【刀/剣/乱/舞パロ】二次創作SS01

セラフィーナの審神者パロSS

※ 刀剣乱舞とのクロスオーバーかつ、審神者パロネタです。 やりたい放題しています。

※ 独自設定やご都合主義設定、知識不足を誤魔化したりなど、とにかく色んなもの濁しながら書いてるし、専門用語の説明もないので注意。なんでも大丈夫な人向けです。

「いいですか! 主様は本丸から遠隔で指示を飛ばす形で指揮を執るのです! 共に戦場へ飛ぶなど~~~!」

 額や目元、口まわりの白い毛皮に赤や青の化粧を施したクダギツネ(こんのすけ、というらしい)が柔らかな毛をぶわりと膨らませながら怒っている。ふわふわの尻尾が不満を表すかのように畳をぺしぺしと叩いて、微かな音が響いた。

 どうやら「出陣」と言われて、かつてのように折れた刀をバールに針金で括りつけたいつもの即席武器を引っ掴み、蜂須賀虎徹にセラフィーナが着いて行ったことが問題だったらしい。

「危険です! 主様に何かあったらどうするんですか!」

「えぇ……でもなあ、現地で指示を出す方が的確だし。私は戦場に立ってたからあの程度の敵なら対処できるよ」

「ええ、そうでしょうねえ! こんのすけはしっかりとモニターから主様が遡行軍をバラバラに砕いていく様子を見ましたとも! ええ!」

「じゃあ——」

「ダメです!」

「えぇ……」

 じゃあいいじゃない、と言葉を続けようとした瞬間、ぴしゃりと口を挟まれてしまった。ぷりぷりと全身で怒っている様子を表しているこんのすけは、膝を抱えて座るセラフィーナの獣足の上にやわこい前足を乗せ、そこに縫いとどめようとするかのように大した重みのない体重をかけてくる。

「いいですか、主様——」


 主様がいかに戦いに優れたお方だという事は、事前に知らされております。ですが、刀剣男士と共に主様が戦場に出てしまえば本丸の守りは手薄になってしまうのですよ。

 いくら我々が本丸の在処を秘匿しているとはいえ、歴史遡行軍からの襲撃の前例がない、というわけではありません。

 仮にこの本丸が襲撃された際、主様が不在だったらあっという間に落とされてしまうでしょう。そのうえ、本丸という機能に関しての情報が漏洩することは目に見えています。

 それを防ぐためにも、主様には本丸にとどまっていただく必要があります。主様が【本丸に居る】ことで本丸を秘匿している結界が安定するのです。


「……貴方様はもう、いの一番に敵陣へ飛び込んでいく部隊長ではなく、彼らを率いる将なのです。今までとは違う戦い方に慣れて頂かなくては」

「あー……、うん。わかった」

 そう言われちゃあね、とセラフィーナが答えれば、その背後で静かに待機していた蜂須賀虎徹が口を開いた。

「——主、どうか戦場は俺に任せてほしい」

「そうだね、さっきの戦闘でハチスカの切れ味はおおよそわかったし……」

 セラフィーナがそう言いながらくるりと体ごと振り向くと、ふたつの瞳、そして腹部と被膜にある数多の目が、怪我をしていてもなお凛と立つ蜂須賀を観察するようにぎょろりと動く。僅かな時間、彼の様子を見つめていたセラフィーナの喉から「うーん」と小さな唸り声がこぼれ出た。

「ところで、ハチスカは自分で動けるようになった今の状態に慣れてないってことでいいのかな」

 余分についているたくさんの目で先ほどの戦いできた傷の確認を続けながら、本来の瞳でこんのすけを見れば「そうですね、」と相槌が返ってくる。

「練度がまだ低いというのはあります。ですが、主様のように防御ができる盾兵や、投石兵などの『刀装』を付けて出陣すれば、損傷はもっと抑えられると思いますよう!」

「トーソー?」

 聞き慣れない言葉にぱちくりと瞬きをして、セラフィーナが首をかしげる。こてん、と頭が倒れた拍子に大きな獣のたれ耳がゆらりと揺れた。

「はい。でもまずは先に『手入れ』からいたしましょう! 中傷状態の蜂須賀虎徹をそのままにしておくわけにはいきませんからね。ささ、こちらですよう!」

 主様が戦場に飛び出したりしなければもっと早くに『手入れ』のご説明ができたんですからね、と釘を刺しながらこんのすけがぴょんぴょんと廊下へ飛び出していく。そもそも装備ができるものがあるなら先にそれを言うべきなのでは、という突っ込みを入れる前にこんのすけの姿は廊下へと消えていった。

