ほんの累積 平成16年4月

平成16年4月26日

「夢の靴職人 フェラガモ自伝」 サルヴァド−レ・フェラガモ 文芸春秋

「タンポポハウスの できるまで」 藤森照信 朝日新聞社

西洋?が靴の文化であるということが、つくづく分かる。と同時に思い出す。

その1

ヘンリー・フォンダの最後の妻が孤児で施設に入っていた頃の唯一の記念写真がボロボロの靴を履いていたもので、

本人も「なぜこんな姿で」と考えて思い出したのは、他の子の靴を見栄を張って借りたのだったという話。(つまり裸足だった?)

その2

西部開拓史時代のR・I・ワイルダーの幼い頃「ブーツ」は日曜礼拝の時の正装だった。(普段ははだし)

高校時代、革靴を履いて長距離歩いているうちに両足の小指の爪が薬指に食い込んで、血だらけになったものだ。卒業してからパンプスでまともに歩けた試しがない。以来ずっと運動靴である。両足首捻挫の癖があるのでヒールの高い靴は金を詰まれても(積む人はいないが)履く気にならない。おかげで外反母趾にだけは縁がなくて済んでいる。

映画界の周辺で企業を興したというくだり興味深い。ブランドにはしぬまで縁がなさそうな自分だが、こういう「職人気質」が企業家として成功するという物語は面白い。「ココ・シャネル」もそうだったなあ。

いわゆる何百年もの間「王室御用達」のブランドよりもこういう「一企業家」としての姿がみえるブランド創始者の物語はたいへん面白いものがある。

タンポポハウス

以前読んだ事がある筈だがすっかり忘れている。諏訪神社の祭事の縁起など、「民俗学」関係資料になりそうな。バブル時代に田んぼのど真ん中に「悪夢のような」建築物が建って呆然としたことがあるが、この人の第一作建築物はまっとうである。

小田和正さんて、建築学科だったのか。

「韮ハウス」になった赤瀬川さんの話も面白いが、「タンポポハウス」の外見は荘厳である。

建築は、おもしろい。

平成16年4月23日

「怪物」 アゴタ・クリトフ戯曲集 早川書房

「葉桜の季節に君を想うということ」 歌野晶午 文芸春秋

怪物・こんな戯曲の上映を眼前で観たい。しかし、成り立つのだろうか?存在しなくとも、いい。

でも、みたい。

葉桜・小説ではどんな主人公を作るのも自由。しかし、作者は「どんな人物を自分が描きつつあるのか」

ということに無自覚であるべきではない。

途中で挫折。体質に合わない。

基本的な原因は、作品にはなく作者の方にあると思う。

クリトフのあとでは大抵のものは太刀打ちできないだろうが、落差ありすぎた観あり。

平成16年4月22日

「スカーレット・ウィザード」3・4・5 茅田砂胡

「ニシノユキヒコの恋と冒険」 川上弘美 新潮社

茅田さん、読み始めたら止まらない。まことに睡眠障害の原因となるような、罪作りなおはなし。結局朝の3時半。翌朝6時起床。バドミントン試合見学、直会(なおらい)

睡眠不足に弱い体質ゆえ帰りは幻覚を見ながら運転。このところずっと体調不良で、ようやく調子が戻ってきた。

川上弘美さん、あいも変らず不思議なキャラクター。

Y氏と我の会話

「最近体調悪いんです」

「そりゃあ、年取ったっちゅうことだ」

「(5歳年上の)あなたには、言われたかない」

Y「僕も、酒を飲むと具合が好いんだが」

「それは飲んでいる最中のことでしょう。単なる気のせいです」

「あれ、車の鍵がない」(と探し、慌てる)

「さっき、おつれの方が鍵貸してって言われてたでしょう」

「あ、そうでしたっけ」(ふらふらと、つれを探しに行く)

(鍵を探し当て戻ってきて)「ぼくの鞄は、どこでしょう?」

「あそこです」(と、今通った所に置かれたままの鞄を指す)

誰が「トシ」だって?

