小部経典(クッダカ・ニカーヤ)

 

13. 1. ジャータカ聖典(本生経・第一部)

 

【目次】

 

1. 一なるものの集まり

 

1. 1. 誤解なきものの章

 

1. 1. 1. アパンナカ・ジャータカ(誤解なきもの・本生物語1)

1. 1. 2. ヴァンヌパタ・ジャータカ(砂の道・本生物語2)

1. 1. 3. セーリヴァヴァーニジャ・ジャータカ(セーリヴァの商人・本生物語3)

1. 1. 4. チューラセッティ・ジャータカ(チューラ長者・本生物語4)

1. 1. 5. タンドゥラナーリ・ジャータカ(ひと枡の米・本生物語5)

1. 1. 6. デーヴァダンマ・ジャータカ(天の法・本生物語6)

1. 1. 7. カッタハーリ・ジャータカ(薪運び女・本生物語7)

1. 1. 8. ガーマニ・ジャータカ(ガーマニ・本生物語8)

1. 1. 9. マガデーヴァ・ジャータカ(マガデーヴァ・本生物語9)

1. 1. 10. スカヴィハーリ・ジャータカ(安楽の住者・本生物語10)

 

1. 2. 戒の章

 

1. 2. 1. ラッカナミガ・ジャータカ(ラッカナ鹿・本生物語11)

1. 2. 2. ニグローダミガ・ジャータカ(ニグローダ鹿・本生物語12)

1. 2. 3. カンディ・ジャータカ(矢じり・本生物語13)

1. 2. 4. ヴァータミガ・ジャータカ(羚羊・本生物語14)

1. 2. 5. カラーディヤ・ジャータカ(カラーディヤー・本生物語15)

1. 2. 6. ティパッラッタミガ・ジャータカ(三つの姿態ある鹿・本生物語16)

1. 2. 7. マールタ・ジャータカ(風・本生物語17)

1. 2. 8. マタカバッタ・ジャータカ(死者の供物・本生物語18)

1. 2. 9. アーヤーチタバッタ・ジャータカ(祈願の供物・本生物語19)

1. 2. 10. ナラパーナ・ジャータカ(葦で飲むもの・本生物語20)

 

1. 3. 羚羊の章

 

1. 3. 1. クルンガミガ・ジャータカ(羚羊・本生物語21)

1. 3. 2. クックラ・ジャータカ(犬・本生物語22)

1. 3. 3. ゴージャーニーヤ・ジャータカ(良馬・本生物語23)

1. 3. 4. アージャンニャ・ジャータカ(良馬・本生物語24)

1. 3. 5. ティッタ・ジャータカ(水場・本生物語25)

1. 3. 7. アビンハ・ジャータカ(間断なく・本生物語27)

1. 3. 8. ナンディヴィサーラ・ジャータカ(ナンディヴィサーラ・本生物語28)

1. 3. 9. カンハ・ジャータカ(黒きもの・本生物語29)

1. 3. 10. ムニカ・ジャータカ(ムニカ・本生物語30)

 

1. 4. 雛鳥の章

 

1. 4. 1. クラーヴァカ・ジャータカ(雛鳥・本生物語31)

1. 4. 2. ナッチャ・ジャータカ(舞踏・本生物語32)

1. 4. 3. サンモーダマーナ・ジャータカ(喜び合い・本生物語33)

1. 4. 4. マッチャ・ジャータカ(魚・本生物語34)

1. 4. 5. ヴァッタカ・ジャータカ(鶉・本生物語35)

1. 4. 6. サクナ・ジャータカ(鳥・本生物語36)

1. 4. 8. バカ・ジャータカ(青鷺・本生物語38)

1. 4. 9. ナンダ・ジャータカ(ナンダ・本生物語39)

1. 4. 10. カディランガーラ・ジャータカ(カディラの炭火・本生物語40)

 

1. 5. 義を欲する者の章

 

1. 5. 1. ローサカ・ジャータカ(ローサカ・本生物語41)

1. 5. 2. カポータ・ジャータカ(鳩・本生物語42)

1. 5. 3. ヴェールカ・ジャータカ(ヴェールカ・本生物語43)

1. 5. 4. マカサ・ジャータカ(蚊・本生物語44)

1. 5. 5. ローヒニ・ジャータカ(ローヒニー・本生物語45)

1. 5. 6. アーラーマドゥーサカ・ジャータカ(林園を汚す者・本生物語46)

1. 5. 7. ヴァールニドゥーサカ・ジャータカ(酒を汚す者・本生物語47)

1. 5. 8. ヴェーダッバ・ジャータカ(ヴェーダッバ・本生物語48)

1. 5. 9. ナッカッタ・ジャータカ(星宿・本生物語49)

1. 5. 10. ドゥンメーダ・ジャータカ(思慮浅き者・本生物語50)

 

1. 6. 願い求める者の章

 

1. 6. 1. マハーシーラヴァ・ジャータカ(マハーシーラヴァ・本生物語51)

1. 6. 2. チューラジャナカ・ジャータカ(小なるジャナカ・本生物語52)

1. 6. 3. プンナパーティ・ジャータカ(満ちた鉢・本生物語53)

1. 6. 4. キンパラ・ジャータカ(何が果か・本生物語54)

1. 6. 5. パンチャーヴダ・ジャータカ(パンチャーヴダ・本生物語55)

1. 6. 6. カンチャナッカンダ・ジャータカ(金塊・本生物語56)

1. 6. 7. ヴァーナリンダ・ジャータカ(猿のインダ・本生物語57)

1. 6. 8. タヨーダンマ・ジャータカ(三つの法・本生物語58)

1. 6. 9. ベーリヴァーダカ・ジャータカ(太鼓打ち・本生物語59)

1. 6. 10. サンカダマ・ジャータカ(法螺貝吹き・本生物語60)

 

1. 7. 婦女の章

 

1. 7. 1. アサータマンタ・ジャータカ(不快なる呪文・本生物語61)

1. 7. 2. アンダブータ・ジャータカ(卵のなかに有る者・本生物語62)

1. 7. 3. タッカパンディタ・ジャータカ(棗椰子の賢者・本生物語63)

1. 7. 4. ドゥラージャーナ・ジャータカ(知り難きもの・本生物語64)

1. 7. 5. アナビラティ・ジャータカ(不興・本生物語65)

1. 7. 6. ムドゥラッカナ・ジャータカ(ムドゥラッカナー・本生物語66)

1. 7. 7. ウッチャンガ・ジャータカ(膝・本生物語67)

1. 7. 8. サーケータ・ジャータカ(サーケータ・本生物語68)

1. 7. 9. ヴィサヴァンタ・ジャータカ(吐き捨てられた毒・本生物語69)

1. 7. 10. クッダーラ・ジャータカ(クッダーラ・本生物語70)

 

1. 8. ヴァルナの章

 

1. 8. 1. ヴァルナ・ジャータカ(ヴァルナ・本生物語71)

1. 8. 2. シーラヴァハッティ・ジャータカ(戒ある象・本生物語72)

1. 8. 3. サッチャンキラ・ジャータカ(真に、まさに・本生物語73)

1. 8. 4. ルッカダンマ・ジャータカ(木の法・本生物語74)

1. 8. 5. マッチャ・ジャータカ(魚・本生物語75)

1. 8. 6. アサンキヤ・ジャータカ(疑いなき者・本生物語76)

1. 8. 7. マハースピナ・ジャータカ(大いなる夢・本生物語77)

1. 8. 9. カラッサラ・ジャータカ(騒音・本生物語79)

1. 8. 10. ビーマセーナ・ジャータカ(ビーマセーナ・本生物語80)

 

1. 9. 『飲んだ』の章

 

1. 9. 1. スラーパーナ・ジャータカ(酒飲み・本生物語81)

1. 9. 2. ミッタヴィンダカ・ジャータカ(ミッタヴィンダカ・本生物語82)

1. 9. 3. カーラカンニ・ジャータカ(カーラカンニ・本生物語83)

1. 9. 4. アッタッサドヴァーラ・ジャータカ(義の門・本生物語84)

1. 9. 5. キンパッカ・ジャータカ(キンパッカ・本生物語85)

1. 9. 6. シーラヴィーマンサカ・ジャータカ(戒を審査する者・本生物語86)

1. 9. 7. マンガラ・ジャータカ(幸福・本生物語87)

1. 9. 8. サーランバ・ジャータカ(サーランバ・本生物語88)

1. 9. 9. クハカ・ジャータカ(虚言者・本生物語89)

1. 9. 10. アカタンニュ・ジャータカ(恩知らず・本生物語90)

 

1. 10. 塗られたものの章

 

1. 10. 1. リッタ・ジャータカ(塗られたもの・本生物語91)

1. 10. 2. マハーサーラ・ジャータカ(大いなる真髄・本生物語92)

1. 10. 3. ヴィサーサボージャナ・ジャータカ(信頼ある受益・本生物語93)

1. 10. 4. ローマハンサ・ジャータカ(身の毛のよだつこと・本生物語94)

1. 10. 5. マハースダッサナ・ジャータカ(マハースダッサナ・本生物語95)

1. 10. 6. テーラパッタ・ジャータカ(油の鉢・本生物語96)

1. 10. 7. ナーマシッディ・ジャータカ(名前の成就・本生物語97)

1. 10. 8. クータヴァーニジャ・ジャータカ(奸計の商人・本生物語98)

1. 10. 9. パローサハッサ・ジャータカ(千を超える者・本生物語99)

1. 10. 10. アサータルーパ・ジャータカ(快ならざる形・本生物語100)

 

1. 11. 百を超える者の章

 

1. 11. 1. パローサタ・ジャータカ(百を超える者・本生物語101)

1. 11. 2. パンニカ・ジャータカ(八百屋・本生物語102)

1. 11. 3. ヴェーリ・ジャータカ(怨みある者・本生物語103)

1. 11. 4. ミッタヴィンダカ・ジャータカ(ミッタヴィンダカ・本生物語104)

1. 11. 5. ドゥッバラカッタ・ジャータカ(力弱き木片・本生物語105)

1. 11. 6. ウダンチャニー・ジャータカ(水桶女・本生物語106)

1. 11. 7. サーリッタカ・ジャータカ(石投げ・本生物語107)

1. 11. 8. バーヒヤ・ジャータカ(田舎娘・本生物語108)

1. 11. 9. クンダプーヴァ・ジャータカ(粉菓子・本生物語109)

1. 11. 10. サッバサンハーラカパンハ・ジャータカ(全集香の問い・本生物語110)

 

1. 12. 『では、もし』の章

 

1. 12. 1. ガドラバパンハ・ジャータカ(驢馬の問い・本生物語111)

1. 12. 2. アマラーデーヴィーパンハ・ジャータカ(アマラー妃の問い・本生物語112)

1. 12. 3. シンガーラ・ジャータカ(野狐・本生物語113)

1. 12. 4. ミタチンティ・ジャータカ(ミタチンティン・本生物語114)

1. 12. 5. アヌサーシカ・ジャータカ(教示者・本生物語115)

1. 12. 6. ドゥッバチャ・ジャータカ(頑固者・本生物語116)

1. 12. 7. ティッティラ・ジャータカ(雉・本生物語117)

1. 12. 8. ヴァッタカ・ジャータカ(鶉・本生物語118)

1. 12. 9. アカーララーヴィ・ジャータカ(時ならぬ騒ぎ・本生物語119)

1. 12. 10. バンダナモッカ・ジャータカ(結縛からの解き放ち・本生物語120)

 

1. 13. クサナーリの章

 

1. 13. 1. クサナーリ・ジャータカ(クサナーリ・本生物語121)

1. 13. 2. ドゥンメーダ・ジャータカ(思慮浅き者・本生物語122)

1. 13. 3. ナンガリーサ・ジャータカ(鋤の柄・本生物語123)

1. 13. 4. アンバ・ジャータカ(アンバ・本生物語124)

1. 13. 5. カターハカ・ジャータカ(カターハカ・本生物語125)

1. 13. 6. アシラッカナ・ジャータカ(剣の特相・本生物語126)

1. 13. 7. カランドゥカ・ジャータカ(カランドゥカ・本生物語127)

1. 13. 8. ビラーラヴァタ・ジャータカ(山猫の掟・本生物語128)

1. 13. 9. アッギカバーラドヴァージャ・ジャータカ(祭火者バーラドヴァージャ・本生物語129)

1. 13. 10. コーシヤ・ジャータカ(コーシヤー・本生物語130)

 

1. 14. 付与しないことの章

 

1. 14. 1. アサンパダーナ・ジャータカ(付与しないこと・本生物語131)

1. 14. 2. ビールカ・ジャータカ(恐れる者・本生物語132)

1. 14. 3. ガターサナ・ジャータカ(火・本生物語133)

1. 14. 4. ジャーナソーダナ・ジャータカ(瞑想を清めるもの・本生物語134)

1. 14. 5. チャンダーバ・ジャータカ(月光・本生物語135)

1. 14. 6. スヴァンナハンサ・ジャータカ(黄金の鵞鳥・本生物語136)

1. 14. 7. バッブ・ジャータカ(猫・本生物語137)

1. 14. 8. ゴーダ・ジャータカ(大蜥蜴・本生物語138)

1. 14. 9. ウバトーバッタ・ジャータカ(両者ともに落伍した者・本生物語139)

1. 14. 10. カーカ・ジャータカ(烏・本生物語140)

 

1. 15. 色蜥蜴の章

 

1. 15. 1. ゴーダ・ジャータカ(大蜥蜴・本生物語141)

1. 15. 2. シンガーラ・ジャータカ(野狐・本生物語142)

1. 15. 3. ヴィローチャナ・ジャータカ(遍照・本生物語143)

1. 15. 4. ナングッタ・ジャータカ(尾・本生物語144)

1. 15. 5. ラーダ・ジャータカ(ラーダ・本生物語145)

1. 15. 6. サムッダカーカ・ジャータカ(海と烏・本生物語146)

1. 15. 7. プッパラッタ・ジャータカ(花染め・本生物語147)

1. 15. 8. シンガーラ・ジャータカ(野狐・本生物語148)

1. 15. 9. エーカパンナ・ジャータカ(一葉・本生物語149)

1. 15. 10. サンジーヴァ・ジャータカ(サンジーヴァ・本生物語150)

 

2. 二なるものの集まり

 

2. 1. 堅固の章

 

2. 1. 1. ラージョーヴァーダ・ジャータカ(王の教諭・本生物語151)

2. 1. 2. シンガーラ・ジャータカ(野狐・本生物語152)

2. 1. 3. スーカラ・ジャータカ(猪・本生物語153)

2. 1. 4. ウラガ・ジャータカ(蛇・本生物語154)

2. 1. 5. バッガ・ジャータカ(バッガ・本生物語155)

2. 1. 6. アリーナチッタ・ジャータカ(畏縮なき心・本生物語156)

2. 1. 7. グナ・ジャータカ(徳・本生物語157)

2. 1. 8. スハヌ・ジャータカ(スハヌ・本生物語158)

2. 1. 9. モーラ・ジャータカ(孔雀・本生物語159)

2. 1. 10. ヴィニーラ・ジャータカ(青黒き者・本生物語160)

 

2. 2. 親愛の章

 

2. 2. 1. インダサマーナゴッタ・ジャータカ(インダサマーナゴッタ・本生物語161)

2. 2. 2. サンタヴァ・ジャータカ(親愛・本生物語162)

2. 2. 3. スシーマ・ジャータカ(スシーマ・本生物語163)

2. 2. 4. ギッジャ・ジャータカ(鷲・本生物語164)

2. 2. 5. ナクラ・ジャータカ(鼬・本生物語165)

2. 2. 6. ウパサーラカ・ジャータカ(ウパサーラカ・本生物語166)

2. 2. 7. サミッディ・ジャータカ(サミッディ・本生物語167)

2. 2. 8. サクナッギ・ジャータカ(鷹・本生物語168)

2. 2. 9. アラカ・ジャータカ(アラカ・本生物語169)

2. 2. 10. カカンタカ・ジャータカ(色蜥蜴・本生物語170)

 

2. 3. 善きことの章

 

2. 3. 1. カルヤーナダンマ・ジャータカ(善き法・本生物語171)

2. 3. 2. ダッダラ・ジャータカ(ダッダラ・本生物語172)

2. 3. 3. マッカタ・ジャータカ(猿・本生物語173)

2. 3. 4. ドゥッビヤマッカタ・ジャータカ(裏切り者の猿・本生物語174)

2. 3. 5. アーディッチュパッターナ・ジャータカ(太陽への奉仕・本生物語175)

2. 3. 6. カラーヤムッティ・ジャータカ(拳のなかの大豆・本生物語176)

2. 3. 7. ティンドゥカ・ジャータカ(ティンドゥカ・本生物語177)

2. 3. 8. カッチャパ・ジャータカ(亀・本生物語178)

2. 3. 9. サタダンマ・ジャータカ(サタダンマ・本生物語179)

2. 3. 10. ドゥッダダ・ジャータカ(施し難きもの・本生物語180)

 

2. 4. アサディサの章

 

2. 4. 1. アサディサ・ジャータカ(アサディサ・本生物語181)

2. 4. 2. サンガーマーヴァチャラ・ジャータカ(戦場を行境とする者・本生物語182)

2. 4. 3. ヴァーローダカ・ジャータカ(汚れた水・本生物語183)

2. 4. 4. ギリダッタ・ジャータカ(ギリダッタ・本生物語184)

2. 4. 5. アナビラティ・ジャータカ(不満・本生物語185)

2. 4. 6. ダディヴァーハナ・ジャータカ(ダディヴァーハナ・本生物語186)

2. 4. 7. チャトゥマッタ・ジャータカ(四つの艶ある者・本生物語187)

2. 4. 8. シーハコットゥ・ジャータカ(獅子と野狐・本生物語188)

2. 4. 9. シーハチャンマ・ジャータカ(獅子の皮・本生物語189)

2. 4. 10. シーラーニサンサ・ジャータカ(戒の福利・本生物語190)

 

2. 5. ルハカの章

 

2. 5. 1. ルハカ・ジャータカ(ルハカ・本生物語191)

2. 5. 2. シリカーラカンニ・ジャータカ(吉祥と黒耳・本生物語192)

2. 5. 3. チューラパドゥマ・ジャータカ(小蓮華・本生物語193)

2. 5. 4. マニチョーラ・ジャータカ(宝珠の盗賊・本生物語194)

2. 5. 5. パッバトゥーパッタラ・ジャータカ(山麓・本生物語195)

2. 5. 6. ヴァラーハカッサ・ジャータカ(雲馬・本生物語196)

2. 5. 7. ミッターミッタ・ジャータカ(朋友たる者と朋友ならざる者・本生物語197)

2. 5. 8. ラーダ・ジャータカ(ラーダ・本生物語198)

2. 5. 9. ガハパティ・ジャータカ(家長・本生物語199)

2. 5. 10. サードゥシーラ・ジャータカ(善き戒・本生物語200)

 

2. 6. 『それは堅固ならず』の章

 

2. 6. 1. バンダナーガーラ・ジャータカ(家の結縛・本生物語201)

2. 6. 2. ケーリシーラ・ジャータカ(遊戯を戒とする者・本生物語202)

2. 6. 4. ヴィーラカ・ジャータカ(ヴィーラカ・本生物語204)

2. 6. 5. ガンゲイヤ・ジャータカ(ガンガーの魚・本生物語205)

2. 6. 6. クルンガミガ・ジャータカ(羚羊・本生物語206)

2. 6. 7. アッサカ・ジャータカ(アッサカ・本生物語207)

2. 6. 8. ススマーラ・ジャータカ(鰐・本生物語208)

2. 6. 9. クックタ・ジャータカ(鶏・本生物語209)

2. 6. 10. カンダガラカ・ジャータカ(カンダガラカ・本生物語210)

 

2. 7. ビーラナ〔草〕の茂みの章

 

2. 7. 1. ソーマダッタ・ジャータカ(ソーマダッタ・本生物語211)

2. 7. 2. ウッチッタバッタ・ジャータカ(残飯・本生物語212)

2. 7. 3. バル・ジャータカ(バル・本生物語213)

2. 7. 4. プンナナディー・ジャータカ(満ちた川・本生物語214)

2. 7. 5. カッチャパ・ジャータカ(亀・本生物語215)

2. 7. 6. マッチャ・ジャータカ(魚・本生物語216)

2. 7. 7. セッグ・ジャータカ(セッグ・本生物語217)

2. 7. 8. クータヴァーニジャ・ジャータカ(奸計の商人・本生物語218)

2. 7. 9. ガラヒタ・ジャータカ(非難された者・本生物語219)

2. 7. 10. ダンマダジャ・ジャータカ(法の旗・本生物語220)

 

2. 8. 袈裟の章

 

2. 8. 1. カーサヴァ・ジャータカ(袈裟・本生物語221)

2. 8. 2. チューラナンディヤ・ジャータカ(小なるナンディヤ・本生物語222)

2. 8. 3. プタバッタ・ジャータカ(プタバッタ・本生物語223)

2. 8. 4. クンビラ・ジャータカ(鰐・本生物語224)

2. 8. 5. カンティヴァンナ・ジャータカ(忍耐の褒め称え・本生物語225)

2. 8. 6. コーシヤ・ジャータカ(梟・本生物語226)

2. 8. 7. グータパーナ・ジャータカ(糞虫・本生物語227)

2. 8. 8. カーマニータ・ジャータカ(欲にかられた者・本生物語228)

2. 8. 9. パラーイタ・ジャータカ(逃げ去る者・本生物語229)

2. 8. 10. ドゥティヤパラーイタ・ジャータカ(第二の逃げ去る者・本生物語230)

 

2. 9. 履物の章

 

2. 9. 1. ウパーハナ・ジャータカ(履物・本生物語231)

2. 9. 2. ヴィーナーグナ・ジャータカ(琵琶の竿・本生物語232)

2. 9. 3. ヴィカンナ・ジャータカ(矢・本生物語233)

2. 9. 4. アシターブー・ジャータカ(アシターブー・本生物語234)

2. 9. 5. ヴァッチャナカ・ジャータカ(ヴァッチャナカ・本生物語235)

2. 9. 6. バカ・ジャータカ(青鷺・本生物語236)

2. 9. 7. サーケータ・ジャータカ(サーケータ・本生物語237)

2. 9. 8. エーカパダ・ジャータカ(一なる境処・本生物語238)

2. 9. 9. ハリタマンドゥーカ・ジャータカ(青蛙・本生物語239)

2. 9. 10. マハーピンガラ・ジャータカ(マハーピンガラ・本生物語240)

 

2. 10. 野狐の章

 

2. 10. 1. サッバダーティ・ジャータカ(サッバダーティ・本生物語241)

2. 10. 2. スナカ・ジャータカ(犬・本生物語242)

2. 10. 3. グッティラ・ジャータカ(グッティラ・本生物語243)

2. 10. 4. ヴィガティッチャ・ジャータカ(欲求を離れ去った者・本生物語244)

2. 10. 5. ムーラパリヤーヤ・ジャータカ(根元の教相・本生物語245)

2. 10. 6. バーローヴァーダ・ジャータカ(愚者への教諭・本生物語246)

2. 10. 7. パーダンジャリー・ジャータカ(パーダンジャリー・本生物語247)

2. 10. 8. キンスコーパマ・ジャータカ(キンスカの喩え・本生物語248)

2. 10. 9. サーラカ・ジャータカ(サーラカ・本生物語249)

2. 10. 10. カピ・ジャータカ(猿・本生物語250)

 

3. 三なるものの集まり

 

3. 1. 妄想の章

 

3. 1. 1. サンカッパラーガ・ジャータカ(妄想と貪欲・本生物語251)

3. 1. 2. ティラムッティ・ジャータカ(ひと握りの胡麻・本生物語物語252)

3. 1. 3. マニカンタ・ジャータカ(マニカンタ・本生物語253)

3. 1. 4. クンダカクッチシンダヴァ・ジャータカ(米屑を腹にするシンダヴァ・本生物語254)

3. 1. 5. スカ・ジャータカ(鸚鵡・本生物語255)

3. 1. 6. ジャルーダパーナ・ジャータカ(古井戸・本生物語256)

3. 1. 7. ガーマニチャンダ・ジャータカ(ガーマニチャンダ・本生物語257)

3. 1. 8. マンダートゥ・ジャータカ(マンダータルのもの・本生物語258)

3. 1. 9. ティリータヴァッチャ・ジャータカ(ティリータヴァッチャ・本生物語259)

3. 1. 10. ドゥータ・ジャータカ(使者・本生物語260)

 

3. 2. 蓮華の章

 

3. 2. 1. パドゥマ・ジャータカ(蓮華・本生物語261)

3. 2. 2. ムドゥパーニ・ジャータカ(柔らかい手・本生物語262)

3. 2. 3. チューラパローバナ・ジャータカ(小なる誘惑・本生物語263)

3. 2. 4. マハーパローバナ・ジャータカ(大なる誘惑・本生物語264)

3. 2. 5. クラッパ・ジャータカ(尖り矢・本生物語265)

3. 2. 6. ヴァータッガシンダヴァ・ジャータカ(ヴァータッガシンダヴァ・本生物語266)

3. 2. 7. カッカタカ・ジャータカ(蟹・本生物語267)

3. 2. 8. アーラーマドゥーサカ・ジャータカ(林園を汚す者・本生物語268)

3. 2. 9. スジャータ・ジャータカ(スジャータ・本生物語269)

3. 2. 10. ウルーカ・ジャータカ(梟・本生物語270)

 

3. 3. 井戸の章

 

3. 3. 1. ウダパーナドゥーサカ・ジャータカ(井戸を汚す者・本生物語271)

3. 3. 2. ブヤッガ・ジャータカ(虎・本生物語272)

3. 3. 3. カッチャカ・ジャータカ(亀・本生物語273)

3. 3. 4. ローラ・ジャータカ(妄動・本生物語274)

3. 3. 5. ルチラ・ジャータカ(好ましきもの・本生物語275)

3. 3. 6. クルダンマ・ジャータカ(クル〔国〕の法・本生物語276)

3. 3. 7. ローマカ・ジャータカ(羽毛ある者・本生物語277)

3. 3. 8. マヒンサラージャ・ジャータカ(水牛の王・本生物語278)

3. 3. 9. サタパッタ・ジャータカ(鶴・本生物語279)

3. 3. 10. プタドゥーサカ・ジャータカ(器を汚す者・本生物語280)

 

3. 4. アッバンタラの章

 

3. 4. 1. アッバンタラ・ジャータカ(アッバンタラ・本生物語281)

3. 4. 2. セイヤ・ジャータカ(より勝る者・本生物語282)

3. 4. 3. ヴァッダキースーカラ・ジャータカ(大工の猪・本生物語283)

3. 4. 4. シリ・ジャータカ(吉祥・本生物語284)

3. 4. 5. マニスーカラ・ジャータカ(宝珠と猪・本生物語285)

3. 4. 6. サールーカ・ジャータカ(サールーカ・本生物語286)

3. 4. 7. ラーバガラハ・ジャータカ(利得の非難・本生物語287)

3. 4. 8. マッチュッダーナ・ジャータカ(ひとまとめの魚・本生物語288)

3. 4. 9. ナーナーチャンダ・ジャータカ(種々なる欲・本生物語289)

3. 4. 10. シーラヴィーマンサカ・ジャータカ(戒の審査者・本生物語290)

 

3. 5. 瓶の章

 

3. 5. 1. スラーガタ・ジャータカ(酒瓶・本生物語291)

3. 5. 2. スパッタ・ジャータカ(スパッタ・本生物語292)

3. 5. 3. カーヤニッビンダ・ジャータカ(身体の厭離・本生物語293)

3. 5. 4. ジャンブカーダカ・ジャータカ(ジャンブを喰う者・本生物語294)

3. 5. 5. アンタ・ジャータカ(最下の者・本生物語295)

3. 5. 6. サムッダ・ジャータカ(海・本生物語296)

3. 5. 7. カーマヴィラーパ・ジャータカ(欲望の饒舌・本生物語297)

3. 5. 8. ウドゥンバラ・ジャータカ(ウドゥンバラ・本生物語298)

3. 5. 9. コーマーラプッタ・ジャータカ(コーマーラプッタ・本生物語299)

3. 5. 10. ヴァカ・ジャータカ(狼・本生物語300)

 

4. 四なるものの集まり

 

4. 1. カーリンガの章

 

4. 1. 1. チューラカーリンガ・ジャータカ(小なるカーリンガ・本生物語301)

4. 1. 2. マハーカーリンガ・ジャータカ(大なるカーリンガ・本生物語302)

4. 1. 3. エーカラージャ・ジャータカ(一なる王・本生物語303)

4. 1. 4. ダッダラ・ジャータカ(ダッダラ・本生物語304)

4. 1. 5. シーラヴィーマンサナ・ジャータカ(戒の審査・本生物語305)

4. 1. 6. スジャータ・ジャータカ(スジャーター・本生物語306)

4. 1. 7. パラーサ・ジャータカ(パラーサ・本生物語307)

4. 1. 8. サクナ・ジャータカ(鳥・本生物語308)

4. 1. 9. チャヴァカ・ジャータカ(屍・本生物語309)

4. 1. 10. セイヤ・ジャータカ(より勝る者・本生物語310)

 

4. 2. プチマンダの章

 

4. 2. 1. プチマンダ・ジャータカ(プチマンダ・本生物語311)

4. 2. 2. カッサパマンディヤ・ジャータカ(カッサパと愚鈍・本生物語312)

4. 2. 3. カンティーヴァーディー・ジャータカ(忍耐を説く者・本生物語313)

4. 2. 4. ローハクンビ・ジャータカ(銅の釜・本生物語314)

4. 2. 5. サッバマンサラーバ・ジャータカ(一切の肉の利得・本生物語315)

4. 2. 6. ササパンディタ・ジャータカ(兎の賢者・本生物語316)

4. 2. 7. マタローダナ・ジャータカ(死んだ者を泣き悲しむこと・本生物語317)

4. 2. 8. カナヴェーラ・ジャータカ(カナヴェーラ・本生物語318)

4. 2. 9. ティッティラ・ジャータカ(雉・本生物語319)

4. 2. 10. スッチャジャ・ジャータカ(簡単に捨て去る者・本生物語320)

 

4. 3. 小屋を汚す者の章

 

4. 3. 1. クティドゥーサカ・ジャータカ(小屋を汚す者・本生物語321)

4. 3. 2. ドゥッドゥバ・ジャータカ(ドゥッドゥバ・本生物語322)

4. 3. 3. ブラフマダッタ・ジャータカ(ブラフマダッタ・本生物語323)

4. 3. 4. チャンマーサータカ・ジャータカ(皮衣の者・本生物語324)

4. 3. 5. ゴーダラージャ・ジャータカ(大蜥蜴の王・本生物語325)

4. 3. 6. カッカール・ジャータカ(カッカール・本生物語326)

4. 3. 7. カーカヴァティー・ジャータカ(カーカヴァティー・本生物語327)

4. 3. 8. アナヌソーチヤ・ジャータカ(憂い悲しむべきではない・本生物語328)

4. 3. 9. カーラバーフ・ジャータカ(カーラバーフ・本生物語329)

4. 3. 10. シーラヴィーマンサ・ジャータカ(戒の審査・本生物語330)

 

4. 4. コーキラの章

 

4. 4. 1. コーキラ・ジャータカ(コーキラ・本生物語331)

4. 4. 2. ラタラッティ・ジャータカ(車の鞭・本生物語332)

4. 4. 3. パッカゴーダ・ジャータカ(焼いた大蜥蜴・本生物語333)

4. 4. 4. ラージョーヴァーダ・ジャータカ(王の教諭・本生物語334)

4. 4. 5. ジャンブカ・ジャータカ(野狐・本生物語335)

4. 4. 6. ブラハーチャッタ・ジャータカ(偉丈夫のチャッタ・本生物語336)

4. 4. 7. ピータ・ジャータカ(椅子・本生物語337)

4. 4. 8. トゥサ・ジャータカ(籾殻・本生物語338)

4. 4. 9. バーヴェール・ジャータカ(バーヴェール・本生物語339)

4. 4. 10. ヴィサイハ・ジャータカ(ヴィサイハ・本生物語340)

 

4. 5. 小なるクナーラの章

 

4. 5. 1. カンダリー・ジャータカ(カンダリー・本生物語341)

4. 5. 2. ヴァーラナ・ジャータカ(猿・本生物語342)

4. 5. 4. アンバ・ジャータカ(アンバ・本生物語344)

4. 5. 5. ガジャクンバ・ジャータカ(亀・本生物語345)

4. 5. 6. ケーサヴァ・ジャータカ(ケーサヴァ・本生物語346)

4. 5. 7. アヤクータ・ジャータカ(鉄槌・本生物語347)

4. 5. 8. アランニャ・ジャータカ(林・本生物語348)

4. 5. 9. サンディベーダ・ジャータカ(関係を破壊する者・本生物語349)

4. 5. 10. デーヴァターパンハ・ジャータカ(天神の問い・本生物語350)

 

5. 五なるものの集まり

 

5. 1. 宝珠の耳飾の章

 

5. 1. 1. マニクンダラ・ジャータカ(宝珠の耳飾・本生物語351)

5. 1. 2. スジャータ・ジャータカ(スジャータ・本生物語352)

5. 1. 3. ヴェーナサーカ・ジャータカ(伸びた枝・本生物語353)

5. 1. 4. ウラガ・ジャータカ(蛇・本生物語354)

5. 1. 5. ガタ・ジャータカ(ガタ・本生物語355)

5. 1. 6. コーランディヤ・ジャータカ(コーランディヤ・本生物語356)

5. 1. 7. ラトゥキカ・ジャータカ(鶉・本生物語357)

5. 1. 8. チューラダンマパーラ・ジャータカ(小なるダンマパーラ・本生物語358)

5. 1. 9. スバンナミガ・ジャータカ(黄金の鹿・本生物語359)

5. 1. 10. スヨーナンディー・ジャータカ(スヨーナンディー・本生物語360)

 

5. 2. 色艶の崇高の章

 

5. 2. 1. ヴァンナーローハ・ジャータカ(色艶の崇高・本生物語361)

5. 2. 2. シーラヴィーマンサ・ジャータカ(戒の審査・本生物語362)

5. 2. 3. ヒリ・ジャータカ(恥・本生物語363)

5. 2. 4. カッジョーパナカ・ジャータカ(蛍・本生物語364)

5. 2. 5. アヒトゥンディカ・ジャータカ(蛇使い・本生物語365)

5. 2. 6. グンビヤ・ジャータカ(グンビヤ・本生物語366)

5. 2. 7. サーリヤ・ジャータカ(九官鳥・本生物語367)

5. 2. 8. タッチャサーラ・ジャータカ(竹・本生物語368)

5. 2. 9. ミッタヴィンダカ・ジャータカ(ミッタヴィンダカ・本生物語369)

5. 2. 10. パラーサ・ジャータカ(パラーサ・本生物語370)

 

5. 3. 半分の章

 

5. 3. 1. ディーギーティコーサラ・ジャータカ(ディーギーティコーサラ・本生物語371)

5. 3. 2. ミガポータカ・ジャータカ(子鹿・本生物語372)

5. 3. 3. ムーシカ・ジャータカ(鼠・本生物語373)

5. 3. 4. チューラダヌッガハ・ジャータカ(小なる弓の使い手・本生物語374)

5. 3. 5. カポータ・ジャータカ(鳩・本生物語375)

 

6. 六なるものの集まり

 

6. 1. アヴァーリヤの章

 

6. 1. 1. アヴァーリヤ・ジャータカ(アヴァーリヤ・本生物語376)

6. 1. 2. セータケートゥ・ジャータカ(セータケートゥ・本生物語377)

6. 1. 3. ダリームカ・ジャータカ(ダリームカ・本生物語378)

6. 1. 4. ネール・ジャータカ(ネール・本生物語379)

6. 1. 5. アーサンカ・ジャータカ(危惧・本生物語380)

6. 1. 6. ミガーローパ・ジャータカ(ミガーローパ・本生物語381)

6. 1. 7. シリカーラカンニ・ジャータカ(シリーとカーラカンニー・本生物語382)

6. 1. 8. クックタ・ジャータカ(鶏・本生物語383)

6. 1. 10. ナンディヤミガラージャ・ジャータカ(ナンディヤ鹿王・本生物語385)

 

6. 2. 驢馬の子の章

 

6. 2. 1. カラプッタ・ジャータカ(驢馬の子・本生物語386)

6. 2. 2. スーチ・ジャータカ(針・本生物語387)

6. 2. 3. トゥンディラ・ジャータカ(トゥンディラ・本生物語388)

6. 2. 4. スヴァンナカッカタ・ジャータカ(黄金の蟹・本生物語389)

6. 2. 5. マイハカ・ジャータカ(マイハカ・本生物語390)

6. 2. 6. ヴィッジャーダラ・ジャータカ(呪術師・本生物語391)

6. 2. 7. シンガプッパ・ジャータカ(蓮の花・本生物語392)

6. 2. 8. ヴィガーサーダ・ジャータカ(残飯拾い・本生物語393)

6. 2. 9. ヴァッタカ・ジャータカ(鶉・本生物語394)

6. 2. 10. パーラーヴァタ・ジャータカ(烏・本生物語395)

 

7. 七なるものの集まり

 

7. 1. クックの章

 

7. 1. 1. クック・ジャータカ(クック・本生物語396)

7. 1. 2. マノージャ・ジャータカ(マノージャ・本生物語397)

7. 1. 3. スタヌ・ジャータカ(スタヌ・本生物語398)

7. 1. 4. マートゥポーサカギッジャ・ジャータカ(母を養う鷲・本生物語399)

7. 1. 5. ダッバプッパ・ジャータカ(ダッバの花・本生物語400)

7. 1. 6. パンナカ・ジャータカ(棕櫚・本生物語401)

7. 1. 7. サットゥバスタ・ジャータカ(菓子袋・本生物語402)

7. 1. 8. アッティセーナカ・ジャータカ(アッティセーナカ・本生物語403)

7. 1. 9. カピ・ジャータカ(猿・本生物語404)

7. 1. 10. バカ・ジャータカ(バカ・本生物語405)

 

7. 2. ガンダーラの章

 

7. 2. 1. ガンダーラ・ジャータカ(ガンダーラ・本生物語406)

7. 2. 2. マハーカピ・ジャータカ(大猿・本生物語407)

7. 2. 3. クンバカーラ・ジャータカ(陶工・本生物語408)

7. 2. 4. ダラダンマ・ジャータカ(ダラダンマ・本生物語409)

7. 2. 5. ソーマダッタ・ジャータカ(ソーマダッタ・本生物語410)

7. 2. 6. スシーマ・ジャータカ(スシーマ・本生物語411)

7. 2. 7. コータシンバリ・ジャータカ(コータシンバリ・本生物語412)

7. 2. 8. ドゥーマカーリ・ジャータカ(ドゥーマカーリ・本生物語413)

7. 2. 9. ジャーガラ・ジャータカ(起きている者・本生物語414)

7. 2. 10. クンマーサピンディ・ジャータカ(団子飯・本生物語415)

7. 2. 11. パランタパ・ジャータカ(パランタパ・本生物語416)

 

8. 八なるものの集まり

 

8. 1. カッチャーニの章

 

8. 1. 1. カッチャーニ・ジャータカ(カッチャーニ・本生物語417)

8. 1. 2. アッタサッダ・ジャータカ(八音・本生物語418)

8. 1. 3. スラサー・ジャータカ(スラサー・本生物語419)

8. 1. 4. スマンガラ・ジャータカ(スマンガラ・本生物語420)

8. 1. 5. ガンガマーラ・ジャータカ(ガンガマーラ・本生物語421)

8. 1. 6. チェーティヤ・ジャータカ(チェーティヤ・本生物語422)

8. 1. 7. インドリヤ・ジャータカ(機能・本生物語423)

8. 1. 8. アーディッタ・ジャータカ(燃えているもの・本生物語424)

8. 1. 9. アッターナ・ジャータカ(状況なきもの・本生物語425)

8. 1. 10. ディーピ・ジャータカ(豹・本生物語426)

 

9. 九なるものの集まり

 

9. 1. 鷲の章

 

9. 1. 1. ギッジャ・ジャータカ(鷲・本生物語427)

9. 1. 2. コーサンビヤ・ジャータカ(コーサンビーの者・本生物語428)

9. 1. 3. マハースヴァ・ジャータカ(大なる鸚鵡・本生物語429)

9. 1. 4. チューラスヴァ・ジャータカ(小なる鸚鵡・本生物語430)

9. 1. 5. ハリタチャ・ジャータカ(黄金の皮膚・本生物語431)

9. 1. 6. パダクサラマーナヴァ・ジャータカ(足跡に巧みな智ある若者・本生物語432)

9. 1. 7. ローマサカッサパ・ジャータカ(ローマサカッサパ・本生物語433)

9. 1. 8. チャッカヴァーカ・ジャータカ(鴛鴦・本生物語434)

9. 1. 9. ハリッディラーガ・ジャータカ(移ろい易き者・本生物語435)

9. 1. 10. サムッガ・ジャータカ(箱・本生物語436)

9. 1. 11. プーティマンサ・ジャータカ(プーティマンサ・本生物語437)

9. 1. 12. ダッダラ・ジャータカ(雉・本生物語438)

 

10. 十なるものの集まり

 

10. 1. 四つの門の章

 

10. 1. 1. チャトゥドヴァーラ・ジャータカ(四つの門・本生物語439)

10. 1. 2. カンハ・ジャータカ(黒き者・本生物語440)

10. 1. 3. チャトゥポーサティヤ・ジャータカ(四者の斎戒者・本生物語441)

10. 1. 4. サンカ・ジャータカ(サンカ・本生物語442)

10. 1. 5. チューラボーディ・ジャータカ(チューラボーディ・本生物語443)

10. 1. 6. カンハディーパーヤナ・ジャータカ(カンハディーパーヤナ・本生物語444)

10. 1. 7. ニグローダ・ジャータカ(ニグローダ・本生物語445)

10. 1. 8. タッカラ・ジャータカ(タッカラ・本生物語446)

10. 1. 9. マハーダンマパーラ・ジャータカ(大なるダンマパーラ・本生物語447)

10. 1. 10. クックタ・ジャータカ(鶏・本生物語448)

10. 1. 11. マッタクンダリー・ジャータカ(艶やかな耳飾をした者・本生物語449)

10. 1. 12. ビラーラコーシヤ・ジャータカ(ビラーラコーシヤ・本生物語450)

10. 1. 13. チャッカヴァーカ・ジャータカ(鴛鴦・本生物語451)

10. 1. 14. ブーリパンニャ・ジャータカ(広き智慧ある者・本生物語452)

10. 1. 15. マハーマンガラ・ジャータカ(大いなる幸福・本生物語453)

10. 1. 16. ガタパンディタ・ジャータカ(ガタ賢者・本生物語454)

 

11. 十一なるものの集まり

 

11. 1. 母を養う者の章

 

11. 1. 1. マートゥポーサカ・ジャータカ(母を養う者・本生物語455)

11. 1. 2. ジュンハ・ジャータカ(ジュンハ・本生物語456)

11. 1. 3. ダンマデーヴァプッタ・ジャータカ(ダンマ天子・本生物語457)

11. 1. 4. ウダヤ・ジャータカ(ウダヤ・本生物語458)

11. 1. 5. パーニーヤ・ジャータカ(飲用水・本生物語459)

11. 1. 6. ユダンチャヤ・ジャータカ(ユダンチャヤ・本生物語460)

11. 1. 7. ダサラタ・ジャータカ(ダサラタ・本生物語461)

11. 1. 8. サンヴァラ・ジャータカ(サンヴァラ・本生物語462)

11. 1. 9. スッパーラカ・ジャータカ(スッパーラカ・本生物語463)

 

12. 十二なるものの集まり

 

12. 1. 小なるクナーラの章

 

12. 1. 1. チューラクナーラ・ジャータカ(小なるクナーラ・本生物語464)

12. 1. 2. バッダサーラ・ジャータカ(バッダサーラ・本生物語465)

12. 1. 3. サムッダヴァーニジャ・ジャータカ(海の商人・本生物語466)

12. 1. 4. カーマ・ジャータカ(欲望・本生物語467)

12. 1. 5. ジャナサンダ・ジャータカ(ジャナサンダ・本生物語468)

12. 1. 6. マハーカンハ・ジャータカ(大なるカンハ・本生物語469)

12. 1. 7. コーシヤ・ジャータカ(コーシヤ・本生物語470)

12. 1. 8. メンダカパンハ・ジャータカ(羊の問い・本生物語471)

12. 1. 9. マハーパドゥマ・ジャータカ(マハーパドゥマ・本生物語472)

12. 1. 10. ミッターミッタ・ジャータカ(朋友たる者と朋友ならざる者・本生物語473)

 

13. 十三なるものの集まり

 

13. 1. アンバの章

 

13. 1. 1. アンバ・ジャータカ(アンバ・本生物語474)

13. 1. 2. パンダナ・ジャータカ(パンダナ・本生物語475)

13. 1. 3. ジャヴァナハンサ・ジャータカ(疾走する鵞鳥・本生物語476)

13. 1. 4. チューラナーラダ・ジャータカ(小なるナーラダ・本生物語477)

13. 1. 5. ドゥータ・ジャータカ(使者・本生物語478)

13. 1. 6. カーリンガボーディ・ジャータカ(カーリンガの菩提・本生物語479)

13. 1. 7. アキッティ・ジャータカ(アキッティ・本生物語480)

13. 1. 8. タッカーリヤ・ジャータカ(タッカーリヤ・本生物語481)

13. 1. 9. ルルミガラージャ・ジャータカ(ルル鹿王・本生物語482)

13. 1. 10. サラバミガ・ジャータカ(サラバ鹿・本生物語483)

 

14. 雑駁なるものの集まり

 

14. 1. 稲田の章

 

14. 1. 1. サーリケーダーラ・ジャータカ(稲田・本生物語484)

14. 1. 2. チャンダキンナリー・ジャータカ(チャンダキンナリー・本生物語485)

14. 1. 3. マハーウックサ・ジャータカ(大なる鶚・本生物語486)

14. 1. 4. ウッダーラカ・ジャータカ(ウッダーラカ・本生物語487)

14. 1. 5. ビサ・ジャータカ(蓮根・本生物語488)

14. 1. 6. スルチ・ジャータカ(スルチ・本生物語489)

14. 1. 7. パンチュポーサティカ・ジャータカ(五者の斎戒者・本生物語490)

14. 1. 8. マハーモーラ・ジャータカ(大なる孔雀・本生物語491)

14. 1. 9. タッチャスーカラ・ジャータカ(タッチャスーカラ・本生物語492)

14. 1. 10. マハーヴァーニジャ・ジャータカ(大なる商人・本生物語493)

14. 1. 11. サーディナ・ジャータカ(サーディナ・本生物語494)

14. 1. 12. ダサブラーフマナ・ジャータカ(十者の婆羅門・本生物語495)

14. 1. 13. ビッカーパランパラ・ジャータカ(行乞の相伝・本生物語496)

 

15. 二十なるものの集まり

 

15. 1. マータンガの章

 

15. 1. 1. マータンガ・ジャータカ(マータンガ・本生物語497)

15. 1. 2. チッタサンブータ・ジャータカ(チッタとサンブータ・本生物語498)

15. 1. 3. シヴィ・ジャータカ(シヴィ・本生物語499)

15. 1. 4. シリーマンタ・ジャータカ(吉祥なる助言・本生物語500)

15. 1. 5. ローハナミガ・ジャータカ(ローハナ鹿・本生物語501)

15. 1. 6. チューラハンサ・ジャータカ(小なる鵞鳥・本生物語502)

15. 1. 7. サッティグンバ・ジャータカ(サッティグンバ・本生物語503)

15. 1. 8. バッラーティヤ・ジャータカ(バッラーティヤ・本生物語504)

15. 1. 9. ソーマナッサ・ジャータカ(ソーマナッサ・本生物語505)

15. 1. 10. チャンペイヤ・ジャータカ(チャンペイヤ・本生物語506)

15. 1. 11. マハーパローバナ・ジャータカ(大なる誘惑・本生物語507)

15. 1. 12. パンチャパンディタ・ジャータカ(五者の賢者・本生物語508)

15. 1. 13. ハッティパーラ・ジャータカ(ハッティパーラ・本生物語509)

15. 1. 14. アヨーガラ・ジャータカ(アヨーガラ・本生物語510)

 

16. 三十なるものの集まり

 

16. 1. 『何を欲〔の思い〕として』の章

 

16. 1. 1. キンチャンダ・ジャータカ(何を欲〔の思い〕として・本生物語511)

16. 1. 2. クンバ・ジャータカ(瓶・本生物語512)

16. 1. 3. ジャヤッディサ・ジャータカ(ジャヤッディサ・本生物語513)

16. 1. 4. チャッダンタ・ジャータカ(六つの牙・本生物語514)

16. 1. 5. サンバヴァ・ジャータカ(サンバヴァ・本生物語515)

16. 1. 6. マハーカピ・ジャータカ(大なる猿・本生物語516)

16. 1. 7. ダカラッカサ・ジャータカ(水棲の羅刹・本生物語517)

16. 1. 8. パンダラナーガラージャ・ジャータカ(パンダラ龍王・本生物語518)

16. 1. 9. サンブラー・ジャータカ(サンブラー・本生物語519)

16. 1. 10. ガンダティンドゥカ・ジャータカ(ガンダティンドゥカ・本生物語520)

 


 

 

13. 1. ジャータカ聖典(本生経・第一部)

 

阿羅漢にして 正等覚者たる かの世尊に 礼拝し奉る

 

1. 一なるものの集まり

 

1. 1. 誤解なきものの章

 

1. 1. 1. アパンナカ・ジャータカ(誤解なきもの・本生物語1)

 

1. 或る者たちは、誤解なき境位のものを〔言い〕、〔悪しき〕説ある者たちは、〔誤解を生む〕第二のものを言う。思慮ある者は、このことを了知して、それが、誤解のないものであるなら、それを、収め取るべきである。ということで──

 

 アパンナカ・ジャータカが、第一となる。

 

1. 1. 2. ヴァンヌパタ・ジャータカ(砂の道・本生物語2)

 

2. 倦むことなく砂の道を掘っている者たちは、〔何もない〕空き地において、そこにおいて、水場を見出した。このように、牟尼は、精進と活力の具有者は、倦むことなく〔精進し〕、心臓(心)の寂静を見出すであろう。ということで──

 

 ヴァンヌパタ・ジャータカが、第二となる。

 

1. 1. 3. セーリヴァヴァーニジャ・ジャータカ(セーリヴァの商人・本生物語3)

 

3. 〔まさに〕その、正なる法(教え)の決定性(正道の実践者たること)を、この〔世において〕、もし、〔あなたが〕失うなら、長きにわたり、あなたは悩み苦しむであろう──〔まさに〕この、セーリヴァント〔という名〕の商人のように。ということで──

 

 セーリヴァヴァーニジャ・ジャータカが、第三となる。

 

1. 1. 4. チューラセッティ・ジャータカ(チューラ長者・本生物語4)

 

4. 思慮ある明眼の者は、たとえ、少ない資金をもってしても、自己を現起させる──微細な火を吹き起こすようにして。ということで──

 

 チューラセッティ・ジャータカが、第四となる。

 

1. 1. 5. タンドゥラナーリ・ジャータカ(ひと枡の米・本生物語5)

 

5. この、ひと枡の米が、〔五百の〕馬の代価として、どうして値するのか、王よ、説きたまえ。この、ひと枡の米が、バーラーナシーの内外共に値するとは、〔愚かしいかぎりである〕。ということで──

 

 タンドゥラナーリ・ジャータカが、第五となる。

 

1. 1. 6. デーヴァダンマ・ジャータカ(天の法・本生物語6)

 

6. 恥〔の思い〕()と〔良心の〕咎め()を成就した者たちは、白き法(性質)に〔心が〕定められた者たちは、正しくある者たちであり、世における正なる人士たちであり、「天の法(性質)ある者たち」と説かれる。ということで──

 

 デーヴァダンマ・ジャータカが、第六となる。

 

1. 1. 7. カッタハーリ・ジャータカ(薪運び女・本生物語7)

 

7. 大王よ、わたしは、あなたの子である。人の君主よ、あなたは、わたしを養いたまえ。陛下は、他の者たちでさえも養う。では、どうして、自らの子孫を〔養わないのか〕。ということで──

 

 カッタハーリ・ジャータカが、七第となる。

 

1. 1. 8. ガーマニ・ジャータカ(ガーマニ・本生物語8)

 

8. 急がずにいる者たちにもまた、まさしく、願いの果は等しく実現する。〔わたしは〕梵行(禁欲清浄行)の円熟者として〔世に〕存している。ガーマニよ、このように知りなさい。ということで──

 

 ガーマニ・ジャータカが、第八となる。

 

1. 1. 9. マガデーヴァ・ジャータカ(マガデーヴァ・本生物語9)

 

9. 〔わたしの〕命数を運び去る、これら〔の白髪〕が、わたしの頭髪として生じたのだ。天の使者(死神)たちが出現したのだ。わたしの出家の時である。ということで──

 

 マガデーヴァ・ジャータカが、第九となる。

 

1. 1. 10. スカヴィハーリ・ジャータカ(安楽の住者・本生物語10)

 

10. そして、彼を、他者たちが守らず、さらに、彼が、他者たちを守らないなら、王よ、彼は、まさに、安楽に臥す──諸々の欲望〔の対象〕について期待なき者となり。ということで──

 

 スカヴィハーリ・ジャータカが、第十となる。

 

 誤解なきものの章が、第一となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「優れた誤解なきものと砂の道と優れたセーリ(セーリヴァの商人)があり、見事な明眼の者(チューラ長者)とひと枡の米なる馬たち(ひと枡の米)があり、恥〔の思い〕(天の法)と優れた子(薪運び女)と頭(マガデーヴァ)とガーマニとともに、『さらに、彼が、〔他者たちを〕守らないなら』(安楽の住者)があり、それとともに、〔それらの〕十がある」と。

 

1. 2. 戒の章

 

1. 2. 1. ラッカナミガ・ジャータカ(ラッカナ鹿・本生物語11)

 

11. 友愛の生活者たちである、戒ある者たちには、義(利益)が有る。見よ──親族たちの群れに囲まれ、やってくるラッカナを。さらに、見よ──親族たちから、まさしく、見事に捨棄された、このカーラを。ということで──

 

 ラッカナミガ・ジャータカが、第一となる。

 

1. 2. 2. ニグローダミガ・ジャータカ(ニグローダ鹿・本生物語12)

 

12. まさしく、ニグローダに、仕え親しむべきである。サーカとは、共に住むべきではない。もし、それが、サーカのもとでの生命であるなら、ニグローダのもとで死んだほうが、より勝っている。ということで──

 

 ニグローダミガ・ジャータカが、第二となる。

 

1. 2. 3. カンディ・ジャータカ(矢じり・本生物語13)

 

13. 厭わしきものとして存せ──人を深く貫く矢じりある矢は。厭わしきものとして存せ──そこにおいて、婦女たちが遍き導き手としてある、その地方は。彼らが、婦女たちの支配に赴いた者たちであるなら、そして、また、彼らも、厭わしき有情たちとなる(彼らもまた非難されるべきである)。ということで──

 

 カンディ・ジャータカが、第三となる。

 

1. 2. 4. ヴァータミガ・ジャータカ(羚羊・本生物語14)

 

14. まさに、存在せず──諸々の〔甘き〕味よりもより悪しくあるものは。まさしく、諸々の居住〔の欲〕よりも、あるいは、諸々の親愛〔の情〕よりも、〔より悪しくある〕。茂みに依拠する羚羊(カモシカ)を、サンジャヤは、諸々の味〔の罠〕によって、〔自らの〕支配に導き入れた。ということで──

 

 ヴァータミガ・ジャータカが、第四となる。

 

1. 2. 5. カラーディヤ・ジャータカ(カラーディヤー・本生物語15)

 

15. カラーディヤーよ、八つの蹄をもち曲がりに曲がった〔角〕ある鹿を、七つの時にわたり〔教えに〕違犯した〔鹿〕を、彼を、教諭することは〔もはや〕できない。ということで──

 

 カラーディヤ・ジャータカが、第五となる。

 

1. 2. 6. ティパッラッタミガ・ジャータカ(三つの姿態ある鹿・本生物語16)

 

16. 三つの姿態ある鹿に、無数の幻術ある〔鹿〕に、八つの蹄をもち真夜中に水を飲む〔鹿〕に、〔甥を仕立て上げた〕。地に〔伏して〕一つの〔鼻〕孔で出息しながら、甥は、六つの術策によって〔猟師を〕たぶらかす。ということで──

 

 ティパッラッタミガ・ジャータカが、第六となる。

 

1. 2. 7. マールタ・ジャータカ(風・本生物語17)

 

17. もしくは、黒〔分〕(月が欠ける期間)であろうが、白〔分〕(月が満ちる期間)であろうが、風が吹く、そのときは、まさに、風から生じる諸々の寒さがある──両者ともに、義(道理)に反せず(同じ事である)。ということで──

 

 マールタ・ジャータカが、第七となる。

 

1. 2. 8. マタカバッタ・ジャータカ(死者の供物・本生物語18)

 

18. 「これは、苦しみである。生の発生である」〔と〕、このように、もし、有情たちが知るなら、命ある者が命ある者を殺すことはないであろう。なぜなら、命ある者を殺害する者は、〔のちに〕憂い悲しむからである。ということで──

 

 マタカバッタ・ジャータカが、第八となる。

 

1. 2. 9. アーヤーチタバッタ・ジャータカ(祈願の供物・本生物語19)

 

19. それで、もし、解き放たれるとして、死してのち、解き放たれるであろう。なぜなら、解き放たれつつ、結縛されるからである。慧者たちが、このように解き放たれることは、まさに、ない。〔誤った方法による〕解き放ちは、愚者にとって、結縛となる。ということで──

 

 アーヤーチタバッタ・ジャータカが、第九となる。

 

1. 2. 10. ナラパーナ・ジャータカ(葦で飲むもの・本生物語20)

 

20. 〔池から〕上がることなき足跡を見て、〔池へと〕下りていった足跡を見て、〔それゆえに、わたしたちは〕葦で水を飲むのだ。おまえ(池に住む羅刹)が、わたしを打ち殺すことは、まさしく、ないであろう。ということで──

 

 ナラパーナ・ジャータカが、第十となる。

 

 戒の章が、第二となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「そこで、ラッカナとサーカ(ニグローダ鹿)と『厭わしきものとして存せ』(矢じり)があり、さらに、『まさに、存在せず──諸々の〔甘き〕味よりも』(羚羊)とカラーディヤーがあり、『たぶらかす』(三つの姿態ある鹿)と優れた風と命ある者(死者の供物)と解き放ち(祈願の供物)とともに、葦という呼び名あるもの(葦で飲むもの)とともに、〔それらの〕十が有る」と。

 

1. 3. 羚羊の章

 

1. 3. 1. クルンガミガ・ジャータカ(羚羊・本生物語21)

 

21. セーパンニー〔樹〕よ、羚羊(カモシカ)にとって、これは、知られたこと、すなわち、あなたは、〔自ら果を〕落とす(木の中に潜む猟師が、羚羊を呼び寄せるために果実を落としている)。セーパンニー〔樹〕よ、〔わたしは〕他〔の木〕に赴く。あなたの果は、わたしにとって好ましからず。ということで──

 

 クルンガミガ・ジャータカが、第一となる。

 

1. 3. 2. クックラ・ジャータカ(犬・本生物語22)

 

22. それらの犬たちが、王の家で生育した良種のものたちであり、色艶と活力を具有したものたちであるなら、〔まさに〕その、これら〔の犬たち〕は、屠殺されることなくあるが、わたしたちは、屠殺されるものたちとして存している。これは、等しき殺害にあらず。これは、力弱きものの殺害である。ということで──

 

 クックラ・ジャータカが、第二となる。

 

1. 3. 3. ゴージャーニーヤ・ジャータカ(良馬・本生物語23)

 

23. 諸々の矢に射抜かれ、脇をつけて横たわっているもまた、良馬は、駄馬よりも、まさしく、より勝っている。馭者よ、まさしく、わたしに、〔馬具を〕設えよ。ということで──

 

 ゴージャーニーヤ・ジャータカが、第三となる。

 

1. 3. 4. アージャンニャ・ジャータカ(良馬・本生物語24)

 

24. そのとき、そのとき、そこにおいて、そのとき──そこにおいて、そこにおいて、そのとき、そのとき──良馬は、勢いよく為すが、駄馬たちは、そこにおいて退失する。ということで──

 

 アージャンニャ・ジャータカが、第四となる。

 

1. 3. 5. ティッタ・ジャータカ(水場・本生物語25)

 

25. 互いに他なる水場によって、馭者よ、馬に〔水を〕飲ませよ。坐が過ぎるなら、たとえ、〔美味なる〕粥でも、人は満ち足りるもの(飽きがくる)。ということで──

 

 ティッタ・ジャータカが、第五となる。

 

1. 3. 6. マヒラームカ・ジャータカ(マヒラームカ・本生物語26)

 

26. 過去に盗賊たちの言葉を傾聴して、マヒラームカ〔という名の象〕は、〔人々を〕打ち殺しながら〔世を〕渡り歩いたが、まさに、〔心身が〕善く自制された者たちの言葉を傾聴して、最上の象となり、一切の徳において確立した。ということで──

 

 マヒラームカ・ジャータカが、第六となる。

 

1. 3. 7. アビンハ・ジャータカ(間断なく・本生物語27)

 

27. 〔この象に〕餌を与えることは、十分ならず(不要である)。そして、団子も、〔十分〕ならず。諸々の草も、〔十分〕ならず。〔身体を〕擦ることも、〔十分〕ならず。〔わたしは〕思う──間断なく見ることから、象は、〔その〕犬にたいし、愛執〔の思い〕を為したのだ。ということで──

 

 アビンハ・ジャータカが、第七となる。

 

1. 3. 8. ナンディヴィサーラ・ジャータカ(ナンディヴィサーラ・本生物語28)

 

28. 快意なることだけを語るがよい。いついかなる時も、快意ならざることを〔語ってはなら〕ない。快意なることを語っている者のために、〔牛は〕重き荷を引いた。そして、彼に、財を得させた。そして、それによって、〔彼は〕わが意を得た者と成った。ということで──

 

 ナンディヴィサーラ・ジャータカが、第八となる。

 

1. 3. 9. カンハ・ジャータカ(黒きもの・本生物語29)

 

29. 荷は重く、それゆえに、それゆえに──道は深く、それゆえに──そのとき、まさに、〔力ある〕黒〔牛〕に、〔荷を〕結び付ける。彼は、まさに、その荷を運び行く。ということで──

 

 カンハ・ジャータカが、第九となる。

 

1. 3. 10. ムニカ・ジャータカ(ムニカ・本生物語30)

 

30. ムニカを羨んではならない。〔ムニカは〕諸々の病める食べ物を食べる。〔食に〕思い入れ少なき者となり、籾殻を喰え──〔まさに〕この、長寿の特相あるものを。ということで──

 

 ムニカ・ジャータカが、第十となる。

 

 羚羊の章が、第三となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「『羚羊にとって』(羚羊)と優れたクックラ(犬)とゴージャ(良馬)があり、さらに、駄馬(良馬)と馬(水場)という吉祥の呼び名あるものがあり、マヒラームカと『ならず』(間断なく)と優れた快意ならざること(ナンディヴィサーラ)があり、『荷を運び行く』(黒きもの)があり、ムニカとともに、〔それらの〕十がある」と。

 

1. 4. 雛鳥の章

 

1. 4. 1. クラーヴァカ・ジャータカ(雛鳥・本生物語31)

 

31. マータリ(帝釈天の馭者)よ、シンバリ〔樹〕には、〔金翅鳥の〕雛鳥たちがいる。轅(ながえ)の面で〔殺すことがないように、彼らを〕遍く避けよ。むしろ、〔わたしたちは〕阿修羅たちのもとで命を捨てるのだ。これらの鳥たちが、巣を離れるものたちと成ってはならない。ということで──

 

 クラーヴァカ・ジャータカが、第一となる。

 

1. 4. 2. ナッチャ・ジャータカ(舞踏・本生物語32)

 

32. 鳴き声は、快意なるものにして、かつまた、背は、好ましきものにして、かつまた、首は、瑠璃の色艶の似姿にして、そして、諸々の尾翼は、ヴヤーマ(:長さの単位・一ヴヤーマは約二メートル)ほどのものとなる。〔しかしながら、おまえの恥なき〕舞踏によって、〔わたしが〕おまえに娘を与えることはない。ということで──

 

 ナッチャ・ジャータカが、第二となる。

 

1. 4. 3. サンモーダマーナ・ジャータカ(喜び合い・本生物語33)

 

33. 喜び合っている鳥たちは、網を取って去り行くが、彼らが言い争うことになる、そのとき──そのとき、〔彼らは〕わたしの支配に至り行くであろう(捕獲されることになる)。ということで──

 

 サンモーダマーナ・ジャータカが、第三となる。

 

1. 4. 4. マッチャ・ジャータカ(魚・本生物語34)

 

34. 寒さは、わたしを〔苦しめ〕ない。暑さは、わたしを〔苦しめ〕ない。網のなかの捕縛は、わたしを〔苦しめ〕ない。しかしながら、すなわち、わたしのことを、〔妻の〕魚が、「彼は、歓楽のために、他の〔雌の魚〕のもとに赴いたのだ」〔と〕思うなら、〔それは、わたしを苦しめる〕。ということで──

 

 マッチャ・ジャータカが、第四となる。

 

1. 4. 5. ヴァッタカ・ジャータカ(鶉・本生物語35)

 

35. 〔わたしに〕存在するのは、飛ぶことなき〔両の〕翼──〔わたしに〕存在するのは、這うことなき〔両の〕足──そして、母と父は、〔巣から〕出たのだ──火よ、戻り行け。ということで──

 

 ヴァッタカ・ジャータカが、第五となる。

 

1. 4. 6. サクナ・ジャータカ(鳥・本生物語36)

 

36. 〔まさに〕その、〔この〕木に、依拠した鳥たちなるも、〔まさに〕その、この〔木〕が、火を放つ。鳥たちよ、〔ここを捨てて〕方々へと親しみ行け(飛び去れ)。帰依あるがゆえに、恐怖は生じたのだ。ということで──

 

 サクナ・ジャータカが、第六となる。

 

1. 4. 7. ティッティラ・ジャータカ(雉・本生物語37)

 

37. 彼らが、年長者を敬い、人として、法(真理)の熟知者たちであるなら、所見の法(現法:現世)において、賞賛されるべき者たちとなり、さらに、未来において、善き境遇(善趣)ある者たちとなる。ということで──

 

 ティッティラ・ジャータカが、第七となる。

 

1. 4. 8. バカ・ジャータカ(青鷺・本生物語38)

 

38. 結局のところ、欺きの智慧ある者が、欺きによって安楽に満ち栄えることはない。欺きの智慧ある青鷺が、蟹〔への欺き〕から、〔死に〕達するように。ということで──

 

 バカ・ジャータカが、第八となる。

 

1. 4. 9. ナンダ・ジャータカ(ナンダ・本生物語39)

 

39. 思うに、山積みの黄金は、さらに、黄金の花飾は、ナンダカが、生っ粋の奴隷が、そこにおいて、立ち、諸々の粗雑なことを喚き散らす、〔その場所にある〕。ということで──

 

 ナンダ・ジャータカが、第九となる。

 

1. 4. 10. カディランガーラ・ジャータカ(カディラの炭火・本生物語40)

 

40. むしろ、〔わたしは〕地獄に落ちるのだ──足を上に、頭を下に。〔わたしは〕聖ならざることを為さない。さあ、〔行乞の〕食を納めたまえ。ということで──

 

 カディランガーラ・ジャータカが、第十となる。

 

 雛鳥の章が、第四となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「吉祥なるマータリ(雛鳥)と娘(舞踏)と優れた鳥(喜び合い)があり、『歓楽のために赴いたのだ』(魚)と母と父(鶉)があり、そして、さらに、木(鳥)と年長者(雉)と見事な蟹(青鷺)があり、そのように、ナンダカ(ナンダ)と優れた〔行乞の〕食(カディラの炭火)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

1. 5. 義を欲する者の章

 

1. 5. 1. ローサカ・ジャータカ(ローサカ・本生物語41)

 

41. 彼が、〔彼の〕義(利益)を欲し〔彼に〕利益と慈しみ〔の思い〕ある者の教えを、教諭されているのに為さないなら、雌山羊の足に垂れ下がって〔捕縛された〕ミッタカのように、憂い悲しむ。ということで──

 

 ローサカ・ジャータカが、第一となる。

 

1. 5. 2. カポータ・ジャータカ(鳩・本生物語42)

 

42. 彼が、〔彼の〕義(利益)を欲し〔彼に〕利益と慈しみ〔の思い〕ある者の教えを、教諭されているのに為さないなら、鳩の言葉を為さずして朋友ならざる者(敵)の手に落ちた〔烏〕のように、〔地に〕臥す。ということで──

 

 カポータ・ジャータカが、第二となる。

 

1. 5. 3. ヴェールカ・ジャータカ(ヴェールカ・本生物語43)

 

43. 彼が、〔彼の〕義(利益)を欲し〔彼に〕利益と慈しみ〔の思い〕ある者の教えを、教諭されているのに為さないなら、あたかも、ヴェールカの父のように、このように、彼は、打ち倒され、〔地に〕臥す。ということで──

 

 ヴェールカ・ジャータカが、第三となる。

 

1. 5. 4. マカサ・ジャータカ(蚊・本生物語44)

 

44. 朋友ならざる者であるとして、思慧を具した者であるなら、より勝っている。まさしく、しかし、朋友でありながら、思慧に劣った者は、さにあらず。まさに、「蚊を打ち殺すのだ」と、蒙昧なる子は、父の頭を打ち砕いた。ということで──

 

 マカサ・ジャータカが、第四となる。

 

1. 5. 5. ローヒニ・ジャータカ(ローヒニー・本生物語45)

 

45. 朋友ならざる者であるとして、思慧を具した者であるなら、より勝っている。すなわち、もし、慈しみ〔の思い〕ある愚者であるとして、〔それよりも〕。賎しむべきローヒニカーを見よ。母を殺して、憂い悲しむ。ということで──

 

 ローヒニ・ジャータカが、第五となる。

 

1. 5. 6. アーラーマドゥーサカ・ジャータカ(林園を汚す者・本生物語46)

 

46. まさに、義(利益)に巧みな智なき者による義(利益)の性行は、安楽をもたらすものにはならない。思慮浅き者は、義(利益)を失う──あたかも、林園の猿のように。ということで──

 

 アーラーマドゥーサカ・ジャータカが、第六となる。

 

1. 5. 7. ヴァールニドゥーサカ・ジャータカ(酒を汚す者・本生物語47)

 

47. まさに、義(利益)に巧みな智なき者による義(利益)の性行は、安楽をもたらすものにはならない。思慮浅き者は、義(利益)を失う──あたかも、コンダンニャが、酒を〔駄目にした〕ように。ということで──

 

 ヴァールニドゥーサカ・ジャータカが、第七となる。

 

1. 5. 8. ヴェーダッバ・ジャータカ(ヴェーダッバ・本生物語48)

 

48. 彼が、手段ならざる〔手段〕によって義(利益)を求めるなら、彼は、打ちのめされる。チェータ〔国の盗賊〕たちは、ヴェーダッバ〔の呪文を知る婆羅門〕を殺したが、彼らは、全ての者たちが、災厄に到達した。ということで──

 

 ヴェーダッバ・ジャータカが、第八となる。

 

1. 5. 9. ナッカッタ・ジャータカ(星宿・本生物語49)

 

49. 〔善き〕星宿を待ち望んでいる愚者を、義(利益)は過ぎ行った。〔まずは〕義(利益)があり、〔のちに〕義(利益)の星宿が〔こじつけられる〕。星々が、何を為すというのだろう。ということで──

 

 ナッカッタ・ジャータカが、第九となる。

 

1. 5. 10. ドゥンメーダ・ジャータカ(思慮浅き者・本生物語50)

 

50. 思慮浅き者たちの千〔の命〕による祭祀が、わたしの近しく乞い求めるところとなった。今や、まさに、わたしは、祭祀をするであろう。多くの人が、法(正義)ならざる者として〔世に有るからには〕。ということで──

 

 ドゥンメーダ・ジャータカが、第十となる。

 

 義を欲する者の章が、第五となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「そこで、ミッタカ(ローサカ)を始めとする優れた鳩があり、そのように、ヴェールカと蒙昧なる者(蚊)とローヒニーがあり、猿(林園を汚す者)と酒(酒を汚す者)とチェータを歩む者たち(ヴェーダッバ)があり、そして、さらに、そのように、星(星宿)と優れた祭祀(思慮浅き者)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

 〔以上が〕最初の五十なるものとなる。

 

1. 6. 願い求める者の章

 

1. 6. 1. マハーシーラヴァ・ジャータカ(マハーシーラヴァ・本生物語51)

 

51. 人は、まさしく、願望するべきである。賢者は、厭離するべきにあらず。まさに、わたしは、自己を見る──すなわち、〔わたしが〕求めたとおり、そのとおりに、〔わたしは〕成ったのだ。ということで──

 

 マハーシーラヴァ・ジャータカが、第一となる。

 

1. 6. 2. チューラジャナカ・ジャータカ(小なるジャナカ・本生物語52)

 

52. 人は、まさしく、努力するべきである。賢者は、厭離するべきにあらず。まさに、わたしは、自己を見る──水から陸に引き上げられた〔自己〕を。ということで──

 

 チューラジャナカ・ジャータカが、第二となる。

 

1. 6. 3. プンナパーティ・ジャータカ(満ちた鉢・本生物語53)

 

53. 諸々の満ちた鉢は、まさしく、〔手つかずの〕もとのまま。この言説は、他なるものとして転起する(虚偽を語っている)。行相(気配)によって、〔わたしは〕知る。そして、この酒は、善きものにあらず(毒が入っている)。ということで──

 

 プンナパーティ・ジャータカが、第三となる。

 

1. 6. 4. キンパラ・ジャータカ(何が果か・本生物語54)

 

54. この木は、登り難きにあらず。また、村から遠きにあらず(近くにあるのに放置されている)。行相(気配)によって、〔わたしは〕知る。これは、善き果の木にあらず。ということで──

 

 キンパラ・ジャータカが、第四となる。

 

1. 6. 5. パンチャーヴダ・ジャータカ(パンチャーヴダ・本生物語55)

 

55. その人が、畏縮なき意ある者となり、畏縮なき心で、束縛からの平安(軛安穏)に至り得るために、善なる法(性質)を修めるなら、順次に、〔彼は〕至り得るであろう──〔すなわち〕一切の束縛するものの滅尽に。ということで──

 

 パンチャーヴダ・ジャータカが、第五となる。

 

1. 6. 6. カンチャナッカンダ・ジャータカ(金塊・本生物語56)

 

56. その人が、欣喜した意ある者となり、欣喜した心で、束縛からの平安に至り得るために、善なる法(性質)を修めるなら、順次に、〔彼は〕至り得るであろう──〔すなわち〕一切の束縛するものの滅尽に。ということで──

 

 カンチャナッカンダ・ジャータカが、第六となる。

 

1. 6. 7. ヴァーナリンダ・ジャータカ(猿のインダ・本生物語57)

 

57. 猿のインダ(猿の王)よ、彼に、これらの四つの法(性質)があるなら、すなわち、あなたにあるように、真理()と法(教え)と〔道心〕堅固と施捨があるなら、彼は、敵を超克する。ということで──

 

 ヴァーナリンダ・ジャータカが、第七となる。

 

1. 6. 8. タヨーダンマ・ジャータカ(三つの法・本生物語58)

 

58. 猿のインダよ、彼に、これらの三つの法(性質)があるなら、すなわち、あなたにあるように、有能と勇気と智慧(慧・般若)があるなら、彼は、敵を超克する。ということで──

 

 タヨーダンマ・ジャータカが、第八となる。

 

1. 6. 9. ベーリヴァーダカ・ジャータカ(太鼓打ち・本生物語59)

 

59. 鳴らすがよい、鳴らすがよい、〔ただし〕鳴らし過ぎないように。まさに、鳴らし過ぎは、悪しきこと。なぜなら、鳴らしたことで、百〔金〕を得たが、鳴らし過ぎたことで、消失したからだ。ということで──

 

 ベーリヴァーダカ・ジャータカが、第九となる。

 

1. 6. 10. サンカダマ・ジャータカ(法螺貝吹き・本生物語60)

 

60. 鳴らすがよい、鳴らすがよい、〔ただし〕鳴らし過ぎないように。まさに、鳴らし過ぎは、悪しきこと。鳴らしたことで、諸々の財物に到達したが、それら〔の財物〕を、父は、〔いつまでも〕鳴らしながら、砕破してしまった。ということで──

 

 サンカダマ・ジャータカが、第十となる。

 

 願い求める者の章が、第六となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「『すなわち、〔わたしが〕求めたとおり、そのとおりに、〔わたしは〕成ったのだ』(マハーシーラヴァ)と『水から陸に』(小なるジャナカ)があり、酒(満ちた鉢)と善き果(何が果か)があり、そして、畏縮なき意(パンチャーヴダ)があり、欣喜した意(金塊)があり、四つ(猿のインダ)があり、そして、三つ(三つの法)があり、百〔金〕を得た者(太鼓打ち)と財物と財産(法螺貝吹き)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

1. 7. 婦女の章

 

1. 7. 1. アサータマンタ・ジャータカ(不快なる呪文・本生物語61)

 

61. 正しからざるは、まさに、世の婦女たちである。彼女たちに、限度は見出されない。そして、貪染ある者たちであり、さらに、尊大なる者たちである。あたかも、一切を食糧とする炎のようなもの。彼女たちを捨棄して、〔わたしは〕出家するであろう──遠離〔の境地〕を増進しながら。ということで──

 

 アサータマンタ・ジャータカが、第一となる。

 

1. 7. 2. アンダブータ・ジャータカ(卵のなかに有る者・本生物語62)

 

62. すなわち、婆羅門は、顔を巻き包まれ、琵琶を奏でた。妻は、卵のなかに有るときから、〔そのような者として〕培養されたのだ。彼女たちにたいし、いったい、誰が、信頼するというのだろう。ということで──

 

 アンダブータ・ジャータカが、第二となる。

 

1. 7. 3. タッカパンディタ・ジャータカ(棗椰子の賢者・本生物語63)

 

63. 〔婦女たちは〕忿激ある者たちであり、かつまた、恩知らずの者たちである。〔他者を〕中傷する者たちであり、朋友を分裂させる者たちである。比丘よ、梵行(禁欲清浄行)を歩め。〔まさに〕その〔あなた〕は、安楽を捨棄しないであろう。ということで──

 

 タッカパンディタ・ジャータカが、第三となる。

 

1. 7. 4. ドゥラージャーナ・ジャータカ(知り難きもの・本生物語64)

 

64. まさに、喜んではならない。「〔彼女は〕わたしを求める」〔と〕。まさに、憂いてはならない。「〔彼女は〕わたしを求めない」〔と〕。婦女たちの情愛は、水のなかの魚の行方のように、了知し難きもの。ということで──

 

 ドゥラージャーナ・ジャータカが、第四となる。

 

1. 7. 5. アナビラティ・ジャータカ(不興・本生物語65)

 

65. あたかも、そして、川のように、さらに、道のように、酒場や集会場や水飲場のように、このように、まさに、世の婦女たちはある(万人共有のものである)。〔このことを知る〕賢者たちは、これらの者たちに怒らない。ということで──

 

 アナビラティ・ジャータカが、第五となる。

 

1. 7. 6. ムドゥラッカナ・ジャータカ(ムドゥラッカナー・本生物語66)

 

66. かつては、一つの欲求が存した〔だけだった〕──ムドゥラッカナーを得ずして。ぱっちり眼〔のムドゥラッカナー〕を得た、そのあとは、欲求が欲求を産んだ。ということで──

 

 ムドゥラッカナ・ジャータカが、第六となる。

 

1. 7. 7. ウッチャンガ・ジャータカ(膝・本生物語67)

 

67. 陛下よ、膝には、わたしの子がいます。道には、〔わたしが〕走り行くなら、亭主がいます。しかしながら、その地を、〔わたしは〕見ません。そこから、兄弟姉妹を連れてくる、〔その地を〕。ということで──

 

 ウッチャンガ・ジャータカが、第七となる。

 

1. 7. 8. サーケータ・ジャータカ(サーケータ・本生物語68)

 

68. 彼にたいし、意が固着し、さらに、また、心が清信するなら、たとえ、彼が、過去に見たことなき人であるとして、もちろん、信頼するべきである。ということで──

 

 サーケータ・ジャータカが、第八となる。

 

1. 7. 9. ヴィサヴァンタ・ジャータカ(吐き捨てられた毒・本生物語69)

 

69. 厭わしきものとして存せ──吐き捨てられた、その毒は。すなわち、わたしが、生命を契機として、吐き捨てられた〔毒〕を飲み戻すことになるなら、生きているよりも、死んだほうが、わたしにとって優れている。ということで──

 

 ヴィサヴァンタ・ジャータカが、第九となる。

 

1. 7. 10. クッダーラ・ジャータカ(クッダーラ・本生物語70)

 

70. その勝利は、善き勝利にあらず──その勝利が失われるなら。その勝利は、まさに、善き勝利である──その勝利が失われないなら。ということで──

 

 クッダーラ・ジャータカが、第十となる。

 

 婦女の章が、第七となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「一切を食糧とする炎(不快なる呪文)があり、また、そして、優れた琵琶(卵のなかに有る者)があり、『〔他者を〕中傷する者たちであり、朋友を分裂させる者たちである』(棗椰子の賢者)と喜び(知り難きもの)と川(不興)があり、ムドゥラッカナーと兄弟姉妹(膝)があり、そして、意(サーケータ)があり、毒(吐き捨てられた毒)と善き勝利(クッダーラ)とともに、〔それらの〕十が有る」と。

 

1. 8. ヴァルナの章

 

1. 8. 1. ヴァルナ・ジャータカ(ヴァルナ・本生物語71)

 

71. すなわち、彼が、前に為すべき諸々のことを、後に為すことを求めるなら、ヴァルナ〔樹〕の薪を折る者のように、彼は、のちに悩み苦しむ。ということで──

 

 ヴァルナ・ジャータカが、第一となる。

 

1. 8. 2. シーラヴァハッティ・ジャータカ(戒ある象・本生物語72)

 

72. 常に裂け目を見る、恩知らずの人に、もし、全ての地を与えるとして、彼を満悦させることは、まさしく、ない。ということで──

 

 シーラヴァハッティ・ジャータカが、第二となる。

 

1. 8. 3. サッチャンキラ・ジャータカ(真に、まさに・本生物語73)

 

73. ここに、一部の人たちは、「真に、まさに」〔と〕、このように言った。まさしく、しかし、一部の人は、さにあらず。漂流する薪のほうが、より勝っている。ということで──

 

 サッチャンキラ・ジャータカが、第三となる。

 

1. 8. 4. ルッカダンマ・ジャータカ(木の法・本生物語74)

 

74. 善きかな、大勢の親族たちがいることは──林に生じる木々もまた。風は、独り立つ〔大木〕を運び行く──高大にして林の長なるもまた。ということで──

 

