ほんの累積 平成22年12月
平成22年12月23日
「武士の家計簿」 磯田道史 新潮社 ISBN:4-10-610005-3 C0221
「白夜行」 東野圭吾 ISBN:4-08-774400-0 C0093
ただいま堺雅人主演、映画館にて絶賛上映中?の原作本。これは面白い、読んで眼から鱗というやつです。
司馬遼太郎とは井上ひさしとかが存命だったらきっと喜んで読んだろうなあと考えたくらいに。まさにお勧めでした。
堺雅人を主人公にしたのはきっと正解だとおもう。
「白夜行」
これも映画化それともドラマ化?とはいえちょっと脚色大変だろうなあ。
東野圭吾だけあって上手い。要所要所に時代背景をちゃんと取り入れ、つかずはなれず極端な描写にも陥らずという綱渡りが、この長編といっていい長さの中でバランス良く配合される。最後まで読まされちゃうところが憎い。
結論はでないのですけどね、それはそれなりに最後に決着する。この最後に異議をとなえたい人もいるかもしれんが。
天皇誕生日、天皇様おめでとうございます。なぞというだけで不敬なような気もしますが。
このあいだから始末していなかった請求書仕事を午前中かかって始末。明日は発送と、金勘定。
このごろわけのわからんキーボードミスタッチばかりで困ってます。指も「吃る」んだろうか?というより脳神経の具合か。
風邪薬もらってから大分状態は良くなったのだけど、就寝中うつらうつらしながら耳が痛いとか耳鳴りとかしているらしいことがある。
朝になって起きたらほとんど忘れているのではあるが。
今晩は野暮用一件終わらせて、さっさと就寝したい…明日からまた寒波?
平成22年12月20日
「カウントダウン」 佐々木譲 毎日新聞社 ISBN:978-4-620-10759-2 C0093
「エアーズ家の没落」上 サラ・ウオーターズ 創元推理文庫 ISBN:978-4-488-25407-0 C0197
「エアーズ家の没落」下 サラ・ウオーターズ 創元推理文庫 ISBN:978-4-488-25408-7 C0197
佐々木譲だけあって読ませてはくれるが、さて読み終わってから何が言いたかったのだろう?と考えてしまった。
ただのエンターテイメントさといわれればそうなんだけど、小型の夕張市の市長選に打って出る主人公の戦いというところで終わっちゃってなんだか煮え切れない。焦点がどこか別の所にあったのだろうか…よくわからず。生煮えの気分で終わってしまった。
おなじく駆け足で読み進め過ぎたサラ・ウオーターズ。(早く寝たいのに読み始めてでも途中ではやめられず)
そういう話だったんですかで終わってしまった。
どれもこれも、きっと風邪でずっと具合が悪いからという理由によるんだろう。もったいないことをした。こういうときは大人しくキングを遅々とした歩みで攻めればよいものを。
柴田元幸訳の「マジック・フォー・ビギナーズ」というのを少し読んだら、これは頭がグルグルになりかけたので小休止。サリンジャーの不条理小説を読んだ時の感覚を思い出した。年とったせいかこういう三半規管が狂いそうなタイプの小説は気をつけないと。
経理と経営とは似て非なる部分が大であり自分には売上額を不明なまま経営の見通しビジョンなど描くことは不可能、かつそういう嘘をつくつもりはないと説明するのだが受け入れられず不毛な口論となる。
判断に不可欠な資料である数字を抽出する余裕さえ無いのに答えを出せと言われても困ると説明するのだが理解出来ないらしい。
一週間たっても体調が戻って来ないので、病院にいって薬をもらってきた。いつももらう風邪薬は効くのだが、飲んだ途端に「ことり」と眠ってしまう。効きすぎくらいに効く。こどもは同じ薬でおなかがゆるくなる。笑えるくらいにちがう副作用。
平成22年12月18日
「パパはマイナス50点」 小山明子 集英社 ISBN:4-08-781334-7 C0095
「生半可な學者」 柴田元幸 白水社 ISBN:4-560-04290-x C0095
小山明子、大島渚夫婦の介護とうつの闘病日記。
今は知らないが、一昔前の女優さんというのは芝居がしたくてなったというより経済的理由で継続せざるをえなかったみたいな方が多いような気がする。たまたまその業界にはいったけれど、できればやめたいと思いながら続けていたという記述が自伝なんかによく見て取れる。
外見は派手だけれどそれはどうでもいい。家族を養う為に不本意ながらもつづけて結局演技に目覚めて、みたいなところがおおい。
