第16回(2011/01/25)
2011年1月31日
「第16回樋井川流域治水市民会議」議事録
日 時 : 2011年1月25日(火)18:30~
場 所 : 福岡大学 文系センター棟15階第5会議室
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議題
1. 当仁中跡地における流出抑制
2. 樋井川流域のため池の現状と今後の課題
3. 源蔵池における治水対策・利用
4. ため池の堤防調査の手法
5. 市民会議の今後の進め方
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1. 当仁中跡地における流出抑制
発表者:九州大学 横内さん
○ 市民会議提言書での目標値:100㎜/hの雨で40%流出抑制のうち学校で5%。
○ 基本的な考え方
l 自分たちに出来ることから。
l そこに降った雨を外に出さない。
○ 当仁中学校跡地
l 敷地総面積18779㎡、うちグラウンド面積 10080㎡。草ヶ江排水区に占める割合1.36%。
l 草ヶ江排水区内の教育施設が占める割合は10.25%と学校における流出抑制を考えることには十分意義がある。
l 目標抑制量約1600㎥。
○ 計画:グラウンドを小堤で囲み貯留する
l 規定により貯留限界水深は0.3m。
l より効果的に貯留でき、グラウンド利用の妨げにならないように計画。
○ プラン1
l 最低点から+20㎝のところに高さ30㎝の小堤を築堤
l 貯留量879㎥、築堤距離261m
l 排水系統を工夫:木材を用いた浸透ドレーンなど
○ プラン2
l 排水溝の中にも貯める。貯留量430㎥。
○ プラン3
l 外壁と小堤の間にビオトープ(生物生息空間)をつくる。
l 子どもたちの環境教育
○ 今後
l 合計貯留量が目標貯留量1600mに届いていないのでそこをどうするか?
l 住民の方の意見として、「車が入れる構造がよい、排水溝に泥が溜まっている。排水オリフィスの工夫を」というのがあったので検討していきたい。
l 砕石の透水実験等行いたい。
【意見:渡辺】図面があるはずだから、地下の構造を考える。
福大も昔の図面を基にグラウンドをつくった。目詰まりがある。
2. 樋井川流域のため池の現状と今後の課題
発表者:福岡大学 田中さん
○ ため池は既存の貯留施設の有効活用ができる。
l ため池とは、主に灌漑用水の確保を目的として築造された。
また、樋井川流域のため池のうち7割以上が江戸時代以前に造られた。
l 将来、流域の農業用ため池のうち32%を洪水調節として利用する(平成8年)、とされていたが未だ未着手。
l 灌漑用水として利用されているため池は減少傾向にあり、このままでは消えゆく可能性がある。
○ 研究の目的
l 樋井川流域内のため池消失の実態を把握する
l 源蔵池の管理状況を把握し、 治水機能を具備したため池の保全に向けた課題を抽出する
○ 研究方法:旧版地図を用いて、ため池の個数、消失後の土地利用、
雨水流出状況の比較(大正15年~平成16年)を行う。ため池管理の状況把握する。
○ ため池消失の実態
l 昭和23年から30年に渡りため池が大幅に減少(85基→66基)
l 宅地化等によりため池が消失した面積149,121㎡。このうち71%が貯留能力をもたない。
流域全体では、かつてため池として雨水を100%貯留していたが、現在では79%しか貯留されず残り21%の雨水が流出してしまう。
l 土地利用変化に加えて上流のため池が宅地化した事も雨水流出量を増加させる要因の一つ。
○ 源蔵池の管理
l 管理者の高齢化、後継者問題
l 農政側と河川側の連携が取れていない。
l 堤防の老朽化が進行している。
l 昔は子供たちがため池で遊んでいた。
l 現在は17年間池干しが行われていない。
池干しとは、外来種の駆除やヘドロの除去による水の浄化を目的として、池の水を一度抜くこと。
3. 源蔵池における治水対策・利用
発表者:福岡大学 高橋さん
○ 問題点
l 堤防の老朽化。
l 排水量が少ない。
○ 灌漑用水と貯水
l 灌漑期に必要な水田への水量約1,820㎥。
l 灌漑用水として毎年約3万㎥(10段階のうち7段目)貯めている。
これを除いて約6万㎥貯水が可能。
○ 源蔵池の現状と課題
l 取水口からの流出量54㎥/h。12時間で650㎥程度。(条件による)
l 池面積に対し集水域が狭い。同じく南区に位置する有効貯水量106,700㎥の老司大池は集水面積22.3ha、源蔵池は7.9ha。
l あらかじめ水位低下ができない。
l 管理者の負担・不安を減らす
【質問】灌漑用水に3万トンもいるのか?