 ルッカダンマ・ジャータカが、第四となる。

 

1. 8. 5. マッチャ・ジャータカ(魚・本生物語75)

 

75. パッジュンナ(雨の神)よ、〔雷鳴を〕鳴り響かせよ。烏の財宝(魚)を消失させよ(烏が魚を発見できないように雨を降らせよ)。烏を、憂いへと追い込め。そして、わたしを、憂いから解き放て。ということで──

 

 マッチャ・ジャータカが、第五となる。

 

1. 8. 6. アサンキヤ・ジャータカ(疑いなき者・本生物語76)

 

76. 村において、林において、〔わたしは〕疑いなき者として存している。わたしに、恐怖は存在しない。慈愛〔の思い〕によって、さらに、慈悲〔の思い〕によって、真っすぐな道に入ったのだ。ということで──

 

 アサンキヤ・ジャータカが、第六となる。

 

1. 8. 7. マハースピナ・ジャータカ(大いなる夢・本生物語77)

 

77. 雄牛たち、木々、雌牛たち、そして、牛たち、馬、銅鉢、そして、雌野狐(ジャッカル)、瓶、そして、蓮池、未熟と栴檀──諸々の瓢箪は沈み、諸々の石は浮きただよう。

 蛙は黒蛇を飲み、金翅鳥たちは烏のもとに寄り集い、諸々の恐怖ゆえに羊たちを恐れる狼たちがいる。転倒が転起し、ここに、〔真実は〕存在しない。ということで──

 

 マハースピナ・ジャータカが、第七となる。

 

1. 8. 8. イッリサ・ジャータカ(イッリサ・本生物語78)

 

78. 両者は、足萎え。両者は、手萎え。両者は、片目。両者に、諸々の吹出物が生じ、わたしは、イッリサを見ない。ということで──

 

 イッリサ・ジャータカが、第八となる。

 

1. 8. 9. カラッサラ・ジャータカ(騒音・本生物語79)

 

79. 牛たちが、そして、強奪され、さらに、殺害され、家々が焼かれ、さらに、人が連れて行かれた、そののち、そこで、〔村の〕子が殺されたところに、〔殺害者である同じ村の〕子が帰ってきた──騒々しく小太鼓を奏でながら〔恥も外聞もなく〕。ということで──

 

 カラッサラ・ジャータカが、第九となる。

 

1. 8. 10. ビーマセーナ・ジャータカ(ビーマセーナ・本生物語80)

 

80. すなわち、前には、おまえに誇りがあり、そこで、後には、諸々の腐った流れがおまえを汚す(汚物を垂れ流している)。ビーマセーナよ、そして、戦いについての〔誇らしい〕言説は、さらに、おまえのこの打ちのめされぶりは、両者は合致せず。ということで──

 

 ビーマセーナ・ジャータカが、第十となる。

 

 ヴァルナの章が、第八となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「ヴァルナののち、優れた恩知らず(戒ある象)について〔説かれ〕、そして、優れた『真に』(真に、まさに)があり、林の長(木の法)を有するものとともに、そして、『鳴り響かせよ』(魚)があり、慈悲〔の思い〕(疑いなき者)とともに、浮きただよう石(大いなる夢)とイッリサののち、さらに、小太鼓(騒音)と腐った流れ(ビーマセーナ)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

1. 9. 『飲んだ』の章

 

1. 9. 1. スラーパーナ・ジャータカ(酒飲み・本生物語81)

 

81. 〔わたしたちは〕飲んだ、踊った、歌った、そして、泣いた。表象を離れる〔作用〕を為すもの(意識を失わせるもの)を飲んで、〔わたしたちが〕猿に成らなかったのは、幸せです。ということで──

 

 スラーパーナ・ジャータカが、第一となる。

 

1. 9. 2. ミッタヴィンダカ・ジャータカ(ミッタヴィンダカ・本生物語82)

 

82. ラマナカ〔の水晶宮殿〕を、さらに、サダーマッタ〔の白銀宮殿〕を、ドゥーハカ〔の宝珠宮殿〕を──〔それらを〕超え行って、〔まさに〕その〔あなた〕は存している──岩に坐す者として。その〔悪しき報い〕からは、生きているあいだ、〔あなたは〕解き放たれないであろう。ということで──

 

 ミッタヴィンダカ・ジャータカが、第二となる。

 

1. 9. 3. カーラカンニ・ジャータカ(カーラカンニ・本生物語83)

 

83. まさに、七歩で朋友と成り、また、十二〔日〕で道友と成る。そして、半月やひと月で親族と成り、それ以上は、自己に等しき者にさえも成る。〔まさに〕その〔わたし〕が、自己の安楽を因として、どうして、長き親交あるカーラカンニを捨棄できようか。ということで──

 

 カーラカンニ・ジャータカが、第三となる。

 

1. 9. 4. アッタッサドヴァーラ・ジャータカ(義の門・本生物語84)

 

84. そして、最高の利得たる無病を求めるがよい──そして、戒を、年長者の許認ある〔教え〕(正しい教諭)を、さらに、所聞(聴聞した教法)を。そして、法(教え)の随転があり、さらに、〔心の〕畏縮なきことがある。これらの六つのものは、義(利益)の門として、筆頭のものとなる。ということで──

 

 アッタッサドヴァーラ・ジャータカが、第四となる。

 

1. 9. 5. キンパッカ・ジャータカ(キンパッカ・本生物語85)

 

85. 入り来る汚点を了知せずして、彼が、諸々の欲望〔の対象〕を受用するなら、彼を、〔諸々の欲望の対象が〕報いの果てに打ち砕く──キンパッカ〔の実〕を食した者のように。ということで──

 

 キンパッカ・ジャータカが、第五となる。

 

1. 9. 6. シーラヴィーマンサカ・ジャータカ(戒を審査する者・本生物語86)

 

86. まさしく、まさに、戒は、善きものである。戒は、世における無上なるものである。見よ──おぞましき毒ある蛇が、戒ある者ということで、殺されないのだ(性質がよく無害であれば殺されない)。ということで──

 

 シーラヴィーマンサカ・ジャータカが、第六となる。

 

1. 9. 7. マンガラ・ジャータカ(幸福・本生物語87)

 

87. 彼にとって、諸々の幸福〔の占い〕が完破されたなら──諸々の天変地異〔の占い〕が〔完破され〕、そして、諸々の夢〔の占い〕が〔完破され〕、さらに、諸々の特相〔の占い〕が〔完破されたなら〕──彼は、幸福〔と不幸の思い〕という〔心の〕汚点を捨棄した者であり、組となる〔心の汚れ〕と〔四つの〕束縛(欲望・生存・見解・無明)に到達しない者であり、〔迷いの生存には〕けっして至らない。ということで──

 

 マンガラ・ジャータカが、第七となる。

 

1. 9. 8. サーランバ・ジャータカ(サーランバ・本生物語88)

 

88. 善き〔言葉〕だけを放つように。まさに、悪しき〔言葉〕を放たないように。善きことなるは、善き〔言葉〕を放つこと。悪しき〔言葉〕を放って、〔人は〕悩み苦しむ。ということで──

 

 サーランバ・ジャータカが、第八となる。

 

1. 9. 9. クハカ・ジャータカ(虚言者・本生物語89)

 

89. まさに、あなたの言葉こそは、優雅で、友誼ある話し手のものとして存していた。〔以前は〕草ほどのものにこだわったが、さてまた、〔今は〕百金を運びながら、さにあらず。ということで──

 

 クハカ・ジャータカが、第九となる。

 

1. 9. 10. アカタンニュ・ジャータカ(恩知らず・本生物語90)

 

90. すなわち、過去において、善きことを為され、義(利益)を為された者が、〔そのことを忘却し〕覚らないなら、後に、為すべきことが生起したとき、為し手に到達しない。ということで──

 

 アカタンニュ・ジャータカが、第十となる。

 

 『飲んだ』の章が、第九となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「『飲んだ』(酒飲み)があり、そして、ドゥーハカ(ミッタヴィンダカ)と七歩(カーラカンニ)があり、優れた六つ(義の門)があり、そして、入り来るもの(キンパッカ)とともに、そして、さらに、蛇の戒ある者(戒を審査する者)と幸福ある者(幸福)と悪しきもの(サーランバ)が存し、百金(虚言者)と優れた義(利益)を為された者(恩知らず)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

1. 10. 塗られたものの章

 

1. 10. 1. リッタ・ジャータカ(塗られたもの・本生物語91)

 

91. 最高の劇物(猛毒)が塗られた賽子を飲みながら、人は、〔そのことを〕覚らない。悪しき博徒よ、さあ、飲め、飲め。のちに、おまえにとって、辛きものと成るであろう。ということで──

 

 リッタ・ジャータカが、第一となる。

 

1. 10. 2. マハーサーラ・ジャータカ(大いなる真髄・本生物語92)

 

92. 〔人々は〕求める──戦場においては、勇士を、助言者たちのなかでは、騒擾なき者を、そして、食べ物と飲み物においては、愛しきものを、そして、義(事態)が生じたときには、賢者を。ということで──

 

 マハーサーラ・ジャータカが、第二となる。

 

1. 10. 3. ヴィサーサボージャナ・ジャータカ(信頼ある受益・本生物語93)

 

93. 〔いまだ〕信頼していない者にたいし、信頼するべきではない。〔すでに〕信頼している者にたいしてもまた、信頼するべきではない。信頼は、恐怖へと従い行く──鹿の母が、獅子を〔殺した〕ように。ということで──

 

 ヴィサーサボージャナ・ジャータカが、第三となる。

 

1. 10. 4. ローマハンサ・ジャータカ(身の毛のよだつこと・本生物語94)

 

94. 激しく〔炎暑に〕焼かれ、まさしく、そして、激しく〔寒気に〕冷たくなり(※)、禍々しき林のなかに独りあり、さらに、裸で火に近寄らず、探し求めるものを追求する牟尼がいる。ということで──

 

※ テキストには sosindo とあるが、PTS版により sosīto と読む。

 

 ローマハンサ・ジャータカが、第四となる。

 

1. 10. 5. マハースダッサナ・ジャータカ(マハースダッサナ・本生物語95)

 

95. 無常にして、生起と衰失の法(性質)あるのが、まさに、諸々の形成〔作用〕(諸行:形成されたもの・現象世界)である。〔それらは〕生起しては、止滅する。それらの寂止は、安楽である。ということで──

 

 マハースダッサナ・ジャータカが、第五となる。

 

1. 10. 6. テーラパッタ・ジャータカ(油の鉢・本生物語96)

 

96. あたかも、残すことなく縁まで一杯の油の鉢を持ち運ぶように、このように、自らの心を守るがよい──過去に赴いたことなき方角(涅槃)を望み求めているなら。ということで──

 

 テーラパッタ・ジャータカが、第六となる。

 

1. 10. 7. ナーマシッディ・ジャータカ(名前の成就・本生物語97)

 

97. そして、生ある者が死んだのを見て、さらに、財産を警護する者が悪しき境遇となったのを〔見て〕、かつまた、道の者が林のなかで迷ったのを〔見て〕、悪しき者は、ふたたび戻り来たのだ。ということで──

 

 ナーマシッディ・ジャータカが、第七となる。

 

1. 10. 8. クータヴァーニジャ・ジャータカ(奸計の商人・本生物語98)

 

98. 善きかな、まさに、賢者なるものは。まさしく、しかし、賢者過ぎるのは、さにあらず。賢者過ぎる子によって、ほとんど、もう、萎びてしまった〔わたし〕である。ということで──

 

 クータヴァーニジャ・ジャータカが、第八となる。

 

1. 10. 9. パローサハッサ・ジャータカ(千を超える者・本生物語99)

 

99. たとえ、千を超える者たちが集いあつまったとして、智慧なき彼らが、百年のあいだ泣き叫ぶとして、まさしく、一者であれ、智慧を有する人のほうが、より勝っている──彼が、語られたことの義(意味)を識知するなら。ということで──

 

 パローサハッサ・ジャータカが、第九となる。

 

1. 10. 10. アサータルーパ・ジャータカ(快ならざる形・本生物語100)

 

100. 快ならざるものを快なる形態によって、愛しくないものを愛しい形態によって、苦なるものを楽なる形態によって、怠りあるものを超克する。ということで──

 

 アサータルーパ・ジャータカが、第十となる。

 

 塗られたものの章が、第十となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「『賽子を飲みながら』(塗られたもの)と騒擾なき者(大いなる真髄)と母(信頼ある受益)が存し、牟尼(身の毛のよだつこと)とともに、そして、常住ならざること(マハースダッサナ)と優れた鉢(油の鉢)があり、優れた財産を警護する者(名前の成就)と賢者過ぎる者(奸計の商人)があり、千を超える者と快ならざるもの(快ならざる形)を有する、〔それらの〕十がある」と。

 

 〔以上が〕中間の五十なるものとなる。

 

1. 11. 百を超える者の章

 

1. 11. 1. パローサタ・ジャータカ(百を超える者・本生物語101)

 

101. たとえ、もし、百を超える者たちが集いあつまり、彼らが、百年のあいだ瞑想するとして、智慧なき者たちであるなら、まさしく、一者であれ、智慧を有する人のほうが、より勝っている──すなわち、語られたことの義(意味)を識知する、〔智慧ある者こそが〕。ということで──

 

 パローサタ・ジャータカが、第一となる。

 

1. 11. 2. パンニカ・ジャータカ(八百屋・本生物語102)

 

102. すなわち、苦しみに襲われた者にとっての救護所と成るべき、〔まさに〕その、わたしの父が、林のなかで裏切りを為す。〔まさに〕その〔わたし〕は、林の真ん中で、誰に泣き叫ぶというのだろう。〔まさに〕その、救護者である彼が、〔わたしに〕無理強いを為す。ということで──

 

 パンニカ・ジャータカが、第二となる。

 

1. 11. 3. ヴェーリ・ジャータカ(怨みある者・本生物語103)

 

103. そこにおいて、怨みある者が定住するなら、賢者は、そこにおいて、住するべきではない。一夜であれ、あるいは、二夜であれ、怨みある者たちのうちにあるなら、苦痛のうちに住する。ということで──

 

 ヴェーリ・ジャータカが、第三となる。

 

1. 11. 4. ミッタヴィンダカ・ジャータカ(ミッタヴィンダカ・本生物語104)

 

104. 〔あなたは〕到達した──四より八へと、そして、また、八より十六へと、さらに、十六より三十二へと、求め過ぎながら、〔剃刀の〕輪に近寄る者となり。人が、〔欲の〕求めに打ちのめされたなら、〔剃刀の〕輪が、頭上に迷走する。ということで──

 

 ミッタヴィンダカ・ジャータカが、第四となる。

 

1. 11. 5. ドゥッバラカッタ・ジャータカ(力弱き木片・本生物語105)

 

105. 林のなかの、この多くの木片をもまた、〔それが〕力弱くあるなら、風は折る。象よ、もし、〔あなたが〕それに恐怖するなら、まちがいなく、〔あなたは〕痩せ細る者と成るであろう。ということで──

 

 ドゥッバラカッタ・ジャータカが、第五となる。

 

1. 11. 6. ウダンチャニー・ジャータカ(水桶女・本生物語106)

 

106. まさに、安楽に生きているわたしを煮ている水桶女──女盗賊は、妻の論理で、油を、そして、塩を、乞い求める。ということで──

 

 ウダンチャニー・ジャータカが、第六となる。

 

1. 11. 7. サーリッタカ・ジャータカ(石投げ・本生物語107)

 

107. 善きかな、まさに、技能というものは──たとえ、そのような、何らかのものであれ。見よ。足萎えの打撃〔の技能〕によって、四方の村が得られたのだ。ということで──

 

 サーリッタカ・ジャータカが、第七となる。

 

1. 11. 8. バーヒヤ・ジャータカ(田舎娘・本生物語108)

 

108. 諸々の学ぶべきことを学ぶがよい。〔その道に〕一途な(※)人たちが〔世に〕存在する。まさに、田舎娘は、上手に用を足したことで、王を満悦させた。ということで──

 

※ テキストには tacchandino とあるが、PTS版により sacchandino と読む。

 

 バーヒヤ・ジャータカが、第八となる。

 

1. 11. 9. クンダプーヴァ・ジャータカ(粉菓子・本生物語109)

 

109. 人が、そのようなものを食べ物とする者として〔世に〕有るなら、彼の天神も、そのようなものを食べ物とする者と〔成る〕。この粉菓子を、〔わたしのもとに〕持ってきなさい。わたしの〔食べる〕分を無に帰すことがあってはならない(粉菓子であれ立派な供物となる)。ということで──

 

 クンダプーヴァ・ジャータカが、第九となる。

 

1. 11. 10. サッバサンハーラカパンハ・ジャータカ(全集香の問い・本生物語110)

 

110. 全集香は存在しない。単なる稗が香り行く。すなわち、質悪き女は、偽りを語り、老女は、真なることを言う。ということで──

 

 サッバサンハーラカパンハ・ジャータカが、第十となる。

 

 百を超える者の章が、第十一となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「百を超える者と救護者(八百屋)と怨みある者を有するものがあり、さらに、迷走する輪(ミッタヴィンダカ)と象という吉祥の呼び名あるものがあり(力弱き木片)があり、『まさに、安楽に』(水桶女)があり、そして、技能(石投げ)と田舎娘があり、粉菓子と老女(全集香の問い)があり、そして、〔それらの〕十がある」と。

 

1. 12. 『では、もし』の章

 

1. 12. 1. ガドラバパンハ・ジャータカ(驢馬の問い・本生物語111)

 

111. 最勝なる王よ、では、もし、あなたが、「父は、子よりも、より勝っている」と、このように了知するなら、さあ、騾馬にとって〔より勝っているのは〕、あなたのこの〔驢馬〕である。なぜなら、〔あなたのこの〕驢馬は、騾馬の父なのだから。ということで──

 

 ガドラバパンハ・ジャータカが、第一となる。

 

1. 12. 2. アマラーデーヴィーパンハ・ジャータカ(アマラー妃の問い・本生物語112)

 

112. そして、すなわち、粉〔屋〕と粥〔屋〕があり、さらに、二双の葉の花ひらいた〔木〕があるとして、それによって、〔わたしが〕与えるなら、それによって、〔わたしは〕説く。それによって、〔わたしが〕与えないなら、それによって、〔わたしは〕説かない。これが、ヤヴァマッジャカへの道である。この隠された道を識知しなさい。ということで──

 

 アマラーデーヴィーパンハ・ジャータカが、第二となる。

 

1. 12. 3. シンガーラ・ジャータカ(野狐・本生物語113)

 

113. 婆羅門よ、〔あなたは〕酒を飲んだ野狐(ジャッカル)に信を置いた。牡蠣〔の殻〕の百も存在しない。どうして、二百の銅貨があるというのだろう。ということで──

 

 シンガーラ・ジャータカが、第三となる。

 

1. 12. 4. ミタチンティ・ジャータカ(ミタチンティン・本生物語114)

 

114. バフチンティンとアッパチンティンの両者は、網に結縛された。ミタチンティンは、〔両者を網から〕解放した。両者は、そこにおいて、〔ミタチンティンと〕合流したのだった。ということで──

 

 ミタチンティ・ジャータカが、第四となる。

 

1. 12. 5. アヌサーシカ・ジャータカ(教示者・本生物語115)

 

115. その〔雌鳥〕は、他の者に教示するも、自ら、妄動の歩みある者であり、〔まさに〕その、この〔雌鳥〕は、翼を失い、〔地に〕臥す──車輪に轢き殺され、〔雌鳥の〕サーシカーは。ということで──

 

 アヌサーシカ・ジャータカが、第五となる。

 

1. 12. 6. ドゥッバチャ・ジャータカ(頑固者・本生物語116)

 

116. 師匠よ、〔あなたは〕為すに過ぎたことを為した。これは、わたしにとってもまた好ましからず。〔あなたは〕存している──第四〔の剣〕を跳び越して、第五〔の剣〕に妨げられた者として。ということで──

 

 ドゥッバチャ・ジャータカが、第六となる。

 

1. 12. 7. ティッティラ・ジャータカ(雉・本生物語117)

 

117. 極めて声高で、極めて饒舌で、限度を超えて語られた言葉は、思慮浅き者を殺す──鳴き過ぎた雉のように。ということで──

 

 ティッティラ・ジャータカが、第七となる。

 

1. 12. 8. ヴァッタカ・ジャータカ(鶉・本生物語118)

 

118. 思弁せずにいる人は、殊勝〔の境地〕に到達しない。見よ──思弁ある者の果を。殴打と結縛から解き放たれた者として、〔わたしは〕存している。ということで──

 

 ヴァッタカ・ジャータカが、第八となる。

 

1. 12. 9. アカーララーヴィ・ジャータカ(時ならぬ騒ぎ・本生物語119)

 

119. 母と父によって育て上げられず、師匠ならざる者の家に住している、この鶏は、〔鳴くべき〕時を、あるいは、〔鳴くべき〕時ならざるを、証知しない。ということで──

 

 アカーララーヴィ・ジャータカが、第九となる。

 

1. 12. 10. バンダナモッカ・ジャータカ(結縛からの解き放ち・本生物語120)

 

120. そこにおいて、愚者たちが語るなら、そこにおいて、結縛されていない者たちは結縛され、そこにおいて、慧者たちが語るなら、そこにおいて、結縛された者たちもまた解き放たれる。ということで──

 

 バンダナモッカ・ジャータカが、第十となる。

 

 『では、もし』の章が、第十二となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「そこで、まさしく、驢馬(驢馬の問い)と粉(アマラー妃の問い)と百の銅貨(野狐)があり、バフチンティン(ミタチンティン)とサーシカー(教示者)とともに、為すに過ぎたこと(頑固者)と『限度を超えて』(雉)と殊勝〔の境地〕(鶉)があり、まさしく、師匠ならざる者(時ならぬ騒ぎ)があり、『慧者たちが語る』とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

1. 13. クサナーリの章

 

1. 13. 1. クサナーリ・ジャータカ(クサナーリ・本生物語121)

 

121. 同等の者は為すであろう。そこで、あるいは、また、最勝の者も、あるいは、また、下劣の者も、同一に為すであろう。これらの者たちは、災厄において、最上の義(利益)を為すであろう。すなわち、クサナーリ〔樹の天神〕であるわたしが、ルチャ〔樹の天神〕のために〔為した〕ように。ということで──

 

 クサナーリ・ジャータカが、第一となる。

 

1. 13. 2. ドゥンメーダ・ジャータカ(思慮浅き者・本生物語122)

 

122. 思慮浅き者は、盛名を得て〔そののち〕、自己の義(利益)なきを行なう。そして、自己を、さらに、他者たちを、害するために〔道を〕実践する。ということで──

 

 ドゥンメーダ・ジャータカが、第二となる。

 

1. 13. 3. ナンガリーサ・ジャータカ(鋤の柄・本生物語123)

 

123. 愚者は、一切所において通用しない言葉を、一切所において語る。この者は、乳酪を〔知ら〕ず、鋤の柄を知らなかった。この者は、乳酪や牛乳を、鋤の柄と思いなす。ということで──

 

 ナンガリーサ・ジャータカが、第三となる。

 

1. 13. 4. アンバ・ジャータカ(アンバ・本生物語124)

 

124. 人は、まさしく、努めるべきである。賢者は、厭い離れるべきではない。見よ──努めることの果を。諸々のアンバ〔の果〕(マンゴー)が、〔人々の〕受益するところとなった──〔これは〕伝聞にあらず。ということで──

 

 アンバ・ジャータカが、第四となる。

 

1. 13. 5. カターハカ・ジャータカ(カターハカ・本生物語125)

 

125. 他の地方に赴いたとして、彼が、多くをもまた誇示するなら、帰還して〔そののち〕、〔他者たちを〕怒らせるであろう。カターハカよ、〔目の前にあるそれらの〕食べ物を、〔不平を言わずに〕受益しなさい。ということで──

 

 カターハカ・ジャータカが、第五となる。

 

1. 13. 6. アシラッカナ・ジャータカ(剣の特相・本生物語126)

 

126. まさしく、それは、或る者にとっては、善きこととなり、まさしく、それは、或る者にとっては、悪しきこととなる。それゆえに、一切は、善きことにあらず、あるいは、また、一切は、悪しきことにあらず。ということで──

 

 アシラッカナ・ジャータカが、第六となる。

 

1. 13. 7. カランドゥカ・ジャータカ(カランドゥカ・本生物語127)

 

127. それらの地があるなら、それらの地所がある。そして、わたしは、林を境涯とする者である。〔人は〕随知して〔そののち〕、まさに、あなたを捕捉するであろう。カランドゥカよ、牛乳を、〔吐き捨てずに〕飲み干しなさい。ということで──

 

 カランドゥカ・ジャータカが、第七となる。

 

1. 13. 8. ビラーラヴァタ・ジャータカ(山猫の掟・本生物語128)

 

128. 彼が、まさに、法(教え)を旗と為して、生類たちを信頼させて、悪を隠匿し、〔世を〕歩むなら、彼のことを、まさに、山猫の掟ある者と〔言う〕。ということで──

 

 ビラーラヴァタ・ジャータカが、第八となる。

 

1. 13. 9. アッギカバーラドヴァージャ・ジャータカ(祭火者バーラドヴァージャ・本生物語129)

 

129. この炎は、功徳の因にあらず。この炎は、食糧の因である。指で数えるに、〔終極に〕至らず。祭火者よ、あなたにとって、十分と成れ。ということで──

 

 アッギカバーラドヴァージャ・ジャータカが、第九となる。

 

1. 13. 10. コーシヤ・ジャータカ(コーシヤー・本生物語130)

 

130. そして、すなわち、言葉のとおりに、受益せよ。さらに、すなわち、受益したとおりに、語用せよ。コーシヤーよ、おまえの言葉は、そして、受益したものは、両者は合致せず。ということで──

 

 コーシヤ・ジャータカが、第十となる。

 

 クサナーリの章が、第十三となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「クサナーリという吉祥の呼び名あるものがあり、盛名(思慮浅き者)があり、そして、乳酪(鋤の柄)とアンバと第五のものとしてカターハカがあり、そこで、悪しきこと(剣の特相)と牛乳(カランドゥカ)と山猫の掟があり、炎(祭火者バーラドヴァージャ)があり、コーシヤという呼び名を有するものとともに、〔それらの〕十がある」と。

 

1. 14. 付与しないことの章

 

1. 14. 1. アサンパダーナ・ジャータカ(付与しないこと・本生物語131)

 

131. いかなるものをも付与しないことで、愚者にとって、朋友たちは、〔悪しき〕賽の目と成る。それゆえに、〔わたしは〕半マーナ(容積の単位・一マーナは八ナーリに相当)の籾殻を、〔損を承知で〕運び帰る。わたしの友情が老い朽ちることは、〔未来〕常久にあってはならない。ということで──

 

 アサンパダーナ・ジャータカが、第一となる。

 

1. 14. 2. ビールカ・ジャータカ(恐れる者・本生物語132)

 

132. 智者の忠告において、堅固なることで、かつまた、断固たることで、さらに、退転せず恐怖なく恐れなきことで、女羅刹たちの支配に至らなかった。大いなる恐怖から〔解き放たれ〕、わたしには、〔まさに〕その、安穏の状態がある。ということで──

 

 ビールカ・ジャータカが、第二となる。

 

1. 14. 3. ガターサナ・ジャータカ(火・本生物語133)

 

133. そこにおいては、平安が〔有るべくも〕、そこにおいて、敵が現われたのだ。水の真ん中に、火が燃え上がる。今日、大地の樹木に、住居はない。〔ここを捨てて〕方々へと親しみ行け(飛び去れ)。帰依あるがゆえに、今日、わたしたちに、恐怖が〔生じたのだ〕。ということで──

 

 ガターサナ・ジャータカが、第三となる。

 

1. 14. 4. ジャーナソーダナ・ジャータカ(瞑想を清めるもの・本生物語134)

 

134. 彼ら、表象ある者たち──彼らもまた、悪しき境遇の者たちである。また、彼ら、表象なき者たち──彼らもまた、悪しき境遇の者たちである。この両者を避けよ。〔まさに〕その、入定(等持)の安楽〔こそ〕は、穢れなきもの。ということで──

 

 ジャーナソーダナ・ジャータカが、第四となる。

 

1. 14. 5. チャンダーバ・ジャータカ(月光・本生物語135)

 

135. 月光に、さらに、日光に、彼が、この〔世において〕、智慧によって依って立つなら、思考()なき瞑想(禅・静慮:禅定の境地)によって、光音〔天〕へと近しく赴く者と成る。ということで──

 

 チャンダーバ・ジャータカが、第五となる。

 

1. 14. 6. スヴァンナハンサ・ジャータカ(黄金の鵞鳥・本生物語136)

 

136. それが得られたなら、それで満足するべきである。まさに、悪しきは、貪り過ぎである。鵞鳥(ハンサ・神が乗る鳥)の王を捕捉して、黄金〔の羽毛〕は遍く衰退した。ということで──

 

 スヴァンナハンサ・ジャータカが、第六となる。

 

1. 14. 7. バッブ・ジャータカ(猫・本生物語137)

 

137. そこにおいて、一者の猫が〔食べ物を〕得るなら、そこにおいて、第二の者が生じる──そして、第三の者が、さらに、第四の者が。それらの猫たちは、この穴を〔知らない〕。ということで──

 

 バッブ・ジャータカが、第七となる。

 

1. 14. 8. ゴーダ・ジャータカ(大蜥蜴・本生物語138)

 

138. 思慮浅き者よ、あなたにとって、諸々の結髪が、何になるというのだろう。あなたにとって、皮衣が、何になるというのだろう。あなたには、内なる収め取り(執着)がある。〔あなたは〕外に〔見てくれを〕繕っている。ということで──

 

 ゴーダ・ジャータカが、第八となる。

 

1. 14. 9. ウバトーバッタ・ジャータカ(両者ともに落伍した者・本生物語139)

 

139. 〔両の〕眼は朽ち果て、外衣は消え行き、そして、友の家では言い争いとなる。水に、そして、陸に、両者ともに汚れた生業となる。ということで──

 

 ウバトーバッタ・ジャータカが、第九となる。

 

1. 14. 10. カーカ・ジャータカ(烏・本生物語140)

 

140. 常に心臓が戦慄し、一切の世の悩害ある者たち──それゆえに、彼らに、膏(脂肪)は存在しない──わたしたち、烏の親族たちには。ということで──

 

 カーカ・ジャータカが、第十となる。

 

 付与しないことの章が、第十四となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「いかなるもの(付与しないこと)と女羅刹(恐れる者)と平安なるもの(火)があり、そして、百を超える問い(瞑想を清めるもの)とともに、光音〔天〕(月光)があり、さらに、そこで、優れた最上の鵞鳥(黄金の鵞鳥)と猫と結髪(大蜥蜴)があり、外衣が消え行った者(両者ともに落伍した者)と優れた烏とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

1. 15. 色蜥蜴の章

 

1. 15. 1. ゴーダ・ジャータカ(大蜥蜴・本生物語141)

 

141. 悪しき人に慣れ親しむ者は、結局のところ、安楽に満ち栄えない。大蜥蜴の家を〔滅ぼした〕色蜥蜴たちのように、自己を〔悪しき〕賽の目に至り得させる。ということで──

 

 ゴーダ・ジャータカが、第一となる。

 

1. 15. 2. シンガーラ・ジャータカ(野狐・本生物語142)

 

142. まさに、あなたの、このことは、了知し難きこと。すなわち、〔あなたは〕臥す──臥している死者となり。すなわち、引っ張っているのに、あなたの手から、棒は解き放たれない。ということで──

 

 シンガーラ・ジャータカが、第二となる。

 

1. 15. 3. ヴィローチャナ・ジャータカ(遍照・本生物語143)

 

143. おまえの、そして、脳は裂け、かつまた、頭は砕かれた。おまえの、全ての肋骨は破壊された。今日、まさに、おまえは遍照する。ということで──

 

 ヴィローチャナ・ジャータカが、第三となる。

 

1. 15. 4. ナングッタ・ジャータカ(尾・本生物語144)

 

144. 品なき火神よ、たとえ、これほど多くあるも、すなわち、〔わたしたちは〕あなたを、尾で供養する。肉に値する者であるのに、今日、肉は存在しない。貴君は、たとえ、尾でも、納受したまえ。ということで──

 

 ナングッタ・ジャータカが、第四となる。

 

1. 15. 5. ラーダ・ジャータカ(ラーダ・本生物語145)

 

145. ラーダよ、あなたは識知しない──真夜中に〔何があったかを〕、未来に〔何があるかを〕。明敏ならざることに、〔あなたは〕悲嘆する──〔わたしたちの母である〕コーシヤーヤニーは、〔もはや、父を〕見限ったのだ。ということで──

 

 ラーダ・ジャータカが、第五となる。

 

1. 15. 6. サムッダカーカ・ジャータカ(海と烏・本生物語146)

 

146. はてさて、また、顎は疲れ、なおかつ、口は遍く干上がる。これで止めよう、これ以上はできない。大海は、まさしく、満ち溢れている。ということで──

 

 サムッダカーカ・ジャータカが、第六となる。

 

1. 15. 7. プッパラッタ・ジャータカ(花染め・本生物語147)

 

147. これは、苦しみにあらず。それは、苦しみである。すなわち、烏が、わたしを刺すのは、〔苦しみにあらず〕。すなわち、サーマーの花で染められた〔衣〕で、カッティカ〔祭〕を楽しめないのは、〔苦しみである〕。ということで──

 

 プッパラッタ・ジャータカが、第七となる。

 

1. 15. 8. シンガーラ・ジャータカ(野狐・本生物語148)

 

148. ふたたびはなく、さらなる、ふたたびもなく、さらなる、ふたたびのふたたびもまたない──わたしが、象の体内に入るであろうことは。なぜなら、そのように、恐怖に怯えたからである。ということで──

 

 シンガーラ・ジャータカが、第八となる。

 

1. 15. 9. エーカパンナ・ジャータカ(一葉・本生物語149)

 

149. この木は、〔いまだ〕一葉にして、地からは、四アングラ(長さの単位・一アングラは約二センチ)もない。毒に類する果とともに、この〔木〕は、どのように、大きく成るのであろう(恐ろしいことである)。ということで──

 

 エーカパンナ・ジャータカが、第九となる。

 

1. 15. 10. サンジーヴァ・ジャータカ(サンジーヴァ・本生物語150)

 

150. 彼が、正しからざる者に差し出し、そして、正しからざる者に仕え親しむなら、まさしく、彼を、〔正しからざる者は〕食糧と為す──あたかも、生き返った虎のように。ということで──

 

 サンジーヴァ・ジャータカが、第十となる。

 

 色蜥蜴の章が、第十五となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「『安楽に満ち栄え〔ない〕』(大蜥蜴)と優れた棒(野狐)があり、そして、さらに、脳(遍照)と尾と第五に優れたラーダがあり、大海(海と烏)とカッティカ〔祭〕(花染め)と体内(野狐)を有するものがあり、さらに、四アングラ(一葉)と優れた虎(サンジーヴァ)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

 〔以上が〕最後の五十なるものとなる。

 

 そこで、章の摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「誤解なきものがあり、戒の章と羚羊と雛鳥があり、第五に義を欲する者とともに、願い求める者があり、婦女とヴァルナがあり、『飲んだ』があり、塗られたものの章とともに、それらの十があり、百を超える者があり、『では、もし』とクサナーリと付与しないことと色蜥蜴の章があり、一なるものの集まりにおいて、〔以上が〕十分に作り為された」と。

 

 一なるものの集まりは〔以上で〕終了となる。

 

2. 二なるものの集まり

 

2. 1. 堅固の章

 

2. 1. 1. ラージョーヴァーダ・ジャータカ(王の教諭・本生物語151)

 

1. 〔一方の馭者に、一方の馭者が言った〕「バッリカは、堅固なるものには、堅固なるものを投げ放ち、柔和なるものによって、柔和なるものに〔勝利する〕。善によって、善にもまた勝利し、不善によって、不善にもまた〔勝利する〕。このような者として、この王はある。馭者よ、道から出て行け」〔と〕。

 

2. 〔一方の馭者に、一方の馭者が言った〕「忿激なきによって、忿激に勝つのだ。善によって、不善に勝つのだ。布施によって、吝嗇に勝つのだ。真理()によって、偽りを説く者に〔勝つのだ〕。このような者として、この王はある。馭者よ、道から出て行け」〔と〕。ということで──

 

 ラージョーヴァーダ・ジャータカが、第一となる。

 

2. 1. 2. シンガーラ・ジャータカ(野狐・本生物語152)

 

3. やっていることをまともに見ず、あせってやりくりする者を、諸々の自らの行為()が悩み苦しめる──口に飲み入れた熱〔湯〕のように。

 

4. そして、獅子は、獅子の咆哮をもって、ダッダラ〔山〕に咆哮した。獅子の鳴き声を聞いて、ダッダラ〔山〕に住している野狐(ジャッカル)は、恐怖し、恐慌を起こした。そして、彼の心臓は、張り裂けた。ということで──

 

 シンガーラ・ジャータカが、第二となる。

 

2. 1. 3. スーカラ・ジャータカ(猪・本生物語153)

 

5. 〔獅子に、猪が言った〕「友よ、わたしは、四つ足である。友よ、あなたもまた、四つ足である。友よ、さあ、戻ってきたまえ。いったい、何に恐怖し、〔あなたは〕逃げるのだ」〔と〕。

 

6. 〔猪に、獅子が言った〕「猪よ、〔あなたは〕不浄で、腐った毛の者として存し、悪臭がただよう。それで、もし、〔あなたが〕戦いを欲する者として存するなら、友よ、あなたに勝利を与えよう」〔と〕。ということで──

 

 スーカラ・ジャータカが、第三となる。

 

2. 1. 4. ウラガ・ジャータカ(蛇・本生物語154)

 

7. 〔金翅鳥が言った〕「ここに入ってきたのは、蛇たちのなかの最も優れた者である──宝石の姿になることで、〔窮地からの〕解き放ちを求めている。そして、梵の姿を敬恭している〔わたし〕は、〔蛇を〕食べたいのに食べることができない(※)」〔と〕。

 

※ テキストには vitarāmi とあるが、PTS版により visahāmi と読む。

 

8. 〔菩薩は言った〕「彼(蛇)は、梵に守られた者である──生きよ、まさしく、長きにわたり。そして、あなた(金翅鳥)には、諸々の天の食物が出現せよ。すなわち、梵の姿を敬恭している〔あなた〕は、〔蛇を〕食べたいのに食べることを否認する」〔と〕。ということで──

 

 ウラガ・ジャータカが、第四となる。

 

2. 1. 5. バッガ・ジャータカ(バッガ・本生物語155)

 

9. 〔菩薩は言った〕「バッガよ、百年のあいだ、生きよ──さらに、他に、二十〔年〕を。魔物たちは、わたしを喰ってはならない。百秋のあいだ、あなたは生きよ」〔と〕。

 

10. 〔バッガが言った〕「あなたもまた、百年のあいだ、生きよ──さらに、他に、二十〔年〕を。魔物たちは、毒を喰らえ。百秋のあいだ、あなたは生きよ」〔と〕。ということで──

 

 バッガ・ジャータカが、第五となる。

 

2. 1. 6. アリーナチッタ・ジャータカ(畏縮なき心・本生物語156)

 

11. 畏縮なき心に依拠して、〔勇躍し〕欣喜した大軍は、〔自身の〕軍団に満足しないコーサラ〔王〕を、生け捕りにして捕捉した。

 

12. このように、依拠〔の対象〕を成就した比丘は、精進に励む者となり、束縛からの平安に至り得るために善なる法(性質)を修めながら、順次に、〔彼は〕至り得るであろう──〔すなわち〕一切の束縛するものの滅尽に。ということで──

 

 アリーナチッタ・ジャータカが、第六となる。

 

2. 1. 7. グナ・ジャータカ(徳・本生物語157)

 

13. 雌獣よ、すなわち、欲するままに追い出すなら、〔その〕法(性質)は、力の掟である。吼え叫ぶ者よ、識知せよ。帰依あるがゆえに、恐怖は生じたのだ。

 

14. たとえ、また、もし、力弱き朋友なるも、朋友の諸法(性質)において依って立つなら、彼は、そして、親族であり、さらに、眷属であり、彼は、朋友であり、そして、彼は、わたしにとって、友人である。牙ある者よ、軽んじてはならない。野狐は、わたしにとって、命の恩人である。ということで──

 

 グナ・ジャータカが、第七となる。

 

2. 1. 8. スハヌ・ジャータカ(スハヌ・本生物語158)

 

15. これは、戒として不同ならず。ソーナと共に、スハヌはある。スハヌもまた、まさしく、そのような者としてある。すなわち、ソーナにとって、境涯を共にする者としてある。

 

16. 傲岸なることで、尊大なることで、常に手綱を咬むことで、悪しきものは、悪しきものと合致し、正しからざるものは、正しからざるものと合致する。ということで──

 

 スハヌ・ジャータカが、第八となる。

 

2. 1. 9. モーラ・ジャータカ(孔雀・本生物語159)

 

17. 「〔まさに〕この、〔世の〕眼たる、一なる王が昇り行く──地を光り輝かす、金色〔の太陽〕が。〔まさに〕その、あなたを、地を光り輝かす金色〔の太陽〕を、〔わたしは〕礼拝する。〔わたしたちは〕あなたに守られ、今日の昼を〔無事平穏に〕暮らすのだ。

 彼ら、婆羅門たちは、一切の法(性質)における〔真の〕知に至る者たちである。彼らは、わたしの礼拝を〔受けたまえ〕。そして、彼らは、わたしを守りたまえ。覚者たちに、礼拝が存せ。覚り(菩提)に、礼拝が存せ。解脱者たちに、礼拝〔が存せ〕。解脱に、礼拝〔が存せ〕」〔と〕。その孔雀は、この護呪を為して、〔餌を〕探しに歩む。

 

18. 「〔まさに〕この、〔世の〕眼たる、一なる王が離れ去る──地を光り輝かす、金色〔の太陽〕が。〔まさに〕その、あなたを、地を光り輝かす金色〔の太陽〕を、〔わたしは〕礼拝する。〔わたしたちは〕あなたに守られ、今日の夜を〔無事平穏に〕暮らすのだ。

 彼ら、婆羅門たちは、一切の法(性質)における〔真の〕知に至る者たちである。彼らは、わたしの礼拝を〔受けたまえ〕。そして、彼らは、わたしを守りたまえ。覚者たちに、礼拝が存せ。覚りに、礼拝が存せ。解脱者たちに、礼拝〔が存せ〕。解脱に、礼拝〔が存せ〕」〔と〕。その孔雀は、この護呪を為して、住を営んだ。ということで──

 

 モーラ・ジャータカが、第九となる。

 

2. 1. 10. ヴィニーラ・ジャータカ(青黒き者・本生物語160)

 

19. 〔ヴィニーラが言った〕「まさしく、このように、まちがいなく、ミティラーを収め取るヴェーデーハ王を、善き生まれの馬たちは運び行く──すなわち、〔この〕ヴィニーラ様を、鵞鳥(ハンサ・神が乗る鳥)たちが〔運び行く〕ように」〔と〕。

 

20. 〔鵞鳥たちの父が言った〕「ヴィニーラよ、〔あなたは〕悪路に親しみ行く。親愛なる者よ、〔あなたは〕非地に慣れ親しむ。村々の外れに慣れ親しめ。〔まさに〕この、あなたの母の居る所に」〔と〕。ということで──

 

 ヴィニーラ・ジャータカが、第十となる。

 

 堅固の章が、第一となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「優れたバッリカ(王の教諭)とダッダラ(野狐)と猪があり、最上の蛇と第五に優れたバッガがあり、まさしく、大軍(畏縮なき心)とともに、優れた野狐(徳)があり、最上のスハヌと孔雀と青黒きものがあり、〔それらの〕十がある」と。

 

2. 2. 親愛の章

 

2. 2. 1. インダサマーナゴッタ・ジャータカ(インダサマーナゴッタ・本生物語161)

 

21. 義(利益)を覚知している聖者は、聖ならざる悪しき人士とは、親愛〔の情〕を為さぬもの。たとえ、長く〔共に〕住したとして、〔悪しき者は〕悪しき〔行為〕を為す──〔狂った〕象が、インダサマーナゴッタに〔為した〕ように。

 

22. まさしく、しかし、彼のことを、戒によって、智慧によって、さらに、また、所聞(学識)によっても、「わたしと同等の者である」と知るなら、まさしく、彼を相手に、友情を為すべきである。安楽なるは、まさに、正なる人士との交際である。ということで──

 

 インダサマーナゴッタ・ジャータカが、第一となる。

 

2. 2. 2. サンタヴァ・ジャータカ(親愛・本生物語162)

 

23. 親愛〔の情〕より、より悪しきものは、他に存在しない──その親愛〔の情〕が、悪しき人士とともに有るなら。酥の粥によって満足させられたとして、難渋して作った柴小屋を焼かれてしまった。

 

24. 親愛〔の情〕より、より勝るものは、他に存在しない──その親愛〔の情〕が、正なる人士とともに有るなら。黒い雌〔鹿〕は、獅子の顔を、そして、虎の〔顔を〕、さらに、豹の〔顔を〕、親愛〔の情〕をもって舐めている。ということで──

 

 サンタヴァ・ジャータカが、第二となる。

 

2. 2. 3. スシーマ・ジャータカ(スシーマ・本生物語163)

 

25. 〔菩薩は言った〕「あなたのものである、金の網に覆われた、百を超える、これらの白い牙をした黒い獣たち。スシーマよ、『それらを、〔わたしは〕あなたに施す』と、〔あなたは〕説く──父祖代々のことを思い浮かべながら」〔と〕。

 

26. 〔スシーマが言った〕「わたしのものである、金の網に覆われた、百を超える、これらの白い牙をした黒い獣たち。学徒よ、『それらを、〔わたしは〕あなたに施す』と、〔わたしは〕説く──父祖代々のことを思い浮かべながら」〔と〕。ということで──

 

 スシーマ・ジャータカが、第三となる。

 

2. 2. 4. ギッジャ・ジャータカ(鷲・本生物語164)

 

27. 〔王が尋ねた〕「はてさて、すなわち、鷲は、百ヨージャナ(由旬:長さの単位・軛牛の一日の旅程距離)にわたり、諸々の死骸を注視するのに、何ゆえに、かつまた、網も、かつまた、罠も、〔それらに〕近づいてもなお、〔それらを〕覚らないのか」〔と〕。

 

28. 〔菩薩は答えた〕「すなわち、生命の消滅あるときに、人が、滅びの者と成るとき、そこで、かつまた、網も、かつまた、罠も、〔それらに〕近づいてもなお、〔それらを〕覚らないのです」〔と〕。ということで──

 

 ギッジャ・ジャータカが、第四となる。

 

2. 2. 5. ナクラ・ジャータカ(鼬・本生物語165)

 

29. 〔菩薩は尋ねた〕「胎生の者(鼬)よ、卵生の者である朋友ならざる者(蛇)と関係を為しておきながら、〔おまえは〕牙を顕わにして〔地に〕臥す(せっかく仲良くなったのに警戒を解かない)。どこから、おまえに、恐怖がやってきたのか」〔と〕。

 

30. 〔鼬が答えた〕「朋友ならざる者にたいしては、まさしく、疑うべきである。朋友にたいしてもまた、信頼するべきではない。恐怖なきところから、恐怖が生起し、諸々の根をもまた折る」〔と〕。ということで──

 

 ナクラ・ジャータカが、第五となる。

 

2. 2. 6. ウパサーラカ・ジャータカ(ウパサーラカ・本生物語166)

 

31. ウパサーラカという名の四万の者たちが、この地域において、焼かれたのだ。世において、死ならざるものは存在しない。

 

32. その〔地域〕において、かつまた、真理があり、かつまた、法(正義)があり、不害があり、自制があり、調御があるなら、聖者たちは、これに慣れ親しむ。これは、世において、死ならざるものである。ということで──

 

 ウパサーラカ・ジャータカが、第六となる。

 

2. 2. 7. サミッディ・ジャータカ(サミッディ・本生物語167)

 

33. 〔天女が言った〕「比丘よ、〔あなたは〕食べずして行乞します。まさに、〔あなたは〕食べて〔そののち〕行乞しません。比丘よ、食べて〔そののち〕行乞するのです。時が、あなたを過ぎ行くことがあってはいけません」〔と〕。

 

34. 〔菩薩は言った〕「まさに、〔死の〕時を、わたしは知りません。〔死の〕時は覆われ、見られません。それゆえに、〔わたしは〕食べずして行乞します。時が、わたしを過ぎ行くことがあってはいけません」〔と〕。ということで──

 

 サミッディ・ジャータカが、第七となる。

 

2. 2. 8. サクナッギ・ジャータカ(鷹・本生物語168)

 

35. 〔世尊は言った〕「〔無知なる〕鷹は、力まかせに降下しながら、餌場に立つ鶉へと、まさしく、一気に到達し、それによって、死へと近しく赴いた」〔と〕。

 

36. 〔菩薩は言った〕「〔まさに〕その、わたしは、方法を成就した者であり、父祖の境涯に喜びある者であり、賊から離れた者となり、歓喜する──自己の義(利益)を正しく見ながら」〔と〕。ということで──

 

 サクナッギ・ジャータカが、第八となる。

 

2. 2. 9. アラカ・ジャータカ(アラカ・本生物語169)

 

37. 彼が、まさに、慈愛の心によって、一切の世〔の人々〕を慈しむなら──上に、さらに、下に、横に、無量なる〔慈愛の心〕によって、全てにあまねく──

 

38. 心は、無量なるものとなり、利益あるものとなり、円満成就されたものとなり、善く修められたものとなる。すなわち、量あるものとして為された行為()は、それは、そこに残存しない(未来に果を結ぶ)。ということで──

 

 アラカ・ジャータカが、第九となる。

 

2. 2. 10. カカンタカ・ジャータカ(色蜥蜴・本生物語170)

 

39. 〔ヴェーデーハ王が尋ねた〕「楼門の先端にいる、この色蜥蜴は、かつては、傲慢とならず。マホーサダ(菩薩)よ、識知せよ。何をもって、色蜥蜴は、強情となったのか」〔と〕。

 

40. 〔菩薩は答えた〕「半月のあいだ、過去に得たことなき〔肉〕を得て、色蜥蜴は、ミティラーを収め取るヴェーデーハ王を軽んじるのです」〔と〕。ということで──

 

 カカンタカ・ジャータカが、第十となる。

 

 親愛の章が、第二となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「そこで、インダサマーナ(インダサマーナゴッタ)と柴小屋(親愛)を有するものがあり、最上のスシーマと鷲と胎生の者(鼬)があり、ウパサーラカと比丘(サミッディ)と優れた鶉(鷹)があり、そこで、優れた慈愛(アラカ)があり、『傲慢となら〔ず〕』(色蜥蜴)もまたあり、〔それらの〕十がある」と。

 

2. 3. 善きことの章

 

2. 3. 1. カルヤーナダンマ・ジャータカ(善き法・本生物語171)

 

41. 人のインダ(国王)よ、「善き法(性質)の者」という、世における呼称を獲得する、そのとき、智慧を有する人は、その〔境位〕から退失するべきにあらず。正しくある者たちは、恥〔の思い〕によってもまた、重荷を取る(重責を担う)。

 

42. 人のインダよ、「善き法(性質)の者」という、世における、〔まさに〕その、この呼称は、ここに、今日、わたしによって至り得るところとなった。その〔境位〕を正視しながら、ここに、わたしは出家するであろう。ここに、欲望の享受にたいする、わたしの欲〔の思い〕は、まさに、存在せず。ということで──

 

 カルヤーナダンマ・ジャータカが、第一となる。

 

2. 3. 2. ダッダラ・ジャータカ(ダッダラ・本生物語172)

 

43. 〔子が尋ねた〕「ダッダラ〔山〕に、大きな声で咆哮するのは、いったい、誰なのですか。獅子たちは、彼を喜びません。獣たちの征服者よ、この者は、まさに、誰なのですか」〔と〕。

 

44. 〔菩薩は答えた〕「息子よ、獣として生まれた者たちのなかの最低の者、野狐(ジャッカル)が吠えている。彼の〔卑しい〕生まれを忌避しながら、獅子たちは、沈黙し、共に坐している(相手にせず無視している)」〔と〕。ということで──

 

 ダッダラ・ジャータカが、第二となる。

 

2. 3. 3. マッカタ・ジャータカ(猿・本生物語173)

 

45. 〔子が言った〕「父よ、この学徒さんは、ターラ〔樹〕の根に寄り掛かっています。さてまた、〔わたしたちには〕この小屋が存します。さあ、彼に、小屋を与えましょう(小屋に入れてあげよう)」〔と〕。

 

46. 〔菩薩は言った〕「息子よ、まさに、おまえは、〔彼を〕呼んではならない。〔彼は〕わたしたちの小屋を汚してしまう。善き戒ある婆羅門に、このような顔は有りえない(婆羅門の衣を着た猿である)」〔と〕。ということで──

 

 マッカタ・ジャータカが、第三となる。

 

2. 3. 4. ドゥッビヤマッカタ・ジャータカ(裏切り者の猿・本生物語174)

 

47. 〔菩薩は言った〕「炎暑に焼かれ涸渇している者にとって、多大なる形態あるものを、〔すなわち〕水を、〔わたしは〕あなたに与えた。その〔あなた〕は、今や、〔水を〕飲んで、キーと〔声を〕為した。悪しき人とは交際なくあるのが、より勝っている」〔と〕。

 

48. 〔猿が言った〕「どのような猿が、まさに、戒ある者だと、おまえは、あるいは、聞き、あるいは、見たのかい。今や、まさに、おまえに糞してやるよ。これが、わたしたちにとって、法(性質)たることなのだ」〔と〕。ということで──

 

 ドゥッビヤマッカタ・ジャータカが、第四となる。

 

2. 3. 5. アーディッチュパッターナ・ジャータカ(太陽への奉仕・本生物語175)

 

49. 〔人々が言った〕「まさに、一切の生類のうちには、戒によって〔心が〕定められた者たちが存在する。見よ──卑しむべき猿を。〔彼は〕太陽に奉仕する」〔と〕。

 

50. 〔菩薩は言った〕「彼の戒を、〔あなたたちは〕識知しない。了知せずして、〔あなたたちは〕賞賛する。そして、祭火への捧げものには糞をされ、さらに、二つの水瓶が壊されたのだ」〔と〕。ということで──

 

 アーディッチュパッターナ・ジャータカが、第五となる。

 

2. 3. 6. カラーヤムッティ・ジャータカ(拳のなかの大豆・本生物語176)

 

51. 木の枝を餌場とする、この〔猿〕は、まさに、愚者である。人のインダ(国王)よ、この者に、智慧は見出されない。拳のなかの大豆の全部を振りまいて、落ちた一つの大豆を探し求める。

 

52. 王よ、まさしく、このように、わたしたちは、さらに、すなわち、他の貪り過ぎの者たちも、少なきによって、多きを失う──猿が、〔一つの〕大豆によって、〔全部の大豆を失う〕ように。ということで──

 

 カラーヤムッティ・ジャータカが、第六となる。

 

2. 3. 7. ティンドゥカ・ジャータカ(ティンドゥカ・本生物語177)

 

53. 〔猿たちが尋ねた〕「弓を手にする矢束ある者たちに、鋭い剣を保持する者たちに、遍きにわたり取り囲まれ、〔わたしたちは〕存しています。どのように、〔わたしたちに〕解き放ちが有るのでしょうか」〔と〕。

 

54. 〔菩薩は答えた〕「まさしく、たぶん、多くの為すべきことある者たちには、何らかの義(目的)が生じるであろう(そのうち別の用事ができていなくなる)。木には、もがれていない〔果〕が存在する。まさしく、他の、ティンドゥカ〔樹の果〕を喰うのだ」〔と〕。ということで──

 

 ティンドゥカ・ジャータカが、第七となる。

 

2. 3. 8. カッチャパ・ジャータカ(亀・本生物語178)

 

55. 〔亀が言った〕「わたしが生まれるところであり、わたしが有るところであり、かくのごとく、泥のなかで、〔わたしは〕過ごしてきた。そのわたしを、泥は征服した──あたかも、力弱き者を〔征服する〕ように、そのように。破壊者よ、それを、あなたに、〔わたしは〕説く。わたしの言葉を聞きなさい」〔と〕。

 

56. 〔菩薩は言った〕「もしくは、村であろうが、林であろうが、そこにあって、安楽に到達するなら、それが、覚知している人にとっての、生まれるところとなり、さらに、有るところとなる。そこで、生きるべきであるなら、そこに、赴くべきである。家に殺される者として存するべきではない」〔と〕。ということで──

 

 カッチャパ・ジャータカが、第八となる。

 

2. 3. 9. サタダンマ・ジャータカ(サタダンマ・本生物語179)

 

57. 〔サタダンマが言った〕「そして、それを、そして、少しの残り物を、そして、それを、渋々ながら、わたしたちに施した。〔まさに〕その、わたしは、婆羅門を生まれとする者である。〔まさに〕その、食べたものを、それをまた、吐き戻したのだ」〔と〕。

 

58. 〔菩薩は言った〕「このように、法(正義)を無視して、彼が、法(正義)ならざるものによって生きるなら、サタダンマのように、たとえ、利得が得られたとして、〔それを〕喜ばない」〔と〕。ということで──

 

 サタダンマ・ジャータカが、第九となる。

 

2. 3. 10. ドゥッダダ・ジャータカ(施し難きもの・本生物語180)

 

59. 施し難きものを施している者たちに、為し難き行為を為している者たちに、正しからざる者たちは従わない。正しくある者たちの法(性質)は、捉えどころがない。

 

60. それゆえに、そして、正しくある者たちと正しからざる者たちには、ここから赴く所()として、種々なる〔境遇〕が有る。正しからざる者たちは、地獄に行き、正しくある者たちは、天上を行き着く所とする。ということで──

 

 ドゥッダダ・ジャータカが、第十となる。

 

 善きことの章が、第三となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「見事な呼称(善き法)と獣たちの征服者(ダッダラ)と学徒さん(猿)があり、多大なる形態の水(裏切り者の猿)と太陽への奉仕があり、大豆(拳のなかの大豆)を有するものとティンドゥカを有するものと泥(亀)があり、さらに、サタダンマがあり、見事な施し難きものとともに、〔それらの〕十がある」と。

 

2. 4. アサディサの章

 

2. 4. 1. アサディサ・ジャータカ(アサディサ・本生物語181)

 

61. アサディサ王子は、大力ある弓の使い手にして、遠くを射落とし瞬時に貫く、巨体を破り裂く者である。

 

62. 全ての朋友ならざる者たちに相克を為して(征伐して)、そして、誰であれ悩まさず、兄弟を安穏と為して、自制に到達した。ということで──

 

 アサディサ・ジャータカが、第一となる。

 

2. 4. 2. サンガーマーヴァチャラ・ジャータカ(戦場を行境とする者・本生物語182)

 

63. 戦場を行境とする勇士にして、力ある者として、かくのごとく〔世に〕聞こえた〔おまえ〕が、象よ、いったい、どうして、楼門に近づいて、戻ってしまうのか。

 

64. すみやかに、閂を踏み潰せ。さらに、諸々の石柱を引き抜け。象よ、そして、諸々の楼門を踏み潰して、すみやかに、入り行け。ということで──

 

 サンガーマーヴァチャラ・ジャータカが、第二となる。

 

2. 4. 3. ヴァーローダカ・ジャータカ(汚れた水・本生物語183)

 

65. 劣悪で、少味なる、汚れた水を飲んでも、驢馬たちに、酔いは生じる。しかしながら、この精妙なる味あるものを飲んでも、シンダヴァ(シンドゥ産の良馬)たちに、酔いは生じない。

 

66. 人のインダよ、劣悪な生まれの者は、少しのものを飲んでも、それに侵され、彼は酔う。しかしながら、良家に生まれた忍耐強く戒ある者は、至高の味あるものを飲んでも、酔うことがない。ということで──

 

 ヴァーローダカ・ジャータカが、第三となる。

 

2. 4. 4. ギリダッタ・ジャータカ(ギリダッタ・本生物語184)

 

67. サーマの馬、パンダヴァは汚された──〔調教師の〕ギリダッタによって。過去の性向を捨棄して、まさしく、彼(ギリダッタ)に追随する。

 

68. しかしながら、それで、もし、頭頂まで行相が整った痩躯の男が、彼(パンダヴァ)を、口において収め取って(手綱を取って)、円形〔の馬場〕を遍く転じ行かせるなら、まさしく、すみやかに、〔パンダヴァは、悪癖を〕打破して、まさしく、彼(痩躯の男)に追随する。ということで──

 

 ギリダッタ・ジャータカが、第四となる。

 

2. 4. 5. アナビラティ・ジャータカ(不満・本生物語185)

 

69. すなわち、水が清らかではなく濁っているとき、牡蠣貝を、さらに、小石も、砂礫も、魚群も、〔何であれ〕見ないように、このように、心が濁っているとき、自己の義(利益)も、他者の義(利益)も、〔両者ともに〕見ない。

 

70. すなわち、水が清らかで澄んでいるとき、彼は、牡蠣貝を、さらに、小石も、砂礫も、魚群も、〔何であれ〕見るように、このように、心が濁っていないとき、彼は、自己の義(利益)も、他者の義(利益)も、〔両者ともに〕見る。ということで──

 

 アナビラティ・ジャータカが、第五となる。

 

2. 4. 6. ダディヴァーハナ・ジャータカ(ダディヴァーハナ・本生物語186)

 

71. 〔王が尋ねた〕「かつて、このアンバ〔樹の果〕(マンゴー)は、色艶と香りと味を具したものとして有った。まさしく、その、〔丁重なる〕供養を得ながら(世話されているにもかかわらず)、何によって、アンバ〔樹〕は、辛き果をもつのか」〔と〕。

 

72. 〔菩薩は答えた〕「ダディヴァーハナよ、プチマンダ〔樹〕を取り巻きとする、あなたのアンバ〔樹〕は、根と根が交わり合い、枝と枝が慣れ親しみ、不快なるものとの共住によって、それによって、アンバ〔樹〕は、辛き果をもつのです」〔と〕。ということで──

 

 ダディヴァーハナ・ジャータカが、第六となる。

 

2. 4. 7. チャトゥマッタ・ジャータカ(四つの艶ある者・本生物語187)

 

73. 〔野狐が言った〕「上で、木の枝に登って、静所に赴き、〔あなたたちは〕話し合います。下に降りて、話し合いましょう。獣の王もまた、聞くでしょう」〔と〕。

 

74. 〔菩薩は言った〕「すなわち、善き色艶の者は、善き色艶の者と、天〔の神〕は、天〔の神〕と、話し合うもの。ここにおいて、おまえなど、四つの艶ある者にとって、何になるというのだ。野狐よ、穴に入れ」〔と〕。ということで──

 

 チャトゥマッタ・ジャータカが、第七となる。

 

2. 4. 8. シーハコットゥ・ジャータカ(獅子と野狐・本生物語188)

 

75. 獅子の指があり、獅子の爪があり、獅子の足で立つ、その獅子は、獅子たちの群れにおいて、独り、他なるものとして咆哮する。

 

76. 王子よ、おまえは、咆哮してはならない。林のなかで、音声少なく住しなさい。声によって、まさに、おまえのことを、〔他の者たちは〕知るであろう。なぜなら、おまえの声は、父祖のものではないのだから。ということで──

 

 シーハコットゥ・ジャータカが、第八となる。

 

2. 4. 9. シーハチャンマ・ジャータカ(獅子の皮・本生物語189)

 

77. この咆哮は、獅子のものにあらず、虎のものにあらず、豹のものにあらず。獅子の皮を着た卑しむべき驢馬が、咆哮する。

 

78. 驢馬は、長きに、また、まさに、その新鮮な麦を喰えるのに、獅子の皮を着た者は、まさしく、絶叫しながら、〔自らを〕汚してしまった(自滅した)。ということで──

 

 シーハチャンマ・ジャータカが、第九となる。

 

2. 4. 10. シーラーニサンサ・ジャータカ(戒の福利・本生物語190)

 

79. 見よ──信によって、戒ある者の、かつまた、施捨ある者の、この果を。龍は、舟の姿で、信ある在俗信者を運ぶ。

 

80. まさしく、正しくある者たちと、親交するように。正しくある者たちと、親愛を為すように。正しくある者たちとの共住によって、理髪師は、〔無事〕安穏に赴く。ということで──

 

 シーラーニサンサ・ジャータカが、第十となる。

 

 アサディサの章が、第四となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「弓の使い手(アサディサ)と象(戦場を行境とする者)と少味(汚れた水)があり、ギリダッタと優れた濁っていない心(不満)があり、ダディヴァーハナと野狐(四つの艶ある者)と獅子の爪(獅子と野狐)があり、新鮮な麦(獅子の皮)と優れた龍(戒の福利)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

2. 5. ルハカの章

 

2. 5. 1. ルハカ・ジャータカ(ルハカ・本生物語191)

 

81. 〔菩薩は言った〕「さて、ルハカよ、たとえ、切断されたとして、弦は、ふたたび結ばれる。以前〔の妻〕と結ばれよ。忿激の支配に赴いてはならない」〔と〕。

 

82. 〔ルハカが言った〕「諸々の樹皮が見出されているとき、諸々の作り手が見出されているとき、〔わたしは〕他の弦を作ります。以前のものは、もう、十分です」〔と〕。ということで──

 

 ルハカ・ジャータカが、第一となる。

 

2. 5. 2. シリカーラカンニ・ジャータカ(吉祥と黒耳・本生物語192)

 

83. 〔ヴェーデーハ王が尋ねた〕「婦女が、形姿ある者として存し、かつまた、彼女が、戒ある者として存するも、男は、彼女を求めない。マホーサダ(菩薩)よ、信じるか」〔と〕。

 

84. 〔菩薩は答えた〕「大王よ、〔わたしは〕信じます。男は、不吉の者として存しています。そして、吉祥の〔女〕は、さらに、黒耳の〔男〕は、〔彼らは〕合致しません──いついかなる時も」〔と〕。ということで──

 

 シリカーラカンニ・ジャータカが、第二となる。

 

2. 5. 3. チューラパドゥマ・ジャータカ(小蓮華・本生物語193)

 

85. この者こそは、〔まさに〕その〔女〕である。わたしもまた、〔まさに〕その者であり、他者にあらず。この者こそは、〔まさに〕その、手が切断された者であり、他者にあらず。すなわち、〔女は、この男のことを〕「わたしの、若々しい亭主です」と言う。屠殺されるべきは、婦女たちである。婦女たちに、真理(:真実)は存在しない(平気で嘘をつく)。

 

86. そして、この卑しむべき〔男〕を、他者の妻に仕え親しむ残忍な屍を、棍棒で打ち殺して、さらに、悪しき亭主に掟あるこの〔女〕の、〔まさに〕その、耳と鼻を、生きながら、断ち切れ。ということで──

 

 チューラパドゥマ・ジャータカが、第三となる。

 

2. 5. 4. マニチョーラ・ジャータカ(宝珠の盗賊・本生物語194)

 

87. 〔王妃が言った〕「天〔の神々〕たちは存在しない。まちがいなく、〔彼らは〕離住している。まさに、まちがいなく、ここに、世の警護者たちは存在しない。まさに、まちがいなく、無理やり為す自制なき者たちを制止する者たちは存在しない」〔と〕。

 

88. 〔帝釈天が言った〕「彼に、時ならざるに雨降り、彼に、時なるに雨降らず。そして、〔彼は〕天上の境位から死滅する。彼が殺されたのは、まさに、その〔悪行〕からではないのか(悪しき者は成敗される)」〔と〕。ということで──

 

 マニチョーラ・ジャータカが、第四となる。

 

2. 5. 5. パッバトゥーパッタラ・ジャータカ(山麓・本生物語195)

 

89. 〔王が言った〕「喜ばしき山麓に生じた、至福の蓮池がある。野狐は、その〔水〕を飲んだ──獅子に守られた〔水〕と知りながら(後宮において大臣が愛妾と密通した)」〔と〕。

 

90. 〔菩薩は言った〕「大王よ、もし、犠牲の獣たちが、大河〔の水〕を飲むとして、それによって、川ならざるものと成ることはありません。許してあげなさい。すなわち、〔彼女が〕あなたにとって愛しき者であるなら」〔と〕。ということで──

 

 パッバトゥーパッタラ・ジャータカが、第五となる。

 

2. 5. 6. ヴァラーハカッサ・ジャータカ(雲馬・本生物語196)

 

91. 覚者によって説示された教諭を為さない、それらの人たちは、彼らは、災厄に至るであろう──女夜叉たちに〔殺された〕商人たちのように。

 

92. しかしながら、覚者によって説示された教諭を為す、それらの人たちは、安穏なる彼岸に至るであろう──雲馬に〔助けられた〕商人たちのように。ということで──

 

 ヴァラーハカッサ・ジャータカが、第六となる。

 

2. 5. 7. ミッターミッタ・ジャータカ(朋友たる者と朋友ならざる者・本生物語197)

 

93. 〔朋友ならざる者は〕彼を見て高笑せず、そして、彼を歓迎せず、そして、彼を無視し、そして、反転する。

 

94. 朋友ならざる者において確立されたものとして、これらの行相が有る。それら〔の行相〕によって、朋友ならざる者を知るべきである──見て〔そののち〕、かつまた、聞いて〔そののち〕、賢者たる者は。ということで──

 

 ミッターミッタ・ジャータカが、第七となる。

 

2. 5. 8. ラーダ・ジャータカ(ラーダ・本生物語198)

 

95. 〔婆羅門が言った〕「息子よ、外在から帰り来たところだ。今、帰り来たところだ、長きにあらず。息子よ、はてさて、どうであろう、おまえの母は、他の〔男〕に仕え親しんでいないかな」〔と〕。

 

96. 〔菩薩は言った〕「また、まさに、これは、善き話にあらず──真理を伴った言葉であるとして(黙しておくべきことである)。ポッタパーダのように、熱灰のなかで焼かれ、〔地に〕臥すであろう(軽々しく口にすれば災いをもたらす)」〔と〕。ということで──

 

 ラーダ・ジャータカが、第八となる。

 

2. 5. 9. ガハパティ・ジャータカ(家長・本生物語199)

 

97. 両者ともに、わたしにとって許せない。両者ともに、わたしにとって好ましからず。そして、すなわち、この〔女〕は、蔵に入り、「施しません」と語る。

 

98. 村長よ、それを、あなたに、〔わたしは〕説く。惨めで僅かな生計なので、「二月のあいだには」〔と〕約束を為して、痩せた老牛の肉を〔もらったが〕、時が至り得ないのに、〔あなたは〕催促する。それもまた、わたしにとって好ましからず。ということで──

 

 ガハパティ・ジャータカが、第九となる。

 

2. 5. 10. サードゥシーラ・ジャータカ(善き戒・本生物語200)

 

99. 〔婆羅門が尋ねた〕「肉体が美しいこと、年長者であること、善き生まれであること、善き戒あること。婆羅門である、まさしく、あなたに、〔わたしたちは〕尋ねます。それらのなかの、いったい、何を、〔わたしたちは〕欲し求めるのですか」〔と〕。

 

100. 〔菩薩は答えた〕「肉体〔が美しいこと〕に、義(利益)は存在する。年長者には、礼拝を為すべきである。善き生まれであることに、義(利益)は存在する。戒〔こそ〕は、わたしたちにとって好ましくある」〔と〕。ということで──

 

 サードゥシーラ・ジャータカが、第十となる。

 

 ルハカの章が、第五となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「『さて、ルハカよ』(ルハカ)と形姿ある者(吉祥と黒耳)と棍棒(小蓮華)があり、『離住している』(宝珠の盗賊)と第五に蓮池(山麓)を有するものがあり、そこで、商人の解き放ち(雲馬)と『高笑する』(朋友たる者と朋友ならざる者)があり、『帰り来たところだ、長きに〔あらず〕』(ラーダ)と蔵(家長)と肉体(善き戒)があり、〔それらの〕十がある」と。

 

2. 6. 『それは堅固ならず』の章

 

2. 6. 1. バンダナーガーラ・ジャータカ(家の結縛・本生物語201)

 

101. 〔まさに〕その、鉄でできているものも、木でできているものも、そして、葦〔の縄紐〕も──慧者たちは、それを、堅固な結縛と言わない。諸々の宝珠や耳飾にたいする貪染〔の思い〕に染まったもの──子たちにたいする、さらに、妻たちにたいする、〔まさに〕その、期待〔の思い〕なるもの──

 

102. 重くのしかかり、緩やかではあるが、解き放ち難きもの──慧者たちは、これを、堅固な結縛と言う。これをもまた断ち切って、〔慧者たちは〕遍歴遊行する──期待なき者たちとなり、欲望の安楽を捨棄して。ということで──

 

 バンダナーガーラ・ジャータカが、第一となる。

 

2. 6. 2. ケーリシーラ・ジャータカ(遊戯を戒とする者・本生物語202)

 

103. 白鳥たちも、白鷺たちも、さらに、孔雀たちも、象たちも、斑ある鹿たちも、全ての者たちが、獅子に恐怖する──身体における対比は、〔ここに〕存在せず。

 

104. まさしく、このように、人間たちにおいて、たとえ、もし、年少の者なるも、智慧ある者であるなら、まさに、彼は、そこにおいて、偉大なる者と成る。〔美しい〕肉体ある愚者は、まさしく、さにあらず。ということで──

 

 ケーリシーラ・ジャータカが、第二となる。

 

2. 6. 3. カンダ・ジャータカ(範疇・本生物語203)

 

105. わたしの慈愛〔の心〕は、ヴィルーパッカ〔族〕の者たちとともにある。わたしの慈愛〔の心〕は、エーラーパタ〔族〕の者たちとともにある。わたしの慈愛〔の心〕は、チャブヤープッタ〔族〕の者たちとともにある。そして、〔わたしの〕慈愛〔の心〕は、カンハーゴータマカ〔族〕の者たちとともにある。

 

 わたしの慈愛〔の心〕は、無足の者たちとともにある。わたしの慈愛〔の心〕は、二足の者たちとともにある。わたしの慈愛〔の心〕は、四足の者たちとともにある。わたしの慈愛〔の心〕は、多足の者たちとともにある。

 

 無足の者は、わたしを害してはならない。二足の者は、わたしを害してはならない。四足の者は、わたしを害してはならない。多足の者は、わたしを害してはならない。

 

 一切の有情たちは、一切の命あるたちは、さらに、一切の生類たちは、全部の者たちが、全ての者たちが、諸々の幸せを見よ。誰にであれ、悪しきがやってきてはならない。

 

106. 無量なるは、覚者(:ブッダ)である。無量なるは、法(:ダンマ)である。無量なるは、僧団(:サンガ)である。量あるは、蛇行するものたちであり、蛇や蠍や百足たちであり、蜘蛛や蜥蜴や鼠たちである。

 

 わたしは、〔自己の〕守護を為した。わたしは、〔自己の〕救護を為した。精霊たちは退散せよ。〔まさに〕その、わたしは、世尊に礼拝を〔為し〕、七者の正等覚者たちに礼拝を〔為す〕。ということで──

 

 カンダ・ジャータカが、第三となる。

 

2. 6. 4. ヴィーラカ・ジャータカ(ヴィーラカ・本生物語204)

 

107. 〔サヴィッタカの妻が尋ねた〕「さて、ヴィーラカ(菩薩)よ、〔あなたは〕見ますか──美妙なる鳴き声の鳥を、孔雀の首に似た〔鳥〕を、わたしの亭主のサヴィッタカを」〔と〕。

 

108. 〔菩薩は答えた〕「水と陸を歩み、常に生魚を食べる鳥の──〔まさに〕その〔鳥〕の真似をしながら、サヴィッタカは、藻にからまり、死んだのです」〔と〕。ということで──

 

 ヴィーラカ・ジャータカが、第四となる。

 

2. 6. 5. ガンゲイヤ・ジャータカ(ガンガーの魚・本生物語205)

 

109. 〔亀が言った〕「ガンガー〔川〕の魚は美しく輝き、さらに、ヤムナー〔川〕の〔魚〕も美しく輝くが、四足の人士たるこの〔亀〕は、〔姿は〕ニグローダ〔樹〕の完円にして、かつまた、首は竿の細長さ、まさしく、一切に輝きまさる」〔と〕。

 

110. 〔魚たちが言った〕「それを尋ねられたのに、それを告げない。尋ねられたのに、他のことを告げる。自己のことを賞賛する、この男は、わたしたちにとって好ましからず」〔と〕。ということで──

 

 ガンゲイヤ・ジャータカが、第五となる。

 

2. 6. 6. クルンガミガ・ジャータカ(羚羊・本生物語206)

 

111. 〔啄木鳥が言った〕「さあ、亀よ、革紐で作られている罠を、諸々の歯で断ち切れ。すなわち、猟師がやってこないように、そのように、わたしは為すであろう」〔と〕。

 

112. 〔世尊は言った〕「亀は、水に入った。羚羊は、林に入った。啄木鳥は、木の先端から遠く、子供たちを連れ去った」〔と〕。ということで──

 

 クルンガミガ・ジャータカが、第六となる。

 

2. 6. 7. アッサカ・ジャータカ(アッサカ・本生物語207)

 

113. これは、アッサカ王とともに、わたしが渡り歩いた地である──欲し欲され愛しき亭主と共に。

 

114. 新しい楽と苦によって、古きものは蓋をされる。それゆえに、まさしく、アッサカ王より、かぶと虫は、わたしにとって、より愛しき者となる。ということで──

 

 アッサカ・ジャータカが、第七となる。

 

2. 6. 8. ススマーラ・ジャータカ(鰐・本生物語208)

 

115. わたしには、〔もう〕十分だ──これらの、アンバ〔の果〕やジャンブ〔の果〕は、さらに、パナサ〔の果〕は。それらは、海の彼方にある。わたしにとって、ウドゥンバラ〔の果こそ〕は、優れている。

 

116. おまえの体格は、まさに、大きくあるも、しかしながら、智慧は、それに見合わない。鰐よ、〔おまえは〕存している──わたしに騙された者として。去りたまえ、今や、安楽なるままに。ということで──

 

 ススマーラ・ジャータカが、第八となる。

 

2. 6. 9. クックタ・ジャータカ(鶏・本生物語209)

 

117. 〔鶏が言った〕「林のなかで、木々を、わたしは見た──諸々のアッサカンナ〔樹〕を、諸々のヴィビータカ〔樹〕を。それらは、このように動かない。木よ、すなわち、おまえが動くようには(猟師が隠れている)」〔と〕。

 

118. 〔猟師が言った〕「この古老の鶏は、檻を破ってやってきたのだ。巧みな智ある者は、毛の罠を去り行き、〔人間の言葉を〕語る」〔と〕。ということで──

 

 クックタ・ジャータカが、第九となる。

 

2. 6. 10. カンダガラカ・ジャータカ(カンダガラカ・本生物語210)

 

119. 〔カンダガラカが言った〕「はてさて、まさに、その木は、何なのだ──蒸れた葉の、棘を有する〔その木〕は。そこにおいて、一打をもってして、頭が砕け散るとは」〔と〕。

 

120. 〔菩薩は言った〕「まさに、この者(カンダガラカ)は、諸々の林を歩んだ──芯がなく、小枝を支分とする木々を突きながら。そこで、生育した芯あるカディラ〔樹〕に近づき、そこにおいて、ガルラ(カンダガラカ)は、〔自らの〕頭を壊し去ったのだ」〔と〕。ということで──

 

 カンダガラカ・ジャータカが、第十となる。

 

 『それは堅固ならず』の章が、第六となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「堅固な結縛(結縛の家)と優れた鵞鳥(遊戯を戒とする者)があり、そして、さらに、ヴィルーパッカ(範疇)とサヴィッタカ(ヴィーラカ)と優れた魚(ガンガーの魚)があり、羚羊を有するものとアッサカを有するものと優れたアンバ(鰐)があり、さらに、鶏があり、ガルラ(カンダガラカ)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

2. 7. ビーラナ〔草〕の茂みの章

 

2. 7. 1. ソーマダッタ・ジャータカ(ソーマダッタ・本生物語211)

 

121. 〔菩薩は言った〕「〔あなたは〕常に怠ることなく、訓練を為した──まる一年のあいだ、ビーラナ〔草〕の茂みのなかで。〔しかしながら〕衆に入って、〔誤った〕表象(:概念・心象)を説き明かした。〔日頃の〕努力は、智慧少なき者を救わない」〔と〕。

 

122. 〔父が言った〕「息子よ、ソーマダッタよ、乞い求める者は、二つのものに遭遇する──利得なきに、あるいは、財産の利得に。まさに、このような法(性質)あるのが、乞い求めることなのだ」〔と〕。ということで──

 

 ソーマダッタ・ジャータカが、第一となる。

 

2. 7. 2. ウッチッタバッタ・ジャータカ(残飯・本生物語212)

 

123. 〔妻に、婆羅門が尋ねた〕「他なるものとして、上なる姿があり、かつまた、他なるものとして、下なる姿がある。婆羅門尼よ、まさしく、かくのごとく、〔わたしは〕尋ねる。何が、下にあり、かつまた、何が、上にあるのか(情夫を隠しているのではないか)」〔と〕。

 

124. 〔妻が答えないので、菩薩は言った〕「わたしは、芸人として存しています。あなたに、幸せ〔有れ〕。行乞者として存し、ここにやってきた者です。すなわち、〔あなたが〕探し求める者(情夫)は、彼です、この者です。蔵に降りて行った、まさに、この者です」〔と〕。ということで──

 

 ウッチッタバッタ・ジャータカが、第二となる。

 

2. 7. 3. バル・ジャータカ(バル・本生物語213)

 

125. 聖賢たちの離間を為して、バル王は、かくのごとく、わたしの聞くところでは、諸々の国土と共に断絶され、その王は、虚無を赴くところとした。

 

126. まさに、それゆえに、欲〔の思い〕から至り来るものを、賢者たちは賞賛しない。汚れなき心の者は、真理を伴った言葉を語るべきである。ということで──

 

 バル・ジャータカが、第三となる。

 

2. 7. 4. プンナナディー・ジャータカ(満ちた川・本生物語214)

 

127. 〔王が言った〕「満ちた川のことを、〔人々は〕『そして、彼(烏)にも、飲むことができる』〔と〕言う。生育した麦のことを、〔人々は〕『そして、彼でも、秘密にできる(烏をも隠す)』〔と〕言う。遠くに赴いた者〔の帰還〕を、そして、彼〔の鳴き声〕によって、〔人々は〕喚起する。彼〔の肉〕が、あなたのもとにやってきたのだ。婆羅門よ、さあ、では、食べたまえ」〔と〕。

 

128. 〔菩薩は言った〕「烏〔の肉〕をもまた送るべく、すなわち、王が、わたしのことを思い浮かべるからには、白鳥たちも、白鷺たちも、さらに、孔雀たちも、まさしく、思い浮かべないのは、悪しきこと」〔と〕。ということで──

 

 プンナナディー・ジャータカが、第四となる。

 

2. 7. 5. カッチャパ・ジャータカ(亀・本生物語215)

 