山が笑い出した。打ち上げで「しわい」(≒しぶとい)という言葉を

若い娘に説明していた時に、「海千山千」と言っても通じなかった。

そのうち会話が成り立たなくなるかもしれない。

平成16年4月15日

「グリフィン」 森脇真末味 早川文庫

「時代と人間」 堀田善衛 徳間書店

だ〜んだん、あぶない方向に向かっているような。神の本を売っているねえさんのぶっ飛んだ眼がすごく怖い。どうやったらあのような眼を描けるのか。でぶのヴァレリーの肉体の存在感。

ヌード描いても色っぽくない。肉のかたまりの存在感。こういうしっかりとした骨格の描画は見ていて楽しい

堀田善衛さん。

ジブリの「熱風」に宮崎監督の愛読書として一部紹介されている。多分今まで読んだことのない人。

(学生時代に一つくらいは読んでいるかもしれない)

いつか余裕があったら「ゴヤ」を読んでみたいと考えていたけれども、大部冊となると読み始めるのに覚悟がいる。今回読んでみて、難解でなかったのに驚く。すこし気が楽になった。

考え方にも共鳴できそうである。

ゴヤの絵は数点見たことがある。肖像画を観たときには拍子抜けするくらいに流麗とは縁のない感じに見えた。「書割」という感じ。

そっけないどこにでもいる人間(皇太子かなんかの騎馬姿だったか)

あまりに似すぎていて嫌われたというのは確かかもしれない。とりつくろいようのない、威信威容など逆さにしても出てこないような人物像ではあった。

それと、版画を数点。

プラド美術館には行ってみる価値があると思う。

平成16年4月14日

「ふぐママ」 室井滋 講談社

「麦の海に沈む果実」 恩田陸 講談社

堂々の女優に向かって

「あなたは下積みしなくてはならないほど適性がなかったのに、女優になったなんて余程運が良い」

と、女優志願がいう。

私は、怒ってもいいと思うけどなあ。

恩田陸ワールドにようこそ既読と思い込んでいたら、ちがった。もうけもの。今月この小説の続編が新刊で出ていた。楽しみ。なにしろ美少女、美少年うようよ。イメージ的には外国の、干潮の時しか途ができない島に建てられた修道院というところが発想かなあ。日本にこの設定となると荒唐無稽になりそなものだが、あまり違和感を感じさせないところが恩田陸さんですね。

久しぶりに講師殿と雑談。最近また風邪がぶりかえしているらしく、咳き込み方が気になる。

「タバコと大酒のみとをやめて、いい子にしていれば治るのですが」と、タバコをふかしながら言っている。

「それは不可能なことですね」

日露戦争の折に築かれた監視所?の跡を確認との新聞記事あり。本当に久しぶりの会話。

ご自愛くださいませ。

平成16年4月12日

「Sweet November」 映画

「9坪ハウス狂騒曲」 萩原百合 マガジンハウス

「ル・コルビュジエ 建築・家具・人間・旅の全記録」 株式会社エクスナレッジ

「熱風」 スタジオジブリの好奇心 徳間書店

映画館から出て立ち寄った特設会場でVTRみつける。わ、笑える。(笑う映画じゃあないのだが)

