小部経典(クッダカ・ニカーヤ)

 

7. ペータヴァットゥ聖典(餓鬼事経)

 

【目次】

 

1. 蛇の章(1.~)

 

1. 1. ケットゥーパマ・ペータヴァットゥ(田畑の如きの餓鬼の事例)(1.~)

1. 2. スーカラムカ・ペータヴァットゥ(豚の口の餓鬼の事例)(4.~)

1. 3. プーティムカ・ペータヴァットゥ(腐った口の餓鬼の事例)(7.~)

1. 4. ピッタディータリカ・ペータヴァットゥ(粉の人形の餓鬼の事例)(10.~)

1. 5. ティロークッタ・ペータヴァットゥ(壁の外の餓鬼の事例)(14.~)

1. 6. パンチャプッタカーダ・ペーティヴァットゥ(五子を喰う女餓鬼の事例)(26.~)

1. 7. サッタプッタカーダ・ペーティヴァットゥ(七子を喰う女餓鬼の事例)(35.~)

1. 8. ゴーナ・ペータヴァットゥ(野牛の餓鬼の事例)(46.~)

1. 9. マハー・ペーサカーラ・ペーティヴァットゥ(大いなる織物師の女餓鬼の事例)(54.~)

1. 10. カッラーティヤ・ペーティヴァットゥ(禿頭の女餓鬼の事例)(58.~)

1. 11. ナーガ・ペータヴァットゥ(象の餓鬼の事例)(73.~)

1. 12. ウラガ・ペータヴァットゥ(蛇の餓鬼の事例)(85.~)

 

2. ウッバリの章(96.~)

 

2. 1. サンサーラモーチャカ・ペーティヴァットゥ(輪廻の解放者の女餓鬼の事例)(96.~)

2. 2. サーリプッタッテーラマートゥ・ペーティヴァットゥ(サーリプッタ長老の母の女餓鬼の事例)(116.~)

2. 3. マッター・ペーティヴァットゥ(マッターの女餓鬼の事例)(134.~)

2. 4. ナンダー・ペーティヴァットゥ(ナンダーの女餓鬼の事例)(168.~)

2. 5. マッタクンダリー・ペータヴァットゥ(艶やかな耳飾の餓鬼の事例)(186.~)

2. 6. カンハ・ペータヴァットゥ(カンハの餓鬼の事例)(207.~)

2. 7. ダナパーラセッティ・ペータヴァットゥ(ダナパーラ長者の餓鬼の事例)(227.~)

2. 8. チューラセッティ・ペータヴァットゥ(チューラ長者の餓鬼の事例)(246.~)

2. 9. アンクラ・ペータヴァットゥ(アンクラの餓鬼の事例)(257.~)

2. 10. ウッタラマートゥ・ペーティヴァットゥ(ウッタラの母の女餓鬼の事例)(331.~)

2. 11. スッタ・ペータヴァットゥ(糸の餓鬼の事例)(341.~)

2. 12. カンナムンダ・ペーティヴァットゥ(耳禿の女餓鬼の事例)(348.~)

2. 13. ウッバリ・ペータヴァットゥ(ウッバリーの餓鬼の事例)(368.~)

 

3. 小なるものの章(387.~)

 

3. 1. アビッジャマーナ・ペータヴァットゥ(沈むことなき餓鬼の事例)(387.~)

3. 2. サーナヴァーシーテーラ・ペータヴァットゥ(サーナヴァーシン長老の餓鬼の事例)(408.~)

3. 3. ラタカーラ・ペーティヴァットゥ(ラタカーラの女餓鬼の事例)(439.~)

3. 4. ブサ・ペータヴァットゥ(籾殻の餓鬼の事例)(447.~)

3. 5. クマーラ・ペータヴァットゥ(童子の餓鬼の事例)(453.~)

3. 6. セーリニー・ペーティヴァットゥ(セーリニーの女餓鬼の事例)(464.~)

3. 7. ミガルッダカ・ペータヴァットゥ(鹿猟師の餓鬼の事例)(478.~)

3. 8. ドゥティヤミガルッダカ・ペータヴァットゥ(第二の鹿猟師の餓鬼の事例)(488.~)

3. 9. クータヴィニッチャイカ・ペータヴァットゥ(でたらめの判決の餓鬼の事例)(499.~)

3. 10. ダートゥヴィヴァンナ・ペータヴァットゥ(遺物の軽蔑の餓鬼の事例)(507.~)

 

4. 大いなるものの章(517.~)

 

4. 1. アンバサッカラ・ペータヴァットゥ(アンバサッカラの餓鬼の事例)(517.~)

4. 2. セーリーサカ・ペータヴァットゥ(セーリーサカの餓鬼の事例)(604.~)

4. 3. ナンダカ・ペータヴァットゥ(ナンダカの餓鬼の事例)(658.~)

4. 4. レーヴァティー・ペータヴァットゥ(レーヴァティーの餓鬼の事例)(714.~)

4. 5. ウッチュ・ペータヴァットゥ(甘蔗の餓鬼の事例)(737.~)

4. 6. クマーラ・ペータヴァットゥ(童子の餓鬼の事例)(746.~)

4. 7. ラージャプッタ・ペータヴァットゥ(王子の餓鬼の事例)(753.~)

4. 8. グータカーダカ・ペータヴァットゥ(糞を喰う餓鬼の事例)(766.~)

4. 9. グータカーダカ・ペーティヴァットゥ(糞を喰う女餓鬼の事例)(774.~)

4. 10. ガナ・ペータヴァットゥ(衆の餓鬼の事例)(782.~)

4. 11. パータリプッタ・ペータヴァットゥ(パータリプッタの餓鬼の事例)(793.~)

4. 12. アンバヴァナ・ペータヴァットゥ(アンバ林の餓鬼の事例)(796.~)

4. 13. アッカルッカ・ペータヴァットゥ(車軸の木の餓鬼の事例)(800.~)

4. 14. ボーガサンハラナ・ペータヴァットゥ(財物の収集の餓鬼の事例)(801.~)

4. 15. セッティプッタ・ペータヴァットゥ(長者の子の餓鬼の事例)(802.~)

4. 16. サッティクータ・ペータヴァットゥ(六十の槌の餓鬼の事例)(806.~)

 


 

 

7. ペータヴァットゥ聖典(餓鬼事経)

 

阿羅漢にして 正等覚者たる かの世尊に 礼拝し奉る

 

1. 蛇の章

 

1. 1. ケットゥーパマ・ペータヴァットゥ(田畑の如きの餓鬼の事例)

 

1. 阿羅漢は、田畑の如くあり、施者たちは、耕作者たちの如くあり、施すべき法(施物)は、種の如くある。果は、これより発現する。

 

2. この種と耕作と田畑は、餓鬼たちのためのものであり、かつまた、施者のためのものである。餓鬼たちは、それを遍く受益する。施す者は、功徳によって繁栄する。

 

3. まさしく、この〔世において〕、善なる〔功徳〕を作り為して、かつまた、餓鬼たちを供養して、そして、天上の境位に至り行く──立派な行為()を為して〔そののち〕。ということで──

 

 ケットゥーパマ・ペータヴァットゥが、第一となる。

 

1. 2. スーカラムカ・ペータヴァットゥ(豚の口の餓鬼の事例)

 

4. 〔比丘が尋ねた〕「あなたの身体は、一切が黄金にして、一切の方角に光り輝くも、あなたの口は、豚の〔口〕のようです。かつて、どのような行為を為したのですか」〔と〕。

 

5. 〔餓鬼が答えた〕「〔わたしは〕身体による自制ある者として〔世に〕存しました。〔わたしは〕言葉による自制なき者として〔世に〕存しました。それによって、わたしの色艶は、このようなものとしてあります。ナーラダよ、〔あなたが〕見る、そのとおりに。

 

6. ナーラダよ、わたしは、それを、あなたに説きます。この〔行為の報い〕は、あなたによって、自ら、〔あるがままに〕見られました。口による悪しき〔行為〕を為してはいけません。まさに、豚の口ある者と成ってはいけません」〔と〕。ということで──

 

 スーカラムカ・ペータヴァットゥが、第二となる。

 

1. 3. プーティムカ・ペータヴァットゥ(腐った口の餓鬼の事例)

 

7. 〔比丘が尋ねた〕「〔あなたは〕天の浄美なる色艶の界域(天の姿形)を保ちます。〔あなたは〕宙空にあり、空中にあり、〔ここに〕立ちます。しかしながら、蛆虫たちは、あなたの腐臭がする口を喰います。過去において、どのような行為を為したのですか」〔と〕。

 

8. 〔餓鬼が答えた〕「わたしは、沙門なるも極めて言葉が汚れた悪しき者として、苦行者の形態あるも口による自制なき者として、〔世に存しました〕。そして、わたしの色艶の界域は、苦行によって得られ、かつまた、わたしの腐った口は、中傷〔の言葉〕によって〔得られました〕。

 

9. ナーラダよ、〔まさに〕その、この〔行為の報い〕は、あなたによって、自ら、〔あるがままに〕見られました。彼らが、慈しみ〔の思い〕ある者たちであり、智者たちであるなら、〔あなたに〕説くでしょう。『中傷〔の言葉〕を〔話しては〕ならない。かつまた、虚偽〔の言葉〕を話してはならない。あなたは、夜叉と成るであろう──欲するままに欲する者として』」〔と〕。ということで──

 

 プーティムカ・ペータヴァットゥが、第三となる。

 

1. 4. ピッタディータリカ・ペータヴァットゥ(粉の人形の餓鬼の事例)

 

10. それが何であれ、対象(所縁)と為して、布施を施すべきである──物惜〔の思い〕なき者となり。そして、過去の餓鬼たちを対象として、さらに、あるいは、地所の天神たちを〔対象として〕。

 

11. さらに、世の警護者にして福徳ある四者の大王(四天王)を──クヴェーラ(多聞天・毘沙門天)を、そして、ダタラッタ(持国天)を、ヴィルーパッカ(広目天)を、ヴィルーラカ(増長天)を〔対象として〕。まさしく、そして、彼らは、供養される者たちとして〔世に〕有る──そして、施者たちは、果なき者たちにあらず。

 

12. なぜなら、あるいは、泣くことも、あるいは、憂いも、さらに、すなわち、他の、嘆き悲しむことも、それは、餓鬼たちの義(利益)のためにはならず、このように、〔過去の〕親族たちは〔世に〕止住するからである(泣き悲しむことは無意味である)。

 

13. しかしながら、まさに、この施物が、〔僧団に〕施され、僧団において善く確立されたなら、長夜にわたり、その〔餓鬼の衆〕の利益のためになり、即座に役立つ。ということで──

 

 ピッタディータリカ・ペータヴァットゥが、第四となる。

 

1. 5. ティロークッタ・ペータヴァットゥ(壁の外の餓鬼の事例)

 

14. 〔餓鬼たちは〕諸々の壁の外に止住する──さらに、諸々の十字路や丁字路に。〔餓鬼たちは〕諸々の門の両脇に止住する──自らの家屋に帰り来て。

 

15. 沢山の食べ物や飲み物が、固形の食料や軟らかい食料が、〔施食として〕供えられたとき、誰も、彼ら(餓鬼たち)のことを思い浮かべない──有情たちには、〔そのような〕行為の縁(業縁)あるからである。

 

16. 彼ら(施者たち)が、慈しみ〔の思い〕ある者たちとして〔世に〕有るなら、このように、〔彼らは〕施す──〔過去の〕親族たち(餓鬼たち)のために、清らかで精妙なる飲み物と食料を、〔しかるべき〕時に、適確なるものとして。「これは、〔過去の〕親族たるあなたたちのために成れ。〔過去の〕親族たちは、安楽の者たちと成れ」〔と〕。

 

17. そして、それら〔の餓鬼たち〕は、そこにおいて集いあつまって、集いあつまった〔過去の〕親族たる餓鬼たちは、沢山の食べ物や飲み物にたいし、恭しく随喜する。

 

18. 「わたしたちのために、親族たち(施者たち)は、長きにわたり生きよ。彼らを因として、〔わたしたちは、安楽を〕得るのだ。そして、わたしたちのために、供養は為された──そして、施者たちは、果なき者たちにあらず」〔と〕。

 

19. なぜなら、そこにおいて、耕作は存在せず、ここにおいて、牧畜は見出されず、商売やそのようなものは存在せず、金による売買は〔存在せず〕、ここから施されたものによって〔身を〕保ち行くからである──命を終えた餓鬼たちは、そこにおいて。

 

20. たとえば、高きに雨降った水が、低きへと転じ行くように、まさしく、このように、ここから施されたものは、餓鬼たちのために役立つ。

 

21. たとえば、諸々の水流が満ち溢れ、海洋を遍く満たすように、まさしく、このように、ここから施されたものは、餓鬼たちのために役立つ。

 

22. 「わたしのために、〔あの人は〕施した。わたしのために、〔あの人は〕為した──わたしの、親族として、朋友たちとして、そして、友人たちとして」〔と〕、過去に為されたことを随念しながら、餓鬼たちのために、施物を施すべきである。

 

23. なぜなら、あるいは、泣くことも、あるいは、憂いも、さらに、すなわち、他の、嘆き悲しむことも、それは、餓鬼たちの義(利益)のためにはならず、このように、〔過去の〕親族たちは〔世に〕止住するからである(泣き悲しむことは無意味である)。

 

24. しかしながら、まさに、この施物が、〔僧団に〕施され、僧団において善く確立されたなら、長夜にわたり、その〔餓鬼の衆〕の利益のためになり、即座に役立つ。

 

25. そして、それが、親族の法(教え)であり、これが、〔ここに〕実示された。そして、餓鬼たちのために、盛大なる供養が為された。さらに、比丘たちのために、活力となるものが奉施された。あなたたちによって、少なからざる功徳が追い求められたのだ。ということで──

 

 ティロークッタ・ペータヴァットゥが、第五となる。

 

1. 6. パンチャプッタカーダ・ペーティヴァットゥ(五子を喰う女餓鬼の事例)

 

26. 〔比丘が尋ねた〕「〔あなたは〕裸で、醜き色艶の形態ある者として〔世に〕存しています。悪臭がただよい、腐〔臭〕を放ちます。蝿たちに取り囲まれ、あなたは、いったい、どのような者として、ここに止住するのですか」と。

 

27. 〔女餓鬼が答えた〕「幸甚なる方よ、わたしは、女餓鬼として〔世に〕存しています。悪しき境遇(悪趣)の者にして、夜魔(閻魔)の世にある者です。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのです。

 

28. 時に、五者の子を、夕に、ふたたび、他の五者〔の子〕を、産んでは喰うのですが、それらでさえも、わたしにとって、十分とは成りません。

 

29. わたしの心臓は、飢えによって、遍く焼かれ、煙を出します。〔わたしは〕飲み物を飲むことを得ません。見てください。災厄に赴いたわたしを」と。

 

30. 〔比丘が尋ねた〕「いったい、どのような悪行が、身体によって、言葉によって、意によって、為されたのですか。どのような行為の報い(異熟)によって、諸々の子の肉を喰うのですか」と。

 

31. 〔女餓鬼が答えた〕「わたしと夫を共にする妊婦が存しました。〔わたしは〕彼女に悪しきことを思い考えました。〔まさに〕その、わたしは、汚れた意によって、〔彼女の〕堕胎を為しました。

 

32. 彼女の二月の胎児は、まさしく、血にまみれ、流れ出ました。そのとき、彼女の母は、わたしに怒り、親族たちを集めました。そして、わたしに誓いを為さしめ、かつまた、わたしを誹謗させました。

 

33. 〔まさに〕その、わたしは、そして、おぞましき誓い〔の言葉〕を、虚偽の言を、語りました。『わたしは、諸々の子の肉を喰うでしょう──それで、もし、その〔悪しき行為〕が、わたしによって為されたのなら』〔と〕。

 

34. その行為の報いによって、さらに、同様に、虚偽の言の〔報いによって〕、〔わたしは〕諸々の子の肉を喰います──膿と血にまみれた者となり」〔と〕。ということで──

 

 パンチャプッタカーダ・ペーティヴァットゥが、第六となる。

 

1. 7. サッタプッタカーダ・ペーティヴァットゥ(七子を喰う女餓鬼の事例)

 

35. 〔比丘が尋ねた〕「〔あなたは〕裸で、醜き色艶の形態ある者として〔世に〕存しています。悪臭がただよい、腐〔臭〕を放ちます。蝿たちに取り囲まれ、あなたは、いったい、どのような者として、ここに止住するのですか」と。

 

36. 〔女餓鬼が答えた〕「幸甚なる方よ、わたしは、女餓鬼として〔世に〕存しています。悪しき境遇の者にして、夜魔の世にある者です。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのです。

 

37. 時に、七者の子を、夕に、ふたたび、他の七者〔の子〕を、産んでは喰うのですが、それらでさえも、わたしにとって、十分とは成りません。

 

38. わたしの心臓は、飢えによって、遍く焼かれ、煙を出します。〔わたしは〕寂滅に到着しません。熱苦のなか、火に焼かれた者のようです」と。

 

39. 〔比丘が尋ねた〕「いったい、どのような悪行が、身体によって、言葉によって、意によって、為されたのですか。どのような行為の報いによって、諸々の子の肉を喰うのですか」と。

 

40. 〔女餓鬼が答えた〕「わたしには、二者の子が有りました。両者ともに、若さ〔の盛り〕に至り得た者たちとなり、〔まさに〕その、わたしは、子の力を具した者となり、主人を軽んじました。

 

41. そののち、わたしの主人は忿激し、〔他の女を〕わたしと夫を共にする者として連れてきました。そして、彼女は、胎児を得ました。〔わたしは〕彼女に悪しきことを思い考えました。

 

42. 〔まさに〕その、わたしは、汚れた意によって、〔彼女の〕堕胎を為しました。彼女の三月の胎児は、膿と血にまみれ、落ち行きました。

 

43. そのとき、彼女の母は、わたしに怒り、親族たちを集めました。そして、わたしに誓いを為さしめ、かつまた、わたしを誹謗させました。

 

44. 〔まさに〕その、わたしは、そして、おぞましき誓い〔の言葉〕を、虚偽の言を、語りました。『わたしは、諸々の子の肉を喰うでしょう──それで、もし、その〔悪しき行為〕が、わたしによって為されたのなら』〔と〕。

 

45. その行為の報いによって、さらに、同様に、虚偽の言の〔報いによって〕、〔わたしは〕諸々の子の肉を喰います──膿と血にまみれた者となり」〔と〕。ということで──

 

 サッタプッタカーダ・ペーティヴァットゥが、第七となる。

 

1. 8. ゴーナ・ペータヴァットゥ(野牛の餓鬼の事例)

 

46. 〔父が尋ねた〕「いったい、どうして、狂者の形態あるかのように、緑の草を刈って、〔他の世に〕赴いた有情の老牛に、『喰え』『喰え』と喚き散らすのだ。

 

47. まさに、食べ物によって、飲み物によって、死んだ野牛が起き上がることはない。さてまた、おまえは、愚者として、思慮浅き者として、〔世に〕存している。あたかも、おまえは、他者であるかのように、思慧に劣る者として」と。

 

48. 〔子が答えた〕「これらの足は、この頭は、尾を含むこの身体は、〔両の〕眼は、まさしく、そのとおりに止住しています(生前と同じようにある)。この野牛は、起き上がることができるはずです。

 

49. 〔しかしながら、死んだ〕祖父の、〔両の〕手と足は、身体は、さらに、頭は、見ることができません。土の塔に泣き叫んでいる、あなたこそは、まさに、思慧に劣る者ではありませんか」と。

 

50. 〔父が言った〕「酪を注いだ火のように、まさに、燃え盛る者として存しているわたしを、〔その〕一切の懊悩を、水を降り注ぐかのように、〔おまえは〕寂滅させる。

 

51. 心臓(心)に依拠する憂い悲しみを、わたしの矢を、まさに、引き抜いてくれた。すなわち、憂い悲しみに打ち負かされたわたしの、父〔の死〕の憂い悲しみを、除き去ったのだ。

 

52. 〔まさに〕その、わたしは、矢が引き抜かれた者として存している。〔心が〕清涼と成り寂滅した者として存している。〔わたしは〕憂い悲しまない。〔わたしは〕泣き叫ばない。若者よ、おまえの〔言葉を〕聞いて〔そののちは〕」〔と〕。

 

53. 彼らが、慈しみ〔の思い〕ある者たちとして〔世に〕有るなら、智慧を有する者たちは、このように為す──すなわち、スジャータ(子)が、父を憂い悲しみから引き戻したように。ということで──

 

 ゴーナ・ペータヴァットゥが、第八となる。

 

1. 9. マハー・ペーサカーラ・ペーティヴァットゥ(大いなる織物師の女餓鬼の事例)

 

54. 〔比丘が尋ねた〕「そして、糞を、尿を、さらに、血を、膿を、〔この女餓鬼は〕遍く食べます。これは、どのような〔行為〕の報いなのですか。この女は、いったい、どのような行為を為したのですか。すなわち、一切時に血と膿を食物とする〔この女〕は。

 

55. まさしく、そして、浄美にして、かつまた、柔和にして、清浄なる毛の、諸々の新しい衣が、この者に与えられたなら、諸々の銅板と成ります。この女は、いったい、どのような行為を為したのですか」と。

 

56. 〔女餓鬼の前夫が答えた〕「幸甚なる方よ、この者は、わたしの妻として〔世に〕有りました。施者ならず、物惜〔の思い〕ある、吝嗇の者として。彼女は、沙門や婆羅門たちに施しているわたしを、そして、罵倒し、さらに、誹謗します。

 

57. 『そして、糞を、尿を、さらに、血を、膿を、おまえは、不浄物を、一切時に遍く食べよ。この〔報い〕が、他の世において、おまえに有れ。かつまた、おまえの諸々の衣は、銅板に等しきものと成れ』〔と〕。このような悪しき行ないを行なって、ここに到来し、長夜にわたり、〔不浄物を〕喰うのです」〔と〕。ということで──

 

 マハー・ペーサカーラ・ペーティヴァットゥが、第九となる。

 

1. 10. カッラーティヤ・ペーティヴァットゥ(禿頭の女餓鬼の事例)

 

58. 〔商人たちが尋ねた〕「いったい、誰なのですか──〔あなたは〕天宮の内に止住しながら、〔ついに〕出て来ませんでした。幸いなる方よ、出て来てください。〔わたしたちは〕見たいのです──〔天宮の〕外に止住するあなたを」と。

 

59. 〔女餓鬼が答えた〕「〔わたしは〕裸で、外に出ることを、苦悩し、自責します。〔自身の〕諸々の髪に覆われた者として、〔わたしは〕存しています。わたしの〔過去に〕作り為した功徳は、少なきものなのです」と。

 

60. 〔商人たちが言った〕「さあ、あなたに、上着を施しましょう。この衣服を着てください。美しく輝く方よ、この衣服を着て、さあ、出られよ。幸いなる方よ、出て来てください。〔わたしたちは〕見たいのです──〔天宮の〕外に止住するあなたを」と。

 

61. 〔女餓鬼が言った〕「あなたの手から〔わたしの〕手に施されたものは、わたしのために役立ちません。ここにおいて、この方が、信ある在俗信者として、正等覚者の弟子として、〔世に有ります〕。

 

62. この方に、〔諸々の衣を〕まとわせて、わたしのためにと、施物を指示してください。そのように〔為すなら〕、わたしは、一切の欲望が等しく実現する者となり、安楽の者となり、〔世に〕有るでしょう」と。

 

63. そして、それらの商人たちは、彼を沐浴させて、〔油を〕塗って、諸々の衣をまとわせて、彼女のためにと、施物を指示した。

 

64. 〔彼女のためにと〕指定された等しく直後に、報いは生起した──〔すなわち〕食料と衣服と飲み物が。これは、施物の果である。

 

65. そののち、〔彼女は〕清らかな衣の清浄なる者となり、カーシ産の最上の〔衣〕を〔身に〕付け、笑いながら、天宮から出た。『これは、施物の果です』と。

 

66. 〔商人たちが尋ねた〕「美しく彩りあざやかな形態の、好ましきものとなり、あなたの天宮は、光り輝きます。天神よ、〔問いを〕尋ねられた者として、告げ知らせてください。これは、どのような行為の果なのですか」と。

 

67. 〔女餓鬼が答えた〕「わたしは、油菓子を、〔道を〕歩む比丘に、〔心が〕真っすぐと成った者に、施しました──清信した心で。

 

68. その善なる行為の報いを、長途にわたり、天宮において受領するも、しかしながら、それは、今や、ほんの僅かなのです。

 

69. 四月の後に、命を終えることに成るでしょう。一方的に辛辣なる、おぞましき地獄に、わたしは落ちるでしょう。

 

70. 四つの隅があり、四つの門があり、等分に計量され区分され、鉄柵を極限とし、鉄によって覆い包まれている〔地獄〕に。

 

71. その〔地獄〕の鉄製の地は、燃え盛り、火に充ち、百ヨージャナ(由旬:長さの単位・軛牛の一日の旅程距離)の遍きにわたり充満して、一切時に止住します。

 

72. そこにおいて、わたしは、長時にわたり、苦痛の感受(苦受)を感受するでしょう──そして、悪しき行為の果として。それゆえに、わたしは、激しく憂い悲しむのです」〔と〕。ということで──

 

 カッラーティヤ・ペーティヴァットゥが、第十となる。

 

1. 11. ナーガ・ペータヴァットゥ(象の餓鬼の事例)

 

73. 〔比丘が尋ねた〕「まさしく、先頭に〔位置する者は〕、白象に〔乗って〕去り行き、また、中間に〔位置する者は〕、雌騾馬の車に〔乗って去り行き〕、そして、最後に〔位置する〕少女は、駕篭に〔乗って〕導かれます──遍きにわたり、十方を照らしながら。

 

74. いっぽう、あなたたちは、棍棒を手に手に〔殴り合い〕、五体は切られ破られ、顔は泣いています。人間として有った〔あなたたち〕は、どのような悪しき〔行為〕を為したのですか。それによって、〔あなたたちは〕互いに他の血を飲みます」と。

 

75. 〔餓鬼たちが答えた〕「まさしく、先頭に〔位置する者は〕、すなわち、四〔足〕で進み行くクンジャラの白象に〔乗って〕赴く者ですが、彼は、わたしたちの長子として〔世に〕有りました。諸々の布施を施して、安楽の者となり、歓喜します。

 

76. 中間に〔位置する者は〕、すなわち、〔まさに〕その、四頭立ての疾駆する雌騾馬の車に〔乗って赴く者ですが〕、彼は、わたしたちの中子として〔世に〕有りました。物惜〔の思い〕なき施主として、遍照します。

 

77. そして、最後に〔位置する少女は〕、すなわち、〔まさに〕その、駕篭に〔乗って〕導かれる、鹿の優しい眼をした、智慧を有する女ですが、彼女は、わたしたちの末娘として〔世に〕有りました。半分に分け合うことで、安楽の者となり、歓喜します。

 

78. そして、これらの者たちは、過去において、諸々の布施を施しました──清信した心の者たちとなり、沙門や婆羅門たちに。いっぽう、わたしたちは、物惜〔の思い〕ある者たちとして、沙門や婆羅門たちを誹謗する者たちとして、〔世に〕有りました。そして、これらの者たちは、施して楽しみ、そして、わたしたちは、切られた葦のように干上がるのです」と。

 

79. 〔比丘が尋ねた〕「あなたたちにとって、どのようなものが、食料なのですか、どのようなものが、臥所なのですか。そして、どのように、〔身を〕保ち行くのですか──極めて悪しき法(性質)の者たちとして。少なからざる沢山の財物があるなかで、安楽を失って、今日、苦痛に至り得た者たちとなり」と。

 

80. 〔餓鬼たちが答えた〕「〔わたしたちは〕互いに他を打ち殺して、膿と血を飲みます。多くを飲んでも、充足の者たちと成らず、わたしたちは喜びません。

 

81. まさしく、かくのごとく、施者ならざる人間たちは嘆き悲しみます──死してのち、夜魔のもとに止住する者たちとなり。すなわち、彼らが、諸々の財物を見出して到達しても、〔それらを〕受益せず、また、功徳を作り為さないなら。