129. 亀は、言葉を発しつつ、まさに、自己を打ち殺した(自滅した)。木片にしっかり掴まっていたのに、自らの言葉で、〔自己を〕打ち殺した。

 

130. このことをもまた見て、人として最勝の精進ある者よ、限度を超えずに、善なる言葉を放つべきである。〔あなたは〕見る──多く話すことで、災厄に至った亀を。ということで──

 

 カッチャパ・ジャータカが、第五となる。

 

2. 7. 6. マッチャ・ジャータカ(魚・本生物語216)

 

131. 〔網に掛かった魚が言った〕「この火は、わたしを苦しめない。見事に加工された串は、〔わたしを苦しめ〕ない。しかしながら、すなわち、わたしのことを、〔妻の〕魚が、『彼は、歓楽のために、他の〔雌の魚〕のもとに赴いたのだ』〔と〕思うなら、〔それは、わたしを苦しめる〕。

 

132. 〔まさに〕その、貪欲の火が、わたしを焼き、かつまた、わたしの心を悩苦させる。聖者たる漁師たちよ、わたしを解き放ちたまえ。愛し欲する者があるときは、どこにあっても殺されぬもの」〔と〕。ということで──

 

 マッチャ・ジャータカが、第六となる。

 

2. 7. 7. セッグ・ジャータカ(セッグ・本生物語217)

 

133. 〔父が言った〕「全ての世〔の人々〕は、わが意を得た者と成った。セッグよ、〔おまえは〕村の法(淫習)に熟知なくある。すなわち、山林のなかで〔手を〕握られ、おまえは泣き悲しむが、生娘よ、まさに、おまえに、今日、どのような法(性質)があるというのだ」〔と〕。

 

134. 〔娘が言った〕「すなわち、苦しみに襲われた者にとっての救護所と成るべき、〔まさに〕その、わたしの父が、林のなかで裏切りを為します。〔まさに〕その〔わたし〕は、林の真ん中で、誰に泣き叫ぶというのでしょう。〔まさに〕その、救護者である彼が、〔わたしに〕無理強いを為します」〔と〕。ということで──

 

 セッグ・ジャータカが、第七となる。

 

2. 7. 8. クータヴァーニジャ・ジャータカ(奸計の商人・本生物語218)

 

135. 狡猾なる者には、狡猾なるべきものが、これが、善く思い考えられたものとなる。奸計が、相手の奸計に引っ掛かったのだ。もし、鼠たちが、鋤を喰うなら、何ゆえに、鷹たちは、童子を運び去らないのであろう。

 

136. まさに、奸計には、奸計の奸計が存在する。さらに、また、欺く者には、欺きによって、〔別の欺く者が〕有る。子を消失した者よ、鋤を消失した者に、鋤を与えよ。鋤を消失した者が、あなたの子を運び去ることがあってはならない。ということで──

 

 クータヴァーニジャ・ジャータカが、第八となる。

 

2. 7. 9. ガラヒタ・ジャータカ(非難された者・本生物語219)

 

137. 「わたしの金貨だ」「わたしの黄金だ」〔と〕、夜に、昼に、この言説がある──思慮浅き人間たちには、聖なる法(教え)を見ずにいる者たちには。

 

138. 二者の者がいる。家には、二者の家長がいる。そこにおいて、一者は、髭がなく、乳房を垂らし、髪を編み、さらに、耳に細工をしている。その者は、多くの財によって買われた者であるのに、〔買い受けた〕その人を啄む。ということで──

 

 ガラヒタ・ジャータカが、第九となる。

 

2. 7. 10. ダンマダジャ・ジャータカ(法の旗・本生物語220)

 

139. 〔帝釈天が言った〕「〔かつて、あなたは〕存していた──生き生きとした形姿ある者として、安楽に。〔富み栄える〕国土から荒野へとやってきた、〔まさに〕その〔あなた〕は、独りある者となり、木の根元において、貧者のように瞑想する」〔と〕。

 

140. 〔菩薩は言った〕「〔かつて、わたしは〕存していた──生き生きとした形姿ある者として、安楽に。〔富み栄える〕国土から荒野へとやってきた、〔まさに〕その〔わたし〕は、独りある者となり、木の根元において、貧者のように瞑想する──正しくある者たちの法(教え)を随念しながら」〔と〕。ということで──

 

 ダンマダジャ・ジャータカが、第十となる。

 

 ビーラナ〔草〕の茂みの章が、第七となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「そこで、優れたビーラナ〔草〕の茂み(ソーマダッタ)があり、そして、芸人(残飯)があり、優れた最上のバル王と満ちた川があり、多く話す者(亀)と火(魚)と『林のなかで』(セッグ)と鼠たち(奸計の商人)があり、『乳房を垂らし』(非難された者)を加え、貧者(法の旗)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

2. 8. 袈裟の章

 

2. 8. 1. カーサヴァ・ジャータカ(袈裟・本生物語221)

 

141. すなわち、無濁ならざる者が、黄褐色の衣(袈裟)をまとうとして、調御と真理()から離れた者は、彼は、黄褐色〔の衣〕に値しない。

 

142. しかしながら、すなわち、汚濁を吐き捨てた者として〔世に〕存し、諸戒において〔心が〕善く定められたなら、調御と真理を具した者は、彼は、まさに、黄褐色〔の衣〕に値する。ということで──

 

 カーサヴァ・ジャータカが、第一となる。

 

2. 8. 2. チューラナンディヤ・ジャータカ(小なるナンディヤ・本生物語222)

 

143. これが、その、師匠の言葉である。パーラーサリヤが説いた、その〔言葉〕である。まさに、あなたは、悪しき〔行為〕を為してはならない。すなわち、為した〔行為〕が〔悪しき報いをもたらし〕、のちに、あなたを苦しめるであろう。

 

144. それら〔の行為〕を、人が為すなら、それら〔の行為の報い〕を、自己のうちに見る。善き〔行為〕を為す者は、善き〔報い〕を。そして、悪しき〔行為〕を為す者は、悪しき〔報い〕を。そのようなものとして、種を蒔くなら、そのようなものとして、果を運ぶ。ということで──

 

 チューラナンディヤ・ジャータカが、第二となる。

 

2. 8. 3. プタバッタ・ジャータカ(プタバッタ・本生物語223)

 

145. 〔常に〕礼拝している者に、礼拝するように。〔常に〕親しくしている者に、親しくするように。為すべきことを従い為す者に、為すべきことを為すように。種々なる義(利益)を欲する者に、義(利益)を為すように。また、親近せずにいる者には、親近しないように。

 

146. 〔常に〕施捨している者に、施捨するように。〔欲の〕林の下生えを作らないように。心が離れた者に、親近しないように。鳥は、〔その〕木を「果が尽きたのだ」と知って、他〔の木〕を正しく見るであろう。なぜなら、大いなるものとして、世はあるからである。ということで──

 

 プタバッタ・ジャータカが、第三となる。

 

2. 8. 4. クンビラ・ジャータカ(鰐・本生物語224)

 

147. 猿のインダ(猿の王)よ、彼に、これらの四つの法(性質)があるなら、すなわち、あなたにあるように、真理()と法(教え)と〔道心〕堅固と施捨があるなら、彼は、敵を超克する。

 

148. しかしながら、彼に、最高の幸いなるものである、これらの徳が見出されないなら、〔すなわち〕真理と法(教え)と〔道心〕堅固と施捨が〔見出されないなら〕、彼は、敵を超克しない。ということで──

 

 クンビラ・ジャータカが、第四となる。

 

2. 8. 5. カンティヴァンナ・ジャータカ(忍耐の褒め称え・本生物語225)

 

149. 〔大臣が尋ねた〕「陛下よ、わたしには、家来が存在します。一切の為すべきことに懸命なのですが、しかしながら、彼には、一つの非礼が存在します。そこにおいて、あなたは、どのようなものと思われますか(我慢のならない家来がいる)」〔と〕。

 

150. 〔菩薩は答えた〕「わたしたちにもまた、家来が存在し、ここに、このような者として見出される(我慢ができない家来がいる)。得難きは、〔徳の〕支分を成就した者である。忍耐〔こそ〕は、わたしたちにとって好ましくある」〔と〕。ということで──

 

 カンティヴァンナ・ジャータカが、第五となる。

 

2. 8. 6. コーシヤ・ジャータカ(梟・本生物語226)

 

151. 〔正しい〕時に出ているのは、善きことである。〔正しい〕時ならざるに出るのは、善きことではない。なぜなら、〔正しい〕時ならざるに出て、独りでいる者を、また、多くの人が〔打ちのめし〕、何であれ、義(利益)を照らさないからである──〔時ならざるに巣から出た〕梟を、烏の軍団が〔打ちのめす〕ように。

 

152. しかしながら、慧者は、規定と手順を知る者として、他者たちの欠陥に通じる者として、一切の朋友ならざる者(敵)たちを自在に為して、〔巣にある〕梟のように、安楽の者として〔世に〕存するであろう。ということで──

 

 コーシヤ・ジャータカが、第六となる。

 

2. 8. 7. グータパーナ・ジャータカ(糞虫・本生物語227)

 

153. 〔糞虫が言った〕「勇士は、勇猛にして〔激しい〕打撃ある勇士と相対して〔戦う〕。象よ、さあ、戻ってこい。いったい、何を恐れ、逃げ去るのか。アンガ〔国〕とマガダ〔国〕の者たちは、見よ──わたしの〔勇猛を〕、そして、おまえの勇猛を」〔と〕。

 

154. 〔象が言った〕「おまえを、足で打ち殺しはしない。〔両の〕牙で〔打ち殺すことも〕ない。鼻で〔打ち殺すことも〕ない。おまえを、糞で打ち殺す。腐ったものは、腐ったもので打ちのめされよ」〔と〕。ということで──

 

 グータパーナ・ジャータカが、第七となる。

 

2. 8. 8. カーマニータ・ジャータカ(欲にかられた者・本生物語228)

 

155. 〔王が言った〕「三つの城都を、〔それらの〕間にある、パンチャーラ〔国〕とクル〔国〕を、さらに、ケーカカ〔国〕を、〔わたしは〕欲する。婆羅門よ、それ以上のものを、〔わたしは〕欲する。婆羅門よ、欲にかられたわたしを治療したまえ」〔と〕。

 

156. 〔菩薩は答えた〕「まさに、或る者たちは、黒蛇に咬まれた者のために〔治療を〕為し、賢者たちは、人間ならざるもの(悪霊)が入った者のために〔治療を〕為すとして、誰も、欲にかられた者のために〔治療を〕為しません。まさに、白きを捨てた者のために、どのような治療があるというのでしょう」〔と〕。ということで──

 

 カーマニータ・ジャータカが、第八となる。

 

2. 8. 9. パラーイタ・ジャータカ(逃げ去る者・本生物語229)

 

157. 諸々の至高なる象の雨雲によって、諸々の至高なる馬の花環によって、諸々の車の波浪によって、諸々の矢の降雨によって、剣を掴み振り回す堅固なる打撃ある者たちによって、タッカシラーは、遍きにわたり取り囲まれた。

 

158. そして、走り行け。そして、走り寄れ。牙ある〔象〕たちとともに、まさしく、様々な種類の咆哮〔有れ〕。大いなる音声が、今日、転起せよ──あたかも、鳴り響く雷雲の雷光のように。ということで──

 

 パラーイタ・ジャータカが、第九となる。

 

2. 8. 10. ドゥティヤパラーイタ・ジャータカ(第二の逃げ去る者・本生物語230)

 

159. 〔王が言った〕「旗は無量にして、彼方は無辺。海洋が、烏たちに打ち負かし難くあるように、山が、風に打ち負かし難くあるように、わたしは、今日、そのようなことでは打ち負かし難くある」〔と〕。

 

160. 〔菩薩は言った〕「愚かしいことを話されるな。まさに、彼には、そのようなことはない。まさに、〔あなたは〕焼き尽くされる──制止する者を得ることなく。まさしく、独り歩む象を、〔あなたは〕襲う。すなわち、足で葦を〔踏み敷く〕ように、あなたを打ち殺すであろう」〔と〕。ということで──

 

 ドゥティヤパラーイタ・ジャータカが、第十となる。

 

 袈裟の章が、第八となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「優れた衣(袈裟)と言葉(小なるナンディヤ)と果が尽きた木(プタバッタ)があり、優れた四つの法(鰐)と最上の家来(忍耐の褒め称え)があり、烏(梟)とマガダ(糞虫)があり、そして、三つの城都(欲にかられた者)という名のものがあり、優れた至高の象(逃げ去る者)があり、優れた旗(第二の逃げ去る者)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

2. 9. 履物の章

 

2. 9. 1. ウパーハナ・ジャータカ(履物・本生物語231)

 

161. たとえば、また、安楽を義(目的)として買った履物が、人の苦痛を取り去るも、炎暑に焼かれ、〔両の〕底が擦り切れたなら、まさしく、その人の、〔両の〕足を喰い尽くすように──

 

162. まさしく、このように、彼が、悪しき家系の者であり、聖ならざる者であるなら、あなたたちの、そして、明知を〔取って〕、さらに、所聞を取って、彼は、そこにおいて、まさしく、彼〔自身〕を、所聞によって喰い尽くす。聖ならざる者は、悪しき履物の如き者と説かれる。ということで──

 

 ウパーハナ・ジャータカが、第一となる。

 

2. 9. 2. ヴィーナーグナ・ジャータカ(琵琶の竿・本生物語232)

 

163. 〔菩薩は言った〕「その義(意味)は、独りで思弁したこと。〔彼は〕愚者にして、完全なる導き手にあらず。尊女よ、〔背の〕曲がった小人と一緒になるには、〔あなたは〕相応しからず」〔と〕。

 

164. 〔女が言った〕「〔彼のことを〕人の雄牛(勇者)と思い考えながら、わたしは、〔背の〕曲がった者を欲したのです。〔まさに〕その、この者は、〔身を〕縮め、〔地に〕臥します──あたかも、弦が切れた琵琶のように」〔と〕ということで──

 

 ヴィーナーグナ・ジャータカが、第二となる。

 

2. 9. 3. ヴィカンナ・ジャータカ(矢・本生物語233)

 

165. そこが、〔おまえの〕求めるところであるなら、欲するままに、そこに去り行け。〔おまえは〕存している──矢に急所を貫かれた者として。〔おまえは〕存している──食事と善き音楽に打ち殺された者として。そして、〔欲の〕妄動ある者となり、魚たちを追跡している。

 

166. このように、また、世の財貨に落ち行きながら、心の支配に従い転じ行く者は、打ちのめされる。彼は、魚に従い行く鰐のようなもの。彼は、親族と友人たちの中において、打ちのめされる。ということで──

 

 ヴィカンナ・ジャータカが、第三となる。

 

2. 9. 4. アシターブー・ジャータカ(アシターブー・本生物語234)

 

167. 〔アシターブーが言った〕「まさしく、あなたは、今や、為したのです。すなわち、あなたにたいする欲望は、離れ去りました。〔まさに〕その、〔あなたにたいする〕この〔欲望〕は、鋸で切られた象牙のように、〔もはや〕結生なきもの」〔と〕。

 

168. 〔男が言った〕「求め過ぎている者は、貪り過ぎによって、さらに、貪り過ぎの驕慢によって、このように、義(利益)から退失する──わたしのように、アシターブーから」〔と〕。ということで──

 

 アシターブー・ジャータカが、第四となる。

 

2. 9. 5. ヴァッチャナカ・ジャータカ(ヴァッチャナカ・本生物語235)

 

169. 〔男が言った〕「ヴァッチャナカよ、黄金を有し、食料を有する、在家〔の生活〕は、安楽です。そこにおいて、食べて、さらに、飲んで、臥すのです──焦りなき者となり」〔と〕。

 

170. 〔菩薩は言った〕「〔無欲で〕奮闘せずにいる者に、在家〔の生活〕はありません。虚偽を話さずにいる者に、在家〔の生活〕はありません。棒(罰)を与えられない者に、他者たちを欺かずにいる者に、在家〔の生活〕はありません。このように、征服し難く瑕疵ある在家〔の生活〕を、誰が実践するというのでしょう」〔と〕。ということで──

 

 ヴァッチャナカ・ジャータカが、第五となる。

 

2. 9. 6. バカ・ジャータカ(青鷺・本生物語236)

 

171. 〔魚が言った〕「蓮に似た、この翼ある鳥は、まさに、幸いなるかな。〔両の〕翼が寂止し、まさしく、悠々然と瞑想する」〔と〕。

 

172. 〔菩薩は言った〕「彼の戒を、〔あなたたちは〕識知しない。了知せずして、〔あなたたちは〕賞賛する。鳥は、わたしたちを守るのではなく、〔わたしたちを狙っているのだ〕。それによって、鳥は動かない」〔と〕。ということで──

 

 バカ・ジャータカが、第六となる。

 

2. 9. 7. サーケータ・ジャータカ(サーケータ・本生物語237)

 

173. 〔比丘が尋ねた〕「世尊よ、いったい、まさに、何が因となり、ここに、一部の人にたいし、心臓(心)が極度に寂滅するのですか(冷淡になるのか)、さらに、また、心が清信するのですか(信頼するのか)」〔と〕。

 

174. 〔世尊は答えた〕「まさしく、過去(前世)における共住によって、あるいは、現在の利益によって、このように、その愛情は生じます──あたかも、水のなかに〔生じる〕青蓮のように」〔と〕。ということで──

 

 サーケータ・ジャータカが、第七となる。

 

2. 9. 8. エーカパダ・ジャータカ(一なる境処・本生物語238)

 

175. 〔子が尋ねた〕「父よ、さあ、一なる境処を、無数の義(利益)ある境処に依拠した〔一なる境処〕を、何であれ包括する〔一なる境処〕を、〔わたしたちに〕説いてください。それによって、〔わたしたちは〕諸々の義(目的)を成し遂げるのです」〔と〕。

 

176. 〔菩薩は答えた〕「息子よ、有能なることが、〔一なる〕境処である。無数の義(利益)ある境処に依拠した〔一なる境処〕である。そして、それが、戒と結び付き、忍耐によって完遂されたなら、〔それで、もう〕十分である──朋友たちを安楽ならしめ、かつまた、朋友ならざる者たちに苦痛あるためには」〔と〕。ということで──

 

 エーカパダ・ジャータカが、第八となる。

 

2. 9. 9. ハリタマンドゥーカ・ジャータカ(青蛙・本生物語239)

 

177. 〔毒蛇が言った〕「毒蛇として〔世に〕存しているわたしでさえも、魚網の口に入ったなら、〔まさに〕その、わたしを、魚たちは喰う。ハリタマータル(青蛙)よ、〔それが、おまえにとって〕好ましくあるのか」〔と〕。

 

178. 〔菩薩は言った〕「人は、まさしく、奪い取る──彼にとって役に立つ、そのかぎりは。そして、他者たちが奪い取る、そのとき、奪い取られた彼は、〔ふたたび〕奪い取る」〔と〕。ということで──

 

 ハリタマンドゥーカ・ジャータカが、第九となる。

 

2. 9. 10. マハーピンガラ・ジャータカ(マハーピンガラ・本生物語240)

 

179. 〔菩薩は尋ねた〕「全ての人は、ピンガラ〔王〕によって害された。彼が死んだとき、〔それを〕縁として、〔人々は、喜びを〕感受する。いったい、おまえにとって、黒眼ならざる者(ピンガラ王)は、愛しき者として存していたのか。門番よ、いったい、何ゆえに、おまえは泣き悲しむのか」〔と〕。

 

180. 〔門番が答えた〕「黒眼ならざる者は、わたしにとって、愛しき者として存していませんでした。〔わたしは〕彼が戻り来るのを恐れます。ここから去った〔黒眼ならざる者〕は、死魔の王を害するでしょう。〔まさに〕その、害された〔死魔の王〕は、ふたたび、ここに、〔黒眼ならざる者を〕連れ戻すでしょう」〔と〕。

 

181. 〔菩薩は言った〕「彼は、千駄〔の薪〕をもって焼かれ、百鉢〔の水〕をもって注がれ、そして、その地は、遍く掘られた。恐れてはならない。〔もはや〕戻り来ることはないであろう」〔と〕。ということで──

 

 マハーピンガラ・ジャータカが、第十となる。

 

 履物の章が、第九となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「優れた履物と曲がった者(琵琶の竿)と矢があり、アシターブーとともに、第五にヴァッチャナカがあり、鳥(青鷺)と優れた最上の愛情(サーケータ)と一なる境処があり、魚網の口(青蛙)があり、ピンガラとともに、〔それらの〕十がある」と。

 

2. 10. 野狐の章

 

2. 10. 1. サッバダーティ・ジャータカ(サッバダーティ・本生物語241)

 

182. 野狐は、そして、〔我想の〕思量と強情〔の思い〕ある者であり、取り巻き〔の獲得〕に義(目的)ある者である。〔彼は〕大いなる地に至り得た。〔彼は〕全ての牙ある者たちの王として存した。

 

183. まさしく、このように、人間たちにおいて、彼が、取り巻きある者と成るなら、まさに、彼は、そこにおいて、大いなる者と成る──牙ある者たちにとっての野狐のように。ということで──

 

 サッバダーティ・ジャータカが、第一となる。

 

2. 10. 2. スナカ・ジャータカ(犬・本生物語242)

 

184. 〔菩薩は言った〕「すなわち、〔自己を縛る〕革紐を咬まない、この犬は、まさに、愚者である。そして、結縛から解き放たれるであろうし、さらに、〔何にも〕依存なき者となり、家に逃れ行くであろうに」〔と〕。

 

185. 〔犬が言った〕「わたしには、わたしの意において、決めたことがある。さらに、わたしの心臓(心)において、作り為されたものがある。そして、〔わたしは〕時を待つ。人々が眠りにつく、それまでは」〔と〕。ということで──

 

 スナカ・ジャータカが、第二となる。

 

2. 10. 3. グッティラ・ジャータカ(グッティラ・本生物語243)

 

186. 〔菩薩は言った〕「極めて甘美にして喜ばしき七弦〔の琵琶〕を、〔わたしは、彼に〕教えました。〔今や、驕り高ぶる〕彼は、わたしを舞台に呼びました(師に技くらべを申し入れた)。コーシヤ(帝釈天)よ、わたしの帰依所と成ってください」〔と〕。

 

187. 〔帝釈天が言った〕「友よ、わたしは、あなたの帰依所と〔成りましょう〕。わたしは、師匠を供養する者です。徒弟があなたに勝つことはないでしょう。師匠よ、〔あなたが〕徒弟に勝つでしょう」〔と〕。ということで──

 

 グッティラ・ジャータカが、第三となる。

 

2. 10. 4. ヴィガティッチャ・ジャータカ(欲求を離れ去った者・本生物語244)

 

188. それを、〔彼が〕見るなら、それを、〔彼は〕求めない。しかしながら、それを、〔彼が〕見ないなら、それを、まさに、〔彼は〕求める。〔わたしは〕思う──長きにわたり、〔彼は〕歩むであろう。なぜなら、それを、彼が求めるとして、それを、〔彼は〕得ないからである。

 

189. それを、〔彼が〕得るとして、それに、〔彼は〕満足しない。そして、それを、〔彼が〕切望するとして、得られたものを、〔彼は〕蔑む。まさに、〔人の〕欲求は、無限の境涯あるもの。欲求を離れ去った者たちに、〔わたしたちは〕礼拝を為す。ということで──

 

 ヴィガティッチャ・ジャータカが、第四となる。

 

2. 10. 5. ムーラパリヤーヤ・ジャータカ(根元の教相・本生物語245)

 

190. 時は、生類たちを食糧とする──自己を含む、まさしく、一切を。しかしながら、彼が、時を食糧とする生類であるなら、彼は、生類を煮沸するものを煮沸したのだ。

 

191. 多くの人の頭があり、さらに、大いなる毛があり、首のうえにあって対面するも、ここにおいて、まさしく、誰かしらでも、耳ある者がいるのだろうか。ということで──

 

 ムーラパリヤーヤ・ジャータカが、第五となる。

 

2. 10. 6. バーローヴァーダ・ジャータカ(愚者への教諭・本生物語246)

 

192. 殺害して、切断して、そして、屠殺して、自制なき者は、布施を施す。このような食事を受益しながら、彼は、悪に汚される(※)。

 

※ テキストには pāpamupalimpati とあるが、PTS版により pāpena upalippati と読む。次偈の平行箇所も同様。

 

193. たとえ、もし、子や妻を殺害して、自制なき者が、布施を施すとして、智慧を有する者は、受益しつつもまた、悪に汚されない。ということで──

 

 バーローヴァーダ・ジャータカが、第六となる。

 

2. 10. 7. パーダンジャリー・ジャータカ(パーダンジャリー・本生物語247)

 

194. 〔誤った判決が出て唇を巻くパーダンジャリ王子に、大臣が言った〕「たしかに、パーダンジャリは、全ての者たちに、智慧によって輝きまさる。まさに、そのように、唇を巻く(不満を示す)。まちがいなく、〔彼は〕より上なるものを見る」〔と〕。

 

195. 〔正しい判決が出ても唇を巻くパーダンジャリ王子に、大臣が言った〕「あるいは、この者は、法(真理)と法(真理)ならざるを、さらに、義(道理)と義(道理)ならざるを、覚らない。唇を巻くことより他に、この者は、何ひとつ知らない」〔と〕。ということで──

 

 パーダンジャリー・ジャータカが、第七となる。

 

2. 10. 8. キンスコーパマ・ジャータカ(キンスカの喩え・本生物語248)

 

196. 〔あなたたちの〕全てが、キンスカ〔樹〕を見たのだ。ここにおいて、まさしく、いったい、どうして、〔キンスカ樹について、あなたたちは〕疑惑をもつのだ。なぜなら、〔キンスカ樹の〕全ての状況について、〔あなたたちは〕馭者に遍く問い尋ねなかったからだ(部分的なことしか尋ねなかった)。

 

197. このように、全ての知恵()によって、〔それらの〕法(事象)が、彼らに知られていないなら、まさに、〔それらの〕法(事象)について、彼らは疑う。キンスカ〔樹〕について、兄弟たちが〔疑惑をもった〕ように。ということで──

 

 キンスコーパマ・ジャータカが、第八となる。

 

2. 10. 9. サーラカ・ジャータカ(サーラカ・本生物語249)

 

198. 〔逃げた猿に、男が言った〕「〔おまえは、わたしの〕独り息子と成るであろう。さらに、おまえは、わたしたちの家におけるイッサラ(イーシュヴァラ神・自在神)と成るであろう。サーラカよ、木から降りなさい。さあ、今や、家に行くのだ」〔と〕。

 

199. 〔男に、猿が言った〕「はてさて、〔あなたは〕わたしのことを、『善き心の者』と思っているのではないですか。そして、〔まさに〕その、わたしを、〔あなたは〕竹の棒で打ちます。〔わたしどもは〕熟したアンバ〔樹〕の林のなかで喜び楽しみますよ。あなたは、安楽なるままに、家に去り行きたまえ」〔と〕。ということで──

 

 サーラカ・ジャータカが、第九となる。

 

2. 10. 10. カピ・ジャータカ(猿・本生物語250)

 

200. 〔子が言った〕「この方は、〔心の〕寂止と自制に喜びある聖賢です。冷気の恐怖に苦悩し、彼は立っています。さあ、この方を、この家に入れてあげてください。寒さを、そして、懊悩の全部を、取り除いてあげてください」〔と〕。

 

201. 〔菩薩は言った〕「この者は、〔心の〕寂止と自制に喜びある聖賢ではない。この者は、優れた木の枝を餌場とする猿である。彼は、〔わたしたちを〕汚す者であり、さらに、また、〔わたしたちを〕悩ます者であり、卑しむべき者である。それで、もし、〔彼が、この家に〕入り行くなら、この家をもまた汚すであろう」〔と〕。ということで──

 

 カピ・ジャータカが、第十となる。

 

 野狐の章が、第十となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「そこで、優れた野狐の王(サッバダーティ)と犬があり、そのように、コーシヤ(グッティラ)と『求める』(欲求を離れ去った者)と時を食糧とする者(根元の教相)があり、そこで、優れた布施(愚者への教諭)と唇(パーダンジャリー)もまたあり、馭者(キンスカの喩え)とともに、そして、さらに、アンバ〔樹〕の林(サーラカ)と冷気の猿(猿)もまたあり、〔それらの〕十がある」と。

 

 そこで、章の摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「堅固の章があり、そして、他に、親愛があり、善きことの章とアサディサがあり、そして、ルハカがあり、『それは堅固ならず』とビーラナ〔草〕の茂みがあり、さらに、袈裟と履物があり、野狐とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

 二なるものの集まりは〔以上で〕終了となる。

 

3. 三なるものの集まり

 

3. 1. 妄想の章

 

3. 1. 1. サンカッパラーガ・ジャータカ(妄想と貪欲・本生物語251)

 

1. 妄想(思惟)と貪欲()に洗浄された〔矢〕によって、かつまた、思考()に依拠した〔矢〕によって──十分に作り為された立派な〔矢〕ではなく、かつまた、矢作りによって作られた〔矢〕でも〔なく〕──

 

2. 耳に付けられた真珠ではなく、孔雀の尾でもまたなく──〔まさに〕その、全ての肢体を遍く焼く〔矢〕によって、心臓を貫かれた者として、〔わたしは〕存している。

 

3. そして、そこから血が漏れ出る、〔その〕傷口を、〔わたしは〕見ない。すなわち、根源のままならずに、心があるかぎり、わたしには、自ら運び込まれた苦しみがある。ということで──

 

 サンカッパラーガ・ジャータカが、第一となる。

 

3. 1. 2. ティラムッティ・ジャータカ(ひと握りの胡麻・本生物語物語252)

 

4. 〔王が言った〕「今日もなお、そのことが、わたしの意にはある。すなわち、あなたは、わたしを、ひと握りの胡麻のために、わたしの腕を掴んで、杖で打ったのだ。

 

5. はてさて、〔あなたは〕生に喜びなくあるのでは──婆羅門よ、すなわち、〔わたしのもとに〕帰り来た者として、〔ここに、あなたが〕存しているからには。すなわち、〔あなたは〕わたしの腕を掴んで、三回、〔杖で〕打ったのだ」〔と〕。

 

6. 〔菩薩は言った〕「すなわち、聖者は、聖ならざることを為している者を、棒によって制止する。それは、教えである。それは、怨みにあらず。かくのごとく、それを〔為すのが〕、賢者たちであり、知者たちである」〔と〕。ということで──

 

 ティラムッティ・ジャータカが、第二となる。

 

3. 1. 3. マニカンタ・ジャータカ(マニカンタ・本生物語253)

 

7. 〔婆羅門に、龍が言った〕「広大にして巨万の食べ物と飲み物が、わたしに生起する──この宝珠を因として。それをあなたに与えることはないであろう。〔あなたは〕乞い求め過ぎの者として存している。そして、もはや、あなたの庵所に帰り来ることはないであろう。

 

8. あたかも、磨かれた石礫を手にする若者たちのように、〔あなたは〕わたしを脅す──宝石を乞い求めながら。それをあなたに与えることはないであろう。〔あなたは〕乞い求め過ぎの者として存している。そして、もはや、あなたの庵所に帰り来ることはないであろう」〔と〕。

 

9. 〔婆羅門に、菩薩は言った〕「彼の愛情を求め願うなら、彼に乞い求めぬがよい。乞い求め過ぎることで、嫌悪される者と成る。龍は、婆羅門に宝珠を乞い求められたので、まさしく、その〔結論〕に到達したのだ──〔もう二度と〕会わないことに」〔と〕。ということで──

 

 マニカンタ・ジャータカが、第三となる。

 

3. 1. 4. クンダカクッチシンダヴァ・ジャータカ(米屑を腹にするシンダヴァ・本生物語254)

 

10. 〔菩薩は尋ねた〕「〔かつては〕草や残り物を食べて〔満足し〕、飯汁や米屑を食べて〔満足した、おまえである〕。これが、おまえの食料として存したのに、今や、どうして、食べないのだ」〔と〕。

 

11. 〔馬が答えた〕「そこにおいて、〔その〕人のことを、〔人々が〕知らないなら──〔その〕出生によって、あるいは、〔その〕教導によっても──偉大なる梵よ、そこにおいては、たとえ、飯汁や米屑でも、多くのものを〔食べるでしょう〕。

 

12. しかしながら、あなたは、まさに、わたしのことを覚知します。『これは、そのような、最上の馬である』〔と〕。知っている者として、知っていることに由来して、〔わたしは〕あなたの米屑を食物としないのです」〔と〕。ということで──

 

 クンダカクッチシンダヴァ・ジャータカが、第四となる。

 

3. 1. 5. スカ・ジャータカ(鸚鵡・本生物語255)

 

13. その鳥が、食について量を了知していた、そのあいだは、それまでは、〔平穏無事に〕歳月を重ね、かつまた、母を養った。

 

14. しかしながら、まさに、より多くの食を持ち運んだ、そのことから、そののち、まさしく、そこにおいて、沈んだのだった。なぜなら、彼は、量を知らない者と成ったからである。

 

15. それゆえに、量を知ることは、食にたいし貪求なくあることは、善きことである。なぜなら、量を知らない者は沈むが、しかしながら、量を知る者は沈むことがないからである。ということで──

 

 スカ・ジャータカが、第五となる。

 

3. 1. 6. ジャルーダパーナ・ジャータカ(古井戸・本生物語256)

 

16. 水を義(目的)とする商人たちが、古井戸を掘っている。商人たちは、到達した──鉄に、銅に、そして、錫に、鉛に、さらに、銀に、金に、多くの真珠と瑠璃に。

 

17. しかしながら、彼らは、それに満足せず、より一層、より一層に掘った。そこにおいて、彼らを、おぞましく火をもつ毒蛇が、火で〔焼き〕殺した。

 

18. それゆえに、掘るなら、掘り過ぎないように。まさに、掘り過ぎは、悪しきことである。そして、掘ることで、財は得られたが、掘り過ぎたことで、滅ぼされたのだ。ということで──

 

 ジャルーダパーナ・ジャータカが、第六となる。

 

3. 1. 7. ガーマニチャンダ・ジャータカ(ガーマニチャンダ・本生物語257)

 

19. この者は、諸々の家屋のことに巧みな智ある者ではない。この者は、〔欲の〕妄動ある者であり、皺顔をしている。作られたもの、作られたものを、まさに、汚すであろう。このような法(性質)あるのが、この族種である。

 

20. これは、心ある者の毛にあらず。この者は、〔心を〕静息させる獣にあらず。〔父の〕ジャナサンダ〔王〕が、わたしに教えてくれたのだ。この者は、何であれ、識知することはない。

 

21. 自らの、母を、あるいは、父を、兄弟を、姉妹を、そのような男は養えない。十の車ある者(ジャナサンダ王)が、わたしに教えてくれたのだ。ということで──

 

 ガーマニチャンダ・ジャータカが、第七となる。

 

3. 1. 8. マンダートゥ・ジャータカ(マンダータルのもの・本生物語258)

 

22. すなわち、月と日が、〔天空を〕行き渡り、方々に遍照しながら光り輝くかぎり、まさしく、全ての奴隷たちが、マンダータルのものとなる──それらの、地に依拠する命あるものたちは。

 

23. 諸々の欲望〔の対象〕にたいし、貨幣の雨をもってしても、満足〔の思い〕は見出されない。「諸々の欲望〔の対象〕は、悦楽少なく、苦しみである」〔と〕、かくのごとく識知して、賢者は──

 

24. 彼は、天の諸々の欲望〔の対象〕にたいしてさえも、喜びには到達しない。渇愛の滅尽に喜びある者が、正等覚者(ブッダ)の弟子と成る。ということで──

 

 マンダートゥ・ジャータカが、第八となる。

 

3. 1. 9. ティリータヴァッチャ・ジャータカ(ティリータヴァッチャ・本生物語259)

 

25. 〔王子が尋ねた〕「この者には、明知から作られるものは、何であれ、存在しません。眷属ではなく、また、あなたの道友でもありません。そこで、何を理由に、三つの棒をもつティリータヴァッチャは、至高の〔行乞の〕食を受けるのですか」〔と〕。

 

26. 〔王が答えた〕「諸々の災難あるとき、戦いに敗れたわたしに、おぞましき荒野のなかに独りある〔わたし〕に、〔同情を〕為して、苦難に陥った〔わたし〕に、手を差し伸べてくれた。それによって、苦しみに打ち負かされた〔わたし〕は、〔その苦しみを〕超え渡ったのだ。

 

27. 〔まさに〕この、〔ティリータヴァッチャの、婆羅門としての〕為すべき〔行為〕によって、〔わたしは〕ここに至り得たのであり、夜魔の境域から〔帰還し〕、生の世にあるのだ。息子よ、ティリータヴァッチャは、利得に値する方である。彼に、財物を施すのだ。そして、祭祀を執り行なうのだ」〔と〕。ということで──

 

 ティリータヴァッチャ・ジャータカが、第九となる。

 

3. 1. 10. ドゥータ・ジャータカ(使者・本生物語260)

 

28. 〔婆羅門が言った〕「それがために、義(目的)ある者たちは、遠くから至り来る。乞い求めるためには、朋友ならざる者のところにさえも。〔まさに〕その、腹(食欲)のために、わたしは、使者としてある。車上の雄牛(王)よ、わたしに怒ってはならない。

 

29. それがために、そして、昼に、さらに、夜に、人間たちは、〔その〕支配に至り来る。〔まさに〕その、腹のために、わたしは、使者としてある。車上の雄牛よ、わたしに怒ってはならない」〔と〕。

 

30. 〔菩薩は言った〕「婆羅門よ、あなたに、千の雌の赤牛を、牛主と共に施す。まさに、使者が、使者に、どうして、施さずにいられよう。わたしたちもまた、まさしく、それがために、使者たちとして〔世に〕有るのだ」〔と〕。ということで──

 

 ドゥータ・ジャータカが、第十となる。

 

 妄想の章が、第一となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「優れた矢作り(妄想と貪欲)とひと握りの胡麻と宝珠(マニカンタ)があり、馬の王(米屑を腹にするシンダヴァ)と鳥(鸚鵡)と毒蛇(古井戸)があり、ジャナサンダ(ガーマニチャンダ)と貨幣の雨(マンダータルのもの)があり、さらに、ティリータ(ティリータヴァッチャ)があり、さらに、優れた使者とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

3. 2. 蓮華の章

 

3. 2. 1. パドゥマ・ジャータカ(蓮華・本生物語261)

 

31. 〔蓮華を手にする鼻のない男に、長兄が言った〕「すなわち、そして、諸々の髪が、さらに、諸々の髭が、切られたもの、切られたものが、〔ふたたび〕成長するように、このように、あなたの鼻は成長せよ。乞い求められた者として、蓮華を与えたまえ」〔と〕。

 

32. 〔次兄が言った〕「すなわち、秋に実る種が、田畑に蒔かれ、成長するように、このように、あなたの鼻は成長せよ。乞い求められた者として、蓮華を与えたまえ」〔と〕。

 

33. 〔菩薩は言った〕「これらの者たちは、両者ともどもに、〔虚論を〕交わす。『さては、〔それらの〕蓮華を与えてくれるだろう』〔と〕。彼らが、あるいは、説くも、あるいは、説かなくも、鼻に、成長は存在しない。わたしは乞い求める──乞い求められた者として、友よ、〔それらの〕蓮華を与えたまえ。」〔と〕。ということで──

 

 パドゥマ・ジャータカが、第一となる。

 

3. 2. 2. ムドゥパーニ・ジャータカ(柔らかい手・本生物語262)

 

34. 〔王女が言った〕「もし、そして、彼に、柔らかい手があり、さらに、彼に、善く訓練された象があり、かつまた、〔空が〕暗黒となり、雨が降るなら、そこで、そのとき、まちがいなく、〔わたしは、そこに〕存するでしょう」〔と〕。

 

35. 〔菩薩は言った〕「柔和な会話では十分ならず、川に等しき満ち難さ、彼女たちは、〔悪所に〕沈む。それを見出して、遠く離れ、遍く避けるがよい。

 

36. あるいは、欲によって、あるいは、財によって、これらの者たちが、彼に仕え親しむなら、火が、燃料を(※)〔焼き尽くす〕ように、すみやかに、彼を焼き尽くす」〔と〕。ということで──

 

※ テキストには saṃ ṭhānaṃ とあるが、PTS版により saṇṭhānaṃ と読む。以下の平行箇所も同様。

 

 ムドゥパーニ・ジャータカが、第二となる。

 

3. 2. 3. チューラパローバナ・ジャータカ(小なる誘惑・本生物語263)

 

37. 水を破ることなく(水に沈まずに)、神通によって、自ら、やってきて、婦女と混合の状態に至って(女と性交して)、〔あなたは〕大海に沈む。

 

38. 誘引する大いなる幻想にして、梵行を動乱させる〔女〕たちは、〔悪所に〕沈む。それを見出して、遠く離れ、遍く避けるがよい。

 

39. あるいは、欲によって、あるいは、財によって、これらの者たちが、彼に仕え親しむなら、火が、燃料を〔焼き尽くす〕ように、すみやかに、彼を焼き尽くす。ということで──

 

 チューラパローバナ・ジャータカが、第三となる。

 

3. 2. 4. マハーパローバナ・ジャータカ(大なる誘惑・本生物語264)

 

40. 〔世尊は言った〕「パナーダという名の、その王──彼の宮殿は黄金で、横〔幅〕は十六射程、高さは〔その〕千倍ある〔と、人々は〕言う。

 

41. 千の射程があり、百の階があり、旗で飾られ、黄金で作られ、そこにおいて、六千の音楽神たちが、七様に舞踏した。

 

42. そのとき、このように、このことは存していた──バッダジよ、すなわち、〔あなたが〕語るとおりに。そのとき、わたしは、帝釈〔天〕として存していた──あなたの執事として」〔と〕。ということで──

 

 マハーパローバナ・ジャータカが、第四となる。

 

3. 2. 5. クラッパ・ジャータカ(尖り矢・本生物語265)

 

43. 〔隊商が尋ねた〕「諸々の尖り矢が弓から勢いよく放たれたのを見て、油で磨かれた諸々の鋭い剣が掴まれたのを〔見て〕、死が迫った、その恐怖のなかで、いったい、何ゆえに、あなたに、驚愕が有ることなくあったのか」〔と〕。

 

44. 〔菩薩は答えた〕「諸々の尖り矢が弓から勢いよく放たれたのを見て、油で磨かれた諸々の鋭い剣が掴まれたのを〔見て〕、死が迫った、その恐怖のなかで、広大にして巨万の感嘆〔の思い〕を、〔わたしは〕得た。

 

45. 〔まさに〕その〔わたし〕は、感嘆〔の思い〕が生じた者となり、朋友ならざる者たちを征服した。まさしく、過去において、わたしの生命は、〔彼らに〕献じられたものとして存した。まさに、生命に執着を為すことなく、勇士は、いついかなる時も、勇士の為すべきことを為す」〔と〕。ということで──

 

 クラッパ・ジャータカが、第五となる。

 

3. 2. 6. ヴァータッガシンダヴァ・ジャータカ(ヴァータッガシンダヴァ・本生物語266)

 

46. 〔子が尋ねた〕「彼のことで〔思い悩み〕、痩せ細り青ざめた者として、〔あなたは〕存しています。彼のことで〔思い悩み〕、食事は、〔あなたにとって〕好ましからず。この方が、彼がやってきたのです──〔あなたの〕夫たる方が。どうして、今や、逃げるのですか」〔と〕。

 

47. 〔母が答えた〕「それで、もし、また、まさしく、最初から、まさに、親愛〔の情〕が生まれるなら、婦女たちの福徳は失われます。息子よ、それゆえに、わたしは逃げたのです」〔と〕。

 

48. 〔世尊は言った〕「福徳ある者たちの家に生まれた者がやってきたのに、彼女が求めないなら、長夜にわたり憂い悲しむ(機会を逃し、あとで後悔する)。バッダリーが、ヴァータッガを〔求めなかった〕ように」〔と〕。ということで──

 

 ヴァータッガシンダヴァ・ジャータカが、第六となる。

 

3. 2. 7. カッカタカ・ジャータカ(蟹・本生物語267)

 

49. 〔菩薩は言った〕「角ある獣にして、導きの眼は細長く、骨の皮膚をもち、水に臥す、毛なきものがいる。その〔蟹〕に征服された〔わたし〕は、〔自らの〕困窮を泣き叫ぶ。まさしく、まさに、〔おまえの〕命に等しきわたしを捨棄してはならない」〔と〕。

 

50. 〔雌象が言った〕「尊貴なる方よ、〔わたしが〕あなたを捨棄することはありません──六十歳のクンジャラ〔象〕たる〔あなた〕を。四辺の地において、あなたは、わたしにとって極めて愛しき者として〔世に〕有ります」〔と〕。

 

51. 〔蟹に、雌象が言った〕「海のなかに、ガンガー〔川〕のなかに、さらに、ヤムナー〔川〕のなかに、それらの蟹たちがいるとして、彼らのなかの最勝の水棲者は、あなたです。泣き叫んでいる〔わたし〕のために、亭主を解き放ってください」〔と〕。ということで──

 

 カッカタカ・ジャータカが、第七となる。

 

3. 2. 8. アーラーマドゥーサカ・ジャータカ(林園を汚す者・本生物語268)

 

52. 〔菩薩は言った〕「彼が、まさに、共に赴いた全ての者たちの最勝者として敬われ、〔世に〕有ったとして、彼のこの智慧が、このようなものであるなら、他の人々が、まさしく、何だというのだろう(話にならない)」〔と〕。

 

53. 〔猿が尋ねた〕「梵(婆羅門)よ、まさしく、このように、あなたは、了知せずして非難します。木が〔大地に〕確立しているのを、根を見ずして、どのように知るのですか(木を引き抜いて根の成長を確かめた)」〔と〕。

 

54. 〔菩薩は答えた〕「わたしは、あなたたちを非難するのではない──さらに、すなわち、林のなかの他の猿たちも。ヴィッサセーナ〔王〕こそは、非難されるべきである。育成している木々は、彼の義(目的)とするところなのだ(猿に木の世話をまかせた王が悪い)」〔と〕。ということで──

 

 アーラーマドゥーサカ・ジャータカが、第八となる。

 

3. 2. 9. スジャータ・ジャータカ(スジャータ・本生物語269)

 

55. まさに、色艶を成就し、美妙にして、愛しき見た目あるも、粗野な言葉あるなら、愛しき者と成らない──この世において、さらに、他〔の世〕において。

 

56. まさに、〔あなたは〕見ないのか。この、黒く、醜き色艶で、斑点だらけの、郭公を──優雅な言葉あることで、多くの命ある者たちにとって愛しくある者を。

 

57. それゆえに、明慧によって話し、〔心が〕高揚せず、友誼の言葉ある者として、〔世に〕存するべきである。義(道理)を〔明らかにし〕、そして、法(真理)を明らかにするなら、彼の語るところは、〔蜜のように〕甘美である。ということで──

 

 スジャータ・ジャータカが、第九となる。

 

3. 2. 10. ウルーカ・ジャータカ(梟・本生物語270)

 

58. 〔烏が言った〕「まさに、全ての親族たちによって、梟は、イッサラ(イーシュヴァラ神・自在神)と為された(王に推挙された)。それで、もし、親族たちに承認されたなら、わたしは、一つの言葉を話したい」〔と〕。

 

59. 〔鳥たちが言った〕「友よ、話したまえ──義(道理)を、そして、法(真理)を、全部を──〔あなたは〕承認された。なぜなら、青年の鳥たちは、智慧ある者たちとして、光輝を保つ者たちとして、存しているからだ」〔と〕。

 

60. 〔烏が言った〕「あなたたちに、幸せ〔有れ〕。梟の灌頂(即位)は、わたしにとって好ましからず。怒っていない〔彼〕の顔を見たまえ。怒った〔彼〕は、どのように為すのであろう」〔と〕。ということで──

 

 ウルーカ・ジャータカが、第十となる。

 

 蓮華の章が、第二となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「最上の蓮華と吉祥の呼び名ある象(柔らかい手)があり、大海(小なる誘惑)を有するものと宮殿(大なる誘惑)と優れたクラッパがあり、そこで、バッダリー(ヴァータッガシンダヴァ)とクンジャラ(蟹)と木(林園を汚す者)があり、さらに、粗野な言葉(スジャータ)があり、優れた梟とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

3. 3. 井戸の章

 

3. 3. 1. ウダパーナドゥーサカ・ジャータカ(井戸を汚す者・本生物語271)

 

61. 〔菩薩は尋ねた〕「林にある聖賢が、長夜にわたり苦行ある者が、苦難をもって作った井戸を、友よ、〔あなたは〕どのように扱ったのか」〔と〕。

 

62. 〔野狐が答えた〕「これは、野狐たちの法(規則)である──すなわち、飲んで〔そののち〕、排便するのは。父祖代々の法(規則)であり、それを譴責することは、〔あなたには〕できない」〔と〕。

 

63. 〔菩薩は言った〕「すなわち、あなたたちにとって、このようなものが、法(規則)であるなら、また、どのようなものが、法(規則)ならざるものとなるのか。あなたたちの、法(規則)を、あるいは、法(規則)ならざるものを、いついかなる時も、〔わたしたちが〕見ることがあってはならない」〔と〕。ということで──

 

 ウダパーナドゥーサカ・ジャータカが、第一となる。

 

3. 3. 2. ブヤッガ・ジャータカ(虎・本生物語272)

 

64. 〔菩薩は言った〕「その朋友と交わりあることから、束縛からの平安が衰退するなら、賢者は、まさしく、過去における、彼の卓越の状態を、〔両の〕眼を〔守る〕ように守るべきである。

 

65. その朋友と交わりあることから、束縛からの平安が増大するなら、賢者は、一切の為すべきことにおける、〔その〕行持を、自己に等しきものとして為すべきである」〔と〕。

 

66. 〔天神が言った〕「虎たちよ、さあ、戻れ。大いなる林へと向かい行け。〔人が〕虎なき林を切ることがあってはならない。〔あなたたちが〕林なき虎たちと成ってはならない」〔と〕。ということで──

 

 ブヤッガ・ジャータカが、第二となる。

 

3. 3. 3. カッチャカ・ジャータカ(亀・本生物語273)

 

67. 〔菩薩は尋ねた〕「いったい、誰なのだ──まさしく、〔山盛りの〕食事を持ち上げ、まさしく、手に満ちている、〔その〕婆羅門は。いったい、どこで、行乞を歩み、どのような信ある者のもとへと近づいて行ったのだ」〔と〕。

 

68. 〔猿が答えた〕「わたしは、思慮浅き猿として〔世に〕存しています。諸々の撫でるべきではないものを撫でました。あなたは、わたしを解き放ってください。あなたに、幸せ〔有れ〕。解き放たれたなら、山に去ります」〔と〕。

 

69. 〔亀に、菩薩は言った〕「亀たちは、カッサパ〔姓〕の者たちとして〔世に〕有る。猿たちは、コンダンニャ〔姓〕の者たちとして〔世に〕有る。カッサパよ、コンダンニャを解き放て──あなたに淫事を為した者を」〔と〕。ということで──

 

 カッチャカ・ジャータカが、第三となる。

 

3. 3. 4. ローラ・ジャータカ(妄動・本生物語274)

 

70. 〔菩薩は尋ねた〕「誰なのだ──この冠毛ある雌鶴は、雷鳴を父祖とする女盗賊は。雌鶴よ、此方に来たれ。わたしの友人である烏は、狂暴なのだ」〔と〕。

 

71. 〔烏は答えた〕「わたしは、冠毛ある雌鶴ではありません。わたしは、〔欲の〕妄動ある烏として存しています。あなたの言葉を為さずして、見てください、〔羽を〕刈り取られた帰還者として、〔わたしは〕存しています」〔と〕。

 

72. 〔菩薩は言った〕「友よ、ふたたび、また、〔あなたは、過ちを〕犯す。まさに、あなたの戒は、そのようなもの。まさに、諸々の人間の受益物は、鳥によっては善き受益と成らず」〔と〕。ということで──

 

 ローラ・ジャータカが、第四となる。

 

3. 3. 5. ルチラ・ジャータカ(好ましきもの・本生物語275)

 

73. 〔菩薩は尋ねた〕「誰なのだ──烏の巣に坐している、この好ましき雌鶴は。わたしの友人である烏は、狂暴なのだ。そして、この巣は、彼のものなのだ」〔と〕。

 

74. 〔烏が答えた〕「友よ、粟を食とする鳥よ、はてさて、〔あなたは〕わたしのことを知らないのでは。あなたの言葉を為さずして、見てください、〔羽を〕刈り取られた帰還者として、〔わたしは〕存しています」〔と〕。

 

75. 〔菩薩は言った〕「友よ、ふたたび、また、〔あなたは、過ちを〕犯す。まさに、あなたの戒は、そのようなもの。まさに、諸々の人間の受益物は、鳥によっては善き受益と成らず」〔と〕。ということで──

 

 ルチラ・ジャータカが、第五となる。

 

3. 3. 6. クルダンマ・ジャータカ(クル〔国〕の法・本生物語276)

 

76. 〔婆羅門たちが言った〕「人の君主よ、あなたの、そして、信を、さらに、戒を、〔両者を〕見出して、〔わたしたちはやってきました〕。〔あなたの〕黒色〔の象〕と、〔わたしたちの〕金色〔の財〕を、カリンガ〔国〕において交換するのです」〔と〕。

 

77. 〔菩薩は言った〕「そして、食べ物で養われる者たちも、さらに、養われない者たちも、彼らが、指定して〔そののち〕、ここに赴くからには、彼らの全てが、拒絶されるべきではありません。これは、往古の師匠の言葉です。

 

78. 婆羅門たちよ、この象を、あなたたちに施します──王に値するものであり、王が受益するものである、福徳ある〔この象〕を──〔装いを〕十分に作り為し、金の網で覆われた〔象〕を。欲するところに、馭者と共に赴きたまえ」〔と〕。ということで──

 

 クルダンマ・ジャータカが、第六となる。

 

3. 3. 7. ローマカ・ジャータカ(羽毛ある者・本生物語277)

 

79. 〔苦行者が尋ねた〕「羽毛ある者(鳩)よ、正味五十年を超えるあいだ、〔わたしたちは〕岩の洞窟に住した。かつて、卵生の者(鳩)たちは、わたしの手中に至り来る──疑うことなく、自己が寂滅した者(安心安堵の者)たちとして。

 

80. 鳥よ、それらの二生の者(鳩)たちは、今や、どのような義(目的)に思い入れある者たちとなり、他の山窟へと親しみ行くのか。もはや、すなわち、かつてのように、わたしのことを思いなさないのか。長きに離住したことから、そこで、あるいは、彼らは、〔もはや、わたしの知る〕これらの者たちではないのか」〔と〕。

 

81. 〔菩薩は答えた〕「〔わたしたちは〕あなたのことを知る。わたしたちは、等しく遍く迷乱した者たちにあらず。まさしく、あなたは、〔まさに〕その〔かつてのあなた〕であり、わたしたちも、〔まさに〕その〔かつてのわたしたち〕として存している──他の者たちにあらず。しかしながら、あなたの心は、この人々にたいし、汚れ(悪意)あるものとなった。アージーヴィカ(活命者・邪命外道)たちよ、それによって、〔わたしたちは〕あなたを恐れるのだ」〔と〕。ということで──

 

 ローマカ・ジャータカが、第七となる。

 

3. 3. 8. マヒンサラージャ・ジャータカ(水牛の王・本生物語278)

 

82. 〔夜叉が言った〕「どのような義(目的)を確信して、心が軽佻で裏切り者の〔彼が与える〕この苦痛を、一切の欲望〔の対象〕を与えてくれる者の〔施し〕であるかのように、〔あなたは〕忍受するのだ。

 

83. この〔猿〕を、角で打ってしまえ。さらに、足で踏んでしまえ。そして、〔彼を〕制止する者が存在しないなら、愚者たちは、より一層、激怒するであろう」〔と〕。

 

84. 〔菩薩は言った〕「この者は、まさしく、わたしのことを思いながら、他〔の水牛〕たちにもまた、このように〔悪事を〕為すでしょう。そこにおいて、彼ら(怒った他の水牛たち)は、彼(猿)を打つでしょう。それは、わたしにとって、〔災禍からの〕解き放ちと成るでしょう(猿の悪事から解放されることになる)」〔と〕。ということで──

 

 マヒンサラージャ・ジャータカが、第八となる。

 

3. 3. 9. サタパッタ・ジャータカ(鶴・本生物語279)

 

85. すなわち、少年が、道において、林を餌場とする雌野狐のことを、〔彼の〕義(利益)を欲し〔彼に危険を〕知らせているのに、「〔わたしの〕義(利益)なきを欲する者である」と思いなし、〔彼の〕義(利益)なきを欲する鶴のことを、「〔わたしの〕義(利益)を欲する者である」と思いなすように──

 

86. まさしく、このように、ここに、一部の者は、そのような人として〔世に〕有り、益ある者たちから言葉を説かれたとして、〔それとは〕逆〔の観点〕から受け容れる。

 

87. そして、或る者たちが、まさに、彼のことを賞賛するなら、あるいは、恐怖のゆえに賞揚するなら、まさに、彼は、その者のことを、朋友と思いなす──少年が、鶴のことを、〔朋友と思いなす〕ように。ということで──

 

 サタパッタ・ジャータカが、第九となる。

 

3. 3. 10. プタドゥーサカ・ジャータカ(器を汚す者・本生物語280)

 

88. 〔菩薩は言った〕「まさに、たしかに、まちがいなく、獣の王は、器作りの熟知者である。まさに、そのように、器を汚す(破壊する)。まちがいなく、他〔の器〕を作るのであろう」〔と〕。

 

89. 〔猿が言った〕「わたしの、あるいは、母も、あるいは、父も、器作りの熟知者ではない。作られたもの、作られたものを、まさに、〔わたしたちは〕汚す。このような法(性質)あるのが、この族種である」〔と〕。

 

90. 〔菩薩は言った〕「すなわち、あなたたちにとって、このようなものが、法(規則)であるなら、また、どのようなものが、法(規則)ならざるものとなるのか。あなたたちの、法(規則)を、あるいは、法(規則)ならざるものを、いついかなる時も、〔わたしたちが〕見ることがあってはならない」〔と〕。ということで──

 

 プタドゥーサカ・ジャータカが、第十となる。

 

 井戸の章が、第三となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「優れた井戸と林の虎と猿(亀)があり、冠毛ある者(妄動)があり、そして、優れた好ましき雌鶴(好ましきもの)があり、善き人の君主(クル〔国〕の法)と羽毛ある者と汚す者(水牛の王)があり、さらに、優れた鶴と器作り(器を汚す者)があり、〔それらの〕十がある」と。

 

3. 4. アッバンタラの章

 

3. 4. 1. アッバンタラ・ジャータカ(アッバンタラ・本生物語281)

 

91. 〔帝釈天が言った〕「アッバンタラという名の木がある。その〔木〕には、〔まさに〕この、天の果がある。食べて〔そののち〕、女は、異常嗜好の者となり、転輪〔王〕を産む。

 

92. 幸いなる者よ、あなたもまた、王妃として存している──さらに、また、〔まさに〕その、亭主にとって愛しき者として。王は、あなたのために、持ってくるであろう──〔まさに〕この、アッバンタラの果を」〔と〕。

 

93. 〔鸚鵡が言った〕「主人の義(利益)に勤しんでいる者が到達する、その境位──勇士にして自己を完全に捨て去る者が〔到達する、その境位を〕得つつある者として、わたしは有る」〔と〕。ということで──

 

 アッバンタラ・ジャータカが、第一となる。

 

3. 4. 2. セイヤ・ジャータカ(より勝る者・本生物語282)

 

94. 〔菩薩は言った〕「すなわち、より勝る者に仕え親しむなら、より勝ることを部分とする者と〔成り〕、より勝ることと成る。一者と関係を為して、百者の屠殺されるべき者たちを解き放ったのだ。

 

95. それゆえに、一切の世〔の人々〕と関係を為して、〔人々と〕一緒に、死してのち、天上に去り行くであろう。カーシヤの者たちよ、この〔言葉〕を聞け」〔と〕。

 

96. 〔世尊は言った〕「この〔言葉〕を説いて、バーラーナシーを収め取るカンサ大王は、弓を、さらに、矢じりを、捨て置いて、〔心の〕自制に到達した」〔と〕。ということで──

 

 セイヤ・ジャータカが、第二となる。

 

3. 4. 3. ヴァッダキースーカラ・ジャータカ(大工の猪・本生物語283)

 

97. 〔猪が言った〕「かつて、あなたは、優れたもの、優れたものを、打ち倒しながら、〔世を〕歩んだ──この地域において、猪たちを征服して。その〔あなた〕は、今や、独り、逃れて、思い惑う。虎よ、いったい、あなたに、力はあるのか。そして、今日、〔あなたに、力は〕見出されない」〔と〕。

 

98. 〔虎が言った〕「かつて、これらの者たちは、まさに、方々へと至り行く──恐怖に苦悩し、多々に避難所を探し求める者たちとなり。今や、彼らは、集いあつまって、一緒に暮らす。今日、そこにおいて安立する、これらの者たちは、わたしには打ち負かし難くある」〔と〕。

 

99. 〔菩薩は言った〕「集いあつまった群れの者たちに、礼拝が存せ。未曾有の友誼を自ら見て、〔わたしは〕説く。そこにおいて、牙ある獣たちが、虎に勝ったのだ。和合あることから、諸々の牙の力のもと、〔猪たちは、虎から〕解き放たれる」〔と〕。ということで──

 

 ヴァッダキースーカラ・ジャータカが、第三となる。

 

3. 4. 4. シリ・ジャータカ(吉祥・本生物語284)

 

100. すなわち、思い入れある者たちが、多くの財を集めるとして、運なき者たちであるなら、技能ある者たちであれ、さらに、技能なき者たちであれ、運ある者たちが、それら〔の財〕を享受する。

 

101. 一切所において、善き〔行為〕を為した者(功徳を作った者)のもとに、まさしく、他の命ある者たちを超え行って、多くの財物が生起する──〔心を〕専注し傾ける者たちにおいてもまた。

 

102. 鶏も、諸々の宝珠も、杖も、さらに、婦女たちも──〔それらは〕善き〔行為〕(功徳)の特相であり、悪しき〔行為〕なく、善き〔行為〕を為した、〔そのような〕人のもとに生起する。ということで──

 

 シリ・ジャータカが、第四となる。

 

3. 4. 5. マニスーカラ・ジャータカ(宝珠と猪・本生物語285)

 

103. 〔猪が尋ねた〕「〔わたしたち〕三十ばかり〔の猪〕は、洞窟において、七年のあいだ住します。〔わたしたちは〕宝珠の輝きに打ちのめされます。かくのごとく、わたしたちの相談するところと成りました。

 

104. およそ、〔わたしたちが〕宝珠を擦るかぎり、宝珠は、より一層、浄化します。さて、今や、このことを、〔あなたに〕尋ねます。ここに、何を為すべきと、〔あなたは〕思いますか」〔と〕。

 

105. 〔菩薩は答えた〕「この宝珠は、汚濁なく離垢にして浄美なる瑠璃である。その〔宝珠〕の吉祥を打ち砕くことはできない。猪たちよ、立ち去りなさい」〔と〕。ということで──

 

 マニスーカラ・ジャータカが、第五となる。

 

3. 4. 6. サールーカ・ジャータカ(サールーカ・本生物語286)

 

106. 〔菩薩は言った〕「〔豚の〕サールーカを羨んではならない。諸々の病める食べ物を、〔サールーカは〕食べる(太らせて食肉とするための餌を食べている)。〔食に〕思い入れ少なき者となり、籾殻を喰え──〔まさに〕この、長寿の特相あるものを。

 

107. 今や、従僕を擁するその客が、ここに到来して、そこで、〔おまえは〕見る──〔客に供するために屠殺された豚の〕サールーカを、棍棒を下され横たわっている〔サールーカ〕を」〔と〕。

 

108. 〔世尊は言った〕「切り裂かれたサールーカを見て、棍棒を下され横たわっている〔サールーカ〕を〔見て〕、老いた牛たちは熟慮した。『わたしたちの籾殻のほうが、まさしく、優れている』」〔と〕。ということで──

 

 サールーカ・ジャータカが、第六となる。

 

3. 4. 7. ラーバガラハ・ジャータカ(利得の非難・本生物語287)

 

109. 〔菩薩は言った〕「狂者ならざる者にあらず、中傷なき者にあらず、芸人ならざる者にあらず、騒擾なき者にあらず──迷乱した者たちのなかで利得を得るのは。これは、あなたへの教示である」〔と〕。

 

110. 〔弟子が言った〕「婆羅門よ、厭わしきものとして存せ──〔まさに〕その、盛名の利得は、さらに、財産の利得は。その生活が、堕所によるものであるなら、あるいは、法(正義)ならざる性行によるものであるなら──

 

111. たとえ、もし、鉢を取って、家なき者となり、遍歴遊行するとして、この生き方こそは、より勝っている──そして、すなわち、法(正義)ならざるものによる〔利得の〕探し求めであるなら、〔それよりも〕」〔と〕。ということで──

 

 ラーバガラハ・ジャータカが、第七となる。

 

3. 4. 8. マッチュッダーナ・ジャータカ(ひとまとめの魚・本生物語288)

 

112. 〔菩薩は言った〕「魚たちは、千〔金〕を超えるに値する。すなわち、このことを信じられる者は、その者は、〔どこにも〕存在しない。そして、わたしには、ここに、七銭が存在する。わたしもまた、〔まさに〕その、ひとまとめの魚を買うべきである」〔と〕。

 

113. 〔天神が言った〕「〔あなたは〕魚たちに食料を与えて、わたしに施物を施しました。あなたによって為された敬恭を、その施物を、思い浮かべているところです。

 

114. 汚れた心の者に、繁栄は有りません。さらに、また、彼を、天神たちは供養しません。彼は、悪行の行為を為す者であり、父祖の所有物を〔奪い取り〕、兄を騙したのです」〔と〕。ということで──

 

 マッチュッダーナ・ジャータカが、第八となる。

 

3. 4. 9. ナーナーチャンダ・ジャータカ(種々なる欲・本生物語289)

 

115. 〔婆羅門が言った〕「大王よ、〔わたしたちは〕種々なる欲〔の思い〕ある者たちとして、一つ家に住します。わたしは、優れた村を求めます。そして、婆羅門尼は、百の牛を──

 

116. そして、子は、良馬の車を、そして、少女は、宝珠の耳飾を、〔求めます〕。さらに、すなわち、この卑しむべきプンニカーは、臼を望みます」〔と〕。

 

117. 〔菩薩は言った〕「婆羅門には、優れた村を、婆羅門尼には、百の牛を、子には、良馬の車を、少女には、宝珠の耳飾を、〔与えよ〕。さらに、すなわち、この卑しむべきプンニカーには、臼を与えよ」〔と〕。ということで──

 

 ナーナーチャンダ・ジャータカが、第九となる。

 

3. 4. 10. シーラヴィーマンサカ・ジャータカ(戒の審査者・本生物語290)

 

118. まさしく、まさに、戒は、善きものである。戒は、世における無上なるものである。見よ──おぞましき毒ある蛇が、戒ある者ということで、殺されないのだ(性質がよく無害であれば殺されない)。

 

119. 〔まさに〕その、わたしは、戒を、〔心に〕定めるであろう──世において、至福なるものと許認された〔戒〕を。聖なる行持と励行ある者は、それによって、戒ある者と説かれる。

 

120. そして、親族たちにとって愛しき者と成り、さらに、朋友たちのなかで遍照する。戒ある者は、身体の破壊ののち、善趣に再生する。ということで──

 

 シーラヴィーマンサカ・ジャータカが、第十となる。

 

 アッバンタラの章が、第四となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「木(アッバンタラ)と優れた最上のカンサ(より勝る者)と虎と獣(大工の猪)があり、諸々の宝珠(吉祥)と宝珠(宝珠と猪)とサールーカという呼び名あるものがあり、教示(利得の非難)があり、また、そして、優れた魚(ひとまとめの魚)があり、宝珠の耳飾(種々なる欲)とともに、『まさに』(戒の審査者)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

3. 5. 瓶の章

 

3. 5. 1. スラーガタ・ジャータカ(酒瓶・本生物語291)

 

121. 一切の欲望〔の対象〕を与えてくれる瓶を──質悪き者が、〔その〕瓶を得て、それを守っている、そのかぎりは、それまでのあいだ、彼は、安楽に満ち栄える。

 

122. そして、〔彼が〕酔っぱらい、かつまた、倨傲となり、放逸から瓶を壊した、そのときは、そのとき、そして、〔彼は〕裸となり、かつまた、貧乏となり、愚者は、のちに打ちのめされる。

 

123. まさしく、このように、彼が、財を得て、放逸の者となり、〔財を〕遍く受益するなら、思慮浅き者は、のちに悩み苦しむ。質悪き者が、瓶を壊して〔打ちのめされた〕ように。ということで──

 

12. スラーガタ・ジャータカが、第一となる。

 

3. 5. 2. スパッタ・ジャータカ(スパッタ・本生物語292)

 

124. 大王よ、バーラーナシーに居住する烏の王がいる。八万〔の従者〕に取り囲まれたスパッタである。

 

125. 彼の妻であるスパッサーは、異常嗜好の者であり、〔特別のものを〕食することを求める──王の厨房で調理された高価な王の食料を。

 

126. わたしは、彼らのために、使者として送られた者であり、かつまた、王のために、ここにやってきた者として存している。主人への敬恭を果たし、鼻に傷を負ったのだ。ということで──

 

 スパッタ・ジャータカが、第二となる。

 

3. 5. 3. カーヤニッビンダ・ジャータカ(身体の厭離・本生物語293)

 

127. 或る何かの病に襲われ、病に激しく苦しみ悩んでいる、わたしの、この亡骸(肉体)は、すみやかに遍く干上がる──あたかも、熱砂のうえに置かれた花のように。

 

128. 善き生まれならざるものが、善き生まれなるものと見なされ、清らかならざるものが、清らかなるものとして敬われ、種々なる死骸(汚物)に遍く満ちるものが、善き生まれの形態あるものとなる──〔あるがままに〕見ていない者にとっては。

 

129. 厭わしきものとして存せ──この病める腐敗の身体は──忌避されるべきものにして、清らかならざるものたる、病の法(性質)あるものは。そこにおいて、放逸となり、耽溺する人々は、善き境遇への再生の道を失う。ということで──

 

 カーヤニッビンダ・ジャータカが、第三となる。

 

3. 5. 4. ジャンブカーダカ・ジャータカ(ジャンブを喰う者・本生物語294)

 

130. 〔野狐が言った〕「この、麗しくまろやかな声の者は、声を出す者たちのなかの最上の者は、誰なのでしょう。ジャンブ〔樹〕の枝にあり、若い孔雀のように鳴く、死滅なき者は」〔と〕。

 

131. 〔烏が言った〕「まさしく、良家の子息は知る──良家の子息を賞賛することを。若き虎に等しき色艶ある者よ、友よ、食べたまえ。あなたに与えよう」〔と〕。

 

132. 〔菩薩は言った〕「長きにわたり、まさに、〔わたしは〕見る──虚偽を説く者たちが集いあつまったのを──吐き出されたものを食べる〔烏〕を、そして、死骸を食べる〔野狐〕を──互いに他を賞賛する者たちを」〔と〕。ということで──

 

 ジャンブカーダカ・ジャータカが、第四となる。

 

3. 5. 5. アンタ・ジャータカ(最下の者・本生物語295)

 

133. 〔烏が言った〕「あなたの肩は、雄牛のようであり、獅子のように、〔口が〕開かれました。獣たちの王よ、あなたに、礼拝が存せ。さてまた、何らかのものを、〔返礼として、わたしどもは〕得るでしょう」〔と〕。

 

134. 〔野狐が言った〕「まさしく、良家の子息は知る──良家の子息を賞賛することを。孔雀の首に似た者よ、烏よ、こちらに来たまえ」〔と〕。

 

135. 〔菩薩は言った〕「野狐は、獣たちのなかの最下の者である。いっぽう、烏は、鳥たちのなかの〔最下の者である〕。エーランダ〔樹〕は、木々のなかの〔最下の者である〕。三者の最下の者たちが、集いあつまったのだ」〔と〕。ということで──

 

 アンタ・ジャータカが、第五となる。

 

3. 5. 6. サムッダ・ジャータカ(海・本生物語296)

 

136. 〔菩薩は尋ねた〕「いったい、この者は、誰なのだ。塩水のうえ、遍きにわたり走り回る。そして、大魚たちを妨げ、さらに、諸々の波に打たれる」〔と〕。

 

137. 〔水鳥が答えた〕「〔わたしは〕終極なく飲む鳥である。『満足なき者』と方々に聞こえた者である。〔わたしは〕海〔の水〕を飲むことを欲する──流れの長たる海洋〔の水〕を」〔と〕。

 

138. 〔菩薩は言った〕「〔まさに〕その、この大海は、まさしく、そして、引きもし、さらに、満ちもする。〔その〕終極を飲んだ者は、〔いまだ〕存在せず、〔いまだ〕知られない。海洋は、まさに、飲まれようがない」〔と〕。ということで──

 

 サムッダ・ジャータカが、第六となる。

 

3. 5. 7. カーマヴィラーパ・ジャータカ(欲望の饒舌・本生物語297)

 

139. 鳥よ、高きを飛ぶ者よ、翼に乗る者よ、宙を赴く者よ、美しい腿をした〔わたしの妻〕に、まさに、あなたは、説いておくれ。まさに、彼女は、長きに待つ。

 

140. まさに、彼女は、このことを知らない──剣が、さらに、槍が、仕掛けられたのを。激しい〔気性〕の彼女は、忿激を為すであろう。それが、わたしを苦しめる。〔今の〕この〔苦痛〕は、さにあらず。

 

141. この青蓮の甲冑が、そして、首飾が、枕元に置かれた──さらに、カーシ産の柔らかな衣が。愛しき〔妻〕は、財ある者であるが、〔これで〕満足しておくれ。ということで──

 

 カーマヴィラーパ・ジャータカが、第七となる。

 

3. 5. 8. ウドゥンバラ・ジャータカ(ウドゥンバラ・本生物語298)

 

142. 〔小猿を騙すために、大猿が言った〕「そして、諸々のウドゥンバラ〔樹の果〕は、これらは熟した──さらに、諸々のニグローダ〔樹の果〕も、諸々のカピッタナ〔樹の果〕も。さあ、出てきなさい。食べたまえ。どうして、飢えで死ぬのだ」〔と〕。

 

143. 〔大猿を騙すために、小猿が言った〕「彼が、年長の者を敬うなら、このように、彼は、満腹の者と成る。すなわち、熟した木々に触れたわたしが、今日、満腹の者としてあるように」〔と〕。

 

144. 〔大猿が言った〕「すなわち、林に生まれる者が、林に生まれる者を、猿が、猿を、騙すとして、年少の猿は、信を置くも、まさに、老いた老猿は、さにあらず」〔と〕。ということで──

 

 ウドゥンバラ・ジャータカが、第八となる。

 

3. 5. 9. コーマーラプッタ・ジャータカ(コーマーラプッタ・本生物語299)

 

145. 〔苦行者が言った〕「かつて、おまえは、戒ある者たちの現前において、再三再四、庵所のなかで遊び戯れた。ああ、猿よ、諸々の猿らしき〔所作〕を為せ。戒と掟あるおまえを、わたしたちは喜ばない」〔と〕。

 

146. 〔大猿が言った〕「多聞の者たるコーマーラプッタの最高の清浄〔の教え〕が、まさに、わたしの聞くところとなった。今や、あなたは、わたしのことを、かつてのように思いなしてはならない。友よ、〔わたしは〕瞑想に専念する者として〔世に〕住む」〔と〕。

 

147. 〔苦行者が言った〕「それで、もし、また、岩のうえに種を蒔くなら、そして、天が雨を降らせるとして、まさに、それは、育たない。なぜなら、最高の清浄〔の教え〕が、それが、おまえの聞くところとなったとして、猿よ、おまえは、瞑想の境地から遠く離れているからだ」〔と〕。ということで──

 

 コーマーラプッタ・ジャータカが、第九となる。

 

3. 5. 10. ヴァカ・ジャータカ(狼・本生物語300)

 

148. 他の命あるものを殺傷して生きている者が、肉と血を食べる者が──狼が、掟を受持して、斎戒(布薩)を具有した。

 

149. 帝釈〔天〕は、彼の掟を了知して、羊の形態で近しく赴いた。〔狼は〕苦行を離れ、〔羊のもとに〕至り得たのだった。血を飲む者は、苦行を破った。

 

150. まさしく、このように、ここに、一部の者たちは、受持するに力弱き者たちであり、自己を軽きものと為す──羊を契機として、〔苦行を離れた〕狼のように。ということで──

 

 ヴァカ・ジャータカが、第十となる。

 

 瓶の章が、第五となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「優れた瓶(酒瓶)とスパッタという吉祥の呼び名あるものがあり、そして、清らかなるものとして敬われたもの(身体の厭離)とまろやかな声(ジャンブを喰う者)と雄牛(最下の者)があり、流れの長(海)と激しい〔気性〕(欲望の饒舌)と老猿(ウドゥンバラ)とともに、そこで、猿らしき〔所作〕(コーマーラプッタ)と狼とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

 そこで、章の摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「妄想があり、まさしく、そして、蓮華があり、第三に井戸とともに、アッバンタラがあり、瓶の破壊があり、三なるものの集まりにおいて、〔以上が〕十分に作り為された」と。

 

 三なるものの集まりは〔以上で〕終了となる。

 

4. 四なるものの集まり

 

4. 1. カーリンガの章

 

4. 1. 1. チューラカーリンガ・ジャータカ(小なるカーリンガ・本生物語301)

 

1. 〔ナンディセーナが言った〕「これらの者たちのために、門を開けよ。〔王女たちは〕アルナ王(アッサカ国の王)の城市に入りたまえ。獅子にして極めて殊勝なるナンディセーナによって善く守られた〔城市〕に」〔と〕。

 

2. 〔菩薩に、アッサカ国に敗れたカーリンガ国の王が言った〕「『勝利は、成し遂げられないことを成し遂げるカーリンガ〔国〕の者たちに。不運なる敗北は、アッサカ〔国〕の者たちに』〔と〕、梵行者(菩薩)よ、まさしく、かくのごとく、あなたによって語られた。〔心が〕真っすぐと成った者たちは、真実を離れることを話さない〔にもかかわらず〕」〔と〕。

 

3. 〔帝釈天に、菩薩は言った〕「天〔の神々〕たちは、虚偽を説くことを超克した者たちである。帝釈〔天〕よ、真理は、彼らにおける、最高の財産である。天の王よ、あなたによって、〔まさに〕その、虚偽が語られた。マガヴァントよ、大いなるインダよ、あるいは、何を縁として〔虚偽が語られたのか〕(どうして、あなたは、カーリンガ国が勝つと、わたしに告げたのか)」〔と〕。

 

4. 〔帝釈天が言った〕「婆羅門(菩薩)よ、〔このように〕話されているとき、まさに、あなたによって聞かれたではないですか。『天〔の神々〕たちは、人の勤勉〔努力〕を嫉妬しない』〔と〕。調御、禅定、不壊なる意、混乱なきこと、そして、〔正しい〕時における進撃、そして、〔道心〕堅固なる精進、そして、人の勤勉〔努力〕──まさしく、それによって、アッサカ〔国〕の者たちに、勝利が存したのです」〔と〕。ということで──

 

 チューラカーリンガ・ジャータカが、第一となる。

 

4. 1. 2. マハーカーリンガ・ジャータカ(大なるカーリンガ・本生物語302)

 

5. 〔菩薩は言った〕「施すべきではない者たちにたいし、布施を施しながら、施すべき者たちにたいし、〔施物を〕献じないなら、諸々の災難のうちにあり、災厄に至り得た者となるも、道友に到達しない。

 

6. 彼が、施すべきではない者たちにたいし、布施を施さずに、施すべき者たちにたいし、〔施物を〕献じるなら、諸々の災難のうちにあり、災厄に至り得た者となるも、道友に到達する。

 

7. 結び付きがあり共同の受益があり殊勝なる見あるも、聖ならざる法(性質)ある狡猾な者たちにたいし〔為されたものは、虚しく〕消え行く。しかしながら、聖者たちにたいし、かつまた、罪なき者たちにたいし、そのような者たちにたいし為されたものは、たとえ、微細なるも、大いなる果と成る。

 

8. すなわち、過去において、善き〔行為〕を為した者は──世における極めて為し難き〔行為〕を為した、〔その者は〕──未来にあっては、為しても、あるいは、為さなくても、結局のところ、供養に値する者となる」〔と〕。ということで──

 

 マハーカーリンガ・ジャータカが、第二となる。

 

4. 1. 3. エーカラージャ・ジャータカ(一なる王・本生物語303)

 

9. 〔王が言った〕「一なる王(菩薩)よ、過去において、諸々の無上にして豊富なる欲望の属性(妙欲)を享受して〔世に〕住した、〔まさに〕その〔あなた〕が、今や、難所に、奈落に、投げ放たれたのに、以前の色艶と活力を捨棄しません(平然としている)」〔と〕。

 

10. 〔菩薩は言った〕「ドゥッビセーナ(王)よ、まさしく、過去において、わたしには、そして、忍耐が、さらに、苦行が、等しく切望されたものとして有った。王よ、今や、それを得て、いったい、どうして、わたしが、以前の色艶と活力を捨棄するというのだろう。

 

11. まさに、このように、全てが、遍く終了するところとなった──福徳あるものを、智慧あるものを、可能として。そして、秀逸なる以前の福徳を得て、以前の色艶と活力を捨棄しないのだ。

 

12. 人のインダよ、耐えざるを耐える者よ、苦痛によって安楽を除き去って、あるいは、安楽によって苦痛を〔除き去って〕、正しくある者たちは、〔安楽と苦痛の〕両所において、自己が寂滅したことから、安楽にたいしても、苦痛にたいしても、均等に有るのだ」〔と〕。ということで──

 

 エーカラージャ・ジャータカが、第三となる。

 

4. 1. 4. ダッダラ・ジャータカ(ダッダラ・本生物語304)

 

13. 〔龍が言った〕「ダッダラよ、人間の世における、諸々の最低の言葉が、これらのものが、わたしを苦しめる。『蛙を食物とする者たちだ、水辺に慣れ親しむ者たちだ』〔と〕。毒なき者たちが、毒蛇を、わたしを、呪う」〔と〕。

 

14. 〔菩薩は言った〕「自らの国土から出国し、他の地方に赴いた者は、大いなる蔵を作るべきである──〔それらの〕最低〔の言葉〕を安置するために。

 

15. そこにおいて、〔その〕人のことを、〔有する〕出生によって、あるいは、〔有する〕規律によって、〔人々が〕知らないなら、そこにおいては、〔我想の〕思量(:思い上がりの心)を為すべきにあらず──知らない人のなかに住しているなら。

 

16. 異境の住居に住しているなら、たとえ、〔気性が〕火に等しくあるも、智慧を有する者となり、忍耐するべきである──〔それが〕奴隷の脅しであるもまた」〔と〕。ということで──

 

 ダッダラ・ジャータカが、第四となる。

 