 さっさと置いて行かれたセラフィーナも同じく獣脚で跳ねるように立つと、蜂須賀虎徹に再び視線を向けて申し訳なさそうに顔を少し歪める。

 確かに、セラフィーナが戦場へ飛び出しさえしなければ今の時間は存在せず、傷を負った蜂須賀虎徹は早々に手当されることにはなっていただろう。とはいえ装備品があるなら先に言うべきでは、と思うのもまた然りなのだが……。

 細切れにされなければ動き続けられるアンデッドになったとはいえ、セラフィーナだって肉を削がれたり、被弾すれば痛みを感じる。となれば〝人型〟となった今の蜂須賀虎徹もまた同じはずだ。パッと見たところ衣服の破損が大きいように見えるが、細かい傷はちらほら見える。

「あー……ごめんね、ハチスカ。早く直しにいこうか」

「ああ、助かるよ。次こそはもっと上手くやろう、あなたの采配は素晴らしかった」

「うん。次からはトーソーを装備して出陣することになると思うし、きっとハチスカならできるよ」

 期待してる、とセラフィーナが笑いかけると「主様~! こちらですよう!」とふたりを急かすように呼び掛けてくるこんのすけの声が廊下に響いた。

「うん、いま行く」

 声を張って答えたセラフィーナは、ト、トトン、と人よりも少しリズミカルな足音を立てて足早に部屋を後にする。先に廊下へ飛び出していたこんのすけはといえば、ちょこんと廊下のど真ん中で座り、彼女たちがやってくるのを待っていた。

「おまたせ」

「では、参りましょう!」

 案内を再開したこんのすけがぽてぽてと歩き出す。セラフィーナの軽やかな足音がこんのすけの後を追うように跳ね、蜂須賀虎徹の規則的な足音がその後に続く。

 一匹と、一人と、一振りが、綺麗に磨かれた廊下を歩く足音が静かな本丸に響いていた。


    ▽


 生前、つまり部隊長として駆けまわっていた頃は刀を振るっていたとはいえ、アンデッドとして目覚めてからは怪力のままに振り下ろせるバールが主な武器だった。目覚めてすぐに戦ったバルカとの戦闘で折れた刀を括りつけてはいるものの、ちゃんとした刀の手入れというのは随分と久しぶりである。

 「えーと、こう……だっけ」なんて呟きながらではあったものの、体が覚えていたのか特に滞りなく『手入れ』を終え、蜂須賀虎徹の姿はすっかり元通りになっていた。体の傷はもちろんのこと、破れた衣服さえも元通りになって、今まで晒されていた逞しい体はすっかり衣服の下に仕舞われている。

 セラフィーナ自身もどこかが破損してもパーツを取り換えれば元通りに動くし、なんならちょっぴり再生もできるので、おおよそ人とは遠い存在ではある(というか見た目がもう既に人から程遠い)が「服ごと直る刀剣男士のほうがとんでもない技術だな」と思ったのは胸のうちにしまっておくことにした。

 でも、『ぽんぽん』したら直るって一体どういう技術なのかさっぱり見当もつかない。資材はちょっと減ってるし、うーん不思議だね。

「感謝するよ、主」

「いや、待たせてごめんね。ん、あ~。なんとなくだけど……ちょっと疲れる感じがあるかもしれない」

「顕現と同様に『手入れ』でも主様のお力を必要としますからね、損傷が多いとその分より多くのお力を消費しますが……主様は問題なさそうですね」

 手入れ用の道具を片付けると、セラフィーナは手をグーパーしながらそう呟いた。

 ちょっとした疲労感、というか、力が抜けた感じというか。とにかく「あ、なんか出てったな」程度の物ではあったが、おそらくソレがこんのすけの言う『審神者の力』とかいう物なのだろう。

「うん、まあこれくらいなら何ともないかな。勝手は分かったし」

「では、まず先に鍛刀をいたしましょう! その後、刀装の作成と再度の出陣、で本日はおしまいです」

 次の出陣は本丸で待機ですからね、と念を押してくるこんのすけに対して「わかったよ」と苦笑いを返しながら手入れ部屋を後にすると、セラフィーナたちはそのまま鍛刀部屋へと向かう。セラフィーナの後ろについていた蜂須賀虎徹も、ちょっぴり苦笑いを浮かべてこんのすけを一瞥するのだった。