 

82. 彼らは、他所において、飢えと渇きを具した者たちとなり、〔業火に〕焼かれながら、未来に、長きにわたり燃やされます。苦痛を生成し、辛辣なる果となる、諸々の〔悪しき〕行為を為して、苦しみを受領します。

 

83. まさに、財産は、穀物は、暫しのものです。この〔世において〕、生命は、暫しのものです。暫しのものを『暫しのものである』と〔あるがままに〕知って、賢者は、洲を作り為すべきです。

 

84. すなわち、それらの者たちが、このように覚知するなら、人として、法(真理)の熟知者たちであり、彼らは、布施において怠りません──阿羅漢たちの言葉を聞いて〔そのちは〕」〔と〕。ということで──

 

 ナーガ・ペータヴァットゥが、第十一となる。

 

1. 12. ウラガ・ペータヴァットゥ(蛇の餓鬼の事例)

 

85. 〔死者の父が言った〕「蛇が、老化した皮を〔捨て去る〕ように、自らの体躯を捨棄して、〔彼は〕去って行きます。このように、肉体の受益なく、命を終えた餓鬼として存しているなら。

 

86. 〔荼毘の火に〕焼かれながら、〔彼は〕親族たちの嘆き悲しみを知りません。それゆえに、〔わたしは〕このことを泣き叫びません。彼は、去って行ったのです。彼には、すなわち、赴く所()があるのです」〔と〕。

 

87. 〔死者の母が言った〕「〔彼は〕呼ばれることなく、そこからやってきました。〔彼は〕許されることなく、ここから去って行ったのです。すなわち、やってきたように、そのように、去って行ったのです。そこにおいて、何の嘆き悲しみがあるというのでしょう。

 

88. 〔荼毘の火に〕焼かれながら、〔彼は〕親族たちの嘆き悲しみを知りません。それゆえに、〔わたしは〕このことを泣き叫びません。彼は、去って行ったのです。彼には、すなわち、赴く所があるのです」〔と〕。

 

89. 〔死者の妹が言った〕「それで、もし、〔わたしが〕泣き叫ぶなら、〔わたしは〕痩せ細った者となり、〔世に〕存するでしょう。そこにおいて、わたしに、何の果が存するというのでしょう。親族や朋友や知人たちの、わたしたちへのより一層の不満〔の思い〕が存するでしょう。

 

90. 〔荼毘の火に〕焼かれながら、〔彼は〕親族たちの嘆き悲しみを知りません。それゆえに、〔わたしは〕このことを泣き叫びません。彼は、去って行ったのです。彼には、すなわち、赴く所があるのです」〔と〕。

 

91. 〔死者の妻が言った〕「あたかも、また、幼児が、去って行く月に泣き叫ぶように、このように、まさしく、同様のものとして、このことはあります。すなわち、餓鬼を憂い悲しむことは。

 

92. 〔荼毘の火に〕焼かれながら、〔彼は〕親族たちの嘆き悲しみを知りません。それゆえに、〔わたしは〕このことを泣き叫びません。彼は、去って行ったのです。彼には、すなわち、赴く所があるのです」〔と〕。

 

93. 〔死者の奴婢が言った〕「梵(婆羅門)よ、あたかも、また、壊れた水瓶が、〔もはや〕結生なくあるように、このように、まさしく、同様のものとして、このことはあります。すなわち、餓鬼を憂い悲しむことは。

 

94. 〔荼毘の火に〕焼かれながら、〔彼は〕親族たちの嘆き悲しみを知りません。それゆえに、〔わたしは〕このことを泣き叫びません。彼は、去って行ったのです。彼には、すなわち、赴く所があるのです」〔と〕。ということで──

 

 ウラガ・ペータヴァットゥが、第十二となる。

 

 蛇の章が第一となり、〔以上で〕終了となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「そして、田畑、豚、腐った〔顔〕、そして、また、粉、壁の外、そして、五とまた七子、野牛、そして、織物師、そのように、禿頭、象、まさしく、そして、蛇があり、十二となる」と。

 

2. ウッバリの章

 

2. 1. サンサーラモーチャカ・ペーティヴァットゥ(輪廻の解放者の女餓鬼の事例)

 

95. 〔サーリプッタ長老が尋ねた〕「〔あなたは〕裸で、醜き色艶の形態ある者として〔世に〕存しています。痩せ細り、〔浮き出た〕血管が〔身体中に〕広がっています。肋骨が突き出た者よ、痩せ細った者よ、あなたは、いったい、どのような者として、ここに止住するのですか」と。

 

96. 〔女餓鬼が答えた〕「幸甚なる方よ、わたしは、女餓鬼として〔世に〕存しています。悪しき境遇の者にして、夜魔の世にある者です。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのです」と。

 

97. 〔サーリプッタ長老が尋ねた〕「いったい、どのような悪行が、身体によって、言葉によって、意によって、為されたのですか。どのような行為の報いによって、ここから餓鬼の世に赴いたのですか」と。

 

98. 〔女餓鬼が答えた〕「尊き方よ、わたしに、慈しみ〔の思い〕ある者たちは有りませんでした。そして、父は、母は、さらに、あるいは、また、親族たちも。すなわち、『布施を施しなさい──清信した心の者となり、沙門や婆羅門たちに』〔と〕、わたしを駆り立ててくれる、〔そのような者たちは〕。

 

99. わたしは、これより五百年のあいだ、すなわち、このような形態の者として、裸で、〔世を〕渡り歩きます──飢えによって、かつまた、渇きによって、喰い尽くされながら。これは、わたしの悪しき行為の果です。

 

100. 尊貴なる方よ、〔わたしは〕清信した心の者となり、あなたを敬拝します。勇者たる方よ、大いなる威力ある方よ、わたしを慈しみたまえ。まさに、それが何であれ、そして、〔何かを〕施して、わたしのためにと指示してください。幸甚なる方よ、わたしを悪しき境遇から解き放ちたまえ」と。

 

101. 彼は、慈しみ〔の思い〕あるサーリプッタ〔長老〕は、「善きかな」と答えて、比丘たちに、握り飯を施して、そして、手のひらほどの布切れを〔施して〕、さらに、小皿の飲み物を〔施して〕、彼女のためにと、施物を指示した。

 

102. 〔彼女のためにと〕指定された等しく直後に、報いは生起した──〔すなわち〕食料と衣服と飲み物が。これは、施物の果である。

 

103. そののち、〔彼女は〕清らかな衣の清浄なる者となり、カーシ産の最上の〔衣〕を〔身に〕付け、様々な彩りの衣と装飾品をまとい、サーリプッタ〔長老〕のもとへと近づいて行った。

 

104. 〔サーリプッタ長老が尋ねた〕「天神よ、崇高なる色艶によって、すなわち、あなたは、〔ここに〕立ちます。一切の方角を照らしながら、明けの明星のように。

 

105. 何によって、あなたに、そのような色艶があるのですか。何によって、あなたに、ここに、〔そのような色艶が〕実現し、そして、あなたに、諸々の財物が生起するのですか。それらが何であれ、意に愛しきものとして。

 

106. 天女よ、大いなる威力ある者よ、あなたに、〔わたしは〕尋ねます。人間として有った〔あなた〕は、何を、功徳として作り為したのですか。何によって、このように、燃え盛る威力ある者として存しているのですか。そして、あなたの色艶は、一切の方角に光り輝きます」と。

 

107. 〔天女が答えた〕「〔肌が〕黄ばみ、痩せ細り、空腹で、裸で、朽ち果てた肌の者を、〔まさに〕その、わたしを、牟尼たる方は、世における慈悲の者たる方は、悪しき境遇の者と見ました。

 

108. 比丘たちに、握り飯を施して、そして、手のひらほどの布切れを〔施して〕、さらに、小皿の飲み物を〔施して〕、わたしのためにと、施物を指示しました。

 

109. 見てください──握り飯の果を。千年のあいだ、食事を、無数の味と香味ある〔食事〕を、欲するままに欲する者となり、〔わたしは〕食べます。

 

110. 見てください──手のひらほどの布切れの報いを、そのありようを。すなわち、ナンダ王の領土における、あるかぎりの諸々の衣服も──

 

111. 尊き方よ、わたしには、それよりも、より多くの、諸々の衣があり、諸々の衣服があります。諸々の絹や毛布のものがあり、さらに、諸々の亜麻や木綿のものがあります。

 

112. そして、広大にして、かつまた、高価なる、それら〔の衣服〕はまた、虚空に垂れ下がります。〔まさに〕その、わたしは、その〔衣服〕をまといます──まさに、その〔衣服〕その〔衣服〕が、意に愛しきものであるなら。

 

113. 見てください──そして、小皿の飲み物の報いを、そのありようを。深遠にして、かつまた、四角なる、諸々の蓮池が、美しく化作されました。

 

114. 水は白く、美しい岸辺があり、冷涼で、悪臭なく、諸々の赤蓮や青蓮に等しく覆われ、水は〔蓮の〕花糸に満ちています。

 

115. 〔まさに〕その、わたしは、喜び楽しみ、遊び戯れ、歓喜します──何も恐れない者となり。尊き方よ、牟尼たる方を、世における慈悲の者たる方を、〔あなたを〕敬拝するために、〔わたしは〕やってきたのです」〔と〕。ということで──

 

 サンサーラモーチャカ・ペーティヴァットゥが、第一となる。

 

2. 2. サーリプッタッテーラマートゥ・ペーティヴァットゥ(サーリプッタ長老の母の女餓鬼の事例)

 

116. 〔サーリプッタ長老が尋ねた〕「〔あなたは〕裸で、醜き色艶の形態ある者として〔世に〕存しています。痩せ細り、〔浮き出た〕血管が〔身体中に〕広がっています。肋骨が突き出た者よ、痩せ細った者よ、あなたは、いったい、どのような者として、ここに止住するのですか」と。

 

117. 〔女餓鬼が答えた〕「過去における諸他の生において、わたしは、あなたの実母として〔世に有りました〕。〔そののち、わたしは〕餓鬼の境域に再生したのです──飢えと渇きに組み敷かれる者となり。

 

118. 吐き捨てられ、投げ放たれた、唾液を、鼻水を、痰を、そして、焼かれている者たちの膏を、そして、出産した者たちの血を──

 

119. さらに、傷ある者たちの、鼻や頭が切られた者たちの、〔まさに〕その、血を、女や男に依拠する〔不浄物〕を、飢えに打ち負かされ、〔わたしは〕食べます。

 

120. 家畜たちの、さらに、人間たちの、膿や血を、〔わたしは〕食物とします。避難所なく、かつまた、家なく、青黒い臥床を行き着く所とする者です。

 

121. 子供よ、わたしに、布施を施したまえ。〔何かを〕施して、わたしのためにと指定したまえ。まさしく、おそらく、まさに、〔わたしは〕解き放たれるでしょう──膿と血の食料から」と。

 

122. 母の言葉を聞いて、慈しみ〔の思い〕あるウパティッサ(サーリプッタ)〔長老〕は、モッガッラーナ〔長老〕を招いた──さらに、アヌルッダ〔長老〕を、カッピナ〔長老〕を。

 

123. 四つの小屋を作って、四方の僧団にたいし施した。諸々の小屋を、さらに、食べ物と飲み物を、母のためにと、施物を指示した。

 

124. 〔彼女のためにと〕指定された等しく直後に、報いは生起した──〔すなわち〕食料と衣服と飲み物が。これは、施物の果である。

 

125. そののち、〔彼女は〕清らかな衣の清浄なる者となり、カーシ産の最上の〔衣〕を〔身に〕付け、様々な彩りの衣と装飾品をまとい、コーリタ(モッガッラーナ)〔長老〕のもとへと近づいて行った。

 

126. 〔モッガッラーナ長老が尋ねた〕「天神よ、崇高なる色艶によって、すなわち、あなたは、〔ここに〕立ちます。一切の方角を照らしながら、明けの明星のように。

 

127. 何によって、あなたに、そのような色艶があるのですか。何によって、あなたに、ここに、〔そのような色艶が〕実現し、そして、あなたに、諸々の財物が生起するのですか。それらが何であれ、意に愛しきものとして。

 

128. 天女よ、大いなる威力ある者よ、あなたに、〔わたしは〕尋ねます。人間として有った〔あなた〕は、何を、功徳として作り為したのですか。何によって、このように、燃え盛る威力ある者として存しているのですか。そして、あなたの色艶は、一切の方角に光り輝きます」と。

 

129. 〔天女が答えた〕「過去における諸他の生において、わたしは、サーリプッタ〔長老〕の母として〔世に有りました〕。〔そののち、わたしは〕餓鬼の境域に再生したのです──飢えと渇きに組み敷かれる者となり。

 

130. 吐き捨てられ、投げ放たれた、唾液を、鼻水を、痰を、そして、焼かれている者たちの膏を、そして、出産した者たちの血を──

 

131. さらに、傷ある者たちの、鼻や頭が切られた者たちの、〔まさに〕その、血を、女や男に依拠する〔不浄物〕を、飢えに打ち負かされ、〔わたしは〕食べます。

 

132. 家畜たちの、さらに、人間たちの、膿や血を、〔わたしは〕食物とします。避難所なく、かつまた、家なく、青黒い臥床を行き着く所とする者です。

 

133. サーリプッタ〔長老〕の布施によって、〔わたしは〕歓喜します──何も恐れない者となり。尊き方よ、牟尼たる方を、世における慈悲の者たる方を、〔あなたを〕敬拝するために、〔わたしは〕やってきたのです」〔と〕。ということで──

 

 サーリプッタッテーラマートゥ・ペーティヴァットゥが、第二となる。

 

2. 3. マッター・ペーティヴァットゥ(マッターの女餓鬼の事例)

 

134. 〔ティッサーが尋ねた〕「〔あなたは〕裸で、醜き色艶の形態ある者として〔世に〕存しています。痩せ細り、〔浮き出た〕血管が〔身体中に〕広がっています。肋骨が突き出た者よ、痩せ細った者よ、あなたは、いったい、どのような者として、ここに止住するのですか」と。

 

135. 〔女餓鬼が答えた〕「わたしは、マッターです。あなたは、ティッサーです。かつて、〔わたしは〕あなたと夫を共にする者として〔世に〕有りました。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのです」と。

 

136. 〔ティッサーが尋ねた〕「いったい、どのような悪行が、身体によって、言葉によって、意によって、為されたのですか。どのような行為の報いによって、ここから餓鬼の世に赴いたのですか」と。

 

137. 〔女餓鬼が答えた〕「そして、〔わたしは〕狂暴なる者として、かつまた、粗暴なる者として、嫉妬と物惜〔の思い〕ある狡猾の者として、〔世に〕存しました。わたしは、あなたに悪言を言って、ここから餓鬼の世に赴いたのです」と。

 

138. 〔ティッサーが尋ねた〕「わたしもまた、一切を知ります。あなたが、狂暴なる者として〔世に〕有った、そのとおりに。では、他のことを、まさに、あなたに尋ねます。何によって、〔あなたは〕砂だらけの者として存しているのですか」と。

 

139. 〔女餓鬼が答えた〕「あなたは、頭を洗い、清らかな衣をまとい、〔装いを〕十分に作り為した者として〔世に〕存しました。そして、わたしは、まさに、旺盛なるままに、あなたよりも、より〔装いを〕十二分に作り為した者として〔世に存しました〕。

 

140. 〔まさに〕その、わたしが見ているところで、〔あなたは〕主人と語り合いました。そののち、わたしの、嫉妬〔の思い〕は広大なるものとなり、わたしに、忿激〔の思い〕が生じました。

 

141. そののち、砂を掴んで、砂を、まさに、あなたに振りまきました。その行為の報いによって、それによって、〔わたしは〕砂だらけの者として存しているのです」と。

 

142. 〔ティッサーが尋ねた〕「わたしもまた、一切を(※)知ります。あなたは、砂を、わたしに振りまきました。では、他のことを、まさに、あなたに尋ねます。何によって、〔あなたは〕疥癬にかぶれているのですか」と。

 

※ テキストには Saccaṃ とあるが、PTS版により Sabbaṃ と読む。以下の平行箇所も同様。

 

143. 〔女餓鬼が答えた〕「〔わたしたちは〕薬草を採取する者たちとして、両者ともに、林の外れに赴きました。そして、あなたは、薬草を採取しました。ですが、わたしは、諸々のカピカッチュ〔の毒草〕を〔採取しました〕。

 

144. 〔まさに〕その、あなたが知らずにいるところで、わたしは、あなたの臥所に、〔毒草を〕等しく振りまきました。その行為の報いによって、それによって、〔わたしは〕疥癬にかぶれているのです」と。

 

145. 〔ティッサーが尋ねた〕「わたしもまた、一切を知ります。あなたは、わたしの臥所に、〔毒草を〕等しく振りまきました。では、他のことを、まさに、あなたに尋ねます。何によって、あなたは、裸の者として存しているのですか」と。

 

146. 〔女餓鬼が答えた〕「仲間たちの集いが存しました。親族たちの集まりが有りました。そして、あなたは存しました──主人と共に招かれた者として。ですが、まさに、わたしは、さにあらず。

 

147. 〔まさに〕その、あなたが知らずにいるところで、わたしは、あなたの衣服を取り去りました。その行為の報いによって、それによって、わたしは、裸の者として存しているのです」と。

 

148. 〔ティッサーが尋ねた〕「わたしもまた、一切を知ります。あなたは、わたしの衣服を取り去りました。では、他のことを、まさに、あなたに尋ねます。何によって、糞の臭いがする者として存しているのですか」と。

 

149. 〔女餓鬼が答えた〕「あなたの、そして、香料を、かつまた、花飾を、さらに、高価なる塗料を、〔わたしは〕糞坑に投げ込みました。その悪しき〔行為〕が、わたしによって為されました。その行為の報いによって、それによって、糞の臭いがする者として存しているのです」と。

 

150. 〔ティッサーが尋ねた〕「わたしもまた、一切を知ります。その悪しき〔行為〕が、あなたによって為されました。では、他のことを、まさに、あなたに尋ねます。何によって、あなたは、悪しき境遇の者として存しているのですか」と。

 

151. 〔女餓鬼が答えた〕「〔わたしたちの〕両者には、等しきものが存しました。すなわち、家に見出される財としては。諸々の施すべき法(施物)が存しているのに、〔わたしは〕自己の洲を作りませんでした。その行為の報いによって、それによって、悪しき境遇の者として存しているのです。

 

152. まさしく、そのとき、あなたは、わたしに言いました。『〔あなたは〕悪しき行為に慣れ親しみます。まさに、諸々の悪しき行為あることから、善き境遇は、得易きものと成らず』」と。

 

153. 〔ティッサーが言った〕「あなたは、わたしのことを、逆〔の観点〕から信受しました。さらに、また、わたしのことを妬みました。見てください──諸々の悪しき行為には、そのような報いが有ります。

 

154. あなたのものとして、諸々の家屋や奴婢たちが(※)、まさしく、それらの装飾品が、これらのものが存しました。それらのものを、〔今や〕他の者たちが楽しみます。諸々の財物で、常久なるものは有りません。

 

※ テキストには Te gharā tā ca dāsiyo とあるが、PTS版により Te gharadāsiyo āsuṃ と読む。

 

155. 今や、〔わたしの子の〕ブータの父(ティッサーとマッターの夫)が、店から家に至るところです。まさしく、おそらく、あなたに、何らかのものを施すでしょう。まさに、それまでは、ここから去ってはいけません」と。

 

156. 〔女餓鬼が言った〕「〔わたしは〕裸で、醜き色艶の形態ある者として〔世に〕存しています。痩せ細り、〔浮き出た〕血管が〔身体中に〕広がっています。女たちにとって、これは、隠すべきことです。ブータの父が、わたしを見ることがあってはなりません」と。

 

157. 〔ティッサーが言った〕「さて、わたしは、あなたのために、あるいは、何を施しましょう。この〔世において〕、わたしは、あなたのために、あるいは、何を為しましょう。それによって、あなたが、一切の欲望が等しく実現する者となり、安楽の者となり、〔世に〕存するべく」と。

 

158. 〔女餓鬼が言った〕「僧団からの四者の比丘に、また、人物としての四者〔の比丘〕に、〔これらの〕八者の比丘たちに、〔施食を〕食べさせて、わたしのためにと、施物を指示してください。そのとき、わたしは、一切の欲望が等しく実現する者となり、安楽の者となり、〔世に〕有るでしょう」と。

 

159. 彼女は、「善きかな」と答えて、八者の比丘たちに、〔施食を〕食べさせて、諸々の衣をまとわせて、彼女のためにと、施物を指示した。

 

160. 〔彼女のためにと〕指定された等しく直後に、報いは生起した──〔すなわち〕食料と衣服と飲み物が。これは、施物の果である。

 

161. そののち、〔彼女は〕清らかな衣の清浄なる者となり、カーシ産の最上の〔衣〕を〔身に〕付け、様々な彩りの衣と装飾品をまとい、夫を共にする者(ティッサー)のもとへと近づいて行った。

 

162. 〔ティッサーが尋ねた〕「天神よ、崇高なる色艶によって、すなわち、あなたは、〔ここに〕立ちます。一切の方角を照らしながら、明けの明星のように。

 

163. 何によって、あなたに、そのような色艶があるのですか。何によって、あなたに、ここに、〔そのような色艶が〕実現し、そして、あなたに、諸々の財物が生起するのですか。それらが何であれ、意に愛しきものとして。

 

164. 天女よ、大いなる威力ある者よ、あなたに、〔わたしは〕尋ねます。人間として有った〔あなた〕は、何を、功徳として作り為したのですか。何によって、このように、燃え盛る威力ある者として存しているのですか。そして、あなたの色艶は、一切の方角に光り輝きます」と。

 

165. 〔天女が答えた〕「わたしは、マッターです。あなたは、ティッサーです。かつて、〔わたしは〕あなたと夫を共にする者として〔世に〕有りました。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのです。

 

166. 施された、あなたの布施によって、〔わたしは〕歓喜します──何も恐れない者となり。姉妹よ、全ての親族たちと共に、長きにわたり生きてください。憂いなく〔世俗の〕塵を離れる境位に、自在〔天〕の居住所に、〔再生してください〕。

 

167. 美しく輝く方よ、この〔世において〕、法(正義)〔の道〕を歩んで、布施を施して、物惜の垢を根ごと取り除いて、〔誰からも〕非難されることなく、天上の境位に近づきたまえ」〔と〕。ということで──

 

 マッター・ペーティヴァットゥが、第三となる。

 

2. 4. ナンダー・ペーティヴァットゥ(ナンダーの女餓鬼の事例)

 

168. 〔ナンダセーナが尋ねた〕「〔あなたは〕色黒く、醜き色艶の形態ある者として、粗暴で、恐ろしき見た目ある者として、〔世に〕存しています。赤眼の者として〔世に〕存しています。出歯の者として〔世に〕存しています。〔わたしは〕あなたを人間とは思いません」と。

 

169. 〔女餓鬼が答えた〕「ナンダセーナよ、わたしは、ナンダーです。かつて、あなたの妻として〔世に〕有りました。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのです」と。

 

170. 〔ナンダセーナが尋ねた〕「いったい、どのような悪行が、身体によって、言葉によって、意によって、為されたのですか。どのような行為の報いによって、ここから餓鬼の世に赴いたのですか」と。

 

171. 〔女餓鬼が答えた〕「そして、〔わたしは〕狂暴なる者として、かつまた、粗暴なる者として、さらに、また、あなたにたいし尊重〔の思い〕なき者として、〔世に〕存しました。わたしは、あなたに悪言を言って、ここから餓鬼の世に赴いたのです」と。

 

172. 〔ナンダセーナが言った〕「さあ、あなたに、上着を施しましょう。この衣服を着てください。この衣服を着て、さあ、あなたを、家に連れて行きましょう。

 

173. そして、衣を、さらに、食べ物と飲み物を、あなたは得るでしょう──〔あなたが〕家に赴いたなら。そして、あなたの子たちを見るでしょう。さらに、嫁たちと会うでしょう」と。

 

174. 〔女餓鬼が言った〕「あなたの手から〔わたしの〕手に施されたものは、わたしのために役立ちません。そして、戒を成就した比丘たちを、貪欲を離れた多聞の者たちを──

 

175. 食べ物と飲み物によって満足させてください。わたしのためにと、施物を指示してください。そのとき、わたしは、一切の欲望が等しく実現する者となり、安楽の者となり、〔世に〕有るでしょう」と。

 

176. 彼は、「善きかな」と答えて、広大なる布施を撒き散らした──食べ物を、飲み物を、固形の食料を、さらに、諸々の衣や臥坐具を、日傘を、そして、香料を、かつまた、花飾を、さらに、様々な種類の履物を。

 

177. そして、戒を成就した比丘たちを、貪欲を離れた多聞の者たちを、食べ物と飲み物によって満足させて、彼女のためにと、施物を指示した。

 

178. 〔彼女のためにと〕指定された等しく直後に、報いは生起した──〔すなわち〕食料と衣服と飲み物が。これは、施物の果である。

 

179. そののち、〔彼女は〕清らかな衣の清浄なる者となり、カーシ産の最上の〔衣〕を〔身に〕付け、様々な彩りの衣と装飾品をまとい、主人のもとへと近づいて行った。

 

180. 〔ナンダセーナが尋ねた〕「天神よ、崇高なる色艶によって、すなわち、あなたは、〔ここに〕立ちます。一切の方角を照らしながら、明けの明星のように。

 

181. 何によって、あなたに、そのような色艶があるのですか。何によって、あなたに、ここに、〔そのような色艶が〕実現し、そして、あなたに、諸々の財物が生起するのですか。それらが何であれ、意に愛しきものとして。

 

182. 天女よ、大いなる威力ある者よ、あなたに、〔わたしは〕尋ねます。人間として有った〔あなた〕は、何を、功徳として作り為したのですか。何によって、このように、燃え盛る威力ある者として存しているのですか。そして、あなたの色艶は、一切の方角に光り輝きます」と。

 

183. 〔天女が答えた〕「ナンダセーナよ、わたしは、ナンダーです。かつて、あなたの妻として〔世に〕有りました。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのです。

 

184. 施された、あなたの布施によって、〔わたしは〕歓喜します──何も恐れない者となり。家長よ、全ての親族たちと共に、長きにわたり生きてください。憂いなく〔世俗の〕塵を離れる境位に、自在〔天〕の居住所に、〔再生してください〕。

 

185. 家長よ、この〔世において〕、法(正義)〔の道〕を歩んで、布施を施して、物惜の垢を根ごと取り除いて、〔誰からも〕非難されることなく、天上の境位に近づきたまえ」〔と〕。ということで──

 

 ナンダー・ペーティヴァットゥが、第四となる。

 

2. 5. マッタクンダリー・ペータヴァットゥ(艶やかな耳飾の餓鬼の事例)

 

186. 〔婆羅門が尋ねた〕「〔装いを〕十分に作り為し、艶やかな耳飾をし、花飾を〔身に〕付け、黄の栴檀〔の香り〕芳しくも、〔あなたは、両の〕腕を突き上げて泣き叫ぶ。あなたは、林の中で、何を苦しんでいるのですか」と。

 

187. 〔若者が答えた〕「わたしに、黄金で作られている光輝ある車の乗物が現われたのですが、その〔車〕のための組となる車輪を、〔わたしは〕見出しません。その苦しみによって、〔わたしは〕生命を捨棄します」と。

 

188. 〔婆羅門が尋ねた〕「黄金で作られているものも、宝珠で作られているものも、紅玉で作られているものも、さらに、白銀で作られているものも──幸いなる者よ、若者よ、〔どの車輪が欲しいのかを〕わたしに告げ知らせよ。組となる車輪を、あなたに奉施します」と。

 

189. その若者は、彼に説いた。〔若者が答えた〕「月と日は、両者ともに、ここにおいて、〔この眼で〕見られます。黄金で作られている、わたしの車は、その〔両者〕を組とする車輪によって、美しく輝きます」と。

 