4. 1. 5. シーラヴィーマンサナ・ジャータカ(戒の審査・本生物語305)

 

17. 〔菩薩は言った〕「悪しき行為を為している者には、世において、内密なるものは、まさに、存在しない。愚者は、内密と思いなすが、それを、林の精霊たちは見る。

 

18. わたしは、内密なるものを見ない。あるいは、また、空無なるものは見出されない。そこにおいて、〔わたしは〕他なるものを見ない。それは、わたしによるなら、空無ならざるものとして有る」〔と〕。

 

19. 〔師匠が言った〕「そして、ドゥッジャッチャも、そして、スジャッタも、そして、ナンダも、スカヴァッディタも、そして、ヴェッジャも、そして、アッドゥヴァシーラも──彼らは、義(目的)ある者たちでありながら、法(正義)を捨棄した。

 

20. しかしながら、一切の法(事象)の彼岸に至る婆羅門が、どうして、〔法を〕捨棄するというのだろう──すなわち、〔道心〕堅固の者として、真理に勤勉なる者として、法(正義)を警護する、〔その婆羅門が〕」〔と〕。ということで──

 

 シーラヴィーマンサナ・ジャータカが、第五となる。

 

4. 1. 6. スジャータ・ジャータカ(スジャーター・本生物語306)

 

21. 〔王妃が尋ねた〕「陛下よ、何なのですか、これらの卵さんたちは──銅のお椀に盛られた、真紅にして麗美なる〔卵さんたち〕は。〔問いを〕尋ねられた者として、それを、わたしに告げ知らせてください」〔と〕。

 

22. 〔王が答えた〕「王妃よ、それらを、かつて、坊主頭で、ぼろ布をまとう、おまえは、腰〔袋〕に手をやり、拾い集めたのだ。〔まさに〕その、おまえの、棗の実だ」〔と〕。

 

23. 〔家来に、王が言った〕「〔この女は、欲の炎に〕焼かれ、喜ばない(際限なく貪り満足できない)。諸々の財物は、彼女を捨棄し去る。すなわち、〔この女が〕棗を拾い集めることになる、まさしく、その場に、この者を連れ戻すのだ」〔と〕。

 

24. 〔菩薩は言った〕「大王よ、まさに、これらのことが有るのは、繁栄に至り得た女によってのこと。陛下よ、スジャーターを許してあげなさい。車上の雄牛(王)よ、彼女に怒ってはいけません」〔と〕。ということで──

 

 スジャータ・ジャータカが、第六となる。

 

4. 1. 7. パラーサ・ジャータカ(パラーサ・本生物語307)

 

25. 〔菩薩は尋ねた〕「婆羅門よ、思うことなく聞くことなく知ることなき、このパラーサ〔樹〕に、〔それと〕知りつつ、〔あなたは〕精進に励み、常に怠りなくあり、『安楽に臥されますか』〔と〕尋ねます。〔それは〕何を因とするのですか」〔と〕。

 

26. 〔婆羅門が答えた〕「まさしく、そして、遠くに聞こえ、さらに、大きくもある、〔この〕木は、〔この〕地に立ち、精霊の居住所たる形態があります。それゆえに、このパラーサ〔樹〕を礼拝します。そして、すなわち、ここにおいて、精霊たちが〔存するはずであり〕、彼らに、財を因として、〔わたしは尋ねます〕」〔と〕。

 

27. 〔菩薩は言った〕「〔まさに〕その〔わたし〕は、〔自らの〕威力のままに、あなたのために為しましょう──婆羅門よ、〔あなたの〕知恩〔の情〕を〔常に〕見ている者として。正しくある者たちの現前にやってきて〔何度も〕震えおののいた〔行為〕が、あなたの〔それらの行為が〕、まさに、どうして、無駄に存するというのでしょう。

 

28. すなわち、ティンドゥラ樹の後にあるパリッカ〔樹〕は、巨大にして、〔人々に〕取り巻かれ、過去に祭祀があり、その〔木〕の根元に、この財宝が埋められました。〔もはや〕相続者なき〔財宝〕です。赴きなさい。その〔財宝〕を取り出しなさい」〔と〕。ということで──

 

 パラーサ・ジャータカが、第七となる。

 

4. 1. 8. サクナ・ジャータカ(鳥・本生物語308)

 

29. 〔菩薩は言った〕「わたしどもは、力有るかぎり、あなたのために、為すべきことを為しました。獣たちの王よ、あなたに、礼拝が存せ。さてまた、何らかのものを、〔返礼として、わたしどもは〕得るでしょう」〔と〕。

 

30. 〔獅子が言った〕「血を食物とし常に諸々の残忍なことを為しているわたしの、歯の間に赴いた者として存しつつ、それでもなお、〔おまえが〕生きているのは、それは、〔返礼として〕多くあること(それで十分である)」〔と〕。

 

31. 〔菩薩は言った〕「恩知らずの為すことなき者に〔奉仕するも〕、為されたことに返礼なき者に〔奉仕するも〕、彼に知恩〔の情〕が存在しないなら、彼に仕えるのは、義(意味)なきこと。

 

32. 彼の面前で行なうも、朋友の法(性質)が得られないなら、嫉むことなく、罵ることなく、おもむろに、彼のもとから立ち去るべきである」〔と〕。ということで──

 

 サクナ・ジャータカが、第八となる。

 

4. 1. 9. チャヴァカ・ジャータカ(屍・本生物語309)

 

33. 〔菩薩は言った〕「この一切は、最悪のものとして為された。両者ともに、法(正義)を見ることなく、両者ともに、元から死滅した者たちである──そして、すなわち、諸々の呪文を教授する、この者も、さらに、すなわち、呪文を学得する、〔この者も〕」〔と〕。

 

34. 〔婆羅門が言った〕「諸々の米の飯を、肉汁を注いだ上等の〔食事〕を、〔わたしは〕食べる。それゆえに、聖賢たちによって慣れ親しまれた、この法(正義)を、〔わたしは〕慣れ親しまない」〔と〕。

 

35. 〔菩薩は言った〕「遍歴遊行せよ。世は、大いなるもの。他の者たちもまた、命あるものたちを煮る。習行された法(正義)ならざる〔行為〕が、あなたを〔害することが〕あってはならない──石が、瓶を壊したように。

 

36. 婆羅門よ、厭わしきものとして存せ──〔まさに〕その、盛名の利得は、さらに、財産の利得は。その生活が、堕所によるものであるなら、あるいは、法(正義)ならざる性行によるものであるなら、〔遍歴遊行のほうが、より勝っている〕」〔と〕。ということで──

 

 チャヴァカ・ジャータカが、第九となる。

 

4. 1. 10. セイヤ・ジャータカ(より勝る者・本生物語310)

 

37. 〔菩薩は言った〕「海を周囲として有する〔大地〕を、海洋を耳飾とする大地を、非難と共に、〔わたしは〕求めない。セイヤよ、このように識知しなさい。

 

38. 婆羅門よ、厭わしきものとして存せ──〔まさに〕その、盛名の利得は、さらに、財産の利得は。その生活が、堕所によるものであるなら、あるいは、法(正義)ならざる性行によるものであるなら──

 

39. たとえ、もし、鉢を取って、家なき者となり、遍歴遊行するとして、その生き方こそは、より勝っている──そして、すなわち、法(正義)ならざるものによる〔利得の〕探し求めであるなら、〔それよりも〕。

 

40. たとえ、もし、鉢を取って、家なき者となり、遍歴遊行するとして、世において、他を害さずにいるなら、それは、王権よりもまた、優れている」〔と〕。ということで──

 

 セイヤ・ジャータカが、第十となる。

 

 カーリンガの章が、第一となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「そして、『開けよ』(小なるカーリンガ)と施すべきではない者(大なるカーリンガ)と優れた豊富なるもの(一なる王)があり、そこで、ダッダラと大いなる悪ということで内密(戒の審査)があり、そこで、棗(スジャーター)があり、そして、優れたパラーサがあり、為すこと(鳥)と最悪のもの(屍)があり、優れた海を有するもの(より勝る者)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

4. 2. プチマンダの章

 

4. 2. 1. プチマンダ・ジャータカ(プチマンダ・本生物語311)

 

41. 〔盗賊に、菩薩は言った〕「盗賊よ、起きよ、どうして、〔おまえは〕臥す。おまえにとって、眠ることに、どのような義(利益)があるというのだろう。村における罪障の作り手たるおまえを、王の者たちが捕捉することがあってはならない」〔と〕。

 

42. 〔菩薩に、天神が尋ねた〕「はてさて、すなわち、村における罪障の作り手たる盗賊を、〔王の者たちが〕捕捉することになるとして、林に生じ〔林に〕立っているプチマンダ〔樹〕(菩薩)にとって、そこにおいて、〔それが〕何になるというのだろう(なぜ、盗賊を追い払ったのか)」〔と〕。

 

43. 〔菩薩は答えた〕「アッサッタ〔樹〕(天神)よ、あなたは知らない──そして、わたしと盗賊には間隔〔が必要であること〕を。村における罪障の作り手たる盗賊を、王の者たちは捕捉して〔そののち〕、ニンバの串(プチマンダ樹の串)に刺す。わたしの意は、それを危惧する(串にされてはたまらない)」〔と〕。

 

44. 〔天神が言った〕「諸々の危惧するべきことを危惧するべきである。未来の恐怖を守るべきである。慧者は、未来の恐怖あることから、〔この世とあの世の〕両者の世を〔あるがままに〕注視する」〔と〕。ということで──

 

 プチマンダ・ジャータカが、第一となる。

 

4. 2. 2. カッサパマンディヤ・ジャータカ(カッサパと愚鈍・本生物語312)

 

45. 〔菩薩は言った〕「カッサパよ、さてまた、愚鈍なるがゆえに、若者が、呪い、あるいは、打つとして、慧者は、その一切を忍耐し、賢者は、その〔一切〕を忍受する。

 

46. それで、もし、たとえ、正しくある者たちが論争するとして、すみやかに、ふたたび結ばれる。愚者たちは、諸々の鉢のように壊れる。彼らは、〔心の〕止寂に到達する者たちにあらず。

 

47. そして、すなわち、〔自らの〕犯したことを知る者と、さらに、すなわち、〔その〕説示を知る者と──これらの者たちは、より一層、合致する。彼らの関係は、老い朽ちない。

 

48. すなわち、他者たちが〔過ちを〕犯したとして、自らに結び付けることができるなら、まさに、この者は、より上なる者である──重荷を運ぶ者であり、重荷を保つ者である」〔と〕。ということで──

 

 カッサパマンディヤ・ジャータカが、第二となる。

 

4. 2. 3. カンティーヴァーディー・ジャータカ(忍耐を説く者・本生物語313)

 

49. 〔大臣が言った〕「彼が、そして、あなたの、〔両の〕手を、さらに、〔両の〕足を、かつまた、〔両の〕耳と鼻を、〔それらを〕断ち切ったのです。偉大なる勇者よ、彼に怒りたまえ。この国が滅び去ることがあってはならない」〔と〕。

 

50. 〔菩薩は言った〕「彼が、そして、わたしの、〔両の〕手を、さらに、〔両の〕足を、かつまた、〔両の〕耳と鼻を、〔それらを〕断ち切ったのだ。長きに生きよ、その王は。まさに、わたしのような者たちは、〔誰にであれ〕怒らない」〔と〕。

 

51. 〔世尊は言った〕「過去の時に、忍耐〔の徳〕を提示する沙門が〔世に〕有った。まさしく、忍耐〔の徳〕に立脚する彼を、カーシ〔国〕の王は断ち切った。

 

52. 粗暴な行為ある彼の報いは、辛きものと成った──すなわち、地獄に引き渡されたカーシ〔国〕の王が感受した、〔その報いは〕」〔と〕。ということで──

 

 カンティーヴァーディー・ジャータカが、第三となる。

 

4. 2. 4. ローハクンビ・ジャータカ(銅の釜・本生物語314)

 

53. 〔第一の餓鬼が言った〕「〔わたしたちは〕悪しき生を生きた──すなわち、正しくある者にたいし施さなかった。諸々の財物が見出されているのに、〔わたしたちは〕自己の洲を作らなかった」〔と〕。

 

54. 〔第二の餓鬼が言った〕「全てにわたり遍く満ちた六万年のあいだ、地獄において煮られている者たちに、いつ、終極が有るのだろう」〔と〕。

 

55. 〔第三の餓鬼が言った〕「終極は存在しない。どうして、終極があるというのだろう。終極は見えない。敬愛なる者たちよ、まさに、そのとき、悪しき〔行為の報い〕が作られたのだ──わたしのものとして、そして、おまえのものとして」〔と〕。

 

56. 〔第四の餓鬼が言った〕「〔まさに〕その、わたしは、まちがいなく、ここから赴いて、人間の胎を得て、寛容で、戒を成就した者となり、多くの善なる〔功徳〕を作り為すであろう」〔と〕。ということで──

 

 ローハクンビ・ジャータカが、第四となる。

 

4. 2. 5. サッバマンサラーバ・ジャータカ(一切の肉の利得・本生物語315)

 

57. 〔第一の者に、猟師が言った〕「肉を乞い求める者として、〔あなたは〕存するが、あなたの言葉は、まさに、粗暴である。毛に等しき言葉である。友よ、〔『おい、猟師よ』と説く〕あなたには、毛を与えよう」〔と〕。

 

58. 〔第二の者に、猟師が言った〕「世において、兄弟は、これは、人間たちにとって、手足と説かれる。手足に等しき言葉である。友よ、〔『兄弟よ』と説く〕あなたには、手足を与えよう」〔と〕。

 

59. 〔第三の者に、猟師が言った〕「『父よ』と説いている子は、父の心臓(心)を動かす。心臓に等しき言葉である。友よ、〔『父よ』と説く〕あなたには、心臓を与えよう」〔と〕。

 

60. 〔菩薩に、猟師が言った〕「その者に、村において、友人が存在しないなら、あたかも、〔人なき〕林のように、まさしく、そのように、その〔状況〕はある。一切にとって等しき言葉である。友よ、〔『友人よ』と説く〕あなたには、一切を与えよう」〔と〕。ということで──

 

 サッバマンサラーバ・ジャータカが、第五となる。

 

4. 2. 6. ササパンディタ・ジャータカ(兎の賢者・本生物語316)

 

61. 〔川獺が言った〕「わたしには、水から陸に引き上げられた七つの赤魚があります。婆羅門よ、わたしには、これが存します。これを食べて、林に住してください」〔と〕。

 

62. 〔野狐が言った〕「わたしには、迂闊な畑の番人が置いていった夕食があります。そして、諸々の肉の串が、二つの大蜥蜴が、さらに、一つの乳酪の壷があります。婆羅門よ、わたしには、これが存します。これを食べて、林に住してください」〔と〕。

 

63. 〔猿が言った〕「熟したアンバ〔の果〕が、冷たい水が、意が喜びとする涼やかな影があります。婆羅門よ、わたしには、これが存します。これを食べて、林に住してください」〔と〕。

 

64. 〔菩薩は言った〕「兎には、諸々の胡麻は存在しません。諸々の豆は〔存在し〕ません。諸々の米もまた〔存在し〕ません。この火で焼いたわたし〔の肉〕を食べて、林に住してください」〔と〕。ということで──

 

 ササパンディタ・ジャータカが、第六となる。

 

4. 2. 7. マタローダナ・ジャータカ(死んだ者を泣き悲しむこと・本生物語317)

 

65. 〔菩薩は言った〕「死んだ者、死んだ者だけを、〔あなたたちは〕泣き悲しむが、まさに、彼のことを、〔あなたたちは〕泣き悲しまない──すなわち、〔これから〕死ぬであろう、〔彼のことを〕。肉体を保持する者たちは、一切もろともに、順次に生命を捨棄する。

 

66. 天〔の神々〕と人間たちも、四つ足のものたちも、鳥たちの群れも、さらに、蜷局をまく蛇たちも、自らの肉体にたいし主権なく、まさしく、喜び楽しみながらも、生命を捨棄する。

 

67. このように、人間たちにおける楽と苦を、動揺し確立なきものと熟視して、泣き叫び泣き悲しむことを、義(意味)なきものと〔熟視して、事実を知ったからには〕、どうして、諸々の憂いの群れが、あなたたちを押し流すというのだろう。

 

68. しかしながら、質悪き者たちは、酒乱の者たちは、無為の者たちは、愚者たちは、勇士たちは、道理なき者たちは、慧者を、『愚者』と思いなす──すなわち、法(真理)の熟知者ならざる者たちは」〔と〕。ということで──

 

 マタローダナ・ジャータカが、第七となる。

 

4. 2. 8. カナヴェーラ・ジャータカ(カナヴェーラ・本生物語318)

 

69. 〔伝言者が言った〕「すなわち、あなたが、春の時分に、深紅のカナヴェーラ〔の花々〕のなか、腕で責め苛んだ、サーマーですが、彼女が、〔自らの〕無病〔息災〕を、あなたに説きました(伝言を託した)」〔と〕。

 

70. 〔菩薩は言った〕「ああ、まさに、信じられない──すなわち、風が、山を運ぶとは。もし、風が、山を運ぶなら、一切もろともに、地をも運ぶであろう。そこにおいて、サーマーは、命を終えたのだ。彼女が、〔自らの〕無病〔息災〕を、わたしに説いたとは」〔と〕。

 

71. 〔伝言者が言った〕「まさしく、そして、彼女は、命を終えたのではなく、さらに、他の男を〔夫として〕求めることもありません。サーマーは、一者を夫とする者です。あなただけを待ち望みます」〔と〕。

 

72. 〔菩薩は言った〕「サーマーは、長き親交ある者を、親交なきわたしと──常なる者を、常ならざる〔わたし〕と──交換した。サーマーは、わたしをもまた、他の者と交換するであろう。わたしは、ここから、より遠くに去り行くのだ」〔と〕。ということで──

 

 カナヴェーラ・ジャータカが、第八となる。

 

4. 2. 9. ティッティラ・ジャータカ(雉・本生物語319)

 

73. 〔雉が尋ねた〕「極めて安楽に、まさに、〔わたしは〕生きる。まさしく、そして、食べることを得る。しかしながら、〔わたしは〕障害のうえに(※)立つ。尊き方よ、いったい、どのような〔未来の〕境遇()が、わたしにあるのですか」〔と〕。

 

※ テキストには Paripantheva とあるが、PTS版により Paripanthe ca と読む。

 

74. 〔菩薩は答えた〕「鳥よ、もし、あなたの意が、悪しき行為()に傾かないなら、〔悪しき行為に〕懸命ならざる幸いなる者を、悪しき〔行為〕が汚すことはない」〔と〕。

 

75. 〔雉が言った〕「『わたしたちの親族が、〔ここに〕坐っている』と、多くの同族が、〔ここに〕到来します。〔それを〕縁として、〔悪しき〕行為が接触します(彼らに累が及ぶ)。わたしの意は、それを危惧します」〔と〕。

 

76. 〔菩薩は言った〕「もし、〔あなたの〕意が汚れていないなら、〔それを〕縁として、〔悪しき〕行為が接触することはない。〔悪しき行為に〕思い入れ少なき幸いなる者を、悪しき〔行為〕が汚すことはない」〔と〕。ということで──

 

 ティッティラ・ジャータカが、第九となる。

 

4. 2. 10. スッチャジャ・ジャータカ(簡単に捨て去る者・本生物語320)

 

77. 〔王妃が言った〕「〔人を〕簡単に捨て去る者(王)を、まさに、捨て去りはしませんでした。言葉をもって、山を与えたのです。まさに、どうでしょう、〔わたしを〕捨て去りつつある彼に、言葉をもって、山を与えたのです」〔と〕。

 

78. 〔王が言った〕「まさに、それを為すなら、まさに、それを説くように。それを為さないなら、それを説かないように。賢者たちは、為すことなく語っている者を、〔あるがままに〕遍知する」〔と〕。

 

79. 〔王妃が言った〕「王子(王)よ、あなたに、礼拝が存せ。そして、〔あなたは〕真理と法(教え)における安立者として〔世に〕存しています。すなわち、あなたの意は、災厄に至り得たとして、真理を喜び楽しむのです」〔と〕。

 

80. 〔菩薩は言った〕「すなわち、〔夫が〕貧しくあるなら貧しく、〔夫が〕富めるなら富む、名誉ある〔妻〕は、まさに、彼女は、彼にとって、最高の妻である──黄金を有する者には、〔多くの〕婦女たちがいるとして」〔と〕。ということで──

 

 スッチャジャ・ジャータカが、第十となる。

 

 プチマンダの章が、第二となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「そこで、盗賊(プチマンダ)とカッサパ(カッサパと愚鈍)を有するものと優れた忍耐(忍耐を説く者)があり、悪しき生き方たること(銅の釜)があり、そして、優れた粗暴(一切の肉の利得)があり、そこで、兎(兎の賢者)と死んだ者(死んだ者を泣き悲しむこと)があり、そして、春(カナヴェーラ)と安楽(雉)があり、『〔人を〕簡単に捨て去る者を、まさに、捨て去りはしませんでした』(簡単に捨て去る者)とともに、そして、〔それらの〕十がある」と。

 

4. 3. 小屋を汚す者の章

 

4. 3. 1. クティドゥーサカ・ジャータカ(小屋を汚す者・本生物語321)

 

81. 〔菩薩は尋ねた〕「猿よ、あなたには、人間のものであるかのように、頭があり、かつまた、〔両の〕手と足がありますが、そこで、いったい、何を理由に、家が、あなたには見出されないのですか」〔と〕。

 

82. 〔猿が答えた〕「シンギラ〔鳥〕よ、わたしには、人間のものであるかのように、頭があり、かつまた、〔両の〕手と足がありますが、すなわち、人間たちにおいて、〔人々が〕最勝のものと言う、その智慧が、わたしには見出されないのです」〔と〕。

 

83. 〔菩薩は言った〕「心が確立されない者に、心が軽佻で裏切り者に、常に常恒ならざる戒ある者に、安楽の状態は見出されない。

 

84. 〔まさに〕その〔あなた〕は、〔精進の〕威徳を作り為すのだ。〔悪しき〕持戒を超克するのだ。猿よ、寒き風を遍く救護する巣を作り為すのだ」〔と〕。ということで──

 

 クティドゥーサカ・ジャータカが、第一となる。

 

4. 3. 2. ドゥッドゥバ・ジャータカ(ドゥッドゥバ・本生物語322)

 

85. 〔兎が言った〕「あなたに、幸せ〔有れ〕。わたしが住する、その地において、ドゥッドゥバと音がします。さてまた、わたしは、これを知りません。これは、何なのでしょう──ドゥッドゥバと音がするのは」〔と〕。

 

86. 〔世尊は言った〕「栃の実が落ちた〔音〕を聞いて、『ドゥッドゥバと音がする(大地が崩壊する)』と〔絶叫し〕、兎は疾走した。兎の言葉を聞いて、獣の軍団は恐慌した。

 

87. 句の識知に至り得ずして、他者の声に従い行く者たちは、他者の叫びを最高とする愚者たちであり、彼らは、他者を縁とする者たちと成る(他人頼りの者となる)。

 

88. しかしながら、彼ら、戒を成就し、智慧による寂止に喜びある者たちは、〔世俗を〕遠く離れ〔人々から〕離去した慧者たちであり、他者を縁とする者たちと成らない」〔と〕。ということで──

 

 ドゥッドゥバ・ジャータカが、第二となる。

 

4. 3. 3. ブラフマダッタ・ジャータカ(ブラフマダッタ・本生物語323)

 

89. 〔菩薩は言った〕「ブラフマダッタ王よ、乞い求める者は、二つのものに遭遇します──利得なきに、あるいは、財産の利得に。まさに、このような法(性質)あるのが、乞い求めることなのです。

 

90. パンチャーラ〔国〕の車上の雄牛よ、乞い求める者のことを、〔人々は〕泣き悲しむ者と言います。すなわち、乞い求める者を拒絶するなら、彼のことを、〔人々は〕泣き返す者と言います。

 

91. たくさん集まったパンチャーラ〔国〕の者たちが、泣き悲しんでいる〔わたし〕を踏みにじることがあってはいけません。あるいは、泣き返しているあなたを〔踏みにじることがあってはいけません〕。それゆえに、わたしは、内密に求めるのです」〔と〕。

 

92. 〔王が言った〕「婆羅門よ、あなたに、千の雌の赤牛を、牛主と共に施します。まさに、聖者たる者が、聖者たるあなたに、法(正義)と結び付いた諸々の詩偈を聞いて〔そののち〕、どうして、施さずにいられましょう」〔と〕。ということで──

 

 ブラフマダッタ・ジャータカが、第三となる。

 

4. 3. 4. チャンマーサータカ・ジャータカ(皮衣の者・本生物語324)

 

93. 〔婆羅門が言った〕「善き形姿ある、まさに、この四つ足〔の羊〕は、まさしく、そして、極めて幸いなる者であり、さらに、極めて博愛なる者である。すなわち、出生と呪文を具有した婆羅門を敬う、福徳ある優れた羊である」〔と〕。

 

94. 〔菩薩は言った〕「婆羅門よ、暫しの見でもって、〔その〕四つ足〔の羊〕に信頼〔の思い〕を起こしてはいけません。堅固な打撃を狙いながら後ずさります。見事な打撃を与えるでしょう」〔と〕。

 

95. 〔世尊は言った〕「腿の骨は打ち砕かれ、天秤の荷はひっくり返された。そして、婆羅門の物品は全て壊され、〔婆羅門は〕両の腕ともども突き上げて泣き叫ぶ。『急いでください、梵行者が殺されます』」〔と〕。

 

96. 〔婆羅門が言った〕「彼が、供養されざる者を賞賛するなら、このように、彼は、打ち倒され、〔地に〕臥す。すなわち、思慮浅きわたしが、今日、羊に打ちのめされ打ち砕かれたように」〔と〕。ということで──

 

 チャンマーサータカ・ジャータカが、第四となる。

 

4. 3. 5. ゴーダラージャ・ジャータカ(大蜥蜴の王・本生物語325)

 

97. 〔菩薩は言った〕「あなたのことを沙門と思い考えながら、自制なき者のもとへと近しく赴いた。〔まさに〕その〔あなた〕は、わたしを棒で打った。すなわち、沙門ならざる者が〔為す〕ように、そのように。

 

98. 思慮浅き者よ、あなたにとって、諸々の結髪が、何になるというのだろう。あなたにとって、皮衣が、何になるというのだろう。あなたには、内なる収め取り(執着)がある。〔あなたは〕外に〔見てくれを〕繕っている」〔と〕。

 

99. 〔結髪者が言った〕「大蜥蜴よ、さあ、戻ってくるのだ。米の飯を食べなさい。油が、そして、塩が、わたしには存する。わたしには、沢山の胡椒がある」〔と〕。

 

100. 〔菩薩は言った〕「〔まさに〕この〔わたし〕は、より一層、百人〔の高さ〕ある蟻塚に入り行くであろう。油を、そして、塩を、〔あなたは〕賛じ称えるが、わたしにとって、胡椒は益なきもの」〔と〕。ということで──

 

 ゴーダラージャ・ジャータカが、第五となる。

 

4. 3. 6. カッカール・ジャータカ(カッカール・本生物語326)

 

101. 〔第一の天の神が言った〕「彼が、身体によって奪わず、言葉によって虚偽を話さず、盛名を得て酔わないなら、彼は、まさに、カッカール〔の花〕に値する」〔と〕。

 

102. 〔第二の天の神が言った〕「法(正義)によって富を探し求め、欲念によって財を奪わず、諸々の財物を得て酔わないなら、彼は、まさに、カッカール〔の花〕に値する」〔と〕。

 

103. 〔第三の天の神が言った〕「彼の心が、鬱金〔の色に染まること〕なく(心変わりしない)、かつまた、〔彼の〕信が、染めを離れることなく(信が動かない)、独りで美味なるものを食べないなら、彼は、まさに、カッカール〔の花〕に値する」〔と〕。

 

104. 〔菩薩は言った〕「面前であろうが、壁越しであろうが、彼が、正しくある者たちを誹謗せず、説くとおり、そのとおりに為す者であるなら、彼は、まさに、カッカール〔の花〕に値する」〔と〕。ということで──

 

 カッカール・ジャータカが、第六となる。

 

4. 3. 7. カーカヴァティー・ジャータカ(カーカヴァティー・本生物語327)

 

105. 〔音楽神が言った〕「そして、この香りは、〔遠き〕その〔地〕から香りただよいます──そこにおいて、わたしの愛しき〔カーカヴァティー〕が住している、〔その地から〕。カーカヴァティーは、まさに、ここから遠くにいます──そこにおいて、わたしの意が〔カーカヴァティーとの愛を〕喜び楽しんだ、〔その地に〕」〔と〕。

 

106. 〔金翅鳥が尋ねた〕「どのように、〔おまえは〕海を超えたのだ。どのように、〔おまえは〕ケープカー〔川〕を超えたのだ。どのように、〔おまえは〕七つの海を〔超えたのだ〕。どのように、〔おまえは〕シンバリ〔樹〕を登ったのだ(どのような手段を用いて、わたしの住居に赴き、カーカヴァティーと愛を交わしたのか)」〔と〕。

 

107. 〔音楽神が答えた〕「〔あなたの翼に隠れて〕あなたとともに、〔わたしは〕海を超えました。〔あなたの翼に隠れて〕あなたとともに、〔わたしは〕ケープカー〔川〕を超えました。〔あなたの翼に隠れて〕あなたとともに、〔わたしは〕七つの海を〔超えました〕。〔あなたの翼に隠れて〕あなたとともに、〔わたしは〕シンバリ〔樹〕を登りました」〔と〕。

 

108. 〔金翅鳥が言った〕「厭わしきものとして存せ──大いなる身体のわたしは。厭わしきものとして存せ──思い考えなきわたしは。そこにおいて、妻のもとに、間男を、わたしは、〔自ら〕運び込み、そして、〔自ら〕運び返すとは」〔と〕。ということで──

 

 カーカヴァティー・ジャータカが、第七となる。

 

4. 3. 8. アナヌソーチヤ・ジャータカ(憂い悲しむべきではない・本生物語328)

 

109. 〔菩薩は言った〕「尊き〔サンミッラハーシニー〕は、〔死者となった〕多くの者たちのなかに見出される。〔死者となった〕それらの者たちが、わたしにとって、何に成るというのだろう。それゆえに、この者のことを、〔わたしは〕憂い悲しまない──愛しきサンミッラハーシニーのことを。

 

110. その者、その者が、〔今や〕彼に見出されないのに、もし、その者、その者のことを、〔彼が〕憂い悲しむなら、〔それよりも〕自己のことを、憂い悲しむべきである──常に死魔の支配に落ちている者として。

 

111. まさしく、まさに、立っているにあらず、坐しているにあらず、臥しているにあらず、旅行くにあらず──〔道を〕行き、〔眼を〕またたく、そのあいだに、そこでまた、命数は流れ行く(※)。

 

※ テキストには rasatī とあるが、PTS版により sarati と読む。

 

112. そこにおいて、まさに、自己が歳月少なくあり、変じ異なる状態が疑念なくあるなら、〔世に〕残っている生類〔こそ〕が思いやられるべきであり、〔世を〕離れた者のことは憂い悲しむべきではない」〔と〕。ということで──

 

 アナヌソーチヤ・ジャータカが、第八となる。

 

4. 3. 9. カーラバーフ・ジャータカ(カーラバーフ・本生物語329)

 

113. 〔ポッタパーダが言った〕「かつて、〔わたしたちが〕得る、〔まさに〕その、彼(ダナンジャヤ)の食べ物と飲み物ですが、今や、それは、まさしく、猿のところに赴きます。ラーダよ、今や、まさしく、林に赴きましょう。さてまた、〔わたしたちは〕存しています──ダナンジャヤ〔王〕に尊敬されざる者たちとして」〔と〕。

 

114. 〔菩薩は言った〕「利得と利得なきも、かつまた、盛名と盛名なきも、かつまた、非難と賞賛も、かつまた、安楽と苦痛も──人間たちにおける、これらの法(事象)は、常住ならず。憂い悲しんではならない。ポッタパーダよ、〔おまえは〕何を憂い悲しむのか」〔と〕。

 

115. 〔ポッタパーダが尋ねた〕「ラーダよ、たしかに、あなたは存しています──賢者たる者として。諸々の言及されざる義(道理)を、〔あなたは〕知ります。いったい、どのように、卑しい猿が、まさしく、王家から追い払われるのを、〔わたしたちは〕見るのですか」〔と〕。

 

116. 〔菩薩は答えた〕「〔猿は〕耳を動かし、渋面を為し、ムフンムフンと王子たちを恐怖させる。カーラバーフ(猿)は、まさしく、自ら、それを為すであろう──それによって、食べ物と飲み物から遠く離れて立つことになる、〔まさにその行為を〕」〔と〕。ということで──

 

 カーラバーフ・ジャータカが、第九となる。

 

4. 3. 10. シーラヴィーマンサ・ジャータカ(戒の審査・本生物語330)

 

117. 〔菩薩は言った〕「まさしく、まさに、戒は、善きものである。戒は、世における無上なるものである。見よ──おぞましき毒ある蛇が、戒ある者ということで、殺されないのだ(性質がよく無害であれば殺されない)。

 

118. およそ、何らかのものが、彼に有るかぎり、まさしく、そのかぎり、世における鷹たちは、集いあつまって喰い尽くした──無一物の者を害することなく。

 

119. 願望なき者は、安楽に眠る。願望は、果があるなら、安楽である。願望を願望なきものと為して、ピンガラーは、安楽に眠る。

 

120. 禅定(定・三昧)より他〔の安楽〕は存在しない──この世において、さらに、他〔の世〕において。〔心が〕定められた者は、他者を〔害さ〕ず、自己をもまた害さない」〔と〕。ということで──

 

 シーラヴィーマンサ・ジャータカが、第十となる。

 

 小屋を汚す者の章が、第三となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「人間(小屋を汚す者)を有するものとドゥッドゥバと乞い求める者(ブラフマダッタ)を有するものがあり、そこで、優れた最上の羊(皮衣の者)と優れた大蜥蜴(大蜥蜴の王)があり、そこで、身体(カッカール)とケープカー(カーカヴァティー)を有するものと優れた尊き女(憂い悲しむべきではない)があり、そこで、ラーダ(カーラバーフ)と優れた善き戒(戒の審査)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

4. 4. コーキラの章

 

4. 4. 1. コーキラ・ジャータカ(コーキラ・本生物語331)

 

121. 〔菩薩は言った〕「彼が、まさに、時に達し得ていないのに、限度を超えて語るなら、このように、彼は、打ち倒され、〔地に〕臥す──コーキラ〔鳥〕の雛のように。

 

122. まさに、善く研がれた刃にあらず──猛毒のように、すなわち、悪しく語られた言葉のように、このように、低きに落とすのは。

 

123. それゆえに、〔正しい〕時において、あるいは、〔正しい〕時ならざるにおいて、賢者は、言葉を守るがよい。限度を超えて語らぬがよい──あるいは、自己と等しき者にたいしてもまた。

 

124. そして、彼が、思慧を先とする明眼の者として、〔正しい〕時において、〔正しく〕量られた〔言葉〕を語るなら、一切の朋友ならざる者(敵)たちを取り押さえる──金翅鳥が、蛇を〔掴み取る〕ように」〔と〕。ということで──

 

 コーキラ・ジャータカが、第一となる。

 

4. 4. 2. ラタラッティ・ジャータカ(車の鞭・本生物語332)

 

125. 〔菩薩は言った〕「さてまた、打っておきながら、『打たれた』〔と〕説き、征しておきながら、『征された』と語る。王よ、先に告げ知らせる者たちに、何はともあれ、信を置くべきにあらず。

 

126. それゆえに、賢者の生まれある者は、他の〔言葉を〕もまた、聞くがよい。両者の言葉を聞いて、法(正義)のとおりに、そのように、為すがよい。

 

127. 欲望〔の対象〕を享受する、怠け者の在家者は、善きにあらず。自制なき出家者は、善きにあらず。〔注意深く〕真摯に為す者ならざる王は、善きにあらず。彼が、賢者であるも、忿激する者であるなら、それは、善きにあらず。

 

128. 方角の長(王)よ、士族は、真摯ならざることなく、〔注意深く〕真摯に為すがよい。王よ、〔注意深く〕真摯に為す者の、盛名は、そして、名誉は、〔自ずと〕増え行く」〔と〕。ということで──

 

 ラタラッティ・ジャータカが、第二となる。

 

4. 4. 3. パッカゴーダ・ジャータカ(焼いた大蜥蜴・本生物語333)

 

129. 〔王妃が言った〕「まさしく、そのとき、あなたは、わたしに知られたのです──車上の雄牛よ、林の中で。すなわち、ティリータ〔の樹皮衣〕をまとい、武装し、剣を帯びたあなたの、〔焼いた〕大蜥蜴が、アッサッタ〔樹〕の木の枝から逃げたのです(実は王が食べてしまった)」〔と〕。

 

130. 〔菩薩は言った〕「〔常に〕礼拝している者に、礼拝するように。〔常に〕親しくしている者に、親しくするように。為すべきことを従い為す者に、為すべきことを為すように。種々なる義(利益)を欲する者に、義(利益)を為すように。また、親近せずにいる者には、親近しないように。

 

131. 〔常に〕施捨している者に、施捨するように。〔欲の〕林の下生えを作らないように。心が離れた者に、親近しないように。鳥は、〔その〕木を『果が尽きたのだ』と知って、他〔の木〕を正しく見るであろう。なぜなら、大いなるものとして、世はあるからである」〔と〕。

 

132. 〔王が言った〕「〔まさに〕その〔わたし〕は、〔自らの〕威力のままに、あなたのために為そう──士族の女(王妃)よ、〔あなたの〕知恩〔の情〕を〔常に〕見ている者として。そして、一切の権力を、あなたに与えよう。その者にと、あなたが求めるなら、その者に、〔一切の権力を〕与えよう」〔と〕。ということで──

 

 パッカゴーダ・ジャータカが、第三となる。

 

4. 4. 4. ラージョーヴァーダ・ジャータカ(王の教諭・本生物語334)

 

133. 〔菩薩は言った〕「もし、牛たちが〔川を〕超えつつあるに、雄牛が、曲がり赴くなら、それら〔の雌牛たち〕は、全ての者たちが、〔雄牛に追従して〕曲がり赴く──導く者が、曲がり赴いた者として存しているうちは。

 

134. まさしく、このように、人間たちにおいて、彼が、最勝者として敬われ、〔世に〕有るとして、もし、彼が、法(正義)ならざる〔道〕を歩むなら、なおのこと、他の人々は、〔法ならざる道を歩むであろう〕。もし、王が、法(正義)ならざる者として〔世に〕有るなら、国土は、〔その〕全てが、苦痛のうちに臥す。

 

135. もし、牛たちが〔川を〕超えつつあるに、雄牛が、真っすぐに赴くなら、〔それらの〕雌牛たちは、全ての者たちが、〔雄牛に追従して〕真っすぐに赴く──導く者が、真っすぐに赴く者として存しているうちは。

 

136. まさしく、このように、人間たちにおいて、彼が、最勝者として敬われ、〔世に〕有るとして、それで、もし、彼が、法(正義)〔の道〕を歩むなら、なおのこと、他の人々は、〔法の道を歩むであろう〕。もし、王が、法(正義)にかなう者として〔世に〕有るなら、国土は、〔その〕全てが、安楽のうちに臥す」〔と〕。ということで──

 

 ラージョーヴァーダ・ジャータカが、第四となる。

 

4. 4. 5. ジャンブカ・ジャータカ(野狐・本生物語335)

 

137. 〔野狐に、菩薩は言った〕「野狐よ、彼(象)は、偉丈夫で、増大した身体をもち、かつまた、長い牙がある。その〔家系〕に〔生まれた獅子たちは〕象を捕捉するが、おまえは、その家系に生まれた者にあらず(象を襲ってはならない)」〔と〕。

 

138. 〔菩薩は言った〕「彼が、獅子ではないのに獅子と思量することで、自己を変異するなら、象を襲って〔打ちのめされた〕野狐のように、泣き悲しみながら、地に臥す。

 

139. 福徳ある最上の人たる者の、肩が立派に生育した大いなる力ある者の、強さと活力の再生を正視せずして、〔まさに〕その、この野狐は、象に打ちのめされ、〔地に〕臥す。

 

140. しかしながら、彼が、ここに、〔正しく〕思量して、自己における強さと活力を正しく知って、行為を為すなら、彼は、考慮ある者であり、詠唱によって、呪文によって、善く語られた〔言葉〕によって、広大なるものに勝利する」〔と〕。ということで──

 

 ジャンブカ・ジャータカが、第五となる。

 

4. 4. 6. ブラハーチャッタ・ジャータカ(偉丈夫のチャッタ・本生物語336)

 

141. 〔菩薩は尋ねた〕「『草だ』『草だ』と、〔あなたは〕喚き立てます。いったい、誰が、あなたのもとに、草を運び込んだのですか。いったい、あなたにとって、どのような為すべきことが草に存するのですか。〔あなたは〕草のことだけを語ります」〔と〕。

 

142. 〔王が答えた〕「ここに、梵行者がやってきた──多聞にして偉丈夫のチャッタが。彼は、わたしの一切を等しく奪い取って、草を置いて去り行く」〔と〕。

 

143. 〔菩薩は言った〕「少なきによって多くを求めている者が為すべきこととして、このように、このことは有ります。自らのものとして、一切を取り、そして、草は取らないのです」〔と〕。

 

144. 〔王が言った〕「戒ある者たちは、〔このように〕為さず。愚者は、諸々の戒を、〔このようなものとして〕為す。常ならざる戒は、劣戒であり、どうして、賢者たることを作り為すというのだろう」〔と〕。ということで──

 

 ブラハーチャッタ・ジャータカが、第六となる。

 

4. 4. 7. ピータ・ジャータカ(椅子・本生物語337)

 

145. 〔長者が言った〕「〔わたしどもは〕あなたに、椅子を与えませんでした。飲み物を〔施さ〕ず、食料もまた〔施さ〕ず。梵行者よ、わたしをお許しください。〔わたしは〕これを、過誤と見ます」〔と〕。

 

146. 〔菩薩は言った〕「〔わたしが〕憤ることは、まさしく、なく、さらに、また、怒ることもありません。さらに、また、わたしには、何であれ、愛しからざる〔思い〕(不快感)は存しませんでした。そこで、また、わたしには、意による思考が存しました。『まちがいなく、このようなものとして、〔この〕家の法(規則)があるのだ』」〔と〕。

 

147. 〔長者が言った〕「これが、わたしどもの家における、父祖代々の常なる法(規則)です。〔すなわち〕『坐を、水を、足に塗る油を、この一切を、〔わたしたちは〕施すのだ』〔と〕。

 

148. これが、わたしどもの家における、父祖代々の常なる法(規則)です。〔すなわち〕『最上の親族であるかのように、〔わたしたちは〕恭しく奉仕するのだ』」〔と〕。ということで──

 

 ピータ・ジャータカが、第七となる。

 

4. 4. 8. トゥサ・ジャータカ(籾殻・本生物語338)

 

149. 〔菩薩は言った〕「鼠たちにとって、籾殻は〔籾殻と〕知られ、いっぽうで、米は〔米と〕知られた。籾殻を〔避けては〕籾殻を避けて、いっぽうで、米を喰う。

 

150. それが、林のなかでの相談であれ、そして、それが、村のなかでの密談であれ、さらに、すなわち、このことが、そして、かくのごとくであれ、さらに、かくのごとくであれ、このこともまた、わたしによって、〔あるがままに〕知られたのだ。

 

151. 父猿は、まさに、法(規則)によって生まれた子の、まさしく、年少の者として存している〔子〕の、睾丸を、諸々の牙によって断ち切った(去勢した)。

 

152. すなわち、このことも、〔おまえが〕芥子〔畑〕のなかの盲目の羊のように這い回り、すなわち、また、この者が〔身を隠しながら〕下に臥すとして、このこともまた、わたしによって、〔あるがままに〕知られたのだ」〔と〕。ということで──

 

 トゥサ・ジャータカが、第八となる。

 

4. 4. 9. バーヴェール・ジャータカ(バーヴェール・本生物語339)

 

153. 〔世尊は言った〕「美妙なる鳴き声の冠毛ある孔雀の見なきによって(孔雀というものを見たことがなかったので)、そこにおいて、〔人々は〕烏を供養した──そして、肉によって、さらに、果によって。

 

154. しかしながら、すなわち、〔美妙なる〕声を成就した孔雀が、バーヴェールにやってきたとき、そこで、烏の、利得は〔失われ〕、さらに、尊敬も失われた。

 

155. すなわち、法(教え)の王にして光の作り手たる覚者が、〔世に〕生起しないあいだ、それまでは、〔人々は〕他の多々なる沙門や婆羅門たちを供養した。

 

156. しかしながら、すなわち、〔美妙なる〕声を成就した覚者が、法(教え)を説示したとき、そこで、異教の者たちの、利得は〔失われ〕、さらに、尊敬も失われた」〔と〕。ということで──

 

 バーヴェール・ジャータカが、第九となる。

 

4. 4. 10. ヴィサイハ・ジャータカ(ヴィサイハ・本生物語340)

 

157. 〔帝釈天が言った〕「ヴィサイハよ、かつて、〔あなたは〕諸々の布施を施した。そして、あなたが施していると、滅尽の法(性質)が有った(破産した)。これから後、もし、〔あなたが〕布施を施さないなら、自制しているあなたの、諸々の財物は安立するであろう」〔と〕。

 

158. 〔菩薩は言った〕「千の眼ある者(帝釈天)よ、『たとえ、極めて悪しき境遇なるも、聖者であるなら、聖ならざることは為すべきにあらず』〔と、賢者たちは〕言う。すなわち、財物を因として、〔わたしたちが〕信を捨棄することになるなら、天の王よ、まさに、その財は、有ってはならない。

 

159. その〔道〕によって、或る車が行くなら、その〔道〕によって、他の車は行く。ヴァーサヴァ(帝釈天)よ、〔善き宝として〕安置された過去の行持を、まさしく、それを転起せよ。

 

160. すなわち、有るであろうなら、〔わたしたちは〕施すであろう。存していないときは、何を施すというのだろう。このように、〔悪しき境遇と〕成るもまた、〔わたしたちは〕施すであろう。〔わたしたちが〕布施を滅することがあってはならない」〔と〕。ということで──

 

 ヴィサイハ・ジャータカが、第十となる。

 

 コーキラの章が、第四となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「『限度を超えて語る』(コーキラ)と優れた『征された』(車の鞭)があり、『車上の雄牛よ、林の中で』(焼いた大蜥蜴)と曲がり赴く者(王の教諭)があり、そこで、ジャンブと草(偉丈夫のチャッタ)と坐と優れた椅子(椅子)があり、そこで、米(籾殻)と孔雀(バーヴェール)とヴィサイハがあり、〔それらの〕十がある」と。

 

4. 5. 小なるクナーラの章

 

4. 5. 1. カンダリー・ジャータカ(カンダリー・本生物語341)

 

161. 〔菩薩は言った〕「男たちのために喜びを作り為す女たちにたいし、そして、無数の心ある制御なき〔女〕たちにたいし──たとえ、もし、一切所において、喜悦を作り為さずに存することがないとして──信頼するべきではない。なぜなら、女たちは、〔人の往来する〕渡し場に等しいからである(男の共有物である)。

 

162. カンダリーやキンナラーのばあい、すなわち、まさに、見てのとおりで、全ての婦女たちは、家〔の男〕を喜ばない。妻は、彼を、そのような人間を、捨て去って〔顧みない〕──他の足萎えの男を見て〔そののちは〕。

 

163. そして、バカ〔王〕とバーヴァリカ王は、〔両者ともに〕欲望〔の対象〕に従い行く最たる者(愛欲の者)であるが、〔その両者が共有する〕妻は、〔自己の〕支配に従い行く配下の者(従者)と情交した。あるいは、また、婦女たちが、それより他の誰と姦通せずにいられよう。

 

164. ピンギヤーニーは、一切の世のイッサラ(イーシュヴァラ神・自在神)たるブラフマダッタ王の愛しき妻であるが、〔自己の〕支配に従い行く配下の者と情交した。あるいは、また、〔まさに〕その、欲を欲する〔女〕が、その〔男〕のもとに到達せずにいられよう」〔と〕。ということで──

 

 カンダリー・ジャータカが、第一となる。

 

4. 5. 2. ヴァーラナ・ジャータカ(猿・本生物語342)

 

165. 〔菩薩は言った〕「まさに、自己を、水から陸に引き上げることができなかった。水棲者(鰐)よ、今や、わたしが、ふたたび、おまえの支配に赴くことはない。

 

166. わたしには、〔もう〕十分だ──これらの、アンバ〔の果〕やジャンブ〔の果〕は、さらに、パナサ〔の果〕は。それらは、海の彼方にある。わたしにとって、ウドゥンバラ〔の果こそ〕は、優れている。

 

167. そして、その者が、生起した義(事態)を、すみやかに随覚しないなら、朋友ならざる者(敵)の支配に従い行き、そして、のちに悩み苦しむ。

 

168. そして、その者が、生起した義(事態)を、まさしく、すみやかに覚るなら、賊の煩いから解き放たれ、そして、のちに悩み苦しまない」〔と〕。ということで──

 

 ヴァーラナ・ジャータカが、第二となる。

 

4. 5. 3. クンティニー・ジャータカ(クンティニー・本生物語343)

 

169. 〔クンティニー鳥が言った〕「〔わたしどもは〕常に尊敬され供養され、あなたの家に住しました。まさしく、あなたは、今や、〔わたしに、このように〕為しました。王よ、さあ、わたしは行きます」〔と〕。

 

170. 〔菩薩は言った〕「すなわち、まさに、為したことは為し返され、罪障は罪障をもって返されたと、このように〔証知して〕、その怨みは静まる。クンティニー〔鳥〕よ、住せ、去ってはならない」〔と〕。

 

171. 〔クンティニー鳥が言った〕「そして、為された者と、さらに、為す者とに、ふたたび、友情は結ばれません。心臓(心)は、〔それを〕許しません。車上の雄牛よ、まさしく、〔わたしは〕去ります」〔と〕。

 

172. 〔菩薩は言った〕「まさしく、そして、為された者と、さらに、為す者とに、ふたたび、友情は結ばれる。そして、愚者たちではなく、慧者たちには。クンティニー〔鳥〕よ、住せ、去ってはならない」〔と〕。ということで──

 

 クンティニー・ジャータカが、第三となる。

 

4. 5. 4. アンバ・ジャータカ(アンバ・本生物語344)

 

173. 〔第一の娘が言った〕「すなわち、髪染めで〔頭を〕装い、〔白髪を抜く〕毛抜きで打ちのめされる、その〔男〕の支配に、彼女は従い行け。すなわち、あなたの諸々のアンバ〔の果〕(マンゴー)を運び去った、〔その女は〕」〔と〕。

 

174. 〔第二の娘が言った〕「生まれてから、あるいは、二十、あるいは、二十五、あるいは、二十九となるも、そのような者は、亭主を得ることがあってはならない。すなわち、あなたの諸々のアンバ〔の果〕(マンゴー)を運び去った、〔その女は〕」〔と〕。

 

175. 〔第三の娘が言った〕「独りある者として、恋焦がれる者として、長き歳月を赴け。約束の地において、亭主を見ることがあってはならない。すなわち、あなたの諸々のアンバ〔の果〕(マンゴー)を運び去った、〔その女は〕」〔と〕。

 

176. 〔第四の娘が言った〕「〔装いを〕十分に作り為し、美しい衣をまとい、花飾をつけ、栴檀〔の香り〕芳しくあるも、独りある者として、臥所に臥せ。すなわち、あなたの諸々のアンバ〔の果〕(マンゴー)を運び去った、〔その女は〕」〔と〕。ということで──

 

 アンバ・ジャータカが、第四となる。

 

4. 5. 5. ガジャクンバ・ジャータカ(亀・本生物語345)

 

177. 〔菩薩は尋ねた〕「すなわち、〔大地を〕浄化し黒き道とする火が、林を焼く。よろめき行く者よ、どのように、〔おまえは〕為すのだ──このように、勤しむに遅き者としてある〔おまえ〕は」〔と〕。

 

178. 〔亀が答えた〕「多くの、木の穴があり、さらに、地の裂け目がある。もし、それらに至り得ないなら、わたしたちには、死没が有る〔のみ〕」〔と〕。

 

179. 〔菩薩は言った〕「彼は、遅くする時に急ぎ、なおかつ、急ぐべきところで遅くする──枯葉を踏みしめて〔行く〕ように、〔愚者は〕自己の義(利益)を打ち砕く。

 

180. 彼は、遅くする時に遅くし、なおかつ、急ぐべきところで急ぐ──月が夜を区分するように、彼の義(利益)は遍く満ちる」〔と〕。ということで──

 

 ガジャクンバ・ジャータカが、第五となる。

 

4. 5. 6. ケーサヴァ・ジャータカ(ケーサヴァ・本生物語346)

 

181. 〔ナーラダが尋ねた〕「人間のインダ(国王)を捨棄して、一切の欲望が等しく実現する者を〔捨棄して〕、尊きケーシン(ケーサヴァ)は、いったい、どうのように、カッパ(菩薩)の庵所を喜ぶのですか」〔と〕。

 

182. 〔ケーサヴァが答えた〕「諸々の喜ぶべき美味なるものが、諸々の意が喜びとする木が、〔ここには〕存在する。ナーラダよ、カッパの、諸々の見事に語られた〔言葉〕が、わたしを喜ばす」〔と〕。

 

183. 〔ナーラダが尋ねた〕「諸々の米の飯を、肉汁を注いだ上等の〔食事〕を、〔あなたは〕食べるべきです。塩気なき粟と野生米が、どのように、あなたを喜ばすのですか」〔と〕。

 

184. 〔ケーサヴァが答えた〕「もしくは、美味なるものであろうが、美味ならざるものであろうが、もしくは、少なくあろうが、多くあろうが、そこにおいて、信頼があるなら、〔それを〕食べるであろう──信頼を最高の味として」〔と〕。ということで──

 

 ケーサヴァ・ジャータカが、第六となる。

 

4. 5. 7. アヤクータ・ジャータカ(鉄槌・本生物語347)

 

185. 〔菩薩は尋ねた〕「全てが鉄でできている極量の鎚を掴んで、すなわち、〔あなたは〕空中に止住するが、まさに、今日、あなたは、わたしを守るために遣わされたのか、それとも、わたしを打ち殺そうと思い考えているのか」〔と〕。

 

186. 〔夜叉が答えた〕「王よ、わたしは、ここに、羅刹たちの使者としてある。わたしは、おまえを打ち殺すために派遣された者として存している。しかしながら、天の王たるインダ(インドラ神・帝釈天)が、おまえを守る。それによって、おまえの頭を切り裂かないのだ」〔と〕。

 

187. 〔菩薩は言った〕「さてまた、それで、もし、天の王が、天〔の神々〕たちのインダが、マガヴァントが、スジャーの亭主(帝釈天)が、わたしを守るなら、一切の魔物たちは、欲するままに騒ぎ立てよ。羅刹の徒に、〔わたしは〕恐慌せず。

 

188. 魔族たちは、一切の泥鬼たちは、欲するままに泣き叫べ。魔物たちは、〔もはや〕戦うに十分ならず(わたしの敵ではない)。その禍々しさは大なるも」〔と〕。ということで──

 

 アヤクータ・ジャータカが、第七となる。

 

4. 5. 8. アランニャ・ジャータカ(林・本生物語348)

 

189. 〔子が尋ねた〕「林から村にやってきて、わたしは、どのような戒ある者に、どのような掟ある者に、父よ、〔どのような〕人に仕え親しむべきですか。〔問いを〕尋ねられた者として、それを、わたしに告げ知らせてください」〔と〕。

 

190. 〔菩薩は答えた〕「息子よ、彼が、おまえを信頼し、かつまた、おまえの信頼に〔身を〕許すなら、そして、従順にして、かつまた、忍受あるなら、ここから去り、彼に親近せよ。

 

191. 彼に、身体によって、言葉によって、意によって、悪行が存在しないなら、〔親の〕胸に止住して〔子が育つ〕ように、ここから去り、彼に親近せよ。

 

192. 移ろい易く、猿の心の、貪欲しては離貪する人に、息子よ、そのような者に仕え親しんではならない──たとえ、もし、〔しかるべき〕人間のいない〔状態〕が存するとしても」〔と〕。ということで──

 

 アランニャ・ジャータカが、第八となる。

 

4. 5. 9. サンディベーダ・ジャータカ(関係を破壊する者・本生物語349)

 

193. 〔菩薩は言った〕「馭者よ、女たちについて、まさしく、平等なることはなく、諸々の食物についてもまた、〔平等なることは〕ない(もはや、かつての共存状態はない)。そこで、関係を破壊する者(中傷者)の、彼の思い通りとなる、そのかぎりを見よ。

 

194. 肉のうえの鋭い剣のように、中傷〔の言葉〕が遍く転起する。そこにおいて、最低の獣(野狐)たちが、そして、雄牛を、さらに、獅子を、食物とする。

 

195. 彼が、関係を破壊する中傷者の言葉を採択するなら、彼は、この臥所に臥す(共倒れとなる)──馭者よ、すなわち、〔おまえが〕見た、この〔臥所〕に。

 

196. 馭者よ、それらの者たちが、関係を破壊する者の言葉を取り合わないなら、それらの人たちは、安楽に満ち栄える──人でありながら、天上に赴いたかのように」〔と〕。ということで──

 

 サンディベーダ・ジャータカが、第九となる。

 

4. 5. 10. デーヴァターパンハ・ジャータカ(天神の問い・本生物語350)

 

197. 〔天神が尋ねた〕「〔両の〕手と足で打ち、さらに、顔を殴打するが、王よ、まさに、愛しき者として、彼は有る。それで、あなたは、〔彼を〕誰と証見する。

 

198. 欲するままに罵倒するが、しかしながら、彼の到来を求め、王よ、まさに、愛しき者として、彼は有る。それで、あなたは、〔彼を〕誰と証見する。

 

199. 事実ならざる〔言葉〕で誹謗し、偽り〔の言葉〕で虐げるが、王よ、まさに、愛しき者として、彼は有る。それで、あなたは、〔彼を〕誰と証見する。

 

200. そして、食べ物を、さらに、飲み物を、かつまた、諸々の衣や臥坐具を、奪い去る。何であろうが奪い去る者たちとして存しているが、王よ、まさに、愛しき者たちとして、彼らは有る。それで、あなたは、〔彼を〕誰と証見する」〔と〕。ということで──

 

 デーヴァターパンハ・ジャータカが、第十となる。

 

 小なるクナーラの章が、第五となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「『男たちのために』(カンダリー)と『できなかった』(猿)と優れた『住しました』(クンティニー)があり、髪染め(アンバ)と優れた火(亀)があり、そして、さらに、また、味(ケーサヴァ)と優れた鉄でできている鎚(鉄槌)があり、そのように、林と馭者(関係を破壊する者)と『打ち』(天神の問い)があり、〔それらの〕十がある」と。

 

 そこで、章の摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「カリンガがあり、そして、プチマンダがあり、小屋を汚す者とコーリカがあり、小なるクナーラの章があり、それが、第五のものとして見事に明示された」と。

 

 四なるものの集まりは〔以上で〕終了となる。

 

5. 五なるものの集まり

 

5. 1. 宝珠の耳飾の章

 

5. 1. 1. マニクンダラ・ジャータカ(宝珠の耳飾・本生物語351)

 

1. 〔侵略者の王が尋ねた〕「車と馬を、さらに、諸々の宝珠の耳飾も、失ったのです。そして、子たちを、さらに、妻たちも、まさしく、そのように、失ったのです。一切の財物が、残りなく〔消失したとき〕、何ゆえに、憂いの時において、〔あなたは〕熱苦しないのですか」〔と〕。

 

2. 〔菩薩は答えた〕「まさしく、〔死の〕前に、諸々の財物が、死すべき者(人間)を捨棄する。あるいは、それより前に、死すべき者が、それらを捨棄する。欲するままに欲する者(王)よ、財物ある者たちは、常久ならず。それゆえに、憂いの時において、わたしは憂い悲しまない。

 

3. 月は、満ち行き、円満し、滅し去る。日は、〔闇を〕滅却に据え置いて、去り行く。賊(王)よ、世の諸法(事物)は、わたしによって、〔あるがままに〕知られた。それゆえに、憂いの時において、わたしは憂い悲しまない。

 

4. 欲望〔の対象〕を享受する、怠け者の在家者は、善きにあらず。自制なき出家者は、善きにあらず。〔注意深く〕真摯に為す者ならざる王は、善きにあらず。彼が、賢者であるも、忿激する者であるなら、それは、善きにあらず。

 

5. 方角の長(王)よ、士族は、真摯ならざることなく、〔注意深く〕真摯に為すがよい。王よ、〔注意深く〕真摯に為す者の、盛名は、そして、名誉は、〔自ずと〕増え行く」〔と〕。ということで──

 

 マニクンダラ・ジャータカが、第一となる。

 

5. 1. 2. スジャータ・ジャータカ(スジャータ・本生物語352)

 

6. 〔父が尋ねた〕「いったい、どうして、急いでいるかのように、緑の草を刈って、〔他の世に〕赴いた有情の老牛に、『喰え』『喰え』と喚き散らすのだ。

 

7. まさに、食べ物によって、飲み物によって、死んだ野牛が起き上がることはない。さてまた、おまえは、虚しく泣き喚く。おまえは、思慧に劣る者であるかのように、そのように」〔と〕。

 

8. 〔菩薩は答えた〕「頭は、さらに、〔両の〕手と足は、尾は、まさしく、そのとおりに止住しています(生前と同じようにある)。〔両の〕耳は、まさしく、そのとおりに止住しています。〔だからこそ、わたしは〕思うのです──牛は起き上がるでしょう。

 

9. 〔しかしながら、死んだ〕祖父の、そして、頭は、さらに、〔両の〕手と足は、まさしく、見られません。土の塔に泣き叫んでいる、あなたこそは、まさに、思慧に劣る者ではありませんか」〔と〕。

 

10. 〔父が言った〕「酪を注いだ火のように、まさに、燃え盛る者として存しているわたしを、〔その〕一切の懊悩を、水を降り注ぐかのように、〔おまえは〕寂滅させる。

 

11. すなわち、心臓(心)に依拠するものとして存していた、わたしの矢を、まさに、引き抜いてくれた。すなわち、憂い悲しみに打ち負かされたわたしの、父〔の死〕の憂い悲しみを、除き去ったのだ。

 

12. 〔まさに〕その、わたしは、矢が引き抜かれた者として存している──憂い悲しみを離れ、〔心に〕混濁なき者として。〔わたしは〕憂い悲しまない。〔わたしは〕泣き叫ばない。若者よ、おまえの〔言葉を〕聞いて〔そののちは〕」〔と〕。

 

13. 〔世尊は言った〕「彼らが、慈しみ〔の思い〕ある者たちとして〔世に〕有るなら、智慧を有する者たちは、このように為す──すなわち、スジャータ(菩薩)が、父を憂い悲しみから引き戻したように」〔と〕。ということで──

 

 スジャータ・ジャータカが、第二となる。

 

5. 1. 3. ヴェーナサーカ・ジャータカ(伸びた枝・本生物語353)

 

14. 〔粗暴な王子に、菩薩は言った〕「平安も、豊作も、そして、身体において安楽なることも、ブラフマダッタよ、これは、常住なるものとして、〔世に〕有るべきにあらず。義(利益)が過ぎ行くも、海洋の真ん中で難破し浮きただようかのように、等しく遍く迷乱した者と成ってはならない。

 

15. それら〔の行為〕を、人が為すなら、それら〔の行為の報い〕を、自己のうちに見る。善き〔行為〕を為す者は、善き〔報い〕を。そして、悪しき〔行為〕を為す者は、悪しき〔報い〕を。そのようなものとして、種を蒔くなら、そのようなものとして、果を運ぶ」〔と〕。

 

16. 〔菩薩の訓告を思い出し、王となったブラフマダッタが言った〕「これが、その、師匠の言葉である。パーラーサリヤが説いた、その〔言葉〕である。まさに、あなたは、悪しき〔行為〕を為してはならない。すなわち、為した〔行為〕が〔悪しき報いをもたらし〕、のちに、あなたを苦しめるであろう」〔と〕。

 

17. 〔悪行を教唆したピンギヤを思い、王が言った〕「ピンギヤよ、これこそは、その、伸びた枝だ。その〔木〕において、〔わたしは〕千の士族を殺させたのだ──〔装いを〕十分に作り為し、栴檀の真髄を塗った者たちを。まさしく、その苦しみが、わたしに戻り来たのだ」〔と〕。

 

18. 〔王妃のことを想起し、王が言った〕「そして、黄金色にして、まさに、栴檀が塗られた五体ある者、ソーバンジャナカ〔樹〕の枝のように伸び上がった者──〔愛しき〕ウッバリーを見ずして、〔わたしは〕命を終えるのだ。それは、わたしにとって、これから、さらなる苦しみと成るであろう」〔と〕。ということで──

 

 ヴェーナサーカ・ジャータカが、第三となる。

 

5. 1. 4. ウラガ・ジャータカ(蛇・本生物語354)

 

19. 〔菩薩は言った〕「蛇が、老化した皮を〔捨て去る〕ように、自らの体躯を捨棄して、〔彼は〕去って行きます。このように、肉体の受益なく、命を終えた亡者として存しているなら。

 

20. 〔荼毘の火に〕焼かれながら、〔彼は〕親族たちの嘆き悲しみを知りません。それゆえに、〔わたしは〕このことを憂い悲しみません。彼は、去って行ったのです。彼には、すなわち、赴く所()があるのです」〔と〕。

 

21. 〔死者の母が言った〕「〔彼は〕呼ばれることなく、そこからやってきました。〔彼は〕許されることなく、ここから去って行ったのです。すなわち、やってきたように、そのように、去って行ったのです。そこにおいて、何の嘆き悲しみがあるというのでしょう。

 

22. 〔荼毘の火に〕焼かれながら、〔彼は〕親族たちの嘆き悲しみを知りません。それゆえに、〔わたしは〕このことを憂い悲しみません。彼は、去って行ったのです。彼には、すなわち、赴く所があるのです」〔と〕。

 

23. 〔死者の妹が言った〕「それで、もし、〔わたしが〕泣き叫ぶなら、〔わたしは〕痩せ細った者となり、〔世に〕存するでしょう。〔まさに〕その、わたしに、何の果が存するというのでしょう。親族や朋友や知人たちの、わたしたちへのより一層の不満〔の思い〕が存するでしょう。

 

24. 〔荼毘の火に〕焼かれながら、〔彼は〕親族たちの嘆き悲しみを知りません。それゆえに、〔わたしは〕このことを憂い悲しみません。彼は、去って行ったのです。彼には、すなわち、赴く所があるのです」〔と〕。

 

25. 〔死者の妻が言った〕「あたかも、また、幼児が、去って行く月に泣き叫ぶように、このように、まさしく、同様のものとして、このことはあります。すなわち、亡者を憂い悲しむことは。

 

26. 〔荼毘の火に〕焼かれながら、〔彼は〕親族たちの嘆き悲しみを知りません。それゆえに、〔わたしは〕このことを憂い悲しみません。彼は、去って行ったのです。彼には、すなわち、赴く所があるのです」〔と〕。

 

27. 〔死者の奴婢が言った〕「あたかも、また、壊れた水瓶が、〔もはや〕結生なくあるように、このように、まさしく、同様のものとして、このことはあります。すなわち、亡者を憂い悲しむことは。

 

28. 〔荼毘の火に〕焼かれながら、〔彼は〕親族たちの嘆き悲しみを知りません。それゆえに、〔わたしは〕このことを憂い悲しみません。彼は、去って行ったのです。彼には、すなわち、赴く所があるのです」〔と〕。ということで──

 

 ウラガ・ジャータカが、第四となる。

 

5. 1. 5. ガタ・ジャータカ(ガタ・本生物語355)

 

29. 〔王が尋ねた〕「他の者たちは、憂い悲しみ、泣き叫ぶ。他の人たちは涙顔でいるが、〔あなたは〕清らかな顔と色艶ある者として存している。ガタよ、何ゆえに、憂い悲しまないのか」〔と〕。

 

30. 〔菩薩は答えた〕「憂いは、過去となったものを運ぶことなく、未来の安楽をもたらすものではなく、ダンカよ、それゆえに、〔わたしは〕憂い悲しまない。憂いに、伴侶たることは存在しない。

 

31. 憂い悲しんでいる者は、痩せ細り青ざめた者と成る。そして、食事は、彼にとって好ましからず。朋友ならざる者(敵)たちは、悦意の者たちと成る。矢に貫かれた者が、泣き叫んでいるなら。

 

32. もしくは、村であろうが、林であろうが、もしくは、低地であろうが、高地であろうが、〔そこに〕立つわたしのところに、〔もはや、憂いは〕やってこない。このように、わたしは、〔安楽の〕境処を見たのだ。

 

33. 一切の欲望の味を運び来るものである、ただ一つの自己が、彼にとって、十分ではないなら、地の一切でさえも、彼に、安楽をもたらさないであろう」〔と〕。ということで──

 

 ガタ・ジャータカが、第五となる。

 

5. 1. 6. コーランディヤ・ジャータカ(コーランディヤ・本生物語356)

 

34. 〔婆羅門が尋ねた〕「林のなかで、〔あなたは〕独り、山の洞窟に〔手を〕差し出しては差し出して、石を献じ捧げる──急ぎの様子で、繰り返し。コーランディヤよ、おまえに、いったい、どのような義(目的)が、ここにあるのだ」〔と〕。

 

35. 〔菩薩は答えた〕「まさに、わたしは、海洋を限りに慣れ親しむところの、この〔大地〕を、あたかも、また、手の平のように、平坦に作り為すのです──そして、峰々を、さらに、山々を、〔粉々に〕振りまいて。それゆえに、石を洞窟に置くのです」〔と〕。

 

36. 〔婆羅門が言った〕「この大地を、手の平に類するものと〔為し〕、平坦に作り為すのは、一者の人間ができることではない。コーランディヤよ、〔わたしは〕思うのだ──まさしく、〔わたしは〕思う──〔おまえは〕洞窟〔を満たすことを〕を求め願いながら、生ある世を捨棄するであろう」〔と〕。

 

37. 〔菩薩は言った〕「それで、もし、生類を保持する〔この大地〕を平坦に作り為すのは、一者の人間であるわたしができることではないとして、梵(婆羅門)よ、まさしく、このように、あなたも、これらの人間たちを導くことはないでしょう──種々なる見解ある彼らを〔導くことは〕」〔と〕。

 

38. 〔婆羅門が言った〕「コーランディヤよ、貴君は、簡略の形をもって、義(道理)を、わたしに告げ知らせてくれた。このことは、そのとおりだ。すなわち、この地が、〔一者の〕人間によって、平坦に作り為すことができないように、そのように、人間たちはあるのだ」〔と〕。ということで──

 

 コーランディヤ・ジャータカが、第六となる。

 

5. 1. 7. ラトゥキカ・ジャータカ(鶉・本生物語357)

 

39. 〔六十歳の象に、鶉が言った〕「象よ、六十歳のあなたを、〔わたしは〕敬拝します──林にあり、群れの長たる、福徳ある〔あなた〕を。〔両の〕翼をもって、あなたに、合掌を為します。力弱きわたしの、子供たちを打ち殺してはなりません」〔と〕。

 

40. 〔独り歩む象に、鶉が言った〕「象よ、独り歩むあなたを、〔わたしは〕敬拝します──林にあり、山の背を餌場とする〔あなた〕を。〔両の〕翼をもって、あなたに、合掌を為します。力弱きわたしの、子供たちを打ち殺してはなりません」〔と〕。

 

41. 〔独り歩む象が言った〕「鶉よ、〔わたしは〕おまえの子供たちを打ち殺すであろう。力弱き者として存している、おまえが、わたしに、何を為すというのだろう。そのような者たちが、たとえ、幾百千あるとして、〔わたしは〕左足で打ち払うであろう」〔と〕。

 

42. 〔鶉が言った〕「まさしく、まさに、一切所において、力をもって為すべきにあらず。なぜなら、愚者の力は、〔他を〕打ち殺すために有るからである。象の王よ、〔わたしは〕おまえに義(利益)なきを為す。すなわち、力弱きわたしの、子供たちを打ち殺したのだ」〔と〕。

 

43. 〔世尊は言った〕「そして、見よ──烏を、鶉を、蛙を、青蝿を。これらの者たちは、象を殺した。見よ──怨みある者たちの怨みの〔赴く所を〕。まさに、それゆえに、怨みを作り為すべきではない──愛しくない者であろうが、誰にであれ」〔と〕。ということで──

 

 ラトゥキカ・ジャータカが、第七となる。

 

5. 1. 8. チューラダンマパーラ・ジャータカ(小なるダンマパーラ・本生物語358)

 

44. 〔王妃が言った〕「わたしこそは、マハーパターパ王を汚す者であり、極罪者です。このダンマパーラを解き放ってください。陛下よ、わたしの〔両の〕手を断ち切ってください。

 

45. わたしこそは、マハーパターパ王を汚す者であり、極罪者です。このダンマパーラを解き放ってください。陛下よ、わたしの〔両の〕足を断ち切ってください。

 

46. わたしこそは、マハーパターパ王を汚す者であり、極罪者です。このダンマパーラを解き放ってください。陛下よ、わたしの頭を断ち切ってください。

 

47. まさに、まちがいなく、この王の朋友たちは、さらに、家臣たちも、善き心の者たちは見出されません。彼らは、王に、『正嫡たる子を殺害してはならない』〔と〕説きません。

 

48. まさに、まちがいなく、この王の親族たちは、さらに、朋友たちも、善き心の者たちは見出されません。彼らは、王に、『実の子を殺害してはならない』〔と〕説きません。

 

49. 栴檀の真髄を塗った〔両の〕腕が切断されます──ダンマパーラ〔王子〕の、地の相続者の、〔両の腕が〕。陛下よ、わたしの諸々の気息は消失します」〔と〕。ということで──

 

 チューラダンマパーラ・ジャータカが、第八となる。

 

5. 1. 9. スバンナミガ・ジャータカ(黄金の鹿・本生物語359)

 

50. 〔罠にかかった菩薩に、雌鹿が言った〕「金鹿よ、さあ、勇猛してください。大鹿よ、さあ、勇猛してください。革の罠を切断してください。わたしは、独り、林のなかで、喜び楽しむことはありません」〔と〕。

 

51. 〔菩薩は言った〕「〔わたしは〕勇猛するが、脱出できない──勢いよく地を押すのだが。革の罠は堅固にして、わたしの足を切り裂く」〔と〕。

 

52. 〔猟師に、雌鹿が言った〕「諸々のパラーサ〔樹の葉〕を敷き詰めるのです。猟師よ、剣を抜いてください。最初に、わたしを貫いて、そのあとで、大鹿を殺してください」〔と〕。

 

53. 〔猟師が言った〕「鹿が、人間の〔言葉〕を語っているのを、あるいは、聞いたことも、あるいは、見たことも、わたしはない。幸いなる者よ、そして、あなたは、安楽の者と成れ。さらに、また、この大鹿も」〔と〕。

 

54. 〔雌鹿が言った〕「猟師よ、このように、全ての親族たちと共に、喜びたまえ。すなわち、解き放たれた大鹿を見て、今日、わたしが喜ぶように」〔と〕。ということで──

 

 スバンナミガ・ジャータカが、第九となる。

 

5. 1. 10. スヨーナンディー・ジャータカ(スヨーナンディー・本生物語360)

 

55. 〔サッガが言った〕「諸々のティミラ〔樹〕の香りただよい、そして、潮騒は響きあり。スヨーナンディーは、これより遠く離れてあり。タンバよ、諸々の欲望は、わたしを刺す」〔と〕。

 

56. 〔菩薩は尋ねた〕「どのように、〔おまえは〕海を超えたのだ。どのように、〔おまえは〕セードゥマ〔島〕を見たのだ。サッガよ、どのように、そして、彼女に、さらに、おまえに、逢瀬が有ったのだ」〔と〕。

 

57. 〔サッガが答えた〕「クルカッチャから出航した、財を探し求める商人たちの船は、大魚たちに壊され、わたしは、木片にすがり、浮きただよった。

 

58. 彼女は、栴檀の香りある方は、わたしを、常に、優雅で柔和な手足で引き寄せた──母が、わが子を〔抱く〕ように、幸いなる方は。

 

59. 彼女は、食べ物によって、飲み物によって、衣によって、さらに、臥所によって、わたしを〔満足させた〕。優しい眼をした方は、さらに、また、自己によって、〔わたしを満足させた〕。タンバよ、このように識知したまえ」〔と〕。ということで──

 

 スヨーナンディー・ジャータカが、第十となる。

 

 宝珠の耳飾の章が、第一となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「そこで、優れた『失ったのです』(宝珠の耳飾)があり、緑の草なるもの(スジャータ)があり、そこで、『難破し浮きただよう』(伸びた枝)があり、まさしく、蛇があり、ガタがあり、洞窟(コーランディヤ)があり、さらに、象(鶉)と極罪者(小なるダンマパーラ)があり、最上の鹿(黄金の鹿)と優れたサッガ(スヨーナンディー)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

5. 2. 色艶の崇高の章

 

5. 2. 1. ヴァンナーローハ・ジャータカ(色艶の崇高・本生物語361)

 

60. 〔スバーフが言った〕「『色艶の崇高によって、出生によって、さらに、活力と勤勉によっても、スバーフは、わたしより、より勝ることなし』〔と〕。スダータよ、かくのごとく、〔あなたは〕語る」〔と〕。

 

61. 〔スダータが言った〕「『色艶の崇高によって、出生によって、さらに、活力と勤勉によっても、スダータは、わたしより、より勝ることなし』〔と〕、スバーフよ、かくのごとく、〔あなたは〕語る。

 

62. スバーフよ、友よ、もし、このように、〔共に〕住んでいるわたしを、〔あなたが〕裏切るなら、今や、わたしは、あなたを相手に、共住を願わない。

 

63. 彼が、他者たちの諸々の言葉を、真実のとおりと〔受け止め〕、信を置くなら、すみやかに、友情において破れ、かつまた、多くの怨みを生むであろう。

 

64. 彼が、常に怠りなく、〔友情の〕破綻を疑い、〔相手の〕欠点だけを随観するなら、彼は、朋友ではない。しかしながら、彼のうちにおいて、子が胸に臥すようにあるなら──彼が、他者たちによって〔友情が〕破綻されないなら──彼は、まさに、朋友である」〔と〕。ということで──

 

 ヴァンナーローハ・ジャータカが、第一となる。

 

5. 2. 2. シーラヴィーマンサ・ジャータカ(戒の審査・本生物語362)

 

65. 〔菩薩は言った〕「『戒が、より勝るのか、所聞(学識)が、より勝るのか』〔と〕、かくのごとく、わたしに、疑念が有った。『戒こそは、所聞よりも、より勝る』〔と〕、かくのごとく、わたしに、〔今や〕疑念は存在しない。

 

66. そして、出生(家系)も、さらに、色艶(階級)も、無駄なるもの。戒こそは、まさに、最上なるもの。戒を具さない者に、所聞による義(利益)は見出されない。

 

67. そして、法(正義)ならざるものに依って立つ士族も、さらに、法(正義)ならざるものに依拠する庶民も、彼らは、〔天と人の〕二つの世を遍捨して、悪しき境遇(悪趣)に再生する。

 

68. 士族たちも、婆羅門たちも、庶民たちも、隷民たちも、チャンダーラ(賎民)やプックサ(非人)たちも、この〔世において〕、法(正義)〔の道〕を歩んで、三十三〔天〕において、等しき者たちと成る。

 

69. 諸々のヴェーダ〔聖典〕は、未来のためにならず。出生は、〔未来のために〕ならず。眷属たちもまた、〔未来のために〕ならず。しかしながら、自らの清浄なる戒は、未来のためになり、かつまた、安楽のためになる」〔と〕。ということで──

 

 シーラヴィーマンサ・ジャータカが、第二となる。

 

5. 2. 3. ヒリ・ジャータカ(恥・本生物語363)

 

70. 〔菩薩は言った〕「恥〔の思い〕()を超渡し忌避している者(恥知らずの者)を、『わたしは、あなたのために存している』と語っている者を、諸々のより勝る行為を取らずにいる者を──彼を、『この者は、わたしのためならず』と識知するがよい。

 

71. まさに、それを為すなら、まさに、それを説くように。それを為さないなら、それを説かないように。賢者たちは、為すことなく語っている者を、〔あるがままに〕遍知する。

 

72. 彼が、常に怠りなく、〔友情の〕破綻を疑い、〔相手の〕欠点だけを随観するなら、彼は、朋友ではない。しかしながら、彼のうちにおいて、子が胸に臥すようにあるなら──彼が、他者たちによって〔友情が〕破綻されないなら──彼は、まさに、朋友である。

 

73. 歓喜を作り為す境位(喜びの因となる精進努力)を、賞賛をもたらす安楽(涅槃に導く精進努力)を、果の福利ある者は修める──人としての荷を運びながら。

 

74. 遠離の味わいを飲み干して、さらに、寂止の味わいを〔飲み干して〕、懊悩なく悪なき者と成る──法(真理)の喜悦の味わいを飲み干しながら」〔と〕。ということで──

 

 ヒリ・ジャータカが、第三となる。

 

5. 2. 4. カッジョーパナカ・ジャータカ(蛍・本生物語364)

 

75. 〔天神が言った〕「いったい、誰が、灯火が静まったとき、火を遍く探し求め、〔世を〕歩みつつ、夜に蛍を見たとして、〔それを〕火と思ったであろう。

 

76. 彼は、彼の、諸々の牛糞の粉末を、さらに、諸々の草を、摩擦しながら、〔その〕転倒した表象によって、火を起こすことができなかった。

 

77. このように、また、手段ならざる〔手段〕によって、獣愚の者は、義(利益)を得ない──そこにおいては、乳が見出されない、牛の角を搾りながら。

 

78. 人間たちは、様々な種類の手段によって、義(利益)に至り得る。朋友ならざる者たちには制御によって、そして、朋友たちには励起によって──

 

79. 軍団長には利得によって、そして、愛すべき者たちには教導によって、地上の警護者たちは、富を保持する地上を占拠する」〔と〕。ということで──

 

 カッジョーパナカ・ジャータカが、第四となる。

 

5. 2. 5. アヒトゥンディカ・ジャータカ(蛇使い・本生物語365)

 

80. 〔蛇使いが言った〕「友よ、美男子よ、賭場で博打に負けた博徒として、〔わたしは〕存している。諸々の熟したアンバ〔の果〕(マンゴー)を運んでおくれ。おまえの精進を、〔わたしたちは〕食物とするのだ」〔と〕。

 

81. 〔猿が言った〕「友よ、まさに、偽りを〔説き〕、わたしを、事実ならざる〔言葉〕で賞賛する。どのような猿が、まさに、美男子だと、おまえは、あるいは、聞き、あるいは、見たのかい。

 

82. 今日もなお、それは、わたしの意にある。蛇使いよ、すなわち、おまえが、わたしを〔打ったことだ〕。逆上した〔おまえ〕は、穀物店に入って、空腹のわたしを打ったのだ。

