社労士が解決!
身近な雇用トラブル
社会保険労務士・桂好志郎/イラスト・辻井タカヒロ
社会保険労務士・桂好志郎/イラスト・辻井タカヒロ
【質問】注意してもまた同じことを繰り返すので、始末書を書くように指示しましたが、弁解ばかり、最後は拒否します。始末書を提出しないことをもって、処分できますか。(40代、男性)
【回答】
「労働者は使用者から身分的、人格的支配を受けるものではないので、謝罪を強制することはできない」(丸住製紙事件)とされています。ですから始末書の不提出をもって再度処分することはできません。この場合、報告書やてん末書ならば業務命令としてできます。強要とは、一般的に長時間であったり、繰り返したり、強く詰問したりすることなどが該当すると思います。
弁解ばかりの始末書は突き返したい気持ちになりますが、「無理やり書かされた」ことや、注意しても反省しようとしない証拠ともなります。返す場合もコピーをとってください。
「このたびの一件。・・」、これではなんのことかわかりません。なによりも事実を正確に押さえること。いつ、どこで、どのようなことを、業務への影響はなどを具体的に記載した上で、その事に対する反省と今後の対策、また作成日も忘れないようにしましょう。
始末書は、口頭の注意でも改善されない場合などに提出を求めると思いますが、その主な目的は再発防止と職場の秩序回復にあると思います。感情的になるのでなく、冷静に対応したいものです。当然ですが、どの職員に対しても公正に対応しているかも問われます。
始末書を安易に乱発するのでなく、その前に方針の徹底、業務に関する教育、援助が十分であったかどうか、自己点検することも大切なことです。
(社労士・桂好志郎)