社労士が解決!
身近な雇用トラブル
社会保険労務士・桂好志郎/イラスト・辻井タカヒロ
社会保険労務士・桂好志郎/イラスト・辻井タカヒロ
イラスト・辻井タカヒロ
【質問】職員に突然退職されると困るので、就業規則で「医院の承認を得なければならない」と規定したいと考えていますが、有効ですか(30代、男性)
【回答】民法では、期間の定めのない契約はいつでも解約の申し入れができ、「雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」(民法627条1項)と定められています。
ただし、月給者の場合は、当該給与計算期間の前半に申し出た場合、当該給与計算期間の終了日、後半に申し出た場合、次期給与計算期間の終了日に契約が解消することになります。
期間の定めのない雇用の場合、医院の承認がなくても、退職の申し出をした日から起算して14日を経過したときは退職となります。就業規則で次のような記載が多いのもそのためです。
第○条(退職) 前条の定めるもののほか、職員が次のいずれかに該当するときは、退職とする。①退職を願い出て医院から承認されたとき、又は退職願を提出して14日を経過したとき
裁判例でも「・・解約申入れの効力発生を使用者の・・承認にかからせることを許容すると・・承認がない限り退職できないことになり、労働者の解約の自由を制約する結果となる・・効力を有しないと解すべきである」(高野メリヤス事件)となっています。
少人数の医院では、1人欠員が出れば業務に大きな支障が生じます。やむを得ない事情で退職するにしても、少なくとも「引き継ぎ」だけはきちんとやってもらわないと困ります。だからこそ院長として、日頃の労務管理、年休の運用のあり方等がどうであったか考えてみて、今後に生かすことが大切ではないでしょうか。
(社労士・桂好志郎)