 

83. 〔まさに〕その、苦しみの臥所を、わたしは思念している。さてまた、たとえ、〔わたしに〕王権を執行するとして、乞われたわたしが〔おまえに〕施すことは、まさしく、ない。まさに、そのように、恐怖に怯えた〔わたし〕なのだ。

 

84. そして、彼が、良家に生まれ、寝室で満ち足りている、物惜〔の思い〕なき者であるなら、彼と、そして、友誼を、さらに、友情を、慧者は、結ぶに値する」〔と〕。ということで──

 

 アヒトゥンディカ・ジャータカが、第五となる。

 

5. 2. 6. グンビヤ・ジャータカ(グンビヤ・本生物語366)

 

85. 〔世尊は言った〕「蜜の色あり、蜜の味あり、蜜の香ある、毒が有った。食糧を探し求めるグンビヤは、林のなかに毒を置いた。

 

86. 『蜜である』と思いながら、彼らは、その毒を喰ったが、彼らにとって、それは、辛きものとして存した。それによって、〔彼らは〕死へと近しく赴いた。

 

87. しかしながら、彼らが、まさに、審慮して〔そののち〕、その毒を遍く避けたなら、彼らは、病苦の者たちのなかにいながら、安楽の者たちとなり、〔苦痛に〕焼かれている者たちのなかにいながら、〔苦痛が〕寂滅した者たちとなる。

 

88. まさしく、このように、人間たちにおいて、毒が〔置かれ〕、諸々の欲望〔の対象〕として設置されたのだ。財貨は、そして、これは、結縛である。洞窟(身体)に依拠するものは、死魔の衣装である。

 

89. まさしく、このように、これらの欲望〔の対象〕を、病苦の者たちは、〔執着の〕侍者たちと〔知るであろう〕──彼らが、〔これらの欲望の対象を〕常に遍く避け、世における執着を過ぎ行ったなら」〔と〕。ということで──

 

 グンビヤ・ジャータカが、第六となる。

 

5. 2. 7. サーリヤ・ジャータカ(九官鳥・本生物語367)

 

90. 〔菩薩は言った〕「すなわち、この者は、『九官鳥の雛である』と〔偽りを言って〕、黒蛇を掴ませたが、その蛇によって、この者は咬まれた。悪しき教示者は、〔蛇に〕打ち殺されたのだ。

 

91. すなわち、人が、危害なく打ち殺すことなき者を打ち殺そうと求めるなら、このように、彼は、打ち倒され、〔地に〕臥す──あたかも、この男が、〔蛇に〕打ち殺されたように。

 

92. すなわち、人が、傷害なく打ち殺すことなき者を打ち殺そうと求めるなら、このように、彼は、打ち倒され、〔地に〕臥す──あたかも、この男が、〔蛇に〕打ち殺されたように。

 

93. たとえば、人が、ひと握りの砂を、風に逆らって投げるなら、まさしく、彼を、その砂が打つ──そのように、この男は、〔蛇に〕打ち殺されたのだ。

 

94. 彼が、汚れなき人を汚すなら、清浄で穢れなき人を〔穢すなら〕(怒りなき者に怒り、悪意なき者に悪意を抱くなら)、まさしく、その愚者に、悪は戻り来る──風に逆らって投げられた微細な塵が、〔投げた者自身に戻り来る〕ように」〔と〕。ということで──

 

 サーリヤ・ジャータカが、第七となる。

 

5. 2. 8. タッチャサーラ・ジャータカ(竹・本生物語368)

 

95. 〔王が尋ねた〕「朋友ならざる者(敵)の手に落ち、竹に括り付けられた〔おまえたち〕であるのに、清らかな顔と色艶ある者たちとして存している。何ゆえに、おまえたちは憂い悲しまないのか」〔と〕。

 

96. 〔菩薩は答えた〕「たとえ、また、僅かであれ、まさしく、義(利益)が得られたとして、〔それは〕憂い悲しみによってに〔あらず〕、嘆き悲しみによってにあらず。この者が苦しみ、憂い悲しんでいるのを知って、〔彼の〕義(利益)に反する者(敵対者)たちは、わが意を得た者たちと成る。

 

97. しかしながら、すなわち、まさに、義(利益)の判別を知る賢者は、諸々の逆境のうちにあるも動揺しないことから、彼の義(利益)に反する者(敵対者)たちは、以前と変わらない〔彼の〕顔を見て、苦しみの者たちと成る。

 

98. 詠唱によって、呪文によって、善語によって、贈与によって、あるいは、伝統によって、そのとおり、そのとおりに、そこにおいて、義(利益)を得るなら、そのとおり、そのとおりに、そこにおいて、勤しむであろう。

 

99. しかしながら、すなわち、『この義(利益)は、あるいは、わたしによって、あるいは、他者によって、得られるべきものにあらず』〔と〕知ることから、憂い悲しむことなく、耐え忍ぶであろう。『行為〔の果〕は、堅固である。今や、何をどう為すというのだろう』」〔と〕。ということで──

 

 タッチャサーラ・ジャータカが、第八となる。

 

5. 2. 9. ミッタヴィンダカ・ジャータカ(ミッタヴィンダカ・本生物語369)

 

100. 〔ミッタヴィンダカが言った〕「わたしは、何を、天〔の神々〕たちに為したのか。どのような悪しき〔行為〕が、わたしによって為されたのか。すなわち、わたしの頭のうえに降りてきて、〔剃刀の〕輪が、頭上に迷走する」〔と〕。

 

101. 〔菩薩は言った〕「ラマナカ〔の水晶宮殿〕を、さらに、サダーマッタ〔の白銀宮殿〕を、ドゥーハカ〔の宝珠宮殿〕を──〔それらを〕超え行って、そして、梵〔天〕を超える〔黄金〕宮殿を〔超え行って〕、どのような義(目的)によって、ここ(地獄)にやってきたのだ」〔と〕。

 

102. 〔ミッタヴィンダカが言った〕「『これよりも、より多くの財物が、思うに、ここに有るのだ』〔と〕、かくのごとく、〔欲深き〕この表象によって、災厄に至ったわたしを見てください」〔と〕。

 

103. 〔菩薩は言った〕「〔あなたは〕到達した──四より八へと、そして、また、八より十六へと、さらに、十六より三十二へと、求め過ぎながら、〔剃刀の〕輪に近寄る者となり。人が、〔欲の〕求めに打ちのめされたなら、〔剃刀の〕輪が、頭上に迷走する。

 

104. よりさらに広くなり、満ち難く、拡散に至るのが、〔欲の〕求めである。そして、彼らが、それを貪り求めるなら、彼らは、〔剃刀の〕輪を保持する者たちと成る」〔と〕。ということで──

 

 ミッタヴィンダカ・ジャータカが、第九となる。

 

5. 2. 10. パラーサ・ジャータカ(パラーサ・本生物語370)

 

105. 〔世尊は言った〕「鵞鳥(ハンサ・神が乗る鳥)は、パラーサ〔樹の天神〕に言った」〔と〕。〔菩薩は言った〕「友よ、ニグローダ〔樹〕が生じる(芽を出した)──あなたの膝のうえに坐っているかのように。それは、あなたの諸々の急所を断つであろう(ニグローダ樹が成長したなら、パラーサ樹を枯らすであろう)」〔と〕。

 

106. 〔パラーサ樹の天神が言った〕「まさしく、たしかに、ニグローダ〔樹〕は成長します。わたしは、〔わたしに〕立脚するもののために成るのです──あたかも、そして、父であるかのように、さらに、母であるかのように。このように、〔わが子に等しい〕彼は、〔親である〕わたしのために成るのです(わたしを害するはずがない)」〔と〕。

 

107. 〔菩薩は言った〕「すなわち、あなたは、〔あなたを〕恐怖させる乳の木(ニグローダ樹)を、膝のうえで成長させるのだ。まさに、あなたに〔別れを〕告げて、〔わたしたちは〕去り行く。彼の増大は、わたしにとって好ましからず」〔と〕。

 

108. 〔パラーサ樹の天神が言った〕「大いなるネール(須弥山)に見えるものが、今や、まさに、わたしを恐怖させる。鵞鳥の〔言葉を〕証知せずして、わたしに、大いなる恐怖がやってきたのだ」〔と〕。

 

109. 〔世尊は言った〕「彼の増大は、智者の賞賛するところにあらず──彼が、増大しながら、立脚するものを蝕むなら。慧者は、彼の破滅を危惧しながら、根の打破のために努めた」〔と〕。ということで──

 

 パラーサ・ジャータカが、第十となる。

 

 色艶の崇高の章が、第二となる。

 

5. 3. 半分の章

 

5. 3. 1. ディーギーティコーサラ・ジャータカ(ディーギーティコーサラ・本生物語371)

 

110. 〔菩薩は言った〕「王よ、このように成ったあなたに、わたしの支配に至り着いた〔あなた〕に、はてさて、何であれ、機会が存するであろうか──すなわち、あなたを苦しみから解き放つ、〔その機会が〕」〔と〕。

 

111. 〔王が言った〕「親愛なる者よ、このように成ったわたしに、あなたの支配に至り着いた〔わたし〕に、まさに、何であれ、機会は存在しない──すなわち、わたしを苦しみから解き放つ、〔その機会は〕」〔と〕。

 

112. 〔菩薩は言った〕「王よ、善行の他になし──王よ、善語の他になし──死の時に、〔あなたを〕救うのは。まさしく、このように、他の財は〔救いとならず〕。

 

113. 『〔彼は〕わたしを罵った。〔彼は〕わたしを打った。〔彼は〕わたしに勝った。〔彼は〕わたしから奪った』〔と〕、そして、彼らが、彼を怨むなら、彼らの怨みは静まることがない。

 

114. 『〔彼は〕わたしを罵った。〔彼は〕わたしを打った。〔彼は〕わたしに勝った。〔彼は〕わたしから奪った』〔と〕、そして、彼らが、彼を怨まないなら、彼らの怨みは止み静まる。

 

115. まさに、〔怨みにたいし〕怨みをもって〔為すなら〕、諸々の怨みは、この〔世において〕、いついかなる時も、静まることがない。しかしながら、〔怨みにたいし〕怨みなきをもって〔為すなら〕、〔諸々の怨みは〕静まる──これは、永遠の法(真理)である」〔と〕。ということで──

 

 ディーギーティコーサラ・ジャータカが、第一となる。

 

5. 3. 2. ミガポータカ・ジャータカ(子鹿・本生物語372)

 

116. 〔菩薩は言った〕「家から〔家なきへと〕近しく至った、家なき者のあなたにとって、〔そのような者として〕存している沙門にとって、すなわち、亡者を憂い悲しむことは、それは、善きことにあらず」〔と〕。

 

117. 〔婆羅門が言った〕「帝釈〔天〕よ、人間との、あるいは、獣との、共住によって、まさに、心臓(心)に愛情が生まれる。それを、憂い悲しまずにいることはできない」〔と〕。

 

118. 〔菩薩は言った〕「彼らは、泣き叫び、そして、泣き喚くが、〔すでに〕死んだ者のことを、〔まさに〕死ぬであろう者のことを、〔虚しく〕泣き叫ぶのだ。聖賢よ、それゆえに、あなたは、泣き叫んではならない。『泣き叫ぶことは無駄である』〔と〕、正しくある者たちは言う。

 

119. 梵(婆羅門)よ、泣き叫ぶことによって、まさに、死んだ亡者が現起するなら、全ての者たちが集いあつまって、〔わたしたちは〕互いに他の親族たちのことを泣き叫ぶであろう」〔と〕。

 

120. 〔婆羅門が言った〕「酪を注いだ火のように、まさに、燃え盛る者として存しているわたしを、〔その〕一切の懊悩を、水を降り注ぐかのように、〔あなたは〕寂滅させる。

 

121. すなわち、心臓(心)に依拠するものとして存していた、わたしの矢を、まさに、引き抜いてくれた。すなわち、憂い悲しみに打ち負かされたわたしの、子〔の死〕の憂い悲しみを、除き去ったのだ。

 

122. 〔まさに〕その、わたしは、矢が引き抜かれた者として存している──憂い悲しみを離れ、〔心に〕混濁なき者として。〔わたしは〕憂い悲しまない。〔わたしは〕泣き叫ばない。ヴァーサヴァ(帝釈天)よ、あなたの〔言葉を〕聞いて〔そののちは〕」〔と〕。ということで──

 

 ミガポータカ・ジャータカが、第二となる。

 

5. 3. 3. ムーシカ・ジャータカ(鼠・本生物語373)

 

123. 〔王位を狙う子に、父王は言った〕「『どこに赴いたのだ。どこおいて赴いたのだ』〔と〕、かくのごとく、人々は喚き立てる。まさしく、わたしは、独り知る。ムーシカーは、井戸で殺されたのだ。

 

124. さらに、すなわち、このことが、そして、かくのごとくであれ、さらに、かくのごとくであれ、驢馬のように、〔おまえは〕戻ってくる。ムーシカーを井戸で殺して〔そののち〕、麦を食することを、〔おまえは〕求める。

 

125. 思慮浅き者よ、そして、年少の者として、〔おまえは〕存している──〔人生の〕最初を生きる若者として。そして、〔おまえは〕この長きものを掴み取って〔わたしを殺そうとするが〕、おまえの生命を、〔わたしは〕見ない(おまえこそが死を見る)」〔と〕。

 

126. 〔改心した子に、父王は言った〕「空中の居所によってにあらず、あるいは、また、手足となる子によってにあらず──まさに、子に〔死を〕切望された〔わたし〕は、〔これらの〕偈文によって解放されたのだ。

 

127. 下劣なるものも高尚なるものも中等なるものも、一切の所聞を学得するがよい。一切〔の所聞〕の義(意味)を知るがよい。そして、一切〔の所聞〕に専念するがよい。そこにおいて、所聞が義(利益)をもたらす、そのような時が有るのだ」〔と〕。ということで──

 

 ムーシカ・ジャータカが、第三となる。

 

5. 3. 4. チューラダヌッガハ・ジャータカ(小なる弓の使い手・本生物語374)

 

128. 〔女が言った〕「婆羅門(盗賊)よ、一切の物品を受持して、〔あなたは〕彼岸へと超え渡った者として存しています(わたしを置き去りにして、川を超えてしまった)。戻ってきてください、はやく、すみやかに。わたしをもまた超え渡してください、今や、ここから」〔と〕。

 

129. 〔盗賊が言った〕「尊女は、長き親交ある者を、親交なきわたしと──常なる者を、常ならざる〔わたし〕と──交換した。尊女は、わたしをもまた、他の者と交換するであろう。わたしは、ここから、より遠くに去り行くのだ」〔と〕。

 

130. 〔野狐が言った〕「エーラガラーの茂みで高笑いを為す、この〔女〕は、誰なのだ。あるいは、舞踏や歌詠も、あるいは、見事に打ち鳴らされた鉦も、ここにはない。可愛いお尻をした方よ、笑う時でもないのに、いったい、どうして、〔あなたは〕笑うのだ、美しく輝く方よ」〔と〕。

 

131. 〔女が言った〕「野狐よ、愚者よ、思慮浅き者よ、〔おまえは〕智慧少なき者として存している。野狐よ、そして、魚も、さらに、肉も、〔両者ともに〕失い、〔おまえは〕貧者のように思い惑う」〔と〕。

 

132. 〔野狐が言った〕「他者たちの罪過は見易く、いっぽうで、自己の〔罪過は〕見難い。そして、亭主も、さらに、愛人も、〔両者ともに〕失い、〔わたしは〕思うのだが、あなたこそは思い惑う」〔と〕。

 

133. 〔女が言った〕「獣の王よ、このことは、そのとおりです。野狐よ、すなわち、〔あなたが〕語るとおりです。〔まさに〕その、わたしは、さあ、ここから去って、〔次なる〕夫の支配に従い行く者と成りましょう」〔と〕。

 

134. 〔菩薩は言った〕「すなわち、土の小皿を持ち去るなら、彼は、銅の小皿をもまた持ち去るであろう。まさしく、そして、あなたによって、悪しき〔行為〕は為された。ふたたび、また、このように、〔あなたは〕為すであろう」〔と〕。ということで──

 

 チューラダヌッガハ・ジャータカが、第四となる。

 

5. 3. 5. カポータ・ジャータカ(鳩・本生物語375)

 

135. 〔烏が言った〕「今や、まさに、安楽の者として、無病の者として、〔わたしは〕存している。棘は取れ、鳩(菩薩)は出て行ったのだ。今や、心臓(心)のために、満足〔の思い〕を作り為すのだ。まさに、そのように、肉と野菜は、わたしを力づける」〔と〕。

 

136. 〔菩薩は言った〕「誰なのだ──この冠毛ある雌鶴は、雷鳴を父祖とする女盗賊は。雌鶴よ、此方に来たれ。わたしの友人である烏は、狂暴なのだ」〔と〕。

 

137. 〔烏が言った〕「あなたにとって、まさに、十分なるは、笑うこと──このような者である、わたしを見て〔そののちは〕──料理人の子に毛を抜かれ、練り物を塗りたくられた〔わたし〕を〔見てそののちは〕」〔と〕。

 

138. 〔菩薩は言った〕「善く沐浴し、善く塗油し、食べ物と飲み物によって満足した者として、〔あなたは〕存している。さてまた、あなたの首には瑠璃がある。はてさて、カジャンガラ〔の町〕に赴いたのかな」〔と〕。

 

139. 〔烏が言った〕「あなたの、朋友は、あるいは、朋友ならざる者は、カジャンガラ〔の町〕に赴いてはならない。そこおいて、〔人々は〕諸々の尾翼を刈り取って、首に礫(つぶて)を結び縛る」〔と〕。

 

140. 〔菩薩は言った〕「友よ、ふたたび、また、〔あなたは、過ちを〕犯す。まさに、あなたの戒は、そのようなもの。まさに、諸々の人間の受益物は、鳥によっては善き受益と成らず」〔と〕。ということで──

 

 カポータ・ジャータカが、第五となる。

 

 半分の章が、第三となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「そこで、色艶(色艶の崇高)と自らの戒(戒の審査)と恥と『得る』(蛍)があり、美男子(蛇使い)と毒(グンビヤ)と九官鳥と優れた朋友ならざる者(竹)があり、そこで、輪(ミッタヴィンダカ)とパラーサと王(ディーギーティコーサラ)を有するものと『存している』(子鹿)があり、麦(鼠)と愚者(小なる弓の使い手)と鳩なるものがあり、〔それらの〕十五がある」と。

 

 そこで、章の摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「失った(宝珠の耳飾)があり、そして、色艶(色艶の崇高)があり、等しからざる章(半分)を後にする。ジャータカ(本生)として、かくのごとく、二十のものが存在し、見事に説示された。偉大なる聖賢の最上の梵行として、義(意味)があり、善き文なる、諸々の詩偈を、〔世尊は〕説いた」と。

 

 五なるものの集まりは〔以上で〕終了となる。

 

6. 六なるものの集まり

 

6. 1. アヴァーリヤの章

 

6. 1. 1. アヴァーリヤ・ジャータカ(アヴァーリヤ・本生物語376)

 

1. 〔菩薩は言った〕「地上の長(王)よ、まさに、怒ってはならない。車上の雄牛よ、まさに、怒ってはならない。怒っている者に怒り返さずにいる王は、国土〔の民〕の供養するところとなる。

 

2. もしくは、村であろうが、林であろうが、もしくは、低地であろうが、高地であろうが、一切所において、〔わたしは〕教示する。車上の雄牛よ、まさに、怒ってはならない」〔と〕。

 

3. 〔世尊は言った〕「アヴァーリヤピタルという名の者が、ガンガー〔川〕の舟頭として〔世に〕有った。先に、人を超え渡して、後で、報酬を乞い求める。それによって、彼には言い争いが有り、そして、諸々の財物によって繁栄せず」〔と〕。

 

4. 〔菩薩は言った〕「親愛なる者よ、舟頭よ、まさしく、超え渡っていない者に、此岸にいる者に、乞い求めるのだ(後払いではなく前払いにするべきである)。なぜなら、他なるものとして、超え渡った者の意は〔有り〕、他なるものとして、彼岸を求める者の〔意は〕有るからだ(超え渡った前の心と超え渡った後の心は別物である)。

 

5. もしくは、村であろうが、林であろうが、もしくは、低地であろうが、高地であろうが、一切所において、〔わたしは〕教示する。舟頭よ、まさに、怒ってはならない」〔と〕。

 

6. 〔世尊は言った〕「まさしく、その教示によって、〔賢い〕王は、優れた村を〔忠告者に〕施したが、まさしく、その教示によって、〔愚かな〕舟頭は、〔忠告者の〕顔を打った。

 

7. 〔怒った舟頭は、自らの〕食事を壊し、妻を打ち、そして、胎児は、地に落ちたのだった(流産した)。黄金によって、獣が〔繁栄しない〕ように、その〔教示〕によって、彼は、義(利益)を結ばなかった」〔と〕。ということで──

 

 アヴァーリヤ・ジャータカが、第一となる。

 

6. 1. 2. セータケートゥ・ジャータカ(セータケートゥ・本生物語377)

 

8. 〔菩薩は言った〕「親愛なる者よ、怒ってはならない。まさに、怒りは、善きものにあらず。多くのものがまた、あなたには、〔いまだ〕見られずにあり、かつまた、〔いまだ〕聞かれずにある。セータケートゥよ、母と父は、〔敬うべき〕方角たる者たちである。賞賛されるがゆえに、師匠のことを、〔敬うべき〕方角たる者と、〔賢者たちは〕言う。

 

9. 家なき者に食べ物を施し飲み物と衣を施すがゆえに、〔家なき者を〕招く者であるがゆえに、彼のことをもまた、〔敬うべき〕方角たる者と、〔賢者たちは〕説く。セータケートゥよ、これは、最高の方角である。苦しみの者たちは、その〔方角〕に至り得て、安楽の者たちと成るのだ」〔と〕。

 

10. 〔王が尋ねた〕「粗い鹿皮と泥の歯の結髪者たちが、すなわち、これらの汚い身なりと形姿の者たちが、諸々の呪文を詠唱するとして、はてさて、どうでしょう、彼らは、人間としての専念〔努力〕について、これを知る者たちなのですか、悪所から完全に解き放たれた者たちなのですか」〔と〕。

 

11. 〔菩薩は答えた〕「王よ、もし、多聞の者が、諸々の悪しき行為を為して、法(正義)〔の道〕を歩まないなら、たとえ、千の知(ヴェーダ)ある者でも、それを縁として、苦しみから解き放たれない──〔善き〕行ないに至り得ずしては」〔と〕。

 

12. 〔セータケートゥが言った〕「『たとえ、千の知ある者でも、それを縁として、苦しみから解き放たれない──〔善き〕行ないに至り得ずしては』〔と、あなたは言う〕。〔わたしは〕思う──『諸々の知は、果なきものとして有り、自制を有する行ないだけが、真理である』」〔と〕。

 

13. 〔菩薩は言った〕「まさしく、まさに、諸々の知が、果なきものとして有り、自制を有する行ないだけが、真理であるのではない。なぜなら、諸々の知を学得して、名誉に至り得るからである(諸々の知には名誉という果がある)。〔心の〕寂静に至り得るのは、〔善き〕行ないによって調御された者であるとして」〔と〕。ということで──

 

 セータケートゥ・ジャータカが、第二となる。

 

6. 1. 3. ダリームカ・ジャータカ(ダリームカ・本生物語378)

 

14. 〔ダリームカ独覚が言った〕「そして、諸々の欲望〔の対象〕は、汚泥である。そして、諸々の欲望〔の対象〕は、泥沼である。そして、これは、恐怖であり、三つ〔の善ならざるもの〕の根元であると、わたしによって説かれた。そして、塵であり、そして、煙であると、わたしによって明示された。ブラフマダッタよ、あなたは、〔それらを〕捨棄して、出家せよ」〔と〕。

 

15. 〔菩薩は言った〕「婆羅門よ、諸々の欲望〔の対象〕のうちに、そして、拘束され、そして、貪欲し、そして、耽溺する、わたしである。禍々しき形態あるものではあるが、それを捨棄することは、生に義(目的)ある者として、〔わたしは〕できない。〔わたしは〕諸々の少なからざる功徳を、〔在家者として〕作り為すであろう」〔と〕。

 

16. 〔ダリームカ独覚が言った〕「彼が、〔彼の〕義(利益)を欲し〔彼に〕利益と慈しみ〔の思い〕ある者の教えを、教諭されているのに為さないなら、『これこそは、より勝っている』と思い考えながら、愚か者は、繰り返し、〔母の〕胎に近づく。

 

17. 彼は、おぞましき形態の地獄へと近づく──浄美なる者にとっての浄美ならざるものである、糞尿に満ちた〔母胎〕へと。執着し貪求する者たちは、諸々の身体を有すること(有身)を捨棄しない──彼らが、諸々の欲望〔の対象〕にたいし、貪り〔の思い〕を離れていない者たちとして〔世に〕有るなら。

 

18. 〔彼らは〕糞で汚れ血にまみれ痰で汚れ、〔母胎から〕出て行く。まさしく、そのあいだに、身体で触れる、まさに、そのもの、そのものは、〔その〕全てが、不快であり、〔その〕全部が、まさしく、苦痛である。

 

19. 〔あるがままに〕見て、〔わたしは〕説く──まさに、他者からの漏れ伝えではなく。〔わたしは〕多くの過去(前世)の居住を思念する」〔と〕。〔世尊は言った〕「見事に語られた様々な詩偈によって、ダリームカ〔独覚〕は、思慮深き者を納得させた」〔と〕。ということで──

 

 ダリームカ・ジャータカが、第三となる。

 

6. 1. 4. ネール・ジャータカ(ネール・本生物語379)

 

20. 〔鵞鳥が尋ねた〕「大烏たちは、そして、烏たちの群れは、さらに、飛ぶ者たちのなかの優れた者たちであるわたしたちも、まさしく、全ての者たちが、同等の者たちと成ります──この山にやってきて〔そののちは〕。

 

21. そして、獅子たちは、そして、虎たちは、さらに、最低の獣である野狐たちも、ここでは、まさしく、全ての者たちが、同等の者たちと成ります。これは、何という名の山なのですか」〔と〕。

 

22. 〔菩薩は答えた〕「人間たちは、この最上の山を、『ネール』と知る。ここでは、全ての命ある者たちが、色艶を成就した者たちとして住する」〔と〕。

 

23. 〔鵞鳥が言った〕「そこにおいて、敬慕なき者たちが存するなら、あるいは、正しくある者たちを軽侮する者たちが〔存し〕、あるいは、また、下劣なる者たちを敬仰する者たちが〔存するなら〕、そこにおいては、住居として住するべきではありません。

 

24. そこにおいて、そして、怠け者も、さらに、能ある者も、勇士も、かつまた、恐怖ある者も、〔全ての者たちが〕供養されるべき者たちとなるなら、そこにおいて、正しくある者たちは住しません──〔殊勝なる〕人たちを殊勝ならざる者たちに作り為すところにおいては。

 

25. このネール〔山〕は、下劣なる者と高尚なる者と中等なる者たちを区分しません。ネール〔山〕は、〔全ての者たちを〕殊勝ならざる者たちに作り為すところです。さあ、〔わたしたちは〕ネール〔山〕を捨棄するのです」〔と〕。ということで──

 

 ネール・ジャータカが、第四となる。

 

6. 1. 5. アーサンカ・ジャータカ(危惧・本生物語380)

 

26. 〔王に求められた菩薩の娘が、王に言った〕「〔天の〕チッタラター林に生じた、『アーサーヴァティー(願い求めあるもの)』という名の蔓ですが、その〔蔓〕には、千年に一つの果が発現します。

 

27. 天〔の神々〕たちは、それに奉侍します。それほどまでに、遠き果あるものとして存しながらもです。王よ、あなたは、まさしく、願い求めなさい。果のある願い求めは、楽しきものです。

 

28. 〔まさに〕その、翼ある者(鳥)は、まさしく、願い求めます。〔まさに〕その、二生の者(鳥)は、まさしく、願い求めます。そして、彼の願い求めは、等しく実現します。それほどまでに、遠く赴くものとして存しながらもです。王よ、あなたは、まさしく、願い求めなさい。果のある願い求めは、楽しきものです」〔と〕。

 

29. 〔王が言った〕「まさに、わたしを、言葉で喜ばすが、しかしながら、行為で喜ばすことはない。セーレイヤの花畑のように、色艶はあるが香りはない。

 

30. 彼が、果のない甘き言葉を朋友たちに作り為すも、財物を与えず放たずにいるなら、それによって、彼の関係は老い朽ちる。

 

31. まさに、それを為すなら、まさに、それを説くように。それを為さないなら、それを説かないように。賢者たちは、為すことなく語っている者を、〔あるがままに〕遍知する。

 

32. さてまた、わたしの力は、まさに、尽き、かつまた、〔旅の〕路銀は見出されない。〔わたしは〕気息の破滅を危惧する。さあ、今や、わたしは行く(娘を断念し、独り帰国する)」〔と〕。

 

33. 〔女が言った〕「まさに、この〔危惧〕こそは、わたしの名です。車上の雄牛よ、すなわち、〔危惧という〕名の者として、〔わたしは〕存しています。大王よ、来てください。わたしは、父に〔別れを〕告げます(名前を言い当てた王に付き従い、家を離れる)」〔と〕。ということで──

 

 アーサンカ・ジャータカが、第五となる。

 

6. 1. 6. ミガーローパ・ジャータカ(ミガーローパ・本生物語381)

 

34. 〔菩薩は言った〕「ミガーローパよ、〔まさに〕その、おまえの、そのような境遇は、わたしにとって好ましからず。息子よ、〔おまえは〕あまりに高きを飛ぶ。息子よ、〔おまえは〕地なき〔境遇〕に慣れ親しむ。

 

35. すなわち、おまえにとって、地が、四角い耕地のように存するとき、息子よ、そののち、戻りなさい。まさに、これより彼方に赴いてはならない。

 

36. 他にもまた、翼を乗物とし、宙を赴く、鳥たちが存在する──〔自らを〕常久に等しくあると〔思い上がり〕、風の勢いに引き込まれ、〔ついに〕滅び去った、それら〔の鳥たち〕が」〔と〕。

 

37. 〔世尊は言った〕「アパナンダ(菩薩)の、年長者である父の、教えを為さずして、〔ミガーローパは〕諸々の黒い風を超え行って、諸々の季節の風の支配に赴いた。

 

38. 彼の、そして、子たちは、さらに、妻たちも、さらに、すなわち、他の従僕たちも、全ての者たちが、災厄を惹起した──鳥が、〔父の〕教諭を為さないとき。

 

39. このように、また、すなわち、ここに、年長者たちの言葉を覚らず、境界を超えて歩む倨傲なる者は、鷲のように教えを過ぎ行く者は、全ての者たちが、災厄に至り得る──年長者たちの教えを為さずして」〔と〕。ということで──

 

 ミガーローパ・ジャータカが、第六となる。

 

6. 1. 7. シリカーラカンニ・ジャータカ(シリーとカーラカンニー・本生物語382)

 

40. 〔菩薩は尋ねた〕「黒き色艶をもって、そして、また、愛しき見た目ならず、いったい、誰なのだ。おまえは、あるいは、誰なのだ、あるいは、誰の娘なのだ。どのように、わたしたちは、おまえのことを知るべきなのだ」〔と〕。

 

41. 〔カーラカンニーが答えた〕「わたしは、ヴィルーパッカ大王の娘にして、狂暴なる者です。わたしは、黒き者にして、不運なる者です。わたしのことを、〔人々は〕『不吉なる者(カーラカンニー)』と知ります。〔あなたは〕乞い求められた者として、〔わたしに〕機会を与えてください。〔わたしどもが〕あなたの現前に住するべく」〔と〕。

 

42. 〔菩薩は尋ねた〕「どのような戒ある者のところに、どのような励行ある者のところに、〔どのような〕人のところに、おまえは居住するというのだ。黒き者よ、〔問いを〕尋ねられた者として、わたしに告げ知らせよ。どのように、わたしたちは、おまえのことを知るのだ」〔と〕。

 

43. 〔カーラカンニーが答えた〕「偽装する者、加虐する者、激昂する者、嫉妬する者、物惜する者、狡猾なる者、彼の得たものが消えて無くなる、その人は、わたしの欲する者です。

 

44. 〔他者に〕忿激する者、そして、〔他者に〕怨恨ある者、さらに、〔他者を〕中傷する者、〔他者を〕分裂する者、棘の言葉ある者、粗暴なる者、彼は、なおのこと、わたしの、より欲する者です。

 

45. 『今日は〔これこれ〕、明日は〔これこれ〕』〔と〕、かくのごとく、〔その〕人は、自らの義(目的)を覚りません。彼は、教え諭されているのに怒り、より勝っている者を軽んじます。

 

46. 〔その〕人は、〔欲の〕熱に浮かれ、一切の朋友たちから離脱します。その人は、わたしの欲する者です。彼がいるなら、〔わたしは〕悩みなき者と成ります」〔と〕。

 

47. 〔菩薩は言った〕「黒き者よ、おまえは、ここから離れよ。〔おまえが欲する〕この者は、わたしたちのところには見出されない。諸々の町であれ、諸々の王都であれ、他の地方に去り行け」〔と〕。

 

48. 〔カーラカンニーが言った〕「わたしもまた、まさに、あなたのことを知ります。〔わたしが欲する〕この者は、あなたたちのところには見出されません。不運なる者たちは、世に存在します。〔彼らは〕多くの財を集めます。わたしは、さらに、わたしの兄のデーヴァは、両者ともに、それを砕破するのです」〔と〕。

 

49. 〔菩薩は尋ねた〕「天の色艶をもって、地に美しく立っているが、いったい、誰なのだ。おまえは、あるいは、誰なのだ、あるいは、誰の娘なのだ。どのように、わたしたちは、おまえのことを知るべきなのだ」〔と〕。

 

50. 〔シリーが答えた〕「わたしは、ダタラッタ大王の娘にして、吉祥ある者です。わたしは、そして、吉祥なる者(シリー)にして、さらに、幸運なる者です。わたしのことを、〔人々は〕『広き智慧ある者』と知ります。〔あなたは〕乞い求められた者として、〔わたしに〕機会を与えてください。〔わたしどもが〕あなたの現前に住するべく」〔と〕。

 

51. 〔菩薩は尋ねた〕「どのような戒ある者のところに、どのような励行ある者のところに、〔どのような〕人のところに、おまえは居住するというのだ。幸運なる者よ、〔問いを〕尋ねられた者として、わたしに告げ知らせよ。どのように、わたしたちは、おまえのことを知るのだ」〔と〕。

 

52. 〔シリーが答えた〕「彼が、そして、また、諸々の寒さを、さらに、あるいは、また、諸々の暑さを、諸々の風や熱を、さらに、諸々の虻や蛇を、飢えを、渇きを、一切を征服して、彼が、夜に、昼に、常に専念〔努力〕しているなら、そして、時とともにやってきた義(利益)を失わないなら、彼は、わたしにとって、意に適う者であり、そして、〔わたしは〕彼のところに居住します。

 

53. 忿激しない者、朋友ある者、そして、施捨ある者、戒を具有した者、狡猾ならざる者、〔心が〕真っすぐと成った者、愛護ある者、友誼ある者、優しい言葉ある者、たとえ、大いなるものに至り得たとして、謙譲の生活者としてあるなら、その人にたいし、わたしは、広大なる者と成ります──あたかも、また、海の波の姿のように。

 

54. 彼が、そして、また、朋友たちに、さらに、あるいは、朋友ならざる者たちに、最勝なる者たちに、同等なる者たちに、さらに、あるいは、また、下劣なる者たちに、義(利益)を行なう者に、さらに、あるいは、義(利益)なきを〔行なう者に〕、公然であれ、内密であれ、まさしく、愛護を説き、いついかなる時も、粗暴な言葉を説かないなら、そして、彼が、死んでいても、生きていても、〔彼のために、わたしは〕有ります。

 

55. 彼が、これらのなかのどれか一つを得て、『欲する吉祥だ』〔と〕夢中になる、少なき智慧の者であるなら、彼を、倨傲なる形態ある者を、不正〔の道〕を歩んでいる者を、糞坑のような者を、〔わたしは〕避けます。

 

56. 自己によって、幸運を作ります。自己によって、不運を作ります。幸運を、あるいは、不運を、他者が他者のために作ることはありません」〔と〕。ということで──

 

 シリカーラカンニ・ジャータカが、第七となる。

 

6. 1. 8. クックタ・ジャータカ(鶏・本生物語383)

 

57. 〔雌猫が言った〕「美しく彩りあざやかな翼の覆いある者よ、赤き鶏冠の宙を赴く者よ、木の枝から降りてください。〔わたしは〕手放しで、あなたの妻に成りましょう」〔と〕。

 

58. 〔菩薩は言った〕「美しき方よ、意が喜びとする方よ、あなたは、四つ足で、わたしは、二足。獣と鳥は、相応しからず。他の主人を遍く探し求めなさい」〔と〕。

 

59. 〔雌猫が言った〕「〔わたしは〕処女です。あなたのものに成りましょう。美妙にして、愛しき話し手たる〔わたし〕です。わたしを、聖なる感嘆〔の思い〕で、〔妻として〕見出してください。〔あなたが〕求めるとおりに、わたしのことを〔人に〕聞かせてあげなさい」〔と〕。

 

60. 〔菩薩は言った〕「死骸を食う者よ、血を飲む者よ、盗賊よ、鶏を打つ者よ、おまえは、聖なる感嘆〔の思い〕で、わたしを、夫として求めるにあらず」〔と〕。

 

61. 〔世尊は言った〕「このように、また、機知ある女たちは、財を有する男を見ては、諸々の優しい言葉で導く──雌猫が、鶏を〔口説いた〕ように。

 

62. そして、その者が、生起した義(事態)を、すみやかに随覚しないなら、朋友ならざる者(敵)の支配に従い行き、そして、のちに悩み苦しむ。

 

63. そして、その者が、生起した義(事態)を、まさしく、すみやかに覚るなら、賊の煩いから解き放たれる──鶏が、雌猫から〔逃れた〕ように」〔と〕。ということで──

 

 クックタ・ジャータカが、第八となる。

 

6. 1. 9. ダンマダジャ・ジャータカ(法の旗・本生物語384)

 

64. 〔烏が言った〕「親族たちよ、法(正義)〔の道〕を歩め。あなたたちに、幸せ〔有れ〕。法(正義)〔の道〕を歩め。法(正義)〔の道〕を歩む者は、安楽に臥す──この世において、さらに、他〔の世〕において」〔と〕。

 

65. 〔鳥たちが言った〕「幸いなるは、まさに、この鳥である。最高の法(正義)にかなう鳥である。一足で立ちながら、まさしく、法(真理)を教示する」〔と〕。

 

66. 〔菩薩は言った〕「彼に、戒を識知してはならない。〔あなたたちは〕了知せずして賞賛する。そして、卵を、さらに、雛を、食べて〔そののち〕、『法(真理)である』『法(真理)である』と、〔彼は〕語る。

 

67. 他なることを言葉で話し、他なることを身体で為す。言葉で〔話し〕、そして、身体で〔為さ〕ない。その法(真理)を〔心に〕確立した者にあらず。

 

68. 言葉では友誼あるが、意は難物、穴に臥す黒蛇のように、〔性向は〕覆い隠されている。法(真理)の旗をかかげ、村や町では善き者で、愚かな人には知り難い。

 

69. この者を、〔両の〕嘴で、〔両の〕翼で、そして、足で、この者を悩ませてやれ。まさに、この屍を追い払ってやれ。この者は、共に住むに値せず」〔と〕。ということで──

 

 ダンマダジャ・ジャータカが、第九となる。

 

6. 1. 10. ナンディヤミガラージャ・ジャータカ(ナンディヤ鹿王・本生物語385)

 

70. 〔母と父が言った〕「婆羅門よ、それで、もし、サーケータのアッジュナ林に赴くなら、わたしたちの正嫡の子たるナンディヤという名〔の鹿〕(菩薩)に説いてほしい。『あなたの、母は、さらに、父は、年長け、彼らは、あなたを見ることを求めている』」〔と〕。

 

71. 〔菩薩は言った〕「わたしは、王の飲み物と食料を、諸々の餌として食べています。それを、王の〔施しの〕食を、〔餌として〕食べるために、婆羅門よ、わたしは、〔赴くことが〕できません。

 

72. わたしは、剃刀を手にする王の、脇に〔身を〕置きます(自ら身を捧げる)。そのとき、わたしは、安楽の者となり、〔王から〕解き放たれ、また、母を見るでしょう(わたしの捨身の行為に心を動かされ、王はわたしを自由の身とするであろう)」〔と〕。

 

73. 〔世尊は言った〕「かつて、〔わたしは〕鹿の王として〔世に〕存していた──コーサラ〔王〕の家において、名としては、ナンディヤという名の、形姿麗しき四足の者として。

 

74. 〔まさに〕その、わたしを、打ち殺すために、〔王は〕やってきた。アッジュナ林の園において、コーサラ〔王〕は、矢を装着して、弓を確たるものと為して。

 

75. わたしは、彼の、剃刀を手にする王の、脇に〔身を〕置いた。そのとき、わたしは、安楽の者となり、〔王から〕解き放たれ、母と会うために帰還したのだった」〔と〕。ということで──

 

 ナンディヤミガラージャ・ジャータカが、第十となる。

 

 アヴァーリヤの章が、第一となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「そこで、『車上の雄牛よ、怒っては〔ならない〕』(アヴァーリヤ)と優れたケートゥ(セータケートゥ)があり、ダリームカを有するものとネールと蔓(危惧)があり、そして、さらに、アパナンダ(ミガーローパ)とシリー(シリーとカーラカンニー)があり、そして、優れた美しく彩りあざやかな者(鶏)があり、そこで、法にかなう者(法の旗)とナンディ鹿(ナンディヤ鹿王)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

6. 2. 驢馬の子の章

 

6. 2. 1. カラプッタ・ジャータカ(驢馬の子・本生物語386)

 

76. 〔驢馬が言った〕「真に、まさしく、まさに、賢者たちは言ったものだ──山羊(菩薩)のことを、『愚者である』と。見よ──愚者は、内密の行為(性交)を公然と為しながら、〔自身の恥を〕覚らない」〔と〕。

 

77. 〔菩薩は言った〕「友よ、まさに、また、あなたも、愚者として存している。驢馬の子よ、識知したまえ。まさに、〔あなたは〕縄に遍く囲まれ、唇を歪め顔をうつむけている。

 

78. 友よ、あなたには、他にもまた、愚かなところがある。すなわち、解き放たれたのに、〔あなたは〕逃げない。あなたが運ぶ、〔まさに〕その、セーナカ〔王〕だが、友よ、そして、彼は、より愚者なのだ」〔と〕。

 

79. 〔驢馬が尋ねた〕「友よ、はてさて、すなわち、わたしが愚者であるなら、山羊の王よ、識知したまえ。そこで、何によって、セーナカ〔王〕は、愚者であるのか。〔問いを〕尋ねられた者として、それを、わたしに告げ知らせたまえ」〔と〕。

 

80. 〔菩薩は答えた〕「最上の義(利益)を得て〔そののち〕、彼は、妻に与えてしまい、それによって、自己を捨棄することになる。まさしく、そして、彼女は、彼のために成らず」〔と〕。

 

81. 〔セーナカ王に、菩薩は言った〕「人のインダよ、『わたしにとって、まさに、愛しきものにあらず』と、そのような者は、自己を放却して、諸々の愛しきものに慣れ親しむ。自己こそは、より勝るもの、そして、最高にして、より勝るもの。〔自己の〕義(利益)を集めた者によって、のちに、愛しき者が得られるのだ」〔と〕。ということで──

 

 カラプッタ・ジャータカが、第一となる。

 

6. 2. 2. スーチ・ジャータカ(針・本生物語387)

 

82. 〔菩薩は言った〕「粗野ならず、粗暴ならず、鋭く研がれ、善く通り、そして、先端鋭く繊細なる針を、どなたか、買い求めますか。

 

83. そして、善く磨かれ、さらに、善く通り、順次に善く転起する、厚いものを貫く頑健なる針を、どなたか、買い求めますか」〔と〕。

 

84. 〔鍛冶屋の娘が尋ねた〕「諸々の針は、さらに、諸々の釣針は、今や、ここから、〔世に〕広まります。鍛冶屋の村で、針を売ることを求める、この者は、どなたですか。

 

85. 諸々の刃は、ここから、〔世に〕赴きます。様々な種類の多々なる生業があります。鍛冶屋の村で、針を売ることを求める、この者は、どなたですか」〔と〕。

 

86. 〔菩薩は答えた〕「針は、鍛冶屋の村で売られるべきです──覚知している者によって。師匠たちだけが知るのです──〔その〕行為が善く為されたか悪しく為されたかを。

 

87. 幸いなる方よ、わたしが作ったこの針を、もし、あなたの父が知るなら、そして、あなたによって、わたしを招くでしょう──さらに、すなわち、他に、財が、〔あなたの〕家に存するなら、〔それによって〕」〔と〕。ということで──

 

 スーチ・ジャータカが、第二となる。

 

6. 2. 3. トゥンディラ・ジャータカ(トゥンディラ・本生物語388)

 

88. 〔弟豚が言った〕「今や、新しい餌が与えられます。この桶は満たされ、おかみさんが立っています。索縄を手にする多くの人がいるので、しかしながら、まさに、わたしに、食べる気がしないのです」〔と〕。

 

89. 〔菩薩は言った〕「〔おまえは〕恐れおののき、迷走し、避難を求める。救いなき者として存する〔おまえ〕が、どこに赴くというのだ。トゥンディラよ、思い入れ少なき者となり、食べよ。なぜなら、肉を義(目的)として育てられた者たちとして、〔わたしたちは〕存するからだ。

 

90. 泥土なき湖に入り行け。一切の汗と垢を流し去って。新しい香料を収め取れ。その〔香料〕の香りは、いついかなる時も断たれず」〔と〕。

 

91. 〔弟豚が尋ねた〕「どのようなものが、泥土なき湖なのですか。いったい、何が、『汗と垢』と説かれるのですか。さらに、どのようなものが、新しい香料なのですか。その〔香料〕の香りが、いついかなる時も断たれないとして」〔と〕。

 

92. 〔菩薩は答えた〕「法(教え)が、泥土なき湖である。悪が、『汗と垢』と説かれる。さらに、戒が、新しい香料である。その〔香料〕の香りは、いついかなる時も断たれない。

 

93. 肉体を殲滅する者たちは喜ぶ。しかしながら、肉体を保持する者たちは喜ばない。そして、満ちた満月のもと、まさしく、喜び楽しみながら、〔彼らは〕生命を捨棄する」〔と〕。ということで──

 

 トゥンディラ・ジャータカが、第三となる。

 

6. 2. 4. スヴァンナカッカタ・ジャータカ(黄金の蟹・本生物語389)

 

94. 〔烏が言った〕「角ある獣にして、導きの眼は細長く、骨の皮膚をもち、水に臥す、毛なきものがいる。その〔蟹〕に征服された〔わたし〕は、〔自らの〕困窮を泣き叫ぶ。ああ、友(蛇)よ、いったい、どうして、わたしを捨棄するのか」〔と〕。

 

95. 〔世尊は言った〕「彼は、大きな鎌首で威嚇しながら、蛇は、蟹のところへと到達した。友(蛇)は、友(烏)を救おうとしつつも、蟹は、蛇を捕捉した」〔と〕。

 

96. 〔蛇が尋ねた〕「蟹は、食糧を義(目的)として、烏を食べようとせず、いっぽう、黒蛇も〔食べようとし〕ない。細長き導きの眼ある方よ、〔わたしは〕あなたに尋ねます。そこで、何を因として、〔わたしたちの〕両者は捕捉され、〔ここに〕存しているのですか」〔と〕。

 

97. 〔蟹が答えた〕「〔蛇に咬まれた〕この人(菩薩)は、わたしの義(利益)を欲する者である。彼は、わたしを収め取って、水に導く。彼が死んだなら、わたしに、少なからざる苦しみがある。そして、わたしも、さらに、この方も、両者ともに〔世に〕有らず。

 

98. さてまた、増大した身体の肉を見て、全ての人は、〔わたしを〕害することだけを求める。かつまた、美味でもあり、かつまた、豊満でもあり、かつまた、柔和でもある、〔わたしの〕肉を見て、烏たちもまた、わたしを悩ますのだ」〔と〕。

 

99. 〔蛇が言った〕「それで、もし、それを因として、〔わたしたちの〕両者は捕捉され、〔ここに〕存しているなら、〔その〕人は立ち上がれ。〔わたしが〕毒を抜き去ります。そして、わたしも、さらに、烏も、すみやかに解き放ってください。毒が深まり、死すべきものへと近づく前に」〔と〕。

 

100. 〔蟹が言った〕「まずは、烏ではなく、蛇を解き放とう。そのあいだ、烏は、捕縛の者として有るのだ。そして、〔その〕人が、安楽の者となり、無病の者となるのを見て、烏を解き放とう──まさしく、すなわち、蛇のように」〔と〕。

 

101. 〔世尊は言った〕「そのとき、デーヴァダッタは、烏として有った。いっぽう、悪魔は、黒蛇として有った。幸いなるアーナンダは、蟹として有った。そのとき、わたしは、教師たる婆羅門として有った」〔と〕。ということで──

 

 スヴァンナカッカタ・ジャータカが、第四となる。

 

6. 2. 5. マイハカ・ジャータカ(マイハカ・本生物語390)

 

102. 〔世尊は言った〕「マイハカという名の鳥は、山の背の洞窟を行場とし、熟した〔果〕のあるピッパリー〔樹〕に止まって、『マイハン(わたしのものである)』『マイハン(わたしのものである)』と鳴き叫ぶ。

 

103. このように、彼が鳴いていると、鳥たちの群れは、集いあつまり、ピッパリー〔樹の果〕を食べて行くが、その鳥は、〔虚しく〕鳴くだけ。

 

104. まさしく、このように、ここに、一部の者は、多くの財を集めても、まさしく、自己のためならずに、親族たちのためならずに、すなわち、最後まで歩み行く。

 

105. 彼は、衣服や食事を〔味わい楽しむことが〕なく、花飾を〔味わい楽しむことが〕なく、香料を〔味わい楽しむことが〕なく、何であれ、味わい楽しむことが一度も〔なく〕、親族たちを愛護しない。

 

106. このように、彼が、『わたしのものである(マイハン)』『わたしのものである(マイハン)』と鳴きながら〔財を〕守っていると、王たちが、さらに、あるいは、盗賊たちが、あるいは、すなわち、愛しからざる相続者たちが、財を取って去り行く。その人は、〔虚しく〕鳴くだけ。

 

107. 慧者は、諸々の財物に到達して、そして、親族たちを愛護する。それによって、彼は、名誉に至り得、死してのち、天上において歓喜する」〔と〕。ということで──

 

 マイハカ・ジャータカが、第五となる。

 

6. 2. 6. ヴィッジャーダラ・ジャータカ(呪術師・本生物語391)

 

108. 〔王が尋ねた〕「聖者の色艶あるあなたが、醜き色艶と形姿ある者を尊んで、合掌の者となり、礼拝します。いったい、彼は、あなたよりも、より勝っているのですか、あるいは、また、同等の者なのですか。他の者の名を、さらに、また、自己の〔名を〕、説いてください」〔と〕。

 

109. 〔菩薩は答えた〕「王よ、天〔の神々〕たちは、正しく赴き真っすぐに赴く者たちの名と姓を把握しません(彼の名は不明である)。しかしながら、わたしは、あなたに、〔自らの〕命名たるものを説きましょう。わたしは、帝釈〔天〕として、三十三〔天の神々〕たちのインダ(インドラ神)として、〔世に〕存しています」〔と〕。

 

110. 〔王が尋ねた〕「すなわち、見て〔そののち〕、行ないを成就した比丘を尊んで、合掌の者となり、礼拝するなら、ここ(現世)から死滅した、その者は、どのような安楽を得るのですか。天の王よ、この義(意味)を、〔わたしは〕あなたに尋ねます」〔と〕。

 

111. 〔菩薩は答えた〕「すなわち、見て〔そののち〕、行ないを成就した比丘を尊んで、合掌の者となり、礼拝するなら、まさしく、所見の法(現法:現世)において、賞賛を得ます。そして、彼は、肉体の破壊(死)ののち、天上に行きます」〔と〕。

 

112. 〔王が言った〕「幸運が、まさに、わたしに、今日、生起しました。すなわち、ヴァーサヴァ(帝釈天)を、生類の長を、〔わたしどもは〕見たのです。帝釈〔天〕よ、そして、比丘を見て、さらに、あなたを〔見て〕、諸々の少なからざる功徳を、〔わたしは〕作り為すでしょう」〔と〕。

 

113. 〔菩薩は言った〕「まさに、たしかに、慣れ親しむべきは、智慧を有する者たちであり、多聞の者たちであり、すなわち、多くの境位に思弁ある者たちです。王よ、そして、比丘を見て、さらに、わたしを〔見て〕、諸々の少なからざる功徳を、〔あなたは〕作り為したまえ」〔と〕。

 

114. 〔王が言った〕「忿激せず、常に清信した心で、全ての客の乞いに応じる者と成って、〔我想の〕思量(:思い上がりの心)を打破して、〔わたしは〕敬拝します。天のインダよ、諸々の見事に語られた〔言葉〕を聞いて〔そののちは〕」〔と〕。ということで──

 

 ヴィッジャーダラ・ジャータカが、第六となる。

 

6. 2. 7. シンガプッパ・ジャータカ(蓮の花・本生物語392)

 

115. 〔天神が言った〕「すなわち、〔あなたが臭いを〕嗅ぐ、この水蓮の花〔の香り〕は、〔誰からも〕与えられていないものであり、これは、諸々の盗みのなかの一つの支分です。敬愛なる方よ、〔今のあなたは〕香りを盗む者として存しています」〔と〕。

 

116. 〔菩薩は言った〕「〔わたしは〕奪っていません。〔わたしは〕折っていません。遠くから、水蓮〔の香り〕を嗅ぐ〔だけのこと〕。そこで、いったい、何を理由に、『香りを盗む者』と説かれるのでしょう。

 

117. すなわち、諸々の蓮根を掘り取り、諸々の白蓮を折り取る、この者は、このように、残酷なる生業ある者です。何ゆえに、この者は、〔『盗む者』と〕説かれないのですか」〔と〕。

 

118. 〔天神が言った〕「残酷で残忍な人は、〔糞尿に〕まみれた乳児の衣(使用後のおむつ)のようなもの。彼について、わたしに言葉は存在せず、しかしながら、あなたに言うことはできます。

 

119. 常に清らかさを探し求めている穢れなき人に悪があるなら、毛先ばかりのものでも、まさしく、雲ほどに見えてしまうのです(甚大なものとして認知される)」〔と〕。

 

120. 〔菩薩は言った〕「夜叉(天神)よ、たしかに、〔あなたは〕わたしのことを知ります。さらに、わたしを慈しんでくれます。夜叉よ、ふたたび、また、〔あなたは、わたしに〕説くべきです。すなわち、〔あなたが、わたしの〕このような〔罪過〕を見るときは(これからもわたしの罪過を指摘してほしい)」〔と〕。

 

121. 〔天神が言った〕「〔わたしたちが〕あなたに依拠して生きることは、まさしく、ありません。わたしたちは、あなたの雇われでもまた、ありません。比丘よ、まさしく、あなたは、〔自ら〕知るべきです──それによって、〔あなたが〕善き境遇に赴くことになる、〔まさに、その道を〕」〔と〕。ということで──

 

 シンガプッパ・ジャータカが、第七となる。

 

6. 2. 8. ヴィガーサーダ・ジャータカ(残飯拾い・本生物語393)

 

122. 〔菩薩は言った〕「極めて安楽に、まさに、〔彼らは〕生きる──すなわち、残飯拾いの人たちは、まさしく、所見の法(現世)において、賞賛されるべき者たちとなり、さらに、未来(来世)において、善き境遇ある者たちとなる」〔と〕。

 

123. 〔苦行者が言った〕「賢者たちよ、〔このように〕語っている鸚鵡(菩薩)の〔言葉を〕、〔あなたたちは〕傾聴しない。兄弟たちよ、この〔言葉〕を聞け。この者は、まさしく、わたしたちを賞賛する」〔と〕。

 

124. 〔菩薩は言った〕「わたしは、あなたたちを賞賛しない。死骸(肉)を食う者たちよ、わたしの〔言葉を〕聞け。あなたたちは、残り物を食する者たちであるが、あなたたちは、残飯拾いの者たちではない」〔と〕。

 

125. 〔苦行者が言った〕「〔わたしたちは〕出家してからのち、七年、メッジャ林において、有髪の者たちであるが、まさしく、残飯によって〔身を〕保ち行く者たちである。もし、わたしたちが、貴君にとって非難されるべき者たちであるなら、いったい、どのような者たちが、貴君にとって賞賛されるべき者たちであるのか」〔と〕。

 

126. 〔菩薩は言った〕「あなたたちは、獅子たちの、虎たちの、そして、猛獣たちの、残したものを〔食う〕。まさしく、残り物によって〔身を〕保ち行く者たちであるのに、〔自らを〕残飯拾いの者たちと思いなす。

 

127. 彼らは、婆羅門に、沙門に、あるいは、他の乞食者に、施して〔そののち〕、残りを食べる。それらの人たちが、残飯拾いの者たちである」〔と〕。ということで──

 

 ヴィガーサーダ・ジャータカが、第八となる。

 

6. 2. 9. ヴァッタカ・ジャータカ(鶉・本生物語394)

 

128. 〔菩薩は言った〕「おじさんよ、さてまた、〔あなたは〕酥と油の上質の食事を食べますね。烏よ、そこで、いったい、何を理由に、あなたは、痩せ細った者として存しているのですか」〔と〕。

 

129. 〔烏が言った〕「朋友ならざる者(敵)たちの中に住している者に、彼らのなかで餌を探し求めている者に、常に心臓(心)が怯えている者に、どうして、烏に、堅固なることがありましょう。

 

130. 常に怯えているのが、烏たちです。烏たちは、〔自他の〕悪しき行為によって〔常に怯えているのです〕。食が得られたとして、〔わたしを〕喜ばすことはありません。鶉よ、それで、〔わたしは〕痩せ細った者として存しているのです。

 

131. 諸々の粗野な草や種を、僅かな脂質を、〔あなたは〕食べます。そこで、いったい、何を理由に、あなたは、豊満なる者として存しているのですか」〔と〕。

 

132. 〔菩薩は言った〕「欲求少なきことから、思弁少なきことから、さらに、遠くに赴かないことで、〔得られたなら〕得られたで〔得られなかったなら〕得られなかったで、〔日々に身を〕保っています。それで、〔わたしは〕豊満なる者として存しているのです。

 

133. まさに、〔その〕人が、欲求少なき者であり、さらに、思弁少なき安楽の者であり、思量が善く制御された者であるなら、生活〔の糧〕は、容易に集まるものなのです」〔と〕。ということで──

 

 ヴァッタカ・ジャータカが、第九となる。

 

6. 2. 10. パーラーヴァタ・ジャータカ(烏・本生物語395)

 

134. 〔菩薩は言った〕「長きのはてに、まさに、〔わたしは〕見る──宝珠を〔身に〕付ける道友を。髭の手入れは美しく為され、まさに、わたしの友は美しく輝く」〔と〕。

 

135. 〔烏が言った〕「わたしは、諸々の行為に多忙で、脇毛や爪や体毛を長くしたが、長きのはてに、理髪師を得て、今日、その毛を取り除かせたのだ」〔と〕。

 

136. 〔菩薩は言った〕「はてさて、すなわち、得難き理髪師を得て、毛を取り除かせたとして、友よ、そこで、そうすると、あなたの首のところでリンリン鳴るのは、何なのかな」〔と〕。

 

137. 〔烏が言った〕「上品な人間たちの首には、宝珠が垂れ下がる。わたしは、彼らに従い学ぶ。〔それを〕戯れに為したと、あなたは思ってはならない。

 

138. それで、もし、また、この、上手に為された髭の手入れを、〔あなたが〕羨むなら、友よ、あなたに為してあげよう。さらに、また、宝珠を、あなたに与えよう」〔と〕。

 

139. 〔菩薩は言った〕「あなたこそは、宝珠に覆われた者なのだ──かつまた上手に為された髭に。まさに、あなたに〔別れを〕告げて、〔わたしは〕去り行く。わたしにとって愛しきは、〔以前の〕あなたとお会いすること」〔と〕。ということで──

 

 パーラーヴァタ・ジャータカが、第十となる。

 

 驢馬の子の章が、第二となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「そこで、『見よ』(驢馬の子)と針を有するものがあり、そして、トゥンディラなるものがあり、獣(黄金の蟹)と第五に優れたマイハカ鳥があり、そこで、合掌の者(呪術師)と水蓮(蓮の花)とメッジャ(残飯拾い)があり、さらに、そこで、鶉と優れた鳩(烏)ともに、〔それらの〕十がある」と。

 

 そこで、章の摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「そこで、最上の優れたものにおける六なるものの集まりの章を賛じ称えよう。かつまた、アヴァーリヤが、かつまた、驢馬が、そして、〔これらの〕二つの美文なる〔章〕が、〔ここに〕説かれた」と。

 

 六なるものの集まりは〔以上で〕終了となる。

 

7. 七なるものの集まり

 

7. 1. クックの章

 

7. 1. 1. クック・ジャータカ(クック・本生物語396)

 

1. 〔王が尋ねた〕「尖塔は、高さにして一と半クック(長さの単位・一クックは約五十センチ)、それを、〔周囲にして〕八ヴィダッティ(長さの単位・一ヴィダッティは約二十五センチ)が取り囲む。それは、シンサパー〔樹〕とサーラ〔樹〕で作られ、脆弱ならざるが、どこに立脚し、〔どうして〕上から落ちてこないのか」〔と〕。

 

2. 〔菩薩は答えた〕「すなわち、サーラ〔樹〕で作られている三十の曲がった垂木が、〔尖塔を〕取り囲んで、等しく立脚し、それら〔の垂木〕によって、しっかりと護られ、強力に締め付けられているので、〔尖塔は〕等しく立脚し、上から落ちてこないのです。

 

3. このように、また、賢者は、〔道心〕堅固なる朋友たちによって、壊れることなき形質の清らかなる助言者たちによって、しっかりと護られ、吉祥から落ちないのです──重荷を担う垂木ある尖塔のように。

 

4. たとえば、また、固い皮のベッラ〔の果〕を、たとえ、刃をもつも処理せずにいるなら、苦きものと為し、王よ、〔皮を〕正しく取り払うなら、美味なるものと為し、薄い膜〔だけ〕を取り出すなら、美味ならざるものと為すように──

 

5. このように、また、賢者は、村々や町々において、無理強いせずに王の諸財を集めながら、法(正義)に従い転じ行く者として、〔法を〕実践しながら、彼は、他者を悩み苦しめずに、繁栄を作り為すのです。

 

6. たとえば、諸々の蓮池に生じた蓮が、白き根をもち、清らかな水の発生あるように──たとえば、火のように輝き咲き誇っている赤蓮を、泥土が〔汚さ〕ず、塵が〔汚さ〕ず、水が汚さないように──

 

7. このように、また、言葉遣いが清らかで、無理強いせず、清浄なる生業ある、悪しきを離れた者を、行為の汚れは汚しません。そのような者は、あたかも、諸々の蓮池に生じた蓮のようにあるのです」〔と〕。ということで──

 

 クック・ジャータカが、第一となる。

 

7. 1. 2. マノージャ・ジャータカ(マノージャ・本生物語397)

 

8. 〔野狐が言った〕「すなわち、弓は張られ、さらに、また、弦は唸る。まちがいなく、マノージャは殺される──わたしの友である獣の王は。

 

9. さあ、今や、諸々の林の外れへと、〔わたしは〕立ち去るのだ──安楽なるままに。このような者たちは、友と成らず。わたしが生きているなら、〔いつでも〕友は得られるのだ」〔と〕。

 

10. 〔マノージャの父である菩薩は言った〕「悪しき人に慣れ親しむ者は、結局のところ、安楽に満ち栄えない。臥しているマノージャを見よ。ギリヤ(野狐)の教示だ」〔と〕。

 

11. 〔マノージャの母が言った〕「悪しき友をもつ者として、子があるなら、母は喜ばない。〔地に〕臥しているマノージャを見よ──自らの血のなかに沈んだ者を」〔と〕。

 

12. 〔マノージャの妹が言った〕「人は、このように〔罪を〕犯し、そして、より悪しきことに遭遇する。彼が、まさに、〔彼の〕益となり義(利益)を見る者たちの言葉を為さないなら」〔と〕。

 

13. 〔マノージャの妻が言った〕「そして、このように、彼は有る──かつまた、その〔最低の者〕よりも、より悪しき者として──すなわち、最上の者でありながら、最低の人に近しく慣れ親しむ者となるなら。最上の者でありながら、最低の人に近しく慣れ親しんだ者を見よ──鋭い矢の勢いに払い落とされた、獣の君主を」〔と〕。

 

14. 〔世尊は言った〕「下劣な者に慣れ親しむ人は、衰退する。しかしながら、均等の者に慣れ親しむ者は、いついかなる時も退失しない。最勝の者に近しく赴く者は、すみやかに上昇する。それゆえに、自己よりも、より上なる者に親近するべきである」〔と〕。ということで──

 

 マノージャ・ジャータカが、第二となる。

 

7. 1. 3. スタヌ・ジャータカ(スタヌ・本生物語398)

 

15. 〔菩薩は言った〕「王は、あなたに、肉汁を注いだ上等の食事を送り届けた。マガデーヴァ(夜叉)が住しているなら、さあ、出てきて、食べたまえ」〔と〕。

 

16. 〔夜叉が言った〕「若者よ、来たれ、此方より、汁のかかった行乞〔の施食〕を取って。若者よ、そして、おまえも、さらに、行乞〔の施食〕も、両者ともに、〔わたしの〕食物と成るのだ」〔と〕。

 

17. 〔菩薩は言った〕「夜叉よ、あなたは、少なきによって、豊満なる義(利益)を捨棄するであろう。彼らは、死の表象ある人たちとなり、行乞〔の施食〕を、あなたのために運ばなくなるであろう。

 

18. 夜叉よ、清らかで精妙にして味を具した常なる行乞〔の施食〕を、あなたは得たが、しかしながら、行乞〔の施食〕を、あなたのために運んでくれる人は、ここに、わたしが食べられたなら、極めて得難き者と成るであろう」〔と〕。

 

19. 〔夜叉が言った〕「スタナ(菩薩)は、まさしく、わたしにとって、義(利益)となる者である──若者よ、すなわち、〔あなたが〕語るとおりに。わたしは、あなたを許す。〔無事〕安穏に、母と会いなさい。

 

20. 若者よ、剣を、そして、傘を、さらに、鉢を──〔それらを〕取って、赴きなさい。あなたの母は、〔無事〕安穏に、〔あなたと〕会いなさい。そして、あなたは、母と会いなさい」〔と〕。

 

21. 〔菩薩は言った〕「夜叉よ、このように、全ての親族たちと共に、安楽の者と成れ。そして、財は、わたしの到達するところとなった。さらに、王の言葉も、〔そのとおりに〕為された」〔と〕。ということで──

 

 スタヌ・ジャータカが、第三となる。

 

7. 1. 4. マートゥポーサカギッジャ・ジャータカ(母を養う鷲・本生物語399)

 

22. 〔菩薩は言った〕「年長け、山の洞窟に臥す、彼ら(両親)は、いったい、どのように為すのでしょう。わたしは、罠に縛された者として存しています。ニリーヤ(猟師)の支配に赴いたのです」〔と〕。

 

23. 〔猟師が尋ねた〕「鷲よ、何を嘆き悲しむのか。いったい、どのような嘆き悲しみが、あなたにあるのか。鳥が、人間の〔言葉〕を語っているのを、あるいは、聞いたことも、あるいは、見たことも、わたしはない」〔と〕。

 

24. 〔菩薩は答えた〕「年長け、山の洞窟に臥す、母と父を、〔わたしは〕養います。彼ら(両親)は、いったい、どのように為すのでしょう。わたしは、あなたの支配に赴いたのです」〔と〕。

 

25. 〔猟師が尋ねた〕「はてさて、すなわち、鷲は、百ヨージャナ(由旬:長さの単位・軛牛の一日の旅程距離)にわたり、諸々の死骸を注視するのに、何ゆえに、かつまた、網も、かつまた、罠も、〔それらに〕近づいてもなお、〔それらを〕覚らないのか」〔と〕。

 

26. 〔菩薩は答えた〕「すなわち、生命の消滅あるときに、人が、滅びの者と成るとき、そこで、かつまた、網も、かつまた、罠も、〔それらに〕近づいてもなお、〔それらを〕覚らないのです」〔と〕。

 

27. 〔猟師が言った〕「年長け、山の洞窟に臥す、母と父を、養いたまえ。わたしは、あなたを許す。〔無事〕安穏に、親族たちと会いなさい」〔と〕。

 

28. 〔菩薩は言った〕「猟師よ、このように、全ての親族たちと共に、喜びたまえ。年長け、山の洞窟に臥す、母と父を、〔わたしは〕養うでしょう」〔と〕。ということで──

 

 マートゥポーサカギッジャ・ジャータカが、第四となる。

 

7. 1. 5. ダッバプッパ・ジャータカ(ダッバの花・本生物語400)

 

29. 〔川獺のガンビーラチャーリンが言った〕「アヌティーラチャーリンよ、あなたに、幸せ〔有れ〕。道友よ、わたしのあとを追っておくれ。わたしは、大魚を掴み取ったのだが、彼は、わたしを勢いよく運び去る」〔と〕。

 

30. 〔川獺のアヌティーラチャーリンが言った〕「ガンビーラチャーリンよ、あなたに、幸せ〔有れ〕。固く、強く、掴み取っていたまえ。わたしが、それを引き上げよう──金翅鳥が、蛇を〔掴み上げる〕ように」〔と〕。

 

31. 〔野狐に、ガンビーラチャーリンとアヌティーラチャーリンの両者が言った〕「わたしたちに、論争が生起したのだ。ダッバの花〔の色艶〕ある者(野狐)よ、わたしの〔言葉を〕聞いてくれ。友よ、〔わたしたちの〕確執を静めたまえ。止み静まるのだ──論争は」〔と〕。

 

32. 〔野狐が言った〕「かつて、わたしは、法(正義)に依って立つ者(判事)として存していた。多くの事件が、わたしによって解決された。友よ、〔あなたたちの〕確執を静めよう。止み静まるのだ──論争は。

 

33. アヌティーラチャーリンは、尾を。ガンビーラチャーリンは、頭を。そこで、中央のこの部分は、法(正義)に依って立つ者のものと成るであろう」〔と〕。

 

34. 〔ガンビーラチャーリンとアヌティーラチャーリンの両者が言った〕「それで、もし、〔わたしたちが〕論争しないなら、さらに長きにわたり、食物は有ったであろう。頭にあらず、尾にあらず、野狐は、赤き〔魚〕を運び去る」〔と〕。

 

35. 〔野狐に、野狐の妻が尋ねた〕「あたかも、また、士族の王が、王国を得て喜ぶように、このように、今日、わたしは喜びます──〔得意〕満面の亭主を見て。

 

36. いったい、どのように、陸に生まれる者として存している〔あなた〕が、水のなかにいる魚を撫でまわすのですか。愛しい方よ、〔問いを〕尋ねられた者として、わたしに告げ知らせてください。どのように、あなたは、〔財に〕到達したのですか」〔と〕。

 

37. 〔野狐が答えた〕「論争によって、痩せ細った者たちと成る。論争によって、諸々の財の滅尽と〔成る〕。論争によって、川獺たちは〔財を〕失ったのだ。マーヤーヴィーよ、赤き〔魚〕を食べなさい」〔と〕。

 

38. 〔世尊は言った〕「まさしく、このように、人間たちにおいて、そこにおいて、論争が生じるなら、〔人々は〕法(正義)に依って立つ者(判事)へと走り行く。なぜなら、彼は、彼らにとって、導き手としてあるからである。そこにおいて、たとえ、〔彼らの〕財が失われ、王の蔵が増え行くも」〔と〕。ということで──

 

 ダッバプッパ・ジャータカが、第五となる。

 

7. 1. 6. パンナカ・ジャータカ(棕櫚・本生物語401)

 

39. 〔王が尋ねた〕「血を〔吸う性質〕を成就した鋭い切っ先のパンナカ〔産〕の剣を、衆のなかで人は飲む。それよりも、より為し難きこととして、何があるというのだろう。すなわち、他の為し難き境位があるなら、〔問いを〕尋ねられた者として、それを、わたしに告げ知らせよ」〔と〕。

 

40. 〔アーユラが答えた〕「人は、貪欲ゆえに、血を〔吸う性質〕を成就した剣を飲むのです。しかしながら、彼が、『〔わたしは〕施す』と説くなら、それは、それよりも、より為し難きこととなります。他の一切は、為し易き境位となります。マッダヴァよ、このように知りたまえ」〔と〕。

 

41. 〔王が尋ねた〕「アーユラは、問いを説き明かした──義(道理)と法(真理)の熟知者として。今や、プックサに、〔わたしは〕尋ねる。何が、それよりも、より為し難きこととなるのか。すなわち、他の為し難き境位があるなら、〔問いを〕尋ねられた者として、それを、わたしに告げ知らせよ」〔と〕。

 

42. 〔プックサが答えた〕「〔世の人々は〕言葉に依拠して生きません──〔それが〕果なきものであるなら、声に出したところで。しかしながら、彼が、〔明言して〕施して、〔かつまた、果への貪欲を〕捨断するなら、それは、それよりも、より為し難きこととなります。他の一切は、為し易き境位となります。マッダヴァよ、このように知りたまえ」〔と〕。

 

43. 〔王が尋ねた〕「プックサは、問いを説き明かした。義(道理)と法(真理)の熟知者として。今や、セーナカ(菩薩)に、〔わたしは〕尋ねる。何が、それよりも、より為し難きこととなるのか。すなわち、他の為し難き境位があるなら、〔問いを〕尋ねられた者として、それを、わたしに告げ知らせよ」〔と〕。

 

44. 〔菩薩は答えた〕「人は、財を施すでしょう──もしくは、少なくあろうが、多くあろうが。しかしながら、彼が、〔愛しいものを〕施して、〔もはや〕悩み苦しまないなら、それは、それよりも、より為し難きこととなります。他の一切は、為し易き境位となります。マッダヴァよ、このように知りたまえ」〔と〕。

 

45. 〔王が言った〕「アーユラは、問いを説き明かした──さらに、人士たるプックサも。セーナカは、語るとおりに、一切の問いを圧倒する」〔と〕。ということで──

 

 パンナカ・ジャータカが、第六となる。

 

7. 1. 7. サットゥバスタ・ジャータカ(菓子袋・本生物語402)

 

46. 〔菩薩は尋ねた〕「心が混迷した者として、〔感官の〕機能()が動乱した者として、〔あなたは〕存している。あなたの〔両の〕眼から、諸々の水滴が流れ行く。何が、あなたにとって義(利益)とならないのか。また、何を、〔あなたは〕望み求めているのか。婆羅門よ、ここにやってきて、さあ、それを説きたまえ」〔と〕。

 

47. 〔婆羅門が答えた〕「夜叉が、〔わたしに〕言いました──今日、わたしが〔家に〕行き着くなら、妻が死ぬことになり、〔家に〕赴かずにいるなら、〔わたしに〕死があると。この苦しみに強く動揺する者として、〔わたしは〕存しています。セーナカよ、この義(意味)を、わたしに告げ知らせてください」〔と〕。

 

48. 〔菩薩は言った〕「多くの境位を熟慮して、すなわち、ここにおいて、〔わたしが〕説くであろうことは、それこそは、真理である。婆羅門よ、〔わたしは〕思う──あなたの菓子袋のことを。〔誰も〕知らないが、〔その菓子袋には〕黒蛇が入っているのだ。

 

49. 棒を取って、袋を打て。見よ──二つの舌あるも聾唖なる蛇を。今日、疑いを、諸々の疑惑を、断て。蛇を見よ。袋を解き放て」〔と〕。

 

50. 〔世尊は言った〕「畏怖する様子の、その婆羅門は、衆の中で菓子袋を解き放った。そこで、烈火の蛇が出てきた──鎌首をもたげて、猛毒の蛇が」〔と〕。

 

51. 〔婆羅門が言った〕「ジャナカ王には、諸々の善く得られた利得があります。すなわち、〔ジャナカ王は〕善き智慧あるセーナカを見ます。まさに、〔迷妄の〕覆いが開かれた者として、一切を見る者として、〔あなたは〕存しています。婆羅門(セーナカ)よ、はてさて、あなたには、恐るべき形態の知恵があります。

 

52. わたしには、これらの七百〔金〕が存します。〔それらの〕全てを収め取ってください。あなたに施します。なぜなら、あなたによって、今日、わたしの命が得られたからです。さらに、また、〔あなたは〕妻の安穏をも作り為したからです」〔と〕。

 

53. 〔菩薩は言った〕「賢者たちは、報酬を取らず──様々な詩偈が、善く語られたからといって。梵(婆羅門)よ、この〔わたしへの施し〕もまた、あなたへの施しとなれ。あなたは、富を取って、自らの家に赴きたまえ」〔と〕。ということで──

 

 サットゥバスタ・ジャータカが、第七となる。

 

7. 1. 8. アッティセーナカ・ジャータカ(アッティセーナカ・本生物語403)

 

54. 〔王が尋ねた〕「アッティセーナよ、すなわち、これらの乞い願う者たちのことを、わたしは知らないのに、彼らは、集いあつまって、わたしに乞い求める。何ゆえに、あなたは、わたしに乞い求めないのか」〔と〕。

 

55. 〔菩薩は答えた〕「乞い求める者は、愛しからざる者と成る。乞うものを施さずにいる者は、愛しからざる者と〔成る〕。それゆえに、わたしは、あなた乞い求めない。わたしに、憎しみ〔の思い〕が有ってはならない」〔と〕。

 

56. 〔王が言った〕「すなわち、まさに、乞い求めによって生きている者が、〔しかるべき〕時に、乞うものを乞い求めないなら、そして、他者を功徳から転落させ、自己みずからもまた生きない。

 

57. しかしながら、すなわち、乞い求めによって生きている者が、〔しかるべき〕時に、乞うものを乞い求めるなら、そして、他者に功徳を得させ、さらに、自己みずからももた生きる。

 

58. 智慧を有する者たちは、まさに、嫌悪しない──乞い求める者たちがやってきたのを見ても。梵行者たる〔あなた〕は、わたしにとって、愛しき者として存している。説きたまえ──あなたが求める、その宝を」〔と〕。

 

59. 〔菩薩は言った〕「智慧を有する者たちは、まさに、乞い求めない。そして、慧者は、〔彼らを〕知るに値する。〔施しの場を〕定めよ──聖者たちは立つ。これが、聖者たちの乞い求めである」〔と〕。

 

60. 〔王が言った〕「婆羅門よ、あなたに、千の雌の赤牛を、牛主と共に施します。まさに、どうして、聖者が、聖者に、施さずにいられましょう──あなたの、法(正義)と結び付いた諸々の詩偈を聞いて〔そののち〕」〔と〕。ということで──

 

 アッティセーナカ・ジャータカが、第八となる。

 

7. 1. 9. カピ・ジャータカ(猿・本生物語404)

 

61. 〔菩薩は言った〕「そこにおいて、怨みある者が定住するなら、賢者は、そこにおいて、住するべきではない。一夜であれ、あるいは、二夜であれ、怨みある者たちのうちにあるなら、苦痛のうちに住する。

 

62. 心が軽佻で〔他者に〕追随している人には、まさに、敵がいる。一者の猿を因として、群れに、不運が作り為された。

 

63. 群れの維持者にして、〔自己を〕賢者と思量する者は、まさしく、愚者である。自らの心の支配に赴いて、この者は、〔地に〕臥す──あたかも、猿のように。

 

64. 群れの維持者にして、力ある愚者は、善き者にあらず。親族たちにとって、益なき者と成る──鳥たちにとっての囮のように。

 

65. 群れの維持者にして、力ある慧者こそは、善き者である。親族たちにとって、益ある者と成る──三十三〔天の神々〕たちにとってのヴァーサヴァ(帝釈天)のように。

 

66. そして、その者が、かつまた、戒を、かつまた、智慧を、かつまた、所聞(学識)を、自己のうちに見るなら、かつまた、自己の、かつまた、他者の、両者の義(利益)を行なう。

 

67. それゆえに、戒と智慧と所聞のように、自己を〔考量し〕比較するべきである。慧者は、あるいは、群れを維持するか、あるいは、また、独り、遍歴遊行するであろう」〔と〕。ということで──

 

 カピ・ジャータカが、第九となる。

 

7. 1. 10. バカ・ジャータカ(バカ・本生物語405)

 

68. 〔バカ梵天が言った〕「ゴータマよ、ゴータマよ、七十二者の功徳の行為ある者たちがいます。梵〔の世〕に至り得ることは、これは、最後〔の生〕であり、〔真の〕知に至るものです。無数の人たちが、わたしたちを渇望します」〔と〕。

 

69. 〔世尊は言った〕「この〔寿命〕は、まさに、僅かです。まさに、長き寿命ではありません。バカよ、それを、あなたは、長き寿命と思い考えます。梵〔天〕よ、わたしは、あなたの寿命を、百千のニラッブダ(数の単位・巨大数)と覚知します」〔と〕。

 

70. 〔バカ梵天が尋ねた〕「世尊よ、わたしは、無限の見ある者として存しています。生と老を〔超克し〕、憂いを超克した者です。何が、わたしの、過去の掟と戒の行持なのですか。それを、〔わたしに〕告げ知らせてください。すなわち、わたしが、〔それを〕識知できるように」〔と〕。

 

71. 〔世尊は答えた〕「すなわち、あなたは、炎暑のなか等しく打ち負かされ渇いている多くの人間たちに、〔水を〕飲ませました。それが、あなたの、過去の掟と戒の行持です。眠りから目覚めた者のように、〔わたしは〕思い起こします。

 

72. すなわち、エーニー〔川〕の堤防において、捕捉され虜囚として連行される人々を、〔あなたは〕解放しました。それが、あなたの、過去の掟と戒の行持です。眠りから目覚めた者のように、〔わたしは〕思い起こします。

 

73. ガンガー〔川〕の流れのなか、残忍な龍によって、人間への欲望から(※)捕捉された舟を、〔あなたは〕力ずくで打ち負かして解き放ちました。それが、あなたの、過去の掟と戒の行持です。眠りから目覚めた者のように、〔わたしは〕思い起こします。

 

※ テキストには manussakappā とあるが、PTS版により manussakamyā と読む。

 

74. そして、〔わたしは〕カッパ〔という名〕の、あなたの従僕として〔世に〕有りました。〔あなたのことを〕正覚ある者と、掟ある者と、〔わたしは〕思い考えました。それが、あなたの、過去の掟と戒の行持です。眠りから目覚めた者のように、〔わたしは〕思い起こします」〔と〕。

 