【回答:高橋】3万トンはこれまでの経験から。必要量は1日の必要量を灌漑期全体に換算した値。
【意見:島谷】雨が降れば、そのまま(池に貯めず)水田へ流れるから、実際はもっと使用量は低いはず。
【意見】農地法を改正し、農業用から洪水調節用に変えないといけない。ため池に対し必ず1枚水田が残っている。
【意見】今、ため池を活用する計画の可能性はあると思う。
4. ため池の堤防調査の手法
発表者:リバーテクノ研究会、スーパー川守
○ ため池整備(調査―設計―施工)
○ ため池の形態(2種類)
l 谷池:山間や丘陵地で谷をせき止めて造られたため池。
目的は貯水。堤体は高く短く、貯留量は多い。源蔵池は谷池。
l 皿池:平地の窪地の周囲に堤防を築いて造られたため池。
目的は貯水、用水の中継、洪水調節。堤体は低く長く、貯留量は少ない。
○ 要改修の判定
l 堤体からの漏水
l 堤体のクラック
l 堤体の余裕高不足
l 堤体の断面形の変形
l 高い浸潤線の位置 など
○ 調査
l 地質調査、土質調査
l ボーリング調査:堤体基礎調査
l 物理探査を用いた堤体調査:ゆるんだ部分を物理探査で探す
l その他のため池堤体調査事例:航空写真判読、水利用・水源調査
○ ため池防災データベースの活用
l 全国の70%がデータベース化されている。
【質問】実際の堤体崩壊で多い事例は?また、その後の改修方法は?
【回答】漏水、パイピングが多いと思う。まず応急で土のうを置き背後で堤体を改修する。
【質問】特に深刻な事例は?
【回答】新規でつくる場合、土地に制限がありカミソリのように細い堤体になり、強度が不安。
【質問】源蔵池を見て、問題はどこか?
【回答】実際に現地へ行ったことがないが、もし漏水なら見て分かる。
【質問】調査項目で肝心なものは?年数と費用は?
【回答】調査項目はそれぞれ。
(源蔵池の堤体は70~80mなので)横断2側線で調査した場合、約3カ月。
費用は要相談だが土質試験込み、解析なしで300~500万円。
【意見:山下】管理組合の方が壊れると言っていた。
5. 市民会議の今後の進め方
発表者:南畑ダム貯水する会 山下さん
○ 2010年1月28日に提言書提出。約1年たった。
○ 2月、3月は今までのまとめを行い、4月に再度提言をしてはどうか。
【意見】河川改修が最も大事。これに関して議論したい。県からの中間報告がほしい。
【回答:福岡県】適宜行いたい。現在、各校区ごとに説明をしている。ドーム辺りで2月頃工事に入る。
進捗報告に関しては2ヶ月に1回程度が良いのではないかと思っている。
(市民会議の世話人とそのように話し合った)だが、もちろん質問があれば答えたい。
【質問】下流からやるのはなぜか。
【回答:福岡県】上流で流下能力が上がると下流が危険となってしまうため。
【質問】今回の一番の被害は田島の潮止め堰付近。一番に潮止め堰を撤去すべき、そうすれば水位が下がる。
【回答:福岡県】今、効果的な方法を考えている。下流は護岸をいじらなくてもできるということもありはじめに行う。
上流は護岸の補強が必要で、今考えを詰めている。
【質問】5年で36億円全部使うのか。源蔵池の改修に回せば良い。そうすれば大きな効果を見込める。
【回答:福岡県】河川改修で全部使うが、それでも厳しい状況。ため池も河川も両方大切。
しかし、事業が違うので源蔵池に予算を回すのは難しい。