190. 〔婆羅門が言った〕「若者よ、まさに、あなたは、愚者として存しています。すなわち、あなたは、望み求めるべきではないものを望み求めます。〔わたしは〕思います──あなたは死ぬでしょう。なぜなら、あなたは、月と日を、〔両者ともに〕得られないからです」と。

 

191. 〔若者が言った〕「〔月と日の〕両者ともに、ここにおいて、〔その〕色艶と界域(実質的要素)は、〔その〕道程において、〔この眼で見られます〕。去り行くところと至り来るところもまた、〔この眼で〕見られます。命を終えた餓鬼(婆羅門の死んだ子)は、〔この眼で〕見られません。泣き叫んでいる者たちのなかで、いったい、この〔世において〕、誰が、より愚者なのですか」と。

 

192. 〔婆羅門が言った〕「若者よ、まさに、〔あなたは〕真理を説く。泣き叫んでいる者たちのなかで、わたしこそは、より愚者なのだ。〔去り行く〕月に泣き叫ぶ幼児のように、命を終えた餓鬼を望み求めるとは(死んだ子を求めても無駄である)。

 

193. 酪を注いだ火のように、まさに、燃え盛る者として存しているわたしを、〔その〕一切の懊悩を、水を降り注ぐかのように、〔あなたは〕寂滅させる。

 

194. 心臓(心)に依拠する憂い悲しみを、わたしの矢を、まさに、引き抜いてくれた。すなわち、憂い悲しみに打ち負かされたわたしの、子〔の死〕の憂い悲しみを、除き去ったのだ。

 

195. 〔まさに〕その、わたしは、矢が引き抜かれた者として存している。〔心が〕清涼と成り寂滅した者として存している。〔わたしは〕憂い悲しまない。〔わたしは〕泣き叫ばない。若者よ、あなたの〔言葉を〕聞いて〔そののちは〕」と。

 

196. 〔婆羅門が尋ねた〕「いったい、〔あなたは〕天神として存しているのですか、音楽神として〔存しているのですか〕、それとも、プリンダダ(都の破壊者)たる帝釈〔天〕として〔存しているのですか〕。あなたは、あるいは、誰なのですか、あるいは、誰の子なのですか。どのように、わたしどもは、あなたのことを知るべきですか」と。

 

197. 〔若者が答えた〕「そして、すなわち、〔あなたは〕泣き叫び、さらに、すなわち、泣き悲しみます──火葬場において、自らの子を焼いて。〔まさに〕その、〔あなたの子である〕わたしは、善なる行為を為して、三十三天〔の神々〕たちとの共住に赴いたのです(天界に再生した)」と。

 

198. 〔婆羅門が尋ねた〕「あるいは、少なきものも、あるいは、多きものも、〔わたしどもは〕見ません──自らの家において施している〔あなた〕の布施を、あるいは、そのような斎戒の行為を。どのような行為によって、〔あなたは〕天の世に赴いた者として存しているのですか」と。

 

199. 〔若者が答えた〕「わたしは、病苦の者であり、苦痛の者であり、病む者であり、自らの住居地において、病者の形態ある者として存するも、覚者(ブッダ)を、〔世俗の〕塵を離れ去った方を、〔一切の〕疑いを超え渡った方を、善き至達者たる方を、至上の智慧ある方を、見ました。

 

200. 〔まさに〕その、わたしは、歓喜した意の者となり、清信した心の者となり、如来に、合掌を為しました。わたしは、その善なる行為を為して、三十三天〔の神々〕たちとの共住に赴いたのです」と。

 

201. 〔婆羅門が言った〕「まさに、稀有なることです。まさに、未曾有のことです。合掌の行為に、このような報いがあるとは。わたしもまた、歓喜した意の者となり、清信した心の者となり、まさしく、今日、覚者を帰依所に進み行きます。

 

202. 〔若者が言った〕「まさしく、今日、覚者を帰依所に進み行きなさい。そして、法(教え)を、さらに、僧団を、清信した心の者となり。まさしく、そのように、破断と亀裂なき五つの境処(五戒)を学んで、受持するのです。

 

203. すみやかに、命あるものを殺すことから離れなさい。世において与えられていないものを遍く避けなさい。酒を飲まない者として〔世に有りなさい〕。そして、虚偽を話してはいけません。さらに、自らの妻で満足している者として〔世に〕有りなさい」と。

 

204. 〔婆羅門が言った〕「夜叉よ、わたしにとって、〔あなたは〕義(利益)を欲する者として存しています。天神よ、〔あなたは〕益を欲する者として存しています。〔わたしは〕あなたの言葉を為します。わたしにとって、あなたは、師匠として存しています。

 

205. 帰依所として、覚者のもとへと、そして、また、無上なる法(教え)へと、〔わたしは〕近しく至ります。さらに、人と天〔の神〕の帰依所として、僧団へと、わたしは赴きます。

 

206. すみやかに、命あるものを殺すことから離れます。世において与えられていないものを遍く避けます。酒を飲まない者として〔世に有ります〕。そして、虚偽を話しません。さらに、自らの妻で満足している者として〔世に〕有ります」〔と〕。ということで──

 

 マッタクンダリー・ペータヴァットゥが、第五となる。

 

2. 6. カンハ・ペータヴァットゥ(カンハの餓鬼の事例)

 

207. 〔ローヒネイヤが言った〕「カンハ(ケーサヴァ)よ、起きてください。どうして、臥しているのですか。あなたにとって、夢に、どのような義(利益)があるというのでしょう。さてまた、すなわち、あなたにとって、心臓でもあれば、かつまた、右目でもある、実弟〔のガタ〕ですが、彼の〔心を〕、諸々の風の病が蝕みます。ケーサヴァよ、〔ガタは〕兎を渇望します」と。

 

208. 彼の、ローヒネイヤの、その言葉を聞いて、ケーサヴァは、急ぎの様子で〔床から〕起きた──弟〔の病〕の憂い悲しみに苦悩する者となり。

 

209. 〔ガタに、ケーサヴァが尋ねた〕「いったい、どうして、狂者の形態あるかのように、このドヴァーラカ〔の都〕の全部に、『兎』『兎』と泣き喚くのだ。どのような兎を、〔おまえは〕求めるのだ。

 

210. 黄金で作られているものも、宝珠で作られているものも、青銅で作られているものも、さらに、白銀で作られているものも、真珠貝や宝石や珊瑚で作られているものも──〔そのような〕兎を、おまえのために作らせよう。

 

211. 他にもまた、兎たちは存在する。林のなかにいる、林を餌場とする〔兎〕たちだ。彼らをもまた、おまえのために連れてこよう。どのような兎を、〔おまえは〕求めるのだ」と。

 

212. 〔ガタが答えた〕「これらの兎たちを、わたしは求めません──すなわち、地に依拠するものたちである、〔それらの〕兎たちは。月の兎を、〔わたしは〕求めます。ケーサヴァよ、それを、わたしのために取ってきてください」と。

 

213. 〔ケーサヴァが言った〕「親族よ、〔まさに〕その〔おまえ〕は、まちがいなく、甘美なる生命を捨棄するであろう。望み求めるべきではないものを、〔おまえは〕望み求める。月の兎を、〔おまえは〕求める」と。

 

214. 〔ガタが言った〕「すなわち、他の者に教え示すように、カンハよ、もし、このように、〔正しく〕知るのなら、何ゆえに、かつて死んだ子のことを、今日もまた憂い悲しむのですか。

 

215. それは、人間によっても、また、あるいは、人間ならざる者によっても、得られないのに、『わたしに生まれた子は、死んではならない』〔と〕、どうして、得られないものが得られるというのでしょう。

 

216. 呪文によって、根薬によって、諸々の薬によって、あるいは、財によっても、カンハよ、〔彼を〕連れてくることはできません。すなわち、餓鬼のことを、〔あなたは〕憂い悲しむのです。

 

217. 大いなる財産ある者たちも、大いなる財物ある者たちも、国土ある士族たちもまた、多大なる財産と穀物ある者たちも、彼らもまた、老と死なき者たちではありません。

 

218. 士族たちも、婆羅門たちも、庶民たちも、隷民たちも、チャンダーラ(賎民)やプックサ(非人)たちも、そして、これらの者たちも、さらに、他の生まれの者たちも、彼らもまた、老と死なき者たちではありません。

 

219. それらの者たちが、六つの支分ある梵の所思たる〔ヴェーダの〕呪文を遍く転起させるとして、そして、これらの者たちも、さらに、他の呪術による者たちも、彼らもまた、老と死なき者たちではありません。

 

220. あるいは、また、聖賢たちも、彼らが、寂静にして自己が自制された苦行者たちであるとして、それらの苦行者たちもまた、〔死の〕時に、肉体を捨棄します。

 

221. 自己を修めた者たちであり、為すべきことを為した煩悩なき者たちである、阿羅漢たちも、この肉身を捨置します──善と悪〔の行為の果〕の遍き滅尽ある者たちとして」と。

 

222. 〔ケーサヴァが言った〕「酪を注いだ火のように、まさに、燃え盛る者として存しているわたしを、〔その〕一切の懊悩を、水を降り注ぐかのように、〔あなたは〕寂滅させる。

 

223. 心臓(心)に依拠する憂い悲しみを、わたしの矢を、まさに、引き抜いてくれた。すなわち、憂い悲しみに打ち負かされたわたしの、子〔の死〕の憂い悲しみを、除き去ったのだ。

 

224. 〔まさに〕その、わたしは、矢が引き抜かれた者として存している。〔心が〕清涼と成り寂滅した者として存している。〔わたしは〕憂い悲しまない。〔わたしは〕泣き叫ばない。兄弟よ、あなたの〔言葉を〕聞いて〔そののちは〕」と。

 

225. 智慧を有する者たちは、このように為す──彼らが、慈しみ〔の思い〕ある者たちとして〔世に〕有るなら。〔彼らは、人を〕憂いから引き戻す──ガタが、長兄を〔引き戻した〕ように。

 

226. その者に、このような者たちとして、家臣たちが〔有り〕、侍者たちが有るなら、見事に語られた〔言葉〕によって、〔彼らは、彼に〕従い行く──ガタが、長兄を〔引き戻した〕ように。ということで──

 

 カンハ・ペータヴァットゥが、第六となる。

 

2. 7. ダナパーラセッティ・ペータヴァットゥ(ダナパーラ長者の餓鬼の事例)

 

227. 〔商人たちが尋ねた〕「〔あなたは〕裸で、醜き色艶の形態ある者として〔世に〕存しています。痩せ細り、〔浮き出た〕血管が〔身体中に〕広がっています。肋骨が突き出た者であり、痩せ細った者です。敬愛なる者よ、あなたは、いったい、どのような者として存しているのですか」〔と〕。

 

228. 〔餓鬼が答えた〕「幸甚なる方よ、わたしは、餓鬼として〔世に〕存しています。悪しき境遇の者にして、夜魔の世にある者です。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのです」〔と〕。

 

229. 〔商人たちが尋ねた〕「いったい、どのような悪行が、身体によって、言葉によって、意によって、為されたのですか。どのような行為の報いによって、ここから餓鬼の世に赴いたのですか」〔と〕。

 

230. 〔餓鬼が答えた〕「パンナ〔国〕に、城市が存在します。『エーラカッチャ』という〔名で世に〕聞こえた〔城市〕です。そこにおいて、かつて、〔わたしは〕長者として〔世に〕存しました。〔人々は〕わたしのことを『ダナパーラ(財の警護者)』と知ります。

 

231. わたしには、八十の金貨の荷車が有りました。わたしには、多大なる黄金が〔有りました〕。多くの真珠と瑠璃が〔有りました〕。

 

232. それほどまでに大いなる財があるもまた、わたしにとって、施すことは、愛しきものとして有りませんでした。〔わたしは〕門を締めて食べました。『乞い求める者たちが、わたしを見ることがあってはならない』〔と〕。

 

233. 〔わたしは〕信なき者として、かつまた、物惜〔の思い〕ある者として、〔世に〕存しました。吝嗇の者として、〔他者を〕誹謗する者として、〔世に存しました〕。〔信ある者たちが〕施しているなら、〔功徳を〕作り為しているなら、多くの人たちを阻止しました。

 

234. 『布施に、報いは存在しない。どうして、自制に、果があるというのだろう』〔と〕。諸々の蓮池を、諸々の井戸を、そして、育成された諸々の園地を、そして、諸々の水飲場を、そして、難所における諸々の橋を、無きものとしました。

 

235. 〔まさに〕その、わたしは、善き〔行為〕を為さず、悪しき〔行為〕を為し、そこから死滅し、餓鬼の境域に再生したのです──飢えと渇きに組み敷かれる者となり。

 

236. わたしが命を終えた、そののち、五十五年のあいだ、あるいは、食べたことを、また、あるいは、飲み物を飲んだことを、〔わたしは〕証知しません。

 

237. それが、〔布施の〕自制であるなら、それは、〔功徳の〕消失です。それが、〔功徳の〕消失であるなら、それは、〔布施の〕自制です。なぜなら、餓鬼たちは、まさに、知るからです。『それが、〔布施の〕自制であるなら、それは、〔功徳の〕消失である』〔と〕。

 

238. かつて、わたしは、〔布施を〕自制し、多くの財を施しませんでした。諸々の施すべき法(施物)が存しているのに、〔わたしは〕自己の洲を作りませんでした。〔まさに〕その、わたしは、のちに悩み苦しむのです──自己の行為の果へと近しく赴く者となり。

 

239. 四月の後に、命を終えることに成るでしょう。一方的に辛辣なる、おぞましき地獄に、わたしは落ちるでしょう。

 

240. 四つの隅があり、四つの門があり、等分に計量され区分され、鉄柵を極限とし、鉄によって覆い包まれている〔地獄〕に。

 

241. その〔地獄〕の鉄製の地は、燃え盛り、火に充ち、百ヨージャナ(由旬:長さの単位・軛牛の一日の旅程距離)の遍きにわたり充満して、一切時に止住します。

 

242. そこにおいて、わたしは、長時にわたり、苦痛の感受(苦受)を感受するでしょう──悪しき行為の果として。それゆえに、わたしは、激しく憂い悲しむのです。

 

243. 〔わたしは〕それを、あなたたちに説きます。あなたたちに、幸せ〔有れ〕──ここにおいて集いあつまった、そのかぎりの者たちは。もしくは、公然であろうと、内密であろうと、〔あなたたちは〕悪しき行為を為してはいけません。

 

244. それで、もし、〔あなたたちが〕その悪しき行為を〔未来において〕為すであろうなら、あるいは、〔いまここに〕為すなら、たとえ、〔空中に〕跳び上がって逃げようとしても、あなたたちに、苦しみからの解き放ちは存在しません。

 

245. 母を敬う者たちと成ってください。父を敬う者たちと〔成ってください〕。家における最尊者を敬恭する者たちと〔成ってください〕。沙門の資質ある者(沙門を供養する者)たちと成ってください。婆羅門の資質ある者(婆羅門を供養する者)たちと〔成ってください〕。このように〔為すなら、あなたたちは〕天上に赴くでしょう」〔と〕。ということで──

 

 ダナパーラセッティ・ペータヴァットゥが、第七となる。

 

2. 8. チューラセッティ・ペータヴァットゥ(チューラ長者の餓鬼の事例)

 

246. 〔王が尋ねた〕「尊き方よ、〔あなたは〕裸で、痩せ細り、出家者として〔世に〕存しています(裸の餓鬼を裸行者と勘違いした)。夜に、何を因として、どこに赴くのですか。それを、わたしに告げ知らせてください。おそらく、〔わたしどもは〕全てをもってして、富を、あなたに奉施することができるでしょう」と。

 

247. 〔餓鬼が答えた〕「バーラーナシーの城市は、遠くまで知れ渡り、そこにおいて、わたしは、家長にして富者なるも、下賎の者として〔世に〕有りました。施す者ではなく、美食に貪求の意ある者であり、劣戒によって、夜魔の境域に至り得たのです。

 

248. それら〔の悪しき行為〕によって、〔まさに〕その〔わたし〕は、〔飢渇の〕針によって疲弊し、まさしく、それによって、何らかの美食を因として、親族たちのところに行くも、しかしながら、〔彼らは〕布施を戒としない者たちであり、『他の世において、布施の果が有る』〔と〕、信を置くことがありません。

 

249. しかしながら、わたしの娘は、『〔わたしは〕布施を施します。〔母と〕父たちのために、父祖たちのために』〔と〕、幾度となく談じます。その〔布施〕が資益され、婆羅門たちが給仕されます。わたしは、〔布施の果を〕受益するために、アンダカヴィンダ〔の城市〕に行きます」と。

 

250. その〔餓鬼〕に、王は言った。「それを受領して〔そののち〕、また、すみやかに、〔ここに〕来るのです。わたしもまた、供養を為しましょう。すなわち、〔確実に果を生む〕因が存在するなら、それを、わたしに告げ知らせてください。信あるものとして、因についての〔あなたの〕言葉を、〔わたしどもは〕お聞きしたいのです」と。

 

251. 〔餓鬼は〕「そのように〔為しましょう〕」と言って、〔アンダカヴィンダの城市に〕赴いた。そこにおいて、〔婆羅門たちは〕食事を食べた。しかしながら、〔彼らは〕施物に値する者たちではない(布施の果はなかった)。〔餓鬼は〕ラージャガハに帰還した。ふたたび、また、〔餓鬼は〕人の君主(王)の前に出現した。

 

252. まさしく、ふたたび、やってきた餓鬼を見て、王は言った。「わたしもまた、何か施しましょう。すなわち、〔確実に果を生む〕因が存在するなら、それを、わたしに告げ知らせてください。それによって、あなたが、長きにわたり、喜悦ある者として〔世に〕存するべく」と。

 

253. 〔餓鬼が答えた〕「王よ、そして、覚者に、僧団に、食べ物によって、さらに、飲み物によって、衣料によって、給仕して〔そののち〕、その施物を、わたしの益のためにと指示してください。このように〔為すなら〕、わたしは、長きにわたり、喜悦ある者として〔世に〕存するでしょう」と。

 

254. そして、そののち、王は、まさしく、ただちに、〔高楼から〕降り下って、無比なる布施を、僧団にたいし、自らの手で施して、〔餓鬼のために〕作り為されたものであることを、如来に告げた。そして、その餓鬼のためにと、施物を指示した。

 

255. 供養された彼は、あまりに極めて美しく輝きながら、人の君主の前に出現した。〔餓鬼が言った〕「わたしは、最高の神通に至り得た夜叉として〔世に〕存しています。わたしと等しく同等なる人間たちは、〔世に〕存在しません。

 

256. 見てください──わたしの、この無量なる威力を、あなたによって指定された無比なる〔布施の威力〕を、僧団にたいし施して〔得た、この威力を〕。人間の天たる方(王)よ、わたしは行きます──常久に、常に、多くのものによって満足させられた、安楽の者として」〔と〕。ということで──

 

 チューラセッティ・ペータヴァットゥが、第八となる。

 

 第一の朗読分は〔以上で〕終了となる。

 

2. 9. アンクラ・ペータヴァットゥ(アンクラの餓鬼の事例)

 

257. 〔欲深い商人たちが言った〕「彼を義(目的)として、〔わたしたちは〕赴く──カンボージャに、財を運び来る者たちとして。この者〔こそ〕は、欲するものを与えてくれる夜叉である。この夜叉を、〔わたしたちは〕連れて行くのだ。

 

258. この夜叉を捕捉して、了承のうえで、あるいは、〔力で〕打ち負かして、乗物に乗せて、すみやかに、ドヴァーラカに赴くのだ」と。

 

259. 〔アンクラが言った〕「その木の影に、坐るなら、あるいは、臥すなら、その〔木〕の枝を折るべきではありません。まさに、朋友を裏切る者は、悪しき者です」と。

 

260. 〔欲深い商人たちが言った〕「その木の影に、坐るなら、あるいは、臥すなら、その〔木〕の幹であろうが断ち切るべきである。もし、そのような義(利益)が存するなら」と。

 

261. 〔アンクラが言った〕「その木の影に、坐るなら、あるいは、臥すなら、その〔木〕の葉を破るべきではありません。まさに、朋友を裏切る者は、悪しき者です」と。

 

262. 〔欲深い商人たちが言った〕「その木の影に、坐るなら、あるいは、臥すなら、その〔木〕を、根ごともろともに引き抜くべきである。もし、そのような義(利益)が存するなら」と。

 

263. 〔アンクラが言った〕「その者の家に、たとえ、一夜であれ、住するなら、そこにおいて、人が、食べ物と飲み物を得るなら、彼にとって悪しきことを、意によってであろうが思い考えるべきではありません。知恩は、正しくある者たちによって褒め称えられました。

 

264. その者の家に、たとえ、一夜であれ、住するなら、食べ物と飲み物によって奉仕された者として存するなら、彼にとって悪しきことを、意によってであろうが思い考えるべきではありません。裏切ることなき者の手は、朋友を裏切る者を焼きます(悪しき報いを受けることになる)。

 

265. 彼が、過去において、善き〔行為〕を為したとして、のちに、悪しき〔行為〕によって〔他者を〕害するなら、その人は、洗い清めた手で打ちのめされ、諸々の幸いを見ません」と。

 

266. 〔アンクラに、餓鬼が言った〕「わたしは、あるいは、天〔の神〕によって、あるいは、人間によって──わたしは、あるいは、権力によって、簡単に打ち負かされる者にあらず。わたしは、最高の神通に至り得た夜叉として〔世に〕存しています。〔瞬時に〕遠くに赴く者であり、色艶と活力を具有した者です」と。

 

267. 〔アンクラが言った〕「あなたの手は、全てにわたり、色艶があり、五つの流れがあり、蜜が溢れ出ています。種々なる味が、〔五指から〕流れ出ます。わたしは、あなたのことを、プリンダダ(帝釈天)と思います」と。

 

268. 〔餓鬼が言った〕「〔わたしは〕天〔の神〕として存するにあらず、音楽神にあらず、また、プリンダダたる帝釈〔天〕にあらず。アンクラよ、わたしのことを、餓鬼と知りたまえ。ロールヴァから、ここに到来した者と」と。

 

269. 〔アンクラが尋ねた〕「どのような戒ある者として、どのような励行ある者として、ロールヴァにおいて、かつて、あなたは〔存していたのですか〕。あなたの、どのような梵行によって、手において、〔そのような〕功徳が実現するのですか」と。

 

270. 〔餓鬼が答えた〕「かつて、〔わたしは〕裁縫師として〔世に〕存していました──ロールヴァにおいて、そのとき、わたしは。極めて苦難の生活ある困窮者であり、わたしには、施すべきものは〔何も〕見出されません。

 

271. そして、わたしの住居地は、アサイハ〔の住居地〕の近前に存していました──信ある施主の、〔過去に〕作り為した功徳ある者の、恥〔の思い〕ある者の、〔彼の住居地の近前に〕。

 

272. そこにおいて、乞い求める者たちが、種々なる姓の乞食者たちが、〔わたしの住居地に〕至り来ます。そして、そこにおいて、彼らは、アサイハの住居地を、わたしに尋ねます。

 

273. 『どこにおいて、〔わたしどもは〕赴くのですか。あなたさまに、幸せ〔有れ〕。どこにおいて、布施は施されるのですか』〔と〕。〔問いを〕尋ねられた者として、わたしは、アサイハの住居地を、彼らに告げ知らせます。

 

274. 右腕を差し出して、『ここにおいて、〔あなたたちは〕赴くのです。あなたたちに、幸せ〔有れ〕。ここにおいて、布施は施されます。〔すなわち〕アサイハの住居地において』〔と〕。

 

275. それによって、欲するものを与えてくれる手となり、それによって、蜜が溢れ出る手となり、わたしの、その梵行によって、手において、〔このような〕功徳が実現します」と。

 

276. 〔アンクラが尋ねた〕「あなたは、誰にであれ、自らの〔両の〕手で布施を施すことが、まさに、ありませんでした。他者の布施に随喜しながら、手を差し出して、説いた〔だけ〕です。

 

277. それによって、欲するものを与えてくれる手となり、それによって、蜜が溢れ出る手となり、あなたの、その梵行によって、手において、〔そのような〕功徳が実現します。

 

278. 尊き方よ、すなわち、彼は、布施を施しました──清信した者となり、自らの〔両の〕手で。彼は、人間の肉身を捨棄して〔そののち〕、いったい、どのような方角に赴いたのですか」と。

 

279. 〔餓鬼が答えた〕「成し遂げられないことを成し遂げる放光者の、赴く所を、あるいは、帰る所を、わたしは覚知しません。しかしながら、わたしの聞くところとして、アサイハは、ヴェッサヴァナ(毘沙門天)の現前において、帝釈〔天〕との共住に赴いたとのことです」と。

 

280. 〔アンクラが言った〕「為すに、まさしく、十分なるのが、善き〔行為〕である。分のままに施すに〔十分なるのが〕、布施である。欲するものを与えてくれる手を見て、誰が、功徳を作り為さないというのだろう。

 

281. まさに、その〔わたし〕は、まちがいなく、ここから赴いて、ドヴァーラカに至り得て、〔自らの〕布施を確立するのだ。それは、わたしに安楽をもたらすものとして存するであろう。

 

282. 〔わたしは〕施すのだ──そして、食べ物を、そして、飲み物を、そして、諸々の衣や臥坐具を、そして、水飲場を、そして、井戸を、そして、難所における諸々の橋を」と。

 

283. 〔他の餓鬼に、アンクラが尋ねた〕「何によって、あなたの、諸々の指は歪み、そして、顔は歪みを作り為し、かつまた、〔両の〕眼は〔不浄物が〕流れ出るのですか。どのような悪しき〔行為〕が、あなたによって為されたのですか」と。

 

284. 〔餓鬼が答えた〕「放光者たる家長が、信ある者たる家主が、彼が、布施を配分するにあたり、わたしは、布施の監督者として〔世に〕有りました。

 

285. そこにおいて、乞い求める者たちが食料を義(目的)としてやってきたのを見て、〔わたしは〕一方に立ち去って、顔に歪みを作り為しました。

 

286. それによって、わたしの、諸々の指は歪み、そして、顔は歪みを作り為し、かつまた、わたしの〔両の〕眼は〔不浄物が〕流れ出ます。その悪しき〔行為〕が、わたしによって為されました」と。

 

287. 〔アンクラが言った〕「悪しき人よ、法(真理)によって、あなたの、顔は歪みを作り為し、かつまた、〔両の〕眼は〔不浄物が〕流れ出ます。すなわち、あなたは、他者の布施あるに、顔に歪みを作り為したのです。

 

288. まさに、どうして、布施を施している者が、他者の至り得るべき〔果〕を作り為すというのだろう(布施は自ら為すべきである)。食べ物を、飲み物を、固形の食料を、さらに、諸々の衣や臥坐具を、〔他者が施しているとして〕。

 

289. まさに、その〔わたし〕は、まちがいなく、ここから赴いて、ドヴァーラカに至り得て、〔自らの〕布施を確立するのだ。それは、わたしに安楽をもたらすものとして存するであろう。

 

290. 〔わたしは〕施すのだ──そして、食べ物を、そして、飲み物を、そして、諸々の衣や臥坐具を、そして、水飲場を、そして、井戸を、そして、難所における諸々の橋を」と。

 

291. そののち、まさに、彼は、引き返して、ドヴァーラカに至り得て、アンクラは、〔自らの〕布施を確立した──すなわち、自身に安楽をもたらすものとして。

 

292. 〔彼は〕施した──そして、食べ物を、そして、飲み物を、そして、諸々の衣や臥坐具を、そして、水飲場を、そして、井戸を、清信した心で。

 

293. 『誰が、飢えているのですか。かつまた、誰が、渇いているのですか。誰が、衣をまとうのでしょうか。誰に、諸々の疲労した車馬があるのでしょうか。ここから、車両を設えてください。

 

294. 誰が、日傘を、そして、香料を、求めるのですか。誰が、花飾を〔求めるのですか〕。誰が、履物を〔求めるのですか〕』〔と〕、かくのごとく、まさに、そこにおいて、理髪師たちが、料理人や香料師たちが、喚呼する。常に、かつまた、夕に、かつまた、朝に、アンクラの住居地において。

