個別指導の実相

【第3回】中断 大綱逸脱の患者調査も

2019.8.25

個別指導の指摘事項をまとめ た近畿厚生局の文書

個別指導の重圧は指導官の罵声や大量の持参物だけではない。

疑心暗鬼に陥る

本来2時間の時間内に指導を終えることが理想だが、厚生局の“裁量”で指導を「中断」し、日を改めて再開するケースが後を絶たない。中断の理由は「提出書類の不備」が多くを占める。なかには指導官の〝思惑〟通りに進まなかったがために中断したと思われる事例まであるという。

ひとたび中断すれば、歯科医は「いつ再開されるのか」「監査に移行するのか」といったプレッシャーにさらされる。

自分が置かれている状況が把握できずに疑心暗鬼に陥り、萎縮診療に追い込まれる人が少なくない。2006年に東京では、指導再開まで9カ月放置された歯科医師が、再開後に自ら命を絶った事件も起きている。

犯罪捜査まがい

指導大綱には中断の規定がないにもかかわらず、なぜ横行するのか。厚生局が中断する目的の一つに患者調査がある。大阪では、厚生局が小学生の患者に対して電話で治療状況を尋ねた事例まであった。もはや保険ルールの周知徹底という指導の主旨から逸脱し、犯罪捜査まがいの異常な調査が行われているとみるべきだろう。

そもそも指導大綱では、患者調査ができるのは指導終了後、「不正又は不当が疑われ、患者から受療状況等の聴取が必要と考えられる場合」に限られている。厚生局は大綱を逸脱したまま患者調査を実施しているといえる。

この間の協会・保団連の度重なる要請を受け、厚生局は中断から3カ月以内に指導を再開するようになった。保団連近畿ブロックは、▽合理的理由がない場合の中断の中止▽やむを得ず中断する場合は指導再開時期の明示▽患者調査の中止――など、さらなる改善を求めている。