2019.12.5
「随時改定」は、金パラの高騰による販売価格と保険診療上の告示価格との乖離を緩和するために設けられている。2年に1回の「基準材料価格改定」に加え、診療報酬改定の年の10月に1回目、翌年の4月に2回目、10月に3回目と次の診療報酬改定までの間に最大3回「随時改定」が実施される。
しかし、この「随時改定」には多くの欠陥がある。
まずは改定実施の条件である。厚労省は改定を検討する上で、金属の素材価格(金・銀・パラジウム)の変動を勘案した試算価格を示し、現行の告示価格からの変動率を計算する。この変動率が±5%を超えなければ改定が実施されないのだ。しかも、同省は金属素材価格から合金の価格を推計しているため、実際の金パラの市場価格を反映したものになっていない。
さらに随時改定には変動率を算出するための参照期間に問題がある。例えば、2018年10月の随時改定時には、18年1月〜6月の6カ月間の素材価格の平均値で算出する。そこで±5%の基準を満たさずに改定が見送られた場合、次回19年4月の随時改定時には18年1月〜12月の1年間の素材価格の平均値で計られる。そのため、価格が急上昇する場合には、いっそう乖離が大きくなるのだ(図)。
協会・保団連は厚労省に対し、随時改定における「±5%増減」ルールを見直し、販売価格と告示価格の乖離を生まない措置を講じるよう求めている。
金パラに不採算が生じる要因は、投機目的の貴金属が含まれるため価格が安定しないことにある。「基準材料価格改定」や「随時改定」では、乖離の部分的緩和にしかならない。
保険で良い補綴物を安定供給するには、金パラの代替材料の活用や補綴物維持管理料の見直しなど、より総合的な対策を視野に入れた議論が必要といえる。