 

295. 〔シンダカに、アンクラが言った〕「『アンクラは、安楽のうちに眠る』〔と〕、かくのごとく、人々は、わたしのことを知る。シンダカよ、〔わたしは〕苦痛のうちに眠る。すなわち、〔わたしは〕乞い求める者たちを見ない(布施をしたくてもできない)。

 

296. 『アンクラは、安楽のうちに眠る』〔と〕、かくのごとく、人々は、わたしのことを知る。シンダカよ、〔わたしは〕苦痛のうちに眠る。まさに、乞食者の少なくあるなかで」と。

 

297. 〔シンダカに、アンクラが尋ねた〕「もし、帝釈〔天〕が、三十三〔天の神々〕たちのイッサラが、願い事を、おまえに与えるなら、どうであろう、一切の世〔の人々〕のために願いつつ、〔どのような〕願い事を、〔彼に〕願うのだ」と。

 

298. 〔シンダカが答えた〕「もし、帝釈〔天〕が、三十三〔天の神々〕たちのイッサラが、願い事を、わたしに与えるなら、『〔しかるべき〕時に起きた者として、わたしが存していると、日の出に向かい、諸々の天の食物が出現しますように。そして、戒ある者たちが、乞い求める者たちとして〔出現しますように〕。

 

299. 施しているわたしに、〔施物が〕尽きませんように。施して〔そののち〕、わたしが悩み苦しみませんように。施している〔わたし〕が、心を清信させますように』〔と〕、この願い事を、帝釈〔天〕に願うでしょう」と。

 

300. 〔アンクラに、忠告者が言った〕「一切の富を、他者にたいし授けるべきではありません。かつまた、布施を施すべきであり、かつまた、財産を守るべきです。まさに、それゆえに、布施よりも、財産こそは、より勝っています。過度の布施によるなら、家々は有るにあらず(家系は断絶する)。

 

301. 布施なきを、かつまた、過度の布施を、賢者たちは賞賛しません。まさに、それゆえに、布施よりも、財産こそは、より勝っています。彼は、慧者の法(真理)ある者は、正義によって行持するべきです」と。

 

302. 〔アンクラが言った〕「ああ、まさに、さあ、まさしく、わたしは、施すのだ。そして、正しくある者たちが、正なる人士たちが、わたしと親しくするべく。雨雲が、諸々の低地を遍く満たすように、一切の乞食者たちを満足させるのだ。

 

303. 乞い求める者たちを見て、その者の顔と色艶が清まるなら、施して〔そののち〕、〔彼は〕わが意を得た者と成る。〔彼が〕住している、その家は、安楽である。

 

304. 乞い求める者たちを見て、その者の顔と色艶が清まるなら、施して〔そののち〕、〔彼は〕わが意を得た者と成る。これは、祭祀の成就である。

 

305. 施すより、まさしく、過去において、悦意の者としてあり、〔布施を〕施しながら、心を清信させ、施して〔そののち〕、わが意を得た者と成る。これは、祭祀の成就である」と。

 

306. 六万の車両が、アンクラの住居地において〔配備され〕、常に食料が施される──功徳を期す人のために。

 

307. 宝珠の耳飾を付けた、まさに、三千の料理人たちが、アンクラに依拠して生き、布施において、祭祀のために多忙となる(供物を作り続ける)。

 

308. 宝珠の耳飾を付けた、六万の家来たちが、〔それらの〕若者たちが、アンクラの大いなる布施において、薪を割る。

 

309. 全てが〔装いを〕十分に作り為し〔美しく〕飾られた、一万六千の婦女たちが、〔それらの〕女たちが、アンクラの大いなる布施において、〔施食の握り飯を〕種々に握る。

 

310. 全てが〔装いを〕十分に作り為し〔美しく〕飾られた、一万六千の婦女たちが、アンクラの大いなる布施において、匙を掴み、奉仕している。

 

311. 士族(アンクラ)は、多くのものを、多くの者たちに施し、長きにわたり施した──そして、恭しく、さらに、自らの手で、心を為して、繰り返し。

 

312. 多くの、そして、月を、さらに、半月を、そして、諸々の季節や年月のあいだ、アンクラは、長途にわたり、大いなる布施を転起させた。

 

313. アンクラは、長途にわたり、このように施して、かつまた、祭祀をして、彼は、人間の肉身を捨棄して〔そののち〕、三十三〔天〕へと近しく赴く者と成った(三十三天に再生した)。

 

314. インダカは、ひと匙の行乞〔の施食〕を、アヌルッダ(仏弟子)に施して、彼は、人間の肉身を捨棄して〔そののち〕、三十三〔天〕へと近しく赴く者と成った。

 

315. 十の境位によって、インダカは、アンクラに輝きまさる。形態()において、音声()において、味感()において、臭気()において、そして、意に適う感触(所触)において──

 

316. 寿命によって、まさしく、そして、福徳によって、そして、色艶によって、そして、安楽によって、権威によって、インダカは、アンクラに輝きまさる。

 

317. そのとき、覚者(ブッダ)は、三十三〔天〕のパンドゥカンバラの石床(帝釈坐)にあり、パーリッチャッタカ〔樹〕の根元において、最上の人士たる方は〔世に〕住んでいた。

 

318. 十の世の界域において、天神たちは集まって、山の頂きに住している正覚者に奉侍する。

 

319. 誰であれ、天〔の神〕は、色艶によって、正覚者に輝きまさらない。まさしく、正覚者は、全ての天〔の神々〕たちを超え行って遍照する。

 

320. そして、そのとき、アンクラは、この者は、〔覚者から〕十二ヨージャナ〔の遠く〕に有った。インダカは、覚者の、まさしく、遠く離れていないところにあり、〔アンクラに〕輝きまさる。

 

321. 正覚者は、インダカを、そして、また、アンクラを、眺め見て、施与されるべき者と掌握しつつ、この言葉を説いた。

 

322. 〔世尊は言った〕「アンクラよ、あなたによって、長途にわたり、大いなる布施が施されました。〔しかしながら、あなたは〕存しています──極めて遠くに坐る者として。わたしの現前に、やってきなさい」と。

 

323. 自己を修めた方に促されたアンクラは、この言葉を説いた。〔アンクラが言った〕「どうして、わたしには、その布施による〔功徳が〕、施与されるべきものによる〔功徳が〕、空無なのですか。

 

324. この者は、彼は、インダカ夜叉は、ほんの僅かな布施を施すも、まさに、わたしたちに輝きまさります。あたかも、月が、星々の群れに〔輝きまさる〕ように」と。

 

325. 〔世尊は言った〕「たとえば、不毛の田畑において、たとえ、多くの種が〔蒔かれ〕育てられたとして、広大なる果と成らず、また、耕作者を満足させることもないように──

 

326. まさしく、そのように、多くの布施が、劣戒の者たちにおいて確立されたとして、広大なる果と成らず、また、施者を満足させることもありません。

 

327. たとえば、また、善き田畑において、たとえ、少しの種が〔蒔かれ〕育てられたとして、正しく、流水を授けているなら、果となり、耕作者を満足させるように──

 

328. まさしく、そのように、戒ある者たちであり、徳ある者たちである、そのような者たちにおいては、たとえ、少なくとも、為すことが為されたなら、功徳は、大いなる果と成ります」と。

 

329. 〔正しく〕弁別して〔そののち〕、布施は、施されるべきである──そこにおいて、施されたものが、大いなる果となるところに。〔正しく〕弁別して〔そののち〕、布施を施して、施者たちは、天上に赴く。

 

330. 〔正しく〕弁別して〔そののち〕、布施は、善き至達者(ブッダ)の賞賛するところとなる。彼らが、ここに、生あるものの世において、施与されるべき者たちであるなら、これらの者たちにおいて、施されたものは、諸々の大いなる果となる──あたかも、善き田畑に蒔かれた諸々の種のように。ということで──

 

 アンクラ・ペータヴァットゥが、第九となる。

 

2. 10. ウッタラマートゥ・ペーティヴァットゥ(ウッタラの母の女餓鬼の事例)

 

331. 昼の休息に赴いた比丘が、ガンガー〔川〕の岸辺に坐っていると、彼のもとへと、醜き色艶で恐ろしき見た目の女餓鬼が近づいて行った。

 

332. そして、彼女の諸々の髪は、極めて長く、地に至るまで垂れ下がる。〔それらの〕髪に覆われた彼女は、沙門に、この〔言葉〕を説いた。

 

333. 〔女餓鬼が言った〕「わたしが命を終えた、そののち、五十五年のあいだ、あるいは、食べたことを、また、あるいは、飲み物を飲んだことを、〔わたしは〕証知しません。尊き方よ、あなたは、飲み物を施してください。わたしには、飲み物への渇愛があります」と。

 

334. 〔比丘が尋ねた〕「この冷たい水のガンガー〔川〕は、ヒマヴァント(ヒマラヤ)から流れます。ここから〔水を〕汲んで、飲みなさい。どうして、わたしに、飲み物を乞い求めるのですか」と。

 

335. 〔女餓鬼が答えた〕「尊き方よ、それで、もし、わたしが、ガンガー〔川〕から、自ら、飲み物を汲むなら、わたしには、血として遍く転起します。それゆえに、飲み物を乞い求めるのです」と。

 

336. 〔比丘が尋ねた〕「いったい、どのような悪行が、身体によって、言葉によって、意によって、為されたのですか。どのような行為の報いによって、あなたには、ガンガー〔川〕が、血と成るのですか」と。

 

337. 〔女餓鬼が答えた〕「わたしの、ウッタラという名の子は、信ある在俗信者として〔世に〕存しました。そして、彼は、わたしが欲していないのに、沙門たちに〔諸々の施物を〕授けます。

 

338. 衣料を、そして、〔行乞の〕施食を、日用品を、臥坐具を。わたしは、物惜〔の思い〕に襲われ、彼を誹謗します。

 

339. 〔ウッタラに、わたしは言いました〕『すなわち、おまえは、わたしが欲していないのに、沙門たちに〔諸々の施物を〕授ける。衣料を、そして、〔行乞の〕施食を、日用品を、臥坐具を。

 

340. ウッタラよ、これが、他の世において、おまえには、血と成れ』〔と〕。その行為の報いによって、わたしには、ガンガー〔川〕が、血と成るのです」〔と〕。ということで──

 

 ウッタラマートゥ・ペーティヴァットゥが、第十となる。

 

2. 11. スッタ・ペータヴァットゥ(糸の餓鬼の事例)

 

341. 〔女が言った〕「かつて、わたしは、出家者たる比丘に、糸を施しました。近づいて行って、乞い求められた者として。その〔行為〕の報いは、広大なる果が認められます。そして、わたしに、幾千万の衣が生起します。

 

342. 花々に満ち溢れた、喜びの天宮は、無数の彩りがあり、男と女たちが慣れ親しむところにして、〔まさに〕その、わたしは、そして、食べ、さらに、着ます。しかしながら、多大なる富は、それでも尽きません。

 

343. まさしく、その行為の報いに付従するものとして、そして、安楽が、さらに、快楽が、ここに得られます。〔まさに〕その、わたしは、まさしく、ふたたび、人間〔の世〕に赴いて、諸々の功徳を作り為します。旦那さま、わたしを〔人間の世に〕連れて行ってください(人間界に戻りたい)」と。

 

344. 〔餓鬼が言った〕「あなたは、ここに到来すること七百年の者なのです。そこにあるなら、そして、老い朽ちた者と〔成り〕、かつまた、年長けた者と成るでしょう(人間界に戻れば、すぐに老い朽ちる)。さらに、親族たちは、まさしく、彼らの全てが、〔もはや〕命を終えた者たちなのです。ここから赴いて、そこにおいて、何を為すのですか」と。

 

345. 〔女が言った〕「わたしが、ここに到来してから、まさしく、七年です(わたしにとっては、ただの七年である)。そして、天のものを、さらに、安楽を、供与されてきました。〔まさに〕その、わたしは、まさしく、ふたたび、人間〔の世〕に赴いて、諸々の功徳を作り為します。旦那さま、わたしを〔人間の世に〕連れて行ってください」と。

 

346. 彼は、無理やり、彼女の腕を掴んで、〔人間の世に〕連れ戻して、極めて力衰えた老女〔と成った彼女〕に〔言った〕。〔餓鬼が言った〕「ここに到来した他の人にもまた、説くのです。『諸々の功徳を作り為せ。安楽が得られる』」〔と〕。

 

347. 〔女が言った〕「わたしによって、〔あるがままに〕見られました。善き〔功徳〕が作り為されずに、餓鬼たちは、打ちのめされます。まさしく、そのように、人間たちはあります。そして、安楽が感受されるべき行為を為して、天〔の神々〕たちは、さらに、人間たちも、安楽において安立した人々となります」〔と〕。ということで──

 

 スッタ・ペータヴァットゥが、第十一となる。

 

2. 12. カンナムンダ・ペーティヴァットゥ(耳禿の女餓鬼の事例)

 

348. 〔王が尋ねた〕「諸々の金の梯子と延べ板があり、諸々の金の砂礫が広げられ、そこにおいて、諸々の麗しき睡蓮があり、諸々の意が喜びとする清らかな香りがあります。

 

349. 種々なる木々に等しく覆われ、種々なる香りが等しく揺らぎただよい、種々なる赤蓮に等しく覆われ、諸々の白蓮が生い茂っています。

 

350. 諸々の快意なる〔香り〕が、風に揺らぎただよい、芳香を等しく香り行かせます。そして、白鳥や白鷺たちの鳴き声があり、鴛鴦たちが鳴いています。

 

351. 種々なる鳥たちの群れがそぞろ行き、種々なる声の群れが満ち溢れ、種々なる果を保持する木々があり、種々なる花を保持する諸々の林があります。

 

352. 人間たちにおいては、このようなものはありません──すなわち、この城市のようなものは。あなたには、多くの高楼があり、〔それらは〕金や銀で作られていて、四方に遍きにわたり、発光しながら輝きわたります。

 

353. あなたには、五百の奴婢がいます──すなわち、あなたを世話する、これらの者たちです。彼女たちは、指輪や腕飾を〔身に〕付け、黄金の頭飾で飾られています。

 

354. あなたには、多くの寝台があり、〔それらは〕金や銀で作られていて、カダリー鹿〔の皮〕に等しく覆われ、敷布が〔広げられ〕、毛布が広げられています。

 

355. そこにおいて、あなたは、臥床に赴き、一切の欲望が等しく実現する者としてあるも、真夜中に達し得たなら、そののち、〔臥床から〕起きて、〔外に〕赴きます。

 

356. 庭園の地に赴いて、蓮池の遍きにわたり、その岸辺に、浄美なる緑の若草のうえに、あなたは立ちます。

 

357. そののち、耳禿の犬が、あなたの肢体の各部を喰い尽くします。そして、喰い尽くされ、骨の鎖と為され、〔そのような者として〕存した、そのとき、〔あなたは〕蓮池に入って行き、身体は、かつてのように成ります。

 

358. そののち、あなたは、手足と肢体ある、極めて典雅で、愛しき見た目ある者と〔成ります〕。〔あなたは〕衣を着て、わたしの現前にやってきます。

 

359. いったい、どのような悪行が、身体によって、言葉によって、意によって、為されたのですか。どのような行為の報いによって、耳禿の犬が、あなたの肢体の各部を喰い尽くすのですか」と。

 

360. 〔女餓鬼が答えた〕「キミラーにおいて、家長が、信ある在俗信者として〔世に〕存しました。わたしは、彼の妻として、劣戒の姦通者として、〔世に〕存しました。

 

361. 彼は、姦通しているわたしに、主人として、この〔言葉〕を説きました。『この隠し事は、適切ならず。すなわち、あなたが、わたしに〔背き〕、姦通することは』〔と〕。

 

362. 〔まさに〕その、わたしは、そして、おぞましき誓い〔の言葉〕を、虚偽の言を、語りました。『わたしが、あなたに〔背き〕、姦通することはありません──身体によって、もしくは、心によって。

 

363. それで、もし、わたしが、あなたに〔背き〕、姦通するなら──身体によって、もしくは、心によって──この耳禿の犬が、〔わたしの〕肢体の各部を喰い尽くせ』〔と〕。

 

364. その行為の報いによって、さらに、同様に、虚偽の言の〔報いによって〕、まさに、そののち、まさしく、七百年のあいだ、わたしの受領するところとして、そして、耳禿の犬は、〔わたしの〕肢体の各部を喰い尽くすのです。

 

365. 陛下よ、そして、あなたは、多く〔の利益〕を作り為す方です。わたしを義(目的)として、ここに到来した方です。〔今の〕わたしは、耳禿〔の犬〕の〔恐怖から〕善く解き放たれ、憂いなく、何も恐れない者として〔存しています〕。

 

366. 陛下よ、わたしは、あなたに礼拝します。合掌を為し、乞い求めます。人間のものならざる諸々の欲望〔の対象〕を享受してください。陛下よ、わたしと共に喜び楽しんでください」と。

 

367. 〔王が言った〕「人間のものならざる諸々の欲望〔の対象〕は、〔わたしの〕享受するところとなりました。あなたと共に喜び楽しむ者として、〔わたしは〕存しています。幸運なる方よ、わたしは、あなたに乞い求めます。すみやかに、わたしを〔人間の世に〕連れ戻してください」〔と〕。ということで──

 

 カンナムンダ・ペーティヴァットゥが、第十二となる。

 

2. 13. ウッバリ・ペータヴァットゥ(ウッバリーの餓鬼の事例)

 

368. ブラフマダッタ王が、パンチャーラ〔国〕の車上の雄牛として〔世に〕有った。諸々の昼と夜が経過して、王は、命を終えた。

 

369. 彼の火葬場に赴いて、妻のウッバリーは泣き叫ぶ。ブラフマダッタを見ることなく、「ブラフマダッタよ」と泣き叫ぶ。

 

370. そして、そこにおいて、聖賢がやってきた──行ないを成就した牟尼が。そして、そこにおいて、彼は尋ねた──すなわち、そこにおいて、集いあつまった者たちに。

 

371. 〔人々に、聖賢が尋ねた〕「種々なる香りが等しく揺らぎただよう、この火葬場は、誰のものですか。誰のために、この妻は、泣き叫ぶのですか。ここから遠く赴いた亭主のブラフマダッタを見ることなく、『ブラフマダッタよ』と泣き叫びます」〔と〕。

 

372. そして、そこにおいて、彼らは説き明かした──すなわち、そこにおいて、集いあつまった者たちは。〔人々が答えた〕「幸甚なる方よ、ブラフマダッタのものです。敬愛なる方よ、ブラフマダッタのためにです。

 

373. 種々なる香りが等しく揺らぎただよう、この火葬場は、彼のものです。彼のために、この妻は、泣き叫びます。ここから遠く赴いた亭主のブラフマダッタを見ることなく、『ブラフマダッタよ』と泣き叫びます」〔と〕。

 

374. 〔ウッバリーに、聖賢が尋ねた〕「八万六千の、ブラフマダッタを名とする者たちが、この火葬場で焼かれました。彼らのなかの誰を、〔あなたは〕憂い悲しむのですか」と。

 

375. 〔ウッバリーが答えた〕「すなわち、王は、チューラニの子にして、パンチャーラ〔国〕の車上の雄牛であり、尊き方よ、彼を、一切の欲望〔の対象〕を与えてくれる夫を、〔わたしは〕憂い悲しむのです」と。

 

376. 〔聖賢が言った〕「まさしく、全ての者たちが、王たちとして、ブラフマダッタを名とする者たちとして、〔世に〕有ったのです。まさしく、全ての者たちが、チューラニの子たちとして、パンチャーラ〔国〕の車上の雄牛たちとして、〔世に有ったのです〕。

 

377. 〔あなたは〕全て者たちの〔王妃として〕、順次に、王妃の権を為したのです(彼らの王妃として転生を重ねてきた)。何ゆえに、前の者たちを捨棄して、最後の者〔だけ〕を憂い悲しむのですか」と。

 

378. 〔ウッバリーが言った〕「敬愛なる方よ、〔わたしの〕自己における、女として〔世に〕有った〔状態〕が〔そのように〕長夜にわたるとして、すなわち、わたしの、女として〔世に〕有った〔状態〕が〔長夜にわたる、というのなら〕、輪廻について、〔あなたは〕多く語ります(輪廻についての熟知者である)」と。

 

379. 〔聖賢が言った〕「〔或る時は〕女として〔世に〕有りました。〔或る時は〕男として〔世に〕有りました。〔或る時は〕畜生の胎にもまた至り着きました。このように、これは、諸々の過去〔の生〕なかの〔一つであり〕、完全なる終極は、〔輪廻においては〕見られないのです」と。

 

380. 〔ウッバリーが言った〕「酪を注いだ火のように、まさに、燃え盛る者として存しているわたしを、〔その〕一切の懊悩を、水を降り注ぐかのように、〔あなたは〕寂滅させます。

 

381. 心臓(心)に依拠する憂い悲しみを、わたしの矢を、まさに、引き抜いてくれました。すなわち、憂い悲しみに打ち負かされたわたしの、亭主〔の死〕の憂い悲しみを、除き去ったのです。

 

382. 〔まさに〕その、わたしは、矢が引き抜かれた者として存しています。〔心が〕清涼と成り寂滅した者として存しています。〔わたしは〕憂い悲しみません。〔わたしは〕泣き叫びません。大いなる牟尼よ、あなたの〔言葉を〕聞いて〔そののちは〕」と。

 

383. 彼の、その言葉を聞いて──沙門の、見事に語られた〔言葉〕を〔聞いて〕──〔彼女は〕鉢と衣料を取って、〔家から〕家なきへと出家した。

 

384. そして、彼女は、家から家なきへと出家し、〔そのように〕存しつつ、梵の世に再生するために、慈愛の心を修めた。

 

385. 村から村へと、諸々の町へと、諸々の王都へと、渡り歩きつつ、ウルヴェーラーという名のその村で、そこにおいて、命を終えた。

 

386. 梵の世に再生するために、慈愛の心を修めて、女心を離貪させて、梵の世に近しく赴く者と成った。ということで──

 

 ウッバリ・ペータヴァットゥが、第十三となる。

 

 ウッバリの章が第二となり、〔以上で〕終了となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「解放者、母、そして、マッター、ナンダー、耳飾、ガタ、二つの長者、そして、裁縫師、ウッタラと糸と耳とウッバリーがある」と。

 

3. 小なるものの章

 

3. 1. アビッジャマーナ・ペータヴァットゥ(沈むことなき餓鬼の事例)

 

387. 〔コーリヤが尋ねた〕「〔あなたは〕水に沈むことなく、ガンガー〔川〕にあり、ここに赴きます。〔あなたは〕裸で、〔身体の〕前の半分は餓鬼ならざる者のようであり、花飾を〔身に〕付け、〔装いを〕十分に作り為しています。餓鬼よ、どこに、〔あなたは〕赴くのですか。どこにおいて、〔あなたの〕住居は有るのですか」と。

 

388. その餓鬼は、かくのごとく語る。〔餓鬼が答えた〕「チュンダッティラ〔の村〕に、〔わたしは〕赴きます。ヴァーサバ村との中途にあり、そして、バーラーナシーの間近にあります」〔と〕。

 

389. そして、彼を見て、「コーリヤ」という〔名で世に〕聞こえた大臣は、餓鬼のためにと、菓子を、そして、食事を、さらに、黄の一組〔の衣服〕を、施した。

 

390. 〔すなわち〕舟が止住しているところで〔沐浴している〕理髪師に、〔それらを、餓鬼のためにと〕施したのだった。理髪師に施されたとき、即座に、餓鬼に〔布施の果が〕見られた。

 

391. 〔すなわち、施して〕そののち、〔餓鬼は〕美しい衣をまとい、花飾を〔身に〕付け、〔装いを〕十分に作り為した者と〔成った〕。諸々の施物は、即座に、止住している餓鬼のために役立った。それゆえに、餓鬼たちのために施すべきである──慈しみ〔の思い〕によって、繰り返し。

 

392. 或る者たちは、ぼろ着をまとい、他の者たちは、〔自身の〕諸々の髪をまとい、餓鬼たちは、食事のために赴き、方々に立ち去る。

 

393. 或る者たちは、遠くに走り行って、〔食事を〕得ずして、引き返す。〔彼らは〕空腹で、混迷し、迷走し、地に倒れ臥してしまう。

 

394. そして、それらの、そこにおいて倒れ落ち、地に倒れ臥している者たちは、過去において、善き〔行為〕を為さなかった者たちであり、熱所において、火に焼かれた者たちのようにある。

 

395. 〔餓鬼たちが言った〕「わたしたちは、過去において、悪しき法(性質)の者たちであり、家婦たちとして、家母たちとして、〔世に有りました〕。諸々の施すべき法(施物)が存しているのに、〔わたしたちは〕自己の洲を作りませんでした。

 

396. 多大なる食べ物と飲み物もまた、さてまた、まさに、〔ごみとして〕振りまかれます。集いあつまった出家者にたいし、そして、何であれ、〔わたしたちは〕施しませんでした。

 

397. 〔善き〕行為を欲さず、怠け者たちであり、美味を欲し、大飯食いの者たちであり、ひと握りの団子飯を施す者たちであり、納受する者たちを、〔わたしたちは〕誹謗しました。

 

398. それらの家屋も、かつまた、それらの奴婢たちも、まさしく、それらの装飾品も、わたしたちのものですが、それらのものを、〔今や〕他の者たちが楽しみます。〔今の〕わたしたちは、苦しみの分有者たちとして〔世に有ります〕。

 

399. あるいは、竹職人たちは、軽蔑される者たちとして〔世に〕有ります。そして、車工たちは、裏切り者たちとして〔世に有ります〕。チャンダーラ(賎民)たちは、哀れな者たちとして〔世に〕有ります。さらに、理髪師たちも、また同様です。

 

400. それら〔の家〕、それらの家が、下劣にして、かつまた、哀れなものであるなら、まさしく、それら〔の家〕、それら〔の家〕に、〔彼らは〕生まれます。これは、物惜〔の思い〕ある者たちの赴く所()です。

 

401. しかしながら、過去において、善き〔行為〕を為した者たちは、物惜〔の思い〕を離れた施者たちは、彼らは、天上を遍く満たし、そして、〔天の〕ナンダナ〔林〕を照らします。

 

402. そして、〔天の〕ヴェージャヤンタの高楼において、欲するままに欲する者たちとなり、喜び楽しんで〔そののち〕、高貴の家々に生まれます──財物を有する家々に、そこから死滅した者たちとして。

 

403. そして、楼閣のなか、高楼のなか、毛布が敷かれた寝台のうえで、諸々の孔雀の団扇で肢体を扇がれる、〔高貴の〕家に生まれた、福徳ある者たちとして。

 

404. 〔乳母たちの〕膝から膝へと、〔彼らは〕赴きます──花飾を〔身に〕付け、〔装いを〕十分に作り為した者たちとして。乳母たちは、〔彼らに〕奉仕します──夕に、朝に、安楽を探し求める〔彼ら〕に。

 

405. これは、〔過去に〕作り為した功徳なき者たちのものではありません。これは、まさしく、〔過去に〕作り為した功徳ある者たちのものです。憂いなく、喜ばしき、〔天の〕ナンダナ〔林〕は、三十三〔天〕の大いなる林は。

 

406. 安楽は、〔過去に〕作り為した功徳なき者たちには存在しません──この〔世において〕、さらに、他所においても。そして、安楽は、〔過去に〕作り為した功徳ある者たちのものです──まさしく、そして、この〔世において〕、さらに、他所においても。

 

407. 〔天の神々たちとの〕共住を欲する者たちにとって、彼らにとって、作り為されるべきは、多くの善なる〔功徳〕です。なぜなら、〔過去に〕作り為した功徳ある者たちは歓喜するからです──天上において、財物の保有者たちとなり」〔と〕。ということで──

 

 アビッジャマーナ・ペータヴァットゥが、第一となる。

 

3. 2. サーナヴァーシーテーラ・ペータヴァットゥ(サーナヴァーシン長老の餓鬼の事例)

