ほんの累積平成23年8月

平成23年8月27日

「最初の刑事」 ケイト・サマースケイル 早川書房 ISBN:978-4-15-209212-0 C0098

「目からハム」シモネッタの人間喜劇 田丸公美子 朝日新聞出版 ISBN:978-4-4-02-330284-6 C0095

「さらば友よ」三谷幸喜のありふれた生活9 三谷幸喜 朝日新聞社 ISBN:978-4-02-250845-4 C0095

「月の上の観覧車」 荻原浩 新潮社 ISBN:978-4-10-468905-7 C0093

トルーマン・カポーテイの冷血を思い出す。比較するのは当たっていないのだろう。

推理小説としてではなくノンフィクションとして読んだ方がより面白いかと思われる。ヴィクトリア朝時代は現実として生きた人々にとっては大変な時代ではあったが、読む側にとってはこの上も無く面白いものであると実感しながら読む。

大昔のように一見思っていても、よく考えればそう昔のことではないのであった。

産業革命により時代の流れがどんどん加速して行きはじめるこの時代、同時に社会のあり方も人々の思想もどんどん変化して行く。モンゴメリの作品のなかで女の子たちが「ヴィクトリア時代の遺物=時代遅れ」と冗談の種にしていたくらいの近い過去。

「またの名をグレース」と共に読むと、この時代の社会のあり方など考えるに面白いだろう。

「目からハム」

目からウロコではなくイタリア語では「ハム」。「ローマ最高級の三流ホテル」では抱腹絶倒。盟友?に米原万里を持っていただけあってとてつもなく可笑しく楽しい。しかし作者の息子氏、母親に似てエラい毒舌ではなかろうか。

三谷幸喜のエッセイ、今回は「おしまんべ」猫氏のご臨終。新顔至るとの紹介があったが、さてまだこのエッセイ続いているのか? つづくと今回以上に辛い話もしなくてはならないかもと、余計な心配。「さらば友よ」って映画ありましたね、チャールズ・ブロンソンとアラン・ドロンだったっけ?

荻原浩の本は一人のときに読みましょう。電車の中で読んだら最悪です。出来は最高だが、滂沱と流れる涙を衆知の面前で拭きながらという羽目になる。お気に入りは「いとしの座敷童」と「押し入れのちよ」

有川浩と間違えて手に取るとマズいことになるので要注意。(「砂の王国」につづき今回も間違えた)

平成23年8月25日

NHK爆問学問「名門大学の教養」 主婦と生活社ISBN:978-4-391-13984-6C0095

「重力ピエロ」 伊坂幸太郎 新潮社 ISBN:4-10-459601-9 C0093

「モルフェウスの領域」 海堂尊 角川書店 ISBN:978-4-04-874153-8 C0093

名門を標榜する守勢の立場となると苦しい。太田光の自由自在の攻めに脂汗のでた教授連もいらっしゃったようだけれど、「大学に何をしにゆくのか」という真っ向からの問いに誠実に答えようとすればこんな議論になるわけだ。

こんな面白い教授連が居るなら目指そうではないか、とのちに受験生が志望理由にこの番組を挙げたというからその価値はあるかも。

東京芸大とかのあたりは飛ばしてしまったけど、面白い本だったといいつつ太田光の語ることばを完全に理解出来る人間がどれくらいいるかしらんなどとも思う。< br>これでタレントとして公の場で堂々と視聴率獲りつつ場を確保しているという現象は「オタク」の強さかといいたいが、それだけじゃあ済まない。古今東西みたこと無いキャラだし。

