研究紹介
(メディカル情報生命専攻・学生)
比嘉 黎(ひが れい)
メディカル情報生命専攻
病態医療科学分野 内丸研究室 修士2年
ATL細胞に特徴的なflower cell。核が花びらのような形をしています。 Blood (2010) 115 (9): 1668.
成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)とは
成人T細胞白血病リンパ腫(以下、ATL)は、白血球の一種である「T細胞」ががん化する病気で、いわゆる血液のがんです。1977年に初めて報告されました。当時はまだ何が原因で発症するのかわからない病気でしたが、1981年にヒトT細胞白血病ウイルス(以下、HTLV-1)が原因ウイルスであることが報告されました。
ATLの不思議なところ
HTLV-1は赤ちゃんの時に母乳を介して感染することが報告されています。ATLの発症年齢は50~60歳ですが、発症するのは感染者のうち5%程度です。
私がイメージしていた一般的なウイルスは、感染後すぐに風邪症状などを引き起こすものでした。HTLV-1を初めて知った時、無症状のまま数十年経った後、血液のがんを引き起こすことに驚きました。
では、なぜ数十年もの間気づかれずに、一部の人だけATLを発症してしまうのでしょうか?
なぜATLを発症するのか?
実は、この疑問は完全には明らかになっていません。
少しずつわかってきたことは、HTLV-1は感染していることが免疫システムにバレないようにHTLV-1自身の遺伝子を少しの時間だけ発現させたりしているようです。また、ゲノム解析技術の発達によってHTLV-1感染細胞では、たくさんの遺伝子変異が見つかりました。
私の研究
私は、ATLを発症する人がどのように発症していくのかを研究しています。ATLにはまだ有効な治療薬がありません。しかし、国内に100万人弱のHTLV-1感染者がいるので、よく効く治療薬あるいは発症しないようにする薬の開発が必要です。ATLで悲しむ人がいなくなるように、日々研究に取り組んでいます。