 

408. 長老は、クンディ城市の者にして、サーナの住者にして居住者である。名としては、「ポッタパーダ」という〔名〕の、〔感官の〕機能を修めた沙門である。

 

409. 彼の、母と父と兄弟は、悪しき境遇の者たちにして、夜魔の世にある者たちである。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのである。

 

410. 彼らは、悪しき境遇の者たちにして、〔飢渇の〕針に苦悩する者たちであり、疲弊し、裸で、痩せ細り、〔常に〕恐れわなないている、大いなる恐れある者たちであり、悲惨なる者たちであり、〔その姿を誰にも〕見せない。

 

411. 彼の兄弟は、裸で、一なる道を、独り、超え渡って、四つん這いと成って、長老に、自身〔の姿〕を見せた。

 

412. しかしながら、長老は、意を為さずして、沈黙の状態で、〔そのまま〕通り過ぎた。そして、彼は、長老に伝えた。〔餓鬼が言った〕「わたしは、餓鬼〔の世〕に赴いた、〔あなたの〕兄弟です。

 

413. 尊き方よ、あなたの、母は、さらに、父は、悪しき境遇の者たちにして、夜魔の世にある者たちです。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのです。

 

414. 彼らは、悪しき境遇の者たちにして、〔飢渇の〕針に苦悩する者たちであり、疲弊し、裸で、痩せ細り、〔常に〕恐れわなないている、大いなる恐れある者たちであり、悲惨なる者たちであり、〔その姿を誰にも〕見せません。

 

415. 慈悲の者として、慈しみたまえ。〔何かを〕施して、わたしたちのためにと指定してください。施された、あなたの布施によって、悲惨なる者たちは、〔身を〕保ち行くでしょう」と。

 

416. 長老は、〔行乞の〕食のために歩んで、そして、他の十二者の比丘と、一所に集まった──食事の分配を動機として。

 

417. 長老は、彼らに、まさしく、全ての者たちに、言った。「すなわち、得られたとおりのものを、わたしに施してください。〔わたしは、それを〕僧団の食事と為します。親族たちへの慈しみ〔の思い〕によって」〔と〕。

 

418. 〔彼らは、施物を〕長老に引き渡した。長老は、僧団を招いた。〔食事を〕施して、長老は、母のためにと、さらに、父のためにと、兄弟のためにと、指定した。「これは、わたしの親族たちのために成れ。親族たちは、安楽の者たちと成れ」〔と〕。

 

419. 〔親族たちのためにと〕指定された等しく直後に、食料は生起した──清らかで精妙なる上出来の〔食料〕が、無数の味と香味ある〔食料〕が。

 

420. そののち、兄弟〔の餓鬼〕は、色艶と活力ある安楽の者となり、〔長老に、自身の姿を〕見せた。〔餓鬼が言った〕「尊き方よ、多大なる食料があります。見てください。わたしたちは、裸の者たちとして存しています。尊き方よ、すなわち、〔わたしたちが〕衣を得るように、そのように、〔布施に〕勤しんでください」と。

 

421. 長老は、塵芥場から、諸々のぼろ布を集めて、布切れの外衣を作って、四方の僧団にたいし施した。

 

422. 〔外衣を〕施して、長老は、母のためにと、さらに、父のためにと、兄弟のためにと、指定した。「これは、わたしの親族たちのために成れ。親族たちは、安楽の者たちと成れ」〔と〕。

 

423. 〔親族たちのためにと〕指定された等しく直後に、諸々の衣は生起した。そののち、〔餓鬼は〕美しい衣をまとう者となり、長老に、自身〔の姿〕を見せた。

 

424. 〔餓鬼が言った〕「すなわち、ナンダ王の領土における、あるかぎりの諸々の衣服も、尊き方よ、わたしには、それよりも、より多くの、諸々の衣があり、諸々の衣服があります。

 

425. 諸々の絹や毛布のものがあり、さらに、諸々の亜麻や木綿のものがあります。そして、広大にして、かつまた、高価なる、それら〔の衣服〕はまた、虚空に垂れ下がります。

 

426. わたしたちは、それら〔の衣服〕をまといます──まさに、その〔衣服〕その〔衣服〕が、意に愛しきものであるなら。尊き方よ、すなわち、〔わたしたちが〕家を得るように、そのように、〔布施に〕勤しんでください」と。

 

427. 長老は、葉小屋を作って、四方の僧団にたいし施した。〔小屋を〕施して、長老は、母のためにと、さらに、父のためにと、兄弟のためにと、指定した。「これは、わたしの親族たちのために成れ。親族たちは、安楽の者たちと成れ」〔と〕。

 

428. 〔親族たちのためにと〕指定された等しく直後に、諸々の家屋は生起した──諸々の楼閣ある住居地が、等分に計量され区分され。

 

429. 〔餓鬼が言った〕「人間たちにおいては、このようなものはありません──すなわち、ここに〔生起した〕、わたしたちの諸々の家屋のようなものは。すなわち、また、諸天におけるような、そのようなものとして、ここに、わたしたちの諸々の家屋はあり──

 

430. 四方に遍きにわたり、発光しながら輝きわたります。尊き方よ、すなわち、〔わたしたちが〕飲み物を得るように、そのように、〔布施に〕勤しんでください」と。

 

431. 長老は、水瓶を満たして、四方の僧団にたいし施した。〔飲み物を〕施して、長老は、母のためにと、さらに、父のためにと、兄弟のためにと、指定した。「これは、わたしの親族たちのために成れ。親族たちは、安楽の者たちと成れ」〔と〕。

 

432. 〔親族たちのためにと〕指定された等しく直後に、飲み物は生起した。深遠にして、かつまた、四角なる、諸々の蓮池が、美しく化作された。

 

433. 水は冷たく、美しい岸辺があり、冷涼で、悪臭なく、諸々の赤蓮や青蓮に等しく覆われ、水は〔蓮の〕花糸に満ちている。

 

434. そこにおいて、〔彼らは〕沐浴して、かつまた、〔水を〕飲んで、長老に、〔自身の姿を〕見せた。〔餓鬼たちが言った〕「尊き方よ、多大なる飲み物があります。わたしたちの〔両の〕足は、苦しく、裂けています。

 

435. 砂礫のうえを、草や棘のなかを、〔わたしたちは〕さまよいながら、不自由に歩みます。尊き方よ、すなわち、〔わたしたちが〕乗物を得るように、そのように、〔布施に〕勤しんでください」と。

 

436. 長老は、一枚底〔の履物〕を得て、四方の僧団にたいし施した。〔履物を〕施して、長老は、母のためにと、さらに、父のためにと、兄弟のためにと、指定した。「これは、わたしの親族たちのために成れ。親族たちは、安楽の者たちと成れ」〔と〕。

 

437. 〔親族たちのためにと〕指定された等しく直後に、餓鬼たちは、車でやってきた。〔餓鬼たちが言った〕「幸甚なる方よ、〔あなたに〕慈しまれた者たちとして、〔わたしたちは〕存しています──そして、食事〔の布施〕によって、衣服〔の布施〕によって──

 

438. 家屋〔の布施〕によって、飲み物の布施によって、さらに、同様に、乗物の布施によっても。尊き方よ、牟尼たる方を、世における慈悲の者たる方を、〔あなたを〕敬拝するために、〔わたしたちは〕やってきたのです」〔と〕。ということで──

 

 サーナヴァーシーテーラ・ペータヴァットゥが、第二となる。

 

3. 3. ラタカーラ・ペーティヴァットゥ(ラタカーラの女餓鬼の事例)

 

439. 〔若者が言った〕「瑠璃の柱があり、好ましく光輝にして、無数の彩りある天宮に登って、天女よ、大いなる威力ある方よ、そこにおいて、〔あなたは〕坐します。旅路にある十五〔夜〕の月のように。

 

440. そして、あなたの色艶は、黄金に似た気高き形姿にして、大いに美しくあります。あなたは、無比なる最勝の長椅子に坐り、独りあります。そして、あなたに、主人は存在しません。

 

441. そして、あなたの、これらの蓮池は、遍きにわたり、沢山の花環があり、多くの白蓮があり、諸々の金の細片に遍きにわたり覆い被され、そこにおいては、泥は〔見出されず〕、さらに、葉も見出されません。

 

442. そして、美しく、意が喜びとする、これらの白鳥たちは、一切時に、水のうえを巡り行きます。〔それらの〕全てが、共に赴いて、麗美に鳴きます。諸々の艶美なる声は、諸々の雷鼓の音のようです。

 

443. 福徳によって発光しながら、福徳ある者として、そして、あなたは、舟にもたれて、〔そこに〕立ちます。濃い睫毛で笑い、愛語あるとき、全ての肢体が美しく、大いに遍照します。

 

444. この天宮は、塵を離れ、平坦なるところに安立し、庭園があり、歓楽と愉悦を増大させるものです。〔天の〕女よ、至上の見た目ある方よ、わたしは求めます。あなたと共に、ここに、〔天の〕ナンダナ〔林〕において歓喜することを」と。

 

445. 〔女餓鬼が言った〕「ここに感受されるべきものとして、〔善き〕行為を為しなさい。そして、あなたの心は、ここに安置されたものと成れ。ここに感受されるべきものとして、〔善き〕行為を為して〔そののち〕、このように、欲するままに欲する者であるわたしを、〔あなたは〕得るでしょう」と。

 

446. 彼は、「善きかな」と、彼女に答えて、そこに感受されるべきものとして、〔善き〕行為を為した。そこに感受されるべきものとして、〔善き〕行為を為して〔そののち〕、その若者は、彼女との共住に再生した。ということで──

 

 ラタカーラ・ペーティヴァットゥが、第三となる。

 

 第二の朗読分は〔以上で〕終了となる。

 

3. 4. ブサ・ペータヴァットゥ(籾殻の餓鬼の事例)

 

447. 〔モッガッラーナ長老が尋ねた〕「或る者は、諸々の籾殻を、いっぽう、他の者は、〔一粒の〕米を、そして、この女は、自らの肉と血を、かつまた、あなたは、不浄にして欲するところならざる糞を遍く食べます。これは、どのような〔行為〕の報いなのですか」と。

 

448. 〔女餓鬼が答えた〕「かつて、この者は、母を殺し、いっぽう、この者は、でたらめな商人であり、この者は、諸々の肉を喰って、虚偽の言によって〔他者を〕騙します。

 

449. 人間たちのなかで人間として有ったわたしは、家婦として、家の一切に権ある者であり、〔諸々のものが〕存しているのに、完全に秘密にします。『そして、何であれ、これから施してはならない』〔と〕。

 

450. 〔わたしは〕虚偽の言によって〔他者を〕騙します。『これは、わたしの家に存在しない。それで、もし、〔わたしが〕存しているものを秘密にするなら、糞が、わたしの食料と成れ』〔と〕。

 

451. その行為の報いによって、さらに、同様に、虚偽の言の〔報いによって〕、諸々の米の善き香りの食事が、わたしには、糞として遍く転起します。

 

452. そして、徒労なきは、諸々の行為であり、まさに、行為は消失しません。〔わたしは〕悪臭がする蛆虫たちの巣を、そして、食べ、さらに、飲みます」〔と〕。ということで──

 

 ブサ・ペータヴァットゥが、第四となる。

 

3. 5. クマーラ・ペータヴァットゥ(童子の餓鬼の事例)

 

453. 善き至達者(ブッダ)の知恵は、稀有なる形態のものである。すなわち、〔世の〕教師たる方は、〔対話する〕人〔の資質〕のままに説き明かす。まさに、また、或る者たちは、功徳が増長した者たちとして〔世に〕有る。まさに、また、或る者たちは、功徳が僅かな者たちとして〔世に〕有る。

 

454. この童子は、墓所に捨てられ、夜に、親指の潤いによって〔身を〕保ち行く。〔過去に〕作り為した功徳ある童子を、夜叉や精霊たちは悩まさず、あるいは、蛇たちも〔悩まさ〕ない(過去の行為の功徳が童子を保護する)。

 

455. 犬たちでさえも、この者の〔両の〕足を舐めた。烏たちと野狐たちは、遍く転じ行かせる。鳥たちの群れは、胎の不浄物を運び去る。いっぽう、烏たちは、眼の垢を運び去る。

 

456. どのような者たちであれ、この者に守護を加えなかった。薬を〔与えることも〕、あるいは、芥子で燻すことも、なかった(衛生的処置を施さなかった)。星の合もまた収め取らなかった(誕生時の星宿を定めなかった)。一切の穀物もまた降り注がなかった(誕生時の儀式もなかった)。

 

457. このような最上の苦難に至り得た者を、夜に運ばれ墓所に捨てられた者を、生酥(新しいバター)のように動揺している者を、生命が残りを有することに疑念を有する者を──

 

458. 彼を、天〔の神々〕と人間たちに供養される方(ブッダ)は見た。そして、見て〔そののち〕、彼のことを、広き智慧ある方は説き明かした。〔世尊は言った〕「この童子は、そして、財物としては、この城市の至高の家の者と成るでしょう」〔と〕。

 

459. 〔人々が尋ねた〕「彼にとって、どのようなものが、掟なのですか、また、どのようなものが、梵行なのですか。これは、どのような善き行ないの報いなのですか。このような災厄に至り得て〔そののち〕、そのような繁栄を、それを、〔彼が〕受領することになるとは」と。

 

460. 〔世尊は答えた〕「覚者を筆頭とする比丘の僧団に、人民が巨万の供養を為したのですが、そこにおいて、彼の心に、他なる〔思い〕が有りました。〔彼は〕粗暴にして不当なる言葉を語りました。

 

461. 彼は、その思考を除き去って、のちに、喜悦と清信を獲得して、ジェータ林に住している如来を、七夜のあいだ、粥によって奉仕しました。

 

462. 彼にとって、それが、掟であり、また、それが、梵行です。これは、その善き行ないの報いです。このような災厄に至り得て〔そののち〕、そのような繁栄を、それを、〔彼は〕受領することになります。

 

463. 彼は、まさしく、この〔世において〕、百年のあいだ止住して、一切の欲望〔の対象〕を保有する者と成り、身体の破壊ののち、未来の運命として、ヴァーサヴァ(帝釈天)との共住に赴きます」〔と〕。ということで──

 

 クマーラ・ペータヴァットゥが、第五となる。

 

3. 6. セーリニー・ペーティヴァットゥ(セーリニーの女餓鬼の事例)

 

464. 〔在俗信者が尋ねた〕「〔あなたは〕裸で、醜き色艶の形態ある者として〔世に〕存しています。痩せ細り、〔浮き出た〕血管が〔身体中に〕広がっています。肋骨が突き出た者よ、痩せ細った者よ、あなたは、いったい、どのような者として、ここに止住するのですか」と。

 

465. 〔女餓鬼が答えた〕「幸甚なる方よ、わたしは、女餓鬼として〔世に〕存しています。悪しき境遇の者にして、夜魔の世にある者です。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのです」と。

 

466. 〔在俗信者が尋ねた〕「いったい、どのような悪行が、身体によって、言葉によって、意によって、為されたのですか。どのような行為の報いによって、ここから餓鬼の世に赴いたのですか」と。

 

467. 〔女餓鬼が答えた〕「諸々の覆いなき水浴場において、半銭を選り分けました(物惜の心を起こした)。諸々の施すべき法(施物)が存しているのに、〔わたしは〕自己の洲を作りませんでした。

 

468. 〔喉が〕渇き、〔わたしは〕川に近づくのですが、〔川は〕空虚となり遍く転起します。諸々の暑熱のなか、〔わたしは〕影に近づくのですが、〔影は〕熱苦となり遍く転起します。

 

469. そして、わたしにとって、風は、火の色艶があり、〔わたしを〕焼き焦がしながら、吹き渡ります。尊き方よ、そして、この〔行為の報い〕に、〔わたしは〕値します。さらに、他の、それより悪しき〔行為の報い〕にも。

 

470. ハッティニプラに赴いて、わたしの母に説くのです。『さてまた、あなたの娘は、わたしの見るところとなりました。悪しき境遇の者にして、夜魔の世にある者です。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのです』〔と〕。

 

471. ここにおいて、わたしによって留置されたものが存在します。そして、それは、わたしによって告げ知らされたことがなく、そして、四十万〔金〕が、寝台の下に〔留置されました〕。

 

472. その〔金〕から、わたしのためにと、布施を施してください。そして、彼女に、〔善き〕生計が有れ。そして、布施を施して〔そののち〕、母は、わたしのためにと、施物を指示するのです(※)。そのとき、わたしは、一切の欲望が等しく実現する者となり、安楽の者となり、〔世に〕有るでしょう」と。

 

※ テキストには anudicchatu とあるが、PTS版により anvādissatu と読む。以下の平行箇所も同様。

 

473. 彼は、「善きかな」と答えて、ハッティニプラに赴いて、彼女の母に言った。「さてまた、あなたの娘は、わたしの見るところとなりました。悪しき境遇の者にして、夜魔の世にある者です。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのです。

 

474. そこにおいて、彼女は、わたしに要望しました。『わたしの母に説くのです。「さてまた、あなたの娘は、わたしの見るところとなりました。悪しき境遇の者にして、夜魔の世にある者です。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのです。

 

475. ここにおいて、わたしによって留置されたものが存在します。そして、それは、わたしによって告げ知らされたことがなく、そして、四十万〔金〕が、寝台の下に〔留置されました〕。

 

476. その〔金〕から、わたしのためにと、布施を施してください。そして、彼女に、〔善き〕生計が有れ。そして、布施を施して〔そののち〕、母は、わたしのためにと、施物を指示するのです。そのとき、わたしは、一切の欲望が等しく実現する者となり、安楽の者となり、〔世に〕有るでしょう』」と。

 

477. まさに、その〔金〕から、彼女は、布施を施した。その〔女餓鬼〕のためにと、施物を指示した。そして、女餓鬼は、安楽の者として存した。そして、彼女に、善き生計が存した。ということで──

 

 セーリニー・ペーティヴァットゥが、第六となる。

 

3. 7. ミガルッダカ・ペータヴァットゥ(鹿猟師の餓鬼の事例)

 

478. 〔比丘が尋ねた〕「〔あなたは〕若く、男と女たちに囲まれ、諸々の貪るべき欲望の属性(妙欲:色・声・香・味・触)によって美しく輝くも、昼には、懲罰を受領します。以前の生において、何を為したのですか」と。

 

479. 〔餓鬼が答えた〕「わたしは、喜ばしきラージャガハの喜ぶべきギリッバジャにおいて、かつて、鹿猟師として〔世に〕存しました──赤い手をした凶悪な者として。

 

480. 遮ることを為さない命あるものたちにたいし、多々なる有情たちにたいし、汚れた意図ある者として、〔わたしは、山々を〕渡り歩きました──極めて凶悪なる者として、常に、他を害することを喜ぶ自制なき者として。

 

481. 〔まさに〕その、わたしの、親密なる道友は、信ある在俗信者として〔世に〕存しました。彼は、また、わたしを慈しみながら、繰り返し、〔わたしの殺生を〕阻止しました。

 

482. 『悪しき行為を為してはいけない。親愛なる者よ、悪しき境遇に赴いてはいけない。それで、もし、死してのち、安楽を求めるなら、命あるものの殺戮から、自制なき〔行為〕から、離れたまえ』〔と〕。

 

483. 彼の、〔わたしの〕安楽を欲し利益と慈しみ〔の思い〕ある者の、言葉を聞いても、わたしは、教示の全部を為しませんでした──長きに悪を喜ぶ、覚慧なき者として。

 

484. 彼は、広き善き思慮ある者は、慈しみ〔の思い〕によって、ふたたび、わたしを、自制において確たるものとしました。『それで、もし、昼には、命あるものたちを殺すとして、そこで、夜には、あなたに、自制有れ』〔と〕。

 

485. 〔まさに〕その、わたしは、昼には、命あるものたちを殺して、夜には、〔殺戮から〕離れた自制ある者として〔世に〕有りました。〔今の〕わたしは、夜には、楽しみ、昼には、悪しき境遇の者となり、〔犬たちに〕喰われます。

 

486. その善なる行為の〔報いによって〕、夜には、人間ならざる〔喜び〕を受領し、昼には、まさしく、猛り狂った犬たちが、遍きにわたり、〔わたしを〕喰うためにまとわりつきます。

 

487. そして、すなわち、彼らが、善き至達者の教えにおいて、常久なる専念ある者たちであり、常恒に専念する者たちであるなら、〔わたしは〕思うのですが、彼らは、まさしく、不死にして全一なる〔境処〕に、形成されたものならざる境処(涅槃)に、到達します」〔と〕。ということで──

 

 ミガルッダカ・ペータヴァットゥが、第七となる。

 

3. 8. ドゥティヤミガルッダカ・ペータヴァットゥ(第二の鹿猟師の餓鬼の事例)

 

488. 〔比丘が尋ねた〕「そして、楼閣のなか、高楼のなか、毛布が敷かれた寝台のうえで、五つの支分ある楽器によって見事に奏でられた〔音曲〕を、〔あなたは〕喜び楽しみます。

 

489. そののち、夜の明け方に、日の出に向かい、墓場に捨てられ、多くの苦しみを受けます。

 

490. いったい、どのような悪行が、身体によって、言葉によって、意によって、為されたのですか。どのような行為の報いによって、この苦しみを受けるのですか」〔と〕。

 

491. 〔餓鬼が答えた〕「わたしは、喜ばしきラージャガハの喜ぶべきギリッバジャにおいて、かつて、鹿猟師として〔世に〕存しました。かつまた、残忍で自制なき者として〔世に〕存しました。

 

492. 〔まさに〕その、わたしの、親密なる道友は、信ある在俗信者として〔世に〕存しました。彼には、家に親近ある比丘として、ゴータマの弟子が存しました。彼は、また、わたしを慈しみながら、繰り返し、〔わたしの殺生を〕阻止しました。

 

493. 『悪しき行為を為してはいけない。親愛なる者よ、悪しき境遇に赴いてはいけない。それで、もし、死してのち、安楽を求めるなら、命あるものの殺戮から、自制なき〔行為〕から、離れたまえ』〔と〕。

 

494. 彼の、〔わたしの〕安楽を欲し利益と慈しみ〔の思い〕ある者の、言葉を聞いても、わたしは、教示の全部を為しませんでした──長きに悪を喜ぶ、覚慧なき者として。

 

495. 彼は、広き善き思慮ある者は、慈しみ〔の思い〕によって、ふたたび、わたしを、自制において確たるものとしました。『それで、もし、昼には、命あるものたちを殺すとして、そこで、夜には、あなたに、自制有れ』〔と〕。

 

496. 〔まさに〕その、わたしは、昼には、命あるものたちを殺して、夜には、〔殺戮から〕離れた自制ある者として〔世に〕有りました。〔今の〕わたしは、夜には、楽しみ、昼には、悪しき境遇の者となり、〔犬たちに〕喰われます。

 

497. その善なる行為の〔報いによって〕、夜には、人間ならざる〔喜び〕を受領し、昼には、まさしく、猛り狂った犬たちが、遍きにわたり、〔わたしを〕喰うためにまとわりつきます。

 

498. そして、すなわち、彼らが、善き至達者の教えにおいて、常久なる専念ある者たちであり、常恒に専念する者たちであるなら、〔わたしは〕思うのですが、彼らは、まさしく、不死にして全一なる〔境処〕に、形成されたものならざる境処(涅槃)に、到達します」〔と〕。ということで──

 

 ドゥティヤミガルッダカ・ペータヴァットゥが、第八となる。

 

3. 9. クータヴィニッチャイカ・ペータヴァットゥ(でたらめの判決の餓鬼の事例)

 

499. 〔比丘が尋ねた〕「花飾や腕飾に飾られ、あなたの五体は栴檀の〔香り〕芳しく、〔あなたは〕清らかな顔と色艶ある者として〔世に〕存しています。〔あなたは〕太陽の色艶あるかのように美しく輝きます。

 

500. 人間ならざる者たちが、〔従順なる〕従者たちがいます。すなわち、あなたを世話する、これらの者たちです。一万の少女たちがいます。すなわち、あなたを世話する、これらの者たちです。彼女たちは、指輪や腕飾を〔身に〕付け、黄金の頭飾で飾られています。

 

501. あなたは、大いなる威力ある者として、身の毛のよだつ形態ある者として、〔世に〕存するも、自己の諸々の背の肉を、自ら切り取って喰います。

 

502. いったい、どのような悪行が、身体によって、言葉によって、意によって、為されたのですか。どのような行為の報いによって、自己の諸々の背の肉を、自ら切り取って喰うのですか」と。

 

503. 〔餓鬼が答えた〕「わたしは、自己にとって義(利益)なきことのために、生あるものの世において、〔法ならざる道を〕歩みました。中傷や虚偽の言によって、さらに、欺きや騙しによって。

 

504. わたしは、そこにおいて、衆のなかに赴いて、真理の時が現起しているのに(真実を言うべき時であるのに)、義(道理)を、法(真理)を、〔両者ともに〕放却して、法(正義)ならざる〔道〕に随転しました。

 

505. その者が、陰口を言う者として〔世に〕有るなら、彼は、このように、自己を喰います。すなわち、わたしが、今日、自己の諸々の背の肉を喰うように。

 

506. ナーラダよ、〔まさに〕その、この〔行為の報い〕は、あなたによって、自ら、〔あるがままに〕見られました。彼らが、慈しみ〔の思い〕ある者たちであり、智者たちであるなら、〔あなたに〕説くでしょう。『中傷〔の言葉〕を〔話しては〕ならない。かつまた、虚偽〔の言葉〕を話してはならない。あなたは、まさに、陰口を言う者として〔世に〕存してはならない』」〔と〕。ということで──

 

 クータヴィニッチャイカ・ペータヴァットゥが、第九となる。

 

3. 10. ダートゥヴィヴァンナ・ペータヴァットゥ(遺物の軽蔑の餓鬼の事例)

 

507. 〔マハー・カッサパ長老が尋ねた〕「〔あなたは〕空中に止住しながら、悪臭がただよい、腐〔臭〕を放ちます。そして、蛆虫たちは、あなたの腐臭がする口を喰います。過去において、どのような行為を為したのですか。

 

508. そののち、〔獄卒たちは〕刃を掴んで、繰り返し、〔あなたを〕切り裂きます。〔獄卒たちは〕灰汁を遍く振りまいて、繰り返し、〔あなたを〕切り裂きます。

 

509. いったい、どのような悪行が、身体によって、言葉によって、意によって、為されたのですか。どのような行為の報いによって、この苦しみを受けるのですか」〔と〕。

 

510. 〔餓鬼が答えた〕「わたしは、喜ばしきラージャガハの喜ぶべきギリッバジャにおいて、敬愛なる方よ、極めて多大なる財産と穀物あるイッサラ(主権者)として〔世に有りました〕。

 

511. 〔まさに〕その、わたしの、そして、この妻が──わたしの、そして、娘が、さらに、嫁が──彼女たちが、花飾を、そして、また、青蓮を、さらに、高価なる塗料を、〔覚者の〕塔に運んでいるのを、〔わたしは〕阻止しました。その悪しき〔行為〕が、わたしによって為されました。

 

512. 八万六千の者たちは、各自それぞれが〔苦痛の〕感受ある者たちであり、わたしたちは、地獄において、激しく煮られます──塔の供養を軽蔑して〔そののち〕。

 

513. そして、まさに、塔の供養のための、阿羅漢のための、祭が転起しているときに、それらの者たちが、危険を明示するなら(身を滅ぼす行ないを為しているなら)、彼らを、その〔危険〕から遠離させるべきです。

 

514. そして、見てください──これらの者たちがやってくるのを、花飾を〔身に〕付け、〔装いを〕十分に作り為した者たちを、花飾の報いを受領している者たちを、そして、富み栄え、福徳ある、彼女たちを。

 

515. そして、その〔供養の功徳の〕稀有なることを見て、未曾有にして身の毛のよだつことを〔見て〕、智慧を有する者たちは、礼拝を為し、あなたを、大いなる牟尼を、敬拝します。

 

