社労士が解決!
身近な雇用トラブル
社会保険労務士・桂好志郎/イラスト・辻井タカヒロ
社会保険労務士・桂好志郎/イラスト・辻井タカヒロ
【質問】開業して5年目。頑張りを促すため、毎年5000円昇給してきましたが、今年は出来そうにありません。「約束違反」と言われないか心配です(40代・男性)
【回答】問題は昇給が不可能な状況になったときに「就業規則に基づき、昇給しなければ、約束違反」と職員が権利を主張できるかどうかですが、裁判では「会社の就業規則には『昇給は年1度、3月21日定期とする』という定めがあるものの、定期昇給の具体的昇給基準が定められていない以上、法的に定期昇給実施義務が発生すると評価することはできない」と判示しています。使用者が昇給額を決定しない限り請求権は生じないという考え方です。「定期昇給させることがある」と定めるにすぎない場合には努力規定にとどまり抽象的な義務にもならないと言えます。「毎年8月1日に1号俸昇給させる」といったアップ金額や昇給率等の基準を設定している場合は義務を負っていることになります。
職員を雇い入れる際に使用者は、労働条件を明示する義務があります。「契約期間」「賃金」等は文書で明示することが義務付けられています。
パート職員は、さらに上記に加えて、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」を文書の交付等により明示しなければならないと改正が行われています。
昇給制度「有り」とした場合に注意が必要。小規模医院で一般的に使用されている規定を紹介します。
「医院の業績及び職員の勤務成績を勘案し、各職員ごとに毎年○月○日に行うものとする。ただし、経営上やむを得ない事由がある場合には、昇給の時期を延伸し、または昇給を行わないことがある。」
(社労士・桂好志郎)