伊坂幸太郎の「重力ピエロ」そろそろと読む。弟はスーパーマンかよ。伊坂幸太郎の「仙台」は実はパラレルワールド。

ゴールデンスランバーもだけどえらく不穏で不気味なな世界でもある。おなじみ?のキャラも出て楽しめた。

海堂尊はだんだん小説家として下手になりつつあるのか?と激しくおもった今回の本。

半分くらいまで話は核心でないところのわけのわからない表現のなかで漂い、ひょっとして「エンターテイメント」でなくて「文学」の領域を目指し始めたか?と思わせる。

ファンでなけりゃ、そしてお馴染みのキャラが出ていなかったらとっくに読むの辞めるぞと思ったアタリから話が動き始めた。

これが雑誌の連載だったようで、多分当分の間読者はわけのわからん状態で据え置かれたんではないかと同情する。

とまあ、ボロクソに言ってしまったがお話はとりあえず(とりあえずかよ)ちゃんと終結するのでご安心を。

海堂ファンならお読みになって大丈夫。初めての方にはお勧めしません。

ファンタジーというよりSF寄りになってきた桜宮シリーズでした。

平成23年8月14日

「悪意の傷跡」ウエクスフォード警部シリーズ ルース・レンデル 早川ポケットミステリ1724 ISBN:4-15-001724-7 C0297 「絶滅危惧種」女性パークレンジャー/アンナ・ビジョンシリーズ ネヴァダ・バー 小学館 「空白の4マイル」 「天使たちの課外活動」 茅田砂胡 中央公論新社 ISBN:978-4-12-501160-8 C0293

公私ともにばたばたの毎日。読んでおいて放って置くので既にどんな内容だったか忘れかけている。

ゆえに簡単に覚え書き。

ルース・レンデルはさすが女性にしか描けないDV話。鬼気迫る感じなのである。当然ながらミステリーではあるしシリーズとしての体裁もしっかりあり。けど、レンデルのシリーズ物を読んだことあったっけと覚えなし。

この警部悪いキャラではないが、さして特筆すべきものでもなし。今まで読んで来た他の作家の警部キャラが突拍子もないのが多いからこれが普通の人間か。

ミステリーとしてもちゃんとした本でした。人物描写がうまい!

パークレンジャーのこのシリーズは初見。三冊か4冊並んでいてえいやっと選んだところ、これは三作目のような。

別にそれでも問題の無い本でありましたが、スカーペッタが出て来た頃に同じく並んで賞されたシリーズなのだが何故か邦訳が遅れたとのこと。なるほど、一時こういう女性キャラのが流行ったような気がする同じ「匂い」がするという感じ。

そういう風にみればスカーペッタ続いてるし売れたのねと感慨深し。

「空白の4マイル」だか「5マイル」だか、忘れることにした。

著者は元新聞記者の日本人が無理矢理中国側からチベットの山中へ分け入って誰も書いたことの無い地域を歩いて来たという記録。

読み進めるにつれて「どこか違うだろう!」という感覚が貼り付いてとれなくなってくる。暴動の最中中国の厳戒態勢の中、外国人を拒否している地域に無理やり現地入り、軽装で単独強行軍。

当然道のようなものはほとんどなく、土地勘のある現地ガイドを雇用しようとするもビザも許可証もない外国人相手に協力したのがバレたらどんな眼に遭うかわからないから拒否される。

そこを金でごり押しする姿などなど、ううむ「探検家」とはかように札束で頬をひっぱたくようにして現地人を使いながら探検をしてきたものかとその「実像」に触れたようではなはだ不快なることおびただし。

違和感、およびそもそもの人生観の不一致ゆえ自分としては不愉快な一冊となった。「探検家」とはおしなべて「体育会系」でないとできないのかもしれないが、この方そうやって生きて来たのだろうなあという感慨。

文章家には向いていないかも。何も考えてないもの、自分の都合の他は。実績を認める云々の前に、思考回路が合わない。

それでも行きたかったのね。でもグルジア人への迫害を知ると、平和ボケもここまで来たら…という気になる。

「天使たちの課外活動」

新シリーズですと!新キャラが出て来て、ますます楽しめそうな展開となりました。

もものき事務所は11月に新刊予定とか。たのしみです。

以上多分8月上旬に読んだ本を羅列。