カジノ

幻想の経済効果


鳥畑与一氏(静岡大学人文社会科学部教授)に聞く

「南国の楽園」ホテル・マンダレンベイ

第6回 虚飾に満ちた歓楽街~ラスベガス訪問記(上)

カジノを主要産業として発展してきた街・ラスベガス。2017年10月に現地を視察した鳥畑与一氏のリポートを掲載する。

ラスベガスの中心地ストリップ地区南端のマンダレイベイでミュージカル「マイケル・ジャクソン・ワン」を観て外に出ると、道路の向かい側で野外コンサートが行われていた。生の歌声が心地よい。今からでも入れるだろうかと入り口を見ると身体検査と共にチケット確認をしていた。この2日後に乱射事件の惨劇の場となるとは想像しようもなかったが、そこから観光客で溢れる大通りをニューヨークニューヨークなどの巨大カジノホテルを眺めながら歩くとカジノで治安が乱れるというのは再考が必要だろうかと自問する自分がいた。


施設に圧倒

有名なエンターテイメント集団・シルクドソレイユを中心に各ホテルは様々なショーを専用シアターで連日催し、ベラッジオの噴水ショー、ミラージュの噴火ショー、サーカスサーカスの無料アトラクションは言うまでもなく、ピラミッドそのものがホテルのルクソールなどストリップ地区の各ホテルの独創的な建築物には感嘆させられた。高級レストランやショッピング街も欧米中心の観光客で溢れ、LVサンズのベネティアンやMGMのマンダレイベイの巨大かつ豪華なMICE(会議・展示場)施設にも圧倒された。ラスベガスがエンターテイメントとMICEで脱カジノの統合型リゾート化に成功した街に見えてくるのは事実であった。


賑わいと閑散

しかし、各ホテルのMICE施設はがら空きの状態であった。市が運営するコンベンションセンターも同様であった。稼働率はどうなのか? 市は公開しないと回答してきた。治安もバスに乗ったときチケットを点検する「車掌」が武装しているのに驚いた。大通りを銃販売や売春の広告車が走り回る一方で、ホテル以外の催し物入り口での武器チェックは厳しく警官も多かった。カジノでの置き引き等の犯罪も多発しているとのことだった。賑わいも大通りを離れると閑散としており、ダウンタウンのカジノ街の向こうは閉鎖したモーテルばかりであった。この奇妙なアンバランスさに、この街は本当に繁栄しているのだろうかと去来した。

カジノ~幻想の経済効果 鳥畑与一氏(静岡大学教授)に聞く:大阪歯科保険医新聞2017.9.25~2017.11.25©大阪府歯科保険医協会