学部時代の乗船実習の様子
植物の特徴
植物はとても長生きで、切ってもまた伸びたり、芽を出したりする力を持っています。これは植物の「幹細胞」という特別な細胞が、何度も増えて新しい組織を作れるからです。この性質は、植物を小さく切って培地に植える「組織培養実験」でも見ることができます。条件を整えると、胚軸切片から新しい芽や葉が再び生えてきます。
具体的に取り組んでいること
この再生の仕組みにおいて、RNAの働きが重要だと知られています。その中でも、前駆mRNAの末端に「ポリアデニル化」という処理がされる過程に着目しました。これは、前駆mRNAの最後に「polyAテール」と呼ばれる修飾を付与することで、mRNAの分解を防ぎ効率的な細胞内輸送に機能します。この処理のゲノム上の位置が違うと、mRNAの長さや性質が変わり、どんなタンパク質がどれくらい作られるかに影響します。つまり、細胞が再生するかどうかにも大きく関わってきます。
mRNA:メッセンジャーRNA。DNAの遺伝情報をタンパク質合成器官(リボソーム)に伝令する。
このポリアデニル化を行う複合体が欠損した変異体は、下の画像のようにシュート再生が不全になってしまいます。私はこの変異体を使って、ポリアデニル化とシュート再生の関係性を明らかにしたいと考えています。
野生型: 突然変異に対し基本と考えられる表現型。
今後の展望
モデル植物であるシロイヌナズナを用いて、植物細胞の分化全能性発現を支える分子基盤を解明したい。将来的には、種子を用いることなく植物体を増やすことができる技術につながるかもしれない。