ほんの累積 平成24年7月

平成24年7月31日

「蜘蛛の巣」上 ピーター・トレメイン 創元推理文庫 ISBN:4-488-21807-5 C0197

「蜘蛛の巣」下 ピーター・トレメイン 創元推理文庫 ISBN:4-488-21808-3 C0197

「死をもちて赦されん」 ピーター・トレメイン 創元推理文庫 ISBN:978-4-488-21815-7 C0197

「霧のソレア」 緒川怜(おがわ さとし) 光文社 ISBN:978-4-334-92599-4 C0093

「サンザシの丘」 緒川怜 光文社 ISBN:978-4-334-92709-7 C0093

「トゥルークの海賊」 茅田砂胡 中央公論新社

「少年は残酷な弓を射る」上 ライオネル・シュライヴァー イーストプレス ISBN:978-4-7816-0782-5 C0097

「少年は残酷な弓を射る」下 ライオネル・シュライヴァー イーストプレス ISBN:978-4-7816-0783-2 C0097

夏休み読書三昧の第二弾。といってもエアコンでもないと無理だわこの暑さ。昔は30度で酷暑だったのに今や36度を越えないと酷暑といえないような気候となりましてござる。

短編集からはいってしまいましたが、蜘蛛の巣がフェデルマシリーズの第一作で長編です。暑い中でこの世界に入門するのはちと辛いかもしれない。フェデルマも産まれたばかりで作者のキャラ設定が微妙に違います。

死をもちて赦されんは、ミステリー的には仕掛けが単純ですが、ワトソン君きゃらが初出で面白さが加わっています。

で、おつぎはジャケ借りしてしまった緒川怜(おがわ さとし)。

装幀の色具合が美事、ってそういうところばかり褒めてもまずいか。もう第一作からして達者です。霧のソレアで飛行機操縦に挑戦したら第三作のはサンザシの丘で刑事物に。

多分まだ何を書こうか迷っているのかもとふと思ってしまった。電車の中で読むにはいいです。宮部みゆきのあんじゅうなんか読んだ日には号泣しちゃってさまにならないから。

ということは別の面でいうと、面白さもあるし話の運びも問題ないのだけれども、読者を「載せて」感情を盛り上がらせるというところだけが欠けているかも。

読者というのは無い物ねだりの贅沢いいますけどさ。

飛行機でいえば、離陸も着陸も達者だけどなんだか同じ高度でずっと飛んでいる気配がする。それなりに高いとこなんだけど成層圏逸脱するんじゃないかという程の乱高下がない。エンターテイメントとしては問題さほどないのですけども。いつか化けてくれるといいなあ。その基礎はちゃんとできているんですが、はて。

