研究紹介
(メディカル情報生命専攻・学生)
Fig1.ミトコンドリア(Molecular Biology of the Cell_6th)
黄 睿媛 (HUANG RUIYUAN)
メディカルサイエンス群 メディカル情報生命専攻 分子医科学分野 富田野乃研究室 D1
哺乳類ミトコンドリア翻訳因子に関する研究を行っています。
ミトコンドリア疾病の原理を解明することを目指しています。
ミトコンドリアと細菌の繋がり
Fig2.ミトコンドリアの誕生(Molecular Biology of the Cell_6th)
ミトコンドリアの歴史…
ミトコンドリアは細胞小器官として働いているが、ミトコンドリアには自分自身の遺伝子「mtDNA」が存在している。
mtDNAを翻訳するため、ミトコンドリアは自分の翻訳システムを使わなければならない。
ミトコンドリアのタンパク質翻訳システム
ミトコンドリアは細菌由来であるため、その特別な翻訳システムは真核細胞の翻訳システムより、細菌の翻訳システムの方に似ている。なので、ミトコンドリアの翻訳システムに関する研究は主に細菌の翻訳システムを参考している。とはいえ、ミトコンドリアのユニークなところが多い。
すべての生物の翻訳は開始、伸長、終止という三つの段階がある。右側の図が示しているのは、翻訳伸長の過程である。EF-G(Elongation Factor-G)という伸長因子はtRNAを移動させてペプチド伸長を促進する役割を果たしている。それ以外、EF-Gは翻訳終結を促進する機能も持っている。
私が研究している哺乳類ミトコンドリアのEF-G1mtとEF-G2mtは、このEF-Gのホモログで、ペプチド伸長と翻訳終結の役割をそれぞれ分担している。EF-G1mtとEF-G2mtの遺伝子変異が疾患や薬剤の副作用の原因となることが知られている。また、 EF-G1mtとEF-G2mtはEF-Gが持っていない抗生物質への抵抗性を持っている。この因子の特別な役割を分子レベルで理解できたなら、様々なミトコンドリア疾病の原理とそれに関わる薬物の相互作用を理解することも可能となるでしょう。
Fig3.翻訳伸長(Molecular Biology of the Cell_6th)
研究方法
私が所属している富田野乃研究室は、PURE system(再構成型無細胞タンパク質合成系)を利用して、酵母と哺乳類ミトコンドリアの翻訳システムを研究している。
このシステムを人が操る、欲しいタンパク質だけを作る試験管内の人工細胞だと想像してみてください。(ただし、この‘人工細胞’はタンパク質翻訳の機能だけを持っていて、細胞膜などは持っていない。生きていないロボットみたい)
とある因子の機能を研究したいなら、この因子と関わる組成を変えてPURE systemに与え、合成されたタンパク質を分析すればいい。
このシステムはほぼすべてのタンパク質合成系に関わる研究に適用されている。それ以外、異常翻訳の解析や、抗生物質/治療薬の効果検討などに関する研究にも大活躍している。
Fig5.Yeast Translation system(Nagai,2021)
酵母翻訳システムと似たように、ミトコンドリアの翻訳因子、ミトコンドリアリボゾーム、大腸菌由来のtRNAを使ってミトコンドリアの翻訳システムを作る。