研究紹介

先端生命科学専攻・学生)

石田 悠華(いしだ ゆか)


新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻

人類進化システム分野 中山研究室 修士2年

研究内容は?


私は、ヒトの褐色脂肪組織(brown adipose tissues: BAT)という、熱を産生する特殊な脂肪組織の機能の個人差に着目し、BATの熱産生能力の多様性に関与する遺伝子や生活習慣等を探索する研究を行っています。
BATについて
ヒトの成人では、鎖骨上窩部や傍脊柱部にBATが局在しています(右図)。BATは、脂質を基質に熱産生を行うので、活性化すると太りにくい(脂肪が蓄積されにくい)ということが分かっています。
*右図出典:Jung et al.2019

どんな手法で研究するのか?


ヒトの形質のデータやゲノム試料の収集をはじめ、分子生物学実験、進化遺伝学的解析などの様々な手法を用いて研究しています。
一例)BATの熱産生を赤外線カメラを使って測定
19℃の寒い部屋に90分間滞在し、体温変化を調べます。BATが存在する鎖骨上窩部(白矢印)の体温は高いことが分かります。
一例)一塩基多型 (SNP)の遺伝型判定
DNAの塩基配列中には個人間に見られる一塩基単位での塩基配列の違い(SNP)があり、これがヒトの多様性を形成する1つの要因となっています。SNP遺伝型の違いによってBAT活性に違いがあるかどうかを調べます。

本研究の発展性


➀ 医療への応用

 BATの活性が高い人は、痩せやすい傾向にあることが報告されています。BATに活性化に関与する遺伝子を発見できれば、肥満やそれに伴って発症する生活習慣病などの治療や予防に役立つかもしれません。

➁ 進化研究

 BATでの熱産生は寒冷適応に役立っている可能性があります。BATの活性に関与している遺伝子を見つけることができれば、ヒトがどのように寒さに適応してきたのかを解明できるかもしれません。