75. 〔バカ梵天が言った〕「たしかに、わたしの、この寿命を、〔あなたは〕覚知します。まさに、そのように、覚者は、諸々の他のこともまた知ります。まさに、そのように、あなたの、この燃え盛る威力は、梵の世を照らしながら止住します」〔と〕。ということで──

 

 バカ・ジャータカが、第十となる。

 

 クックの章が、第一となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「優れた尖塔(クック)と優れた弓(マノージャ)とスタナ(スタヌ)があり、そこで、鷲(母を養う鷲)と優れた赤き魚(ダッバの花)を有するものがあり、さらに、パンナカ〔産〕とセーナカ(菓子袋)と乞い求める者(アッティセーナカ)があり、そこで、怨みある者(猿)と梵〔天〕のバカを有するもの(バカ)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

7. 2. ガンダーラの章

 

7. 2. 1. ガンダーラ・ジャータカ(ガンダーラ・本生物語406)

 

76. 〔菩薩は言った〕「一万六千の遍く満ちた村々を捨棄して、諸々の栄える貯蔵小屋を〔捨棄して、出家したあなたが〕、今や、蓄積を為す」〔と〕。

 

77. 〔ヴェーデーハが言った〕「ガンダーラ〔国〕の境域を捨棄して、沢山の保つべき財産を〔捨棄して、出家したあなたが〕、教誡から出て行き、今や、ここに、〔他者を〕教誡する(非叱責の教誡を破り、他者を叱責する)」〔と〕。

 

78. 〔菩薩は言った〕「ヴェーデーハよ、〔わたしは〕法(正義)を話す。法(正義)ならざるは、わたしにとって好ましからず。わたしが法(正義)を話しているなら、悪は汚さず」〔と〕。

 

79. 〔ヴェーデーハが言った〕「どのような栄誉であれ、それによって、他者が悩苦を得るなら、たとえ、もし、大いなる義(利益)ある言葉なるも、それを、賢者は語るべからず」〔と〕。

 

80. 〔菩薩は言った〕「欲するままに、あるいは、悩苦せよ、あるいは、〔悩苦する〕なかれ。籾殻のように、離散せよ。わたしが法(正義)を話しているなら、悪は汚さず」〔と〕。

 

81. 〔世尊は言った〕「もし、彼の、自らの覚慧が、あるいは、律が、善く学ばれていないなら、多くの人々は、林のなかの盲目の野牛のように、〔迷いのままに〕歩むであろう。

 

82. しかしながら、すなわち、また、ここに、一部の者たちは、師匠のもとで善く学んだことから、それゆえに、律に教導された者たちとなり、〔心が〕善く定められた者となり、〔世を〕歩む」〔と〕。ということで──

 

 ガンダーラ・ジャータカが、第一となる。

 

7. 2. 2. マハーカピ・ジャータカ(大猿・本生物語407)

 

83. 〔王が尋ねた〕「すなわち、〔あなたは〕自己を橋と為して、〔彼らを、無事〕安穏に渡らせた。大猿よ、あなたは、彼らの、何なのだ。これらの者たちは、あなたの、何なのだ。〔ここに〕有る、これらの者たちは」〔と〕。

 

84. 〔菩薩は答えた〕「わたしは、彼らの、王であり、イッサラ(イーシュヴァラ神・自在神)であり、群れの維持者である。敵を調御する者よ、彼らが、あなたに恐怖し、憂いに打ち負かされたので──

 

85. 〔わたしは〕百なる放弓〔の距離〕を、自己みずから跳躍して〔対岸に到達し〕、そののち、蔓紐を〔両の〕後足に堅固に結び──

 

86. 風に断ち切られた雲のように〔対岸から〕取って返し、〔この〕木に至り着いたが、〔まさに〕その、わたしは、そこにおいて、〔到達するに〕少なく有り、〔両の〕手で〔木の〕枝を掴み取った。

 

87. そして、枝によって、さらに、蔓によって、引き伸ばされた者として存している、〔まさに〕その、わたしを、〔両の〕足で〔踏みしめて〕、共に従い行きつつ、猿たちは、〔無事〕安穏に〔対岸に〕赴いたのだ。

 

88. 〔まさに〕その、わたしを、結縛は苦しめない。死ぬことは、わたしにとって苦しみとならない。彼らに、安楽は将来された。彼らのために、〔わたしは〕王たることを為したのだ。

 

89. 王よ、これは、あなたのための喩えである。敵を調御する者よ、それを聞け。王によって、国土のために、車馬のために、軍隊のために、さらに、町のために、全ての者たちのために、安楽が探し求められるべきである──〔常に法を〕覚知している士族によって」〔と〕。ということで──

 

 マハーカピ・ジャータカが、第二となる。

 

7. 2. 3. クンバカーラ・ジャータカ(陶工・本生物語408)

 

90. 〔第一の独覚が言った〕「わたしは、林間において、立派に成長し結果した、青く光るアンバ〔樹〕を見ました。果を因として、それが折られたのを見ました。それを見て、〔わたしは〕行乞の行を歩んでいます」〔と〕。

 

91. 〔第二の独覚が言った〕「技ある人によって加工され、美しく磨かれた宝石を、一組、女が〔身に〕付けました──音声少なきものとして。しかしながら、第二のものを縁として、音声あるものと成りました(打ち合うことで音を立てた)。それを見て、〔わたしは〕行乞の行を歩んでいます」〔と〕。

 

92. 〔第三の独覚が言った〕「鳥たちが、死骸を持ち運んでいる鳥を──多くの者たちが共に赴いて、独りで存している者を──食を因として、攻撃しました。それを見て、〔わたしは〕行乞の行を歩んでいます」〔と〕。

 

93. 〔第四の独覚が言った〕「わたしは、色艶と活力を具有し、震えるこぶがある雄牛を、群れの中に見ました。彼が、欲望を因として、突き刺されたのを見ました。それを見て、〔わたしは〕行乞の行を歩んでいます」〔と〕。

 

94. 〔妻のバッガヴィーに、菩薩は言った〕「カリンガ〔国〕のカランダカは、さらに、ガンダーラ〔国〕のナッガジは、ヴィデーハ〔国〕のニミ王は、さらに、パンチャーラ〔国〕のドゥンムカは──これらの者たちは、諸々の国土を捨棄して、無一物の者たちとなり、出家した。

 

95. これらの集いあつまった者たちは、一切もろともに、天〔の神々〕たちに等しき者たちである。すなわち、燃え盛る火のように、まさしく、そのように、これらの者たちはある。バッガヴィーよ、わたしもまた、独り、歩むであろう──限りあるかぎりの諸々の欲望〔の対象〕を捨棄して」〔と〕。

 

96. 〔妻のバッガヴィーが言った〕「これこそは、〔唯一の〕時です。まさに、他〔の時〕は存在しません。未来にあっては、わたしに、教示者は有りえません。バッガヴァ(菩薩)よ、わたしもまた、独り、歩みましょう──人の手から解き放たれた鳥のように」〔と〕。

 

97. 〔菩薩は言った〕「〔彼らは〕知る──生(なま)のものを、そして、調理したものを、さらに、塩気あるものと塩気なきものを。それを見て、わたしは出家したのだ。まさしく、あなたも歩め。わたしも歩む」〔と〕。ということで──

 

 クンバカーラ・ジャータカが、第三となる。

 

7. 2. 4. ダラダンマ・ジャータカ(ダラダンマ・本生物語409)

 

98. 〔菩薩に、雌象が言った〕「もしや、わたしは、ダラダンマ〔王〕を満悦させなかったのでしょうか──〔彼を〕運びながら、胸に矢を受けつつ、戦いにおいて勇猛の歩みある〔わたし〕であるのに。

 

99. まちがいなく、わたしの王は知りません──勇猛なる下僕のことを、戦場における諸々の善行の極みを、さらに、〔幾度も〕使者として派遣されたことを。

 

100. 〔まさに〕その、わたしは、まちがいなく、死ぬのです──眷属なく、寄る辺なき者として、まさに、そのとき、陶工に与えられた〔わたし〕は、牛糞運びをする者として」〔と〕。

 

101. 〔王に、菩薩は言った〕「およそ、人が、願い求めるかぎり、まさしく、それまでのあいだは、〔彼を〕重宝する。義(目的)を失うとき、〔愚者たちは〕彼を捨棄する──士族(王)が、象に〔為した〕ように。

 

102. すなわち、過去において、善きことを為され、義(利益)を為された者が、〔そのことを忘却して〕覚らないなら、彼の、諸々の義(利益)は消滅する──〔彼が、かつて〕望み求めていたものとして有る、それらのものは。

 

103. すなわち、過去において、善きことを為され、義(利益)を為された者が、〔そのことを忘却せず〕随覚するなら、彼の、諸々の義(利益)は増大する──〔彼が、かつて〕望み求めていたものとして有る、それらのものは。

 

104. 〔わたしは〕それを、あなたたちに説く。あなたたちに、幸せ〔有れ〕(※)──ここにおいて集いあつまった、そのかぎりの者たちは。全ての者たちは、知恩の者たちと成れ。天上おいて、長きに安立するであろう」〔と〕。ということで──

 

※ テキストには bhaddante とあるが、PTS版により bhaddan vo と読む。

 

 ダラダンマ・ジャータカが、第四となる。

 

7. 2. 5. ソーマダッタ・ジャータカ(ソーマダッタ・本生物語410)

 

105. 〔婆羅門が言った〕「かつて、彼は、林のなか、遠く彼方から、わたしを出迎えるも、その象は、〔今は〕見られない。ソーマダッタは、どこに赴いたのだ。

 

106. あるいは、これが、その〔象〕なのか──死んだ者となり、〔地に〕臥す、〔この象が〕。摘み取られた若芽のように、〔彼は〕地に落ち、〔地に〕臥す。象は、まさに、死んだのだ」〔と〕。

 

107. 〔菩薩は言った〕「〔家から〕家なきへと近しく至った、解脱者のあなたにとって、〔そのような者として〕存している沙門にとって、すなわち、亡者を憂い悲しむことは、それは、善きことにあらず」〔と〕。

 

108. 〔婆羅門が言った〕「帝釈〔天〕よ、人間との、あるいは、獣との、共住によって、まさに、心臓(心)に愛情が生まれる。それを、憂い悲しまずにいることはできない」〔と〕。

 

109. 〔菩薩は言った〕「彼らは、泣き叫び、そして、泣き喚くが、〔すでに〕死んだ者のことを、〔まさに〕死ぬであろう者のことを、〔虚しく〕泣き叫ぶのだ。聖賢よ、それゆえに、あなたは、泣き叫んではならない。『泣き叫ぶことは無駄である』〔と〕、正しくある者たちは言う。

 

110. 梵(婆羅門)よ、泣き叫ぶことによって、まさに、死んだ亡者が現起するなら、全ての者たちが集いあつまって、〔わたしたちは〕互いに他の親族たちのことを泣き叫ぶであろう」〔と〕。

 

111. 〔婆羅門が言った〕「酪を注いだ火のように、まさに、燃え盛る者として存しているわたしを、〔その〕一切の懊悩を、水を降り注ぐかのように、〔あなたは〕寂滅させる。

 

112. すなわち、心臓(心)に依拠するものとして存していた、わたしの矢を、まさに、引き抜いてくれた。すなわち、憂い悲しみに打ち負かされたわたしの、子〔の死〕の憂い悲しみを、除き去ったのだ。

 

113. 〔まさに〕その、わたしは、矢が引き抜かれた者として存している──憂い悲しみを離れ、〔心に〕混濁なき者として。〔わたしは〕憂い悲しまない。〔わたしは〕泣き叫ばない。ヴァーサヴァ(帝釈天)よ、あなたの〔言葉を〕聞いて〔そののちは〕」〔と〕。ということで──

 

 ソーマダッタ・ジャータカが、第五となる。

 

7. 2. 6. スシーマ・ジャータカ(スシーマ・本生物語411)

 

114. 〔菩薩は言った〕「かつて、諸々の黒髪が有った。頭部のどこにでも生えていた。スシーマ(菩薩)よ、今日、白きそれらを見て、法(教え)を歩め。梵行の時だ」〔と〕。

 

115. 〔王妃が言った〕「陛下(菩薩)よ、まさしく、わたしの白髪です。あなたのものではありません。まさしく、わたしの頭です。わたしの頭部です。『義(利益)を作り為すのだ』と、嘘を話しました。最勝の王よ、一なる非礼をお許しください。

 

116. 王よ、青年のあなたは、美しくある者として〔世に〕存しています。筍のように若々しく屹立する者として〔世に〕有ります。そして、王権を為してください。さらに、わたしのことを見てください。人のインダよ、時のかかるものを追いかけてはいけません(今現在の楽しみを享受したまえ)」〔と〕。

 

117. 〔菩薩は言った〕「まさに、わたしは見る──美しく磨かれた腰の、美しい体躯の、美しいくびれた胴の、年少の少女を。〔彼女は〕カーラ〔樹〕の若枝のように揺らめきながら、誘惑しているかのように、男たちのなかを赴く。

 

118. やがて、そののち、他に、女を見る──生まれてのち、八十か、あるいは、九十の者を──棒を掴んで、よろめきながら歩いている、曲がった垂木に等しき者を。

 

119. 〔まさに〕その、わたしは、まさしく、彼女のことを、熟慮しながら、独り、臥所の中に臥す。『わたしもまた、このようにある』〔と〕、かくのごとく見ながら、〔わたしは〕家〔の生活〕を喜ばない。梵行の時だ。

 

120. すなわち、家に住している者の喜びは、そして、これは、縄にしがみついているようなもの。このように、また、〔家の喜びを〕断ち切って、慧者たちは行く──期待なき者たちとなり、欲望の安楽を捨棄して」〔と〕。ということで──

 

 スシーマ・ジャータカが、第六となる。

 

7. 2. 7. コータシンバリ・ジャータカ(コータシンバリ・本生物語412)

 

121. 〔金翅鳥が尋ねた〕「わたしは、千ヴヤーマ(:長さの単位・一ヴヤーマは約二メートル)の蛇(龍)を取って、やってきたのだが、大いなる身体の、そして、その〔蛇〕を、さらに、わたしを、〔あなたは〕保持しながら、動揺しない。

 

122. そこで、わたしよりも、より肉少なき、この小さき鳥を、〔あなたは〕保持しながら、恐怖し、動揺する。コータシンバリ〔樹〕よ、何を義(目的)としてのことか」〔と〕。

 

123. 〔菩薩は答えた〕「王よ、あなたは、肉を食物とする者です。この鳥は、果を食物とする者です。この者は、諸々のニグローダ〔樹〕の種を、さらに、諸々のピラッカやドゥンバラ〔樹の種〕を、さらに、諸々のアッサッタ〔樹の種〕を、〔それらを〕食して〔そののち〕、わたしの幹に排便するでしょう。

 

124. それらの木々は、わたしの脇で、安全に生じ、等しく成長します。それらは、わたしを遍く覆い包み、わたしを、木ならざるものと為すでしょう。

 

125. 他にもまた、木々は存在します。根があり幹がある木々が、この鳥の類によって、種を運ばれ、殺されたのです。

 

126. 〔芽吹いた木々は〕成長し、繁茂します。林の長たる大いなる〔木〕でさえも〔滅ぼします〕。王よ、それゆえに、〔わたしは〕動揺するのです──未来の恐怖を正しく見ながら」〔と〕。

 

127. 〔金翅鳥が言った〕「諸々の危惧するべきことを危惧するべきである。未来の恐怖を守るべきである。慧者は、未来の恐怖あることから、〔この世とあの世の〕両者の世を〔あるがままに〕注視する」〔と〕。ということで──

 

 コータシンバリ・ジャータカが、第七となる。

 

7. 2. 8. ドゥーマカーリ・ジャータカ(ドゥーマカーリ・本生物語413)

 

128. 〔世尊は言った〕「法(正義)を欲するユディッティラ王は、ヴィドゥラ(菩薩)に尋ねた」〔と〕。〔王が尋ねた〕「婆羅門よ、さてまた、〔あなたは〕知りますか。誰が、独り、多く憂い悲しむのですか」〔と〕。

 

129. 〔菩薩は答えた〕「山羊たちの群れとともに林に住している、ヴァーセッタ〔姓〕の婆羅門は、沢山の燃やすものがあり、夜に、昼に、休みなく、煙を立てた。

 

130. 彼の、その煙の臭いによって、蚊に悩む鹿たちが、雨期の居住所へと近づいてきた──ドゥーマカーリ(婆羅門)の現前に。

 

131. 鹿たちに意を為して、彼は、山羊たちのことを覚らなかった(無視して面倒を見なかった)。右往しながら、あるいは、左往しながら、彼の、それらの山羊たちは、〔ついに〕滅び去った。

 

132. 時は秋となり、林に蚊はいなくなり、鹿たちは、諸々の山の難所に、さらに、諸々の川の源流に、入って行った。

 

133. そして、鹿たちが去ったのを見て、さらに、山羊たちが消滅に至ったのを〔見て〕、かつまた、痩せ細り、かつまた、色艶衰え、かつまた、黄疸の者として、婆羅門は存した。

 

134. このように、彼が、自らのものを無視して、来客を愛しき者と為すなら、彼は、独り、多く憂い悲しむ。ドゥーマカーリ婆羅門のように」〔と〕。ということで──

 

 ドゥーマカーリ・ジャータカが、第八となる。

 

7. 2. 9. ジャーガラ・ジャータカ(起きている者・本生物語414)

 

135. 〔天神が尋ねた〕「ここに、誰が、〔眠らずに〕起きている者たちのなかで、眠っている者であるのか。ここに、誰が、眠っている者たちのなかで、〔眠らずに〕起きている者であるのか。誰が、わたしの、この〔問い〕を識知するのか。誰が、その〔問い〕を〔識知して〕、わたしに応答するのか」〔と〕。

 

136. 〔菩薩は答えた〕「わたしは、〔眠らずに〕起きている者たちのなかで、眠っている者です。わたしは、眠っている者たちのなかで、〔眠らずに〕起きている者です。わたしは、この〔問い〕を識知します。わたしは、あなたに応答します」〔と〕。

 

137. 〔天神が尋ねた〕「どのように、〔眠らずに〕起きている者たちのなかで、眠っている者となるのか。どのように、眠っている者たちのなかで、〔眠らずに〕起きている者となるのか。どのように、この〔問い〕を識知するのか。どのように、わたしに応答するのか」〔と〕。

 

138. 〔菩薩は答えた〕「彼らが、『自制である』と、さらに、『調御である』と、法(真理)を覚知することがないなら、天神よ、眠っている彼らのなかで、わたしは、〔眠らずに〕起きています。

 

139. 彼らの、そして、貪欲が、かつまた、憤怒が、さらに、無明が──〔それらが〕離貪されたなら、天神よ、〔眠らずに〕起きている彼らのなかで、わたしは、眠っている者として存しています。

 

140. このように、〔眠らずに〕起きている者たちのなかで、眠っている者となります。このように、眠っている者たちのなかで、〔眠らずに〕起きている者となります。このように、この〔問い〕を識知します。このように、あなたに応答します」〔と〕。

 

141. 〔天神が言った〕「善きかな、〔眠らずに〕起きている者たちのなかで、眠っている者となる、〔あなたは〕。善きかな、眠っている者たちのなかで、〔眠らずに〕起きている者となる、〔あなたは〕。善きかな、この〔問い〕を識知する、〔あなたは〕。善きかな、わたしに応答する、〔あなたは〕」〔と〕。ということで──

 

 ジャーガラ・ジャータカが、第九となる。

 

7. 2. 10. クンマーサピンディ・ジャータカ(団子飯・本生物語415)

 

142. 〔菩薩は言った〕「至上の見ある覚者たちにたいする世話〔の報い〕は、まさに、少なきものとして存するにあらず。乾燥し、かつまた、塩気なき、団子飯の、〔その〕果を見よ。

 

143. そして、これらの多くの象や牛や馬たちが、財産と穀物が、さらに、地の全部が、かつまた、これらの仙女の如き女たちが、〔その報いとして、わたしのもとにある〕。団子飯の、〔その〕果を見よ」〔と〕。

 

144. 〔王妃が尋ねた〕「王の長たる方よ、コーサラ〔国〕の君主たる方よ、幾度となく、〔あなたは〕諸々の詩偈を語ります。国土を繁栄させる方よ、〔わたしは〕あなたに尋ねます──喜悦の意ある者となり、激しく〔詩偈を〕語る、〔その理由を〕」〔と〕。

 

145. 〔菩薩は答えた〕「まさしく、この城市において、〔かつて、わたしは〕或るどこかの家に〔生まれ、世に〕有った。他者の労夫として、雇われとして、戒の統御ある者として、〔世に〕存した。

 

146. 作業のために出かけつつ、わたしは、四者の沙門を見た──行ないと戒を成就した者たちを、〔心が〕清涼と成った者たちを、煩悩なき者たちを。

 

147. 彼らにたいし、心を清信させて、葉を広げた〔坐所〕に坐らせて、〔団子〕飯を、覚者たちに施した──清信した者となり、自らの〔両の〕手で。

 

148. その善なる行為の〔報いとして〕、この〔果〕が、わたしの、このような果があるのだ。〔わたしは〕受領する──この王権を、栄える最上の大地を」〔と〕。

 

149. 〔王妃が言った〕「〔常に〕施しながら受益してください。かつまた、怠る者であってはなりません。コーサラ〔国〕の君主たる方よ、〔法の〕輪を転起させたまえ。王は、法(正義)にかなわない者として〔世に〕有ってはなりません。コーサラ〔国〕の君主たる方よ、法(正義)を守りたまえ」〔と〕。

 

150. 〔菩薩は言った〕「美しく輝く者よ、〔まさに〕その、わたしは、まさしく、その道を、繰り返し歩むであろう──コーサラ〔国〕の美しき者よ、聖者たちが歩んだ〔その道〕を。阿羅漢たちは、わたしにとって、まさしく、見るに意に適う者たちである」〔と〕。

 

151. 〔菩薩は尋ねた〕「王妃よ、仙女の如きであるかのように、女たちの群れの中央で、〔あなたは〕美しく輝く。どのような幸いなる行為を、〔あなたは〕為したのか。コーサラ〔国〕の美しき者よ、どのような〔行為〕によって、〔あなたは〕色艶ある者として〔世に〕存しているのか」〔と〕。

 

152. 〔王妃が答えた〕「士族よ、わたしは、アンバッタ家の奴婢として、他者に仕える者として、〔世に〕有りました──そして、〔心身が〕自制された者として、法(正義)に生きる者として、さらに、戒ある者として、悪しき見なき者として。

 

153. そのとき、わたしは、〔自らの食するところから〕取り分けた食事を、〔道を〕歩んでいる比丘に施しました──歓悦の者となり、悦意の者となり、自ら、わたしは。その行為の〔報いとして〕、わたしの、このような果があります」〔と〕。ということで──

 

 クンマーサピンディ・ジャータカが、第十となる。

 

7. 2. 11. パランタパ・ジャータカ(パランタパ・本生物語416)

 

154. 〔パランタパが言った〕「わたしのもとに、悪〔の報い〕がやってくるであろう。わたしのもとに、恐怖がやってくるであろう。まさに、そのとき、枝が揺れ動いたのだ──人間によって、あるいは、獣によって(わたしの悪事を誰かが見た)。

 

155. 〔婆羅門が言った〕「遠からざるところに住している臆病者〔の妻〕へのわたしの欲望が、まちがいなく、〔わたしを〕痩せ細り青ざめた者と為すであろう──その枝が、パランタパを〔恐怖させた〕ように。

 

156. 〔誰からも〕非難されることなく村に住する愛らしい〔妻〕が、わたしを憂い悲しませるであろうし、〔わたしを〕痩せ細り青ざめた者と為すであろう──その枝が、パランタパを〔恐怖させた〕ように。

 

157. 彼女の、黒いまなじりが、諸々の笑みが、さらに、諸々の口調が、わたしを痩せ細り青ざめた者と為すであろう──その枝が、パランタパを〔恐怖させた〕ように」〔と〕。

 

158. 〔復讐する王子に、パランタパが言った〕「まちがいなく、彼が、〔枝の〕音〔の主〕が、〔おまえのもとに〕赴いたのだ。まちがいなく、彼が、おまえに伝えたのだ。すなわち、その枝を動かした、彼によって、まちがいなく、それが告げ知らされたのだ。

 

159. 愚者のわたしが思い考えてきた、このことが、まさに、それが具現して、まさに、そのとき、枝が揺れ動いたのだ──人間によって、あるいは、獣によって」〔と〕。

 

160. 〔王子が言った〕「まさしく、そのとおりに、おまえは知った。〔おまえは〕わたしの父を騙した。殺して〔そののち〕、諸々の枝で覆い隠しながら、『わたしのもとに、恐怖がやってくるであろう』〔と思い考えたのだ〕」〔と〕。ということで──

 

 パランタパ・ジャータカが、第十一となる。

 

 ガンダーラの章が、第二となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「優れた村(ガンダーラ)と大猿とバッガヴァ(陶工)があり、そして、ダラダンマと象(ソーマダッタ)を有するものと優れた髪(スシーマ)があり、蛇(コータシンバリ)とヴィドゥラ(ドゥーマカーリ)があり、さらに、『起きている者たちのなかで』(起きている者)があり、そこで、コーサラ〔国〕の君主(団子飯)とパランタパがあり、そして、〔それらの十一がある〕」と。

 

 そこで、章の摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「そこで、七なるものの集まりにおける章〔の名〕を話している、わたしの〔言葉を〕聞け。クックがあり、そして、さらに、ガンダーラがあり、まさしく、二つ〔の章〕が、偉大なる聖賢によって保護された」と。

 

 七なるものの集まりは〔以上で〕終了となる。

 

8. 八なるものの集まり

 

8. 1. カッチャーニの章

 

8. 1. 1. カッチャーニ・ジャータカ(カッチャーニ・本生物語417)

 

1. 〔菩薩は尋ねた〕「白き衣をまとい、清らかで、濡れた髪をして、カッチャーニよ、どうして、〔あなたは〕瓶のうえに坐して、胡麻の粉をたずさえ、諸々の米を洗うのか。何を因として、胡麻飯と成るのか」〔と〕。

 

2. 〔カッチャーニが答えた〕「婆羅門よ、まさに、これは、食べることを義(目的)として、善く煮られた胡麻飯と成るのではありません。法(正義)が死んだのです。わたしは、彼のために、沢山のものを、今日、墓場の中で作るのです」〔と〕。

 

3. 〔菩薩は尋ねた〕「カッチャーニよ、随知して〔そののち〕、為すべきことを為しなさい。法(正義)が死んだとして、いったい、誰が、まさしく、あなたに伝えたのだ。千の眼あるものは、無比なる威力あるものは、優れた法(正義)は、いついかなる時も死なないのだ」〔と〕。

 

4. 〔カッチャーニが答えた〕「梵(婆羅門)よ、ここにおいて、わたしに、堅固にして無量なるものがあります。法(正義)は死んだのです。ここにおいて、わたしに、疑いは存在しません。今や、まさしく、それらの者たち、それらの者たちが、悪しき者たちとして〔世に〕有るなら、今や、まさしく、それらの者たち、それらの者たちは、安楽の者たちとして〔世に〕有るのです。

 

5. なぜなら、わたしの嫁は、〔かつて〕石女として〔世に〕有りました。彼女は、わたしを打って〔そののち〕、子を産みました。今や、彼女は、家の一切の権力者です。いっぽう、わたしは、〔親族たちに〕捨てられ、独りある者となり、〔世に〕存します」〔と〕。

 

6. 〔菩薩は言った〕「まさに、わたしは生きる。死者として、わたしは存さず。まさしく、あなたの義(利益)のために、ここにやってきた者として、〔わたしは〕存している。彼女が、あなたを打って〔そののち〕、子を産んだのなら、まさしく、子と共に、〔彼女を〕灰と為す」〔と〕。

 

7. 〔カッチャーニが言った〕「天の王よ、そして、このようにあることが、あなたにとって好ましくあり、まさしく、わたしの義(利益)のために、ここにやってきた者として、〔あなたは〕存しています。そして、わたしと子は、さらに、嫁と孫も、〔仲良く〕喜び合いながら、家に住します(嫁と孫を殺さないでください)」〔と〕。

 

8. 〔菩薩は言った〕「カーティヤーニ(カッチャーニ)よ、そして、このようにあることが、あなたにとって好ましくあり、たとえ、打ちのめされた者として〔世に〕存しながらも、〔あなたは〕法(正義)を捨棄しない。そして、あなたと子は、さらに、嫁と孫も、〔仲良く〕喜び合いながら、家に住しなさい」〔と〕。

 

9. 〔世尊は言った〕「彼女は、カーティヤーニは、嫁と共に、〔仲良く〕喜び合いながら、家に住した。そして、子は、さらに、孫は、〔彼女に〕奉仕した──天〔の神々〕たちのインダ(インドラ神・帝釈天)に圧倒され〔悔悟して〕」〔と〕。ということで──

 

 カッチャーニ・ジャータカが、第一となる。

 

8. 1. 2. アッタサッダ・ジャータカ(八音・本生物語418)

 

10. 〔鶴が言った〕「かつて、この〔地〕は、低地として有った──多くの魚がいる、大いなる水ある〔地〕として、鶴の王の居住所として、わたしの父祖の居所として。〔まさに〕その〔わたしたち〕は、今日、蛙によって〔身を〕保ち行く──家を捨棄することなく」〔と〕。

 

11. 〔烏が言った〕「第二に、誰が、戒なきバンダラの眼を破るのだ。誰が、わたしの子たちを、巣を、そして、わたしを、安穏と為すのだ」〔と〕。

 

12. 〔虫が言った〕「彼の赴く所として有った、そのかぎりが、樹皮は、〔その〕一切が、完全なる滅尽あるものとなる。大王よ、食物が尽きた木食い虫は、芯を喜ばない」〔と〕。

 

13. 〔鳥が言った〕「〔まさに〕その、わたしは、さあ、ここから去って、王の住居地から解き放たれ、木の枝を家とする者となり、自己を喜ばすのだ」〔と〕。

 

14. 〔鹿が言った〕「〔まさに〕その、わたしは、さあ、ここから去って、王の住居地から解き放たれ、群れの前を行く者となり、諸々の至高の水を飲むのだ」〔と〕。

 

15. 〔猿が言った〕「〔まさに〕その、わたしを──諸々の欲望〔の対象〕に夢中になり、諸々の欲望〔の対象〕に貪欲し、耽溺している〔わたし〕を──よそもののバラタ猟師は、〔ここに〕連れてきた。あなたに、幸せが存せ」〔と〕。

 

16. 〔妖精が言った〕「暗黒と漆黒のなか、高き山の上で、彼女は、優雅で柔和な〔声〕で、わたしに〔告げる〕。『足が石に躓いてはいけません』」〔と〕。

 

17. 〔独覚が言った〕「〔わたしは〕疑念なく生の滅尽と終極を見る者である。胎に臥す〔境遇〕にふたたび戻り行くことはない。これは、終極にして最後の胎に臥す〔境遇〕である。わたしの、さらなる生存(再生)のための輪廻は、〔完全に〕滅尽したのだ」〔と〕。ということで──

 

 アッタサッダ・ジャータカが、第二となる。

 

8. 1. 3. スラサー・ジャータカ(スラサー・本生物語419)

 

18. 〔遊女のスラサーが言った〕「この黄金の腕飾があります。多くの真珠と瑠璃があります。全てを持っていってください。あなたに、幸せ〔有れ〕。〔わたしを〕解き放ってください。『奴婢よ』と、〔わたしに〕告げ聞かせてください(あなたの奴婢となります)」〔と〕。

 

19. 〔盗賊のサットゥカが言った〕「美しい者よ、取り外すのだ。激しく嘆いてはならない。さてまた、わたしは証知しない(記憶しない)──殺さずして、運び込んだ財を」〔と〕。

 

20. 〔遊女のスラサーが言った〕「〔成長して〕自己のことを思念する、そののちは──知性に至り得た者として〔世に〕存する、そののちは──さてまた、わたしは証知しません──あなたより他に、より愛しき者を。

 

21. さあ、あなたを抱きましょう。そして、右回り〔の礼〕を為しましょう。なぜなら、今や、〔このような〕逢瀬は、わたしにとって、さらに、あなたにとっても、もはや存在しないからです」〔と〕。

 

22. 〔菩薩は言った〕「まさに、一切の状況において、男が賢者と成るのではない。女もまた、賢者と成る──その場その場に明眼ある者として。

 

23. まさに、一切の状況において、男が賢者と成るのではない。女もまた、賢者と成る──軽々と義(道理)を熟慮する者として。

 

24. そして、軽々と、さらに、まさに、すみやかに、間近において、〔彼女は〕正しく思い考えた。一杯に引き伸ばされた〔弓矢〕で獣を〔倒す〕ように、スラサーは、サットゥカを打ち殺した。

 

25. ここに、その者が、生起した義(事態)を、すみやかに随覚しないなら、彼は、打ち殺される──愚かな思慧の盗賊が、山窟で〔殺された〕ように。

 

26. そして、その者が、生起した義(事態)を、まさしく、すみやかに覚るなら、賊の煩いから解き放たれる──スラサーが、サットゥカから〔逃れた〕ように」〔と〕。ということで──

 

 スラサー・ジャータカが、第三となる。

 

8. 1. 4. スマンガラ・ジャータカ(スマンガラ・本生物語420)

 

27. 〔菩薩は言った〕「『まさに、激しく忿激した〔わたし〕である』と注視して、それまでのあいだ、権力者は、棒(刑罰)を課すべきではない。理由なく、自己に適切ならずに、他者に、諸々の苦痛を激しく発するべきではない。

 

28. そして、自己の清信を知るであろう、そののちは、他者の悪行を、義(道理)と結び付けるであろう。そのとき、『これは、義(道理)である』と、自ら、注視して、そこで、彼に、〔その悪行と〕等しき棒を下すべきである。

 

29. さらに、また、他者を焼き尽くすことなく、自己を〔焼き尽くすこと〕なく、〔心に〕混迷なき者として、彼が、方法と方法ならざるものを〔正しく〕導くなら──ここに、棒を保持する権力者として、彼が、〔世に〕有るなら──彼は、栄誉によって守られた者であり、吉祥から転落することはない。

 

30. すなわち、真摯に為すことなき士族たちが、〔心に〕混迷ある者たちが、無理強いで棒を課すなら、栄誉と結び付くことなく、生命を捨棄し、そして、たとえ、ここから解脱したとして、悪しき境遇(悪趣)に至り行く。

 

31. しかしながら、すなわち、聖者によって知らされた法(正義)を喜ぶ者たちは、彼らは、言葉によって、意によって、さらに、行為()によって、無上なる者たちであり、彼らは、〔心の〕寂静と〔心の〕温和と禅定(定・三昧)を確立した者たちであり、そのような種類の者たちは、〔天と人の〕二つの世に行き着く(善趣に再生する)。

 

32. わたしは、王として〔世に〕存している──男や女たちにとっての権力者として。それで、もし、また、忿激するとして、〔わたしは〕自己を据え置く(自制する)。人民を制しつつ、そのような種類の棒を課す──〔人々を〕根源から慈しみながら」〔と〕。

 

33. 〔スマンガラが言った〕「士族よ、あなたにこそ、そして、吉祥〔有れ〕、さらに、幸運〔有れ〕。人の君主よ、いついかなる時も、〔それらを〕捨棄してはいけません。忿激せず、常に清信した心で、煩悶なき者となり、あなたは、百年〔の寿命〕を守りたまえ。

 

34. これらの徳を具した士族よ、常に聖なる行持ある者として、素直で忿激しない者として、安楽で抑圧なき者として、地を統治したまえ。そして、たとえ、ここから解脱したとして、善き境遇(善趣)に至り行きたまえ。

 

35. このように、見事に導かれ、見事に語られた、法(正義)と正理と手段(方便)によって、〔世の人々を〕導きながら、〔あなたは、心が〕掻き乱されている大勢の人を寂滅させるでしょう──大いなる雨雲が、水によって地を〔潤す〕ように」〔と〕。ということで──

 

 スマンガラ・ジャータカが、第四となる。

 

8. 1. 5. ガンガマーラ・ジャータカ(ガンガマーラ・本生物語421)

 

36. 〔菩薩は尋ねた〕「地は、炭火を生じ、大地は、熱灰に従い行く。そこで、〔おまえは〕歌う──諸々の行持を〔果たしながら、喜びの者となり〕。熱苦は、おまえを苦しめないのか。

 

37. 太陽は、上にあって〔おまえを〕苦しめ、砂礫は、下にあって〔おまえを〕苦しめる。そこで、〔おまえは〕歌う──諸々の行持を〔果たしながら、喜びの者となり〕。熱苦は、おまえを苦しめないのか」〔と〕。

 

38. 〔男が答えた〕「熱苦は、わたしを苦しめません。諸々の〔心の〕熱苦が、わたしを熱苦させるのです(欲望の思いこそが身を焦がす)。王よ、まさに、様々な種類の義(目的)が、それらが、〔わたしを〕苦しめます──熱苦ではなく(欲望のための労苦は苦しくない)」〔と〕。

 

39. 〔悔悟した男が言った〕「欲望よ、おまえの根元を、〔わたしは〕見た。欲望よ、〔誤った〕思惟から、〔おまえは〕生じた。おまえのことを、〔もはや、わたしは〕思惟しない。欲望よ、このように、〔もはや、おまえは〕有りえない。

 

40. 諸々の欲望〔の対象〕は、少なくあるもまた、十分ならず、多くあるもまた、満足せず。ああ、愚者たちの饒舌を遍く避けよ──〔眠らずに〕起きているなら」〔と〕。

 

41. 〔菩薩は言った〕「これは、わたしの少なき行為の〔大いなる〕果である。ウダヤ〔王〕(菩薩)は到達した──大いなるものが至り得られたところに。見事に得られた利得が、まさに、若者にある。彼は、欲望の貪欲を捨棄して、出家したのだ」〔と〕。

 

42. 〔独覚となった理髪師のガンガマーラに、王の母が言った〕「苦行によって、〔人々は〕悪しき行為(悪業)を捨棄する。苦行によって、〔人々は〕理髪師や陶工の状態を〔捨棄する〕。ガンガマーラよ、苦行によって、〔身分を〕征服して、今日、〔おまえは〕ブラフマダッタ(菩薩)に、名前で語りかけた(王にたいし敬称を使わなかった)」〔と〕。

 

43. 〔母に、菩薩は言った〕「母よ、見てください──まさしく、現に見られるものを。これは、忍耐と温和の報い(異熟)です。彼は、全ての人に敬拝される方と成ったのです。彼を、王を含め、家臣を含め、〔わたしたちの全てが〕敬拝するのです。

 

44. 諸々の寂黙の道に学んでいる牟尼に、〔独覚となった〕ガンガマーラに、何であれ、〔悪しく〕言ってはいけません。なぜなら、この方は、〔迷いの〕海を超え渡ったからです。その〔海〕を超え渡って、憂いを離れた者たちは、〔世を〕歩むのです」〔と〕。ということで──

 

 ガンガマーラ・ジャータカが、第五となる。

 

8. 1. 6. チェーティヤ・ジャータカ(チェーティヤ・本生物語422)

 

45. 〔菩薩は言った〕「法(正義)は、まさに、打ち殺されたなら、〔打ち殺した者を〕打ち殺し、打ち殺されていないなら、何ものをも打ち殺さない。まさに、それゆえに、法(正義)を打ち殺すべきではない。打ち殺された法(正義)が、あなたを打ち殺すことがあってはならない。

 

46. 偽りを語っているなら、天神たちは立ち去る。そして、口は腐臭を放ち、かつまた、自らの境位から転落する。すなわち、問いを尋ねられた者が、〔答えを〕知っているのに、他なるものとして、それを説き明かすなら。

 

47. まさに、それで、もし、〔あなたが〕真理(真実)を話すなら、王よ、すなわち、かつてのように、〔あなたは〕有れ。王よ、もし、〔あなたが〕虚偽を語るなら、チェーティヤよ、地に立て。

 

48. 彼に、時ならざるに雨降り、彼に、時なるに雨降らず。すなわち、問いを尋ねられた者が、〔答えを〕知っているのに、他なるものとして、それを説き明かすなら。

 

49. まさに、それで、もし、〔あなたが〕真理を話すなら、王よ、すなわち、かつてのように、〔あなたは〕有れ。王よ、もし、〔あなたが〕虚偽を語るなら、チェーティヤよ、地に入れ。

 

50. 方角の長(王)よ、彼の舌は、蛇のように、二様のものと成る。すなわち、問いを尋ねられた者が、〔答えを〕知っているのに、他なるものとして、それを説き明かすなら。

 

51. まさに、それで、もし、〔あなたが〕真理を話すなら、王よ、すなわち、かつてのように、〔あなたは〕有れ。王よ、もし、〔あなたが〕虚偽を語るなら、チェーティヤよ、より一層、〔地に〕入れ。

 

52. 方角の長よ、彼の舌は、魚のように、なきものと成る。すなわち、問いを尋ねられた者が、〔答えを〕知っているのに、他なるものとして、それを説き明かすなら。

 

53. まさに、それで、もし、〔あなたが〕真理を話すなら、王よ、すなわち、かつてのように、〔あなたは〕有れ。王よ、もし、〔あなたが〕虚偽を語るなら、チェーティヤよ、より一層、〔地に〕入れ。

 

54. 彼の家には、女たちだけが生まれ、男たちは生まれない。すなわち、問いを尋ねられた者が、〔答えを〕知っているのに、他なるものとして、それを説き明かすなら。

 

55. まさに、それで、もし、〔あなたが〕真理を話すなら、王よ、すなわち、かつてのように、〔あなたは〕有れ。王よ、もし、〔あなたが〕虚偽を語るなら、チェーティヤよ、より一層、〔地に〕入れ。

 

56. 彼の子たちは、方々に立ち去り、なきものと成る。すなわち、問いを尋ねられた者が、〔答えを〕知っているのに、他なるものとして、それを説き明かすなら。

 

57. まさに、それで、もし、〔あなたが〕真理を話すなら、王よ、すなわち、かつてのように、〔あなたは〕有れ。王よ、もし、〔あなたが〕虚偽を語るなら、チェーティヤよ、より一層、〔地に〕入れ」〔と〕。

 

58. 〔世尊は言った〕「その王は、かつては空中を歩むも、聖賢に呪詛され(尋問され)、〔偽りを〕思い考えては、地に入った──〔虚偽の〕時機に至り得ては、下劣なる者となり。

 

59. まさに、それゆえに、欲〔の思い〕の到来を、賢者たちは賞賛しない。汚れなき心の者となり、真理を伴った言葉を語るべきである」〔と〕。ということで──

 

 チェーティヤ・ジャータカが、第六となる。

 

8. 1. 7. インドリヤ・ジャータカ(機能・本生物語423)

 

60. 〔菩薩は言った〕「ナーラダよ、彼が、欲望〔の対象〕(愛欲の対象・異性)によって、諸々の〔感官の〕機能()の支配に赴くなら、彼は、〔天と人の〕二つの世を遍捨して、まさしく、生きながら、干上がる。

 

61. 安楽の直後に苦痛があり、苦痛の直後に安楽がある。〔まさに〕その〔あなた〕は〔世に〕存している──安楽ののちに苦痛に至り得た者として。希求せよ──優れた安楽を。

 

62. 彼が、苦難を過ぎ行かず、苦難の時に苦難に耐える者としてあるなら、彼は、慧者であり、苦難の終極たる安楽に、〔心の〕制止(瑜伽)に、正しく到達する。

 

63. まさしく、まさに、諸々の欲望〔の対象〕への欲望ゆえに、〔作り為した瞑想の境地を放却してはなら〕ない。義(利益)なきものゆえに、〔作り為した瞑想の境地を放却してはなら〕ない。義(利益)あるものを契機としても、〔作り為した瞑想の境地を放却してはなら〕ない。そして、作り為した〔瞑想の境地〕を放却して、法(真理)から死滅するのは、〔あなたにとって〕ふさわしからず」〔と〕。

 

64. 〔ナーラダに、兄のデーヴィラが言った〕「善きかな──家長が、〔道理を〕見ながら、そして、食料を分け与えているのは──諸々の義(利益)の利得あるとき、謙遜あるのは──義(利益)の衰滅あるも、不幸なきは」〔と〕。

 

65. 〔世尊は言った〕「これだけのものであれ、この賢き〔言葉〕を、さてまた、彼は、デーヴィラは説いたのだった。すなわち、諸々の〔感官の〕機能の支配に行き着くなら、これよりも、より悪しきものは、何であれ、〔存在し〕ない」〔と〕。

 

66. 〔婆羅門が言った〕「シヴィ〔王〕よ、朋友ならざる者(敵)たちの手中にあるかのような〔境遇〕に、わたしのような者は至り得る──仕事を、さらに、学知を、技術を、婚姻を、戒への帰順を、そして、これらの福徳を失って。諸々の自らの行為〔の報い〕によって、〔悪しき報いが〕発現したのだ。

 

67. 〔まさに〕その、わたしは、千〔金〕を失った者のように、眷属なく、寄る辺なく、聖なる法(教え)から立ち去った者として、あたかも、亡者のように、まさしく、そのように、わたしはある。

 

68. 安楽を欲する者たちを苦しめて、この境処を惹起した者として、〔わたしは〕存している。〔まさに〕その〔わたし〕は、火とともに立つ者のように、安楽に到達しない」〔と〕。ということで──

 

 インドリヤ・ジャータカが、第七となる。

 

8. 1. 8. アーディッタ・ジャータカ(燃えているもの・本生物語424)

 

69. 〔独覚が言った〕「家が燃えているとき、すなわち、〔家から〕器を運び出すなら、その〔器〕は、彼にとって、義(利益)のために成る。しかしながら、そこにおいて、その〔器〕が焼かれるなら、さにあらず。

 

70. このように、老によって、そして、死によって、燃やされているのが、世であるなら、布施によって、まさしく、〔財を〕運び出すべきである。施されたものは、善く運び出されたものと成る。

 

71. すなわち、人が、法(正義)によって得た〔財〕の、奮起と精進によって到達した〔財〕の、布施を施すなら、その人は、〔死してのち〕夜魔(閻魔)〔の領域〕のヴェータラニー〔川〕を超え行って、諸々の天なる境位へと近しく赴く。

 

72. そして、布施を、さらに、戦いを、〔両者を〕同等のものと、〔賢者たちは〕言う。正しくある者たちは、たとえ、少なくあるも、多くの者たちに勝利する。たとえ、もし、少なくあるも、信を置きつつ施すなら、まさしく、それによって、彼は、他所(他の世)において、安楽の者と成る。

 

73. 〔正しく〕弁別して〔施す〕布施は、善き至達者たる方(ブッダ)の賞賛するところとなる。彼らが、ここに、生あるものの世において、施与されるべき者たちであるなら、これらの者たちにおいて、施されたものは、諸々の大いなる果となる──あたかも、善き田畑に蒔かれた諸々の種のように。

 

74. 彼が、命ある生類たちを傷つけることなく〔世を〕歩み、他者の非難あることから、悪を為さないなら(悪しき評判を恐れて悪行を控えるなら)、〔人々は〕恐怖ある者を賞賛する。そこにおいて、〔恐怖なき〕勇士を〔賞賛し〕ない。まさに、〔悪しき報いの〕恐怖あることから、正しくある者たちは、悪を為さない。

 

75. 下劣なる梵行によって、士族〔の家〕に再生する。そして、中等なる〔梵行〕によって、天〔の神〕たる〔境遇〕に〔再生する〕。最上なる〔梵行〕によって、清浄となる。

 

76. まさに、たしかに、布施は、多種に賞賛された。しかしながら、布施よりも、まさに、法(真理)の句こそは、より勝っている。なぜなら、まさしく、過去においても、まさしく、より過去においても、正しくある者たちは、智慧を有する者たちとして、まさしく、涅槃〔の境処〕に到達したからである」〔と〕。ということで──

 

 アーディッタ・ジャータカが、第八となる。

 

8. 1. 9. アッターナ・ジャータカ(状況なきもの・本生物語425)

 

77. 〔菩薩は言った〕「寂静にして蓮あるガンガー〔川〕があるなら、さらに、法螺貝の色艶ある郭公がいるなら、ジャンブ〔樹〕がターラ〔樹〕の果を与えるなら、そこで、たしかに、そのときは、〔そのように〕存するであろう。

 

78. すなわち、諸々の亀の毛の、三種類の外衣が存在し、冬の着物となるときは、そこで、たしかに、そのときは、〔そのように〕存するであろう。

 

79. すなわち、諸々の蚊の足の、見事に作られた見張塔が存在し、かつまた、堅固で、かつまた、動揺なくあるときは、そこで、たしかに、そのときは、〔そのように〕存するであろう。

 

80. すなわち、諸々の兎の角の、見事に作られた梯子が存在し、天上に登り行く義(目的)のためになるときは、そこで、たしかに、そのときは、〔そのように〕存するであろう。

 

81. すなわち、鼠たちが、梯子を登って月を喰い尽くし、かつまた、ラーフ(阿修羅の一類で日蝕や月蝕を引き起こすとされる)を壊滅させるときは、そこで、たしかに、そのときは、〔そのように〕存するであろう。

 

82. すなわち、群れ飛ぶ蝿たちが、酒の瓶を飲み干して、炭火のうえで住居を営むときは、そこで、たしかに、そのときは、〔そのように〕存するであろう。

 

83. すなわち、ビンバ〔の果の朱色〕の唇を成就した、美男子の驢馬が存在し、舞踏と歌詠に巧みであるときは、そこで、たしかに、そのときは、〔そのように〕存するであろう。

 

84. すなわち、烏たちが、さらに、梟たちが、静所に赴き話し合い、互いに他を熱望するときは、そこで、たしかに、そのときは、〔そのように〕存するであろう。

 

85. すなわち、諸々の蓮根の葉の、より強固な傘が存在し、雨の防御のためになるときは、そこで、たしかに、そのときは、〔そのように〕存するであろう。

 

86. すなわち、雛鳥が、ガンダマーダナ山を嘴で取って去り行くときは、そこで、たしかに、そのときは、〔そのように〕存するであろう。

 

87. すなわち、海行く舟を、機具と共に、綱と共に、下僕が取って去り行くときは、そこで、たしかに、そのときは、〔そのように〕存するであろう」〔と〕。ということで──

 

 アッターナ・ジャータカが、第九となる。

 

8. 1. 10. ディーピ・ジャータカ(豹・本生物語426)

 

88. 〔羊が言った〕「息災ですか。順調ですか。おじよ、どうですか、あなたに安楽がありますか。母は言いました。『あなたに、安楽〔有れ〕』〔と〕。わたしたちは、まさしく、あなたの安楽を欲する者たちです」〔と〕。

 

89. 〔豹が言った〕「羊よ、わたしの尾のあるところに入り込んで、〔わたしを〕悩ましておきながら、〔まさに〕その〔おまえ〕が、今日、『おじさん』という言葉でもって、はてさて、解き放たれるとでも思っているのかい」〔と〕。

 

90. 〔羊が言った〕「〔あなたは〕存しています──顔を前に坐っている者として。わたしは、あなたの顔のあるところにやってきたのです。後ろから、あなたの尾のあるところへと、まさに、わたしが、どのように、入り込んだというのでしょう」〔と〕。

 

91. 〔豹が言った〕「およそ、四つの洲にあるかぎり、海洋を含め、山を含め、そのかぎりに、わたしの尾は〔行き及ぶ〕。まさに、おまえは、どのように、〔わたしの尾を〕避けたのだ」〔と〕。

 

92. 〔羊が言った〕「まさしく、過去において、母が、さらに、父が、兄弟たちが、わたしに、この〔言葉〕を告げ知らせた。『〔心が〕汚れた者には、長い尾がある』〔と〕。〔まさに〕その〔わたし〕は存している──宙からやってきた者として」〔と〕。

 

93. 〔豹が言った〕「羊よ、そして、空中において、おまえが至り来るのを見て、獣たちの群れは、逃げてしまった。わたしの食物は、おまえによって失われたのだ」〔と〕。

 

94. 〔世尊は言った〕「かくのごとく、このように、豹は、悲嘆している羊の喉を蹂躙した。〔心が〕汚れた者にたいし、見事に語られた〔言葉〕は存在しない(何を言っても無駄である)。

 

95. 〔心が〕汚れた者にたいし、〔導く〕方法は、まさしく、存在せず、法(正義)もなく、見事に語られた〔言葉〕もない。〔心が〕汚れた者にたいし、勤勉に専念するも、しかしながら、彼は、正しくある者たちによって〔見事に語られた言葉を〕喜ばない」〔と〕。ということで──

 

 ディーピ・ジャータカが、第十となる。

 

 八なるものの集まりは〔以上で〕終了となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「完全なる清浄の濁りなき衣を保持する者(カッチャーニ)があり、『鶴の王の』(八音)と腕飾(スラサー)と優れた棒(スマンガラ)があり、そこで、炭火(ガンガマーラ)とチェーティヤとデーヴィラ(機能)とともに、そこで、燃えているものとガンガー(状況なきもの)があり、羊(豹)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

9. 九なるものの集まり

 

9. 1. 鷲の章

 

9. 1. 1. ギッジャ・ジャータカ(鷲・本生物語427)

 

1. 〔世尊は言った〕「『遍く杭ある道』という名の、昔ながらの鷲の道がある。そこに、鷲が存し、老いた母と父を養っていた。彼らのために、脂肪のついた大蛇を数多くもってきた。

 

2. そして、高く飛び上がることを知っている者として、父は、子に言った──見事な翼があり、強さを成就し、威光があり、遠くに赴く〔わが子〕に。

 

3. 〔父が言った〕『息子よ、そのとき、地が揺らめくのを識知しなさい──海洋に取り囲まれ、車輪のように完円となるのを。息子よ、そののち、戻りなさい。まさに、これより彼方に赴いてはならない』〔と〕。

 

4. 力と翼ある最上の鳥は、勢いよく飛び上がった者として存した。鳥は、諸々の山を、さらに、諸々の林を、眺めながら──

 

5. 鷲は、地を見た──父から聞き、教えられたとおりに、海洋に取り囲まれ、車輪のように完円となるのを。

 

6. しかしながら、彼は、それを超え行って、まさしく、彼方へと、過ぎ行った。そして、鋭利な強風は、彼を、力ある鳥を、運び去った。

 

7. 人は、〔限度を〕超え行ったなら、まさしく、ふたたび、戻ることはできない。鳥は、災厄を惹起した。諸々の季節の風の支配に赴いたのだ。

 

8. 彼の、そして、子たちは、さらに、妻たちも、さらに、すなわち、他の従僕たちも、全ての者たちが、災厄を惹起した──鳥が、〔父の〕教諭を為さないとき。

 

9. このように、また、すなわち、ここに、年長者たちの言葉を覚らず、境界を超えて歩む倨傲なる者は、鷲のように教えを過ぎ行く者は、彼は、まさに、災厄に至り得る──年長者たちの教えを為さずして」〔と〕。ということで──

 

 ギッジャ・ジャータカが、第一となる。

 

9. 1. 2. コーサンビヤ・ジャータカ(コーサンビーの者・本生物語428)

 

10. 〔世尊は言った〕「沢山の声あるのが、一般の人である。誰もが、〔自らについて〕『愚者ならず』〔と〕思い考えた。僧団が分裂しつつあるとき、より一層、他に思い考えなかった(自らの非を認めなかった)。

 

11. 錯乱した者たちが、〔たとえ〕賢者の語りあるも、言葉を境涯とする話し手たちであるなら、〔彼らが〕口を開くことを求める、そのかぎりは、それによって〔世の人々が〕導かれたとして、知者は、それを〔認め〕ない。

 

12. 『〔彼は〕わたしを罵った。〔彼は〕わたしを打った。〔彼は〕わたしに勝った。〔彼は〕わたしから奪った』〔と〕、そして、彼らが、彼を怨むなら、彼らの怨みは静まることがない。

 

13. 『〔彼は〕わたしを罵った。〔彼は〕わたしを打った。〔彼は〕わたしに勝った。〔彼は〕わたしから奪った』〔と〕、そして、彼らが、彼を怨まないなら、彼らの怨みは止み静まる。

 

14. まさに、〔怨みにたいし〕怨みをもって〔為すなら〕、諸々の怨みは、この〔世において〕、いついかなる時も、静まることがない。しかしながら、〔怨みにたいし〕怨みなきをもって〔為すなら〕、〔諸々の怨みは〕静まる──これは、永遠の法(真理)である。

 

15. しかしながら、他者たちは、〔わたしたちが滅び行く存在であることを〕識知しない。わたしたちは、ここにおいて、〔自らが滅び行く存在であることを識知して、自らを〕制するのだ。そして、彼らが、そこにおいて、〔自らが滅び行く存在であることを〕識知するなら、そののち、諸々の確執は静まる。

 

16. 骨を断ち命を奪う者たちがいる。牛や馬や財を奪う者たちがいる。国土を奪い取っている、彼らにもまた、交友は有る。何ゆえに、あなたたちには存在しないのか。

 

17. それで、もし、賢明なる道友を得るなら、共に歩む善き住者たる慧者を〔得るなら〕、一切の危難を征服して、わが意を得た者となり、気づきある者として、彼とともに、歩むがよい。

 

18. もし、賢明なる道友を得ないなら、共に歩む善き住者たる慧者を〔得ないなら〕、征圧した国土を捨棄して〔出家する〕王のように、林のなかのマータンガ象のように、独り、歩むがよい。

 

19. 独りある者の歩みのほうが、より勝っている。愚者のうちに、道友たること(真の友情)は存在しない。諸々の悪しきことを為さず、〔俗事に〕思い入れ少なく、林のなかのマータンガ象のように、独り、歩むがよい」〔と〕。ということで──

 

 コーサンビヤ・ジャータカが、第二となる。

 

9. 1. 3. マハースヴァ・ジャータカ(大なる鸚鵡・本生物語429)

 

20. 〔帝釈天が尋ねた〕「すなわち、果を具有したものとして、木が有るとき、鳥たちは、飛び回りながら、その〔木の果〕を食べるが、果〔の時機〕を過ぎるときは、〔その〕木のことを、『〔果が〕尽きたのだ』と知って、鳥たちは、そののち、方々に去り行く。

 

21. 赤き嘴をした者よ、遊行〔の道〕を歩め。死んではならない。鸚鵡(おうむ)よ、どうして、おまえは、枯れた木のうえで思い惑うのだ。春〔の彩り〕に似た者よ、さあ、それを、わたしに説きたまえ。鸚鵡よ、何ゆえに、枯れた木を遠ざけないのだ」〔と〕。

 

22. 〔菩薩は答えた〕「鵞鳥(ハンサ・神が乗る鳥)よ、命〔の時機〕を過ぎるとき、諸々の苦と楽があるとき、それらの者たちが、まさに、友人たちのなかの友人たちとして〔世に〕有るなら、『尽きた』『尽きない』ということで、その〔友人〕を捨棄しません──正しくある者たちとして、正しくある者たちの法(教え)を〔常に〕随念しながら。

 

23. 鵞鳥よ、〔まさに〕その、わたしは、正しくある者たちのなかの一員として〔世に〕存しています。木は、わたしにとって、かつまた、親族でもあり、かつまた、友人でもあります。生命を義(目的)として、彼を捨棄することはできません。『〔果が〕尽きたのだ』と知って〔そののち、彼を捨棄するなら〕、まさに、これは、法(真理)にあらず」〔と〕。

 

24. 〔帝釈天が言った〕「善きかな、友誼が、友情が、交友が、親愛が、作り為され、〔世に〕有るのは。それで、もし、この法(真理)を、〔あなたが〕喜ぶなら、〔あなたは〕存している──識知している者たちにとって、賞賛されるべき者として。

 

25. 鸚鵡よ、翼を乗物とする者よ、鳥よ、〔まさに〕その〔わたし〕は、あなたに、願い事を与えよう。鳥よ、願い事を願うのだ。それが何であれ、〔あなたが〕意に求めるなら」〔と〕。

 

26. 〔菩薩は言った〕「鵞鳥よ、さてまた、貴君が、わたしに、願い事を与えてくれるなら、では、この木は、ふたたび寿命を得るがよい。彼は、枝をもち、果をもち、立派に成長し、蜜がしたたり、美しく輝きながら、安立せよ」〔と〕。

 

27. 〔帝釈天が言った〕「友よ、見よ──高大にして果をもつ彼を。ウドゥンバラ〔樹〕と、まさしく、共に、あなたに、〔幸せ〕有れ。彼は、枝をもち、果をもち、立派に成長し、蜜がしたたり、美しく輝きながら、安立せよ」〔と〕。

 

28. 〔菩薩は言った〕「帝釈〔天〕よ、このように、全ての親族たちと共に、安楽の者と成れ。すなわち、わたしが、今日、果を有する木を見て、安楽の者としてあるように」〔と〕。

 

29. 〔帝釈天が言った〕「そして、鸚鵡に、願い事を与えて、木を、果を有するものと為して〔そののち〕、妻と共に、〔わたしは〕立ち去る──天〔の神々〕たちのナンダナ林へと」〔と〕。ということで──

 

 マハースヴァ・ジャータカが、第三となる。

 

9. 1. 4. チューラスヴァ・ジャータカ(小なる鸚鵡・本生物語430)

 

30. 〔帝釈天が尋ねた〕「緑の葉ある木々が、無数の果ある木々が、多く存在するのに、いったい、何ゆえに、枯れて干涸びた〔木〕に、鸚鵡の意は喜びあるのか」〔と〕。

 

31. 〔菩薩は答えた〕「〔わたしたちは〕多くの幾年月のあいだ、その〔木〕の果を受益してきました。たとえ、果なきと知っても、まさしく、その友情は、すなわち、かつてのように、〔変わりなくあるのです〕」〔と〕。

 

32. 〔帝釈天が尋ねた〕「さてまた、枯れて干涸びた木を、葉が落ち果なき木を、鳥たちは、捨棄して去り行く。鳥よ、どうして、〔あなたは、去り行くことを〕汚点と見るのか」〔と〕。

 

33. 〔菩薩は答えた〕「彼らは、果を義(目的)として、〔木に〕等しく親近するも、『果なし』と〔知って〕、その〔木〕を捨棄します。自己を義(目的)とする智慧ある者たちであり、思慮浅き者たちであり、彼らは、偏向ある者たちとして〔世に〕有ります」〔と〕。

 

34. 〔帝釈天が言った〕「善きかな、友誼が、友情が、交友が、親愛が、作り為され、〔世に〕有るのは。それで、もし、この法(真理)を、〔あなたが〕喜ぶなら、〔あなたは〕存している──識知している者たちにとって、賞賛されるべき者として。

 

35. 鸚鵡よ、翼を乗物とする者よ、鳥よ、〔まさに〕その〔わたし〕は、あなたに、願い事を与えよう。鳥よ、願い事を願うのだ。それが何であれ、〔あなたが〕意に求めるなら」〔と〕。

 

36. 〔菩薩は言った〕「さてまた、まさに、葉を有し、果を有する、その木を、〔ふたたび〕見るなら、財宝を得て〔喜ぶ〕貧者のように、わたしは、繰り返し喜ぶでしょう」〔と〕。

 

37. 〔世尊は言った〕「そののち、〔帝釈天は〕不死〔の甘露〕を取って、樹木に降り注いだ。その〔木〕の枝々は、〔ふたたび〕成長した──意が喜びとする涼やかな影あるものとなり」〔と〕。

 

38. 〔菩薩は言った〕「帝釈〔天〕よ、このように、全ての親族たちと共に、安楽の者と成れ。すなわち、わたしが、今日、果を有する木を見て、安楽の者としてあるように」〔と〕。

 

39. 〔帝釈天が言った〕「そして、鸚鵡に、願い事を与えて、木を、果を有するものと為して〔そののち〕、妻と共に、〔わたしは〕立ち去る──天〔の神々〕たちのナンダナ林へと」〔と〕。ということで──

 

 チューラスヴァ・ジャータカが、第四となる。

 

9. 1. 5. ハリタチャ・ジャータカ(黄金の皮膚・本生物語431)

 

40. 〔王が尋ねた〕「大いなる梵(婆羅門)よ、わたしは、この〔言葉〕を聞きました。『ハーリタ(菩薩)は、諸々の欲望〔の対象〕を享受する(邪淫に落ちた)』〔と〕。どうでしょう、この〔言葉〕は、虚妄の言葉ですよね。どうでしょう、清浄の者として、〔あなたは〕振る舞っていますよね」〔と〕。

 

41. 〔菩薩は答えた〕「大王よ、このことは、そのとおりです。すなわち、あなたが聞いた言葉のとおりです。諸々の迷わすもののうちに耽溺する者として、邪道を行く者として、〔わたしは〕存しています」〔と〕。

 

42. 〔王が尋ねた〕「それでは、精緻にして善き思弁ある智慧は、何を義(目的)とするのですか。その〔智慧〕によって、どうして、意は、生起した貪欲を取り除かないのですか」〔と〕。

 

43. 〔菩薩は答えた〕「大王よ、世における、極めて力ある激しいものとして、これらの四つのものがあります。貪欲()であり、憤怒()であり、驕慢()であり、迷妄()です。そこにおいて、智慧は依って立つことがありません」〔と〕。

 

44. 〔王が言った〕「『阿羅漢であり、戒を成就した者であり、ハーリタは、清浄の者として〔世を〕歩む。思慮ある者であり、まさしく、そして、賢者である』〔と〕、かくのごとく、貴君は、わたしたちに敬われてきたのです」〔と〕。

 

45. 〔菩薩は言った〕「法(真理)の徳を喜ぶ思慮ある聖賢でさえも、害するのです──王よ、諸々の悪しき思考()は、諸々の貪欲を伴った浄美なるものは」〔と〕。

 

46. 〔王が言った〕「生起したこの貪欲は、肉体から生じるものであり、あなたの栄誉を汚すものです。それを捨棄したまえ。あなたに、幸せが存せ。多くの者に敬われてきた思慮ある者として、〔あなたは〕存しているのです」〔と〕。

 

47. 〔菩薩は言った〕「多くの苦しみがあり、大いなる毒があり、〔人を〕盲者に作り為す、それらの欲望〔の対象〕を、それらの根元を、〔わたしは〕探し求めるのだ。結縛を有する貪欲を、〔わたしは〕断ち切るのだ」〔と〕。

 

48. 〔世尊は言った〕「ハーリタは、真理に勤しむ聖賢は、この〔言葉〕を説いて、欲望〔の対象〕にたいする貪り〔の思い〕を離貪させて、梵の世へと近しく赴く者と成った」〔と〕。ということで──

 

 ハリタチャ・ジャータカが、第五となる。

 

9. 1. 6. パダクサラマーナヴァ・ジャータカ(足跡に巧みな智ある若者・本生物語432)

 

49. 〔女が言った〕「多聞にして様々な言説あるパータリを、ガンガー〔川〕が運び行く。運ばれ行く者よ、あなたに、幸せ〔有れ〕。わたしに、一つの詩偈を与えたまえ」〔と〕。

 

50. 〔パータリが言った〕「それによって、〔人々は〕苦しむ者に注ぐ。それによって、〔人々は〕病める者に注ぐ。〔まさに〕その〔水〕の中で、〔わたしは〕死ぬのだ。帰依あるがゆえに、恐怖は生じたのだ」〔と〕。

 

51. 〔男が言った〕「そこにおいて、諸々の種は成長する。そこにおいて、有情たちは止住している。〔まさに〕その〔地〕が、わたしの頭を圧搾する。帰依あるがゆえに、恐怖は生じたのだ」〔と〕。

 

52. 〔他の男が言った〕「それによって、諸々の食事は調理される。それによって、寒さは打破される。〔まさに〕その〔火〕が、わたしの五体を焼き尽くす。帰依あるがゆえに、恐怖は生じたのだ」〔と〕。

 

53. 〔他の男が言った〕「〔まさに〕その、食べたものによって、婆羅門や士族たちは、多々に〔身を〕保ち行く。〔まさに〕その、食べたものが、わたしに害を加える。帰依あるがゆえに、恐怖は生じたのだ」〔と〕。

 

54. 〔他の男が言った〕「〔四つの〕夏〔の月〕の最後の月に、賢者たちは風を求める。〔まさに〕その〔風〕が、わたしの五体を打ち砕く。帰依あるがゆえに、恐怖は生じたのだ」〔と〕。

 

55. 〔鳥が言った〕「〔まさに〕その、〔この〕木に、依拠した〔わたしたち〕なるも、〔まさに〕その、この〔木〕が、火を放つ。鳥たちよ、〔ここを捨てて〕方々へと親しみ行け(飛び去れ)。帰依あるがゆえに、恐怖は生じたのだ。

 

56. 〔女が言った〕「彼女を、花飾をつけ、栴檀〔の香り〕芳しき、悦意の者を、〔わたしは〕迎え入れたが、〔まさに〕その〔嫁〕が、わたしを家から追い払う。帰依あるがゆえに、恐怖は生じたのだ」〔と〕。

 

57. 〔男が言った〕「彼が生まれたので、〔わたしは〕喜んだ。かつまた、彼の生存を、〔わたしは〕求めた。〔まさに〕その〔わが子〕が、わたしを家から追い払う。帰依あるがゆえに、恐怖は生じたのだ」〔と〕。

 

58. 〔菩薩は言った〕「集いあつまった、地方の者たちよ、さらに、町の者たちよ、わたしの〔言葉を〕聞きなさい。すなわち、水ののちに、それは、燃え盛るものとなる。すなわち、平安ののちに、そののち、恐怖となる。

 

59. 王は、さらに、司祭の婆羅門は、国を奪い取る。〔あなたたちは〕自己を守る者たちとなり、〔世に〕住みなさい。帰依あるがゆえに、恐怖は生じたのだ」〔と〕。ということで──

 

 パダクサラマーナヴァ・ジャータカが、第六となる。

 

9. 1. 7. ローマサカッサパ・ジャータカ(ローマサカッサパ・本生物語433)

 

60. 〔王に、帝釈天が言った〕「王よ、〔あなたは〕インダ(インドラ神)と等しき者として、幾久しく老と死なき者として、〔世に〕存するであろう──それで、もし、あなたが、聖賢のローマサカッサパ(菩薩)に、祭祀を執行させるなら」〔と〕。

 

61. 〔大臣のセイヤに、菩薩は言った〕「海を周囲として有する〔大地〕を、海洋を耳飾とする大地を、非難と共に、〔わたしは〕求めない。セイヤよ、このように識知しなさい。

 

62. 婆羅門よ、厭わしきものとして存せ──〔まさに〕その、盛名の利得は、さらに、財産の利得は。その生活が、堕所によるものであるなら、あるいは、法(正義)ならざる性行によるものであるなら──

 

63. たとえ、もし、鉢を取って、家なき者となり、遍歴遊行するとして、この生き方こそは、より勝っている──そして、すなわち、法(正義)ならざるものによる〔利得の〕探し求めであるなら、〔それよりも〕。

 

64. たとえ、もし、鉢を取って、家なき者となり、遍歴遊行するとして、世において、他を害さずにいるなら、それは、王権よりもまた、優れている」〔と〕。

 

65. 〔人々が言った〕「月は、力なり。日は、力なり。沙門や婆羅門たちは、力なり。海にとって、潮時は、力なり。婦女たちは、力を超えた力なり。

 

66. すなわち、激しい苦行者として〔世に〕存している聖賢のローマサカッサパ(菩薩)に、〔王女の〕チャンダヴァティーが、父のために義(目的)ある者となり、ヴァージャペイヤ〔祭〕を執行させたように」〔と〕。

 

67. 〔菩薩は言った〕「その行為は、貪り〔の思い〕(愛欲)が作り為したもの、辛辣にして、欲望〔の対象〕(愛欲の対象・異性)を因とするもの。その〔欲望〕の根元を、〔わたしは〕探し求めるのだ。結縛を有する貪欲を、〔わたしは〕断ち切るのだ。

 

68. 厭わしきものとして存せ──世において、さても極めて多くある、諸々の欲望〔の対象〕は。王よ、苦行こそは、〔五つの〕欲望の属性(妙欲:色・声・香・味・触)よりも、より勝っている。諸々の欲望〔の対象〕を捨棄して、〔わたしは〕苦行を為すのだ。国土は、さらに、チャンダヴァティーは、まさしく、あなたのものとして有れ」〔と〕。ということで──

 

 ローマサカッサパ・ジャータカが、第七となる。

 

9. 1. 8. チャッカヴァーカ・ジャータカ(鴛鴦・本生物語434)

 

69. 〔烏が尋ねた〕「〔夫と妻の〕二者それぞれに〔仲良く〕喜びながら〔世を〕歩む、黄褐色の衣をまとう鳥たちに、〔わたしは〕説きます。鳥たちよ、人間たちにおいて、〔人々は〕どのような鳥の類を賞賛するのですか。さあ、それを説いてください」〔と〕。

 

70. 〔菩薩は答えた〕「人間を害する者よ、人間たちにおいて、〔人々は〕わたしたちのことを互恵の鴛鴦(おしどり)たちと説きます。わたしたちは、鳥たちにおける美しき有り様の者たちとして敬われ、形姿麗しく、川を渡り行きます」〔と〕。

 

71. 〔烏が尋ねた〕「どうでしょう、川のなかで、どのような諸々の果を食べるのですか。鴛鴦たちよ、どこから〔入手して〕、肉を喰らうのですか。至上なる者たちよ、あなたたちは、どのような食料を食べるのですか。少なからざる形姿ある者たちよ、かつまた、活力もあり、かつまた、色艶もある、〔あなたたちです〕」〔と〕。

 

72. 〔菩薩は答えた〕「烏よ、川のなかに、諸々の果は存在しません。鴛鴦が、どうして、肉を喰らうというのでしょう。命あるものを食料とせず、藻を食物とする者たちとして、〔わたしたちは〕存しています。たとえ、食を因としても、〔わたしたちが〕悪を為すことはありません」〔と〕。

 

73. 〔烏が言った〕「鴛鴦よ、これは、わたしにとって好ましからず。『この生存において、似た食の者である』〔という思いが〕、過去に、わたしに有ったが、そののち、他なるものと〔成った〕。まさしく、かくのごとく、ここにおいて、わたしに、疑問が生まれたのだ。

 

74. たとえ、わたしが、諸々の肉や諸々の果を食べ、さらに、他の、諸々の塩気や油気のあるものを〔食べ〕、人間たちにおいて食べるべき味を得るも──勇士が、主戦場を征圧して〔戦利品を得る〕ように──しかしながら、わたしに、そのような色艶はない。鴛鴦よ、すなわち、おまえのようには」〔と〕。

 

75. 〔菩薩は言った〕「清浄ならざるものを食物とする者として、瞬時のものに耽る者として、〔あなたは〕存しています。食べ物と飲み物は、苦難とともに、あなたに得られます。烏よ、〔あなたは〕諸々の木の果では満足しません──あるいは、墓場の中に、それらの肉があるとして。

 

76. 烏よ、すなわち、瞬時のものに耽る者が、無理強いで到達して、諸々の財物を遍く受益するとして、そののち、自ずからの状態(自性)が、彼を非難し(非難するべき者が非難する)、非難された〔彼〕は、色艶と活力を捨棄します。

 

77. すなわち、たとえ、もし、少なくても、寂滅のものを、無理強いではなく、他を害障することなく、食べるなら、かつまた、活力も、かつまた、色艶も、それは、彼に有ります。なぜなら、色艶は、全てが食によって作られるのではないからです」〔と〕。ということで──

 

 チャッカヴァーカ・ジャータカが、第八となる。

 

9. 1. 9. ハリッディラーガ・ジャータカ(移ろい易き者・本生物語435)

 

78. 〔若者に、女が言った〕「林地や辺境の臥坐所においては忍受し易く、しかしながら、すなわち、村において忍受するなら、それらの者たちは、あなたよりも、より秀でています」〔と〕。

 

79. 〔菩薩に、若者が尋ねた〕「林から村にやってきて、わたしは、どのような戒ある者に、どのような掟ある者に、父よ、〔どのような〕人に仕え親しむべきですか。〔問いを〕尋ねられた者として、それを、わたしに告げ知らせてください」〔と〕。

 

80. 〔菩薩は答えた〕「息子よ、彼が、おまえを信頼し、かつまた、おまえの信頼に〔身を〕許すなら、そして、従順にして、かつまた、忍受あるなら、ここから去り、彼に親近せよ。

 

81. 彼に、身体によって、言葉によって、意によって、悪行が存在しないなら、〔親の〕胸に止住して〔子が育つ〕ように、ここから去り、彼に親近せよ。

 

82. そして、彼が、法(正義)〔の道〕によって歩み、歩みつつもまた、〔そのことを〕思い考えないなら、清浄の為し手であり、智慧を有する者であり、ここから去り、彼に親近せよ。

 

83. 移ろい易く、猿の心の、貪欲しては離貪する人に、息子よ、そのような者に仕え親しんではならない──たとえ、もし、〔しかるべき〕人間のいない〔状態〕が存するとしても。

 

84. 怒り狂った毒蛇を〔避ける〕ように、糞まみれの大道を、乗物で行く者が〔回避する〕ように、不正の道を、遠く離れて、遍く避けよ。

 

85. 息子よ、愚者に近しく仕え親しんでいる者には、諸々の義(利益)なきことが増大する。一切時に、まさしく、朋友ならざる者と、愚者と、まさに、集いあつまってはならない。

 

86. 息子よ、わたしは、おまえに、それを乞い求める。わたしの言葉を為すのだ。愚者と、まさに、集いあつまってはならない。愚者たちとの交際は、苦痛である」〔と〕。ということで──

 

 ハリッディラーガ・ジャータカが、第九となる。

 

9. 1. 10. サムッガ・ジャータカ(箱・本生物語436)

 

87. 〔菩薩は言った〕「諸君よ、三者の人たちよ、いったい、どこから、やってきたのですか。善く来てくれました。さあ、坐に坐ってください。諸君よ、どうでしょう、ここにおいて、健やかに、悩みなくありますか。まさに、長きのはての、あなたたちの、ここへの到来なのですよ」〔と〕。

 

88. 〔ダーナヴァが尋ねた〕「まさしく、わたしは、独り、ここに、今日、至り得たのです。さらに、また、わたしには、誰であれ、第二者は見出されません。聖賢よ、まさしく、何を含み持って、あなたによって語られたのですか。『諸君よ、三者の人たちよ、いったい、どこから、やってきたのですか』」〔と〕。

 

89. 〔菩薩は答えた〕「さてまた、あなたは、独りですが、しかしながら、箱に入れて〔腹の〕中に隠している、あなたの愛しい妻がいます。彼女は、まさしく、〔あなたの〕腹〔の中〕に至り、常に、あなたに守られています。ヴァーユ(風神)の子を相手に、そのなかでお喜びです」〔と〕。

 

90. 〔世尊は言った〕「聖賢に説き明かされ、畏怖する様子の、〔まさに〕その、ダーナヴァは、その場に箱を吐き出した。〔彼は〕妻を見た──清らかで、花飾を〔身に〕付け、ヴァーユ(風神)の子を相手に、そのなかで喜び楽しんでいる〔妻〕を」〔と〕。

 

91. 〔ダーナヴァが言った〕「激しい苦行に従い転じ行く者によって、見事に見られた形です。下劣なるは、すなわち、女人の支配に赴いた人たちです。すなわち、まさに、ここにおいて、命のように守ってきた〔妻〕が、汚れある者となり、わたし〔の腹〕のなかで、他の者と歓喜したとおりに。

 

92. 苦行者〔の奉仕〕によって、火が、林のなかに住するように、そして、昼に、さらに、夜に、わたしによって奉仕されてきた〔妻〕ですが、彼女は、法(正義)を外れて、法(正義)ならざる〔道〕を歩みました。女人たちとの親愛は、為すに形なきものです。

 

93. 〔自身の〕肉体の中に止住している〔妻〕のことを、わたしは軽んじていました──『この〔女〕は、わたしのものだ』と、念慮なく自制なき者のことを。彼女は、法(正義)を外れて、法(正義)ならざる〔道〕を歩みました。女たちとの親愛は、為すに形なきものです。

 

94. 『わたしによって、善く守られている』と、いったい、どうして、信頼できるというのでしょう。まさに、無数の心ある〔女〕たちに、守ることは存在しません。なぜなら、これらの者たちは、断崖や深淵に似た者たちであり、怠る者は、ここにおいて、災厄に遭遇するからです。

 

95. 彼らが、女性たちから出離し、〔世を〕歩むなら、まさに、それゆえに、彼らは、安楽の者たちとなり、憂いを離れた者たちとなります。この最上の吉祥を望み求めている者は、女性たちと親愛を為すべきではありません」〔と〕。ということで──

 

 サムッガ・ジャータカが、第十となる。

 

9. 1. 11. プーティマンサ・ジャータカ(プーティマンサ・本生物語437)

 

96. 〔雌野狐のヴェーニーに、雌羊のメンダマーターが言った〕「友よ、まさに、わたしにとって好ましからず。プーティマンサ(野狐)が見ているからです。このような友人からは、遠く離れて、遍く避けるものです」〔と〕。

 

97. 〔雌野狐のヴェーニーに、夫のプーティマンサが言った〕「亭主に、友人のことを褒め称える、このヴェーニーは、狂っている。〔せっかく〕やってきたメンダマーターが帰って行くのに困惑したのかい」〔と〕。

 

98. 〔雌野狐のヴェーニーが言った〕「愛しい方よ、あなたは、まさに、狂者として、思慮浅き者として、明眼ならざる者として、〔世に〕存しています。すなわち、あなたは、死んだふりをしておきながら、〔まだその〕時ではないのに〔獲物を〕見てしまったのです」〔と〕。

 

99. 〔世尊は言った〕「〔正しい〕時ならざるに見るべきにあらず。賢者は、〔正しい〕時に見るべきである。彼が、〔正しい〕時ならざるに見るなら、プーティマンサが困惑したようなもの」〔と〕。

 

100. 〔雌羊のメンダマーターに、雌野狐のヴェーニーが言った〕「友よ、まさに、わたしに、愛しく有れ。わたしに、盛り沢山の贈り物を与えてください。わたしの亭主は、生きています。〔あなたは〕愛すべき〔問いの〕尋ね手となり、〔彼のもとに〕行くのです」〔と〕。

 

101. 〔雌羊のメンダマーターが言った〕「友よ、まさに、あなたに、愛しく有れ。あなたに、盛り沢山の贈り物を与えましょう。大勢の取り巻きとともに、〔彼のもとに〕行きましょう。〔あなたは〕食事を作ってくださいね」〔と〕。

 

102. 〔雌野狐のヴェーニーが言った〕「あなたには、どのような取り巻きがいるのですか。彼らのために、〔わたしが〕食事を作るとして。さてまた、彼らの全てが、どのような名の者たちであるのか、〔問いを〕尋ねられた者として、それを、わたしに告げ知らせてください」〔と〕。

 

103. 〔雌羊のメンダマーターが言った〕「マーリヤであり、そして、チャトゥラッカであり、ピンギヤであり、さらに、ジャンブカです。わたしには、このような取り巻きがいます。彼らのために、〔あなたは〕食事を作ってくださいね」〔と〕。

 

104. 〔雌野狐のヴェーニーが言った〕「〔あなたが、取り巻きを連れて〕家から出たなら、〔わが家の〕物品もまた、消えて無くなります。〔あなたの〕友たちに、無病〔息災〕を申します。まさしく、ここに、〔このまま〕住してください。〔どこにも〕赴いてはいけません」〔と〕。ということで──

