ほんの累積 平成22年10月

平成22年10月28日

「松本清張傑作選 宮部みゆきオリジナルセレクション」戦い続けた男の素顔 松本清張 新潮社 ISBN:978-4-10-320436-7 C0093

もう十何年ぶりかの松本清張。宮部みゆきが何を選んだか、ということで興味津々。

後書きの方を先に読まずにいて良かったと思える本。でなけりゃあ、最後まで読む気になったかどうか知れず。

さて「宮部みゆきの意図」を探りながら読むというのが一番正しい読み方でありましょう。

なにしろ1000編も作品を書き続けた文豪(まさにそう言えると思う)なのですから、そのあまたある作品からチョイスすると言うことがすなわち編者をもあらわしているわけで。

やはり松本清張らしい作品。当たり前なんだが、読んでいて辛い部分がありまして。

読みにくいと言うのではなく、その登場人物の運命が辛い。親父の本棚から取り出して読んでいたのが思春期の真っ盛り。

それでなくとも辛い憂鬱な季節に、かのような境遇の人々(まさに現実等身大の)の物語を読むのは辛いわなあ。

ということで松本清張は読破しておらんのだが、今回その機会を得て良かった。

おもいがけなく出雲地方あるいは中国地方を舞台にしたお話が多く、この作家の歴史的知識の正確さなんていうのもあらためて確認し。

やはりこの方ここまで取材にいらっしゃたのだろう。そういえば、砂の器もこのあたりが舞台のひとつだった。

推理小説家としての松本清張とはちょっと違った面を見せていただいた、有益な経験でした。

ところで、表題がいったいどれが一番に出るべきか、というのに非常に迷いますなあ。

「宮部みゆきオリジナルセレクション」では既に長過ぎるのにこれでは意味が分からんし。

「松本清張傑作選」はシリーズ名だし、だからといって「戦い続けた男の素顔」は副題でしかなく。

どうせえちゅうんじゃ!としばし考える。

平成22年10月16日

「ロード&ゴー」日明恩(たちもり めぐみ) 双葉社 ISBN:978-4-575-23676-7 C0093

「時間SF傑作選 ここがウイネトカなら、きみはジュデイ」 大森望 早川書房 ISBN:978-4-15-011776-4 C0197

日本救急車版「スピード」。惜しかった。できれば「鎮火報」を読んでほどなくの時期にこの本読みたかったなあ。が、これも縁しかたあるまい。

大森望が選ぶコテコテのSF、というところ、こういうジャンルも久しぶりに読んだなあ。

この本の表題になっている作品が一番好きかもしれない。

時間SFってここまでバリエーションがあるのかとかなり驚かされる。もっと感性の生きのいい二十代に読んでみたかったなあ。

もっともっとSFにのめりこむことになっただろうという気がする。何れ劣らぬ正に傑作でした。

あたふたあたふたと、本をまともに読んでいる時間がない。やれやれ。

平成22年10月5日

「後巷説百物語」(のちのこうせつひゃくものがたり)京極夏彦 角川書店 ISBN:4-04-873501-2 C0093

「茨文字の魔法」(いばらもじ の まほう) パトリシア・A・マキリップ 創元推理文庫 ISBN:978-4-488-52009-0

そして最後の〆は百介君の語りで。ということは西巷は上方で活躍していた時代のはなしになるのでしょうか。

百物語の締めはさすがにお見事でありました。

「茨文字の魔法」

話の筋は別段問題ないのに、何故読み進めにくいのか。こちらの理解度が足りないだけかもしれませんが。

自分的にはちょっと乗り切れなかった残念な結果に。最後のあたりで腑に落ちましたけど、語りが足りないままに次のシーンに進んでしまっている感じがあり。

からくりを後から知ればやはりそうせざるを得ないのかな、と。でもやはりマキリップの世界は彼女でしかつくれない。