々感じつつ読み始めたが、さすが梨木香歩という展開。

お勧めです。なによりレシピ付き出て来る料理の数々がもう美味しそうで、目の毒気の毒。

料理好き、美味しいもの好きには堪えられない、是非自分でもつくってみたくなると思う。

誰かに作ってみてもらうと、もっと幸せなんですけど(笑)

美味しい食卓には幸せがいっぱい詰まっているのだ。

「化合」

今野敏の刑事物。最近いろんなシリーズを量産しすぎていらっしゃるのかも。パターン化しはじめています。

今のところ、隠蔽捜査シリーズと安積班あたりは読んでみたいのですが他のシリーズは読むの避けようかと思う

「謎解きはデイナーのあとで 2」

1も読んでおりませんが、とりあえず見かけたので、この作家さんのお試し本として。

この本のイラストレーターさん最近売れっ子だそうな、ってそっちの話からしちゃいますが。

どうも自分には合わないタイプの作家さんでした。以上(って、それで終わりかよ!)