 鍛刀部屋は炉に火が灯されているためか、入った瞬間、むわりとした熱気を感じる。そんな熱気をものともせずにちょこまかと動いていた小さな式神は、セラフィーナたちがやってきたのを見るや否や、炉から離れて出迎えると、指示を仰いだ。

「では主様、今回は最小限の資材で鍛刀といたしましょう!」

「うん、じゃあこれで。よろしくね」

 大抵のものごとにおいて、はじめての時はとりあえず指示通りにやった方が良いのだとセラフィーナは知っている。勝手がわからぬうちに指令を無視して独断に走り、有限である資材を無駄にする方が勿体ない。そういうことは勝手がわかってから少しずつ試せばいい。

 木炭、玉鋼、冷却水、そして砥石。こんのすけの指示通りに言われた分量を指定して、『依頼札』と書かれた木札を手渡せば、声は聞こえずとも「心得た」といわんばかりに小さな式神は頷いた。

「本来であれば鍛刀が終わるまで時間がかかるのですが、今回は手伝い札を使いましょう!」

 どこからともなくこんのすけが取り出した手伝い札は、先程の依頼札と同じように木札に『手伝い札』と書かれている。

「これを使うとどうなるの?」

「すぐに鍛刀が完了します。先程の手入れでも同様に、すぐに終わりますよ」

「へぇ、便利だね」

 なんでもありだ、なんて笑いながらこんのすけから受け取った手伝いをセラフィーナが式神に渡せば、あっという間に一振りの刀が姿を現した。かつてセラフィーナが振るっていた刀よりも短い、ということは短刀だろうか。

 どうぞ、と小さな式神が身振り手振りで促すがままにセラフィーナが近づき、その手が刀に触れた瞬間、パッと桜吹雪が散る。ひらひらと舞う花びらはセラフィーナの記憶に存在するそれと同じく美しいが、目前の淡い桃色は地面に落ちる寸前ですぅと空気に溶けるように消えていった。

 ふ、と桜の花びらに向いていたセラフィーナの意識と視線が人影に向く。

「前田藤四郎と申します。末永くお仕えします」

 凛とした声だった。前髪は眉上、後ろ髪は襟足ほどで切りそろえられたミルクティー色の髪は、白い外套と共に風でふわりと揺れている。その下は、生前セラフィーナが着ていた軍服と似たような形状の濃紺の衣をきっちりと着こみつつも、短パンというどこか幼さを感じさせる服装に身を包んだ少年がそこに立っていた。

▽あとがき

尻切れトンボですが一生終わらないのでこの辺で……。

このあと前田くんと蜂須賀だけが戦場に行くも「モニター越しって情報が足りないよ」とぶつくさ文句を垂れるセラフィーナがいます。


正直に言うと、こんちゃんの「ええ、そうでしょうねえ! こんのすけはしっかりとモニターから主様が遡行軍をバラバラに砕いていく様子を見ましたとも! ええ!」というセリフを書きたかったために書いていたので概ね満足です。


セラフィーナは審神者というよりはやっぱり部隊長としての適性の方が高いと思うので、二次創作あるある戦闘系審神者として飛び出していきそうだなあ……とは思うのですが、初期段階で一緒に出て行ってしまうと本丸があまりにも手薄になってしまうので独自設定マシマシで本丸待機命令を出しました。

刀剣男士が増えて、戦力が安定したら『実地研修』という名目で出陣に着いて行く可能性はあります。検非違使が出てきちゃうよ、周回しないでくれセラフィーナさん。


ちなみに手入れのシーンですが、相棒くんは名刀だったので、流石に手入れくらいしてたよな?!?!?なあ?!?!?!と思って『生前にやった事があるけど昔過ぎて朧げである』という体で書きました。

折れた刀になってからはどうなんだろう……でも白兵+1要素として使う場面は結構あると思うので、完璧な手入れとは言わずとも、錆びないようにはしていたんじゃないかなと思っています。


書いていて気づいたのですが、顕現時に桜は舞うし、誉桜は舞うし、で桜いっぱいなんですよね。景趣『春の庭』なんて桜が満開だし……。

まあ、そもそもどうしてセラフィーナが審神者になっているのかという時点で謎時空なのでアレですが、舞う花びらをみて植物兵器:桜を思い出しはするんだろうなって思いました。