【VOID】ふせ02

「……あんたには人のまま死んでほしい」


 アンドロイド化することを選ばなかった。

 もっと話せばよかった、なんて手紙を受け取った時に考えたけれど、アンドロイド化することを選択できなかった。しなかった。




どうしても〝嫌だ〟と思ってしまったから「必要ない」とはっきり断りました。


珊瑚自身は、アンドロイドも人と同じ【生きている存在】だと思っているので、そのありようを否定する気はありません。

赤星のことをアンドロイドだとは知っていても〝赤星透也〟という個としてみているし、相棒のリオンは〝親友の利恩〟としても〝パートナーアンドロイドのリオン〟どちらの要素も持っている存在として見ています。ほよんことエーレちゃんも〝ソフィア・エーレクトロン〟という個として見ています。

だから、そういう意味では断らなくても良かったのかもしれない。


唯一、この件について相談できるのは相棒であり、親友のリオンくんだけでした。

お父さんと面会をしたい、という彼の希望を叶えるために合流した際、一緒に父からのメッセージの続きを聞いて、黒田さんをアンドロイド化することを断った話をしました。

 もしかしたら、アンドロイド化した方がよかったのかも、と。

 

「珊瑚がそう思って選択したのなら、間違ってないと思うよ」


リオンくんには、そう言ってもらいました。


珊瑚は『ポコとぼく』の「最初のポコと最後のポコは同じか?」という問いに対しては「違う存在」として答えていました。何故ならポコは一度死んで(壊れて)しまったから。

死んだ命はけして元には戻りません。壊れたアンドロイドも、元通りにしたって別物だと珊瑚は考えています。


黒田さんは植物状態だけれどまだ生きています。でも、自分の選択でアンドロイド化することは彼を殺すことと同義に感じてしまったのかもしれません。どうしても、アンドロイド化した黒田さんと以前の黒田さんを同一視できなかったので。

‎今の状態から目覚めることを諦めてアンドロイド化することは、黒田さんを一度【死んだ】と認識するみたいで、受け入れたくなかったのかも。


ただし、瀕死の状態になって、新型アンドロイドとして珊瑚の隣にいるリオンくんのことは、親友の莉恩であり、パートナーアンドロイドのリオン、その両方を併せ持った存在だと思っています。だから彼のいまの在り方を否定するつもりは全くありません。

お前の選んだ方が〝そう〟なんだろう、とも言ってます。彼の選択を尊重する、というか。


実際に「黒田さんとアンドロイド化した黒田さんは別、だもんな……」とか言った後に「あ、でもリオンは、莉恩でもあるしリオンでもあると思ってるからな」って言いました。矛盾だらけの男。

‎これはかもしれないの話なんだけれど。幼少期の記憶がトラウマでぐちゃぐちゃだったから、受け入れているのかなあ……という感覚もあります。リオンはりおんだろ、で受け入れちゃったので言語化が難しいかも……。


‎あと、もしもの話として。

‎黒田さんから事前に、自分の身に何かあったらアンドロイド化してくれ、的なことを言われてたらその通りにはしてました。

‎黒田さんの意志を尊重したいので。その場合は、なんか嫌だな〜っていう感情はかなり低くはなっていると思います。


‎やっぱり自分が【黒田さんが目覚めるのを諦める】ことは死を認めることみたいで嫌なのかも説が有力ですね……。




あとは、セッションのログ音声を聴いて今の私が感じた事なんですが。


珊瑚ってやっぱり有馬さんのことを好きにはなれないんですよね。リオンくんにとって良い父親だったとしても、彼の行動を、考え方を認めることはできなくて。

有馬さんが珊瑚を嫌うように、珊瑚もやっぱり有馬さんを嫌っていて。憎みはしないんです、親友の父親だから。


リオンくんが「あなたの想像する未来で、俺の隣に珊瑚はいますか?」っていう問いかけをしたら、有馬さんは「お前の望みならアンドロイド化して隣に置こう」っていう回答が返ってきたので「お断りだが?????」って噛みつきました。

有馬さん、絶許!な雰囲気出すし、話題の中心というか爆撃ポイントに珊瑚のこと置くけど面と向かってお話してくれないんですよね……まあ珊瑚も赤星さんや黒田さん、両親のアレソレで「嫌い!」って、初っ端から威嚇しているのでおあいこなんですが。


上記のことから、きっと珊瑚がアンドロイド化した黒田さんを受け入れられなかったのって、有馬さんと同じ選択をしたくなかったのかな……って今更ながらに思いました。


でもリオンくんは全肯定だし、お前の意志を尊重するよってタイプなので、本当にとんでもなくわがままで矛盾だらけの男なんですけどね……。

‎まあリオンくんは一生一緒にいる相棒なので……(?????)


‎珊瑚ってかなりわがままを通させて貰っている(主にリオンくんに……本当にありがとうございます……)ので、本当に感情論や感覚で動いています。