研究紹介

生命科学系・学生)

河村 汐莉 (かわむら しおり)

生命科学研究系 先端生命科学専攻 資源生物創成学研究室 修士1年

生物は共通して細胞の中に遺伝子を持ち、体内で遺伝子複製、タンパク質翻訳を行い、生長し子孫を残します。一方で、細胞生物でないとされている「ウイルス」も遺伝子を持っていますが、宿主細胞を利用して増殖し、時に宿主に病気を引き起こします。植物にもウイルスが存在し、宿主植物に感染し斑点や萎縮などの病気を引き起こすことで知られています。

植物は、ウイルスが感染するとウイルス遺伝子の発現を抑制するしくみを持っています。このような防御機構をサイレンシングと呼びます。また、ウイルス感染に対してサイレンシングが誘導されることを "virus induced gene silencing "  (VIGS) と言います。この "VIGS" を利用して、植物遺伝子の一部をウイルス遺伝子に組み込み、植物の標的遺伝子の抑制が行われてきました。これまで多くの例が報告されていますが、マメ科植物ではほとんど成功例がありませんでした。

(楊娜、平成28年度先端生命科学専攻修士論文より) 

そこで、我々の研究室では、マメ科植物に感染するラッカセイ矮化ウイルス(PSV)を用いて、植物の遺伝子抑制を調べています。これまで、モデル植物であるベンサミアナタバコ、マメ科のインゲンマメラッカセイに対して、色素合成に関わるphytoene desaturase (PDS)遺伝子の "VIGS" に成功しました。

このような研究結果を踏まえて、私は「ラッカセイのアレルゲンタンパク質の発現抑制」に取り組んでいます。主要なアレルゲンタンパク質 arah2 の発現を抑制し、ラッカセイの品質を評価につなげたいです。最終的にアレルゲンタンパク質の少ないラッカセイの開発を目指し、日々研究に取り組んでいます