個別指導の実相

【第2回】持参物 準備に追われ休診

2019.8.15

16項目もの持参物を示す厚生局文書

「持参物の準備が間に合いそうにないので、午後からは休診にして、患者さんには予約を変更してもらうしかなかった」――。こうした話はめずらしくない。個別指導で求められる持参物をめぐり、ほとんどの歯科医が同じ状況に追い込まれる。

カルテ 膨大な量

個別指導に選ばれると、厚生局から指導日の1週間前と前日の午前中に連絡が来る。1週間前には20人、前日には10人、合わせて30人の患者が指定され、患者それぞれについてカルテやX線フィルム、情報提供文書の写し、技工指示書、歯科衛生士の業務記録など16項目にものぼる持参物が課せられる。

しかも、カルテの指定期間は、「初めて医院を受診した日以降」とされており、長期に継続して管理している患者の場合、5年以上遡ることもまれではない。カルテに付随するX線フィルムの添付が義務付けられている情報提供文書などは、それだけでも膨大な量になる。

ちなみに、歯科で使用されている「レセコン」のほとんどは、「電子カルテ」ではなく「カルテ作成補助機能付きレセプトコンピューター」でしかない。本来は、カルテとしての電子保存は認められていないため、プリントアウトして保存しておくのが原則だ。現場では電子カルテに見立てた運用が多く見られるため、患者指定を受けた1週間前と前日にプリントアウトするのが実態だ。

すでに歪んでいる

スーツケースなどに詰めて、やっとの思いで準備し、持参しても、実際には指導の時間ですべての持参物を調べるわけではない。2時間の個別指導にこれほどの量が必要なのだろうか。

厚生局は明言しないが、「必要な持参物だけを求めると、被指導者が指摘事項を予知できるからではないか」との見方まである。仮にそうであるなら、本来「教育的」であるはずの指導のあり方が、すでに歪んでいることになる。

近畿ブロックは、▽30人分全てを1週間前に通知すること、▽プリントする期間について指導を行う連続した2カ月分や1年以内に限定すること―を要望している。