研究紹介

自然環境学専攻・学生)

藤井 恵理奈(ふじい えりな)

環境学研究系 自然環境学専攻

自然環境評価学分野 奈良研究室 修士1年 

研究内容

樹木の根に共生する外生菌根菌(菌類で主にキノコの仲間)を調べています。対象樹木の日本の分布地を網羅的に調査して、地域ごとに菌類の種数を比較したり、菌根菌がつく決定要因を明らかにしていく予定です。

菌根菌とは?

植物の根のほとんどは何かしらの菌類と共生し、植物からは光合成で作った炭水化物を、菌類からは土壌中の水分や養分を与えお互い助け合って生きています。菌根菌の菌糸は植物の根の細根よりも細いのでより多くの養分等を吸収できたり、他の菌根菌ネットワークと繋がることでそちらからも養分を貰うことができます。菌根菌にはいくつかのタイプがありますが、私は根の外側に菌根を作る外生菌根菌を調べています。

根粒菌と共生もするハンノキ属

私の研究対象はミヤマハンノキという樹木でカバノキ科ハンノキ属に属しています。標高が高く、日当たりの良い場所や崖等に生え、火山噴火や開発跡地等で栄養の乏しいやせ地に最初に侵入してくる樹木です。カバノキ科は外生菌根菌を作る菌類と共生しますが、なかでもハンノキ属は根粒菌と共生もしています。

根粒菌で有名なのは主にマメ科につく細菌の仲間です。大気中の窒素を利用して植物が使える状態にしてくれるので窒素固定細菌と呼ばれています。大気中に80%も含まれる窒素は植物の生長に欠かせない必須栄養素ですが、直接利用できないので多くの植物は窒素不足に悩まされています。特に栄養の少ない土地ではなおさらのこと…。しかし、根粒菌と共生しているハンノキ属は窒素を得ることができ、やせ地にも侵入していくことができるのです。

研究は何につながるの?

ミヤマハンノキは標高が高い場所に生息しているので、他の地域と隔離しやすい状況にあります。特に地球温暖化の影響で今後高山植物の生息する標高が上がっていき、生息地が狭まる可能性もあると言われているため、現状把握が必要です。

また、ミヤマハンノキは材としての価値はほぼありませんが、落とした葉には栄養が多く残っていて、その土地を豊かにしてくれます。根元から萌芽もしやすいので、雪崩等を防ぐはたらきも期待できます。