小山明子さんもそんな感じ。で、助監督と恋愛関係になってというのもこれまたよくある話だけれども、熱烈な恋愛でしかも映画に対する同志にもなっちゃったというところもよくある話で、やはりそこのところ熱く語る大島監督に惚れちゃったのねと微笑ましい。
ただ微笑ましいくらいで済めば苦労はしない。
脳梗塞で倒れた監督を一所懸命介護するうちに自分をおいつめた小山さんは鬱病になる。
映画を撮らせてもらえる、撮るには相当の苦労と臥薪嘗胆の辛抱が不可欠。けっきょく名監督の名の影にはこうした影の支えがなければ成立しないものらしい。それでも羨ましいなあというのは、ここまで熱烈に一緒に暮らせる夫婦もいるんだということ。
そういえば、どこで読んだか聞いたか飲み屋さんの席で大島監督が嬉しそうに奥さんのお尻をなでているのを見て、何故そういうことするのと聞かれた監督が「他所の女の尻でなくて妻の尻を撫でても法律違反じゃないだろう」とか答えたとかいう話。 本当に惚れ込んでいるんだねえと感心した覚えが…
柴田元幸という翻訳家をちょっとかじってみる。最近作家ではなくこの「翻訳家」に焦点をあてた本が数冊出ていて気になり。
が、菊池光とちがって大して灰汁のある文章でもなさそうな…ただいま探索中。 とりあえずエッセイをというところ。
平成22年12月15日
「新参者」 東野圭吾 講談社 ISBN:978-4-06-215771-1 C0093
「沈黙の時代に書くということ」 サラ・パレツキー 早川書房 ISBN:978-4-15-209155-0 C0098
いろいろややこしいお話ものかという心構えで読み始めたら、ひとりの刑事が触媒になって物語が解決して行くというか犯罪そのものより周囲の人々の方をメインにしたものでした。さすが東野圭吾はわかりやすい。うまい。
テレビドラマで阿部ちゃん(名前ど忘れ)が主演だったようですが、きっとこれははまり役だったかな。すくなくとも白鳥警部よりははずれていない。どうざんしょ、加賀刑事シリーズというのもいいかも。
サラ・パレツキーは数冊読んだことあり。同じ頃にスカーペッタを読み出して、そっちのほうが性にあっていたのでその後読まなかったのですが。昭和22年の生まれ、キング牧師の周辺で公民権活動にも加わり、フェミニズムの中でいろいろ活動しという経歴。
祖父母はポグロムによりヨーロッパ大陸からアメリカに単身移住したという家系で、その後のショアーで親戚殆どすべてを失っている。
なんだか近代の歴史凡ての証言者みたいな経歴です。
V・Iシリーズ読んでみるか、と思わせるものあり。最近のスカーペッタ、なんかずれているしね。
ミステリーはともかくひょっとして今アメリカの思想的動静、かなり危ないんじゃないかという警鐘を鳴らしている本であります。
自身がユダヤ系ということも、神経を尖らせざるをえない要因ではありますが、やっぱりやばい気がする。
平成22年12月14日
「E・S・ガードナーへの手紙」 スーザン・カンデル 創元推理文庫 ISBN:978-4-488-29404-5 C0197
ペリー・メイスンを読み、若山弦蔵がしゃべっていたレイモンド・バーを見て、ついでにアイアンサイド警部見て育った世代なので、「E・S・ガードナーどんとこい!」という感じだったのだが、ただひとつ饒舌体の女性キャラクターにめっぽう弱かったのを失念していた。
辛かったぜ。まあたまのことだから…。
ミステリーにはこういうジャンルもあって、普段は避けて通っているのです。どんな感じのものかと問われれば、「EAT PLAY LOVE」のミステリー版といったらふさわしいか。
しかしハリウッドには古着というかヴィンテージのファッションマニアむけの商売が存在するんですねえ、と考えてみれば当然だが感心する。昔の映画とかシャネルとか昔のファッションが少しは頭に入っているので読んでいてそこは楽しかった。
クローデット・コルベールの衣装など本当に売りに出たりするのだろうか?サザピーズものじゃあないかしらん。
ただし、第二作目は手を出す気にはなりませんなあ。とはいえ他の作品はハメット、クリステイ、ヒッチコックなんかを扱っているとか。
おもわず手が出てしまったりして。
昨夜ヒッチコックの「サイコ」をやっていました。ちょっと見た。アンソニー・パーキンス騒がれて当然だわ。なんと麗しきお姿…
平成22年12月9日
「BONE BY BONE」 Carol O'Connell berkley novel ISBN:978-0-425-23105-0
邦題「愛しい骨」読んでいるうちは一体何がメインなのか迷っていたのですが、結末まできてなんだか納得。これ、みすてりーというよりノアールなのでしょう。一応殺人を追った話にはなっている。
