↑ 学部時代は部活動やフランス留学、
国際交流などもしていました!
新領域創成科学研究科・メディカル情報生命専攻 修士1年
医科研 癌防御シグナル分野 中西・西山研究室
研究テーマ:UHRF1を標的にしたPROTACの開発
↑ 研究室で同期の誕生日をお祝いしました!研究科を超えて仲良しです!
ヒトの体はおよそ37兆個の細胞からできています。その一つひとつの細胞には細胞核があり、その中には遺伝子の本体であるDNAが約60億塩基対(1細胞あたり)入っています。DNAが遺伝情報として働くためには、特定の部分がRNAに転写、さらにタンパク質に翻訳される必要があります。細胞内で実際に働くのはタンパク質であり、DNAの領域の中でもタンパク質をコードする領域を「遺伝子」と呼び、ヒトには約2万個の遺伝子が存在します。
体内の細胞はすべて同じDNAを持っていますが、細胞の種類によって異なる遺伝子が選ばれて転写・翻訳されます。例えば、肝臓では肝細胞に必要な遺伝子が、神経では神経細胞に必要な遺伝子が使われています。このように、同じDNAを持っていても、どの遺伝子が使われるかによって細胞の性質や役割が異なるのです。
この遺伝子の発現を調節しているのが、プロモーターやエンハンサーと呼ばれる配列です。これらの配列は遺伝子のスイッチのような役割を果たし、特定の遺伝子がどの細胞で、いつ働くかを決定しています。
プロモーターやエンハンサー領域で転写因子の結合を阻害し、遺伝子の発現を抑制する役割を果たすのが、
「DNAのメチル化」です。DNA全体をゲノムと呼ぶことに対し、塩基配列の変化を伴わない後天的な化学的修飾により、遺伝子の発現を変化する機構を指すエピゲノムの一部として、DNAのメチル化は、遺伝子のオン・オフを調整する大切な役割を果たします。同じゲノムを持つ双子の容姿や病気にかかりやすさが異なることを考えるとわかりやすいと思います!
(*図中のMeはメチル化)
遺伝子の発現制御を担うDNAのメチル化が正常に行われることで、細胞の成長や分化が正しく制御されます。しかし、がん細胞ではこのDNAメチル化が異常になることがあります。例えば、本来働くべき遺伝子が過剰にメチル化されて抑制されたり、逆に抑制されるべき遺伝子がメチル化されずに働き続けたりすることで、異常な細胞の増殖が引き起こされるのです。このため、DNAメチル化の異常を標的にした治療法が、がんの新しいアプローチとして注目されています。
実際に、DNAのメチル化の重要因子であるDNMT1を標的にし、異常なメチル化を解消するための治療薬は開発されています。しかし、DNAに損傷を与えることも報告されています。そこで、DNAにダメージを与えない治療薬の開発に向け、同じくDNAメチル化の重要因子であるUHRF1が治療標的として注目されています。
ユビキチンプロテアソーム系を用いて、さまざまなターゲットタンパク質を分解することのできるツールと注目される PROTAC (Proteolysis Targeting Chimera) を設計し、UHRF1を分解する方法の確立を目指しています。