研究紹介

(環境システム学専攻・教員)

伊藤 有加

環境システム学専攻 地球環境システム学講座 特任助教

地下地質の情報から古環境を読み解く

沖積層と呼ばれる最も新しく現在も形成途中である地層の情報から、約1万年前からどのようにして現在の地形が形成されてきたのか?を研究しています。

現在、沖積層の上にはたくさんの建造物が立ち並び、多くの人々が生活をしているため特に都市部においては地層を直接みることはほとんどできません。しかし、このような地域では昔から鉄道、高速道路やビルの建設時および学術調査のために地面に穴を掘って地盤の状況や固さなどを調べるボーリング調査と呼ばれる地盤調査がおこなわれてきました。蓄積された多数の地質調査のデータは国や自治体で整備され、地盤情報データベースとして公開されています。

これらの地下地質の情報や遺跡の情報などを用いて、「地層学」という学問の解析手法に基づき、「この地域は過去どのような地形だったのか?」、「いつからこの地形はできたのか?」、「人間がどのようにして地形改変をおこなってきたのか?」など地層からこれまで知らなかった過去の情報を解読しています。これらは、防災、地下空間の利用、都市地下環境マネジメントなどをおこなう上でもとても大切な情報となります。

地盤情報データベースより作成した地質断面図の

ボーリング調査の例(カンボジアにて)

物理探査(電気探査)の様子。地盤の電気的性質を測定することで地盤状況や地下水の分布状況を把握することができる

人間活動が地表・地下環境変化に与えた影響

沿岸都市域では、様々な工業生産活動や都市開発などがおこなわれています。それに伴い地盤沈下や、沈下による微地形変化の発生に伴う排水不良、地下水の塩水化など地表・地下環境変化に様々な影響を及ぼしている可能性があります。

わたしたちは、様々な分野の研究者とともに地盤沈下が著しく水害が繰り返し発生している地域にて地理空間情報解析や数値モデル、現地調査に基づいて、水害要因の検討をおこなっています。また、地下水の塩水化の可能性がある地域では、物理探査的アプローチから地下水の淡水域と塩水域の分布の実態把握などの検討もおこなっています。