金パラ高騰を考える

【第1回】 逆ザヤ「10年で250億円」

ロングスパンブリッジ大赤字

2019.11.15

「金パラの値段が上昇していないか、いつも気にしている」。こう話すのは大阪市内で開業するT先生だ。あるメーカーの金パラ30㌘入りの商品は2019年11月に6万6千円台まで上昇した。わずか1年間で1万8千円以上もの値上がりだ。あまりの高騰にT先生は治療の際、金パラを使うことにためらいもあるという。

金パラの上昇を受けて政府は同年10月1日、1年半ぶりに保険材料価格を改定した。1㌘あたり1458円から217円増の1675円に引き上げた。しかし、市場価格は1㌘1900円台を推移する。この改定では不採算が解消されないのは誰の目にも明らかだ。T先生は「ロングスパンブリッジなら20㌘くらい使うこともある。非金属では代用できないため、金パラ代だけで5000円以上の赤字だ」と憤った。

価格の上昇に追いつかない

金パラの高騰の背景にはパラジウムの価格上昇がある。パラジウムは産出国がロシアや南アフリカなどに限られ、ガソリン車の触媒にも使われている。排ガス規制への需要増や投機資金の流入に伴い、10年間で6倍も値上がりした。高騰を続ける金パラに政府の価格改定が追い付いていないのが実態だ。

歯科医療界全体で金パラの不採算による損失はどれだけの規模になるのか。10年間の金パラ総出荷量総額と保険価格総額の差を試算した浦川修氏(福岡県歯科保険医協会副会長)によると、「この10年間に250億円余りの逆ザヤが生じている。実働している開業医一人あたりでみれば少なくない額だ」と指摘する。

なぜ公的医療保険を担う歯科医師が金パラ高騰の負担をしなければならないのか。次回は材料価格改定のカラクリを解説する。