「少年は残酷な弓を射る」

邦題がなんともはや、一見文学趣味に開眼した思春期性自称詩人のかきそうな文句ですが、インパクト最大の諏訪敦を使った装幀にひけをとらぬ好い作品でした。

おすすめの一作。親になるというのはこういう恐ろしい事態に陥る可能性もあるのだと、あらかじめ知っていたらまず子供つくる気にゃならん。

何も考えないからできるのかも、と最近の殺人事件など読んでいて思います。

平成24年7月25日

「花のさくら通り」 荻原浩 集英社 ISBN:978-4-08-771453-1 C0093

「修道女フィデルマの叡智」 ピーター・トレメイン 創元推理文庫 ISBN:978-4-488-21811-9 C0197

「修道女フィデルマの洞察」 ピーター・トレメイン 創元推理文庫 ISBN:978-4-488-21814-0 C0197

「少女探偵の肖像」 スーザン・カンデル 創元推理文庫 ISBN:978-4-488-29405-2

「吊るされた女」 キャロル・オコンネル 創元推理文庫 ISBN:978-4-488-19513-7 C0197

今回は銘打ってみれば「夏休みにベッドにころがって読書三昧どっぷりと」の第一弾。

といっても、これで読書感想文書くなんていう芸当は期待しないでくれろ。

どっぷり読み込んで精神を異次元に彷徨わせるという夏休みのお楽しみを、ということでありまして。

夏休みなんてあるか!という人には腹立たしいばかりかもしれませんけど。

いつも混同してしまう有川浩と荻原浩。読み進めながら展開の仕方で作家の違いを実感する。

有川浩は恋愛モードに収斂してゆくが、荻原浩の話は家族の話に収斂して行く。この作品はデビュー作につながるシリーズものであるらしい。

そういえばこのシリーズを読んだ覚えがない。爺婆の面白いキャラクターにつっこみ満載の楽しめるお話。どこかで第一作探してみようかしら。

「修道女フィデルマ」

アイルランド舞台の特異な世界でしかも推理小説というところが一見引いちゃうかもしれませんが、一旦読み始めると癖になります。

よくぞこれでミステリーが成立すると感心する。一種のファンタジーという風に思った方が入り込みやすいかも。しかし下手なミステリーより面白い。

この二冊は短編集。他に長編もあるそうなのでそちらにも触手を伸ばして…

「少女探偵の肖像」

ナンシー・ドルーにまつわる話を中心に。ガードナーの本はペリー・メイスン読んでいたのでそれなりでしたが。

ナンシー・ドルーは多分読んだことがないので、「へえ、そうなのか」とそちらの方がメインになってしまった。

「吊るされた女」

Crime School の邦訳。完璧に読み違えしていた重要な部分が確実に3カ所あった。やれやれ、

やっぱり邦訳読まないとまずい。あそこで間違えると話がつながらなくなる、ってわけで反省しごく。

平成24年7月16日

「新人警官の掟」上 フェイ・ケラーマン 創元推理文庫 ISBN:978-4-488-28219-6 C0197

「新人警官の掟」下 フェイ・ケラーマン 創元推理文庫 ISBN:978-4-488-28220-2 C0197

「ローマ人の物語」5 ルビコン以後 塩野七生 新潮社 ISBN:4-10-309614-4 C0322

「ローマ人の物語」6 パクス・ロマーナ 塩野七生 新潮社 ISBN:4-10-309615-2 C0322

「ローマ人の物語」7 悪名高き皇帝たち 塩野七生 新潮社 ISBN:4-10-309616-0 C0322

「スティーブ・ジョブス」1 ウォルター・アイザックソン 講談社 ISBN:978-4-06-217126-7 C0098

「水の戒律」以来二十年以上という後書きの解説、もうそんなに経ったのかと思う。そもそもはこの作家の夫君ジョナサン・ケラーマンの 「大きな枝が折れる時」がきっかけで読み始めたのであるが、こんなに長く続くとは思いもよらなかった。 ジョナサンのほうが当時は異常心理、それも児童虐待絡みの結構衝撃的な作品でインパクトはあったのだけれども、最近は邦訳が殆ど出ない。 マイロはどうなったのだろうか、そもそもアレックス・デラウェアのシリーズが続いているかもよく知らない。 確かカノジョとは別れたという話は読んだような気はする。夫婦に加えて息子も作家活動しているそうだけれど、どんな作風なのだろう。 と、この作家の本を紹介する筈が何故か他の話になってしまうのが常。

話としては少し冗長なきがしなくもないけど、安定して安心して読めるフェイ・ケラーマン。 有りそうでありながら、そうでもない熟練の作家なのだ。今回の主人公はデッカーの娘。

「ローマ人の物語」

テレビ映画DVD「Rome」を見たもので、カエサル、アウグストス、そしてティベリウスに至る部分の復習として再読。 といってもどうせほとんど覚えていられないのではある。何度読んでも楽しめる塩野節。 ここまでくると史実が右を向いていようが左を向いていようが関係ないのだが、たまに他のローマ帝国史なるものをのぞいてみたくはなる。 そそられはするけど膨大な量になるので控えざるをえない。プルータルコスの英雄伝くらいは読んでおくべきか。ううむ。

「ジョブス」

何冊かアップル関係読んでみたが、ジョブス個人に関してはこの本が決定版になる気配。アップルという会社についてはまた別か。 「インサイドアップル」という本、どんなだろう?

平成24年7月11日の2

「インカに眠る氷の少女」 ヨハン・ラインハルト 二見書房 ISBN:978-4-576-07002-5

「リヴァイアサン クジラと蒸気機関」 スコット・ウエスターフェルド 早川書房 ISBN:978-4-15-335001-4

「アリスの服が着たい」ヴィクトリア朝児童文学と子供服の誕生 坂井妙子 勁草書房 ISBN:978-4-326-65327-0

「大塚女子アパートメント物語 オールドミスの館にようこそ」 川口明子 教育史料出版会 ISBN:978-4-87652-511-9 C0036

闘う考古学者。高山の頂上近くにつくられた遺蹟を発掘する。

高山病、クレパスへの転落、落石、気候の悪化によるブリザードなど遭難の危険のなかの登山。

歩くのが精一杯の環境でタンクも背負わず発掘作業と記録。発掘物は背負ってベースキャンプへ降りて行かねばならない。

こんな中で見つけた凍結ミイラは可能な限り即刻低地へ運び、現地の学術機関による発掘物の争奪戦をかわしながら

最高の保存環境を調達し資金を調達し保存を確実にせねばならない。

世論を煽るマスコミの対応にも苦慮する。遺蹟の場所を特定されたら、ダイナマイトで発破かけて盗掘する輩がいる。

シカンの発掘を書いた本にもありましたが、一旦政府とか公共機関に発掘物が渡ると下手すると「紛失」するという事情はこちらでも一緒。

こうして発見された「生け贄になった少女」のミイラから判ったインカの祭祀の模様はまことに興味深い。

彼女たちの推測される生涯を読んでいたら、カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」を思い出しました。