キャラクターのつくりかたがオコンネルだけあって、強い女を書かせたら絶品。特にこのハンナという女性。
Shell Game(=「魔術師の夜」?)だったか、ペーパーバックを読んだ後で邦訳を読んだら涙流す程感動した件がえらく陳腐なものにすり替わっていて、以来オコンネルに関してだけは原作を先に読むことにしている。
難しいんだよなあ。ただ日本語として移し替えるならまだ容易かもしれないが、多分この作家「詩人」としての言葉遣い、リズムが見事でこれを日本語として表現するのは至難の業なのだろうと思います。
今回の「タンゴ」のリズムに合わせて踊る二人の姿がどこまで日本語に勘案?されているのか興味がなくもないが、イメージを壊したくない気もして微妙なところ。いつか手にとって読む機会はあるかもしれない。
ということで、漸くキングの「ドームの下で」にとりかかれる、と思いきや外にこれを持ち歩くのは大変だよなあ。
が、そういう時ぐらいしか読めない、時間がとれない。覚悟が要りますな。週末おでかけするにあたり、どちらにしろ出先でなにか本を手に入れるならば、移動は数時間なのでiPodを持参するのが正解かしらんと悩みつつある。
やっぱり活字中毒者の意地で弁当箱一つ分なにはともあれ犠牲にして持ちあるきますかねえ。
デイーヴァーのBurning Wireのペーパーバックにも出会えそうな予感もするのだけど。
平成22年12月8日
「人間を読む旅」 城山三郎+佐高信 岩波書店 ISBN:4-00-001754-3 C0095
「原節子 あるがままに生きて」 貴田庄 朝日新聞出版 ISBN:978-4-02-261656-2 C0174
実のところこのお二人の著作をまともに読んだことが無い。ゆえに自分的にはかなり毛色のちがう対談集。
が、面白かった。何が面白いって「ちょっと前」だけど「過去」というには生々しい、あるいはほとんど「現在」の感覚の政治情勢を切れ者が忌憚なく語るという視点の違い。しかも語られるのは今現在殆ど死んでしまっている政治家に対する評だったりする。
(このお二人もちょっと前に鬼籍にはいってしまっているわけで)
読んでいる現在の自分がちょっと「神の視点」でみることが出来ると言う優越感?に浸れるわけで、「読んでいる人間」対「対談する二人」と「評される人々」という時制の違いがこのうえなく面白く感じられる。
ええと、竹下登に宮澤喜一、田中角栄に大平正芳などなど。まだご存命なのは(失礼)小泉純一郎に田中眞紀子とか小数派。対談の時点では首相がまだぶち切れて辞職したりしていない時期。
お〜お〜このあと突然辞職したんだっけか?とかいろいろ思い出しつつ読める。
山本周五郎や司馬遼太郎、藤沢周平など人物評にはちょっと笑みが浮かぶ。(あ、これも鬼籍か)
懐かしいような、ふしぎな感覚につつまれつつ読んだ本でありました。「黄金の日々」や「落日燃ゆ」とか、まだ親父が健在なころだったっけか、と思い出しつつ。
怖いぞ、このおじさん達の「眼」は。(ん?堺屋太一とごっちゃになってる?)
「原節子」は、なんだか煮え切らないままに書いたという感じ。途中で断念。
思うに、自分ならこういう人に自分のことを書かれたくない。たとえば沢木耕太郎さんなら、食指は動くかも。
平成22年12月3日
「モールス」上 ヨン・アイヴィデ・リンドクヴイスト 早川書房 ISBN:978-4-15-041209-8 C0197
「モールス」下 ヨン・アイヴィデ・リンドクヴイスト 早川書房 ISBN:978-4-15-041210-4 C0197
ヴァンパイヤテーマのゴシックホラー。さすがスウェーデンのベストセラーです。ひさびさの徹夜本だった。
同級生たちに執拗にいじめられる男の子と、謎めいた同じアパートの住人である女の子の出会い。
それにアル中仲間の男と女の人生など絡めた展開には、スウェーデン社会の実相(実際には詳しくないので多分)が描かれていてそこのところも興味深い。
子供達の目の前にある麻薬や万引きなどという犯罪の誘惑や、ここまでくると犯罪としかいいようのない「いじめ」などある意味リアルな現実を丁寧に描くことで、ヴァンパイヤというイリュージョンが現実味を帯びて来る。
「モールス」という題名がふさわしいかどうかについては多少疑問を感じますが、これが原題なんだろうか。
いずれにせよホラー好きには見逃せない一冊。お勧めです。
ミレニアムの続きを読もうかなあと思いつつやめているのは、やはり「名前」の覚えにくさのせいでしょうか。面白いんですけどね。