516. 〔まさに〕その、わたしは、まちがいなく、ここから赴いて、人間の胎を得て、塔の供養を為すでしょう──怠ることなく、繰り返し」〔と〕。ということで──

 

 ダートゥヴィヴァンナ・ペータヴァットゥが、第十となる。

 

 小なるものの章が第三となり、〔以上で〕終了となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「沈むことなく、クンディヤ、ラタカーリンがあり、そして、籾殻とともに、童子、まさしく、そして、遊女、二つの猟師、背と供養があり、それによって、章と呼ばれる」と。

 

4. 大いなるものの章

 

4. 1. アンバサッカラ・ペータヴァットゥ(アンバサッカラの餓鬼の事例)

 

517. ヴァッジー〔国〕に、ヴェーサーリーという名の城市が存在し、そこにおいて、リッチャヴィ〔族の王〕のアンバサッカラが〔世に〕有った。〔王は〕城市の外に餓鬼を見て、まさしく、そこにおいて、彼に尋ねた──契機と義(目的)ある者として。

 

518. 〔王が尋ねた〕「〔串に突き刺された受刑者たる〕この者に、臥すことと坐ることは存在せず、さらに、進むことと戻ることも存在しません。食べることと飲むことと咀嚼することと衣を受益することは〔存在せず〕、この者には、〔それらを〕楽しむことも、それもまた存在しません。

 

519. すなわち、親族たちが、見聞ある知人たちが、慈しみ〔の思い〕ある者たちとして、過去において、彼に有ったのですが、今や、彼らは、彼を見ることさえも得ません。まさに、見捨てられたのです──その人々によって。

 

520. 落ち行く者に、朋友たちは有りません。朋友たちは、〔彼の〕欠損を見出して、〔彼を〕捨棄します。昇り行く者に、朋友たちは多く有り、そして、〔彼の〕義(利益)を見て、〔彼を〕取り囲みます。

 

521. 一切の財物から衰退し、苦難し、〔血に〕まみれ、五体は遍く破れ、露の滴のように貼り着きながら、今日、明日には、生命の破滅があります。

 

522. このような最上の苦難に至り得た者に、プチマンダ〔樹〕の串に突き刺された者に、夜叉よ、そこで、あなたは、何を理由に、『君よ、生きよ、生命こそは、より勝っている』〔と〕説くのですか」と。

 

523. 〔夜叉が答えた〕「わたしにとって、この者は、血縁として〔世に〕有りました。わたしは、以前の生について思い浮かべます。王よ、そして、見て〔そののち〕、わたしには、慈悲〔の思い〕が有りました。『この者が、悪しき法(性質)の者として、地獄に落ちることがあってはならない』〔と〕。

 

524. リッチャヴィ〔族の王〕よ、ここから死滅した、この男は、おぞましき形態の七つの増長地獄に再生します──悪行の行為を為す者として、大いなる熱苦ある辛辣にして〔人を〕恐怖させる〔地獄〕に。

 

525. この串こそは、その地獄よりも、無数なる部分によって、徳として、より勝っています。この者は、一方的な苦痛ある辛辣にして〔人を〕恐怖させる〔地獄〕に、一方的な激痛ある地獄に、落ちるでしょう。

 

526. そして、この者は、わたしの、〔地獄についての〕この言葉を聞いて、苦痛に導かれた者となり、命を捨棄するでしょう(衝撃を受けて絶命する)。それゆえに、わたしは、〔この者の〕現前において話さないのです。わたしによって、生命の破滅が為されることがあってはならないのです」〔と〕。

 

527. 〔王が言った〕「男についての、この義(意味)は、了知するところとなりました。他にもまた、〔わたしどもは〕あなたに尋ねることを求めます。それで、もし、〔あなたが〕わたしたちのために、機会となる行為を為してくれるなら、〔わたしどもは〕あなたに尋ねます。そして、わたしどもに、怒ることなきように」と。

 

528. 〔夜叉が言った〕「そのとき、たしかに、わたしの明言は有りました(すでに受諾の意志を表明している)。清信なき者に、告知は有りません。〔あなたに〕欲なきことから、〔あなたを〕『信を置くべき言葉の者』と為して、〔あなたの前に現われたのです〕。欲するままに、わたしに尋ねてください。すなわち、可能なるままに〔お答えします〕」と。

 

529. 〔王が言った〕「それが何であれ、わたしが、眼によって見るなら、わたしは、それに、一切もろともに、信を置くでしょう。それを見て、また、もし、信を置くことがないとしても、夜叉よ、わたしのために、依拠となる行為を為してほしいのです」と。

 

530. 〔夜叉が言った〕「これが、あなたの、わたしへの真理の明言と成れ。法(教え)を聞いて、善き清信を得よ。了知を義(目的)とする者として、しかしながら、汚れた心の者としてではなく。すなわち、あなたにとって、〔すでに〕聞かれたものも、さらに、また、〔いまだ〕聞かれていないものも、〔それが〕法(教え)としてあるなら、一切もろともに、〔あなたに〕告げ知らせましょう──〔わたしが〕覚知している、そのとおりに」と。

 

531. 〔王が尋ねた〕「〔あなたは、装いを〕十分に作り為した白馬に〔乗って〕、串に刺された者の現前に近づきました。この乗物は、未曾有の美しさです。この〔乗物〕は、これは、どのような行為の報いなのですか」と。

 

532. 〔夜叉が答えた〕「ヴェーサーリーの城市の中央にある泥地の道に、穴が有りました。わたしは、清信した心の者となり、一つの白い牛の頭蓋骨を収め取って、穴に置きました。

 

533. そして、わたしたちは、さらに、他の者たちも、このうえに諸々の足を立脚させて、〔道の穴を〕超え行きました。この乗物は、未曾有の美しさです。これは、まさしく、その行為の報いです」と。

 

534. 〔王が尋ねた〕「そして、あなたの色艶は、一切の方角に光り輝き、かつまた、あなたの香りは、一切の方角に香り行きます。〔あなたは〕夜叉の神通に至り得た者として、大いなる威力ある者として、〔世に〕存しています。しかしながら、〔あなたは〕裸で、痩せ細った者として〔世に〕存しています。これは、どのような〔行為〕の報いなのですか」と。

 

535. 〔夜叉が答えた〕「〔わたしは〕忿激しない者として、常に清信した心の者として、諸々の優しい言葉をもって、人に近づきます。これは、まさしく、その行為の報いです。わたしの天の色艶は、常に光り輝きます。

 

536. 法(正義)に依って立つ者たちの、そして、盛名を、かつまた、名誉を、見て〔そののち〕、清信した心の者となり、〔彼らの徳を〕告げます。これは、まさしく、その行為の報いです。わたしの天の香りは、常に香り行きます。

 

537. 水浴場で沐浴している道友たちの衣服を収め取って、高きに置きました。遊興を義(目的)とする者として、しかしながら、汚れた心の者としてではなく。それによって、〔わたしは〕裸で存し、かつまた、生活は困難なのです」と。

 

538. 〔王が尋ねた〕「彼が、遊び戯れながら、悪しき〔行為〕を為すなら、彼には、このような行為の報いがあると、〔賢者たちが〕言うとして、いっぽうで、彼が、遊び戯れずに、〔悪しき行為を〕為すなら、彼には、どのような行為の報いがあると、〔賢者たちは〕言うのですか」と。

 

539. 〔夜叉が答えた〕「すなわち、汚れた思惟と意ある人間たちは、身体によって、さらに、言葉によって、〔心が〕汚染された者たちとして、身体の破壊ののち、未来の運命として、疑念〔の余地〕なく、彼らは、地獄に近づきます。

 

540. いっぽうで、他の、善き境遇を願い求めている者たちは、布施を喜び、自己の状態が制御された者たちとして、身体の破壊ののち、未来の運命として、疑念〔の余地〕なく、彼らは、天上に近づきます」と。

 

541. 〔王が尋ねた〕「わたしは、それを、どのようにすると、的確に知るのでしょう。『これは、善と悪の報いである』〔と〕。あるいは、わたしは、何を見て〔そののち〕、信を置くのですか。あるいは、また、誰が、わたしをして、このことに信を置かせてくれるのですか」と。

 

542. 〔夜叉が答えた〕「そして、見て、聞いて、信を置くのです。『これは、善と悪の報いである』〔と〕。善と悪の両者が存していないなら、はたして、有情たちは、善き境遇(善趣)の者たちとして、あるいは、悪しき境遇(悪趣)の者たちとして、〔世に〕存するでしょうか。

 

543. もし、ここにおいて、人間たちが、諸々の善と悪の行為を、人間の世において為さないなら(善悪の業を作らないなら)、有情たちは、善き境遇の者たちとして、あるいは、悪しき境遇の者たちとして、〔世に〕有ることはなかったでしょう──下劣なる者たちとして、さらに、精妙なる者たちとして、人間の世において。

 

544. しかしながら、すなわち、人間たちが、諸々の善と悪の行為を、人間の世において為すことから(善悪の業を作るからこそ)、まさに、それゆえに、有情たちは、善き境遇の者たちとして、あるいは、悪しき境遇の者たちとして、〔世に有るのです〕──下劣なる者たちとして、さらに、精妙なる者たちとして、人間の世において。

 

545. 今日、〔賢者たちは〕言います──二つの行為の報いがあると。安楽の、さらに、苦痛の、感受されるべきものがあると。それらの天神たちは、〔天上において〕楽しみ、〔行為とその報いの〕二者を見ない愚者たちは、〔地獄において〕煮られます。

 

546. 自ら作り為したものとして〔功徳をもたらす〕諸々の行為は、わたしには存在しません(過去世において善業を作らなかった)。たとえ、〔誰かが、何かを〕施しても、すなわち、〔わたしのためにと、施物を〕指示してくれる〔そのような者は〕、わたしには存在しません──衣服を、臥具を、さらに、食べ物と飲み物を〔施しても〕。それによって、〔わたしは〕裸で存し、かつまた、生活は困難なのです」と。

 

547. 〔王が尋ねた〕「夜叉よ、それによって、あなたが衣服を得られる、何であれ、契機となるものは、いったい、まさに、存在するのですか。すなわち、〔確実に果を生む〕因が存在するなら、あなたは、わたしに告げ知らせてください。信あるものとして、因についての〔あなたの〕言葉を、〔わたしどもは〕お聞きしたいのです」と。

 

548. 〔夜叉が答えた〕「ここに、カッピタカという名の比丘が存在します。瞑想者にして善き戒ある者であり、阿羅漢にして解脱者たる方です。〔感官の〕機能が守られ、戒条が統御された者であり、〔心が〕清涼と成り、最上の見に至り得た方です。

 

549. 友誼に厚く、寛容で、素直で、顔立ち美しく、聖教に通じ、かつまた、清廉潔白で、功徳にとっての田畑であり、相克なき住者であり、そして、天〔の神々〕と人間たちにとっての施与されるべき方です。

 

550. 〔心が〕寂静となり、怒りを離れ、煩悶なく、願望なく、〔心が〕解き放たれ、矢を抜き、我執なく、湾曲なく、〔生存の〕依り所なく、一切の虚構が滅尽し、三つの明知を獲得した光輝ある方です。

 

551. たとえ、〔彼を〕見ても、覚知されず、かつまた、善く知られず、彼のことを、ヴァッジー〔国〕において、〔人々は〕『牟尼』と通称します。夜叉や精霊たちは、彼のことを、動揺なき者と知ります──善き法(性質)の者として世を渡り歩く者と。

 

552. それで、もし、あなたが、彼に、一組〔の衣〕を、あるいは、二〔組の衣〕を、わたしのためにと指定して施すなら、かつまた、それらが納受され、〔そのように〕存するところで、そして、〔あなたは〕衣服を装着したわたしを見るでしょう」と。

 

553. 〔王が尋ねた〕「どのような地域におられるのですか。沙門が住しているところに、今や、赴いて、わたしどもはお会いするのです。彼は、今日、わたしの、疑いを、さらに、疑惑を、諸々の見解の狂騒を、除き去ってくれるでしょう」と。

 

554. 〔夜叉が答えた〕「彼は、カピナッチャナーにおいて、多くの天神たちに取り囲まれ、坐っておられます。真理を名とする方は、法(教え)の講話を語ります(法話をしている)──自らの師匠〔の教え〕において怠ることなく」と。

 

555. 〔王が言った〕「わたしは、そのように為しましょう。今や、赴いて、組となる〔衣〕をもって、沙門にまとわせましょう。かつまた、それらが納受され、〔そのように〕存するところで、そして、〔わたしどもは〕衣服を装着したあなたを見るでしょう」と。

 

556. 〔夜叉が言った〕「時節ならざるに、出家者のもとへと近しく赴いてはいけません。どうか、リッチャヴィ〔族の王〕よ、これは、あなたたちにとって、法(正義)ではありません。そして、そののち、〔しかるべき〕時に、近づいて行って、まさしく、そこにおいて、静所に坐っておられる方にお会いなされよ」と。

 

557. そこにおいて、奴隷たちの衆に取り囲まれたリッチャヴィ〔族の王〕は、「そのように〔為しましょう〕」と言って、〔自らの城市に〕赴いた。彼は、その城市へと近づいて行って、住居に入った──自らの住居地において。

 

558. そして、そののち、〔しかるべき〕時に、諸々の家の義務を為して、沐浴して、かつまた、〔水を〕飲んで、時節を得て、そして、リッチャヴィ〔族の王〕は、籠から八組〔の衣〕を選別して、奴隷たちの衆に収め取らせた。

 

559. 彼は、その地域へと近づいて行って、〔まさに〕その、心が寂静となった沙門を見た──托鉢から引き返し、戻ったところの〔沙門〕を──〔心が〕清涼と成り、木の根元において、坐っている〔沙門〕を。

 

560. まさしく、ただちに、〔王は〕言った──近づいて行って、病苦少なきかを、さらに、平穏の住あるかを、尋ねた〔そのあとに〕。〔王が言った〕「幸甚なる方よ、わたしは、ヴェーサーリーにおける、リッチャヴィ〔族の王〕です。わたしのことを、〔人々は〕リッチャヴィ〔族の王〕のアンバサッカラと知ります。

 

561. わたしの、これらの八組の浄美なる〔衣〕を、尊き方よ、納受してください、あなたに施します。まさしく、その義(目的)によって、ここに到来した者として、〔わたしは〕存しています。すなわち、わたしが、わが意を得た者と成りますように」と。

 

562. 〔比丘が尋ねた〕「さてまた、沙門や婆羅門たちは、はるか遠くから、あなたの住居地を遍く避けます。そして、あなたの住居地においては、諸々の鉢は壊され、さらに、また、諸々の大衣は裂かれます。

 

563. さらに、他にも、沙門たちは、諸々の足斧によって、頭を下に、打ち倒されます(足という名の斧によって転倒させられる)。出家者たちは、沙門たちは、あなたによって作り為された、このような悩害に至り得ます。

 

564. 草で〔すくうほどの〕油でさえも、あなたは施しませんでした。〔道に〕迷った者に、道さえも教えませんでした。盲者の杖を、自ら取り上げました。あなたは、このような、吝嗇の者であり、統御なき者です。そこで、あなたは、何を理由に、まさしく、何を見て、わたしたちを相手に、分与を為すのですか(何を理由に心変わりして布施を申し出るのか)」と。

 

565. 〔王が答えた〕「尊き方よ、すなわち、あなたが説かれたことですが、〔わたしは、それを〕信受します。沙門たちを、さらに、婆羅門たちを、〔わたしは〕悩み苦しめました。遊興を義(目的)とする者として、しかしながら、汚れた心の者としてではなく。尊き方よ、わたしの、この悪行もまた、まさしく。

 

566. 夜叉は、遊興によって、悪しき〔行為の報い〕を生んで、完全ならざる受益者となり、苦痛を感受します。青年にして、若くあるも、裸〔の状態〕の分有者として。彼にとって、それよりも、さらなる苦痛として、いったい、どのようなものが有るというのでしょう。

 

567. 尊き方よ、彼を見て、畏怖〔の思い〕を得ました。あるいは、また、それを縁とすることから、布施を施します。尊き方よ、八組の衣を納受してください。これらの施物は、夜叉のもとに赴きたまえ」と。

 

568. 〔比丘が言った〕「まさに、たしかに、布施は、多種に賞賛されるところです。そして、施しているあなたには、滅尽なき法(真理)が存せ。あなたの八組の衣を納受します。これらの施物は、夜叉のもとに赴きたまえ」と。

 

569. まさに、そののち、彼は、リッチャヴィ〔族の王〕は、口をそそいで、八組〔の衣〕を長老に施して、かつまた、それらが納受され、〔そのように〕存するところで、そして、〔王は〕衣服を装着した夜叉を見る。

 

570. 〔王は〕見た──彼を、栴檀の真髄を塗り、良馬に乗った、秀逸なる色艶ある者を──〔装いを〕十分に作り為し、美しく衣服を着衣し、〔従者たちに〕取り囲まれ、大いなる神通に至り得た夜叉を。

 

571. 彼を見て、その〔王〕は、わが意を得た者となり、勇躍する者となり、さらに、欣喜した心の者となり、浄美にして至高の形姿ある者となる──そして、大いなる報いある〔自己の〕行為を見て、眼によって現に見られる〔行為の報い〕を実証して。

 

572. まさしく、ただちに、〔王は〕言った──近づいて行って、「〔わたしは〕沙門や婆羅門たちに、布施を施します。さらに、また、わたしには、何であれ、施すべからざるものは存在しません(一切を施す)。夜叉よ、そして、あなたは、わたしにとって、多くの資益ある方です」と。

 

573. 〔夜叉が言った〕「リッチャヴィ〔族の王〕よ、そして、あなたは、わたしのためにと、諸々の布施を施しました──〔衣食住薬の四つの日用品のなかの〕一部位として〔衣を〕。これは、無駄ならざるものです。〔まさに〕その、わたしは、まさしく、あなたと、友誼を為すでしょう──人間ならざる者が、人間を相手に」と。

 

574. 〔王が言った〕「そして、赴く所として、そして、行き着く所として、そして、眷属として、わたしの朋友として、さらに、わたしの天神として、〔あなたは〕存しています。〔わたしは〕合掌の者と成って、あなたに乞い求めます。夜叉よ、〔わたしは〕求めます──ふたたび、また、あなたを見ることを」と。

 

575. 〔夜叉が言った〕「それで、もし、あなたが、信なき者として〔世に〕有るなら、吝嗇の形態ある、邪行心の者として〔世に有るなら〕、あなたは、わたしを見ることを、まさしく、得ないでしょう。かつまた、〔わたしが〕あなたを見ても、そして、〔あなたに〕語りかけることもまた、ないでしょう。

 

576. それで、もし、また、あなたが、法(教え)に尊重〔の思い〕ある者として〔世に〕有るなら、布施を喜び、自己の状態が制御された者として〔世に有るなら〕、沙門や婆羅門たちのために、〔布施の〕泉と成った者として〔世に有るなら〕、このように、わたしを見ることを得るでしょう。

 

577. 幸甚なる方よ、かつまた、あなたを見て、〔あなたに〕語りかけるでしょう。では、この者を、串から、すぐさま解き放ってください。すなわち、因縁として、〔わたしたちが〕友誼を為したのも、〔わたしは〕思うのですが、串に刺された者に契機があるからです。

 

578. 〔まさに〕その〔わたしたち〕は、互いに他と友誼を為しました。そして、この者は、串から、すぐさま解き放たれたなら、諸々の法(教え)を真剣に励行する者となり、そして、彼は、その地獄から解き放たれるでしょう。感受されるべき行為〔の報い〕は、他なるものとして存するでしょう。

 

579. そして、カッピタカ〔長老〕のもとへと近づいて行って、まさしく、彼を相手に、〔施物を〕分け与えて、〔しかるべき〕時に、自ら面前し、近しく坐して尋ねなさい。彼は、この義(意味)を、あなたに告げ知らせるでしょう。

 

580. まさしく、その比丘のもとへと近づいて行って、尋ねるのです。了知を義(目的)とする者として、しかしながら、汚れた心の者としてではなく。彼は、あなたにとって、〔すでに〕聞かれたものも、さらに、また、〔いまだ〕聞かれていないものも、〔それが〕法(教え)としてあるなら、一切もろともに、〔あなたに〕告げ知らせるでしょう──〔彼が〕覚知している、そのとおりに」と。

 

581. 彼は、そこにおいて、内密に語り合って、人間ならざる者と友誼を為して〔そののち〕、彼は、リッチャヴィ〔族〕の者たちの現前へと臨み行き、そこで、着坐している衆に説いた。

 

582. 〔王が言った〕「諸君よ、わたしの一なる言葉を聞きたまえ。〔わたしは〕願い事を願うであろう。〔わたしは〕義(利益)を得るであろう。串に刺された男は、残忍な行為ある者として、棒(刑罰)が加えられ、呪われた形態ある者である。

 

583. 〔彼が〕刺された、そののち、これまでで、二十夜ほどとなる。まさしく、生きているでもなく、死んでもいない。わたしは、今や、彼を解き放つであろう。すなわち、〔わたしの〕思いのままに、集まった者は承認したまえ」と。

 

584. 〔人々が言った〕「そして、この者を、さらに、他の者を、すぐさま解き放ってください。そのように為しているあなたに、誰が、〔異論を〕説くというのでしょう。すなわち、〔あなたが〕覚知するままに、そのとおりに為してください。すなわち、〔あなたの〕思いのままに、集まった者は承認します」と。

 

585. 彼は、その地域へと近づいて行って、まさしく、すみやかに、串に刺された者を解き放った。そして、「友よ、恐れてはいけない」と、彼に言った。さらに、医師をして奉仕させた。

 

586. そして、カッピタカ〔長老〕のもとへと近づいて行って、まさしく、彼を相手に、〔施物を〕分け与えて、〔しかるべき〕時に、自ら面前し、近しく坐して、リッチャヴィ〔族の王〕は、〔滅罪を〕契機とし義(目的)とする者は、まさしく、そのように、彼に尋ねた。

 

587. 〔王が尋ねた〕「串に刺された男は、残忍な行為ある者として、棒が加えられ、呪われた形態ある者です。〔彼が〕刺された、そののち、これまでで、二十夜ほどとなります。まさしく、生きているでもなく、死んでもいません。

 

588. 尊き方よ、この夜叉の、まさに、言葉として、彼は、〔わたしが〕赴いて〔そののち〕、今や、わたしによって解き放たれました。それによって、彼が、地獄に行かずにすむ、まさしく、何であれ、契機となるものは、いったい、まさに、存在するのですか。

 

589. 尊き方よ、すなわち、〔確実に果を生む〕因が存在するなら、告げ知らせてください。信あるものとして、因についての〔あなたの〕言葉を、〔わたしどもは〕お聞きしたいのです。それらの行為に、消失は存在しないのですか──〔報いを〕感受せずして、この〔世において〕、終息の状態は〔存在しないのですか〕」と。

 

590. 〔長老が答えた〕「それで、もし、彼が、夜に、昼に、〔気づきを〕怠ることなく、諸々の法(教え)を真剣に励行するなら、そして、彼は、その地獄から解き放たれるでしょう。感受されるべき行為〔の報い〕は、他なるものとして存するでしょう」と。

 

591. 〔王が言った〕「男についての、この義(意味)は、了知するところとなりました。尊き方よ、わたしをもまた、今や、慈しみください。広き智慧ある方よ、わたしに、教え示してください、教え諭してください。すなわち、わたしが、地獄に行かずにすむように」と。

 

592. 〔長老が言った〕「まさしく、今日、帰依所として、覚者のもとへと、そして、法(教え)へと、さらに、僧団へと、〔あなたは〕近しく至りなさい──清信した心の者となり。まさしく、そのように、破断と亀裂なき五つの境処(五戒)を学んで、受持するのです。

 

593. すみやかに、命あるものを殺すことから離れなさい。世において与えられていないものを遍く避けなさい。酒を飲まない者として〔世に有りなさい〕。そして、虚偽を話してはいけません。さらに、自らの妻で満足している者として〔世に〕有りなさい。さらに、この、優れた八つの支分を具した聖なるもの(八斎戒)を、安楽を生成する善なるものを、受持しなさい。

 

594. 衣料を、そして、〔行乞の〕施食を、日用品を、臥坐具を、食べ物を、飲み物を、固形の食料を、さらに、諸々の衣や臥坐具を、〔心が〕真っすぐと成った者たちにたいし施しなさい──清信した心で。

 

595. さらに、戒を成就した比丘たちを、貪欲を離れた多聞の者たちを、食べ物と飲み物によって満足させなさい。功徳は、常に増大します。

 

596. そして、このように、夜に、昼に、〔気づきを〕怠ることなく、諸々の法(教え)を真剣に励行する者となり、そして、あなた〔自身〕を、その地獄から解き放ちなさい。感受されるべき行為〔の報い〕は、他なるものとして存するでしょう」と。

 

597. 〔王が言った〕「まさしく、今日、帰依所として、覚者のもとへと、そして、法(教え)へと、さらに、僧団へと、〔わたしは〕近しく至ります──清信した心の者となり。まさしく、そのように、破断と亀裂なき五つの境処を学んで、受持します。

 

598. すみやかに、命あるものを殺すことから離れます。世において与えられていないものを遍く避けます。酒を飲まない者として〔世に有ります〕。そして、虚偽を話しません。さらに、自らの妻で満足している者として〔世に〕有ります。さらに、この、優れた八つの支分を具した聖なるものを、安楽を生成する善なるものを、受持します。

 

599. 衣料を、そして、〔行乞の〕施食を、日用品を、臥坐具を、食べ物を、飲み物を、固形の食料を、さらに、諸々の衣や臥坐具を──

 

600. そして、戒を成就した比丘たちに、貪欲を離れた多聞の者たちに、動揺することなく、施します──覚者たちの教えを喜ぶ者となり」と。

 

601. このような者として、リッチャヴィ〔族の王〕のアンバサッカラは、ヴェーサーリーにおける随一の在俗信者となり、信ある者として、柔和なる者として、さらに、為すことを為す者として、そして、そのとき、比丘の僧団に恭しく奉仕した。

 

602. かつまた、串に刺された者は、無病の者と成って、独存の者として、安楽の者として、出家〔の道〕へと近しく赴いた。そして、最上者たるカッピタカ比丘を縁として、両者ともどもに、諸々の沙門の果に到達した。

 

603. このようなものとして、正なる人士たちと慣れ親しむことはある。正しくある者たちと〔慣れ親しむことは〕、識知している者たちと〔慣れ親しむことは〕、大いなる果と成る。串に刺された者は、至高の果(阿羅漢果)を体得し、いっぽう、アンバサッカラは、最低の果(預流果)に〔至り得た〕。ということで──

 

 アンバサッカラ・ペータヴァットゥが、第一となる。

 

4. 2. セーリーサカ・ペータヴァットゥ(セーリーサカの餓鬼の事例)

 

604. 聞きたまえ──そして、夜叉と、商人たちと、〔両者の〕遭遇が、そのとき、そこにおいて有ったとおりに──さらに、また、すなわち、話が、相互のあいだで見事に語られたとおりに──全ての者たちよ、そして、それを聞きたまえ。

 

605. すなわち、その〔夜叉〕は、パーヤーシという名の王として〔世に〕有った。地居〔の神々〕たちとの共住に赴いた者であり、福徳ある者である。彼は、まさしく、歓喜しながら、自らの天宮において、人間ならざる者は、人間たちに語りかけた。ということで──

 

606. 〔夜叉が尋ねた〕「人間ならざる者が依って立つ猜疑の林において、水少なく食少なき砂漠において、極めて赴き難い砂の道の中央において、猜疑に恐怖し意気消沈している人間たちよ。

 

607. ここに、諸々の果も、さらに、諸々の根から作られるものも、存在しません。燃料も存在しません。ここに、どうして、食物があるというのでしょう。そして、諸々の砂塵より、さらに、諸々の砂礫より、他に〔何があるというのでしょう〕。そして、諸々の熱せられた(※)暑気より、さらに、諸々の辛酸より、〔他に何があるというのでしょう〕。

 

※ テキストには tatāhi とあるが、ヴィマーナヴァットゥ1231偈により tattāhi と読む(PTS版は、この箇所を省略)。

 

