ほんの累積平成23年12月

平成23年12月27日

「IT帝国の興亡ーステイーブ・ジョブス革命」村山恵一 日本経済新聞出版社 ISBN:978-4-532-31468-2 C0034

「記者魂」 ブルース・ダルシヴァ 早川書房 早川ポケットミステリ1849 ISBN:978-4-15-001849-8 C0297

「アンダー・ザ・ドーム」上 ステイーブン・キング 文藝春秋 ISBN:978-4-16-380470-5 C0097

「向田邦子の陽射し」 太田光 文藝春秋 ISBN:978-4-16-374350-9 C0095

ジョブス中心かとおもえばそうでもない、どちらかというと俯瞰的なIT関連の近代企業史といったところ。

もちろん題名にジョブスの名前があるからにはそちらをメインにしてるのだが、その敵役としてのマイクロソフトの動向が詳しい。

一読しただけで凡てがわかるというようなIT企業の興亡解説本がある筈も無いが、参考としては漏れの少ない本といえるだろうか。

薄めの本なのでさっと眺めるによろし。日本人が書いている分表現に難がなくて助かる。

「記者魂」

どこかの国のどこかの下町に生きてゆくしがない記者たちの「誇りと気概」みたいなところを達者な筆が描き出す。

ハードボイルドではあるのだけれど、ハードに生きるにはこの街を愛しすぎている中年男。

どうみてもうらぶれたまちで先も暗いんだが、その割には暗くない話なのである。

それなりに街のルールに従っておとしまえをつける。「それでいいんかい!」と思わなくもないが郷に入れば郷に従え。

風情のあるお話であった。この話の元になった記事ってどういうモノなのだろう。エヴァン・ハンターがわざわざ手紙をよこしたっていう。

「アンダー・ザ・ドーム」上

のっけからバラバラ死体が生成されるという緊急事態。

とはいいながら、問題は突然降臨?してきたドームではなく、とじこめられた人々の間に起きる人間ドラマ(それもかなり不穏な)が主人公なのであった。

人々の心を操作して権力を得ようとする奴が、徐々に反対者を包囲し始めているところです。

ゆっくり、じわじわ読んで行くのも楽し。にしても実に恐ろしきは、人の心なり。

「向田邦子の陽射し」

ここまで書かれてはたまらない、というのが生半可に向田邦子を読んで好きな作家にしている人としての本音。

なあんも、いふことなかよね。あえて沈黙。もう一回読み直すか向田邦子と思わせます。

平成23年12月15日

「うそうそ」畠中恵 新潮社 ISBN:4-10-450705-9 C0093

「ちんぷんかん」畠中恵 新潮社 ISBN:978-4-10-450707-8 C0093

「ころころろ」 畠中恵 新潮社 ISBN:978-4-10-450710-8 C0093

「ゆんでめて」 畠中恵 新潮社 ISBN:978-4-10-450712-2 C0093

「いっちばん」I畠中恵 新潮社 ISBN:978-4-10-450709-2 C0093

「おまけのこ」 畠中恵 新潮社 ISBN:4-10-450704-0 C0093

「小暮写真館」 宮部みゆき 講談社 ISBN:978-4-06-216222-7 C0093

「女で生まれて男で生きて」 女子サッカーもと日本代表エースストライカーと性同一性障害 水間百合子 河出書房新社 ISBN:4-309-01787-8 C0095

畠中恵ほとんど網羅。嗚呼面白かった。基本は捕物帳なんですが、キャラクターが立っていて非常によろし。

何も言うことは無し。存分にお楽しみくださいとしか。夢枕獏の安倍晴明ほどには様式化してはおりません。

ほどほどに型にはまった展開とキャラが心地よし。

宮部みゆきは、当代指折りの売れ子作家にして読んではずれることはなし。なるほど青春小説という部分もあり、

それには納まりきれない部分もありの楽しい話。

なにより独白か二人称か三人称か入り乱れているような気がするのだが、毬をついているよなリズムのよい突っ込みと語りとで絶妙な文体となっているのがまことに素晴らしい。良い話だったなあと後味よろし。

