個別指導の実相

【最終回】結果通知 罰金科す場に変質

2019.9.15

協会の個別指導対策講習会

個別指導の結果通知を見つめ、男性は肩を落とした。文書には「再指導」の文字。「きちんと持参物を準備し、指導官の質問にも誠実に答えられたと思います。不備な点も反省し、改めることを約束したのに」。困惑しながらそう語った。

判定基準あいまい

大阪の場合、被指導者の3~5割が再指導になっている。指導結果は、▽要監査▽再指導▽経過観察▽概ね妥当――で通知されるが、再指導と経過観察がほとんどだ。厚生局は結果の理由を明らかにしていないため、何が再指導の“決め手”になったか分からない。

指導大綱では、「再度指導を行わなければ改善状況が判断できない場合」を再指導、「(適正を欠く部分が)軽微で(略)改善が期待できる場合」を経過観察、「概ね妥当適切である場合」を概ね妥当としている。判定基準としては極めてあいまいだ。

指導官の裁量によって結果が左右されるのではないか。そんな疑念を抱く象徴的な事例が「概ね妥当」の件数だ。大阪では過去10年にわたって皆無に等しいが、他の都道府県では一定数を占める。同じ指導大綱に基づいて行われているにもかかわらず、大阪の異常さが際立っている。

自主返還を迫る

指導結果とともに通知されるのが、改善すべき事項と返還すべき事項だ。改善事項は、診療報酬の算定などに問題があった部分を列挙したものだ。返還すべき事項は、いわゆる「自主返還」を求める項目だ。

指導では当然のように自主返還が指示されるが、診療報酬の返還請求権を持つのは保険者であり、厚生局に権限はない。だからこそ保険医療機関の任意による「自主返還」という形になっている。ところが、厚生局は任意の協力との原則に反し、1年分のカルテやレセプトの点検を迫り、「返還額が少ない」などと半ば強制している。

歯科疾患管理料では、実際に検査して管理計画を策定したのにカルテ記載の一部が抜けただけで返還に至ったケースがあった。診療行為そのものを取り消すような自主返還は言語同断だ。保険のルールを学ぶ機会に過ぎない個別指導が、罰金を科す場に変質している。

保団連近畿ブロックは、指導結果理由の明確化とともに、自主返還については被指導者の自主性を尊重するよう求めている。