【君に注ぐ花】二次創作SS01

バルカの巡回にくっついていくセラフィーナの二次創作〝妄想&捏造〟SS

※ NCが描写するバルカとちょっと……いや、だいぶ?いや、かなり違うかもしれませんがご容赦ください。どうしても私が書くと態度がマイルド化してしまう~~~!わーん!

※ バルカの身長ってどっかに情報あったっけなあ……と思いつつ、さささっと全体ふせとか見た感じなかった気がするので立ち絵の感じで身長差を捏造しています。

 

※ ”””妄想&捏造”””の二次創作です!!!!!!!!!!!!!!!!

※ まにはち節がたっっっっっぷり含まれている二次創作です!!!!!

 アンデッドになっても生前と変わらず一切乱れない歩調で歩くその後ろ姿を見つけて、セラフィーナは、たん、たたん、と軽いステップを踏みながら近づいていく。生前にはけしてその体に存在していなかったこの獣の足は、いまでは使い勝手のいい移動手段だ。特にこの機動力が良い。


「……セラフィーナ隊長」


 バルカ、と声をかける前に振り向かれ、その視線に貫かれる。切れ長の瞳に見下ろされると刃を肌に当てられたような感覚に陥るが、そこに『殺意』が乗っていない以上、恐ろしさは感じない。


「巡回お疲れ様、着いてっていいかな」

「…………」


 一応、問いかけているようにも取れる発言だが、セラフィーナは「yes」以外の答えを求めていない。バルカも、にこりと圧をかけるような彼女の笑みからそれを読み取ったのか、小さくため息をつきながら了承した。

 ちなみに沈黙には「俺は『ゆっくりしたらどうですか』と言った気がするんですが」みたいな言葉にならない訴えが含まれていたが、セラフィーナはあえて無視を決め込んでいる。巡回の当番表?うーん、知らないなあ。

 ざ、ざ、とまた規則正しいテンポで砂を踏みしめる音に、小さく砂が擦れる音が加わる。

 びゅう、と風が吹いた。かつて風に吹かれれば舞う桜の花びらが視界に彩りを加えていたが、あの日以来、風が舞い上げるのは砂程度である。もう、酷く美しくて悍ましいあの桜は枯れ、存在しないのだから。


「…………」

「…………」


 崩れぬ歩調で歩き続けながら、セラフィーナはちらりと隣のかつての部下を見上げた。

 かつての部下——そう、かつての部下、と呼ぶ方がしっくりくる気がする。対アンデッド制圧技術開発局は敗戦した時に崩壊したと考えるべきで、そうなればセラフィーナ部隊の面々を生前とイコールで結びつけるのもなんだか腑に落ちない。

 なんとなく呑み込めないのは『死人は死人で、けして人ではない』そんな考えを持っているからだろうか。とはいえ、セラフィーナは彼らに「呼び方を変えろ」と命じるつもりも、頼むつもりもないのだけれど。自分だって「部隊長だから」なんてつい口癖のように言ってしまうのだ、そんな自分が彼らに命じる権利もないだろう。

 それになんだかんだ言って一番過去に縋っているのはセラフィーナなのかもしれない。


 何故なら、記憶に残っている部下たちの【勝ってください】という言葉を自分が立ち続ける、戦い続ける理由にしているのだから。

 何故なら、センチネルたちから「隊長」と呼ばれる度に、嗚呼、彼らはそこに居るのだ、と感じるのだから。


「……なんですか、隊長」


 思考していた時間はものの数秒だったがバルカにとっては長かったのだろう。一瞥されて、セラフィーナの目とバルカの目が合った。


「いや、」


 別になにも、と続けようとして口を噤む。バルカと再び遭遇した冷凍庫、センチネルたちとの会話の後でネフィーに言われた言葉が、脳裏に響いた。


『——気持ちは言葉にしないと、気づいてくれないでしょ』


 ん、んん……、とセラフィーナが喉の奥で唸る。その間も、互いに警戒を怠って立ち止まることはせず、歩き続けている。バルカの視線はとうに正面に戻ってはいるものの、依然として彼は聞く姿勢のままセラフィーナが口を開くのを待っていた。


「あー……うん。そうだね……前にバルカから『貴方は貴方の平穏や幸せを求めない』って言われたでしょう?」

「ええ、そうですね」

「あれから少し考えてみたんだけど……私の幸せってさ、みんなが幸せであることなんだよね。まあ正しく言うと、みんなが幸せであること〝だった〟になっちゃうけどそれは置いておいて」


 ——もしもいま、彼女たちがここで【幸せ】を感じる事ができるのであれば、それはそれでいい。

 それなら、この街が〝最後のアンデッドが存在する街〟になるまでそれを守ることがセラフィーナにとっての【幸せ】になる。


「確かに私は『今を守るため、剣となり、盾となることを選ぶ』よ。それが私の願いを叶えるために必要なことだもん」

「…………」


 バルカは何も言わない。彼はセラフィーナの言葉を黙って聴いている。討論がしたくて彼に着いてきた訳ではないセラフィーナにとって、その態度が一番ありがたかった。


「私がこう……色んなものをくっつけてるのを見て、バルカがなんとなーく微妙な表情をしてるの知ってるよ」


 こんこん、と義手に取り換えた右手の指先で額から飛び出した棘をつつく。

 殴る力と併せて防御力を上げることを考えると、柔い肉より硬い部品でできた腕の方が盾としても使用できる分、便利なのだ。棘は殴ったついでに頭突きでもすれば上手く刺さって損傷させることができるかもしれないし、もっとうまくいけば柔らかい部分を抉り取ってしまうことだって叶うかもしれない。