ーー歌って踊れるキアヌ・リーブズ!!ーー

ワーカーホリックのキレ方が、はんぱでない。ドスの効いた「プレゼンテーション」これは、地かも。

「HOT DOG ! HOT DOG ! EATーMYー DOG !(ぼくの ○○ス)」

THANKS GIVINGS DAY の食卓に「MERRY CHRISTMASS !」と叫んで登場、固まったまま立ち尽くす。

みんなの、うんざりした顔。ヒロインが困り果てている。

すごく不器用な、キャラクターでした。妹さんのことを考えながら、この映画の出演を選んだのでしょうか。

辛い気がします。女装のおじさん、とても好みです。ヒロインを除いて、脇役みんなどこかで診たことあるぞと考える。一流の俳優さんばかり、です。味がある。

「9坪の家」は旦那さん、今回は奥さんのおはなし。つくづくこんな家に住みたいと思う。

平成16年4月10日

「恋愛適齢期」 映画

そのむかし映画館は総入れ替え制でなくて、二本立て。じっと我慢のこをしていれば、途中から入ってもエンドレスになっているから始めから見ることができた。

面白いと心底おもった映画はもったいないから必ず2回見たもんです。椅子が豪華になり、音響が良くなり、スクリーンがいくつもできて装置が良くなった代わりに、そう入れ替え制になって1回しか観られなくなった。すこしさびしい。飯も食わずに5時間くらい粘ったことがある。

(さすがに「愛と哀しみのボレロ」2回はながかった)

まあ、ビデオのなかった時代ですから。テレビも性根をいれてにらみつけていたもんです。

集中力が午後は落ちるようで、気合の入り方が足りなかったのだが、気になったことをひとつふたつ。

「ブラジャーにワイヤー入れてるのは日本だけ」という話を聞いたことがある。たしかに。

娘のマリンちゃんも、エリカさんも下着単なるレース飾りの布一枚。まあもともと「鯨の骨」下着の歴史があったのだから、いまさらワイヤーなんぞで苦しめられるのは嫌だろう。

それだけスタイルがよけりゃあ良いのだが、まあ悪いから死ぬというわけでもなし。いろいろあらあな。

日本の消費者すこし賢くなるべきだと思う。

キルビル2の予告編で、初めて気がついた。

あ、あんた!「デビッド・キャラダイン」やあなかね!(訳 ではないか)

それが何か?

いや若かりしころTV「燃えよ!カンフー」ですごく憧れてたのよ!!

お元気だったんですね。うれしい。

ミーハーになった一日でした。

平成16年4月7日

「海馬 脳は疲れない」 糸井重里+?

ほぼ日刊イトイ新聞 の対談

いつもとてもクリエイテイブなのでこのサイトは楽しい。そうか、自分もそんなには「頭悪い」わけではないかと、言う気になる。歴史講座に参加して世界観が変わったり、資料整理を始めたらまた一気に世界が広がったというのは、そういう意味だったかと理論つけて納得できる。

やってみなければ面白さはわからない。難しさもわからない。PTAで心底楽しかったのは、広報の編集を原稿用紙製作、枠組から校正まで一通り見ることができた独り作業だけだった。

他の企画ができるような実力もなくて無力感にうちのめされはしたが、経験者の方のやり方を垣間見ることができて大変運が良かったと思う。

まあ、悪いことばかりではなかったと、言っておくか。転んでもただでは起きない?

そこまで逞しくもないけれど。

平成16年4月5日

「おとこくらべ」 嵐山光三郎 恒文社

「春にして君を離れ」 クリステイー 早川文庫

「デイボーズ・ショウ」

「最後のアジアパー伝」 鴨志田穣 西原理恵子 講談社

31日花見で朝帰り 1日に友人の妻訃報 2日から腸感冒にて寝込み。

食うものも食えず体がふらつく。妄想が頭の中に貼りつく。

「おとこくらべ」

じんわりと味の出るお話で、時折笑う。しかし昔の文士は何とまあ非道なことしてきたのやら、とあきれる。

「デイボーズ・ショウ」

病み上がりの軽いのにと。しかしこういうコメデイ面白くなくなる年頃なのだなあと自覚。悪意があるな。したたかに。いいけどさ。

「アジアパー伝」

戦場に一度身を置いてしまったら、麻薬のように取り付かれ日常のぬるま湯の中では暮らしてゆけなくなるという図式がある。気の毒のような気もするが、納得もできる話ではある。

しかしここまで「もった」のは西原さんゆえか。