研究紹介

環境システム学専攻・教員)

環境システム学専攻 / 環境安全管理室 助教 
主原 愛

私たちが目にする新しい技術やモノの多くは、「こうしたらどうなるのかな?」というひらめきが原動力とな実験室での試行錯誤を通して生み出されています。大学の実験室から生み出されることも少なくありません。大学の実験室では、多様なテーマを対象に、新しくて面白い何かを明らかにしようと活動されています。このような大学の実験室とは、一体どのような生態(実態)なのでしょうか。科学的なアプローチを用いて、実験室を丸ごと解析したいという思いで研究をしています。

◆ 人の解析

 実験者が実験室内のどこどんな風見ているのかについて、視線解析を行ったり、実験者の行動に影響を与える意識について、実験者の意識に関するアンケート調査統計学的に解析したりしています。

 視線解析では、実験室内で見られやすい個所の特徴が抽出され、また、危なさに関する簡単な意識づけにより、実験者の視線の動きに大きな変化を生じることが確認されています。

 安全意識に関する研究では、実験者の研究分野や国籍の集団で、安全意識に関して特徴的な傾向を抽出しました。実験者の個人差だけでなく、バックグラウンドに基づく意識が存在していることも明らかとなっています。

◆ 物の解析

 実験室に置かれた物がどんな状態にあるのかについて、実験室内の写真統計学的な解析や実験室内のWi-fi電波強度時系列変化を解析したり、人の危なさの判断を定量化して物の危なさを評価する研究を行ったりしています。

<物の写真1枚から見える実験室の実態>
 化学物質の排気に一般的な装置に着目した検討では、装置の写真解析により空間占有率などから装置の使われ方パターンを抽出しています。


<実験者が見た時間と危なさ認識による物の危険>
 実験室内にある物の危なさは、危ないと感じる度合いと注視する時間で定義すると、特徴的なタイプがあることを明らかにしています。

◆ しくみの解析

 実験室を安全に保つために、ソフト面で様々なきまりしくみがありますが、その有効性について自然言語処理手法を用いて検討しています。

 実験室内の状態を安全に保つために、リストを用いたセルフチェックや専門家による第三者チェックするしくみがあります。このしくみと、実験室で発生する事故の関係性について、テキストマイニングを用いた手法で解析しています。

◆ 実験室丸ごとの解析から実験室の評価指標の開発へ

 実験室の実態を明らかにするにあたり、実験室の安全という観点で、客観的に評価する指標の開発を進めています。これまで進めている解析手法を組み合わせて、実験室に関する定量化データを収集し、そのデータに対して深層学習手法を用いた分析を行って、実験室の実態を判断できるような指標の抽出を目指しています。

 また、各研究から得られた基礎的知見に基づき、実験に関する安全教育安全管理手法の開発実装にも取り組んでいます。

研究は、環境システム学専攻 大島研究室と共同で進めています。