カジノ

幻想の経済効果


鳥畑与一氏(静岡大学人文社会科学部教授)に聞く

香港の投資銀行のリポート。海外の投資家に対し、カジノの解禁で日本円が降ってくると説明している 。

第3回 ねらいは日本人の財布

――「IR型カジノ」はどのような仕組みでもうけるのですか。

IR型カジノでは、「コンプ」 と呼ばれる宿泊や飲食代などの低価格サービスが集客に一役買っている。カジノが稼ぎ出した収益を宿泊・飲食・娯楽といった他の施設に還元する仕組みだ。ラスベガスのカジノでは、カジノ収益の約30%が「コンプ」に回されている。

そのためにも、IR型カジノではカジノ単体の「高収益性」が前提となる。推進派は中国人VIPギャンブラーの獲得を「高収益性」 の根拠にしてきた。しかし、シンガポールやマカオでは、中国人VIPギャンブラー市場が急速に縮小するなど、根拠に乏しい。こうした中で、推進派は、〝VIP依拠〞 から中間層をターゲットとした「マス市場」の獲得もアピールする。国民にはVIPギャンブラーの獲得で儲かるという幻想を振りまきながら、外国カジノ企業には日本人マーケットの有望性を語るのだ。

しかし、 「マス市場」も「高収益」の源泉にはならない。 「マス市場」での一人当たりの収益はラスベガスでも500ドル程度しかないのが実態だ。ラスベガスのストリップ地区の大型カジノでも2―3億ドルのカジノ収益でしかない。観光客の夜の楽しみ程度では、推進派が想定する「高収益性」を担保出来ないといえる。

結局、カジノが日本で高収益をあげるには、外国人観光客ではなく、日本人の財布頼みということであり、日本人をどれだけギャンブル漬けにできるかにかかっている。国と地方自治体が、経済効果や税収拡大を目指し、ギャンブル振興に血道を上げる状況に追い込まれるのである。


――IR型カジノは地域振興に本当に繋がるのですか。

IR型カジノの「コンプ」によって、地元の既存のホテルや飲食店は極めて不利な価格競争を強いられる。結局、 「コンプ」はこれまで地域で消費されてきた資金を吸収する「共食い」を引き起こし、地域振興にはならない。

加えて、地域住民がギャンブルに負けることは、本来地域で使われるはずの消費力が奪われることをも意味している。IR型カジノは、地域循環型経済を破壊し、日本人の金融資産を海外企業が吸い上げることでしか、 「成功」しない仕組みだ。

カジノ~幻想の経済効果 鳥畑与一氏(静岡大学教授)に聞く:大阪歯科保険医新聞2017.9.25~2017.11.25©大阪府歯科保険医協会