608. 不毛〔の地〕にして、熱せられた釜のようであり、薄幸〔の地〕にして、他の世に比すべきところであり、この〔地〕は、残忍な者たちの古き居住所であり、土地の地域としては、呪われた形態あるところです。

 

609. そこで、あなたたちは、何を理由に、何を願望しながら、まさに、この地域に入り込んだのですか──〔それも〕無理やり超え行って。貪欲からですか、恐怖からですか、さらに、あるいは、等しく遍く迷乱したからですか」と。

 

610. 〔商人たちが答えた〕「マガダ〔国〕における、さらに、アンガ〔国〕における、隊商の長たちとして、多々なる商品を積載して、〔まさに〕その〔わたしたち〕は、シンドゥ〔地方〕のソーヴィーラの地に行くところです──財を義(目的)として、利潤を望み求めながら。

 

611. 昼には、渇きに耐えられず、かつまた、車馬への慈しみを顧慮しながら、夜には、時ならざるに道を行き、〔この地に〕入り行きます──この勢いで、全ての者たちが。

 

612. 〔まさに〕その〔わたしたち〕は、進み行き難く、道を反れ、林のなかで、盲目の迷者たちとなり、遭難したのです。極めて赴き難い砂の道の中央において、遍く迷乱した心の者たちとなり、方角を知りません。

 

613. 夜叉よ、そして、あなたを、さらに、最勝の天宮を、さてまた、この、過去に見たことがないものを見て、〔今や〕それ以上の生命を願望している〔わたしたち〕です──〔救い手となるべきあなたを〕見て、満足した者たちとなり、悦意の者たちとなり、勇躍する者たちとなり」と。

 

614. 〔夜叉が尋ねた〕「海の彼方へと、そして、この砂〔の道〕を、杖で歩む〔道〕を、さらに、杭の道を、〔そのような赴き難い〕道を、また、そして、諸々の山にある諸々の川の難所を、財物を因として、多々なる方角へと、〔あなたたちは〕赴きます。

 

615. 他者たちの領土に飛び込んで、諸々の国の人間たちを眺め見ている〔あなたたち〕です。親愛なる者たちよ、すなわち、あなたたちによって、あるいは、聞かれたもので、さらに、あるいは、また、見られたもので、あなたたちにとって稀有なるものを、それを、〔わたしどもは〕お聞きしたいのです(他国で見聞したことを聞かせてほしい)」と。

 

616. 〔商人たちが答えた〕「年若き方よ、わたしたちによって、あるいは、聞かれたもので、さらに、あるいは、また、見られたもので、これよりもなお、稀有なるものはありません。まさしく、過去の人間のもので、至上の色艶ある全てのものを見ても、〔わたしたちは〕満足しません。

 

617. 諸々の蓮池は、宙空において流れ行き、沢山の花環があり、多くの白蓮があり、そして、これらの木々は、常に果を実らせ、諸々の香りは、頻繫に芳香を香り行かせます。

 

618. 百の直立する瑠璃の柱があり、かつまた、宝石や珊瑚の長大なる柱頭があり、諸々の瑪瑙があり、諸々の紅玉が共にあり、これらの柱は、諸々の輝石で作られています。

 

619. 千の柱があり、無比なる威厳があり、この美しい天宮は、それらの上にあります。宝玉の間には、黄金の手すりが差し渡され、そして、諸々の輝く板によって美しく覆われています。

 

620. これは、精錬されたジャンブー川〔の金〕にして、善く磨かれた、高楼と梯子段を具有し、そして、堅固で、かつまた、麗美で、なおかつ、見事に集いあつまり、あまりに極めて快意にして、〔誰もが〕納得し受認するものです。

 

621. 宝玉の間には、多くの食べ物と飲み物があり、〔あなたは〕仙女たちの群れに取り囲まれ、小鼓や太鼓の楽器が鳴らされ、賛嘆と敬拝をもって敬拝される者として存しています。

 

622. 〔まさに〕その〔あなた〕は、女たちの群れ〔の声〕で目覚める者であり、意が喜びとする優れた天宮の高楼において歓喜します。不可思議なる者であり、一切の徳を具有した者であり、あたかも、〔天の〕ナリニー〔の蓮池〕におけるヴェッサヴァナ王(毘沙門天)のようです。

 

623. いったい、〔あなたは〕天〔の神〕として存しているのですか、あるいは、また、夜叉として〔存しているのですか〕。それとも、人間と成った天のインダ(帝釈天)として〔存しているのですか〕」〔と〕。隊商の長たる商人たちは、彼に尋ねる。「告げ知らせてください──まさに、誰なのですか、あなたは、夜叉として存しているのですか」と。

 

624. 〔夜叉が答えた〕「まさに、わたしは、セーリーサカという名の夜叉です。砂の道において、難所を守る者です。ヴェッサヴァナ王の言葉を為す者として、この地域を警護します」と。

 

625. 〔商人たちが尋ねた〕「あなたにとって、偶然に得られたものですか、〔必然による〕変化から生じるものですか、それとも、自ら作り為したものですか、天〔の神々〕たちによって与えられたものですか」〔と〕。隊商の長たる商人たちは、彼に尋ねる。「どのように、この快意なるものは、あなたによって得られたのですか」と。

 

626. 〔夜叉が答えた〕「わたしにとって、偶然に得られたものではなく、〔必然による〕変化から生じるものではなく、自ら作り為したものではなく、まさに、天〔の神々〕たちによって与えられたものでもありません。自らの、諸々の悪ならざる行為によって、諸々の功徳によって、この快意なるものは、わたしによって得られたのです」と。

 

627. 〔商人たちが尋ねた〕「あなたにとって、どのようなものが、掟なのですか、また、どのようなものが、梵行なのですか。これは、どのような善き行ないの報いなのですか」〔と〕。隊商の長たる商人たちは、彼に尋ねる。「どのように、この天宮は、あなたによって得られたのですか」と。

 

628. 〔夜叉が答えた〕「〔わたしが〕コーサラ〔国〕の王権を為した、そのとき、わたしには、『パーヤーシ』という呼称が有りました。〔わたしは〕『〔何であれ〕存在しない』という見解の者として、吝嗇の者として、悪しき法(性質)の者として、かつまた、断絶の論ある者として、そのとき、〔世に〕有りました。

 

629. そして、まさに、クマーラ・カッサパ沙門が、多聞の者として、様々な言説ある者として、秀逸なる者として、〔世に〕存しました。そのとき、彼は、わたしに、法(真理)の言説を語り、わたしの、諸々の見解の狂騒を除き去りました。

 

630. わたしは、彼の、〔まさに〕その、法(真理)の言説を聞いて、在俗信者たることを、〔彼に〕知らせました。命あるものを殺すことから離れた者として〔世に〕有りました。世において与えられていないものを遍く避けました。酒を飲まない者として〔世に有りました〕。そして、虚偽を話しませんでした。さらに、自らの妻で満足している者として〔世に〕有りました。

 

631. わたしにとって、それが、掟であり、また、それが、梵行です。これは、その善き行ないの報いです。まさしく、それらの、諸々の悪ならざる行為によって、諸々の功徳によって、この天宮は、わたしによって得られたのです」と。

 

632. 真に、まさに、智慧を有する人たちは言った──他なることなく、賢者たちの言葉を。「そのところ、そのところに、善き行為〔の報い〕ある者が赴くなら、そのところ、そのところに、欲するままに欲する者となり、歓喜する。

 

633. そのところ、そのところに、そして、憂いと嘆きある者としてあり、そして、殴打の者としてあり、そして、結縛の者としてあり、遍き〔心の〕汚れある者としてあるなら、そのところ、そのところに、悪しき行為〔の報い〕ある者として赴き、いついかなる時も、悪しき境遇から解き放たれない」と。

 

634. 〔商人たちが尋ねた〕「等しく迷乱した形態の人のように、〔あなたは〕成りました──この寸時のうちに、泥に作り為されたかのように。年若き方よ、さてまた、〔天の〕人たる、〔まさに〕この、あなたに、いったい、まさに、何によって、不興が有ったのですか」と。

 

635. 〔夜叉が答えた〕「親愛なる者たちよ、そして、これらのシリーサ〔樹〕の林は、天の香りがあり、諸々の芳香が等しく香り行きます。この天宮は、それら〔の香り〕を等しく香り行かせます──そして、昼に、さらに、夜に、闇を打破して。

 

636. そして、これら〔の木々〕の果皮は、まさに、百年が過ぎると、一つ一つが張り裂けます。人間としての百年が過ぎ行き、それから以降は、〔天の〕衆のうちにあり、ここに再生したのです。

 

637. 親愛なる者たちよ、わたしは、五百年のあいだ、〔安楽を〕見て、この天宮に止住して〔そののち〕、寿命の滅尽あることから、功徳の滅尽あることから、〔いずれ〕死滅するでしょう。まさしく、その憂いによって、〔わたしは〕混迷した者として存しています」と。

 

638. 〔商人たちが言った〕「いったい、どのように、そのような種類の者が、彼が、憂い悲しむというのでしょう──長きにわたり、無比なる天宮を得て。しかしながら、また、それらの者たちが、まさに、暫しのあいだ再生した者たちであるなら、彼らは、微小なる功徳の者たちであり、たしかに、憂い悲しむべきなのでしょう」と。

 

639. 〔夜叉が言った〕「すなわち、愛ある言葉を、あなたたちは、わたしに知らせます。それは、わたしにとって、至当なることであり、かつまた、教え諭されるべきことです。親愛なる者たちよ、そして、あなたたちは、まさに、わたしに守られた者たちです。そこが求めるところであるなら、〔無事〕安穏に、そこに去り行きたまえ」と。

 

640. 〔商人たちが言った〕「わたしたちは、シンドゥ〔地方〕のソーヴィーラの地に赴いて、財を義(目的)として、利潤を望み求めながら、専念〔努力〕のままに、施捨を円満成就し、盛大なるセーリーサカ祭を為すでしょう」と。

 

641. 〔夜叉が言った〕「まさしく、そして、〔今のままで〕セーリーサカ祭を為してはいけません(その前にやるべきことがある)。すなわち、〔改悛の言葉を、あなたたちが、わたしに〕知らせるなら、そして、〔その〕全てが、あなたたちのために成るでしょう。諸々の悪しき行為を避けなさい。そして、法(教え)への専念を確立しなさい。

 

642. この集まりのなかに、在俗信者が存在します。多聞の者であり、戒と掟を具有した者です。そして、信ある者であり、かつまた、施捨ある者であり、さらに、極めて博愛なる者です。明眼の者であり、満足の者であり、思慧ある者です。

 

643. 正知しつつ虚偽を話しません(故意に嘘をつかない)。他者を害することを思い考えません。陰口と中傷を為しません。そして、優雅で友誼ある言葉を話します。

 

644. 尊重〔の思い〕を有する者であり、敬虔〔の思い〕を有する者であり、〔正しく〕教え導かれた者です。悪しき〔行為〕なき者であり、卓越の戒において清浄なる者です。その人は、母を、さらに、また、父を、法(正義)によって養います──聖なる生活者として。

 

645. 思うに、彼は、母と父を動機とすることから、諸々の財物を遍く探し求めます──自己を因としてではなく。そして、彼は、母と父の死後には、離欲に傾く者(涅槃を志向する者)となり、梵行を歩むでしょう。

 

646. 〔心が〕真っすぐで、湾曲なく、狡猾〔の性行〕なく、幻惑〔の策略〕なく、さらに、計略をもって取り仕切ることもありません。彼は、如なる者であり、善行の行為を為す者であり、法(正義)に依って立つ者であり、どのようなわけで、苦しみを得るというのでしょう。

 

647. 〔わたしは〕彼を動機とすることから、〔自己の姿を〕自己みずから明らかと為した者として〔ここに〕存しています(彼のために姿を現わし、商人たちの命を助けた)。それゆえに、商人たちは、法(真理)を見よ。彼が他にあるなら、ここに、〔あなたたちは〕灰に成るところなのです。林のなかで、盲目の迷者たちとなり、遭難したのです。軽佻なるは、彼を嘲笑している他の者との〔交際であり〕、安楽なるは、まさに、正なる人士との交際なのです」と。

 

648. 〔商人たちが尋ねた〕「彼は、まさに、どのような者で、そして、どのような行為を為すのですか。彼には、どのような命名があり、かつまた、どのような姓があるのですか。夜叉よ、わたしたちもまた、彼を見ることを欲します──彼への慈しみ〔の思い〕によって、ここに到来した者として、〔あなたが〕存しているなら。まさに、彼には、諸々の利得があります──彼のために、あなたが熱望するからには」と。

 

649. 〔夜叉が答えた〕「彼は、理髪師で、サンバヴァという命名があり、櫛と果に依拠して生きる在俗信者です。彼のことを、〔あなたたちは〕知っています。彼は、あなたたちの下僕です。彼のことを、まさに、蔑んではいけません。彼は、極めて博愛なる者です」と。

 

650. 〔商人たちが言った〕「夜叉よ、あなたが説く〔その理髪師のことを〕、彼のことを、〔わたしたちが〕知っているとして、まさに、彼のことを、『彼は、このような者として〔世に有る〕』とは知りません。夜叉よ、わたしたちもまた、彼を供養します。あなたの秀逸なる言葉を聞いて〔そののちは〕」と。

 

651. 〔夜叉が言った〕「彼らが誰であれ、この隊商における人間たちは──青年たちも、老年たちも、さらに、あるいは、また、中年たちも──彼らは、まさしく、全ての者たちが、天宮に登れ。吝嗇の者たちよ、諸々の功徳の果を見よ」と。

 

652. そこにおいて、彼らは、まさしく、全ての者たちが、「まずは、わたしが」と、そこにおいて、その理髪師を尊んで、彼らは、まさしく、全ての者たちが、天宮に登った──ヴァーサヴァ(帝釈天)のマサッカサーラ〔宮殿〕のような〔天宮〕に。

 

653. そこにおいて、彼らは、まさしく、全ての者たちが、「まずは、わたしが」と、在俗信者たることを〔彼に〕知らせた。命あるものを殺すことから離間した者たちと成った。世において与えられていないものを遍く避けた。酒を飲まない者たちと〔成った〕。そして、虚偽を話さなかった。さらに、自らの妻で満足している者たちと成った。

 

654. そこにおいて、彼らは、まさしく、全ての者たちが、「まずは、わたしが」と、在俗信者たることを〔彼に〕知らせて、隊商は、随喜しつつ立ち去った──繰り返し、夜叉の神通を思い知らされ。

 

655. 彼らは、シンドゥ〔地方〕のソーヴィーラの地に赴いて、財を義(目的)として、利潤を望み求めながら、専念〔努力〕のままに、利得を円満成就し、つつがなく、パータリプッタに戻った。

 

656. 彼らは、自らの家に赴いて、安穏なる者たちとなり、子たちと妻たちを保有する状態となり、歓嘆の者たちとなり、歓悦の者たちとなり、悦意の者たちとなり、満足した者たちとなり、盛大なるセーリーサカ祭を為した。彼らは、セーリーサカ僧房を造作した。

 

657. このようなものとして、正なる人士たちと慣れ親しむことはある。大いなる義(利益)あるものとして、法(正義)の徳ある者たちと慣れ親しむことはある。一者の在俗信者の義(利益)のために、有情たちは、まさしく、全ての者たちが、安楽の者たちと成った。ということで──

 

 セーリーサカ・ペータヴァットゥが、第二となる。

 

 第三の朗読分は〔以上で〕終了となる。

 

4. 3. ナンダカ・ペータヴァットゥ(ナンダカの餓鬼の事例)

 

658. ピンガラカという名の王が、スラッタ〔国〕の君主として〔世に〕有った。モーリヤ〔国の王〕への奉仕に赴いて、スラッタ〔国〕にふたたび戻った。

 

659. 時は日中の暑きなか、王は、泥地へと近しく赴いた。喜ばしき道を見た──〔まさに〕その、餓鬼たちの砂の道を。

 

660. 王は、馭者に告げた。〔王が言った〕「これは、喜ばしき道である。平安にして安穏なる至福〔の道〕である。馭者よ、この〔道〕を行こう。これより、スラッタ〔国〕の現前に〔至るまで〕」〔と〕。

 

661. ソーラッタ〔王〕は、その〔道〕をとおり進み行った──四つの支分(象兵・馬兵・車兵・歩兵)ある軍団とともに。怯える様子の家来が、ソーラッタ〔王〕に、この〔言葉〕を説いた。

 

662. 〔家来が言った〕「〔わたしたちは〕悪しき道を行く者たちとして存しています──禍々しく身の毛のよだつ〔道〕を〔行く者たちとして〕。道は、前には見えますが、しかしながら、後には見えません。

 

663. 〔わたしたちは〕悪しき道を行く者たちとして存しています。夜魔の家来たちの現前にあるのです。人間ならざる臭いがただよいます。凶悪なる音が聞こえます」〔と〕。

 

664. 畏怖したソーラッタ王は、馭者に、この〔言葉〕を説いた。〔王が言った〕「〔わたしたちは〕悪しき道を行く者たちとして存している──禍々しく身の毛のよだつ〔道〕を〔行く者たちとして〕。道は、前には見えるが、しかしながら、後には見えない。

 

665. 〔わたしたちは〕悪しき道を行く者たちとして存している。夜魔の家来たちの現前にあるのだ。人間ならざる臭いがただよう。凶悪なる音が聞こえる」〔と〕。

 

666. 象の背に登って、四方を眺め見つつ、〔王は〕見た──喜ばしきニグローダ〔樹〕を、日影を伴った木を、黒雲の色艶に等しく、雨雲の色艶と吉祥の輝きある〔木〕を。

 

667. 王は、馭者に告げた。〔王が尋ねた〕「大きな〔木〕が見えるが、これは、何〔の木〕なのだ。黒雲の色艶に等しく、雨雲の色艶と吉祥の輝きある〔木〕である」〔と〕。

 

668. 〔馭者が答えた〕「大王よ、それは、ニグローダ〔樹〕です。日影を伴った木です。黒雲の色艶に等しく、雨雲の色艶と吉祥の輝きある〔木〕です」〔と〕。

 

669. ソーラッタ〔国の王〕は、その大きな〔木〕が見えるところに、そこへと進み行った──黒雲の色艶に等しく、雨雲の色艶と吉祥の輝きある〔木〕が〔見えるところに〕。

 

670. 象の背から降りて、王は、木へと近しく赴いた。家臣たちと共に、従者たちと共に、木の根元に坐った。器に満ちた飲み物を、さらに、諸々の豊富なる菓子を、見た。

 

671. そして、人〔の姿をした夜叉〕が、天の色艶ある、一切の装飾品に飾られた者となり、王のもとへと近づいて行って、ソーラッタ〔王〕に、この〔言葉〕を説いた。

 

672. 〔夜叉が言った〕「大王よ、あなたにとって、善き訪問と〔成れ〕。さらに、あなたにとって、悪しき訪問ならざるものと〔成れ〕。陛下は、飲み物を飲みたまえ。敵を調御する者よ、諸々の菓子を咀嚼したまえ」〔と〕。

 

673. 王は、飲み物を飲んで、家臣たちと共に、従者たちと共に、諸々の菓子を咀嚼して、さらに、〔飲み物を〕飲んで、ソーラッタ〔王〕は、この〔言葉〕を説いた。

 

674. 〔王が尋ねた〕「いったい、〔あなたは〕天神として存しているのですか、音楽神として〔存しているのですか〕、それとも、プリンダダ(都の破壊者)たる帝釈〔天〕として〔存しているのですか〕。知らずにいる者たちとして、あなたに尋ねます。どのように、わたしどもは、あなたのことを知るべきですか」と。

 

675. 〔夜叉が答えた〕「〔わたしは〕天〔の神〕として存するにあらず、音楽神にあらず、また、プリンダダたる帝釈〔天〕にあらず。大王よ、わたしは、餓鬼です。スラッタ〔国〕から〔死滅して〕、ここに到来したのです」と。

 

676. 〔王が尋ねた〕「どのような戒ある者として、どのような励行ある者として、スラッタ〔国〕において、かつて、あなたは〔存していたのですか〕。あなたの、どのような梵行によって、あなたの、この威厳はあるのですか」と。

 

677. 〔夜叉が答えた〕「大王よ、敵を調御する者よ、国土を繁栄させる者よ、それを聞いてください──家臣たちも、さらに、侍臣たちも、婆羅門も、さらに、司祭も。

 

678. 陛下よ、スラッタ〔国〕において、わたしは、悪しき心の人として〔存しました〕。そして、誤った見解の者として、劣戒の者として、吝嗇の者として、〔他者を〕誹謗する者として、〔世に存しました〕。

 

679. 〔信ある者たちが〕施しているなら、〔功徳を〕作り為しているなら、多くの人たちを阻止しました。他者たちが施しているなら、わたしは、障りを為す者として〔存しました〕。

 

680. 『布施に、報いは存在しない。どうして、自制に、果があるというのだろう。師匠は、まさに、存在しない。調御されていない者を、誰が調御するというのだろう。

 

681. 生類たちは、平等にして均等である。どうして、目上の者を敬う者があるというのだろう。活力は、あるいは、精進は、存在しない。どうして、奮起する人があるというのだろう。

 

682. 布施の果は、まさに、存在せず、怨みある者を清めない。人は、得るべきものを得る──運命による変化から生じるものを。

 

683. 母も、父も、兄弟も、存在しない。この〔世〕から他〔の世〕へと、世は存在しない。施しものは存在しない。捧げものは存在しない。善く安置されたもの(功徳)は見出されない。

 

684. たとえ、彼が、人を殺すとして、他者の頭を断ち切るとして、誰であれ、誰をも、殺さない。七つ〔の元素〕の裂け目の間に〔剣が通るだけのこと〕。

 

685. まさに、生命は、切断できず破壊できず、八つの部分ある丸い真球にして、誰が、五百ヨージャナ(由旬:長さの単位・軛牛の一日の旅程距離)となる生命を、切断することができるというのだろう。

 

686. あたかも、糸玉が投げられたとき、ほどけながら去り行くように、まさしく、このように、そして、その生命も、ほどけながら去り行く。

 

687. あたかも、村から出て、他の村に入るように、まさしく、このように、そして、その生命も、他者の体内に入る。

 

688. あたかも、家から出て、他の家に入るように、まさしく、このように、そして、その生命も、他者の体内に入る。

 

689. まさに、八百四十万の大いなるカッパ(:時間の単位・極めて長い時間)のあいだ、彼らが愚者たちであれ、さらに、彼らが賢者たちであるも、輪廻を過ごして、苦しみの終極を為すことになる。

 

690. 諸々の桶によって、さらに、諸々の籠によって、諸々の楽と苦は計量され、他の人々は等しく迷乱しているが、勝者(ジナ)は、全てを覚知する』〔と〕。

 

691. かつて、〔わたしは〕このような見解の者として、等しく迷乱し迷妄に打ち負かされた者として、〔世に〕存しました。そして、誤った見解の者として、劣戒の者として、吝嗇の者として、〔他者を〕誹謗する者として、〔世に存しました〕。

 

692. 六月の内に、わたしに、命の終わりが有るでしょう。一方的に辛辣で、おぞましき地獄に、わたしは落ちるでしょう。

 

693. 四つの隅があり、四つの門があり、等分に計量され区分され、鉄柵を極限とし、鉄によって覆い包まれている〔地獄〕に。

 

694. その〔地獄〕の鉄製の地は、燃え盛り、火に充ち、百ヨージャナの遍きにわたり充満して、一切時に止住します。

 

695. 十万年のあいだ、まさしく、そのあいだ〔地獄にいると〕、音が聞こえます。大王よ、これが、〔一〕ラッカ(洛紗)であり、〔一〕コーティ(倶胝:数の単位・一千万)の百分の〔一〕年となります。

 

696. 十万コーティのあいだ、人々は地獄において煮られます。そして、誤った見解の者たちとして、劣戒の者たちとして、そして、彼らが、聖者を批判する者たちであるなら。

 

697. そこにおいて、わたしは、長時にわたり、苦痛の感受を感受するでしょう──悪しき行為の果として。それゆえに、わたしは、激しく憂い悲しむのです。

 

698. 大王よ、敵を調御する者よ、国土を繁栄させる者よ、それを聞いてください。大王よ、わたしには、ウッタラーという娘がいます。あなたに、幸せが存せ。

 

699. 〔彼女は〕立派な行為を為します。諸戒と斎戒に喜びある者です。〔心身が〕自制された者であり、そして、〔施物を〕分け与える者です。寛容で、物惜〔の思い〕を離れた者です。

 

700. 学びにおいて破断なく為す者(持戒者)であり、そして、嫁として、他の家々にあります。釈迦〔族〕の牟尼の、正等覚者(ブッダ)の、吉祥なる方の、女性在俗信者です。

 

701. そして、戒を成就した比丘が、村に〔行乞の〕食のために入りました。〔生類を殺さぬように注意深く〕眼を落とし、〔常に〕気づきある方です。〔感官の〕門が守られ、善く統御された方です。

 

702. 〔彼は、行乞のために〕歩々淡々と歩みながら、その住居地に赴きました。大王よ、ウッタラーは、彼を見ました。あなたに、幸せが存せ。

 

703. 器に満ちた飲み物を、さらに、諸々の豊富なる菓子を、彼女は施しました。『尊き方よ、わたしの父が、命を終えたのです。この〔施物〕は、彼のために役立ちたまえ』〔と〕。

 

704. 〔わたしのためにと〕指定された等しく直後に、報いは生起しました。わたしは、欲するままに欲する者となり、〔諸々の財物を〕受益します──あたかも、ヴェッサヴァナ王(毘沙門天)のように。

 

705. 大王よ、敵を調御する者よ、国土を繁栄させる者よ、それを聞いてください。天を含む世〔の人々〕にとって、覚者は、至高の者たる方と呼ばれます。その覚者を帰依所に赴きなさい。敵を調御する者よ、子と妻と共に。

 

706. 〔聖なる〕八つの支分ある道(八正道八聖道)によって、〔人々は〕不死の境処を体得します。その法(教え)を帰依所に赴きなさい。敵を調御する者よ、子と妻と共に。

 

707. そして、〔道の〕実践者たる四者(四向:預流道・一来道・不還道・阿羅漢道)がいて、さらに、果における安立者たる四者(四果:預流果・一来果・不還果・阿羅漢果)がいます。この僧団は、〔心が〕真っすぐと成り、智慧と戒によって〔心が〕定められています。その僧団を帰依所に赴きなさい。敵を調御する者よ、子と妻と共に。

 

708. すみやかに、命あるものを殺すことから離れなさい。世において与えられていないものを遍く避けなさい。酒を飲まない者として〔世に有りなさい〕。そして、虚偽を話してはいけません。さらに、自らの妻で満足している者として〔世に〕有りなさい」と。

 

709. 〔王が言った〕「夜叉よ、わたしにとって、〔あなたは〕義(利益)を欲する者として存しています。天神よ、〔あなたは〕益を欲する者として存しています。〔わたしは〕あなたの言葉を為します。わたしにとって、あなたは、師匠として存しています。

 

710. 帰依所として、覚者のもとへと、そして、また、無上なる法(教え)へと、〔わたしは〕近しく至ります。さらに、人と天〔の神〕の帰依所として、僧団へと、わたしは赴きます。

 

711. すみやかに、命あるものを殺すことから離れます。世において与えられていないものを遍く避けます。酒を飲まない者として〔世に有ります〕。そして、虚偽を話しません。さらに、自らの妻で満足している者として〔世に〕有ります。

 

712. 〔わたしは〕払い落とします──大風のなか、激しく流れ行く川のなか、悪しき見解を吐き捨てます──覚者たちの教えを喜ぶ者となり」と。

 

713. ソーラッタ〔王〕は、この〔言葉〕を説いて、悪しき見から離れて、世尊への礼拝を為して、東に向かい、車に乗った。ということで──

 

 ナンダカ・ペータヴァットゥが、第三となる。

 

4. 4. レーヴァティー・ペータヴァットゥ(レーヴァティーの餓鬼の事例)

 

