淺田祐実(Asada Yumi)
新領域創成科学研究科 物質系専攻
御手洗研究室 修士1年
金属は様々な分野で使うことのできる材料
金属は以下のような特徴から、多岐にわたる分野で使用されています。
①強度と耐久性:非常に強く、摩耗や衝撃に対して優れた耐久性を持っています。
②加工の柔軟性:様々な加工技術(切削、溶接、鍛造など)を用いて、複雑な形状や高精度な部品を作ることができます。
③熱伝導性:熱を伝えやすい性質を利用した製品へ応用することができます。
④リサイクルによる再利用:リサイクルが容易です。再利用することで資源の節約につながり、環境への影響を抑えられます。
高温形状記憶合金とは?
複数の元素が混じった金属を合金といい、その中でも私は形状記憶合金に関する研究をしています。
形状記憶合金は、変形しても温度を上げることで、元の形に戻ることができる材料です。元の形状へどれくらい戻ったかを示す形状記憶効果が高いほど、形状記憶合金として有用です。現在、100℃以下では形状記憶効果の高い合金が応用されていますが、高温(約200℃以上)では強度不足により応用が難しい現状があります。
高温でも強度の高い形状記憶合金を作製するため、私たちの研究室ではハイエントロピー合金に着目しています。ハイエントロピー合金とは、異なる元素の原子をほぼ等原子比で混合した合金です。ハイエントロピー化した合金は、構成元素がランダムに配置した固溶体(ある金属元素が別の金属元素の結晶格子に溶け込んだ、均一な固体 )を形成します。一般的な合金と異なり、ハイエントロピー合金は大きな格子歪みを引き起こすため、強度が高いと考えられています。
一般的な合金
ハイエントロピー合金
研究テーマは?
高温で使用できる形状記憶合金を作るためには、どんな組織(微細な構造)が最適か、その組織を作るためにはどんな組成(各元素の割合)で作製を行うといいかを研究しています。
私は、チタン、ニッケル、ハフニウム、パラジウムの4種類の元素を使った合金を扱っています。
どんな方法で研究している?
大まかには、合金を作製して、作成した合金の性質を調べるという流れです。
複数種類の金属を溶解して、期待する特性を持たせるための熱処理を行い、合金の作製を行います。キャンパスには、作成した合金の性質を調べることのできる様々な機械があります。結晶構造(原子や分子の配置の仕方)や、組織・組成を調べたり、形状記憶合金が元に戻る温度や、形状記憶効果を測定したりします。
高温試験機(作成した合金を圧縮し形状記憶効果を測る)
どう役立つ?
現在、実用化ができている形状記憶合金では、TiNi合金を例に挙げると、使用できる温度は100℃以下。これが高温(約500℃以上‼)で使用できると、航空機のジェットエンジンなど高温となる場所での軽量化・高性能化などに役立つと考えられています。
エンジンの模型