 

 プーティマンサ・ジャータカが、第十一となる。

 

9. 1. 12. ダッダラ・ジャータカ(雉・本生物語438)

 

105. 〔子を殺された雌蜥蜴に、天神が言った〕「彼は、食事を与えられたのに、あなたの汚れなき子供たちを喰ってしまった。彼に、牙を下せ。生きているかぎり、あなたから解き放ってはならない」〔と〕。

 

106. 〔天神に、雌蜥蜴が言った〕「残酷で残忍な〔この〕男は、乳児の衣のように、〔汚物に〕まみれています。すなわち、牙を下すところを、その場所を、〔わたしは〕見ません。

 

107. 常に隙を見る、恩知らずの男に、もし、地の全てを与えるとして、彼を満悦させることは、まさしく、ありません」〔と〕。

 

108. 〔蜥蜴の子を殺し、牛を殺し、雉を殺した男を連れてきた虎に、獅子が尋ねた〕「スバーフよ、いったい、どうして、急ぎの様子なのだ。〔その〕若者と共に戻り来た者として、〔おまえは〕存している。ここに、何が、為すべき義(目的)として、おまえに存するのだ。〔問いを〕尋ねられた者として、この義(意味)を、わたしに告げ知らせよ」〔と〕。

 

109. 〔虎が答えた〕「すなわち、あなたの友人である、形姿善き雉ですが、彼の屠殺を、今日、〔わたしは〕危惧します。〔この〕男の諸々の仕業を聞いて、今日、わたしは、雉が安楽であると思えないのです」〔と〕。

 

110. 〔獅子が尋ねた〕「〔日々の〕生活の成り行くところとして、その男には、どのような行為の場が存するのだ。あるいは、男が何を明言するのを聞いて、〔その〕若者による雉〔の屠殺〕を、〔おまえは〕危惧するのだ」〔と〕。

 

111. 〔虎が答えた〕「カリンガ〔国〕を歩み、諸々の商売を行ない、杖〔の道〕を歩む者となり、杭の道をもまた歩み、芸人たちと諸々の網と共に歩み、祭礼の中では、棒で戦うことさえもしてきたのです。

 

112. 小鳥たちを捕縛し、升で量り、諸々の博打に勝ち、自制を去り行き、真夜中に血だらけとなり、〔行乞の〕食の納受によって、〔両の〕手が焼かれたのです。

 

113. 〔日々の〕生活の成り行くところとして、その男には、それらの行為の場が存します。すなわち、この毛の塊が見らるとおりです。牛たちも殺されたとして、また、どうなのでしょう、雉のばあいは」〔と〕。ということで──

 

 ダッダラ・ジャータカが、第十二となる。

 

 九なるものの集まりは〔以上で〕終了となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「優れた鷲と一般の人(コーサンビーの者)と優れた鵞鳥(大なる鸚鵡)があり、財宝という呼び名を有するもの(小なる鸚鵡)とハーリタ(黄金の皮膚)とパータリカ(足跡に巧みな智ある若者)があり、老と死なき者(ローマサカッサパ)と烏(鴛鴦)と忍受(移ろい易き者)と『どこから』(箱)があり、そこで、『見ている』(プーティマンサ)と雉とともに、〔それらの〕十二がある」と。

 

10. 十なるものの集まり

 

10. 1. 四つの門の章

 

10. 1. 1. チャトゥドヴァーラ・ジャータカ(四つの門・本生物語439)

 

1. 〔ミッタヴィンダが尋ねた〕「四つの門があり、鉄製の堅固なる城壁がある、この城に、閉じ込められ包囲された者として、〔わたしは〕存しています。どのような悪しき〔行為〕が、わたしによって為されたのですか。

 

2. 全ての門は締められ、鳥のように閉じ込められた者として、〔わたしは〕存しています。夜叉よ、何を事因として、わたしは、〔剃刀の〕輪に押し潰されているのですか」〔と〕。

 

3. 〔菩薩は答えた〕「二百万を超える〔金〕を得て〔そののち〕、友よ、〔あなたは〕慈しみ〔の思い〕ある親族たちの言葉を為さなかった。

 

4. 〔あなたは〕跳入した──荒れる海へと、繁栄少なき海洋へと。〔あなたは〕到達した──四より八へと、そして、また、八より十六へと──

 

5. さらに、十六より三十二へと、求め過ぎながら、〔剃刀の〕輪に近寄る者となり。人が、〔欲の〕求めに打ちのめされたなら、〔剃刀の〕輪が、頭上に迷走する。

 

6. よりさらに広くなり、満ち難く、拡散に至るのが、〔欲の〕求めである。そして、彼らが、それを貪り求めるなら、彼らは、〔剃刀の〕輪を保持する者たちと成る。

 

7. 多くの物品を損失して、道を注視せずして、そして、彼らが、このことを究明せずにいるなら、彼らは、〔剃刀の〕輪を保持する者たちと成る。

 

8. 〔自己の〕行為を正視し、そして、広大なる財物を〔正視し〕、義(利益)なきものを伴った〔欲の〕求めに慣れ親しまず、慈しみ〔の思い〕ある者たちの言葉を為すなら、彼を、そのような者を、〔剃刀の〕輪が超え行くことはない」〔と〕。

 

9. 〔ミッタヴィンダが尋ねた〕「夜叉よ、いったい、どれだけの長きにわたり、〔剃刀の〕輪は、わたしの頭のうえに止住するのですか。何千年のあいだなのですか。〔問いを〕尋ねられた者として、それを、わたしに告げ知らせてください」〔と〕。

 

10. 〔菩薩は答えた〕「桁外れなのだ。桁違いなのだ。ミッタヴィンダよ、わたしの〔言葉を〕聞け。〔剃刀の〕輪は、おまえの頭のうえで回りつづけるのだ。おまえは、生きているかぎり、解き放たれないであろう」〔と〕。ということで──

 

 チャトゥドヴァーラ・ジャータカが、第一となる。

 

10. 1. 2. カンハ・ジャータカ(黒き者・本生物語440)

 

11. 〔帝釈天が言った〕「黒き者は、まさに、この男なり。黒き食を食べ、黒き地の場にいる。わたしの意は、愛しからず」〔と〕。

 

12. 〔菩薩は言った〕「皮膚によって、黒き者と成るのではありません。なぜなら、内に真髄あるのが、〔真の〕婆羅門であるからです。彼において、諸々の悪しき行為(悪業)があるなら、スジャーの亭主(帝釈天)よ、彼は、まさに、黒き者です」〔と〕。

 

13. 〔帝釈天が言った〕「このことが、あなたによって、見事に談じられ、適切に、見事に語られたからには、婆羅門よ、あなたに、願い事を与えよう。それが何であれ、〔あなたが〕意に求めるなら」〔と〕。

 

14. 〔菩薩は言った〕「帝釈〔天〕よ、一切の生類たちのイッサラ(イーシュヴァラ神・自在神)よ、もし、願い事を、〔あなたが〕わたしに与えてくれたのなら、極めて忿激なくあることを、極めて憤怒なくあることを、貪欲なくあることを、愛執なくあることを、自己の生活〔のあり方〕として、〔わたしは〕望みます。わたしの、これらの四つの願い事を〔かなえてください〕」〔と〕。

 

15. 〔帝釈天が尋ねた〕「婆羅門よ、あるいは、忿激にたいし、あるいは、憤怒にたいし、貪欲にたいし、そして、愛執にたいし、いったい、どのような危険(患・過患)を、あなたは見るのか。〔問いを〕尋ねられた者として、それを、わたしに告げ知らせよ」〔と〕。

 

16. 〔菩薩は答えた〕「〔はじめは〕少なきものとして有って、〔そののち〕多きものと成ります。それは、忍耐なき〔心〕から生じ、増え行きます。執着あるものであり、葛藤多きものです。それゆえに、忿激は、好ましからず。

 

17. 怒った者には、粗暴な言葉があります。直後に、こづきあいがあります。そののち、手があります。そののち、棒があります。最後は、刃が赴く所となります。憤怒は、忿激から等しく現起するものです。それゆえに、憤怒は、好ましからず。

 

18. 諸々の強奪や無理強いの行相が、さらに、諸々の欺きや騙し〔の行相〕が、諸々の貪欲の法(性質)において見られます。それゆえに、貪欲は、好ましからず。

 

19. 諸々の拘束は、愛執〔の思い〕に包み護られたものであり、意から作られるものであり、多々なるものに依拠します。それらは、激しく悩苦させます。それゆえに、愛執は、好ましからず」〔と〕。

 

20. 〔帝釈天が言った〕「このことが、あなたによって、見事に談じられ、適切に、見事に語られたからには、婆羅門よ、あなたに、願い事を与えよう。それが何であれ、〔あなたが〕意に求めるなら」〔と〕。

 

21. 〔菩薩は言った〕「帝釈〔天〕よ、一切の生類たちのイッサラよ、もし、願い事を、〔あなたが〕わたしに与えてくれたのなら、林のなかに住んでいるわたしに、常に独り住んでいる〔わたし〕に、諸々の障りを為す激しい病苦が生起してはなりません」〔と〕。

 

22. 〔帝釈天が言った〕「このことが、あなたによって、見事に談じられ、適切に、見事に語られたからには、婆羅門よ、あなたに、願い事を与えよう。それが何であれ、〔あなたが〕意に求めるなら」〔と〕。

 

23. 〔菩薩は言った〕「帝釈〔天〕よ、一切の生類たちのイッサラよ、もし、願い事を、〔あなたが〕わたしに与えてくれたのなら、帝釈〔天〕よ、わたしの〔行為が〕為されたとき、誰のものであれ、あるいは、意が、あるいは、肉体が、いついかなる時も打ちのめされないように。帝釈〔天〕よ、この願い事を、〔わたしは〕願います」〔と〕。ということで──

 

 カンハ・ジャータカが、第二となる。

 

10. 1. 3. チャトゥポーサティヤ・ジャータカ(四者の斎戒者・本生物語441)

 

24. 〔龍の王が言った〕「彼が、怒るべき者にたいし、怒りを為さず、正なる人士としてあり、いついかなる時も忿激しないなら、彼は、たとえ、忿激したとして、怒りを顕わにしない。まさに、その人のことを、世において、〔人々は〕沙門と言う」〔と〕。

 

25. 〔金翅鳥の王が言った〕「彼が、空腹であるとして、飢えに耐え抜き、〔心身が〕調御され、苦行者としてあり、飲み物と食料が〔正しく〕量られ、食を因として、悪を為さないなら、まさに、その人のことを、世において、〔人々は〕沙門と言う」〔と〕。

 

26. 〔音楽神の王が言った〕「一切の遊興と歓楽を捨棄して、さらに、世において、何であれ、偽りを語らず、飾り立ての境位から〔離れ〕、淫事から離れているなら、まさに、その人のことを、世において、〔人々は〕沙門と言う」〔と〕。

 

27. 〔クル国の王が言った〕「執持〔の対象〕を、さらに、一切の貪欲の法(性質)を、彼が、まさに、智慧によって遍捨するなら、〔心身が〕調御され、自己が安立し、我執なく、願望なき者であり、まさに、その人のことを、世において、〔人々は〕沙門と言う」〔と〕。

 

28. 〔菩薩に、四者が尋ねた〕「至上の智慧ある為し手に、〔わたしたちは〕尋ねます。わたしたちの諸々の言説において、口論が存し、生じたのです(四者の言葉の優劣をめぐり論争となった)。疑いを、諸々の疑惑を、今日、断ち切りたまえ。その疑いを、今日、全ての者たちが、超え渡るのです」〔と〕。

 

29. 〔菩薩は答えた〕「彼らが、義(道理)を見る賢者たちとして〔世に〕有るなら、彼らは、そこにおいて、〔正しい〕時に、根源のままに語ります。人のインダ(国王)よ、いったい、どのように、〔いまだ〕語られていない諸々の言説の義(意味)を、智者たちが導くというのでしょう(言葉の中身を知らずに答えようがない)」〔と〕。

 

30. 〔四者に、菩薩は尋ねた〕「龍の王は、まさに、どのように語るのですか。また、ヴィナターの子孫たる金翅鳥〔の王〕は、何を言ったのですか。また、音楽神の王は、何を説いたのですか。また、クル〔国〕の最勝の王は、どのように〔語るのですか〕」〔と〕。

 

31. 〔四者が答えた〕「龍の王は、まさに、忍耐を語ります。ヴィナターの子孫たる金翅鳥〔の王〕は、少食を〔語ります〕。音楽神の王は、歓楽の捨棄を〔語ります〕。クル〔国〕の最勝の王は、無一物を〔語ります〕」〔と〕。

 

32. 〔菩薩は言った〕「これらの全てが、見事に語られたものです。まさに、ここにおいて、悪しく語られたものは、何であれ、存在しません。そして、彼において、これらのものが確立されたなら、諸々の輻(や・スポーク)が轂(こしき・車輪の中央部)に〔集められる〕ように見事に結集されたなら、四つの法(性質)を保有する者と成った、まさに、その人のことを、世において、〔人々は〕沙門と言います」〔と〕。

 

33. 〔四者が言った〕「まさに、あなたは、最勝なる者として、あなたは、無上なる者として、〔世に〕存しています。あなたは、法(真理)に至る者です。法(真理)を知る者です。思慮深き者です。智慧によって、問い〔の答え〕に正しく到達して、慧者は、諸々の疑惑を断ち切りました。疑いを、諸々の疑惑を、断ち切りました──あたかも、象牙師が、鋸で象牙を〔断ち切る〕ように」〔と〕。

 

34. 〔龍の王が言った〕「青蓮の輝きがあり、垢を離れ、評価しえない、煙に等しき色艶のこの衣を、問いの説明に満足した者として、〔わたしは〕あなたに与えましょう──慧者よ、法(真理)を供養するために」〔と〕。

 

35. 〔金翅鳥の王が言った〕「百の花びらが咲き誇る黄金の花飾を、花糸を有し千の宝玉によって装飾された〔黄金の花飾〕を(※)、問いの説明に満足した者として、〔わたしは〕あなたに与えましょう──慧者よ、法(真理)を供養するために」〔と〕。

 

※ テキストには ratnasahassamaṇḍitaṃ とあるが、誤記と見て ratanasahassamaṇḍitaṃ と読む(PTS版は記載なし)。

 

36. 〔音楽神の王が言った〕「評価しえず美しく光り輝く宝珠を、宝珠で飾られたわたしの首飾を、問いの説明に満足した者として、〔わたしは〕あなたに与えましょう──慧者よ、法(真理)を供養するために」〔と〕。

 

37. 〔クル国の王が言った〕「千の、牛を、さらに、雄牛を、象を、さらに、これらの十の良馬を設えた車を、十六の優れた村を、問いの説明に満足した者として、〔わたしは〕あなたに与えましょう」〔と〕。

 

38. 〔世尊は言った〕「そのとき、サーリプッタは、龍〔の王〕として、コーリタ(モッガーラーナ)は、金翅鳥〔の王〕として、アヌルッダは、音楽神の王として、アーナンダは、〔クル国の〕王として、そして、菩薩は、賢者ヴィドゥラとして、〔世に存した〕。このように、ジャータカを保持しなさい」〔と〕。ということで──

 

 チャトゥポーサティヤ・ジャータカが、第三となる。

 

10. 1. 4. サンカ・ジャータカ(サンカ・本生物語442)

 

39. 〔下僕が尋ねた〕「サンカよ、〔あなたは〕多聞の者として、所聞の法(性質)ある者として、〔世に〕存しています。かつまた、沙門や婆羅門たちは、あなたによって見られたのです(多くの求道者と会見した見識者である)。そこで、〔あなたは〕時節ならざるに饒舌を見示します(誰もいないのに話をしている)。はてさて、誰か、わたしの他に、あなたに話しかける者がいるのですか」〔と〕。

 

40. 〔菩薩は答えた〕「美しい指輪を付けた美形の美女が、黄金で作られている鉢とともに〔食事を〕差し出して、『食事を受けてください』と、わたしに説く。信に歓悦あることから、わたしは、『〔因なき施しは、受け〕ない』と、彼女に説く」〔と〕。

 

41. 〔下僕が言った〕「婆羅門よ、このような夜叉を見て〔そののち〕、人は、安楽を願い求めながら尋ねるものです。立ち上がってください。彼女に合掌し、尋ねてください。『はてさて、あなたは、天女として存しているのですか。はてさて、それとも、人間として〔存しているのですか〕』」〔と〕。

 

42. 〔天女に、菩薩は尋ねた〕「すなわち、あなたは、楽しげにわたしを見つめ、『食事を受けてください』と、わたしに説く。女よ、大いなる威力ある者よ、〔わたしは〕あなたに尋ねる。『はてさて、あなたは、天女として存しているのですか。はてさて、それとも、人間として〔存しているのですか〕』」〔と〕。

 

43. 〔天女が答えた〕「サンカよ、わたしは、天女です。大いなる威力ある者です。海洋の水の中で〔漂流しているあなたのために〕、ここにやってきたのです。〔あなたへの〕慈しみ〔の思い〕ある者です。そして、汚れた心の者でもありません。まさしく、あなたの義(利益)のために、ここにやってきた者として、〔わたしは〕存しています。

 

44. ここに、食べ物と飲み物があります。さらに、臥坐具もあります。サンカよ、様々な種類の種々なる乗物があります。〔その〕全てに〔権ある者として〕、わたしは、あなたに施します──それが何であれ、あなたの意が望み求めるものを」〔と〕。

 

45. 〔菩薩は尋ねた〕「美しい五体ある者よ、それが何であれ、わたしへの、かつまた、供えものであり、かつまた、捧げものであるなら、〔その〕全てに、まさに、権ある者として、あなたはあります。美しい尻と美しい眉と美しい細腰の者よ、これは、わたしのどのような行為の報いなのですか」〔と〕。

 

46. 〔天女が答えた〕「婆羅門よ、炎暑の道において、一者の比丘に、足は傷つき〔喉は〕渇き疲弊した〔一者の比丘〕に、サンカよ、〔あなたは、両の〕履物を施しました。その施物が、あなたに、今日、欲するものを授けるのです」〔と〕。

 

47. 〔菩薩は言った〕「それなら、延べ板を具有した舟が有れ。〔水が〕漏れず追い風を捕らえる〔舟〕が〔有れ〕。まさに、ここにおいて、他の乗物に、〔依って立つ〕地なし。まさしく、今日、わたしを、モーリニーに至り得させよ」〔と〕。

 

48. 〔世尊は言った〕「彼女は、そこにおいて、歓悦の者となり、悦意の者となり、満足した者となり、美しく彩りあざやかな舟を化作して、下僕と共に、サンカを取って、美しく喜ばしき城市へと連れ行った」〔と〕。ということで──

 

 サンカ・ジャータカが、第四となる。

 

10. 1. 5. チューラボーディ・ジャータカ(チューラボーディ・本生物語443)

 

49. 〔王が尋ねた〕「或る者が、あなたのこの〔女〕を──大きな眼をした、愛しく、微笑しながら語る〔この女〕を──力ずくで取って去り行くなら、婆羅門よ、はてさて、〔あなたは〕何を為すのかな」〔と〕。

 

50. 〔菩薩は答えた〕「わたしに、〔忿激の思いが〕生起するとして、〔それは〕解き放たれないであろう。わたしが生きているかぎり、〔それは〕解き放たれないであろう。広大なる降雨が、塵を〔流し去る〕ように、まさしく、すみやかに、〔わたしは、それを〕防ぎ護るであろう」〔と〕。

 

51. 〔王が言った〕「はてさて、すなわち、過去には〔自らを〕誇示し、まさしく、〔自らの〕力に寄り掛かっていたのに、それが、今日、沈黙を為し、今や、大衣を縫いながら坐している」〔と〕。

 

52. 〔菩薩は言った〕「わたしに、〔忿激の思いが〕生起したが、〔それは〕解き放たれなかった。わたしが生きているかぎり、〔それは〕解き放たれなかった。広大なる降雨が、塵を〔流し去る〕ように、まさしく、すみやかに、〔わたしは、それを〕防ぎ護った」〔と〕。

 

53. 〔王が尋ねた〕「どうして、あなたに、〔忿激の思いが〕生起したのに、〔それは〕解き放たれなかったのか。どうして、あなたが生きているかぎり、〔それは〕解き放たれなかったのか。広大なる降雨が、塵を〔流し去る〕ように、どのように、あなたは、〔それを〕防ぎ護ったのか」〔と〕。

 

54. 〔菩薩は答えた〕「それが生じたときは、〔ものごとをあるがままに〕見ないが、〔いまだ〕生じていないときは、〔ものごとをあるがままに〕しっかりと見る。わたしに、それが生起したが、〔それは〕解き放たれなかった。忿激〔の思い〕は、思慮浅き者を境涯とする。

 

55. それが生じたことで、朋友ならざる者たちは、〔わたしの〕苦しみを探し求める者たちは、喜ぶ。わたしに、それが生起したが、〔それは〕解き放たれなかった。忿激〔の思い〕は、思慮浅き者を境涯とする。

 

56. そして、それが生じているときは、正しい義(道理)を覚らない。わたしに、それが生起したが、〔それは〕解き放たれなかった。忿激〔の思い〕は、思慮浅き者を境涯とする。

 

57. それに征服された者は、善なるものを捨棄する。さらに、また、広大なる義(利益)を排除するであろう。それは、恐怖の軍団にして、〔人々を〕撃破する力あるもの。大王よ、忿激〔の思い〕は、わたしによって解き放たれなかった。

 

58. 薪を擦っていると、まさに、火が生じる。その火は、その〔薪〕から生じ、まさしく、その薪を焼く。

 

59. このように、愚かな人に、〔あるがままに〕識知していない愚者に、激昂から、忿激〔の思い〕が生じ、彼もまた、まさしく、それによって焼かれる。

 

60. 草や薪における火のように、彼の忿激〔の思い〕が増え行くなら、彼の福徳は衰退する──黒分(月が欠ける期間)における月のように。

 

61. 〔もはや〕燃やすものなき火炎のように、彼の忿激〔の思い〕が止み静まるなら、彼の福徳は円満する──白分(月が満ちる期間)における月のように」〔と〕。ということで──

 

 チューラボーディ・ジャータカが、第五となる。

 

10. 1. 6. カンハディーパーヤナ・ジャータカ(カンハディーパーヤナ・本生物語444)

 

62. 〔菩薩は言った〕「まさしく、〔出家してからのち〕七日のあいだ、わたしは、清信した心の者となり、功徳を義(目的)とする者として、梵行を歩んだ。そこで、〔それから〕後は、すなわち、この、わたしの歩むところは、正味五十年を超えるあいだ、わたしは、また、まさしく、欲することなき者として、〔梵行を〕歩む。この真なる〔言葉〕によって、安穏有れ。毒は打破された。ヤンニャダッタ(幼児)は生きよ」〔と〕。

 

63. 〔ヤンニャダッタの父のマンダブヤが言った〕「すなわち、わたしは、滞在中の客(行乞者)を見て、いついかなる時も、布施を喜ばなかった。さらに、また、わたしの敬愛なきことを、そして、多聞の沙門や婆羅門たちは知らなかった。わたしは、また、まさしく、欲することなき者として、〔布施を〕施す。この真なる〔言葉〕によって、安穏有れ。毒は打破された。ヤンニャダッタは生きよ」〔と〕。

 

64. 〔マンダブヤの妻が言った〕「息子よ、すなわち、多大なる威力ある毒蛇が、穴を登って、おまえを咬んだ。そして、今日、わたしの、その〔蛇〕にたいする敬愛なきことと、さらに、おまえの父にたいする〔敬愛なきこととは〕、何であれ、差異は存在しない。この真なる〔言葉〕によって、安穏有れ。毒は打破された。ヤンニャダッタは生きよ」〔と〕。

 

65. 〔菩薩に、マンダブヤが尋ねた〕「まさしく、寂静者たちとして、調御者たちとして、〔出家者たちは〕遍歴遊行します。〔梵行を〕欲することなき様子の者たちは、〔誰も〕存在しません──カンハ(菩薩)より他には。ディーパーヤナ(菩薩)よ、何を忌避しながら、欲することなき者として、〔あなたは〕梵行を歩むのですか」〔と〕。

 

66. 〔菩薩は答えた〕「『信によって〔家から〕出て、ふたたび戻ってきた者は、彼は、聾唖のようなもの、まさに、この者は、愚者である』〔と〕、この論〔の自己への言及〕を忌避しながら、欲することなき者として、〔わたしは〕梵行を歩みます──かつまた、識者たちの賞賛するところにして、かつまた、正しくある者たちの境位たる〔梵行〕を。このように、また、〔わたしは〕功徳を作り為す者として〔世に〕有るのです」〔と〕。

 

67. 〔マンダブヤに、菩薩は尋ねた〕「あなたは、沙門たちを、婆羅門たちを、さらに、放浪者たちを、食べ物と飲み物によって、行乞者を満足させました。泉と成ったかのように、あなたのこの家は、食べ物と飲み物を具した様子です。そこで、どのような論〔の自己への言及〕を忌避しながら、欲することなき者として、〔あなたは〕この布施を施すのですか」〔と〕。

 

68. 〔マンダブヤが答えた〕「わたしの、かつまた、父も、かつまた、祖父も、信ある施主たちとして、寛容なる者たちとして、〔世に〕存し、〔世に〕有りました。その家の行持に従い転じ行きつつ、『わたしが、家における最後の香りある者と成ってはならない』〔と〕、この論〔の自己への言及〕を忌避しながら、欲することなき者として、〔わたしは〕この布施を施します」〔と〕。

 

69. 〔妻に、マンダブヤが尋ねた〕「美しい五体ある者よ、すなわち、智慧が充全ならざる幼い少女のおまえを、〔わたしは〕親族の家から連れてきた。しかしながら、また、〔おまえが〕わたしに敬愛なきことを知らなかった。欲することなくして、〔わたしに〕仕え従っているとは。尊女よ、そこで、何を理由に、わたしとおまえに、このような形態の共住の法(性質)が有ったのか」〔と〕。

 

70. 〔妻が答えた〕「遠き昔より、いついかなる時も、ここに、まさに、この家においては、〔男を〕次から次へということが存在しません。その家の行持に従い転じ行きつつ、『わたしが、家における最後の香りある者と成ってはならない』〔と〕、この論〔の自己への言及〕を忌避しながら、欲することなき者として、〔わたしは〕あなたに仕える者となり、〔世に〕存しています。

 

71. マンダブヤよ、すなわち、語るべきではないことを、〔わたしは〕語りました──子を因として、今日、それをお許しください。ここに、何であれ、存在しません──子への愛情より他には。〔まさに〕その、この者は、わたしたちのヤンニャダッタは、〔現に〕生きているのです」〔と〕。ということで──

 

 カンハディーパーヤナ・ジャータカが、第六となる。

 

10. 1. 7. ニグローダ・ジャータカ(ニグローダ・本生物語445)

 

72. 〔ポッティカが尋ねた〕「『あるいは、この者のことを、わたしは知らない。この者は、あるいは、誰なのだ、あるいは、誰の〔子なのだ〕。あるいは、かくのごとく〔云々〕』〔と〕、すなわち、サーカは、このように説きました(※)。ニグローダ(菩薩)よ、〔あなたは、これを〕どのようなものと思いますか。

 

※ テキストには cari とあるが、PTS版により vadī と読む。

 

73. そののち、喉のところを引っ掴んで、家来たちは、わたしを追い出したのです──〔わたしの〕顔に諸々の打撃を与えて、サーカの言葉を為す者たちは。

 

74. このようなことが、思慧浅き者によって、恩知らずの者によって、裏切り者によって、聖ならざるサーカによって、人の君主よ、あなたの友人によって、為されたのです」〔と〕。

 

75. 〔菩薩は答えた〕「あるいは、このことを、わたしは知らない。また、誰も、わたしに指し示さない。友よ、すなわち、サーカによって為された〔悪しき〕行ないを、あなたは、わたしに告げ知らせたが。

 

76. 友人たちである、わたしに、さらに、同様に、サーカに、生計の術を作ってくれた方として、あなたは存している──わたしたちに、権力者たることを、人間たちにおける大いなる者たることを、与えてくれた方として。あなたによって、これらの繁栄は得られた。ここにおいて、わたしに、疑念は存在しない。

 

77. あたかも、また、種が、火に〔蒔かれた〕なら、焼かれ、育たないように、このように、正ならざる人士にたいし為されたものは、滅び、育たない。

 

78. しかしながら、戒があり、聖なる行持があり、恩を知る人にたいし──彼にたいし為されたものは、善き田畑に〔蒔かれた〕諸々の種のように、滅びない」〔と〕。

 

79. 〔人々に、菩薩は言った〕「〔まさに〕この、卑しむべき者を、〔人を〕欺く者を、正ならざる人士の思弁ある者を、サーカを、諸々の槍で殺すのだ。彼の生命を、〔わたしは〕求めない」〔と〕。

 

80. 〔菩薩に、ポッティカが言った〕「大王よ、彼を許したまえ。諸々の気息(生命)は、戻ってくるものではありません。陛下よ、正ならざる人士を許したまえ。わたしは、彼の屠殺を求めません」〔と〕。

 

81. 〔ポッティカが言った〕「まさしく、ニグローダ(菩薩)に、仕え親しむべきである。サーカとは、共に住むべきではない。もし、それが、サーカのもとでの生命であるなら、ニグローダのもとで死んだほうが、より勝っている」〔と〕。ということで──

 

 ニグローダ・ジャータカが、第七となる。

 

10. 1. 8. タッカラ・ジャータカ(タッカラ・本生物語446)

 

82. 〔菩薩は尋ねた〕「父よ、諸々のタッカラ〔の球根〕は存在せず、諸々のアールヴァ〔の球根〕は〔存在せ〕ず、諸々のビラーリ〔の球根〕は〔存在せ〕ず、諸々のカランバ〔の球根〕は〔存在せ〕ず。父よ、独り、林にあり、墓場の中で、何を義(目的)として、穴を掘るのですか」〔と〕。

 

83. 〔父が答えた〕「息子よ、おまえの祖父は、極めて力弱く、無数の病による苦しみに襲われている。わたしは、彼を、今日、穴に埋めるのだ。なぜなら、彼のその生き方を、〔わたしは〕喜ばないからだ」〔と〕。

 

84. 〔菩薩は言った〕「〔まさに〕この、悪しきを得た思惟を、残忍で極めて益なき行為を、〔あなたは〕為します。父よ、老に導かれたとき、あなたは、わたしによってもまた、このような行為を得ることになります。その家の行持に従い転じ行きつつ、わたしもまた、あなたを、穴に埋めるでしょう」〔と〕。

 

85. 〔父が言った〕「童子よ、諸々の粗暴な言葉によって為しながら、わたしを侮蔑して、おまえは説く。わたしの正嫡の子として存しながら、子よ、おまえは、わたしにとって、益と慈しみなき者として存している」〔と〕。

 

86. 〔菩薩は言った〕「父よ、わたしは、あなたにとって、益と慈しみなき者ではありません。父よ、わたしもまた、あなたにとって、利益と慈しみ〔の思い〕ある者なのです。そして、悪しき行為を為しているあなたを、その〔悪しき行為〕から防護することは、まさに、〔子であるわたしに〕値することなのです。

 

87. サヴィッタ(父)よ、すなわち、あるいは、母であれ、父であれ、汚れなき者たちを、悪しき法(性質)の者が害するなら、身体の破壊ののち、未来の運命として、彼は、疑念〔の余地〕なく、地獄へと近しく至ります。

 

88. サヴィッタ(父)よ、すなわち、あるいは、母であれ、父であれ、食べ物と飲み物によって奉仕するなら、身体の破壊ののち、未来の運命として、彼は、疑念〔の余地〕なく、善き境遇へと近しく至ります」〔と〕。

 

89. 〔父が言った〕「子よ、おまえは、わたしにとって、益と慈しみなき者にあらず。子よ、おまえは、わたしにとって、利益と慈しみ〔の思い〕ある者として存している。そして、わたしは、おまえの母に言われつつ、このような残忍な行為を為す」〔と〕。

 

90. 〔菩薩は言った〕「わたしの母であり、自らの生母である、この者は、すなわち、あなたの妻である、彼女は、聖ならざる形質の者です。そして、自らの家から、彼女を追い払うべきです。彼女は、他にもまた、あなたに、苦しみをもたらすでしょう」〔と〕。

 

91. 〔母が悔悟したのち、菩薩は言った〕「わたしの母であり、自らの生母である、この者は、すなわち、あなたの妻である、彼女は、聖ならざる形質の者です。〔調御者の〕支配に導かれ調御された雌象のように、〔悔悟した〕彼女は、悪しき法(性質)の者なるも、ふたたび〔家に〕戻り行け」〔と〕。ということで──

 

 タッカラ・ジャータカが、第八となる。

 

10. 1. 9. マハーダンマパーラ・ジャータカ(大なるダンマパーラ・本生物語447)

 

92. 〔師匠が尋ねた〕「あなたにとって、どのようなものが、掟なのですか、また、どのようなものが、梵行なのですか。これは、どのような善き行ないの報いなのですか。婆羅門よ、この義(意味)を、わたしに告げ知らせてください。いったい、何ゆえに、あなたたち〔の家〕では、年少者たちは死なないのですか」〔と〕。

 

93. 〔婆羅門が答えた〕「〔わたしたちは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。虚偽を話しません。諸々の悪しき行為を遍く避けます。聖ならざることの全てを遍く避けるのです。まさに、それゆえに、わたしたち〔の家〕では、年少者たちは死なないのです。

 

94. 正しからざる者たちの〔法をもまた聞き〕、かつまた、正しくある者たちの法(教え)を聞きます。そして、また、正しからざる者たちの法(教え)を喜びません。正しからざる者たちを捨棄して、正しくある者たちを捨棄しません。まさに、それゆえに、わたしたち〔の家〕では、年少者たちは死なないのです。

 

95. 施し〔を為す〕より〔以前において〕、まさしく、過去において、悦意の者たちとして有ります。施しつつあるもまた、まさに、わが意を得た者たちとして有ります。施して〔そのあと〕もまた、まさに、のちに悩み苦しみません。まさに、それゆえに、わたしたち〔の家〕では、年少者たちは死なないのです。

 

96. わたしたちは、沙門たちを、婆羅門たちを、さらに、放浪者たちを、乞食者たちを、乞い求める者たちを、貧者たちを、食べ物と飲み物によって満足させます。まさに、それゆえに、わたしたち〔の家〕では、年少者たちは死なないのです。

 

97. そして、わたしたちは、妻を超え行きません(不倫をしない)。さらに、妻たちも、わたしたちを超え行きません。彼女たちより他には、梵行を歩みます(性行為をしない)。まさに、それゆえに、わたしたち〔の家〕では、年少者たちは死なないのです。

 

98. 全ての者たちが、命あるものを殺すことから離れます。世において与えられていないものを遍く避けます。酒を飲まない者たちとしてあり、また、虚偽を話しません。まさに、それゆえに、わたしたち〔の家〕では、年少者たちは死なないのです。

 

99. これらの最上の〔女〕たちにおいて、まさに、〔彼らは〕生まれます。〔彼らは〕思慮ある者たちとして、多大なる智慧ある者たちとして、〔世に〕有ります。かつまた、多聞の者たちとして、〔真の〕知に至る者たちとして、〔世に〕有ります。まさに、それゆえに、わたしたち〔の家〕では、年少者たちは死なないのです。

 

100. 母は、さらに、父は、姉妹たちは、さらに、兄弟たちは、そして、子たちは、さらに、妻たちも、そして、わたしたちは、全ての者たちが、他の世を因として、法(正義)〔の道〕を歩みます。まさに、それゆえに、わたしたち〔の家〕では、年少者たちは死なないのです。

 

101. そして、奴隷たちは、奴婢たちは、さらに、従僕たちは、侍者たちは、さらに、労夫たちも、全ての者たちが、他の世を因として、法(正義)〔の道〕を歩みます。まさに、それゆえに、わたしたち〔の家〕では、年少者たちは死なないのです。

 

102. 法(正義)は、まさに、法(正義)〔の道〕を歩む者を守ります。善き歩みある法(正義)は、安楽をもたらします。これは、善き歩みある法(正義)における福利です。法(正義)〔の道〕を歩む者は、悪しき境遇に赴きません。

 

103. 法(正義)は、まさに、法(正義)〔の道〕を歩む者を守ります──雨の時の大きな傘のように。わたしのダンマパーラ(菩薩)は、法(正義)によって守られています。〔それらの〕骨は、他者のものです。童子は、安楽です」〔と〕。ということで──

 

 マハーダンマパーラ・ジャータカが、第九となる。

 

10. 1. 10. クックタ・ジャータカ(鶏・本生物語448)

 

104. 〔菩薩は言った〕「悪を為した者のもとでは、安堵できない。偽りを説く者のもとでは、安堵できない。自己を義(目的)とする智慧ある者のもとでは、安堵できない。極めて寂静なる者のもとでは、安堵できない。

 

105. まさに、これらの人たちは、〔喉が〕渇いた牛の類の者たちとして〔世に〕有る。〔わたしは〕思うのだが、〔彼らは〕朋友たちを食い物にする──言葉によって、しかしながら、行為によってでははなく(うまいことを言っておきながら実行しない)。

 

106. 〔彼らは〕乾燥した合掌を差し出す者たちであり、言葉によって包まれた者たちである。人間の樹皮たち(うわべだけの者たち)には近坐するべきにあらず。そこにおいて、知恩は存在しない。

 

107. まさに、〔知恩は存在し〕ない──心を互いに他とする、女たちには、あるいは、男たちには──交わりを種々に公然と為して〔そののち、心を互いに他とする者たちには〕。そして、そのような者にもまた安堵できない。

 

108. 聖ならざる法(教え)に没入し、正直ならず、一切を殲滅する、隠された鋭利な〔刃〕のような、そして、そのような者にもまた安堵できない。

 

109. ここに、一部の者たちは、朋友の様子で、心なき友誼で、様々な種類によって近づいてくる。そして、そのような者にもまた安堵できない。

 

110. そこにおいて、あるいは、福利を、あるいは、また、財産を、そのような者が見るなら、思慮浅き者は、裏切りを為す。そして、その〔友〕を殺して去り行く」〔と〕。

 

111. 〔世尊は言った〕「多くの賊たちは、朋友の様子で〔刃を〕隠し、〔他者に〕慣れ親しむ。まさに、これらの悪しき人たちを捨棄するがよい──鶏が、鷹を〔捨棄した〕ように。

 

112. そして、その者が、生起した義(事態)を、すみやかに随覚しないなら、朋友ならざる者(敵)の支配に従い行き、そして、のちに悩み苦しむ。

 

113. そして、その者が、生起した義(事態)を、まさしく、すみやかに覚るなら、賊の煩いから解き放たれる──鶏が、鷹から〔逃れた〕ように。

 

114. 彼を、林に仕掛けられた奸計のような、そのような者を、法(正義)にかなわず常に砕破を為す者を、明眼の人は、遠く離れて、避けるがよい──すなわち、竹林において、鶏が、鷹を〔避けた〕ように」〔と〕。ということで──

 

 クックタ・ジャータカが、第十となる。

 

10. 1. 11. マッタクンダリー・ジャータカ(艶やかな耳飾をした者・本生物語449)

 

115. 〔婆羅門が尋ねた〕「〔装いを〕十分に作り為し、艶やかな耳飾をし、花飾を〔身に〕付け、黄の栴檀〔の香り〕芳しくも、〔あなたは、両の〕腕を突き上げて泣き叫ぶ。あなたは、林の中で、何を苦しんでいるのですか」〔と〕。

 

116. 〔菩薩は答えた〕「わたしに、黄金で作られている光輝ある車の乗物が現われたのですが、その〔車〕のための組となる車輪を、〔わたしは〕見出しません。その苦しみによって、〔わたしは〕生命を捨棄します」〔と〕。

 

117. 〔婆羅門が尋ねた〕「黄金で作られているものも、宝珠で作られているものも、青銅で作られているものも、さらに、白銀で作られているものも──〔どの車輪が欲しいのかを〕説きなさい。〔その〕車を、あなたのために作りましょう。組となる車輪を、あなたに奉施します」〔と〕。

 

118. 〔世尊は言った〕「その若者は、彼に説いた」〔と〕。〔菩薩は答えた〕「月と日は、両者ともに、ここにおいて、兄弟たちとしてあります。黄金で作られている、わたしの車は、その〔両者〕を組とする車輪によって、美しく輝きます」〔と〕。

 

119. 〔婆羅門が言った〕「若者よ、まさに、あなたは、愚者として存しています。すなわち、あなたは、望み求めるべきではないものを望み求めます。〔わたしは〕思います──あなたは死ぬでしょう。なぜなら、あなたは、月と日を、〔両者ともに〕得られないからです」〔と〕。

 

120. 〔菩薩は言った〕「〔月と日の〕両者ともに、ここにおいて、〔その〕色艶と界域(実質的要素)は、〔その〕道程において、〔この眼で見られます〕。去り行くところと至り来るところもまた、〔この眼で〕見られます。いっぽう、亡者(婆羅門の死んだ子)は、まさしく、〔この眼で〕見られません。泣き叫んでいる者たちのなかで、いったい、まさに、誰が、より愚者なのですか」〔と〕。

 

121. 〔婆羅門が言った〕「若者よ、まさに、〔あなたは〕真理を説く。泣き叫んでいる者たちのなかで、わたしこそは、より愚者なのだ。〔去り行く〕月に泣き叫ぶ幼児のように、命を終えた亡者を望み求めるとは(死んだ子を求めても無駄である)。

 

122. 酪を注いだ火のように、まさに、燃え盛る者として存しているわたしを、〔その〕一切の懊悩を、水を降り注ぐかのように、〔あなたは〕寂滅させる。

 

123. すなわち、心臓(心)に依拠するものとして存していた、わたしの矢を、まさに、引き抜いてくれた。すなわち、憂い悲しみに打ち負かされたわたしの、子〔の死〕の憂い悲しみを、除き去ったのだ。

 

124. 〔まさに〕その、わたしは、矢が引き抜かれた者として存している──憂い悲しみを離れ、〔心に〕混濁なき者として。〔わたしは〕憂い悲しまない。〔わたしは〕泣き叫ばない。若者よ、あなたの〔言葉を〕聞いて〔そののちは〕」〔と〕。ということで──

 

 マッタクンダリー・ジャータカが、第十一となる。

 

10. 1. 12. ビラーラコーシヤ・ジャータカ(ビラーラコーシヤ・本生物語450)

 

125. 〔菩薩は言った〕「正しくある者たちは、食料を得て〔そののち〕、たとえ、調理していなくても、施そうとする。まさしく、どうして、あなたは、調理していながら、すなわち、施さないのか。それは、正しいことにあらず。

 

126. そして、物惜あることから、さらに、放逸あることから、このように、布施は施されない。功徳を望んでいる者によって、〔あるがままに〕識知している者によって、施されるべき〔布施〕と成る」〔と〕。

 

127. 〔月の神が言った〕「物惜〔の思い〕ある者が、まさしく、それがために恐怖し、〔布施を〕施さないなら、それこそが、施さずにいる者にとっての恐怖である。物惜〔の思い〕ある者が、それがために恐怖するなら、そして、飢えが、さらに、渇きが、まさしく、それが、愚者を襲う──この世において、さらに、他〔の世〕において。

 

128. それゆえに、物惜〔の思い〕を取り除いて、〔世俗の〕垢を征服する者となり、布施を施すべきである。諸々の功徳は、他の世において、命あるものたちの立脚地と成る」〔と〕。

 

129. 〔日の神が言った〕「施し難きものを施している者たちに、為し難き行為を為している者たちに、正しからざる者たちは従わない。正しくある者たちの法(性質)は、捉えどころがない。

 

130. それゆえに、そして、正しくある者たちと正しからざる者たちには、ここから赴く所として、種々なる〔境遇〕が有る。正しからざる者たちは、地獄に行き、正しくある者たちは、天上を行き着く所とする」〔と〕。

 

131. 〔帝釈天の馭者のマータリが言った〕「或る者たちは、少ないなかから献じ捧げ、或る者たちは、多いなかから施そうとしない。少ないなかから施された施物は、千に等しきものと量られた」〔と〕。

 

132. 〔音楽神のパンチャシカが言った〕「すなわち、また、落穂拾い〔の行〕を歩み、そして、妻を養いながら、少ないなかで〔常に〕施している者──〔彼は〕法(正義)〔の道〕を歩むであろう。千の祭祀者の百千〔の祭祀〕であれ、それらは、そのような種類〔の布施〕の〔十六分の〕一にさえも値しない」〔と〕。

 

133. 〔商人が尋ねた〕「どうして、この、広大で大いなる価値ある祭祀は、正しい者によって施された〔布施〕の価値に至らないのですか。どのように、千の祭祀者の百千〔の祭祀〕であれ、それらは、そのような種類〔の布施〕の〔十六分の〕一にさえも値しないのですか」〔と〕。

 

134. 〔音楽神のパンチャシカが答えた〕「まさに、或る者たちは、正しからざることに固着し、〔施物を〕施します──〔命あるものたちを〕切断して、屠殺して、そこで、憂い悲しませて〔そののち〕。その施物は、涙顔のものであり、棒(暴力)を有するものであり、正しい者によって施された〔布施〕の価値には至りません。このように、千の祭祀者たちの百千〔の祭祀〕であれ、それらは、そのような種類〔の布施〕の〔十六分の〕一にさえも値しないのです」〔と〕。ということで──

 

 ビラーラコーシヤ・ジャータカが、第十二となる。

 

10. 1. 13. チャッカヴァーカ・ジャータカ(鴛鴦・本生物語451)

 

135. 〔烏が言った〕「色艶ある形姿麗しき者として、〔あなたは〕存しています。豊満で〔羽に〕赤を生じた者として。鴛鴦よ、美しい形姿の者として、〔あなたは〕存しています。顔と〔身体の〕機能が清らかな者として。

 

136. パーティーナ〔魚〕を、パーヴサ〔魚〕を、〔滋味に富み〕力を生じる魚を、ムンジャやローヒタ〔魚〕を、ガンガー〔川〕の岸辺に坐り、このような食料を、〔あなたは〕食べるのですね」〔と〕。

 

137. 〔菩薩は言った〕「諸々の陸のものを、あるいは、諸々の水のものを、これを、わたしが食べることは、まさしく、ありません。苔や藻より他に〔何も食べません〕。友よ、これが、わたしの食料です。

 

138. 〔烏が言った〕「鴛鴦の食料として、これに、わたしが信を置くことは、まさしく、ありません。友よ、たとえ、わたしが、村において、塩気や油気のあるものを食べ──

 

139. 人間たちにおいて作られた、肉汁を注いだ上等の食事を〔食べるも〕、しかしながら、わたしに、そのような色艶はありません。鴛鴦よ、すなわち、あなたのようには」〔と〕。

 

140. 〔菩薩は言った〕「自己にたいする〔人々の〕怨みを等しく見ながら、人間たる人々を害しながら、恐懼し、恐怖し、〔あなたは〕食べます。それで、あなたには、このような色艶があるのです。

 

141. 烏よ、一切の世〔の人々〕に遮られる者として、〔あなたは〕存しています──〔自己の〕悪しき行為によって。食が得られたとして、〔あなたを〕喜ばすことはありません。それで、あなたには、このような色艶があるのです。

 

142. 友よ、わたしもまた、食べます──全ての命あるものたちを害さずにいる者として、思い入れ少なく危惧なき者として、憂いなく何も恐れない者として。

 

143. 〔まさに〕その〔あなた〕は、〔精進の〕威徳を作り為すのです。〔悪しき〕持戒を超克するのです。不害によって世を歩みたまえ。わたしのように、愛される者と成るでしょう。

 

144. 彼が、〔他者を〕殺さず、〔他者をして他者を〕殺させず、〔他者に〕勝たず、〔他者をして他者に〕勝たせないなら、一切の生類にたいし、慈愛〔の心〕を部有する者であり、彼には、何をもってしても、怨み〔の思い〕はありません」〔と〕。ということで──

 

 チャッカヴァーカ・ジャータカが、第十三となる。

 

10. 1. 14. ブーリパンニャ・ジャータカ(広き智慧ある者・本生物語452)

 

145. 〔大臣が尋ねた〕「広き智慧ある者よ、真に、まさに、さてまた、あなたを、すなわち、吉祥も、賢慧も、さらに、思慧も、そのようなものは、薄幸の支配に導かれた〔あなた〕を救いません。すなわち、〔あなたは〕汁少なき麦飯を食べます」〔と〕。

 

146. 〔菩薩は答えた〕「苦によって楽を遍く熱しながら、欲〔の思い〕(意欲)を隠し、〔しかるべき〕時〔しかるべき〕時に弁別しつつ、義(利益)の諸門を開いているのです。それによって、わたしは、麦の飯で満足します。

 

147. そして、熱勤の時を知って、諸々の明慧によって、義(利益)を遍く熱して、〔わたしは〕諸々の獅子の欠伸(あくび)をするのです。その神通によって、ふたたび、また、〔あなたは〕わたしを見ることでしょう」〔と〕。

 

148. 〔王が尋ねた〕「まさに、或る者たちは、たとえ、楽あるも、悪を為すことなく、また、或る者たちは、栄誉なき交わりを恐れる者たちとしてある。〔あなたは〕広大なる義(利益)に思弁ある者であり、できる者として存していながら、どのような動機から、わたしに苦を為さないのか(王権を奪わないのか)」〔と〕。

 

149. 〔菩薩は答えた〕「賢者たちは、自己の楽を因として、諸々の悪しき行為を歩み行なうことはありません。苦に襲われ、たとえ、零落し、〔そのように〕存しつつも、そして、欲〔の思い〕ゆえに、さらに、憤怒〔の思い〕ゆえに、法(正義)を捨棄することはありません」〔と〕。

 

150. 〔王が尋ねた〕「柔和なものでも、あるいは、凶悪なものでも、それが、何を理由にするのであれ、〔まずは〕哀れな自己を引き上げるべきである。そのあとで、法(正義)を歩み行なうべきである」〔と〕。

 

151. 〔菩薩は答えた〕「その木の影に、坐るなら、あるいは、臥すなら、その〔木〕の枝を折るべきではありません。まさに、朋友を裏切る者は、悪しき者です。

 

152. また、その者に、人士たる者が、法(正義)を識知するなら、そして、すなわち、正しくある者たちが、彼への疑いを取り除くなら、まさに、それは、彼にとって、そして、洲となり、さらに、行き着く所となります。彼との友情を、智慧ある者は、老い朽ちさせはしないのです。

 

153. 欲望〔の対象〕を享受する、怠け者の在家者は、善きにあらず。自制なき出家者は、善きにあらず。〔注意深く〕真摯に為す者ならざる王は、善きにあらず。彼が、賢者であるも、忿激する者であるなら、それは、善きにあらず。

 

154. 方角の長(王)よ、士族は、真摯ならざることなく、〔注意深く〕真摯に為すがよい。王よ、〔注意深く〕真摯に為す者の、盛名は、そして、名誉は、〔自ずと〕増え行く」〔と〕。ということで──

 

 ブーリパンニャ・ジャータカが、第十四となる。

 

10. 1. 15. マハーマンガラ・ジャータカ(大いなる幸福・本生物語453)

 

155. 〔弟子が尋ねた〕「いったい、人は、時に、どのような詠唱(呪文)を学得して、あるいは、どのような学知(聖典)を〔学得して〕、あるいは、諸々の所聞(伝承)のなかの、どのようなものを〔学得して〕、死すべき者として、彼は、そして、この〔世〕と他の世において、どのように、安穏によって守られた為し手となるのですか」〔と〕。

 

156. 〔菩薩は答えた〕「彼にとって、天〔の神々〕たちが、そして、祖霊たちが、全ての者たちが、蛇たちが、さらに、また、一切の生類たちが、常に慈愛〔の思い〕によって敬恭される者たちとして〔世に〕有るなら、それを、まさに、生類たちにおける安穏と、〔賢者たちは〕言う。

 

157. 彼が、一切の世〔の人々〕にとって謙譲の生活者としてあり、幼児を含む女や男たちが悪しく言うのに、嫌悪の言なく、忍耐あるなら、それを、耐え忍ぶことを、安穏と、〔賢者たちは〕言う。

 

158. 彼が、技能によって、〔両親の〕家系によって、財産によって、出生によって、道友や朋友たちを見下さず、義(事態)ある時において、好ましき智慧があり、思慧があるなら、それを、まさに、道友たちにおける安穏と、〔賢者たちは〕言う。

 

159. 彼の、まさに、朋友たちが、正しくある者たちとして〔世に〕有り、言葉を違えない〔彼〕のことを等しく信頼し、〔彼が〕朋友を裏切らず、財産を等しく分け与えるなら、それを、まさに、朋友たちにおける安穏と、〔賢者たちは〕言う。

 

160. 彼の、妻たちが、年齢が均等で、和合し、互恵し、法(正義)を欲し、子孫をのこし、良家の者たちであり、戒ある者たちであり、亭主に掟ある者たちであるなら、それを、まさに、妻たちにおける安穏と、〔賢者たちは〕言う。

 

161. 彼の、王が、生類の長として、福徳があり、清廉を知り、かつまた、勤勉を〔知り〕、〔彼のことを〕『わたしにとって、この者は、二様なく、親密なる者である』と〔知るなら〕、それを、まさに、王たちにおける安穏と、〔賢者たちは〕言う。

 

162. 信ある者としてあり、そして、食べ物を、さらに、飲み物を、かつまた、花飾を、かつまた、香料を、かつまた、塗料を──〔それらを〕施し、清信した心の者となり、〔常に〕随喜しているなら、それを、まさに、諸々の天上における安穏と、〔賢者たちは〕言う。

 

163. 増大し達成した者たちが、正しい性行によって正しくある者たちが、多聞にして戒ある聖賢たちが、彼を、聖なる法(教え)によって清めるなら、それを、阿羅漢の中における安穏と、〔賢者たちは〕言う。

 

164. 世において、まさに、これらの安穏がある──識者たちによって賞賛された、安楽を生成するものとして。ここに、人は、智慧ある者となり、それら〔の安穏〕に慣れ親しむべきである。なぜなら、〔世俗の〕幸福においては、何ひとつ、真理は存在しないからである」〔と〕。ということで──

 

 マハーマンガラ・ジャータカが、第十五となる。

 

10. 1. 16. ガタパンディタ・ジャータカ(ガタ賢者・本生物語454)

 

165. 〔ローヒネイヤが言った〕「カンハ(ケーサヴァ)よ、起きてください。どうして、臥しているのですか。あなたにとって、夢に、どのような義(利益)があるというのでしょう。さてまた、すなわち、あなたにとって、心臓でもあれば、かつまた、右目でもある、実弟〔のガタ〕ですが、彼の〔心を〕、諸々の風の病が蝕みます。ケーサヴァよ、ガタ(菩薩)は、〔兎を〕渇望します」〔と〕。

 

166. 〔世尊は言った〕「彼の、ローヒネイヤの、その言葉を聞いて、ケーサヴァは、急ぎの様子で〔床から〕起きた──弟〔の病〕の憂い悲しみに苦悩する者となり」〔と〕。

 

167. 〔ガタに、ケーサヴァが尋ねた〕「いったい、どうして、狂者の形態あるかのように、このドヴァーラカ〔の都〕の全部に、『兎』『兎』と泣き喚くのだ。いったい、誰が、おまえの兎を奪い去ったのだ。

 

168. 黄金で作られているものも、宝珠で作られているものも、青銅で作られているものも、さらに、白銀で作られているものも、真珠貝や宝石や珊瑚で作られているものも──〔そのような〕兎を、おまえのために作らせよう。

 

169. 他にもまた、兎たちは存在する。林のなかにいる、林を餌場とする〔兎〕たちだ。彼らをもまた、おまえのために連れてこよう。どのような兎を、〔おまえは〕求めるのだ」〔と〕。

 

170. 〔菩薩は答えた〕「さてまた、これら〔の兎たち〕を、わたしは求めません──すなわち、地に依拠するものたちである、〔それらの〕兎たちは。月の兎を、〔わたしは〕求めます。ケーサヴァよ、それを、わたしのために取ってきてください」〔と〕。

 

171. 〔ケーサヴァが言った〕「親族よ、〔まさに〕その〔おまえ〕は、まちがいなく、甘美なる生命を捨棄するであろう。すなわち、望み求めるべきではないものを、〔おまえは〕望み求める。月の兎を、〔おまえは〕求める」〔と〕。

 

172. 〔菩薩は言った〕「すなわち、他の者に教え示すように、カンハよ、もし、このように、〔正しく〕知るのなら、何ゆえに、かつて死んだ子のことを、今日もまた憂い悲しむのですか。

 

173. それは、人間によっても、また、あるいは、人間ならざる者によっても、得られないのに、『わたしに生まれた子は、死んではならない』〔と〕、どうして、得られないものが得られるというのでしょう。

 

174. 呪文によって、根薬によって、諸々の薬によって、あるいは、財によっても、カンハよ、〔彼を〕連れてくることはできません。すなわち、亡者のことを、〔あなたは〕憂い悲しむのです」〔と〕。

 

175. 〔ケーサヴァが言った〕「誰にであれ、このような人士たる賢者たちが、僚友たちとして存するべきである。すなわち、ガタが、人士たる賢者が、今日、〔わたしを〕納得させるように。

 

176. 酪を注いだ火のように、まさに、燃え盛る者として存しているわたしを、〔その〕一切の懊悩を、水を降り注ぐかのように、〔あなたは〕寂滅させる。

 

177. すなわち、心臓(心)に依拠するものとして存していた、わたしの矢を、まさに、引き抜いてくれた。すなわち、憂い悲しみに打ち負かされたわたしの、子〔の死〕の憂い悲しみを、除き去ったのだ。

 

178. 〔まさに〕その、わたしは、矢が引き抜かれた者として存している──憂い悲しみを離れ、〔心に〕混濁なき者として。〔わたしは〕憂い悲しまない。〔わたしは〕泣き叫ばない。若者よ、あなたの〔言葉を〕聞いて〔そののちは〕」〔と〕。

 

179. 〔世尊は言った〕「智慧を有する者たちは、このように為す──彼らが、慈しみ〔の思い〕ある者たちとして〔世に〕有るなら。〔彼らは、人を〕憂いから引き戻す──ガタが、長兄を〔引き戻した〕ように」〔と〕。ということで──

 

 ガタパンディタ・ジャータカが、第十六となる。

 

 十なるものの集まりは〔以上で〕終了となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「堅固なる〔城壁〕(四つの門)と黒き者とダナンジャヤ(四者の斎戒者)と優れたサンカがあり、塵(チューラボーディ)と『七日のあいだ』(カンハディーパーヤナ)と『誰の』(ニグローダ)があり、そして、タッカラとともに、法(大なるダンマパーラ)と鶏と耳飾(艶やかな耳飾をした者)と食料を施す者(ビラーラコーシヤ)があり、鴛鴦と善き広き〔智慧〕(広き智慧ある者)と安穏(大いなる幸福)を有するものとガタ(ガタ賢者)があり、〔それらの十六がある〕」と。

 

11. 十一なるものの集まり

 

11. 1. 母を養う者の章

 

11. 1. 1. マートゥポーサカ・ジャータカ(母を養う者・本生物語455)

 

1. 〔子を連れて行かれた母象が言った〕「その象(菩薩)が離れ住むことで成長したのは、そして、サッラキー〔樹〕たちであり、さらに、クタジャ〔樹〕たちであり、クルヴィンダ〔樹〕やカラヴィーラ〔樹〕たちであり、そして、諸々の蓮根や粟であり、さらに、風なきところにおいて花ひらいたカニカーラ〔樹〕たちである。

 

2. どこかの誰かが、黄金の腕飾をした者たちが、象の王(菩薩)を団子餌で飼育するのだ。そこ(象の背)において、王は、あるいは、王子は、驚愕なき者となり、〔敵の〕鎧武者を征服するであろう」〔と〕。

 

3. 〔菩薩に、王が言った〕「象よ、餌を掴み取れ。象よ、痩せ細った者と成ってはならない。王のために為すべき多くのことを、象よ、それらを為すのだ」〔と〕。

 

4. 〔菩薩は言った〕「彼女は、まちがいなく、彼女は、哀れな女である──盲目で、遍く導く者なく、木株に足をぶつけて、チャンドーラナ山に倒れ落ちた、〔その女は〕」〔と〕。

 

5. 〔王が尋ねた〕「大象よ、あなたにとって、彼女は、いったい、誰なのだ──盲目で、遍く導く者なく、木株に足をぶつけて、チャンドーラナ山に倒れ落ちた、〔その女は〕」〔と〕。

 

6. 〔菩薩は答えた〕「大王よ、彼女は、わたしの母です──盲目で、遍く導く者なく、木株に足をぶつけて、チャンドーラナ山に倒れ落ちた、〔その女は〕」〔と〕。

 

7. 〔王が言った〕「この大象を解き放て。すなわち、この者は、母を養う。象は、母と行き合うのだ。全ての親族たちと共に〔有れ〕」〔と〕。

 

8. 〔世尊は言った〕「そして、象は、結縛から解き放たれた。象は、解き放ちを得て、寸時のあいだ休息して、山のあるところへと帰ったのだった。

 

9. そののち、彼は、象が慣れ親しむ冷たい〔水〕の池に赴いて、鼻で水を運んで、母に振り注いだ」〔と〕。

 

10. 〔母象が言った〕「さてまた、時ならざるに雨降らせる、この、聖ならざる天〔の神〕は、誰なのかい。わたしの実の子は去ってしまったのだよ。わたしを世話してくれる、その〔子〕はね」〔と〕。

 

11. 〔菩薩は言った〕「母よ、起きてください。どうして、臥しているのですか。あなたの実の〔子〕が帰ってきたのです。解き放たれた者として、〔わたしは〕存しています──カーシ〔国〕の王にして盛名あるヴェーデーハ〔王〕によって」〔と〕。

 

12. 〔母象が言った〕「長きに生きよ、その王は、カーシ〔国〕の国土を繁栄させる者は。彼は、わたしの子を解き放ったのだ──常に年長者を敬う〔わたしの子〕を」〔と〕。ということで──

 

 マートゥポーサカ・ジャータカが、第一となる。

 

11. 1. 2. ジュンハ・ジャータカ(ジュンハ・本生物語456)

 

13. 〔婆羅門が言った〕「人のインダよ、わたしの言葉を聞きたまえ。ジュンハ(菩薩)よ、義(目的)によって、ここに至り得た者として、〔わたしは〕存しています。二足者の最勝なるインダよ、『旅の婆羅門が立っているときは、去り行くべきにあらず』〔と、賢者たちは〕言います。

 

14. 〔菩薩は尋ねた〕「〔わたしは〕聞く。〔わたしは〕立つ。梵(婆羅門)よ、説きたまえ。すなわち、義(目的)によって、ここに至り得た者として、〔あなたは〕存しています。あるいは、あなたは、わたしにたいし、どのような義(目的)を望み求めているのですか。梵よ、ここにやってきて、さあ、それを説きたまえ」〔と〕。

 

15. 〔婆羅門が答えた〕「わたしに施したまえ──五つの優れた村を、百の奴婢を、七百の牛を。そして、千を超える黄金の金貨を、さらに、わたしに似合いの二者の妻を、施したまえ」〔と〕。

 

16. 〔菩薩は尋ねた〕「婆羅門よ、はてさて、あなたには、恐るべき形態の苦行があるのですか。婆羅門よ、はてさて、あなたには、様々な形態の呪文があるのですか。はてさて、あなたには、誰かしら、従順なる夜叉たちが存在するのですか。あるいは、わたしのために〔かつて〕作り為した義(利益)を、〔あなたは〕証知するのですか(わたしのために何かしてくれたのですか)」〔と〕。

 

17. 〔婆羅門が答えた〕「わたしに、苦行は存在しません。さらに、また、諸々の呪文もありません。わたしには、誰であれ、従順なる夜叉たちもまた存在しません。あなたのために〔かつて〕作り為した義(利益)もまた、〔わたしは〕証知しません。しかしながら、過去に、まさに、出会いほどのことは存しました」〔と〕。

 

18. 〔菩薩は尋ねた〕「これが最初の会見と、わたしは知るが、これより前には、あなたのことを、〔わたしは〕証知しません。〔問いを〕尋ねられた者として、この義(意味)を、わたしに告げ知らせたまえ。いつ、あるいは、どこで、わたしたちに交際が有ったのですか」〔と〕。

 

19. 〔婆羅門が答えた〕「陛下よ、ガンダーラ〔国〕の王の喜ばしき都であるタッカシラーにおいて、〔わたしたちは〕住していました。そこにおいて、暗黒と漆黒のなか、肩と肩が互いにぶつかったのです。

 

20. 人のインダよ、そこにおいて、〔まさに〕その〔わたしたち〕は、両者ともに立って、そこにおいて、挨拶を交わしたのです。わたしたちに、出会いほどのこととして存したのは、それだけです。そののち、〔出会いは〕後にもなく前にもなく有りました」〔と〕。

 

21. 〔菩薩は言った〕「梵よ、すなわち、いついかなる時も、人間たちにおいて、正なる人士との交際が有るなら、賢者たちは、〔それらの〕出会いと親交を、あるいは、また、過去に為されたことを、消失させることはありません。

 

22. まさしく、愚者たちは、まさに、〔それらの〕出会いと親交を、あるいは、また、過去に為されたことを、消失させます。愚者たちにおいて、たとえ、多くのことが為されたとして、〔それは〕消失します。なぜなら、そのように、愚者たちは、恩知らずの形質あるからです。

 

23. しかしながら、慧者たちは、まさに、〔それらの〕出会いと親交を、あるいは、また、過去に為されたことを、消失させません。慧者たちにおいて、たとえ、少しのことが為されたとして、〔それは〕消失しません。なぜなら、そのように、慧者たちは、善き知恩の形質あるからです。

 

24. あなたに施しましょう──五つの優れた村を、百の奴婢を、七百の牛を。そして、千を超える黄金の金貨を、さらに、あなたに似合いの二者の妻を、施しましょう」〔と〕。

 

25. 〔婆羅門が言った〕「王よ、行き合って〔そののち〕、正しくある者たちとの〔交際は〕、このように有ります。星々にとっての星の王(月)のようなものです(星と月の出会いのようである)。カーシ〔国〕の長よ、そのように、わたしは満ち行きます。わたしの、あなたとの交際もまた、今日、〔そのように〕得られたのです」〔と〕。ということで──

 

 ジュンハ・ジャータカが、第二となる。

 

11. 1. 3. ダンマデーヴァプッタ・ジャータカ(ダンマ天子・本生物語457)

 

26. 〔菩薩は言った〕「わたしは、福徳を作り為す者として、功徳を作り為す者として、〔世に〕存している。沙門や婆羅門たちに常に奉賛される者であり、道に値する者であり、天〔の神々〕と人間たちに供養される者である。わたしは、ダンマ(正義)である。アダンマ(正義ならざるもの)よ、道を譲れ」〔と〕。

 

27. 〔アダンマが言った〕「法(正義)ならざる乗物に堅固に乗って、正しからざる者として存しながら、わたしは、力ある者として〔世に〕存している。ダンマよ、〔まさに〕その、わたしが、今日、まさに、何を因として、過去に譲ったことのない道を、おまえに譲るというのだ」〔と〕。

 

28. 〔菩薩は言った〕「法(正義)が、まさに、先に出現した。後に、法(正義)ならざるものが、世に生起した。そして、〔わたしは〕長兄であり、かつまた、最勝の者であり、さらに、昔ながらの者である。末弟よ、長兄のために、道から出て行け」〔と〕。

 

29. 〔アダンマが言った〕「乞い求めるからとて、ありえない──たとえ、適切なるも、ありえない──ふさわしいからとて、ありえない──わたしが、おまえに道を譲ることは。そして、今日、わたしたちの両者に、戦い有れ。戦いにおいて、彼が勝つなら、道は、彼のものだ」〔と〕。

 

30. 〔菩薩は言った〕「大いなる勢力ある者と、無量の福徳ある者と、無比なる者と、一切の方角に喧伝された者として、わたしは〔世に〕存している。一切の徳を具した形質の者であり、ダンマである。アダンマよ、どうして、おまえが、〔わたしを〕征圧するというのだろう。

 

31. 金槌によって、まさに、金は打たれる。金によって、金槌を打つことはない。それで、もし、今日、法(正義)ならざるものが、法(正義)を打つことになるなら、鉄は、黄金のように見えるであろう。

 

32. アダンマよ、それで、もし、おまえが、戦いを力とする者であり、おまえには、かつまた、年長の者たちも、かつまた、尊重する者たちも、〔誰であれ〕存在しないなら、さてまた、道を、愛しくも愛しからざるもあれ、おまえに譲ろう。おまえの諸々の悪言もまた、忍耐しよう」〔と〕。

 

33. 〔世尊は言った〕「そして、この言葉を聞いて、アダンマは、頭を下に、足を上に、〔地獄に〕落ちたのだった。もし、戦いを義(目的)とする者であるとして、〔わたしは〕戦いを得ない。このことだけで、アダンマは、打破された者と成る。

 

34. 忍耐を力とする者は、戦いを力とするアダンマを、征圧して、打破して、地に打ち倒して、歓悦の者となり、車に乗って出発した。極めて活力があり、真理に勤勉なる者は、まさしく、〔その〕道によって。

 

35. 母が、父が、さらに、沙門や婆羅門たちが、彼の自らの家において、敬われなかったなら、彼らは、まさしく、この〔世において〕、肉体としての肉身を捨て置いて、身体の破壊ののち、地獄に行く──すなわち、頭を下に、〔地獄に〕落ちたアダンマのように。

 

36. 母が、父が、さらに、沙門や婆羅門たちが、彼の自らの家において、篤く敬われたなら、彼らは、まさしく、この〔世において〕、肉体としての肉身を捨て置いて、身体の破壊ののち、善趣に行く──すなわち、また、車に乗って、ダンマが〔行く〕ように」〔と〕。ということで──

 

 ダンマデーヴァプッタ・ジャータカが、第三となる。

 

11. 1. 4. ウダヤ・ジャータカ(ウダヤ・本生物語458)

 

37. 〔菩薩は言った〕「〔あなたは〕独り、〔そこに〕坐り、清らかで、〔両の〕腿は〔慎み深く〕自制され、高楼に登って、肢体に非難なく──妖精のまなざしと眼をした方よ、あなたに乞い求めます。この一夜を、〔わたしたちの〕両者で過ごすのです」〔と〕。

 

38. 〔ウダヤーが言った〕「内堀が巡らされ、堅固な見張塔と門小屋があり、剣を手にする者たちによって守られた、入り難きこの都です。

 

39. そして、青年の〔到来も〕、さらに、また、若者の到来も、見出されません。そこで、いったい、何を理由に、わたしとの逢瀬を求めるのですか」〔と〕。

 

40. 〔菩薩は言った〕「美しい方よ、わたしは、夜叉として存しています。あなたの前に到来した者として存しています。あなたは、わたしを喜ばせてください。あなたに、幸せ〔有れ〕。貨幣に満ちた〔金の壷〕を、あなたに与えましょう」〔と〕。

 

41. 〔ウダヤーが言った〕「あるいは、天〔の神〕を、夜叉を、さらに、あるいは、人間を、ウダヤ以外の他の者を、〔わたしは〕望み求めません。夜叉よ、大いなる威力ある者よ、あなたは、まさしく、去ってください。そして、去って〔そののち〕、ふたたび戻り来ることがあってはなりません」〔と〕。

 

42. 〔菩薩は言った〕「すなわち、その歓楽は、欲望を享受する者たちにとって最上のものであり、有情たちは、その〔歓楽〕を因として、不正〔の道〕を歩みます。清きを伴った方よ(※)、あなたは、その歓楽を失ってはなりません。貨幣に満ちた銀の〔壷〕を、あなたに与えましょう」〔と〕。

 

※ テキストには sucimhi te とあるが、PTS版により sucimhite と読む。

 

43. 〔ウダヤーが言った〕「男は、財産で納得させながら、女を賞揚し、そこにおいて、欲〔の思い〕を為します。〔それとは〕正反対のものとして、あなたの天の法(性質)はあります。明らかに、より少なきものによって、〔あなたは、わたしを〕求めました」〔と〕。

 

44. 〔菩薩は言った〕「美しい五体ある方よ、人間の世においては、そして、寿命も、さらに、色艶も、人間たちのものは衰え滅びます。まさしく、その色艶とともに、財産もまた、あなたのものは衰え滅びます。今日、〔あなたは〕より老いた者として〔世に〕存しています。

 

45. 福徳ある王女よ、このように、わたしが眺め見ているあいだも、あなたの色艶は、まさしく、失われます──昼と夜の経過あるときに。

 

46. 思慮深き王女よ、あなたは、まさしく、この若き時をもって、梵行を歩むがよい。より一層、色艶ある者として〔世に〕存するでしょう」〔と〕。

 

47. 〔ウダヤーが尋ねた〕「天〔の神々〕たちは、人間たちのようには老いません。彼らの五体に、諸々の皺は有りません。夜叉よ、大いなる威力ある者よ、〔わたしは〕あなたに尋ねます。いったい、どのように、天〔の神々〕たちにとって、肉体としての肉身はあるのですか」〔と〕。

 

48. 〔菩薩は答えた〕「天〔の神々〕たちは、人間たちのようには老いません。彼らの五体に、諸々の皺は有りません。日々に、まさしく、より一層のものとなるのが、彼らの、そして、天の色艶でもあれば、さらに、諸々の広大なる財物でもあるのです」〔と〕。

 

49. 〔ウダヤーが尋ねた〕「いったい、何を、この〔世において〕、無数の人民たちは恐れているのですか──そして、道が、無数の場所に説かれたとして。夜叉よ、大いなる威力ある者よ、〔わたしは〕あなたに尋ねます。何において安立した者は、他の世を恐れないのですか」〔と〕。

 

50. 〔菩薩は答えた〕「言葉を、さらに、意を、正しく向けて、身体によって諸々の悪を為さずにいる者が、多くの食べ物と飲み物ある家に居住しながら、信ある者であり、柔和なる者であり、分け与える者であり、寛容なる者であり、愛護ある者であり、友誼ある者であり、優しい言葉ある者であるなら、ここにおいて安立した者は、他の世を恐れません」〔と〕。

 

51. 〔ウダヤーが尋ねた〕「夜叉よ、〔あなたは〕わたしに教示してくれました──あたかも、母であるかのように──あたかも、父であるかのように。秀逸なる色艶ある〔あなた〕に尋ねます。偉丈夫たる方よ、あなたは、いったい、どのような方として存しているのですか」〔と〕。

 

52. 〔菩薩は答えた〕「美しい方よ、わたしは、ウダヤです。約束なるがゆえに、ここに到来した者として存しています。まさに、あなたに〔別れを〕告げて、〔わたしは〕去り行きます。〔わたしは〕存しています──あなたの約束から解き放たれた者として」〔と〕。

 

53. 〔ウダヤーが言った〕「それで、もし、まさに、あなたが、ウダヤであり、約束なるがゆえに、ここに到来した者として存しているなら、王子よ、わたしに教示してください。すなわち、〔わたしたちの〕逢瀬が、ふたたび存するように」〔と〕。

 

54. 〔菩薩は言った〕「若き時は、すみやかに過ぎ行く──瞬時のものとして、まさしく、そのように。常恒の境位は存在せず、有情たちは死滅する。肉体は常恒ならず、遍く老い朽ちる。ウダヤーよ、怠ってはならない。法(正義)〔の道〕を歩むのだ。

 

55. 遍満する地が、財に満ち、まさしく、一者のものとなり、他者の領域なく存するも、そして、また、それをも、〔人は、死において〕捨棄する──貪り〔の思い〕を離れることなく。ウダヤーよ、怠ってはならない。法(正義)〔の道〕を歩むのだ。

 

56. かつまた、母も、かつまた、父も、かつまた、兄弟たちも、すなわち、また、財で買った者として〔世に〕有る、妻も──そして、また、彼らも、互いに他を捨棄する。ウダヤーよ、怠ってはならない。法(正義)〔の道〕を歩むのだ。

 

57. 『身体は、他〔の命あるもの〕の食糧である』と知って、『輪廻における、かつまた、善き境遇も、かつまた、悪しき境遇も、暫しの住である』と知って、ウダヤーよ、怠ってはならない。法(正義)〔の道〕を歩むのだ」〔と〕。

 

58. 〔ウダヤーが言った〕「善きかな、この夜叉は、〔真理を〕語る。人間たちの生命は、僅かである。かつまた、困難でもあり、かつまた、微小でもある。そして、それは、苦しみと結び付いている。〔まさに〕その、わたしは、独り、出家するであろう──カーシ〔国〕を、スルンダナ〔の都〕を、捨棄して」〔と〕。ということで──

 

 ウダヤ・ジャータカが、第四となる。

 

11. 1. 5. パーニーヤ・ジャータカ(飲用水・本生物語459)

 

59. 〔第一の独覚が言った〕「〔わたしは〕朋友でありながら、朋友の飲用水を、与えられていないのに遍く受益しました。その〔行為〕によって、のちに、〔わたしは〕忌避しました。その悪しき〔行為〕が、わたしによって為されたのです。ふたたび、〔わたしが〕悪しき〔行為〕を為すことがあってはなりません。それゆえに、わたしは、出家したのです」〔と〕。

 

60. 〔第二の独覚が言った〕「そして、他者の妻を見て、欲〔の思い〕が、わたしに生起しました。その〔行為〕によって、のちに、〔わたしは〕忌避しました。その悪しき〔行為〕が、わたしによって為されたのです。ふたたび、〔わたしが〕悪しき〔行為〕を為すことがあってはなりません。それゆえに、わたしは、出家したのです」〔と〕。

 

61. 〔第三の独覚が言った〕「大王よ、わたしの父を、盗賊たちが、森のなかで捕捉しました。尋ねられたわたしは、彼らに、知っていながら、彼のことを、他なるものとして説き明かしました(知らぬ振りをした)」〔と〕。

 

62. その〔行為〕によって、のちに、〔わたしは〕忌避しました。その悪しき〔行為〕が、わたしによって為されたのです。ふたたび、〔わたしが〕悪しき〔行為〕を為すことがあってはなりません。それゆえに、わたしは、出家したのです」〔と〕。

 

63. 〔第四の独覚が言った〕「ソーマの祭祀が催されたとき、〔人々は〕命あるものを殺すことを為しました。わたしは、彼らに、〔それを〕許しました。その〔行為〕によって、のちに、〔わたしは〕忌避しました。

 

64. その悪しき〔行為〕が、わたしによって為されたのです。ふたたび、〔わたしが〕悪しき〔行為〕を為すことがあってはなりません。それゆえに、わたしは、出家したのです」〔と〕。

 

65. 〔第五の独覚が言った〕「すなわち、わたしたちの〔村の〕人たちは、最初から、穀物酒や果実酒に甘い者たちとして存していました。彼らは、多くの義(道理)なきことのために、飲酒を営みました。

 

66. わたしは、彼らに、〔それを〕許しました。その〔行為〕によって、のちに、〔わたしは〕忌避しました。その悪しき〔行為〕が、わたしによって為されたのです。ふたたび、〔わたしが〕悪しき〔行為〕を為すことがあってはなりません。それゆえに、わたしは、出家したのです」〔と〕。

 

67. 〔菩薩は言った〕「厭わしきものとして存せ──極めて多くある欲望〔の対象〕は、悪臭がする棘多きものは。わたしは、それらを受用しながら、そのような〔汚れなき〕安楽を得なかったのだ」〔と〕。

 

68. 〔王妃が言った〕「悦楽大きく、安楽あるのが、諸々の欲望〔の対象〕です。欲望〔の対象〕より他に、安楽は存在しません。彼らが、諸々の欲望〔の対象〕を受用するなら、彼らは、天上に再生します」〔と〕。

 

69. 〔菩薩は言った〕「悦楽少なく、苦痛あるのが、諸々の欲望〔の対象〕である。欲望〔の対象〕より他に、苦痛は存在しない。彼らが、諸々の欲望〔の対象〕を受用するなら、彼らは、地獄に再生する。

 

70. 鋭く研がれた剣のようであり、善く鍛えられた刀のようであり、胸に放たれた槍のようであり、それよりも、より苦痛あるのが、諸々の欲望〔の対象〕である。

 

71. 燃え盛る炭火のようであり、人〔の高さ〕を超える穴であり、昼に等しく熱せられた鋤先のようであり、それよりも、より苦痛あるのが、諸々の欲望〔の対象〕である。

 

72. 猛々しい毒のようであり、沸騰した油のようであり、溶解した赤銅のようであり、それよりも、より苦痛あるのが、諸々の欲望〔の対象〕である」〔と〕。ということで──

 

 パーニーヤ・ジャータカが、第五となる。

 

11. 1. 6. ユダンチャヤ・ジャータカ(ユダンチャヤ・本生物語460)

 

73. 〔菩薩は言った〕「朋友と家臣たちに遍く囲まれた車上の雄牛を、わたしは敬拝します。王よ、わたしは出家するでありましょう。陛下は、それをお許しください」〔と〕。

 

74. 〔王が言った〕「それで、もし、おまえにとって、諸々の欲望〔の対象〕に不足があるなら、わたしは、それらを円満成就させよう。彼が、おまえを害するなら、〔わたしは、彼を〕阻止しよう。ユダンチャヤよ、出家してはならない」〔と〕。

 

75. 〔菩薩は言った〕「諸々の欲望〔の対象〕に不足は存在しません。害する者は、わたしに見出されません。そして、洲(依り所)を作ることを、〔わたしは〕求めます──すなわち、老が押し流さない〔洲を〕」〔と〕。

 

76. 〔世尊は言った〕「あるいは、子が、父に乞い求め、あるいは、父が、わが子に〔乞い求める〕」〔と〕。〔王が言った〕「息子よ、町〔の全て〕が、おまえに乞い求める。ユダンチャヤよ、出家してはならない」〔と〕。

 

77. 〔菩薩は言った〕「陛下よ、わたしを妨げてはなりません。車上の雄牛よ、出家しつつある者を〔妨げてはなりません〕。わたしが、諸々の欲望〔の対象〕に夢中になり、老の支配に従い行くことがあってはなりません」〔と〕。

 

78. 〔王妃が言った〕「息子よ、わたしは、あなたに乞い求めます。子よ、わたしは、〔あなたの出家を〕妨げます。あなたを長きに見ることを、〔わたしは〕求めます。ユダンチャヤよ、出家してはなりません」〔と〕。

 

79. 〔菩薩は言った〕「日の出に向かい、草の先端の露が〔消え行く〕ように、このように、人間たちの寿命は〔消え行くのです〕。母よ、わたし〔の出家〕を、妨げてはなりません。

 

80. 車上の雄牛よ、急ぎ、この乗物に、〔わたしを〕乗せてください。母が、〔彼岸へと〕超えつつあるわたしに、障りを為す者と成ってはなりません」〔と〕。

 

81. 〔王妃が言った〕「急ぎ行きなさい。あなたに、幸せ〔有れ〕。ランマ〔の都〕は、空無と成るでしょう──ユダンチャヤが、サッバダッタ王によって〔出家を〕許されたからには。

 

