――どのような方法で幹細胞を培養していますか。
採取した幹細胞をそのまま移植すると幹細胞のなかに混在する分化した前象牙芽細胞によって象牙質が形成され、石灰化してしまいます。歯髄を再生させるためには神経と血管を誘導する能力の高い細胞を分取する必要がありました。
私たちは、幹細胞は遊走能が高い事に着目し、「幹細胞膜分取法」という特殊な培養方法を開発しました(図3)。この方法によって安全で効率的かつ既存の方法よりも安価に必要な細胞を分取できるようになりました。
――幹細胞とG-CSF製剤を一緒に入れる意味はどこにありますか。
幹細胞だけでなく、G-CSF製剤と一緒に投与することで再生効果が飛躍的に高まります。組織再生に必要な細胞を根管内に呼び込むためには、まず移植した幹細胞自身が生き残らなければなりません。細胞にはアポトーシスという自死機能があり、G-CSF製剤と一緒に投与することで、アポトーシスを抑制します。
また、幹細胞だけを投与した場合、組織再生のために呼び込んだ細胞が根管外に漏れ出てしまいます。G-CSF製剤と一緒に投与することでより多くの細胞を呼び込み、細胞を根管内にとどめることができるのです。