714. 〔夜魔の使者たちが言った〕「レーヴァターよ、極めて悪しき法(性質)の者よ、開かれた門なき者よ、布施の戒なき者よ、立ち上がれ。〔わたしたちは〕おまえを連れて行く。すなわち、苦しみに組み敷かれ地獄にある者たちが、悪しき境遇の者たちが、うめき叫ぶところへと」と。

 

715. まさしく、かくのごとく、夜魔の使者たちは言って、それらの二者の夜叉は、赤い眼の偉丈夫たちは、レーヴァターの各々の腕を掴んで、天の衆の現前に飛び立った。

 

716. 〔レーヴァターが尋ねた〕「太陽の色艶があり、好ましく光輝にして、金の網に覆われた浄美なる宮殿があります。人々で満ち溢れ、日の光のように輝いている、この天宮は、誰のものですか。

 

717. 栴檀の真髄を塗った女たちの群れは、天宮を、〔内と外の〕両所から美しく荘厳します。それは、日に等しき色艶に見えます。誰が、天上に至り得た者として、天宮において歓喜するのですか」と。

 

718. 〔夜魔の使者たちが答えた〕「バーラーナシーにおいて、ナンディヤという名の在俗信者が存した。物惜〔の思い〕なき施主にして、寛容なる者である。人々で満ち溢れ、日の光のように輝いている、この天宮は、彼のものである。

 

719. 栴檀の真髄を塗った女たちの群れは、天宮を、〔内と外の〕両所から美しく荘厳する。それは、日に等しき色艶に見える。彼が、天上に至り得た者として、天宮において歓喜する」と。

 

720. 〔レーヴァターが言った〕「わたしは、ナンディヤの妻です。家婦として、家の一切に権ある者です。夫の天宮において、今や、わたしは喜び楽しむのです。地獄を見ることを望み求めません」と。

 

721. 〔夜魔の使者たちが言った〕「極めて悪しき法(性質)の者よ、これは、おまえの地獄である。生あるものの世において、功徳は、おまえによって作り為されなかった。まさに、物惜〔の思い〕ある者は、〔他者を〕悩ます者は、悪しき法(性質)の者は、天上へと近しく赴く者たちとの共住を得ない」と。

 

722. 〔レーヴァターが尋ねた〕「いったい、どうして、そして、糞なのですか、さらに、尿なのですか、不浄物が見えるのですか。どうして、この糞便の悪臭なのですか。どうして、この〔糞便の悪臭〕がただようのですか」と。

 

723. 〔夜魔の使者たちが答えた〕「これは、サンサヴァカという名の、百人の深さある〔地獄〕にして、レーヴァターよ、そこにおいて、千年のあいだ、おまえは煮られるのだ」と。

 

724. 〔レーヴァターが尋ねた〕「いったい、どのような悪行が、身体によって、言葉によって、意によって、為されたのですか。どのような〔行為の報い〕によって、百人の深さあるサンサヴァカ〔地獄〕を得たのですか」と。

 

725. 〔夜魔の使者たちが答えた〕「沙門たちを、さらに、また、婆羅門たちを、あるいは、また、他の乞食者たちを、虚偽の言によって騙した。その悪しき〔行為〕が、おまえによって為されたのだ。

 

726. その〔行為の報い〕によって、百人の深さあるサンサヴァカ〔地獄〕を得たのだ。レーヴァターよ、そこにおいて、千年のあいだ、おまえは煮られるのだ。

 

727. 〔獄卒たちは、両の〕手をもまた断ち切り、そこで、〔両の〕足をもまた〔断ち切り〕、〔両の〕耳をもまた断ち切り、そこで、鼻をもまた〔断ち切り〕、そこで、烏たちの群れもまた、共に赴いて、もがいている〔おまえ〕を、一緒になって喰い尽くす」と。

 

728. 〔レーヴァターが言った〕「どうか、まさに、わたしを連れ戻してください。〔わたしは〕多くの善なる〔功徳〕を作り為すでしょう──布施によって、正しい性行によって、自制によって、さらに、調御によって。それを為して、〔世の人々が〕安楽の者たちと成り、そして、のちに悩み苦しまない、〔多くの善なる功徳を〕」と。

 

729. 〔夜魔の使者たちが言った〕「かつて、おまえは怠って、今や、嘆き悲しむ。諸々の為した行為の報いを、自ら、受領するのだ」と。

 

730. 〔レーヴァターが言った〕「誰が、天の世から人間の世に赴いて、〔問いを〕尋ねられた者として、わたしに、このように説くというのでしょう。『棒(武器)を捨て置いた者たちにたいし、布施を施すべきである。衣服を、臥所を、さらに、食べ物や飲み物を。まさに、物惜〔の思い〕ある者は、〔他者を〕悩ます者は、悪しき法(性質)の者は、天上へと近しく赴く者たちとの共住を得ない』〔と〕。

 

731. 〔まさに〕その、わたしは、まちがいなく、ここから赴いて、人間の胎を得て、寛容で、戒を成就した者となり、多くの善なる〔功徳〕を作り為すでしょう──布施によって、正しい性行によって、自制によって、さらに、調御によって。

 

732. そして、諸々の園地を育成します。そして、難所における諸々の橋を、そして、水飲場を、そして、井戸を、清信した心で。

 

733. 十四日と十五日に、そして、すなわち、半月〔ごと〕の第八日に、さらに、神変月には、八つの支分が見事に備わった──

 

734. 斎戒に入ります──諸戒において、常に統御された者となり。そして、布施において怠りません。この〔行為の報い〕は、わたしによって、自ら、〔あるがままに〕見られました」と。

 

735. かくのごとく、このように語り散らしながら、そこかしこに震えおののいている者を、〔夜叉たちは〕おぞましき地獄に投げ放った──足を上に、頭を下に。

 

736. 〔レーヴァターが言った〕「かつて、わたしは、物惜〔の思い〕ある者として、沙門や婆羅門たちを誹謗する者として、〔世に〕有りました。そして、真実を離れる〔言葉〕で主人を騙して、わたしは、おぞましき形態の地獄において煮られます」〔と〕。ということで──

 

 レーヴァティー・ペータヴァットゥが、第四となる。

 

4. 5. ウッチュ・ペータヴァットゥ(甘蔗の餓鬼の事例)

 

737. 〔餓鬼が尋ねた〕「わたしの、この大いなる甘蔗の林は、少なからざる功徳の果が発現するも、今や、わたしの、その〔甘蔗の林〕は、遍き受益に至りません。尊き方よ、告げ知らせてください。これは、どのような〔行為〕の報いなのですか。

 

738. 遍く受益するために、何であれ、努力し画策するのですが、〔わたしは〕打ちのめされ、そして、消耗します。〔まさに〕その、わたしは、強さを断たれ、困窮し、喚き立てます。これは、どのような行為の報いなのですか。

 

739. そして、わたしは、悩苦し、地に崩れ落ちます。炎暑のなかの魚のように、転がり回ります。そして、わたしが泣き叫んでいると、諸々の涙がこぼれ落ちます。尊き方よ、告げ知らせてください。これは、どのような〔行為〕の報いなのですか。

 

740. 〔わたしは〕空腹で、そして、疲弊し、さらに、涸渇し、恐慌し、快楽と安楽を見出せません。幸甚なる方よ、この義(意味)を、〔わたしは〕あなたに尋ねます。いったい、どのように、甘蔗の受益を得るのでしょう」と。

 

741. 〔モッガッラーナ長老が答えた〕「かつて、あなたは、自己によって、行為を為しました──人間として有った〔あなた〕は、以前の生において。そして、わたしは、この義(意味)を、あなたに説きます。聞いて〔そののち〕、あなたは、この義(意味)を識知しなさい。

 

742. あなたが、甘蔗を咀嚼しながら行き来していたところ、そして、人が、あなたに、背後から従い行きました。そして、彼は、あなたに、〔甘蔗を〕乞い願いつつ、話しかけました。あなたは、彼に、何であれ、語りかけませんでした。

 

743. そして、彼は、話さずにいるあなたに、乞い求めました。そして、あなたに、『甘蔗を施してください』と言いました。あなたは、彼に、背後から甘蔗を与えました。これは、その行為の報いです。

 

744. さあ、〔甘蔗の林に〕赴いて、あなたは、背後から〔甘蔗を〕掴み取るのです。〔甘蔗を〕掴み取って、あなたは、義(必要)とするだけ咀嚼するのです。まさしく、それによって、あなたは、わが意を得た者と成るでしょう。そして、欣喜した者と〔成り〕、かつまた、勇躍する者と〔成り〕、さらに、歓喜した者と〔成るでしょう〕」と。

 

745. 〔甘蔗の林に〕赴いて、彼は、背後から〔甘蔗を〕掴み取った。〔甘蔗を〕掴み取って、彼は、義(必要)とするだけ咀嚼した。まさしく、それによって、彼は、わが意を得た者と成った。そして、欣喜した者と〔成り〕、かつまた、勇躍する者と〔成り〕、さらに、歓喜した者と〔成った〕。ということで──

 

 ウッチュ・ペータヴァットゥが、第五となる。

 

4. 6. クマーラ・ペータヴァットゥ(童子の餓鬼の事例)

 

746. 〔世尊は言った〕「サーヴァッティーという名の城市が、ヒマヴァント(ヒマラヤ)の山麓にあります。そこにおいて、二者の童子が存しました。『王子たちである』と、わたしは聞きました。

 

747. 諸々の貪るべきもの(欲望の対象)に夢中になっている者たちであり、欲望の悦楽に愉悦〔の思い〕ある者たちであり、現在の安楽に貪求〔の思い〕ある者たちであり、彼らは、未来を見ませんでした。

 

748. そして、彼らは、人間たる〔境遇〕から死滅し、ここから他の世に赴いたのです。彼らは、見えはしないのですが、ここに喚呼します──過去における自己の悪行を。

 

749. 『まさに、多くのものが存しているなか、施すべき法(施物)が奉仕されたとき、しかしながら、自己に安楽をもたらす僅かな〔行為〕を為すことが、〔わたしたちは〕できなかった。

 

750. どうして、それよりも悪しきことが存するというのだろう。すなわち、わたしたちは、王家から死滅し、餓鬼の境域に再生したのだ──飢えと渇きに組み敷かれる者たちとなり』〔と〕。

 

751. 主人たちとして、ここに有って〔そののち〕、主人ならざる者たちとして、そこに有ります。傲慢と卑屈の人間たちは、飢えと渇きのうちに迷走します。

 

752. 権力の驕慢から発生する、この危険を知って、権力の驕慢を捨棄して、人は、天上に赴いた者と成るべきです。彼は、智慧を有する者として、身体の破壊ののち、天上に再生します」〔と〕。ということで──

 

 クマーラ・ペータヴァットゥが、第六となる。

 

4. 7. ラージャプッタ・ペータヴァットゥ(王子の餓鬼の事例)

 

753. 〔世尊は言った〕「過去において為された諸々の行為の報いは、意を掻き乱します──意が喜びとする、形態(:眼の対象)において、音声(:耳の対象)において、味感(:舌の対象)において、臭気(:鼻の対象)において、そして、感触(所触:身の対象)において。

 

754. 舞踏を、歌詠を、歓楽を、遊興を、少なからず受領して、庭園を回遊して、〔王子は〕ギリッバジャに入りつつ──

 

755. スネッタ聖賢を見ました──自己が調御され、〔心が〕定められた者を──欲求少なく、恥〔の思い〕を成就し、鉢に盛られた残飯を喜ぶ者を。

 

756. 〔王子は〕象の背から降りて、そして、『尊き方よ、〔何が〕得られたのかな』と説きました。彼の鉢を掴み取って、士族は、高く突き上げて──

 

757. 露地のうえで鉢を壊して、笑いながら立ち去りました。『わたしは、キタヴァ王の子である。比丘が、わたしのために、何を為すというのだろう』〔と〕。

 

758. その粗暴なる行為の報いは、辛辣なるものと成りました。すなわち、地獄に引き渡された王子が感受したものは。

 

759. そして、まさしく、六つの、八十四ナフタ(那由他:数の単位・巨大数)年のあいだ、罪障を作り為した者は、地獄において、激しい苦痛を受けたのです。

 

760. そして、また、上向きなるも、下向きなるも、左右の向きなるも、〔彼は〕煮られました。まさしく、そして、足を上にするも、立っているも、長きにわたり、愚者は煮られました。

 

761. そして、幾千の莫大なるナフタ年のあいだ、罪障を作り為した者は、地獄において、激しい苦痛を受けたのです。

 

762. 汚れなき者を汚す者たちには、まさに、このような辛辣なる〔苦痛〕があります。悪しき行為ある者たちは、善き掟の聖賢を襲って、〔地獄において〕煮られます。

 

763. 彼は、そこにおいて、多くの〔ナフタ〕年のあいだ、多くの苦痛を感受して、そこから死滅し、飢えと渇きに打ちのめされた、まさに、餓鬼として〔世に〕存しました。

 

764. 権力の驕慢から発生する、この危険を知って、権力の驕慢を捨棄して、謙譲〔の生活〕を随転させるべきです。

 

765. 彼が、覚者たちにたいし尊重〔の思い〕を有する者であるなら、まさしく、所見の法(現法:現世)において、賞賛されるべき者となります。彼は、智慧を有する者として、身体の破壊ののち、天上に再生します」〔と〕。ということで──

 

 ラージャプッタ・ペータヴァットゥが、第七となる。

 

4. 8. グータカーダカ・ペータヴァットゥ(糞を喰う餓鬼の事例)

 

766. 〔モッガッラーナ長老が尋ねた〕「いったい、誰なのですか──糞坑から伸び上がって、〔顔を出して〕立つ、哀れな〔あなた〕は。疑念〔の余地〕なく、〔あなたは〕悪しき行為ある者です。いったい、何に、あなたは信を置くのですか」と。

 

767. 〔餓鬼が答えた〕「幸甚なる方よ、わたしは、餓鬼として〔世に〕存しています。悪しき境遇の者にして、夜魔の世にある者です。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのです」と。

 

768. 〔モッガッラーナ長老が尋ねた〕「いったい、どのような悪行が、身体によって、言葉によって、意によって、為されたのですか。どのような行為の報いによって、この苦しみを受けるのですか」と。

 

769. 〔餓鬼が答えた〕「わたし〔の家〕には、〔比丘の〕居住者が有りました。嫉妬深く、家への物惜〔の思い〕ある者です。わたしの家に固執し、吝嗇で、〔他の比丘たちを〕誹謗する者です。

 

770. わたしは、彼の言葉を聞いて、比丘たちを誹謗しました。その行為の報いによって、ここから餓鬼の世に赴いたのです」と。

 

771. 〔モッガッラーナ長老が尋ねた〕「〔彼は〕朋友の姿で〔振る舞う〕朋友ならざる者です。すなわち、あなたの家に親近ある者として存した、〔その比丘は〕。身体の破壊ののち、智慧浅き者は、いったい、どのような境遇に、死してのち赴いたのですか」と。

 

772. 〔餓鬼が答えた〕「悪しき行為〔の報い〕ある、まさしく、その〔比丘〕の頭のうえに、〔彼の〕頭上に、わたしは立っています。そして、その〔比丘〕は、まさしく、わたしを世話する者となり、〔人間ならざる〕他の境域に至り得たのです(餓鬼として再生した)。

 

773. 幸甚なる方よ、それを、他者たちが排泄するなら、これが、わたしの食料と成り、そして、まさに、それを、わたしが排泄するなら、彼は、これに依拠して生きます」〔と〕。ということで──

 

 グータカーダカ・ペータヴァットゥが、第八となる。

 

4. 9. グータカーダカ・ペーティヴァットゥ(糞を喰う女餓鬼の事例)

 

774. 〔モッガッラーナ長老が尋ねた〕「いったい、誰なのですか──糞坑から伸び上がって、〔顔を出して〕立つ、哀れな〔あなた〕は。疑念〔の余地〕なく、〔あなたは〕悪しき行為ある者です。いったい、何に、あなたは信を置くのですか」と。

 

775. 〔女餓鬼が答えた〕「幸甚なる方よ、わたしは、女餓鬼として〔世に〕存しています。悪しき境遇の者にして、夜魔の世にある者です。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのです」と。

 

776. 〔モッガッラーナ長老が尋ねた〕「いったい、どのような悪行が、身体によって、言葉によって、意によって、為されたのですか。どのような行為の報いによって、この苦しみを受けるのですか」と。

 

777. 〔女餓鬼が答えた〕「わたし〔の家〕には、〔比丘の〕居住者が有りました。嫉妬深く、家への物惜〔の思い〕ある者です。わたしの家に固執し、吝嗇で、〔他の比丘たちを〕誹謗する者です。

 

778. わたしは、彼の言葉を聞いて、比丘たちを誹謗しました。その行為の報いによって、ここから餓鬼の世に赴いたのです」と。

 

779. 〔モッガッラーナ長老が尋ねた〕「〔彼は〕朋友の姿で〔振る舞う〕朋友ならざる者です。すなわち、あなたの家に親近ある者として存した、〔その比丘は〕。身体の破壊ののち、智慧浅き者は、いったい、どのような境遇に、死してのち赴いたのですか」と。

 

780. 〔女餓鬼が答えた〕「悪しき行為〔の報い〕ある、まさしく、その〔比丘〕の頭のうえに、〔彼の〕頭上に、わたしは立っています。そして、その〔比丘〕は、まさしく、わたしを世話する者となり、〔人間ならざる〕他の境域に至り得たのです。

 

781. 幸甚なる方よ、それを、他者たちが排泄するなら、これが、わたしの食料と成り、そして、まさに、それを、わたしが排泄するなら、彼は、これに依拠して生きます」〔と〕。ということで──

 

 グータカーダカ・ペーティヴァットゥが、第九となる。

 

4. 10. ガナ・ペータヴァットゥ(衆の餓鬼の事例)

 

782. 〔モッガッラーナ長老が尋ねた〕「〔あなたたちは〕裸で、醜き色艶の形態ある者たちとして〔世に〕存しています。痩せ細り、〔浮き出た〕血管が〔身体中に〕広がっています。痩せ細り、肋骨が突き出た者たちよ、敬愛なる者たちよ、あなたたちは、ここにおいて、いったい、どのような者たちとして〔存しているのですか〕」と。

 

783. 〔餓鬼たちが答えた〕「幸甚なる方よ、わたしたちは、餓鬼たちとして〔世に〕存しています。悪しき境遇の者たちにして、夜魔の世にある者たちです。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのです」と。

 

784. 〔モッガッラーナ長老が尋ねた〕「いったい、どのような悪行が、身体によって、言葉によって、意によって、為されたのですか。どのような行為の報いによって、ここから餓鬼の世に赴いたのですか」と。

 

785. 〔餓鬼たちが答えた〕「諸々の覆いなき水浴場において、半銭を選り分けました(物惜の心を起こした)。諸々の施すべき法(施物)が存しているのに、〔わたしたちは〕自己の洲を作りませんでした。

 

786. 〔喉が〕渇き、〔わたしたちは〕川に近づくのですが、〔川は〕空虚となり遍く転起します。諸々の暑熱のなか、〔わたしたちは〕影に近づくのですが、〔影は〕熱苦となり遍く転起します。

 

787. そして、わたしたちにとって、風は、火の色艶があり、〔わたしたちを〕焼き焦がしながら、吹き渡ります。尊き方よ、そして、この〔行為の報い〕に、〔わたしたちは〕値します。さらに、他の、それより悪しき〔行為の報い〕にも。

 

788. 〔幾多の〕ヨージャナであろうが、〔わたしたちは〕赴きます。空腹で、食を貪り求める者たちとして。〔食を〕得ずして、〔わたしたちは〕戻ります。ああ、わたしたちの功徳少なきがゆえに。

 

789. 〔わたしたちは〕空腹で、混迷し、迷走し、地に倒れ臥します。〔わたしたちは〕上向きに倒れ崩れ、下向きに倒れ落ちます。

 

790. そして、〔まさに〕その〔わたしたち〕は、まさしく、そこにおいて、倒れ落ち、地に倒れ臥し、胸を、そして、頭を、叩きつけます。ああ、わたしたちの功徳少なきがゆえに。

 

791. 尊き方よ、そして、この〔行為の報い〕に、〔わたしたちは〕値します。さらに、他の、それより悪しき〔行為の報い〕にも。諸々の施すべき法(施物)が存しているのに、〔わたしたちは〕自己の洲を作りませんでした。

 

792. まさに、その〔わたしたち〕は、まちがいなく、ここから赴いて、人間の胎を得て、寛容で、戒を成就した者たちとなり、多くの善なる〔功徳〕を作り為すでしょう」〔と〕。ということで──

 

 ガナ・ペータヴァットゥが、第十となる。

 

4. 11. パータリプッタ・ペータヴァットゥ(パータリプッタの餓鬼の事例)

 

793. 〔餓鬼が言った〕「あなたによって、〔あるがままに〕見られました──諸々の地獄が、畜生の胎が、餓鬼たちが、阿修羅たちが、さらに、あるいは、また、人間たちが、天〔の神々〕たちが。〔あなたは〕自ら、〔あるがままに〕見ました──自己の行為の報いを。あなたを連れて行きましょう──パータリプッタに、つつがなく。そこにおいて、赴いて〔そののち〕、善なる行為を為してください」と。

 

794. 〔女が言った〕「夜叉よ、わたしにとって、〔あなたは〕義(利益)を欲する者として存しています。天神よ、〔あなたは〕益を欲する者として存しています。〔わたしは〕あなたの言葉を為します。わたしにとって、あなたは、師匠として存しています。

 

795. わたしによって、〔あるがままに〕見られました──諸々の地獄が、畜生の胎が、餓鬼たちが、阿修羅たちが、さらに、あるいは、また、人間たちが、天〔の神々〕たちが。〔わたしは〕自ら、〔あるがままに〕見ました──自己の行為の報いを。〔わたしは〕作り為すでしょう──諸々の少なからざる功徳を」〔と〕。ということで──

 

 パータリプッタ・ペータヴァットゥが、第十一となる。

 

4. 12. アンバヴァナ・ペータヴァットゥ(アンバ林の餓鬼の事例)

 

796. 〔商人たちが尋ねた〕「そして、あなたの、この蓮池は、極めて喜ばしく、そして、平坦で美しい岸辺があり、かつまた、大いなる水があります。美しく花ひらき、蜜蜂たちの群れがそぞろ行くところです。どのように、この快意なるものは、あなたによって得られたのですか。

 

797. そして、あなたの、このアンバ林は、極めて喜ばしく、全ての季節に、諸々の果を保持します。美しく花ひらき、蜜蜂たちの群れがそぞろ行くところです。どのように、この天宮は、あなたによって得られたのですか」と。

 

798. 〔餓鬼が答えた〕「熟したアンバ〔の果〕は、水は、粥は、意が喜びとする涼やかな影は、娘によって施された布施によって、それによって、わたしに、ここに得られます」と。

 

799. 〔餓鬼の娘が言った〕「このように、現に見られる行為〔の報い〕を見てください──布施の、調御の、自制の、報いを。わたしは、尊貴なる家々における奴婢として〔世に〕有って、〔今や〕家事に権ある嫁として〔世に〕有ります」〔と〕。ということで──

 

 アンバヴァナ・ペータヴァットゥが、第十二となる。

 

4. 13. アッカルッカ・ペータヴァットゥ(車軸の木の餓鬼の事例)

 

800. 〔天神が言った〕「それを、施すなら、それは、〔この世にのみ〕有るのではない。まさしく、施したまえ。布施を施して、〔この世とあの世の〕両所に、〔苦しみを〕超え渡る。その布施によって、〔この世とあの世の〕両所に、〔安楽に〕至る。〔眠らずに〕起きていたまえ。怠ってはいけない」〔と〕。ということで──

 

 アッカルッカ・ペータヴァットゥが、第十三となる。

 

4. 14. ボーガサンハラナ・ペータヴァットゥ(財物の収集の餓鬼の事例)

 

801. 〔餓鬼が言った〕「わたしたちは、諸々の財物を集めました。正しき〔手段〕によって、かつまた、正しからざる〔手段〕によって。それらのものを、〔今や〕他の者たちが遍く受益します。〔今の〕わたしたちは、苦しみの分有者たちとして〔世に有ります〕」〔と〕。ということで──

 

 ボーガサンハラナ・ペータヴァットゥが、第十四となる。

 

4. 15. セッティプッタ・ペータヴァットゥ(長者の子の餓鬼の事例)

 

802. 〔第一の餓鬼が言った〕「全てにわたり遍く満ちた六万年のあいだ、地獄において煮られている者たちに、いつ、終極が有るのだろう」〔と〕。

 

803. 〔第二の餓鬼が言った〕「終極は存在しない。どうして、終極があるというのだろう。終極は見えない。まさに、そのように、悪しき〔行為の報い〕が作られたのだ。敬愛なる者たちよ、おまえのものとして、そして、わたしのものとして」〔と〕。

 

804. 〔第三の餓鬼が言った〕「〔わたしたちは〕悪しき生を生きた──すなわち、正しくある者にたいし施さなかった。諸々の施すべき法(施物)が存しているのに、〔わたしたちは〕自己の洲を作らなかった」〔と〕。

 

805. 〔第四の餓鬼が言った〕「〔まさに〕その、わたしは、まちがいなく、ここから赴いて、人間の胎を得て、寛容で、戒を成就した者となり、多くの善なる〔功徳〕を作り為すであろう」〔と〕。ということで──

 

 セッティプッタ・ペータヴァットゥが、第十五となる。

 

4. 16. サッティクータ・ペータヴァットゥ(六十の槌の餓鬼の事例)

 

806. 〔モッガッラーナ長老が尋ねた〕「いったい、どうして、狂者の形態あるかのように、迷走する鹿のように、〔あなたは〕走り行くのですか。疑念〔の余地〕なく、〔あなたは〕悪しき行為ある者です。いったい、どうして、あなたは騒ぎ立てるのですか」と。

 

807. 〔餓鬼が答えた〕「幸甚なる方よ、わたしは、餓鬼として〔世に〕存しています。悪しき境遇の者にして、夜魔の世にある者です。悪しき行為を為して、ここから餓鬼の世に赴いたのです。

 

808. 全てにわたり遍く満ちた六万の槌が、わたしの頭に落下します。そして、それらは、頭頂を破壊します」と。

 

809. 〔モッガッラーナ長老が尋ねた〕「いったい、どのような悪行が、身体によって、言葉によって、意によって、為されたのですか。どのような行為の報いによって、この苦しみを受けるのですか。

 

810. 全てにわたり遍く満ちた六万の槌が、あなたの頭に落下します。そして、それらは、頭頂を破壊します」と。

 

811. 〔餓鬼が答えた〕「そこで、〔わたしは〕正覚者を見ました──〔感官の〕機能を修めた、スネッタ〔独覚〕を──木の根元に坐り、瞑想している、何も恐れない方を。

 

812. 〔わたしは〕投擲の打撃によって、彼の頭頂を破壊しました。その行為の報いによって、この苦しみを受けるのです。

 

813. 全てにわたり遍く満ちた六万の槌が、わたしの頭に落下します。そして、それらは、頭頂を破壊します」と。

 

814. 〔モッガッラーナ長老が言った〕「悪しき人よ、あなたの法(性質)によって、全てにわたり遍く満ちた六万の槌が、あなたの頭に落下します。そして、それらは、頭頂を破壊します」〔と〕。ということで──

 

 サッティクータ・ペータヴァットゥが、第十六となる。

 

 大いなるものの章が第四となり、〔以上で〕終了となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「アンバサッカラ、セーリーサカ、ピンガラ、レーヴァティー、甘蔗、二つの童子、二つの糞、衆とパータリとアンバ林──

 

 車軸の木と財物の収集、長者の子と六十の槌、かくのごとく、十六の事例があり、それによって、章と呼ばれる」〔と〕。

 

 そこで、章の摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「蛇、ウパリの章、小と大、かくのごとく、四種がある。五十一の事例があり、朗読分として四種がある」〔と〕。

 

 第四の朗読分は〔以上で〕終了となる。

 

 ペータヴァットゥ聖典は〔以上で〕終了となる。