ほんの累積 平成24年8月

平成24年8月29日

「幼き子らよ、我がもとへ」上 ピーター・トレメイン 創元推理文庫 ISBN:978-4-488-21809-6 C0197

「幼き子らよ、我がもとへ」下 ピーター・トレメイン 創元推理文庫 ISBN:978-4-488-21810-2 C0197

「煙草屋の密室」 ピーター・ラヴゼイ 早川書房 ISBN:4-15-074706-7 C0197

「つなわたり」 ピーター・ラヴゼイ 早川書房 ISBN:4-15-074707-5 C0197

「ハマースミスのうじ虫」 ウイリアム・モール 創元推理文庫 ISBN:4-488-16102-2 C0197

そろそろフェデルマシリーズの未読ものがなくなったような。

もともと原作者は歴史家とあって、このフェデルマの世界の構築はゆるぎなし。ミステリーとしても上質なものではありますが、

ローマンキリスト教がいかに他国へ「社会機構」として浸透して行ったか、という過程を考察するに役立ちそうなシリーズでもあります。

異文化を宗教という手段を使って「征服」してゆく過程、されてゆく側からの見方がよく分かるのではないかと。

しかし、現代的な科学捜査をほとんど使うこと無く犯罪を暴いて行くこの手腕、凄いものがあります。

どんな頭の中しとるんや、この作家。

「ピーター・ラヴゼイ」

ラヴゼイの話をブログにてみたので、今回お試しであります。名前も知っているし、背表紙の方は毎回ながめてはいたものの逡巡していたタイプの作家。

「煙草屋の密室」は短編集。「つなわたり」はシリーズものではなく単品。いやあ、達者な作家さんというのは十分わかりました。

シリーズであるらしい警部ものは、さてどうだろう。好みかどうかは別にして、読んでハズレはなさそうな。

エンタメ予備軍、ストックとして頭の中にしまっておきませう。ハズレものを読んだ時の口直しっていうことで。

「ハマースミスのうじ虫」

翻訳ミステリシンジケートのブログにて「名作」とかかれていたかと。

好みかどうかは別にして、たしかにこれは「異色作」です。後書きに書かれていた作家の経歴読んで納得。

結局拾い読みだったのですが、解説もセットで読むと非常に面白いかも。

読後いろいろ考えさせられるものがありましょう。「文は人也」とはよく言ったもの。

G・グリーンとかたしかあの人ももと諜報部員だったという話だったっけ。

その本を読んでみるべきだったかは、と今更のように思う。どこにあったっけかなあ。

平成24年8月10日

「ソフィー」 ガイ・バード 創元推理文庫 ISBN:978-4-488-10202-9 C0197

「謝罪代行社」 ゾラン・ドヴェンガー 早川ポケットミステリ1850 ISBN:978-4-15-001850-4 C0297

「デス・コレクターズ」 ジャック・カーリイ 文春文庫 ISBN:4-16-770540-0

「ブラッド・ブラザー」 ジャック・カーリイ 文春文庫 ISBN:978-4-16-770596-1

「ストーリー・セラー」 有川浩 新潮社 ISBN:978-4-10-301873-5 C0093

珠玉の、ミステリーというよりスリラーか。冒頭の掴み、才能を感じます。叙情性のある風景描写がうつくしく、よんで損はなし。

なかなかないですよ、こういう本。真性のストーリーテラーだと思うのですが書いている作品は少ないとのこと。

最近は脚本家として忙しいひとらしい。R・マシスン タイプのひとなのでしょうか。ドラマとか映画とか目に触れる事の少ない者にとっては 作品を読ませてもらう方が嬉しいのだが。

「謝罪代行社」

最初から最後まで鼻面つかまれてひきまわされ、という感じで終始した感じ。読後感はそれでも悪くない。

最後のあたりになると、だれが好い奴で悪い奴かなどとどうでもよくなる、という不思議さ。これが独逸の底力かといいつつ、時々巻頭にもどって「これ誰?」って見直さないとわけわからず。

「ジャック・カーリイ」

近来屈指の「めっけもの」シリーズもの!異常心理学に特化した刑事なんているのだろうか?という疑問はさておき、キャラクター設定絶妙に上手いです。

主人公がはじめあたりで、フリスビー相手に演技するユーモアに痺れた。リーサル・ウエポンのリックがドーベルマン相手に会話してる場面を何故か思い出す。キャラ設定に加えて、話運びも秀逸。ほかにまだ2冊くらいはあるそうなので、是非探して読みたい!

平成24年8月9日

「バラックの神たちへ」あるいは近代画の内景へ 芥川喜好 深夜叢書社 ISBN:978-4-88032-295-7 C0070

「二流小説家」 デイヴィッド・ゴードン 早川ポケットミステリ1845 ISBN:978-4-15-001845-0 C0297

「まいまいつぶろ」 高峰秀子 新潮社 ISBN:978-4-10-331612-1 C0095

「ロボジー」 矢口史靖(やぐち しのぶ) メデイアファクトリー ISBN:978-4-8401-4325-7 C0093

「シモネッタのアマルコルド」イタリア語通訳狂想曲 田丸公美子 NHK出版 ISBN:978-4-14-035094-2

この方の文章を読むと「絵を読み解く」ということがどういうことであるかが判って来る。

絵を描くという行為が時代、人物、人生をすべてひっくるまたところのものであるということがわかってくるのだ。深く心に沁み入るような、

と言う言い方は既に陳腐かもしれないがまさにそのような文章を書いていらっしゃる稀有な方である。

いつまでもお元気で居て下さい。同じ時代にリアルタイムで読ませていただけることに感謝。

「二流小説家」

めくるめく輻輳する世界の真ん中で犯罪に巻き込まれる主人公。SFポルノなんていうジャンがあるとは思いもよらず、

しかも現実の事件はシリアルキラー活躍!いったいどうするんだよとハラハラドキドキの展開だが、しっかり納まる所エンターテイメントとして上出来なり。お勧めです。

だが著者、次作はどんなもの書くのか書けるのか、少々心配。

「まいまいつぶろ」

後書きというか解説要りませんというか、余計。これはこれで完結した世界なので、これ以上を読みたければ「わたしの渡世日記」にすすめばよろし。

書誌解題なんぞこの場合余計である、といらつく。別の意味で高峰秀子の本音が見えるという、それはそれで面白い一冊。

「ロボジー」

映画監督が原作を書く。脚本を読んでいるような雰囲気もありますが、やはり抱腹絶倒。いつかこの映画みなきゃソン!

「シモネッタのアマルコルド」

既に読んだ事があるのかもと思いつつ手に取ってみたら、そうではなかったような、気がする。否、やはり初読である。

NHKでイタリア語講座されていたのですか?初めて知りまして、というか実は普段TVみないので余計に知らず失礼いたしました。

相も変わらず楽しいお話をいただき心が軽くなる。ナイトキャップには向かない。頁をめくる手が止まらなくなり非常に困った夜でした。尊顔拝見したし。