研究紹介

生命科学系・学生)

宮崎 日菜子

生命科学研究系 先端生命科学専攻 松永研究室 修士1年

植物細胞は、葉緑体を持つことで光合成を行います。学説では、大昔、ある真核生物が、シアノバクテリアという原始的な藻類を取り込んだことで、葉緑体を獲得したと考えられています(図1)。


実は、藻類が別の生物と共生するという現象は、現在でも自然界でよくあることです。例えば、チドリミドリガイというウミウシは、藻類を食べることで葉緑体を細胞内に取り込み、一時的に光合成ができるようになります(図2)。

これらの現象から、ある可能性を見えてきます。それは、他の生き物、つまり哺乳類や鳥類などの生物も、藻類を体内に取り入れることで、植物のように自分でエネルギーを作りだす能力を獲得できるのではないか、ということです。


そこで、私たちの研究室では、光合成をする動物細胞を作ることで、藻類が細胞内で共生する状態を実験的に再現し、どのようなメカニズムで共生が起こったのか、解明しようと考えました。光合成を行う動物細胞は、植物と動物、両方の特徴を持つ細胞、ということで、『プラニマル(Planimal ; Plant + Animal)細胞』と呼ばれています。

 これまでの研究では、藻類のゲノム(DNAが持つ遺伝子情報)と、動物培養細胞のゲノムを融合させた、『動植物ハイブリッド細胞』が作られました。しかし、この細胞は、藻類由来の遺伝子があまり発現していないことが分かりました。これでは、光合成をすることは期待できません。したがって、動植物ハイブリッド細胞には、光合成に関連する遺伝子を活発に発現させる何かが必要であると考えられます。


このような先行研究を踏まえ、私は、動植物ハイブリッド細胞で、藻類由来の遺伝子の発現を促す実験をしています。遺伝子の発現に重要な役割をするのは、転写因子群やRNAポリメラーゼなどの、転写や翻訳を行う酵素群です。私は、これらの酵素を動植物ハイブリッド細胞に導入することで、藻類遺伝子の転写量を増やし、藻類遺伝子の全体的な発現量を底上げしたいと考えています。