性同一障害の関係の本は初読み。基本的にサッカーに興味なく暮らしている人間なのでほとんど無縁の筈だったのだがふと手にとり。

苦労話が続くのか知らんと思ったら、それどころではないような境遇に育ってた。そちらの方が壮絶すぎて表題とはずれありかも。

いずれにせよ、ここまでネグレクトされてよくもまあまともに育ったものかはと感心する。

サバイバルの方が必死で性同一障害は二の次になってしまったというのが本当だろうか。

にしてもこの障害?はかなり根が深いところで悩むことになるのだろうなあと今回少しわかる。

平成23年12月5日

「ジーン・セバーグ」 ギャリー・マッギー 水声社 ISBN:978-4-89176-820-1 C0074

「住宅巡礼・ふたたび」 中村好文 筑摩書房 ISBN:978-4-480-87834-2 C0052

「ぬしさまへ」 畠中恵 新潮社 ISBN:4-10-450702-4 C0093

「ねこのばば」 畠中恵 新潮社 ISBN:4-10-450703-2 C0093

「ユニコード戦記」文字符号の国際標準バトル 小林龍生 東京電機大学出版局 ISBN:978-4-501-54970-1 C3004

なぜか俳優さんは、ちょっと売れると必ず男はハムレット、女はジャンヌ・ダルクを演りたいと願うのだそうな。(イングリット・バーグマンもそうだったと読んだことあり)

ジーン・セバーグは、17才でジャンヌ・ダルク役でデビューという、運がいいのか悪かったのかわからんという女優さん。

当然と言うべきか賛否両論だったそうですが、其の後の「悲しみよこんにちは」(サガン原作ね)と「勝手にしやがれ」でスターダムののしあがったわけですが。

さて、ここにFBIによって女優がひとり犠牲となった。ひょっとしてモンローも暗殺だったのか、などと疑いたくなるよな時代がつづられてゆく。

フランスの有名作家と結婚しセレブな生活と知識を手にしながら、結局「若さ」への強迫的な渇望から逃れ得なかったのだろうか。

いずれにせよ、映画俳優というのは苛酷な商売でありことには違いないらしい。

時代のモラルと倫理の渦の中に揉まれ揉まれて、その底に沈んでゆく精神はエバ・ガードナーと同じだったかもしれぬと読みすすめつつ。

やっぱり、長く生きた方が勝ちよねえ。いまや「セシルカット」しか連想出来ないところが哀しい。

公民権運動、ブラック・パンサー、ケネデイ兄弟、などなど時代の空気をちょっと嗅いで見たいおかたにオススメ。

米国にだって「暗黒の時代」があったのだあ。

「住宅巡礼」

海外の建築学の世界で「意欲的」と認められる住宅建築の巡礼記。面白い!珍しい!そしてちょっと棲んでみたくなる(無理だけど) 場所によっては泊まることも出来る家もあるそうですので、奇特かつお金があってヒマがあってならばきっと食指が動く、筈。

安藤忠雄の代表作「京の長屋」に棲むご夫婦へのインタビュー?もありまする。

なんたって凄いのは「建築設計が趣味」の富豪氏による建築群。こんなのもありとは世界は広い。

とても愉しい本でした!

「ぬしさまへ」「ねこのばば」

網羅の試み第二弾。鴨川ホルモーの鬼に似た「鳴家」(やなり)一匹欲しい。ホルモーとちがって、ちゃんと人間語喋るからこっちがいいなあ。若旦那のお守りの番頭さんお二人も味がありよろしい。(怖いけど)

後何冊あるのかな、このシリーズ。

「ユニコード戦記」

近来滅多にないことに、いくら字面を追っても何にも意味が読み取れなかった一冊。

う〜ん、こっちの頭が悪すぎるのかとも暫く考えたが。結局、文章が形を成していても(相当しっかりしている)中身が無ければ何の意味も無いということなのかも。(ちがっていたらごめんなさい)

やたらと長い名前の団体、その略称、その団体の代表者が集まった「会議」が開催されたことは延々と書いてあるのだけれど、

そこで具体的に「なにが検討されたか」とか、それが何を意味しているのかというところが全然伝わって来ない。

ユニコード関連だからコードの決め方とか成り立ちとか、素人にも判りそうなやりかたで解説でもしてくれたらいいのだけど。

JISの種類の名称とか、歴史とかも解説なしで、何種類かの符号種類名称が繰り返し出て来るだけで意味も区別もつかず。

結局このひと何が言いたかったのかな?で終わってしまった。

東大卒相手だとこんなものかは。それにしても…