研究紹介
(環境学系・学生)
青山 華子(あおやま かこ)
環境学研究系 自然環境学専攻 海洋生命環境学分野 修士2年生
研究の対象生物
コユビミドリイシAcropora digitifera
サンゴの自然免疫機構を解明するために、自然免疫において重要な役割を担う「抗菌ペプチド」について研究を行なっています。
【①海洋生態系に必要不可欠なサンゴ礁】
「生命のゆりかご」とも呼ばれるサンゴ礁には全海洋生物の約25%が生息しています。サンゴ礁の中核を担うサンゴは、海洋生物に棲み場所を提供するだけでなく、餌として利用されることで、食物網の観点からも生態系に必要不可欠な動物だといわれています。
【②進行するサンゴの白化】
サンゴは地球温暖化による水温上昇などのストレスを受けると、体内に共生している褐虫藻が消失して白化状態になります。褐虫藻は光合成によりサンゴへ栄養を供給しているため、白化が長期間続くとサンゴは死滅します。
【③細菌性白化について】
海水温上昇により、サンゴの免疫が低下することや病原細菌の毒性が高くなることで、サンゴの病気や白化が急増していることが報告されています。このような、病原細菌によって引き起こされるサンゴの白化を「細菌性白化」といいます。細菌性白化の予防や治療を行うためには、サンゴが病原体に対してどのような免疫応答を行なっているのかについて明らかにする必要があります。
【④病原体に対するサンゴの免疫応答について】
無脊椎動物であるサンゴは獲得免疫を持たず、自然免疫のみで病原体から身を守っています。自然免疫は「①病原体の認識」、「②細胞内シグナル伝達」、「③抗菌ペプチドなどの免疫応答」の3つの段階に分けることができます。
抗菌ペプチド(Antimicrobial peptide; AMP)は、病原体を直接攻撃をする特徴があり、自然免疫において重要な役割を果たしています。サンゴが病原体に対してどのような免疫応答を示しているかを明らかにするためには、抗菌ペプチドを特定し、その機能を解析することが重要だと考えられています。
そこで私はサンゴの抗菌ペプチドの特定と機能解析を行い、病原体に対するサンゴの免疫応答を明らかにして、サンゴの保全に貢献することを研究の目的としています。