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身近な雇用トラブル
社会保険労務士・桂好志郎/イラスト・辻井タカヒロ
社会保険労務士・桂好志郎/イラスト・辻井タカヒロ
【質問】資格手当を多く支給していました。過払い分を請求できるでしょうか。また支払いに不足があった場合は、次回の支給日でいいですか ?(30代・男性)
【回答】給与が過払いになっていたことに気づくことがあります。この場合に、請求できるかどうかですが、正当な理由がなく利益を受けることを「不当利益」といい、民法では、このような不当利益を受けた者に対して返還する義務を負うことを規定しています。当然ですが、医院から請求があった場合は支払う義務があります。
労基法でも「過払いとなった前月分賃金を当月分の賃金で清算する程度は、賃金それ自体の計算に関するものであるから、違反にならない」としています。
また最高裁判決は、かかる賃金控除が認められる具体的条件として、①相殺(カット)は、過払いのあった時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に密着した時期においてなされること②あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額に渡らないとか、要は労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合であること――の二つを示しています。
支払った側の過失の程度や返済方法について考慮し、無理のない額、返済方法を考えることになります。
労基法は、賃金が毎月確実に職員本人の手に渡るように、賃金の支払に関する原則を定めており、そのひとつに全額払いの原則があります。
全額払いの原則とは、職員が受け取るべき賃金については、その全額を支払わなければならないことになっています。(例外は法令に別段の定めがある場合など)
したがって、不足額の清算は、次回の給料でするのでなく、直ちに支払う必要があります。
(社労士・桂好志郎)