生け贄になるために聖別され育てられ、そしてその役割を果たすために終焉の地へ旅していった少年少女。

なんともいえない読後感。

「リヴァイアサン」

3部作の第一弾だそうです。ジブリの作品を思わせる手に汗握る少年少女の活動劇。ぜひともジブリで、といいたいが…。

どうなんだろう。とりえあえず次作は絶対に読むぞ!ハリーポッター、メじゃないです。

こんなわくわく感何十年振りだろう。

「アリスの服が着たい」

最近セーラー服ってまだ制服にあるのでしょうか。どうもそのルーツはヴィクトリア時代にあるらしい。

「セーラー服」(英国海軍制服)「フォントルロイ・スーツ」(小公子)、「アリスの服」とかどうしてそんなタイプの服が子供服になったのかという時代的考察をした本。

著者が日本人というところがまた面白い気がする。

ロリコンだったルイス・キャロルが「不思議の国のアリス」の挿絵の衣装に拘った件、判る気もするが可笑しく。

小公子の「フォントルロイ・スーツ」が流行った話、そういえばルノアールの息子、後世のルノアール監督が小さい頃金髪が綺麗だからと

伸ばせさせられてモデルになっている絵がありますが、たしかあれ「フォントルロイ・スーツ」だったような気がする。

「ハーバートおばさんの服」はモンゴメリーの作中で女主人公が嫌い抜いていて、たまたまそれを着て床磨きしているところに来客があって恥をかいてヒステリックになるくだりがあった筈。

視点が面白いとこんなに面白い本(論文?)になる、という最適の見本であります。

「大塚女子アパートメント物語」

時代ですねえ。今こんなアパートメントがあったらどうなのだろう。いや無理、ですよね。

平成24年7月11日の1

「追撃の森」 ジェフリー・デイーヴァー 文藝春秋 ISBN:978-4-16-781206-5

「死ぬまでお買物」 エレイン・ヴィエッツ 創元推理文庫 ISBN:4-488-15006-3 C0197

「死体にもカバーを」 エレイン・ヴィエッツ 創元推理文庫 ISBN:978-4-488-1507-5 C0197

「ぼくの大好きな青髯」 庄司薫 新潮文庫 ISBN:978-4-10-138534-1 C0193

The Bodies Left Behind どういう風に訳すのかと考えていたら「置き土産の死体」だと。なるほどプロはちがうと感心する。

これをそのまま題名にしたらばドロシー・セイヤーズみたいな印象になってしまうので「追撃の森」納得の邦題。

日本語で読むとさくさく読めてしまうのでこういう場合はペーパーバックで読む方がワクワクして二倍くらい楽しめる。

語学力がついて行かないので、はやる心を抑えつつ二転三転どころか昔のアメリカTV映画のつづきものみたいにコロコロ変わる状況を「え〜っ!」といいながら追って行くのが楽しい。ジェフリー・デイーヴァーの醍醐味である。

読んでみて大体筋は理解出来ていたらしいとその点で満足。

「死ぬまでお買物」「死体にもカバーを」

最近のぞきはじめたミステリー関係のサイトにあった「コージー」物をとりあえずつまんでみる。

本筋とはちょっとはずれた設定環境に味を見いだすのがコージーらしいのだが、こういうあれこれ(枝葉末節といおうか)を読むのが面倒な自分向きではないらしいと今回確認。

にたようなものでミス・マープルものがあるけれども、こっちはやはりクリステイだけあって比重がトリックのほうに傾いているので自分的にはOK。

自分がハードボイルド系とかサラ・パレツキーとか最近の検死官シリーズ読む気にならないのは、そのせいか。

「ぼくの大好きな青髯」,br> 高橋のおばさんが薫君に押し付けたお金が五百円札…。はるけく歳をとったものであるかなという感慨あり。

うちの実家には百円札(伊藤博文?)が蓄えてありましたが、大した価値にはならぬか。という些細な数カ所を別にして、

やはり青春文学の金字塔のひとつであろうと思える。 解説では、村上春樹の1Q84?は主題として似ていると言っているけどそうなのか?

村上春樹と村上龍、どちらもあまり読んだ事が無いのでよくわからない。,br> 作家的には自分の「文学観」とやらは昭和30年代あたり以降のものから進化していないらしい。

庄司薫は一見読み易くて、しかし読み解くには深い物語なのである。