社労士が解決!

身近な雇用トラブル


社会保険労務士・桂好志郎/イラスト・辻井タカヒロ

第1回 賞与の引き下げ・不支給

就業規則の支給条件の有無がポイントに

イラスト・辻井タカヒロ

【質問】今までは経営が厳しくても前年度の賞与の支給額を維持してきましたが、今年の夏は引き下げざるを得ない状態です。法律上問題はないでしょうか。(60代、男性)


十分な説明

【回答】月例給与は一定期日に全額支払うことが労基法で義務付けられていますが、賞与の支給は義務づけられていません。しかし、就業規則等で支給額・支給率について具体的に定められている場合には、義務を負うことになります。

「賞与の支給は、夏・冬ともに基本給の2カ月分を支給する」との定めがある場合は、義務となります。経営が厳しいからといって、支給しないことは許されません。

質問者の就業規則等を見ると、「賞与の額は、医院の業績及び職員の勤務成績などを勘案して個別に定める」と記載されているだけです。具体的な支給条件があらかじめ確定されていなければ、労基法上の問題はありません。ただし、初めて減額するわけですから、職員の生活に大きな影響を与えることは明らかです。十分に説明し、今後の展望を示しながら納得が得られるように努力してください。

【質問】6月25日付で退職する職員がいます。在籍条項があるので賞与は不支給にできますか。支給日は毎年7月7日です。

(40代、男性)

労使慣行

【回答】判例では、支給日に在籍しない従業員には賞与を支給しない旨の労使慣行が存在している場合、賞与支給支払い対象期間のすべてを勤務し、当該支給日以前に退職した従業員には、賞与受給権がないとしています(京都新聞社事件)。

支給日在籍条項が就業規則に明記されている場合には、もちろん合理性が認められています(カツデン事件)。

(社労士・桂好志郎)

トップ

第1回 賞与の引き下げ・不支給

第2回 突然の退職

第3回 始末書の提出

第4回 定期昇給

第5回 試用期間

第6回 過払いと不足

第7回 労働時間とは

第8回 採用内定と取り消し

社労士が解決!身近な雇用トラブル:大阪歯科保険医新聞2018.6.25~©大阪府歯科保険医協会