「あの時のイソラの言葉を借りるならさ、私もシステムみたいなものだと思うんだよね。この終わった時代を本当に終わらせるために戦う、みたいな」


 きっと生前もそうだった。アンデットに対抗して戦い、勝利する。それがセラフィーナに求められた隊長という『役割』であり、彼女自身が望んでいた未来のための『役割』でもあった。そのために刀を振るったし、最小限の被害で勝利を収めるためにバルカと共に策を練った。


「私はもう死人だから、出来る限り確実に倒せる力を蓄えたいんだよ。中途半端な力で戦ったって負け戦になるだけだしさ」

「…………俺は、もう少しゆっくり休んで欲しいんですがね」

「うん、ごめんね」

「謝らないでください。どうせ言ったって聞きやしないのはもう理解しています」


 半ば遮るようにバルカからの言葉が飛んでくる。そう、彼の言う通り、ここで謝ったとてセラフィーナが自分の体を改造していくことを辞めることは決してない。


「苦しいとか、つらいとかはないんだよ、本当に。やれることをやっているだけって言うか……」

「はい」

「でもそれがこう……みんなから、バルカから見ていて苦い気分になるならまた隣で戦ってくれれば嬉しい、かな」


 セラフィーナは正面を真っ直ぐ見ていた視線を斜め上にずらして再びバルカを見やる。腹部と被膜にもいくらか目はあるし、物音はこの大きな耳で拾えるからおそらく問題はないだろう、と思ってじっと見続けるものの、バルカがセラフィーナに視線を向けることはなかった。スピネルと同じように口元がガスマスクで覆われているせいで、その表情は下から見上げると読むことはできない。


「いまはさ……スピネルもずっと強くなったし、クラーケやネフィーちゃんもすっごい頼りになる。バルカとダストくんとエンキくん、センチネルたちが加われば、もっと頼もしいと思うんだよね」

「また相当の数が攻め入ってくる可能性だってありますよ」

「うーん、数はねえ……少ないもんね。でも、」


 ——絶対だいじょうぶだよ。


 そう言ってセラフィーナは笑った。その笑みが、バルカの視界に入ったかどうかはわからないけれど。


「うーん……誰も、何も来なかったねえ。もし遭ったらサクッと処理しようと思ったんだけどな。コレの性能チェックもしたかったし」


 バルカと私だったらまあ何とかなるんじゃないかなあ、って思ってたんだよね。

 巡回ルートを歩き終えて2人は立ち止まる。どこまでも続く砂地を見つめながら、こつん、と棘の部分を義手でつついて呟くセラフィーナに対して、バルカは小さくため息をこぼした。ぱちくり、と瞬きをしたセラフィーナの目とバルカの目が再び合わさる。


「……無茶をしすぎるのはやめてくださいよ」

「わかってるよ」

「…………」


 どうだか、とでも言いたげな視線を振り切って(逃げたともいう)セラフィーナが一足先に歩き出した。そのまま振り返らずに太い尻尾を器用に振って、早く来いと言わんばかりにバルカを呼んでいる。数秒、その背中を静かに見つめていたバルカもまた歩き出し、2人の姿は建物の中に吸い込まれて消えていった。

▽言い訳のコーナー


バルカから『「他人の幸せを願うくせに、貴方は貴方の平穏や幸せを求めないのでしょう。今を守るため、剣となり、盾となることを選ぶのが貴方でしょう」と、塩気のある対応してます。』とのことなので書きました。


バルカとセラフィーナ、お互いに「もういいんだよ」と言うものの、セラフィーナは休む気がこれっぽっちもないので「じゃあ今までみたいに一緒に戦ってよ」とお願いするかなあ、と思いました。「もう休ませてやって欲しい」と願ったのがバルカであることを彼女は知らないので「おまえは……、おいおい」みたいな感じのお話になってしまった……。本当はバルカが胃痛枠なのでは……?


『「セラフィーナ隊長は最後の最後まで、彼女がどこまで擦り切れても戦い続けるだろう。彼女を追い立てたのは俺達であり、休ませてやれないのも俺達の所為だ。俺達が彼女よりも弱かったからだ」』という言葉に対して、とことんセラフィーナが戦場で生きるべく生まれたような人間だったからしょうがないっちゃしょうがないと思います(だがしかしそれもまた業であり……)という感じのお話になりました。バルカが心配してくれていることが無駄ではないんだが、そいつのダメージは思っているよりも少ないですよ、という感じで……。どうしてかセラフィーナのメンタルがゴリゴリに強くてですね……部下からの【願い】も重しではなくパワーとして蓄えてしまえるらしいんですよね……というのを書きたかったというのもあります。


あと自分が『死人である』という認識であり、人としての生を終えた今はもう自分の体も元気にリソースとして活用するつもりなんですよ、というのをドールたちには言わないと最初のふせで書きましたが、唯一伝えるのであればバルカだろうなあと思ってその辺りも盛り込めていたらいいなと思います。


バルカって難しいですわね!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

彼の人格を全ッッッ然インストールできてないので全て捏造ですわ!!!!!!!!!!!!!!!