82. 彼は、千のなかの最勝者として、黄金に似た若者として、〔世に〕有りました。〔まさに〕その、この王子が、出家したのです──力ある者が、黄褐色の衣の者となり」〔と〕。

 

83. 〔世尊は言った〕「王子たちは、ユダンチャヤとユディッティラは、両者ともに出家したのだった──母と父を捨棄して、死魔の執着を断ち切って」〔と〕。ということで──

 

 ユダンチャヤ・ジャータカが、第六となる。

 

11. 1. 7. ダサラタ・ジャータカ(ダサラタ・本生物語461)

 

84. 〔菩薩は言った〕「ラッカナよ、そして、シーターよ、来なさい。両者ともに、水に入りなさい。この者は、バラタは、このように言いました。『ダサラタ王は、死んだのです』」〔と〕。

 

85. 〔バラタが尋ねた〕「ラーマ(菩薩)よ、どのような威光によって、〔あなたは〕憂い悲しむべきことを憂い悲しまないのですか。父が命を終えたのを聞いても、苦しみは、あなたを打ち負かしません」〔と〕。

 

86. 〔菩薩は答えた〕「すなわち、人が、多く喚き立てたところで、〔命を〕守ることはできません。彼が、識者であり、思慮ある者であるなら、どうして、〔嘆き悲しむことで〕自己を悩苦させるというのでしょう。

 

87. なぜなら、そして、年少者たちも、さらに、年長者たちも、彼らが愚者たちであれ、さらに、彼らが賢者たちであれ、まさしく、そして、富者たちであれ、さらに、貧者たちであれ、全ての者たちが、死魔〔の支配〕を行き着く所とするからです。

 

88. 熟した諸果には、常に、落ちるがゆえの恐れがあるように、このように、死すべき者(人間)として生まれた者たちには、常に、死ゆえの恐れがあります。

 

89. 早朝に見られた多くの人々が、或る者たちは、夕方には見られません。夕方に見られた多くの人々が、或る者たちは、早朝には見られません。

 

90. もし、嘆き悲しんでいる者が、〔嘆き悲しむことで〕何らかの義(意味)を引き出すなら、明眼の者は、それ(嘆き悲しむこと)を為すでしょう──等しく迷乱した者となり、自己を害しながらも。

 

91. 自己みずから自己を害しつつ、痩せ細り色艶の衰えた者と成るも、それによって、亡者たちがどうにかなることはありません。嘆き悲しむことは、義(意味)なきこと。

 

92. あたかも、燃える家を水で消し止めるように、このように、また、慧者にして所聞ある者は、思慮ある者にして賢者たる人は、生起した憂い悲しみを、すみやかに〔消し静めるのです〕──風が、綿を吹き飛ばすように。

 

93. 死すべき者は、まさしく、独り、過ぎ行き、まさしく、独り、家に生まれます。ただ、最高〔の真実〕として〔それぞれに行為との〕結合があり、全ての命あるものたちに共同の受益があるだけのこと。

 

94. まさに、それゆえに、慧者たる多聞の者が、この世を、さらに、他〔の世〕を、〔常に〕正しく見ているなら、法(真理)を了知して、〔彼の〕心臓(心)を、さらに、〔彼の〕意を、諸々の大いなる憂いでさえも、苦しめることはありません。

 

95. 〔まさに〕その、わたしは、かつまた、布施もするでしょうし、かつまた、受益もするでしょうし、そして、親族たちを養いもするでしょうし、さらに、残りの者を守りもするでしょう。これが、〔あるがままに〕識知している者の為すべきことなのです」〔と〕。

 

96. 〔世尊は言った〕「一万年のあいだ、さらに、六千年のあいだ、螺貝の首ある大腕の者は、ラーマは、王権を為した」〔と〕。ということで──

 

 ダサラタ・ジャータカが、第七となる。

 

11. 1. 8. サンヴァラ・ジャータカ(サンヴァラ・本生物語462)

 

97. 〔ウポーサタが尋ねた〕「大王よ、〔わたしたちの父である〕人の君主は、まさに、あなたの戒を知っているので、これらの王子たちを供養しつつも、あなたのことを、何とも思わなかったのですね(安心し信頼していた)。

 

98. 〔わたしたちの父である〕大王が、まさに、〔世に〕止住しているときに、それどころか、天〔の神〕となり、天に赴いたときも、親族たちは、あなたのことを正しく認めたのですね──自己にとって義(利益)ある者と、正しく見ながら。

 

99. サンバラよ、どのような行持によって、同じ生まれのなかで抜きん出ているのですか。集いあつまった親族たちの群れは、どうして、あなたを超え行かないのですか」〔と〕。

 

100. 〔サンヴァラが答えた〕「王子よ、沙門たちを、大いなる聖賢たちを、〔わたしは〕嫉妬しません。恭しく、彼らを礼拝します。そのような方たちの〔両の〕足を敬拝します。

 

101. 彼らは、わたしのことを〔知ります〕──法(真理)の徳と結び付いた者と、〔法を〕聞こうとする者と、嫉妬なき者と。沙門たちは、法(真理)の徳を喜ぶ聖賢たちは、〔わたしに〕教示します。

 

102. わたしは、沙門たちの、大いなる聖賢たちの、彼らの言葉を聞いて、何であれ、軽んじることはありません。法(教え)において、わたしの意は喜びあるものとなります。

 

103. 象兵たちが、親兵たちが、車兵たちが、歩兵たちがいます。彼らの、決まっている食事と報酬を、〔わたしは〕拒みません。

 

104. そして、わたしには、大臣たちが存在します──助言者たる侍者たちも。〔人々は〕バーラーナシーへと、多くの肉や酒や水を持ち込みします。

 

105. さらに、また、種々なる国土からやってきた、栄える商人たちがいます。彼らにたいしては、わたしによる守護が加えられています。ウポーサタよ、このように知りたまえ」〔と〕。

 

106. 〔ウポーサタが言った〕「サンヴァラよ、法(正義)によって、まさに、親族たちのために、王権を為したまえ。〔あなたは〕思慮ある者として、かつまた、賢者として、〔世に〕存しています──さらに、また、親族たちにとって益ある者として。

 

107. 親族に遍く囲まれた、〔まさに〕その、あなたを、種々なる宝を集めた〔あなた〕を、朋友ならざる者(敵)たちが打ち負かすことはありません──阿修羅の君主が、インダ(インドラ神・帝釈天)を〔打ち負かせない〕ように」〔と〕。ということで──

 

 サンヴァラ・ジャータカが、第八となる。

 

11. 1. 9. スッパーラカ・ジャータカ(スッパーラカ・本生物語463)

 

108. 〔商人たちが尋ねた〕「剃刀の鼻をした人間たちが出没します。スッパーラカに、〔わたしたちは〕あなたに尋ねます。これは、どの海なのですか」〔と〕。

 

109. 〔菩薩は答えた〕「クルカッチャから出発した、財を探し求める商人たちの、舟が迷ったところ、〔それは〕『剃刀の花飾あるもの』と呼ばれます」〔と〕。

 

110. 〔商人たちが尋ねた〕「あたかも、火のように、太陽のように、海は見えます。スッパーラカに、〔わたしたちは〕あなたに尋ねます。これは、どの海なのですか」〔と〕。

 

111. 〔菩薩は答えた〕「クルカッチャから出発した、財を探し求める商人たちの、舟が迷ったところ、〔それは〕『火の花飾あるもの』と呼ばれます」〔と〕。

 

112. 〔商人たちが尋ねた〕「あたかも、乳酪のように、牛乳のように、海は見えます。スッパーラカに、〔わたしたちは〕あなたに尋ねます。これは、どの海なのですか」〔と〕。

 

113. 〔菩薩は答えた〕「クルカッチャから出発した、財を探し求める商人たちの、舟が迷ったところ、〔それは〕『乳酪の花飾あるもの』と呼ばれます」〔と〕。

 

114. 〔商人たちが尋ねた〕「あたかも、草のように、作物のように、海は見えます。スッパーラカに、〔わたしたちは〕あなたに尋ねます。これは、どの海なのですか」〔と〕。

 

115. 〔菩薩は答えた〕「クルカッチャから出発した、財を探し求める商人たちの、舟が迷ったところ、〔それは〕『草の花飾あるもの』と呼ばれます」〔と〕。

 

116. 〔商人たちが尋ねた〕「あたかも、葦のように、竹のように、海は見えます。スッパーラカに、〔わたしたちは〕あなたに尋ねます。これは、どの海なのですか」〔と〕。

 

117. 〔菩薩は答えた〕「クルカッチャから出発した、財を探し求める商人たちの、舟が迷ったところ、〔それは〕『葦の花飾あるもの』と呼ばれます」〔と〕。

 

118. 〔商人たちが尋ねた〕「大いなる恐怖にして、禍々しき、人間ならざる声が聞こえます。あたかも、暗坑や深淵のように、海は見えます。スッパーラカに、〔わたしたちは〕あなたに尋ねます。これは、どの海なのですか」〔と〕。

 

119. 〔菩薩は答えた〕「クルカッチャから出発した、財を探し求める商人たちの、舟が迷ったところ、〔それは〕『バラヴァー・ムカ(地獄の入り口)』と呼ばれます。

 

120. 〔成長して〕自己のことを思念する、そののちは──知性に至り得た者として〔世に〕存する、そののちは──たとえ、一つの命あるものであれ、思弁して〔そののち〕害したことを、〔わたしは〕証知しません。この真なる言葉によって、舟は、〔無事〕安穏に戻れ」〔と〕。ということで──

 

 スッパーラカ・ジャータカが、第九となる。

 

 十一なるものの集まりは〔以上で〕終了となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「優れた吉祥なる母を養う象(母を養う者)があり、さらに、ジュンハなるものとダンマ(ダンマ天子)と優れたウダヤがあり、そこで、飲むもの(飲用水)とユダンチャヤなるものがあり、そして、ダサラタとサンヴァラと彼岸に至ったもの(スッパーラカ)とともに、〔それらの〕九がある」と。

 

12. 十二なるものの集まり

 

12. 1. 小なるクナーラの章

 

12. 1. 1. チューラクナーラ・ジャータカ(小なるクナーラ・本生物語464)

 

1. 〔菩薩は言った〕「心が軽佻で貪欲の者たちに、恩知らずの裏切り者たちに、婦女たちに、天の有情ならざる〔世の〕男は、信を置くことはできない。

 

2. 彼女たちは、為されたことを覚知せず、為すべきことを〔覚知せ〕ず、母を、父を、あるいは、兄弟を、〔覚知し〕ない。法(正義)を超え行く聖ならざる者たちであり、まさしく、自らの、心の支配に行き着く。

 

3. 愛しく、意に適う、長きに従い住してきた者でさえも、慈しみ〔の思い〕ある命に等しい主人でさえも、諸々の不幸があるときは、さらに、諸々の為すべきことがあるときは、彼を捨棄する。それゆえに、わたしは、婦女たちを信頼しない。

 

4. まさに、婦女たちの心は、猿のようなもの、移りに移り行く木の影のようなもの。動きに動く婦女たちの心臓(心)は、車輪の外輪のように遍く転起する。

 

5. 彼女たちが、〔注意深く〕正視しながら、執取するべき形態ある富を、男に見る、そのときは、諸々の優雅な言葉で、この〔男〕を導く──カンボージャの者たちが、水から生じる〔草〕で、馬を〔誘う〕ように。

 

6. 〔注意深く〕正視しながら、執取するべき形態ある富を、男に見ない、そのときは、遍きにわたり、彼を遍く避ける──〔川を〕超え渡り、川の彼岸に至った者が、筏を〔捨て去る〕ように。

 

7. 粘着物の如き者たちであり、炎のように一切を食物とする者たちであり、激しく流れる川のような変わり身の幻術師たちである。なぜなら、これらの者たちは、愛しき者に〔慣れ親しみ〕、かつまた、愛しからざる者にも慣れ親しむからである。あたかも、舟が、此方の岸辺に〔赴き〕、かつまた、彼方〔の岸辺〕に〔赴く〕ようなもの。

 

8. 彼女たちは、一者のものにあらず、二者のものにあらず、〔市場に〕開かれた店のようなものである(万人共有のものである)。彼が、彼女たちのことを、『わたしのもの』と思うとして、風を、網で捕らえるようなもの。

 

9. あたかも、そして、川のように、さらに、道のように、酒場や集会場や水飲場のように、このように、まさに、世の婦女たちはある(万人共有のものである)。彼女たちに、限度は見出されない。

 

10. これらの者たちは、火に等しく、黒蛇の如くにして、外の草に〔餌を求める〕牛たちのように、優れた者、優れた者に、触れ行く。

 

11. 火に、象に、黒蛇に、即位灌頂した〔王〕に、さらに、全ての女人に──これらの者たちに、人は、〔慎重なる〕判断ののち、親近するがよい。それらの者たちにあっては、まさに、一切の状態が知り難い。

 

12. 最たる色艶の者は、〔慣れ親しむべきに〕あらず。多くの者に欲せられる者は、〔慣れ親しむべきに〕あらず。能ある女人は、慣れ親しむべきにあらず。他者の妻は、〔慣れ親しむべきに〕あらず。財を因とする者は、〔慣れ親しむべきに〕あらず。これらの五者の婦女は、慣れ親しむべきにあらず」〔と〕。ということで──

 

 チューラクナーラ・ジャータカが、第一となる。

 

12. 1. 2. バッダサーラ・ジャータカ(バッダサーラ・本生物語465)

 

13. 〔王が尋ねた〕「誰なのですか、諸々の清浄の衣とともにあるあなたは──悩苦のうちに宙に立っている〔あなた〕は。何ゆえに、あなたから、諸々の涙が流れるのですか。どこから、あなたに、恐怖がやってきたのですか」〔と〕。

 

14. 〔菩薩は答えた〕「陛下よ、まさしく、あなたの領土において、わたしのことを、〔人々は〕『幸いなるサーラ(サーラ樹の天神)〕』と知ります。わたしは、六万年のあいだ、供養され立っています。

 

15. 方角の長(王)よ、諸々の城市を、そして、諸々の家屋を、さらに、また、諸々の様々な種類の高楼を、〔それらを〕作らせながら、彼らは、わたしを軽んじませんでした。まさしく、すなわち、彼らが、わたしを供養したように、まさしく、そのように、あなたもまた、〔わたしを〕供養したまえ」〔と〕。

 

16. 〔王が言った〕「あなたのような〔木〕を、わたしは見ません──身体による豊満さとして、あなたの木〔に匹敵するもの〕を。〔あなたは〕形姿麗しき者として存しています──高さと広さによって、生まれによって。

 

17. 高楼を作らせるのです。意が喜びとする一本柱として、そこにおいて、あなたを移すのです。夜叉(天神)よ、あなたに、長き生命〔有れ〕」〔と〕。

 

18. 〔菩薩は言った〕「このように、心が生起しました(考えが浮かんだ)。〔わたしと、わたしの〕肉体〔であるサーラ樹〕とが、別々の状態になるなら、わたしを、多々に切り裂いて、断片に切り分けてください。

 

19. そして、〔最初に〕先端で断ち切って、さらに、中央で〔断ち切って〕、最後に根元で断ち切ってください。このように、わたしが断ち切られていると、苦痛なき死が存するはずです」〔と〕。

 

20. 〔王が尋ねた〕「あたかも、生きながら、手足を断ち切り、さらに、耳鼻を〔断ち切り〕、そののち、最後に頭を断ち切るかのように、それは、苦痛ある死が存するはずです。

 

21. 幸いなるサーラよ、林の長よ、はたして、断片として断ち切られることが、安楽なのでしょうか。何を因として、何に執取して、断片として断ち切られることを、〔あなたは〕求めるのですか」〔と〕。

 

22. 〔菩薩は答えた〕「すなわち、法(真理)を伴った因があり、そして、〔その〕因に執取して、断片として断ち切られることを、〔わたしは〕求めます。大王よ、わたしの〔言葉を〕聞きたまえ。

 

23. わたしの親族たちは、わたしの脇で、安全に生じ、安楽に増大してきたのです。〔枝とともに断ち切られる〕わたしは、彼らをもまた害することになるでしょう。他の者たちに、安楽ならざることが増えるのです」〔と〕。

 

24. 〔王が言った〕「幸いなるサーラよ、林の長よ、〔あなたは〕思弁するべき形態のものを〔正しく〕思弁します。〔あなたは〕親族たちの益を欲する者として存しています。友よ、あなたに恐怖なき〔平安〕を与えましょう」〔と〕。ということで──

 

 バッダサーラ・ジャータカが、第二となる。

 

12. 1. 3. サムッダヴァーニジャ・ジャータカ(海の商人・本生物語466)

 

25. 〔男が言った〕「〔地を〕耕し、〔種を〕蒔く、それらの人たちは、行為の果に依拠して生きる人間たちである。この島〔の果〕を分け合う者たちにあらず(この島では労働せずに食料が入手できる)。ジャンブ洲(閻浮提:インド大陸)より、この〔島〕こそは、まさに、優れている」〔と〕。

 

26. 〔善神が言った〕「月が十五夜に至ったとき、海洋の衝撃は、大いなるものと成り、この秀逸なる島を飲み尽くすでしょう。〔その大波が〕あなたたちを打ち殺すことがあってはなりません。〔あなたたちは〕他の避難所に赴きなさい」〔と〕。

 

27. 〔悪神が言った〕「この海洋の水の衝撃が、この秀逸なる島を飲み尽くすことは、けっして、ありません。多くの形相によって、わたしは、それを見ました。恐れてはいけません。何を憂い悲しむというのでしょう。歓喜するのです。

 

28. 沢山の食物があり、多くの食べ物と飲み物がある、この秀逸なる居住所に落ち着きなさい(※)。何であれ、あなたたちに、恐怖を、〔わたしは〕見ません。子々孫々に大いに歓喜するのです」〔と〕。

 

※ テキストには pattattha とあるが、PTS版により patattha と読む。

 

29. 〔愚者が言った〕「すなわち、この天〔の神〕は、南の方角において、『平安である』と招き呼ぶ。彼に、真理はある。北の者は、恐怖と恐怖なき〔あり方〕について知る者ではない。恐れてはならない。何を憂い悲しむというのだ。歓喜するのだ」〔と〕。

 

30. 〔菩薩は言った〕「すなわち、これらの夜叉たちは、別々に説く。一者は、恐怖を指し示す。一者は、平安を〔指し示す〕。それでは、さあ、わたしの言葉を聞きなさい。すみやかに、すぐさまに、〔急ぐのだ〕。全ての者たちが滅び去ってはならない。

 

31. 全ての者たちが、集いあつまって、舟を作るのだ。全ての機関を具有した堅固な胴ある〔舟〕を。それで、もし、南のこの者が、真理を言ったなら、北のこの者は、無駄に非難する(嘘を言っている)。まさしく、そして、その〔舟〕は、わたしたちにとって厄介物と成るであろうが、しかしながら、この島を完全に捨て去ることはない。

 

32. それで、もし、そして、まさに、北〔のこの者〕が、真理を言ったなら、南のこの者は、無駄に非難する。まさしく、その舟に乗って、わたしたちは、全ての者たちが、このように、〔無事〕安穏に、彼岸へと超え渡るであろう。

 

33. まさに、最初のものによって、最勝のものと安易に収め取らず、最後のものが視野に至り来たのを収め取って、そして、彼が、ここに、真実を、精査して〔そののち〕収め取るなら、その人は、まさに、最勝の境位へと近しく至る」〔と〕。

 

34. 〔世尊は言った〕「あたかも、また、それらの商人たちが、海洋の水の中にありながら、自らの行為によって、〔無事〕安穏に、〔わが身を陸地に〕運んだように、広き智慧を有する者は、未来の義(利益)を理解して、たとえ、僅かでも、超え行くことがない。

 

35. しかしながら、迷妄によって、味を貪り求める愚者たちは、未来の義(利益)を理解せずして、現在に生じた義(利益)に沈む。すなわち、それらの〔愚かな〕人間たちが、海中に〔沈んだ〕ように。

 

36. 未来に為すべきことに、備えを為すがよい。『わたしを、為すべきことが、為すべき時において悩ますことがあってはならない』〔と〕。備えを為した者を、為すべきことに為す者を、そのような者である彼を、〔まさに〕その、為すべきことが、為すべき時において悩ますことはない」〔と〕。ということで──

 

 サムッダヴァーニジャ・ジャータカが、第三となる。

 

12. 1. 4. カーマ・ジャータカ(欲望・本生物語467)

 

37. 〔菩薩は言った〕「欲望〔の対象〕を欲しているとして、もし、彼の、その〔欲望〕が等しく実現するなら、たしかに、喜悦の意ある者と成る──人は、〔まさに〕その、求めるところのものを得て。

 

38. 欲望〔の対象〕を欲しているとして、もし、彼の、その〔欲望〕が等しく実現するなら、そののち、欲望のうちに、他のそれを〔見出す〕──炎暑において(※)、渇愛を見出すように。

 

※ テキストには dhamme とあるが、PTS版により ghamme と読む。

 

39. 角ある牛が増大しつつあるなら、角も成長するように、このように、愚かな人である、〔あるがままに〕識知していない愚者が増大しつつあるなら、渇愛〔の思い〕も、そして、涸渇〔の思い〕も、より一層、増大する。

 

40. 地における、米と麦を、牛と馬を、奴隷と家来を、〔それらを〕与えても、しかしながら、一者にとっては十分ならず(一者の欲望を満たさない)。かくのごとく知って、正しき〔道〕を歩むがよい。

 

41. 王は、〔他を〕打ち負かして、地を征圧して、海を限りとして有する大地を占拠しつつも、海の此岸では不満の様子で、海の彼岸でさえも望み求めるであろう。

 

42. 諸々の欲望〔の対象〕を随念している、それまでは、意によって満足に到達することはなかったが、そののち、〔欲望の対象から〕退転した者たちは、〔その〕対策を見て、彼らは、まさに、善く満足した者たちとなる──すなわち、智慧によって満足した者たちとなり。

 

43. 智慧によって満足することは、最勝である。彼は、諸々の欲望〔の対象〕によって悩み苦しまない。智慧によって満足した人に、渇愛は、支配を為さない。

 

44. 諸々の欲望〔の対象〕を、まさしく、摘出するのだ。欲求少なく〔欲望の対象に〕妄動なき者として〔世に〕存するがよい。海ほどの人は、彼は、諸々の欲望〔の対象〕によって悩み苦しまない。

 

45. 車工が、〔動物の〕皮から〔外輪を巻く〕履物を切り抜くように、諸々の欲望〔の対象〕のなかの、そのもの、そのものを、捨て去るなら、そのもの、そのものが、安楽として成就する。もし、一切の安楽を求めるなら、一切の欲望〔の対象〕を完全に捨て去るがよい」〔と〕。

 

46. 〔王が言った〕「あなたによって語られた八つの詩偈は、〔それらの〕全てが、千〔金〕と成ります。大いなる梵(婆羅門)よ、受け取ってください。善きかな、あなたによって語られた、このことは」〔と〕。

 

47. 〔菩薩は言った〕「わたしにとって、千〔金〕に、百〔金〕に、あるいは、万〔金〕に、義(意味)はありません。最後の詩偈を語りつつある、わたしの意は、欲望〔の対象〕を喜びません」〔と〕。

 

48. 〔王が言った〕「賢きは、まさに、この学生である。一切の世を知る牟尼である。すなわち、この渇愛を、苦しみを生むものと遍く知る、賢者である」〔と〕。ということで──

 

 カーマ・ジャータカが、第四となる。

 

12. 1. 5. ジャナサンダ・ジャータカ(ジャナサンダ・本生物語468)

 

49. 〔世尊は言った〕「まさに、これらの十の境位がある。過去において、それらを為さずして、その者が、のちに悩み苦しむ、〔十の境位である〕。まさしく、かくのごとく、ジャナサンダ(菩薩)は言った」〔と〕。

 

50. 〔菩薩は言った〕「〔彼は〕富を得ずして、〔のちに〕悩み苦しむ。『過去において、〔財は〕集められなかった』『過去において、〔わたしは〕財を探し求めなかった』〔と〕、かくのごとく、のちに悩み苦しむ。

 

51. 『かつては可能な形のものとして存しつつも、わたしは、〔その〕技能を学ばなかった。技能なき者の生活は、苦難である』〔と〕、かくのごとく、のちに悩み苦しむ。

 

52. 『かつて、〔わたしは〕存した──でまかせを説く者として、中傷する者として、陰口を言う者として、そして、狂暴なる者として、さらに、また、粗暴なる者として』〔と〕、かくのごとく、のちに悩み苦しむ。

 

53. 『かつて、〔わたしは〕存した──命あるものを殺す者として、さらに、また、残忍な者として、聖ならざる者として。〔わたしは〕生類たちを敬わなかった』〔と〕、かくのごとく、のちに悩み苦しむ。

 

54. 『まさに、多くの未婚の女たちが存しているのに、〔わたしは〕他者の妻に慣れ親しんだ』〔と〕、かくのごとく、のちに悩み苦しむ。

 

55. 『まさに、多くの食べ物と飲み物が現起し存しているのに、過去において、〔わたしは〕布施を施さなかった』〔と〕、かくのごとく、のちに悩み苦しむ。

 

56. 『母を、さらに、また、父を、若さ〔の盛り〕が去り、老い朽ちた者を、〔やれば〕できる者として存していながら、〔わたしは〕養わなかった』〔と〕、かくのごとく、のちに悩み苦しむ。

 

57. 『師匠を、教師を、一切の欲望の味を運び来る父を、〔わたしは〕軽んじた』〔と〕、かくのごとく、のちに悩み苦しむ。

 

58. 『戒ある多聞の者たちである、沙門たちに、さらに、また、婆羅門たちに、過去において、〔わたしは〕奉侍しなかった』〔と〕、かくのごとく、のちに悩み苦しむ。

 

59. 『善きかな、苦行の歩み有ることは、そして、寂静なる者となり、奉侍されることは。しかしながら、〔わたしには〕過去における苦行の歩みはない』〔と〕、かくのごとく、のちに悩み苦しむ。

 

60. そして、彼が、これらの〔十の〕境位を根源から実践するなら、諸々の人として為すべきことを為しながら、彼は、のちに悩み苦しまない」〔と〕。ということで──

 

 ジャナサンダ・ジャータカが、第五となる。

 

12. 1. 6. マハーカンハ・ジャータカ(大なるカンハ・本生物語469)

 

61. 〔ウシーナカが尋ねた〕「黒く、そして、黒く、さらに、おぞましく、白い歯が光り輝き、五つの縄で結縛されています。太陽たる方よ、何なのですか、あなたの犬は」〔と〕。

 

62. 〔菩薩は答えた〕「ウシーナカよ、この〔犬〕は、獣たちを義(目的)として〔世に〕有るのではない。人間たちに、不実が有って、そのとき、カンハ(黒犬)は、〔この結縛から〕解き放たれるのだ。

 

63. 鉢を手にする沙門たちが、剃髪し大衣を着た者たちが、諸々の鋤で耕作する、そのとき、カンハは、〔この結縛から〕解き放たれるのだ。

 

64. 苦行者たる女性出家者たちが、剃髪し大衣を着た者たちが、すなわち、世において、〔彼らが〕赴くとき、そのとき、カンハは、〔この結縛から〕解き放たれるのだ。

 

65. 上唇〔の髭〕が長く、歯には泥、頭には塵の結髪者たちが、借金〔の返済〕を催促して赴く、そのとき、カンハは、〔この結縛から〕解き放たれるのだ。

 

66. 諸々のヴェーダ(ヴェーダ聖典)を、サーヴィッティー(サーヴィトリー讃歌)を、さらに、祭祀の経典を、学得して〔そののち〕、婆羅門たちが、賃金のために祭祀をする、そのとき、カンハは、〔この結縛から〕解き放たれるのだ。

 

67. 母を、さらに、また、父を、若さ〔の盛り〕が去り、老い朽ちた者を、〔やれば〕できる者として存していながら、〔人々が〕養わない、そのとき、カンハは、〔この結縛から〕解き放たれるのだ。

 

68. 母を、さらに、また、父を、若さ〔の盛り〕が去り、老い朽ちた者を、〔人々が〕『あなたたちは、愚者である』と説く、そのとき、カンハは、〔この結縛から〕解き放たれるのだ。

 

69. 師匠の妻のもとへと、友人〔の妻〕のもとへと、母の姉妹のもとへと、父の姉妹のもとへと、すなわち、世において、〔人々が〕赴くとき(性関係をもつとき)、そのとき、カンハは、〔この結縛から〕解き放たれるのだ。

 

70. 剣と盾を掴んで、刀を突き上げて、婆羅門たちが、道で殺害を為す、そのとき、カンハは、〔この結縛から〕解き放たれるのだ。

 

71. 白い肌の、粗大な腕の、陰険な寡婦の子たちが、友情の破綻を為す(仲たがいをさせる)、そのとき、カンハは、〔この結縛から〕解き放たれるのだ。

 

72. 〔人を〕欺く幻術師たちが、正ならざる人士の思弁ある者たちが、すなわち、世に有るとき、そのとき、カンハは、〔この結縛から〕解き放たれるのだ」〔と〕。ということで──

 

 マハーカンハ・ジャータカが、第六となる。

 

12. 1. 7. コーシヤ・ジャータカ(コーシヤ・本生物語470)

 

73. 〔コーシヤが言った〕「〔わたしは〕買うことも、まさしく、なく、売ることもまた、ない。さらに、また、わたしには、そして、蓄積も存在しない。極めて難渋の形あるものとして〔苦労の末に得られた〕、この〔得物〕は、まさに、僅かなるもの。パッタ(容積の単位・一パッタは四分の一升)の飯は、これは、二者にとっては十分ならず」〔と〕。

 

74. 〔菩薩は言った〕「少なきなかから、少なきを施すがよい。中なるなかから、中なるを〔施すがよい〕。多きなかから、多きを施すがよい。布施なきは、成り立たず。

 

75. コーシヤよ、それを、あなたに、〔わたしは〕説く。諸々の布施を、〔まずは〕施したまえ。そして、食べたまえ。聖なる道に、〔まずは〕入りたまえ。独りで食べる者は、安楽を得ず」〔と〕。

 

76. 〔月の神のチャンダが言った〕「そして、彼の捧げものは、無駄と成り、さらに、また、〔彼の〕発奮も、無駄と〔成る〕──客が坐ったときに、彼が、食料を、独りで食べるなら。

 

77. コーシヤよ、それを、あなたに、〔わたしは〕説く。諸々の布施を、〔まずは〕施したまえ。そして、食べたまえ。聖なる道に、〔まずは〕入りたまえ。独りで食べる者は、安楽を得ず」〔と〕。

 

78. 〔日の神のスリヤが言った〕「そして、彼の捧げものは、真理と成り、さらに、また、〔彼の〕発奮も、真理と〔成る〕──客が坐ったときに、彼が、食料を、独りで食べないなら。

 

79. コーシヤよ、それを、あなたに、〔わたしは〕説く。諸々の布施を、〔まずは〕施したまえ。そして、食べたまえ。聖なる道に、〔まずは〕入りたまえ。独りで食べる者は、安楽を得ず」〔と〕。

 

80. 〔帝釈天の馭者のマータリが言った〕「そして、池に、人は捧げものをする──さらに、〔水〕多き〔聖なる〕ガヤーにおいて、ドーナ〔の池〕において、ティンバルの渡し場において、流れ激しき大河において。

 

81. そして、彼の捧げものは、現実と成り、そして、彼の発奮は、現実と成る──客が坐ったときに、彼が、食料を、独りで食べないなら。

 

82. コーシヤよ、それを、あなたに、〔わたしは〕説く。諸々の布施を、〔まずは〕施したまえ。そして、食べたまえ。聖なる道に、〔まずは〕入りたまえ。独りで食べる者は、安楽を得ず」〔と〕。

 

83. 〔音楽神のパンチャシカが言った〕「まさに、彼は、結縛を有するものを、長き糸の釣針を、飲む──客が坐ったときに、彼が、食料を、独りで食べるなら。

 

84. コーシヤよ、それを、あなたに、〔わたしは〕説く。諸々の布施を、〔まずは〕施したまえ。そして、食べたまえ。聖なる道に、〔まずは〕入りたまえ。独りで食べる者は、安楽を得ず」〔と〕。

 

85. 〔コーシヤが尋ねた〕「秀逸なる色艶あるは、まさに、これらの婆羅門たちである。そして、何を因として、あなたたちのこの犬は、高下諸々の色艶の輝きに変異するのですか。婆羅門たちよ、どうか、告げ知らせてください。いったい、あなたたちは、どのような方たちなのですか」〔と〕。

 

86. 〔菩薩は答えた〕「ここにやってきた者たちは、そして、チャンダと、さらに、スリヤと、〔その〕両者であり、いっぽう、この者は、天の馭者たるマータリです。わたしは、帝釈〔天〕として、三十三〔天の神々〕たちのインダ(インドラ神)として、〔世に〕存しています。そして、この者は、まさに、『パンチャシカ』と呼ばれます。

 

87. 諸々の手鈴が、そして、諸々の小鼓が、さらに、諸々の太鼓や鼓が、眠りについたこの者(パンチャシカ)を目覚めさせます。そして、目覚めた〔この者〕は愉悦します。

 

88. 彼らが誰であれ、これらの物惜で吝嗇の者たちが、沙門や婆羅門たちを誹謗する者たちとしてあるなら、まさしく、この〔世において〕、肉体としての肉身を捨て置いて、身体の破壊ののち、地獄に行きます。

 

89. 彼らが誰であれ、これらの善き境遇を願い求めている者たちが、自制と分与の法(性質)において安立した者たちとしてあるなら、肉体としての肉身を捨て置いて、身体の破壊ののち、善趣に行きます。

 

90. あなたは、過去の諸生において、わたしたちの親族として存していました。〔まさに〕その〔あなた〕は、物惜〔の思い〕ある者として、〔他者を〕悩ます者として、悪しき法(性質)の者として、〔世に有ります〕。まさしく、あなたの義(利益)のために、ここにやってきた者たちとして、〔わたしたちは〕存しています。悪しき法(性質)の者として、地獄に赴いてはいけません」〔と〕。

 

91. 〔コーシヤが言った〕「まさに、たしかに、あなたたちは、わたしの益を欲する者たちです。すなわち、わたしのために、〔あなたたちは〕正しく教え示します。〔まさに〕その、わたしは、そのとおりに為すでしょう──益を探し求める者たちによって説かれた一切を。

 

92. 〔まさに〕この、わたしは、まさしく、今日、〔物惜を〕止めます。そして、また、わたしは、何であれ、悪しき〔行為〕を為しません。さらに、また、わたしには、何であれ、施すべからざるものは存在しません(一切を施す)。さらに、また、施さずして、水を飲みません。

 

93. そして、このように、一切時に、わたしが施していると、ヴァーサヴァ(帝釈天)よ、これらの財物は滅尽するでしょう。帝釈〔天〕よ、そののち、わたしは、出家するでしょう──限りあるかぎりの諸々の欲望〔の対象〕を捨棄して」〔と〕。ということで──

 

 コーシヤ・ジャータカが、第七となる。

 

12. 1. 8. メンダカパンハ・ジャータカ(羊の問い・本生物語471)

 

94. 〔王が尋ねた〕「過去の事実として、彼らには(羊と犬には)、いついかなる時であれ、この世において、七歩のあいだでさえも、友誼はない。朋友ならざる者たちとして生まれた二者が、友人たちとなり、〔互いに〕信を置いて、〔世を〕歩む。何を因としてか。

 

95. もしくは、今日、朝食の時に、わたしに、この問い〔の答え〕を説くことができないなら、おまえたちの全てを、国土から追放するであろう。なぜなら、わたしにとって、智慧浅き類の者たちに、義(目的)はないからである」〔と〕。

 

96. 〔セーナカが言った〕「大勢の人が集いあつまり、おぞましくあるとき、人の喧噪が集いあつまり、生じたとき、〔わたしたちは〕意が散乱した者たちとなり、無数の心ある者たちとなり、この問い〔の答え〕を説くことができません。

 

97. まさしく、一境の心ある者たちとなり、一者一者が静所に赴き、義(道理)を熟慮して〔そののち〕、人のインダよ、遠離〔の境地〕において触知して、慧者たちは、そこで、この義(道理)を説くでしょう」〔と〕。

 

98. 〔セーナカが答えた〕「ウッガの子である王子たちにとって、羊の肉は、愛しく意に適うもの。彼らは、犬の肉を食べません。そこで、羊には、犬との友誼が存するのです」〔と〕。

 

99. 〔プックサが答えた〕「〔彼らは〕羊の皮を剥ぎます──彼の背の敷物が安楽なるを因として。しかしながら、彼らは、犬の〔皮を〕敷きません。そこで、羊には、犬との友誼が存するのです」〔と〕。

 

100. 〔カーミンダが答えた〕「まさに、巻いた角あるのが羊であるなら、しかしながら、犬には、〔両の〕角は存在しません。草を食物とするのが〔羊であるなら〕、しかしながら、〔犬は〕肉を食料とします。そこで、羊には、犬との友誼が存するのです」〔と〕。

 

101. 〔デーヴィンダが答えた〕「羊は、草を食べ、葉を食べます。しかしながら、犬は、草を食べず、葉を〔食べ〕ません。犬は、兎や鼠を捕らえます。そこで、羊には、犬との友誼が存するのです」〔と〕。

 

102. 〔菩薩は答えた〕「八半足の者(羊)は、四足の者(犬)のために──八つの爪ある羊は、見られることなく。この者(犬)は、この者(羊)のために、干し草を運びます。この者(羊)は、この者(犬)のために、肉を運びます。

 

103. 優美なる高楼に赴いたヴィデーハ〔国〕の最勝者(王)は、互いに他の食料が行き交うのを──そして、まさに、これを、人のインダたる方は、犬と羊の友誼と見たのです」〔と〕。

 

104. 〔王が言った〕「わたしには、まさに、少なからざる形態の諸々の利得がある。〔まさに〕その〔わたし〕の家には、このような賢者たちがいるのだ。問いの、深遠なる在り方を、精緻なる義(道理)を、慧者たちは、見事に語られた〔言葉〕によって理解する。

 

105. そして、一者一者に、雌騾馬と車を、さらに、一者一者に、栄える優れた村を、賢者たるあなたたちの全てに与えよう──見事に語られた〔言葉〕によって最高に満足した意ある者として」〔と〕。ということで──

 

 メンダカパンハ・ジャータカが、第八となる。

 

12. 1. 9. マハーパドゥマ・ジャータカ(マハーパドゥマ・本生物語472)

 

106. 〔人々が言った〕「他者の汚点を、微細のものも、諸々の粗大のものも、全てにわたり、〔善く〕見ずして、自ら、注視せずして、権力者は、棒(刑罰)を課すべきではない。

 

107. そして、彼が、注視せずして、〔権力者たる〕士族(王)として、棒を為すなら、彼は、生まれながらの盲者のように、棘を有し蝿を有するものを飲む。

 

108. 罰すべきではない者を罰し、かつまた、罰すべき者を罰すべきではない者と〔為す〕。盲者のように平坦ならざる道を〔行き〕、正義と正義ならざるを知らない。

 

109. そして、彼が、これらの状況を、微細のものも、諸々の粗大のものも、全てにわたり、善く見られたものと〔為して〕、統治するなら、彼は、まさに、執行するに値する。

 

110. 一方的に柔和でも、あるいは、一方的に鋭利過ぎるのでも、自己を大いなる〔地位〕に据え置くことはできない。それゆえに、両者を習行するべきである。

 

111. 柔和なる者は、〔人々に〕貶められる者と成り、そして、鋭利過ぎる者は、〔他者からの〕怨みある者と〔成る〕。そして、この両者を知って、中なる〔あり方〕を励行するべきである。

 

112. 貪る者は、多きをもまた語り、怒る者もまた、多くを語る。王よ、女を契機として、子を殺すに値せず」〔と〕。

 

113. 〔王が言った〕「世〔の人々〕は、まさしく、全てが、一致して〔異を唱える〕。しかしながら、この女は、独りきりの者である。それをもって、わたしは、〔この女の言うとおりに〕実践する。赴け、その者(王子)を、〔断崖に〕放り投げよ」〔と〕。

 

114. 〔王が尋ねた〕「無数なるターラ(高さの単位・一ターラはターラ樹の高さに該当)の奈落に、そして、極めて超え難い深遠に、山の難所に落ちたのに、どうして、おまえは、そこにおいて死ななかったのか」〔と〕。

 

115. 〔菩薩は答えた〕「鎌首を生じた龍が、山の背生まれの強靭なる〔龍〕が、そこにおいて、〔何重もの〕蜷局で、わたしを受け止めたのです。それで、わたしは、そこにおいて死ななかったのです」〔と〕。

 

116. 〔王が尋ねた〕「王子よ、さあ、〔わたしは〕おまえを連れ戻すであろう──自らの家へと。王権を為せ。おまえに、幸せ〔有れ〕。林のなかで、何を為すというのだ」〔と〕。

 

117. 〔菩薩は答えた〕「たとえば、釣針を飲んで〔そののち〕、血を有するものを引き抜くなら、引き抜いて〔そののち〕、安楽の者として存するように、このように、〔わたしは〕自己のことを見ます」〔と〕。

 

118. 〔王が尋ねた〕「おまえは、いったい、何を、釣針と説くのだ。おまえは、何を、血を有するものと説くのだ。おまえは、いったい、何を、引き抜かれたものと説くのだ。〔問いを〕尋ねられた者として、それを、わたしに告げ知らせよ」〔と〕。

 

119. 〔菩薩は答えた〕「わたしは、欲望〔の対象〕を、釣針と説きます。象と馬を、血を有するものと説きます。捨て去られたものを、引き上げられたものと説きます。士族よ、このように知りたまえ」〔と〕。

 

120. 〔世尊は言った〕「チンチャーマーナヴィカーは、母として、そして、デーヴァダッタは、わたしの父として、アーナンダは、賢者たる龍として、さらに、サーリプッタは、天神として、わたしは、王子として、〔世に〕存した。このように、ジャータカを保持しなさい」〔と〕。ということで──

 

 マハーパドゥマ・ジャータカが、第九となる。

 

12. 1. 10. ミッターミッタ・ジャータカ(朋友たる者と朋友ならざる者・本生物語473)

 

121. 〔王が尋ねた〕「識者は、どのように勤しむべきであり、諸々のどのような行為を為している者を、思慮ある者は、朋友ならざる者と知るべきですか──見て〔そののち〕、かつまた、聞いて〔そののち〕、賢者たる者は」〔と〕。

 

122. 〔菩薩は答えた〕「〔朋友ならざる者は〕彼を見て高笑せず、そして、彼を歓迎せず、そして、彼を無視し、そして、反転する。

 

123. 〔朋友ならざる者は〕彼の朋友ならざる者たちに親近し、彼の朋友たちには慣れ親しまず、〔彼を〕褒め称えようと欲する者たちを妨害し、〔彼を〕罵倒している者たちを賞賛する。

 

124. そして、〔朋友ならざる者は〕彼に秘密を告げず、彼の秘密を秘密にせず、彼の行為を褒め称えず、彼の智慧を賞賛しない。

 

125. 〔朋友ならざる者は〕彼の生存なきときに喜び、彼の生存あるときに喜ばず、珍しい食料を得ても彼への念慮が生起せず、そののち、彼を慈しまない。ああ、こののち、彼もまた、〔朋友ならざる者を〕得るであろう。

 

126. 朋友ならざる者において確立されたものとして、かくのごとく、これらの十六の行相がある。それら〔の行相〕によって、朋友ならざる者を知るべきである──見て〔そののち〕、かつまた、聞いて〔そののち〕、賢者たる者は」〔と〕。

 

127. 〔王が尋ねた〕「識者は、どのように勤しむべきであり、諸々のどのような行為を為している者を、思慮ある者は、朋友たる者と知るべきですか──見て〔そののち〕、かつまた、聞いて〔そののち〕、賢者たる者は」〔と〕。

 

128. 〔菩薩は答えた〕「〔朋友たる者は〕彼の不在を思念し、帰還を愉悦し、そののち、愛嬌ある者と成り、言葉によって歓迎する。

 

129. 〔朋友たる者は〕彼の朋友たちに親近し、彼の朋友ならざる者たちには慣れ親しまず、〔彼を〕罵倒している者たちを妨害し、〔彼を〕褒め称えようと欲する者たちを賞賛する。

 

130. そして、〔朋友たる者は〕彼に秘密を告げ、そして、彼の秘密を秘密にし、そして、彼の行為を褒め称え、彼の智慧を賞賛する。

 

131. そして、〔朋友たる者は〕彼の生存あるときに喜び、彼の生存なきときに喜ばず、珍しい食料を得ては彼への念慮が生起し、そののち、彼を慈しむ。ああ、こののち、彼もまた、〔朋友たる者を〕得るであろう。

 

132. 朋友たる者において確立されたものとして、かくのごとく、これらの十六の行相がある。それら〔の行相〕によって、朋友たる者を知るべきである──見て〔そののち〕、かつまた、聞いて〔そののち〕、賢者たる者は」〔と〕。ということで──

 

 ミッターミッタ・ジャータカが、第十となる。

 

 十二なるものの集まりは〔以上で〕終了となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「『心が軽佻で』(小なるクナーラ)とサーラ(バッダサーラ)を有するものと『耕し』(海の商人)があり、さらに、そこで、欲望と優れた『まさに、〔これらの〕十の境位がある』(ジャナサンダ)があり、そこで、カンハ(大なるカンハ)と善きコーシヤと優れた羊(羊の問い)があり、パドゥマ(マハーパドゥマ)があり、さらに、優れた朋友(朋友たる者と朋友ならざる者)とともに、〔それらの〕十がある」と。

 

13. 十三なるものの集まり

 

13. 1. アンバの章

 

13. 1. 1. アンバ・ジャータカ(アンバ・本生物語474)

 

1. 〔王が言った〕「梵行者よ、〔あなたは〕運んできてくれた──わたしのために、諸々のアンバの果(マンゴー)を、かつまた、小さいものも、かつまた、大きいものも、過去においては。梵(婆羅門)よ、まさしく、それらの呪文によるも、今や、あなたに、諸々の木の果は出現せず」〔と〕。

 

2. 〔婆羅門が言った〕「星宿の結合(星合)を待っているのです。しかしながら、呪文における時節を、寸時も見ないのです。かつまた、星宿の結合を、かつまた、時節を、得て〔そののち〕、たしかに、多大なるアンバの果をお運びいたします」〔と〕。

 

3. 〔王が言った〕「かつては、星宿の結合のことを話さなかった。かつては、時節を、寸時も指示しなかった。自ら、〔あなたは〕運んできてくれた──色艶と香りと味を具した、多大なるアンバの果を。

 

4. 梵よ、まさに、呪文の詠唱によって、かつて、あなたに、諸々の木の果が出現するも、〔まさに〕その〔あなた〕は、今日、呪文の詠唱すらもままならない。今日、〔まさに〕その、あなたの法(真理)は、これは、いったい、何なのだ」〔と〕。

 

5. 〔婆羅門が言った〕「チャンダーラ(旃陀羅:賎民・非人)の子(菩薩)が、わたしに付与してくれたのです。法(真理)によって、諸々の呪文を、そして、〔その〕性向を指示してくれたのです。『さてまた、わたしの名と姓を尋ねられたなら、けっして、秘密にしてはならない。呪文は、義(利益)を捨棄するであろう』〔と〕。

 

6. 〔まさに〕その、わたしは、人のなかで、人のインダ(国王)に尋ねられたので、〔虚栄の〕偽装に〔心が〕征服され、偽りを話しました──『これらは、婆羅門の呪文です』と誤って。呪文を捨棄した〔わたし〕は、哀れな者となり、泣き叫びます」〔と〕。

 

7. 〔王が言った〕「エーランダ〔樹〕であれ、あるいは、プチマンダ〔樹〕であれ、さらに、あるいは、パーリバッタカ〔樹〕であれ、蜜を義(目的)とする者が、〔そこに〕蜜を見出すなら、まさに、それは、彼にとって、最上の木となる。

 

8. 士族であれ、婆羅門であれ、庶民であれ、隷民であれ、チャンダーラ(賎民)やプックサ(非人)であれ、彼から、法(真理)を識知するなら、まさに、彼は、彼にとって、最上の人となる。

 

9. そして、棒を、さらに、殴打を、この者に与えて、喉元を掴んで、卑しむべき者を打ち倒せ。彼は、困難をもって得た最上の義(利益)を、思量()と高慢(過慢)によって、消失させてしまったのだ」〔と〕。

 

10. 〔菩薩に、婆羅門が言った〕「あたかも、平坦と思いつつ、溝に、洞に、奈落に、腐所に、落ちるようなものです。あるいは、『縄である』と、黒蛇を踏むようなものです。あたかも、盲者が、〔ものを見るために〕火を立てるようなものです。智慧を有する方よ、このように、また、打ち倒されたわたしを、あなたは〔見ます〕。呪文を捨棄した〔わたし〕に、ふたたび、〔呪文を〕付与してください」〔と〕。

 

11. 〔菩薩は言った〕「法(真理)によって、呪文を、あなたに付与した。あなたもまた、法(真理)によって、遍く収め取った。わが意を得た〔わたし〕は、あなたに、〔その〕性向をもまた指示した。法(真理)に依って立つ者を、彼を、呪文は捨棄せず。

 

12. 愚者よ、〔まさに〕その〔あなた〕は、困難をもって得た呪文を、それも、今日、人間の世において得難き〔呪文〕を、たとえ、何であれ、生きること(生活の手段)を得ておきながら、智慧少なき〔あなた〕は、偽りを語りつつ、消失させてしまった。

 

13. 愚者に、迷乱した者に、かつまた、恩知らずの者に、虚偽を話している者に、自制なき者に、わたしの、そのような諸々の呪文を与えることはない。どうして、諸々の呪文があるというのだ。去れ。わたしにとって好ましからず」〔と〕。ということで──

 

 アンバ・ジャータカが、第一となる。

 

13. 1. 2. パンダナ・ジャータカ(パンダナ・本生物語475)

 

14. 〔黒獅子が尋ねた〕「〔あなたは〕斧を手にする男として、林に入って、〔ここに〕立っています。友よ、〔問いを〕尋ねられた者として、わたしに告げ知らせたまえ。どのような木を断ち切ることを、〔あなたは〕求めるのですか」〔と〕。

 

15. 〔バーラドヴァージャが尋ねた〕「〔あなたは〕黒獅子として、諸々の林を歩みます──平坦なところを、さらに、平坦ならざるところを。友よ、〔問いを〕尋ねられた者として、わたしに告げ知らせたまえ。どのような木が、〔車の〕外輪として堅固ですか」〔と〕。

 

16. 〔黒獅子が答えた〕「まさしく、サーラ〔樹〕にあらず、カディラ〔樹〕にあらず、アッサカンナ〔樹〕にあらず。どうして、ダヴァ〔樹〕なのでしょう。しかしながら、パンダナ樹は、まさに、その木は、〔車の〕外輪として堅固です」〔と〕。

 

17. 〔バーラドヴァージャが尋ねた〕「その〔木〕の諸々の葉は、どのようなものなのですか。また、あるいは、幹は、どのようなものなのですか。友よ、〔問いを〕尋ねられた者として、わたしに告げ知らせたまえ。すなわち、〔わたしが〕パンダナ〔樹〕を知るように」〔と〕。

 

18. 〔黒獅子が答えた〕「その〔木〕の諸々の枝は、垂れ下がり、曲がっています。しかしながら、折れてはいません。その〔木〕の根元に、わたしが立ったなら、それが、まさに、パンダナ樹です。

 

19. 諸々の輻()として、諸々の車輪の轂(こしき)として、さらに、轅(ながえ)や外輪や車体として、〔その〕全てのために、あなたにとって、このパンダナ〔樹〕は、行為に適するものと成るでしょう」〔と〕。

 

20. 〔世尊は言った〕「かくのごとく、パンダナ樹もまた、まさしく、ただちに、〔バーラドヴァージャに〕語りかけた」〔と〕。〔パンダナ樹が言った〕「わたしにもまた、言葉が存在します。バーラドヴァージャよ、わたしの〔言葉を〕聞きたまえ。

 

21. 黒獅子の肩から、四アングラ(長さの単位・一アングラは約二センチ)〔の長さの皮〕を切り取って、それで、外輪を巻くのです。このように〔為すなら〕、より堅固に存するでしょう」〔と〕。

 

22. 〔世尊は言った〕「かくのごとく、パンダナ樹もまた、まさしく、ただちに、怨恨〔の思い〕を専注した。そして、〔すでに世に〕生まれた〔黒獅子〕たちに、〔いまだ世に〕生まれていない〔黒獅子〕たちに、〔全ての〕黒獅子たちに、苦しみをもたらした。

 

23. かくのごとく、このように、パンダナ〔樹〕は、黒獅子を、また、そして、黒獅子は、パンダナ〔樹〕を、互いに他と論争することで、互いに他を殲滅させた。

 

24. まさしく、このように、人間たちに、そこにおいて、論争が生じるなら、〔彼らは〕孔雀踊りを踊ることになる(自滅する)──すなわち、それらの黒獅子とパンダナ〔樹〕のように。

 

25. 〔わたしは〕それを、あなたたちに説く。あなたたちに、幸せ〔有れ〕──ここにおいて集いあつまった、そのかぎりの者たちは。喜び合いなさい。論争してはならない。〔あなたたちは〕黒獅子とパンダナ〔樹〕と成ってはならない。

 

26. 和合こそを学びなさい──覚者たちによって賞賛された、この〔和合こそ〕を。和合を喜ぶ者は、法(正義)に依って立つ者である。〔彼は〕束縛からの平安(軛安穏)から転落しない」〔と〕。ということで──

 

 パンダナ・ジャータカが、第二となる。

 

13. 1. 3. ジャヴァナハンサ・ジャータカ(疾走する鵞鳥・本生物語476)

 

27. 〔王が言った〕「鵞鳥(ハンサ・神が乗る鳥)よ、まさしく、ここに、降下してください。あなたとお会いするのは、わたしにとって愛しきこと。おいでになられた〔あなた〕は、イッサラ(イーシュヴァラ神・自在神)として存しておられます。それが、ここに存するものであるなら、〔何なりと〕申し付けてください。

 

28. 或る者にとっては、聞くことで、愛しき者たちと成ります。いっぽう、見て〔そののち〕、或る者の欲〔の思い〕は衰失するも、かつまた、見て〔そののち〕、かつまた、聞いて〔そののち〕、愛しき者たちと成ります。はてさて、どうでしょう、わたしと会うことで、〔あなたは、わたしを〕愛してくれますか。

 

29. わたしにとっては、聞くことで、愛しき者として存しました。さらに、より一層なるは、やってきてお会いすること。このように、わたしにとって、お会いするに愛しき方として、〔あなたはあります〕。鵞鳥よ、わたしの前にて住したまえ」〔と〕。

 

30. 〔菩薩は言った〕「〔わたしたちは〕あなたの家に住しましょう──〔わたしたちが〕常に尊敬され供養される者たちであるなら。しかしながら、或る時、酔った〔あなた〕は説くでしょう。『鵞鳥の王を、わたしのために調理せよ』」〔と〕。

 

31. 〔王が言った〕「厭わしきものとして存せ──〔まさに〕その、〔人を〕酔わせる飲み物(酒)は──それが、わたしにとって、あなたよりも愛しきものとなるなら。そして、また、〔人を〕酔わせる〔飲み物〕を、〔わたしは〕飲みません──〔あなたが〕わたしの家に住する、そのかぎりは」〔と〕。

 

32. 〔菩薩は言った〕「識知し易きは、野狐たちの〔鳴き声であり〕、そして、烏たちの鳴き声であるとして、王よ、人間たちの鳴き声は、それよりもより識知し難くあります。

 

33. たとえ、もし、『親族である』『朋友である』〔と〕、あるいは、『友人である』と、人が思うとして、すなわち、過去には、悦意の者として有って、未来には、敵として現われます。

 

34. 彼にたいし、意が通じるなら、彼は、遠く離れていないところにあり、共にもまたあります。彼にたいし、意が通じないなら、まさに、彼は、たとえ、現前にあるも、遠くにあります。

 

35. 内にあるもまた、彼は、清心した者として有り、海の彼方でも、清心した者として〔有ります〕。内にあるもまた、彼は、汚れた心の者として有り、海の彼方でも、汚れた心の者として〔有ります〕。

 

36. 車上の雄牛よ、すなわち、彼らが、敵たちであるなら、共住しながら離住します。国土を繁栄させる者(王)よ、〔賢者たちは〕遠く離れて存しながら、意によって共住します。

 

37. 長過ぎる居住によって、愛しき者は、愛しからざる者と成ります。まさに、あなたに〔別れを〕告げて、〔わたしたちは〕去り行きます。あなたにとって、愛しからざる者たちと成る前に」〔と〕。

 

38. 〔王が言った〕「もし、このように、乞い求めている者たちの合掌を、〔あなたが〕覚らないなら、世話する者たちとして存しているわたしたちの言葉を、〔あなたが〕為さないなら、このように、あなたに乞い求めます。ふたたび、〔共住の〕機会を作るべきです」〔と〕。

 

39. 〔菩薩は言った〕「もし、このように〔世に〕住んでいるわたしたちに、障りなく有るなら、大王よ、国土を繁栄させる者よ、そして、また、あなたに、さらに、わたしに、まさしく、また、まさに、お目にかかることになるでしょう──諸々の昼と夜の経過あるときに」〔と〕。ということで──

 

 ジャヴァナハンサ・ジャータカが、第三となる。

 

13. 1. 4. チューラナーラダ・ジャータカ(小なるナーラダ・本生物語477)

 

40. 〔菩薩は言った〕「諸々の薪は、おまえによって折られず、水は、おまえによって運ばれず、祭火もまた、おまえによって捧げられず、いったい、どうして、愚か者のように思い惑うのだ」〔と〕。

 

41. 〔子が言った〕「林に住することができません。カッサパ(菩薩)よ、あなたに〔別れを〕告げます。〔人のいない〕林地に住することは、苦痛です。〔人のいる〕国土に赴くことを、〔わたしは〕求めます。

 

42. すなわち、わたしが、ここから赴いて、その地方に住するとして、梵(婆羅門)よ、〔その地方における〕習行〔のあり方〕を、〔わたしは〕学びたいのです。その法(性質)を、わたしに教えてください」〔と〕。

 

43. 〔菩薩は言った〕「それで、もし、〔人のいない〕林地を捨棄して、さらに、諸々の林の根や果を〔捨棄して〕、〔人のいる〕国土に住することを選ぶなら、その法(性質)を、わたしの〔言葉を〕、こころして聞きなさい。

 

44. 毒を受用してはならない。深淵を遍く避けよ、そして、泥に沈んではならない。さらに、毒蛇のいるところでは、〔常に心を〕傾け、〔気をつけて〕歩むがよい」〔と〕。

 

45. 〔子が尋ねた〕「いったい、何が、梵行者たちにとって、毒となるのですか、あるいは、深淵となるのですか、あるいは、泥となるのですか。あなたは、何を、毒蛇と説くのですか。〔問いを〕尋ねられた者として、それを、わたしに告げ知らせてください」〔と〕。

 

46. 〔菩薩は答えた〕「息子よ、世には、『酒』という名で呼ばれる、抽出物がある。快意にして、芳しく、麗しく、美味にして小味の喩えあるものである。ナーラダよ、聖者たちは、それを、梵行者にとっての毒と言う。

 

47. 息子よ、世には、怠る者を転倒させる、それらの女たちがいる。風が、落ちた綿毛を〔舞い上げる〕ように、若者の心を奪い去る。ナーラダよ、これが、梵行者にとっての深淵と告げ知らされた。

 

48. 利得、名声、尊敬、さらに、他者の家々における諸々の供養、ナーラダよ、そして、これが、梵行者にとっての泥と告げ知らされた。

 

49. 息子よ、刃を有する王たちは、この大地を占拠する。息子よ、ナーラダよ、人間のインダ(国王)たちであり、大いなる者たちである、そのような者たちを、彼らを〔避けるがよい〕。

 

50. 権力者たちの、君主たちの、彼らの足下を歩むべきにあらず。ナーラダよ、梵行者にとっての、『毒蛇である』と告げ知らされたのだ。

 

51. そして、食事を義(目的)とする者は、食事の時には、その家へと近づいて行くべきである。すなわち、ここにおいて、善なるものを知るなら、そこにおいて、食糧を探し求め、歩むがよい。

 

52. 飲むことを義(目的)として、あるいは、食べることのために、他者の家に入って〔そののちは〕、〔正しく〕量られたものを咀嚼し、〔正しく〕量られたものを食べるがよい。そして、〔婦女の〕形態にたいし、意を為すべきにあらず。

 

53. 牛小屋を、酒場を、そして、奸人を、諸々の集会場を、さらに、諸々の作業場を、遠く離れて、遍く避けよ。乗物が、平坦ならざる道を〔避ける〕ように」〔と〕。ということで──

 

 チューラナーラダ・ジャータカが、第四となる。

 

13. 1. 5. ドゥータ・ジャータカ(使者・本生物語478)

 

54. 〔王が尋ねた〕「梵(婆羅門)よ、ガンガー〔川〕の岸辺で瞑想しているあなたのもとに、〔わたしは〕使者たちを送った。〔問いを〕尋ねられた〔あなた〕は、彼らに、〔何も〕説き明かさなかった。さてまた、あなたには、密かに思い考える苦しみがあるのでは」〔と〕。

 

55. 〔菩薩は答えた〕「カーシ〔国〕の国土を繁栄させる者(王)よ、それで、もし、あなたに、苦しみが生起するとして、その者が、あなたを苦しみから解き放たないなら、まさに、彼には、その〔苦しみ〕を告げ知らせてはいけません。

 

56. その者が、〔まさに〕その、苦しみが生じた〔あなた〕のために、たとえ、一部分でも、部分的にでも、法(真理)によって〔苦しみから〕解き放つなら、欲するままに、彼に知らせたまえ。

 

57. 識知し易きは、野狐たちの〔鳴き声であり〕、そして、烏たちの鳴き声であるとして、王よ、人間たちの鳴き声は、それよりもより識知し難くあります。

 

58. たとえ、もし、『親族である』『朋友である』〔と〕、あるいは、『友人である』と、人が思うとして、すなわち、過去には、悦意の者として有って、未来には、敵として現われます。

 

59. その人が、自己の苦しみを、尋ねられていないのに、〔正しい〕時と形態ならざるときに知らせるなら、彼の、朋友ならざる者(敵)たちは、喜びある者たちと成り、彼の、益を探し求める者たちは、苦しみある者たちと成ります。

 

60. しかしながら、〔正しい〕時を知って、思慮があり意を一つにする者を見出して、そのような種類の者である他者に、慧者は、諸々の激痛を告げ知らせるべきです。義(意味)のある優雅な言葉を放つべきです。

 

61. しかしながら、それで、もし、自己にとって可能ではないと知るなら、『まさに、彼らは、わたしにとって、安楽の到来のためならず』〔と〕、慧者は、まさしく、独り、諸々の激痛を耐えるべきです。真理()を、恥〔の思い〕()と〔良心の〕咎め()を、熟視しながら。

 

62. わたしは、諸々の国土を、諸々の町を、諸々の王都を、渡り歩きながら、大王よ、師匠の財を義(目的)として、行乞している者です。

 

63. 家長たちに、王の家来たちに、大家たちに〔行乞して〕、さらに、婆羅門たちに〔行乞して〕、人の君主よ、金にして、七つの金貨を得ました。大王よ、わたしは、それら〔の金貨〕をなくしてしまったのです。それゆえに、わたしは、激しく憂い悲しむのです。

 

64. 大王よ、それらの家来たちは、意をもって熟慮してくれたのですが、苦しみから解き放つには十分ではなく、それゆえに、彼らには〔言葉を〕発しませんでした。

 

65. 大王よ、しかしながら、あなたは、まさに、わたしのために、意をもって熟慮してくれたのであり、苦しみから解き放つには十分であり、それゆえに、あなたには知らせたのです」〔と〕。

 

66. 〔世尊は言った〕「カーシ〔国〕の国土を繁栄させる者は、その〔婆羅門〕に施した──清信した自己となり、金にして、十四の黄金で作られている金貨を」〔と〕。ということで──

 

 ドゥータ・ジャータカが、第五となる。

 

13. 1. 6. カーリンガボーディ・ジャータカ(カーリンガの菩提・本生物語479)

 

67. 〔世尊は言った〕「法(正義)によって地を統治している転輪王のカーリンガは、大いなる威力ある象に〔乗って〕、菩提〔の道場〕の近くに赴いた。

 

68. そして、〔婆羅門の〕カーリンガ・バーラドヴァージャ(菩薩)は、沙門の家系であるカーリンガ王に、〔法の〕輪を転起させている者に、〔その土地の形相を〕遍く収め取って〔そののち〕、合掌の者となり、この〔言葉〕を言った。

 

69. 〔菩薩は言った〕『大王よ、お降りください。〔この〕土地の部分は、すなわち、沙門にとって気高きところにして、ここに、優れ勝る者なき覚者たちが、正覚者たちが、光り輝きます。

 

70. この土地の部分においては、諸々の草や蔓は、右回りに渦巻いています。地の中心における精髄なのです(聖地である)。明慧ある方よ、大王よ、かくのごとく、わたしたちは聞きました。

 

71. 海洋を極限とする地における、一切の生類の大地における、これは、地における精髄なのです。降りて、礼拝を為したまえ。

 

72. そして、すなわち、それらの、〔世に〕有るところの象たちは、さらに、善き生まれのクンジャラ〔象〕たちも、それらの象たちは、この地域だけは、まさしく、近づきません。

 

73. 〔あなたが乗る、その〕象は、善き生まれ〔のクンジャラ象〕です。欲するままに、差し向けたまえ──牙あるクンジャラ〔象〕を。この地域だけは、象でも近しく赴くことができません』〔と〕。

 

74. その〔言葉〕を聞いて、占相者の言葉を傾聴して、カーリンガ王は、象を差し向けた。〔王が言った〕『わたしたちは知るのだ──すなわち、この者のこの言葉のとおりであるのかを』〔と〕。

 

75. そして、王によって差し向けられた象は、白鷺のように鳴いて、走り戻って坐り込んだ──重き荷を耐えられないかのように。

 

76. カーリンガ・バーラドヴァージャは、象の寿命が滅尽したことを見出して、カーリンガ王に、急ぎ奏上した。〔菩薩は言った〕『他の象にお移りください。大王よ、象は寿命が滅尽したのです』〔と〕。

 

77. その〔言葉〕を聞いて、カーリンガは、急ぎ、〔他の〕象に移った。まさしく、王が移りつつあるとき、象は、まさしく、その場で、地に落ちた。すなわち、占相者の言葉のとおり、そのとおりに、象は成った。

 

78. カーリンガ王は、カーリンガ婆羅門に、この〔言葉〕を言った。〔王が言った〕『まさしく、あなたは、正覚者として、一切知者として、一切見者として、〔世に〕存しておられる』〔と〕。

 

79. 彼に、カーリンガ〔王〕に、承諾することなく、婆羅門は、この〔言葉〕を言った。〔菩薩は言った〕『まさに、わたしどもは、占相者です。大王よ、覚者たちは、一切知者です。

 

80. 一切知者であり、かつまた、一切を知る者である、覚者たちは、特相によって知ることはありません。まさに、わたしどもは、アーガマ(聖典)の力で〔知り〕、覚者たちは、一切を覚知します』〔と〕。

 

81. 正覚〔の道場〕を敬し奉って、〔家来たちが〕種々なる楽器によって奏でているなか、花飾や香料を運んで、そこで、王は、マヌ(両親)のもとへと出発した。

 

82. 諸々の花の六千の積み荷を集め、カーリンガ王は、無上なる菩提の道場を供養した」〔と〕。ということで──

 

 カーリンガボーディ・ジャータカが、第六となる。

 

13. 1. 7. アキッティ・ジャータカ(アキッティ・本生物語480)

 

83. 〔世尊は言った〕「〔人々に〕敬われるアキッティ(菩薩)を見て、生類の長たる帝釈〔天〕は説いた」〔と〕。〔帝釈天が尋ねた〕「大いなる梵(婆羅門)よ、何を切望しながら、炎暑のなか、独り、在するのか」〔と〕。

 

84. 〔菩薩は答えた〕「帝釈〔天〕よ、さらなる生存(再有)は、苦しみです。そして、肉体が破壊することは、迷妄となり死ぬことは、苦しみです。ヴァーサヴァ(帝釈天)よ、それゆえに、〔ここに〕在しているのです」〔と〕。

 

85. 〔帝釈天が言った〕「このことが、あなたによって、見事に談じられ、適切に、見事に語られたからには、カッサパ(菩薩)よ、あなたに、願い事を与えよう。それが何であれ、〔あなたが〕意に求めるなら」〔と〕。

 

86. 〔菩薩は言った〕「帝釈〔天〕よ、一切の生類のイッサラ(イーシュヴァラ神・自在神)よ、もし、願い事を、〔あなたが〕わたしに与えてくれたのなら、貪欲〔の思い〕が、それが、わたしのうちに住することがないように。その〔貪欲の思い〕があることによって、そして、子たちを、さらに、妻たちを、財産と穀物を、さらに、諸々の愛しきものを、〔それらを〕得ても、男たちは満足しないのです」〔と〕。

 

87. 〔帝釈天が言った〕「このことが、あなたによって、見事に談じられ、適切に、見事に語られたからには、カッサパよ、あなたに、願い事を与えよう。それが何であれ、〔あなたが〕意に求めるなら」〔と〕。

 

88. 〔菩薩は言った〕「帝釈〔天〕よ、一切の生類のイッサラよ、もし、願い事を、〔あなたが〕わたしに与えてくれたのなら、憤怒〔の思い〕が、それが、わたしのうちに住することがないように。その〔憤怒の思い〕が生じたことによって、田畑を、地所を、さらに、黄金を、牛や馬を、奴隷や下僕を、〔それらを〕失うのです」〔と〕。

 

89. 〔帝釈天が言った〕「このことが、あなたによって、見事に談じられ、適切に、見事に語られたからには、カッサパよ、あなたに、願い事を与えよう。それが何であれ、〔あなたが〕意に求めるなら」〔と〕。

 

90. 〔菩薩は言った〕「帝釈〔天〕よ、一切の生類のイッサラよ、もし、願い事を、〔あなたが〕わたしに与えてくれたのなら、愚者を見ることがなく、聞くことがないように、そして、愚者と共に住むことがないように、愚者と談話や会話を為すことがなく、喜ぶことがないように」〔と〕。

 

91. 〔帝釈天が尋ねた〕「愚者は、いったい、何を、あなたに為したのか。カッサパよ、〔その〕契機を説きたまえ。カッサパよ、何によって、愚者と会うことを望まないのか」〔と〕。

 

92. 〔菩薩は答えた〕「思慮浅き者は、〔正しい〕方法ならざるものへと導きます。重荷なきものへと促します(精進を放棄させる)。悪しき方法が、より勝るものと成ります。正しく説かれたなら激怒します。彼は、規律を知りません。彼と会わないことは、善きことです」〔と〕。

 

93. 〔帝釈天が言った〕「このことが、あなたによって、見事に談じられ、適切に、見事に語られたからには、カッサパよ、あなたに、願い事を与えよう。それが何であれ、〔あなたが〕意に求めるなら」〔と〕。

 

94. 〔菩薩は言った〕「帝釈〔天〕よ、一切の生類のイッサラよ、もし、願い事を、〔あなたが〕わたしに与えてくれたのなら、慧者を、見ることがあり、聞くことがあるように、さらに、慧者と共に住むことがあるように、慧者と談話や会話を為すことがあり、喜ぶことがあるように」〔と〕。

 

95. 〔帝釈天が尋ねた〕「慧者は、いったい、何を、あなたに為したのか。カッサパよ、〔その〕契機を説きたまえ。カッサパよ、何によって、慧者と会うことを望むのか」〔と〕。

 

96. 〔菩薩は答えた〕「慧者は、〔正しい〕方法へと導きます。重荷なきものへと促しません。善き方法が、より勝るものと成ります。正しく説かれたなら怒りません。彼は、規律を覚知します。彼との会合は、善きことです」〔と〕。

 

97. 〔帝釈天が言った〕「このことが、あなたによって、見事に談じられ、適切に、見事に語られたからには、カッサパよ、あなたに、願い事を与えよう。それが何であれ、〔あなたが〕意に求めるなら」〔と〕。

 

98. 〔菩薩は言った〕「帝釈〔天〕よ、一切の生類のイッサラよ、もし、願い事を、〔あなたが〕わたしに与えてくれたのなら、そののち、夜の明け方に、日の出に向かい、諸々の天の食物が出現するように、かつまた、戒ある者たちが乞い求める者たちとして〔出現するように〕。

 

99. 施しているわたしの〔施物が〕尽きないように、施して〔そののち〕わたしが悩み苦しまないように、施している〔わたし〕が心を清信させるように。帝釈〔天〕よ、この願い事を願います」〔と〕。

 

100. 〔帝釈天が言った〕「このことが、あなたによって、見事に談じられ、適切に、見事に語られたからには、カッサパよ、あなたに、願い事を与えよう。それが何であれ、〔あなたが〕意に求めるなら」〔と〕。

 

101. 〔菩薩は言った〕「帝釈〔天〕よ、一切の生類のイッサラよ、もし、願い事を、〔あなたが〕わたしに与えてくれたのなら、ふたたび、わたしのもとに近づかないように。帝釈〔天〕よ、この願い事を、〔わたしは〕願います」〔と〕。

 

102. 〔帝釈天が尋ねた〕「多くの掟と行によって、そして、男たちが、さらに、女たちが、〔わたしと〕会うことを望みます。わたしと会うことに、いったい、何の恐れがあるというのでしょう」〔と〕。

 

103. 〔菩薩は答えた〕「そのような天の色艶があり、一切の欲望が等しく実現する、あなたを見て、苦行を怠ることになるなら、あなたと会うことに、この恐れがあります」〔と〕。ということで──

 

 アキッティ・ジャータカが、第七となる。

 

13. 1. 8. タッカーリヤ・ジャータカ(タッカーリヤ・本生物語481)

 

104. 〔師匠が言った〕「まさしく、わたしは、愚者であり、悪語を語った。蛙が、林のなかで蛇を呼ぶようなもの。タッカーリヤ(菩薩)よ、〔わたしは〕この穴に落ちる。まさしく、まさに、限度を超えて話す者は、善きにあらず」〔と〕。

 

105. 〔菩薩は言った〕「限度を超えて話す人間は、結縛と殴打に、さらに、憂いと嘆きに、至り得ます。ここにおいて〔あなたは〕、まさしく、自己を難じます。師匠よ、すなわち、〔人々が〕あなたを穴に埋めるので。

 

106. 〔限度を超えて話した男が言いました〕『まさしく、どうして、わたしは、トゥンディラに尋ねたのだ(余計なことを尋ねてしまった)。カーリーの奴は、この〔女〕は、〔わたしではなく〕自らの兄(トゥンディラ)に為すべきなのだ(余計なことを尋ねて、余計なことに関わってしまった)。わたしは、裸だ。そして、衣一組を失ったのだ』〔と〕。これもまた、義(意味)のあることであり、まさしく、多くのそのようなことがあります。

 

107. すなわち、戦っているものたちのなかにいながら戦っていないクリンガ〔鳥〕は、〔戦いを止めようとして〕羊の間に割って入ったのですが、そこにおいて、彼は、羊たちの頭によって砕かれました。これもまた、義(意味)のあることであり、まさしく、多くのそのようなことがあります。

 

108. 四者の人が、そして、一者の男を守りながら、ぼろ布を掴んだのですが、彼らは、まさしく、全ての者たちが、頭を破断し、〔地に〕臥しました。これもまた、義(意味)のあることであり、まさしく、多くのそのようなことがあります。

 

109. すなわち、竹薮に縛られている雌山羊が、〔足を〕投げ出しつつ、剣に到達し、まさしく、その〔剣〕によって、その〔雌山羊〕の喉は、切り裂かれました。これもまた、義(意味)のあることであり、まさしく、多くのそのようなことがあります。

 

110. 〔王が言いました〕『これらの者たちは、天〔の神々〕たちにあらず、音楽神の子たちにあらず。これらの者たちは、獣たちであり、わたしの義(利益)たる支配に赴いたのだ。そして、その一者を、夕食のときに調理せよ。さらに、一者を、朝食のときに調理せよ』〔と〕。

 

111. 〔妻の妖精が言いました〕『百千の悪語は、善語の〔十六分の〕一にさえも値しません。〔常に〕悪語を危惧しながら、〔心の〕汚れある者は〔疲弊します〕。それゆえに、妖精たちは沈黙しているのです。愚かなのではありません』〔と〕。

 

112. 〔王が言いました〕『すなわち、わたしに〔言葉を〕発した、この者(妻の妖精)であるが、この者を解き放て。そして、〔まさに〕その、ヒマヴァント(ヒマラヤ)の山に連れて行け。しかしながら、この者(夫の妖精)には、まさに、厨房を与えよ。まさしく、早朝に、彼を、朝食のときに調理せよ』〔と〕。

 

113. 〔夫の妖精が言いました〕『家畜たちは、雨雲を頼りとし、この人々は、家畜を頼りとします。大王よ、あなたは、〔わたしの〕頼りとして存しています。わたしは、わたしの妻の頼りとして〔存しています〕。二者のなかのどちらか〔の死〕を知って、解き放たれた者が、山に赴くのです。

 

114. 諸々の非難を、まさに、完全無欠に避けることはできません。人のインダよ、慣れ親しむべき種々なる人たちがいます。まさしく、すなわち、或る者が、賞賛を得るなら、まさしく、それによって、他の者は、非難を得るのです。

 

115. 一切の世〔の人々〕は、遍く様々であり、極めて様々であり、一切の世〔の人々〕は、自らの心のうちに心があり、一切の有情たちは、多々に各自の心があり、この〔世において〕、誰の心の支配に転じ行くというのでしょう』〔と〕。

 

116. 〔王が言いました〕『妖精は、妻と共に、沈黙のままに有った。すなわち、今や、恐れに恐れ、〔言葉を〕発した。彼は、今や、安楽の者となり、無病の者となり、解き放たれた。まさしく、まさに、〔真実の〕言葉は、人たちにとって義(利益)あるもの』」〔と〕。ということで──

 

 タッカーリヤ・ジャータカが、第八となる。

 

13. 1. 9. ルルミガラージャ・ジャータカ(ルル鹿王・本生物語482)

 

117. 〔王が言った〕「彼に、優れた村を与えよう──さらに、〔装いを〕十分に作り為した女たちを。彼が、この鹿のことを、鹿たちのなかの最上の鹿のことを、わたしに告げ知らせるなら」〔と〕。

 

118. 〔男が言った〕「わたしに、優れた村を与えたまえ──さらに、〔装いを〕十分に作り為した女たちを。わたしは、この鹿のことを、鹿たちのなかの最上の鹿のことを、あなたに告げ知らせましょう。

 

119. この密林のなか、諸々のアンバ〔樹〕が〔花ひらき〕、さらに、諸々のサーラ〔樹〕が花ひらき、諸々のインダゴーパカ〔草〕に等しく覆われたところがあり、ここにおいて、この鹿は止住します」〔と〕。

 

120. 〔世尊は言った〕「〔王は〕弓を確たるものと為して、矢を装着して、〔鹿のもとへと〕近しく赴いた。そして、鹿(菩薩)は、王を見て、遠くから語りかけた。

 

121. 〔菩薩は尋ねた〕「大王よ、待ってください。車上の雄牛よ、わたしを貫いてはいけません。いったい、誰が、このことを、あなたに告げ知らせたのですか。『ここにおいて、この鹿は止住します』」〔と〕。

 

122. 〔王が答えた〕「友よ、遠く離れて立っている、悪しき行ないのこの男が、〔まさに〕その、この者が、このことを、わたしに告げ知らせたのです。『ここにおいて、この鹿は止住します』」〔と〕。

 

123. 〔菩薩は言った〕「真に、まさしく、まさに、〔人々は〕わたしに言った。『この〔世における〕一部の人よりも、漂流する木片のほうが、より勝っている。まさしく、しかし、一部の人は、さにあらずも』」〔と〕。

 

124. 〔王が尋ねた〕「ルルよ、いったい、獣たちの誰を、〔あなたは〕難じているのですか──鳥たちの誰を、また、人間たちの誰を。まさに、少なからざる形態の恐怖が、わたしに見出されます──あなたが、人間の〔言葉〕を語っているのを聞いて」〔と〕。

 

125. 〔菩薩は答えた〕「すなわち、〔様々なものを〕運び行く大水の激しい流れの水のなか、運ばれ行く者を、〔わたしは〕引き上げました。それを因縁として、わたしに、恐怖が到来したのです。王よ、正しからざる者たちとの交際は、まさに、苦痛です」〔と〕。

 

126. 〔王が言った〕「〔まさに〕その、わたしは、この者が、四つの翼をもち、宙を赴くとして、彼を、心臓において断ち切り、投げ捨てる。彼を、朋友を裏切り為すべきではないことを為す者を、殺す。すなわち、そのような者は、為された行為を知るべくもない(恩知らずの者である)」〔と〕。

 

127. 〔菩薩は言った〕「人のインダよ、まさに、愚者は、厭わしくあるも、正しくある者たちは、けっして、殺戮を賞賛しないのです。悪しき法(性質)の者は、欲するままに家に去れ。そして、それが、彼の賃金であるなら、それを、この者に与えてください。そして、わたしは、あなたの欲することを為す者と成ります」〔と〕。

 

128. 〔王が言った〕「たしかに、ルルは、彼は、正しくある者たちのなかの随一の者である。すなわち、裏切りある人間を裏切らなかった。悪しき法(性質)の者は、欲するままに家に去れ。そして、それが、彼の賃金であるなら、それを、この者に与えましょう。そして、わたしは、あなたの欲する行ないを、〔あなたに〕与えます」〔と〕。

 

129. 〔菩薩は言った〕「識知し易きは、野狐たちの〔鳴き声であり〕、そして、烏たちの鳴き声であるとして、王よ、人間たちの鳴き声は、それよりもより識知し難くあります。

 

130. たとえ、もし、『親族である』『朋友である』〔と〕、あるいは、『友人である』と、人が思うとして、すなわち、過去には、悦意の者として有って、未来には、敵として現われます」〔と〕。

 

131. 〔世尊は言った〕「集いあつまった地方の者たちは、さらに、集いあつまった町の者たちも、『鹿たちが、諸々の作物を喰う。陛下は、それを制止せよ』〔と訴える〕」〔と〕。

 

132. 〔王が言った〕「むしろ、地方は存してはならない。さらに、国土もまた、消えて無くなれ。まさしく、しかし、わたしは、ルルを裏切らない──恐怖なき〔平安〕の施物を与えて〔そののちは〕。

 

133. わたしにとって、地方は存してはならない。さらに、国土もまた、消えて無くなれ。まさしく、しかし、わたしは、虚偽を話さない──鹿の王に、願い事を与えて〔そののちは〕」〔と〕。ということで──

 

 ルルミガラージャ・ジャータカが、第九となる。

 

13. 1. 10. サラバミガ・ジャータカ(サラバ鹿・本生物語483)

 

134. 〔王が言った〕「人は、まさしく、願望するべきである。賢者は、厭離するべきにあらず。まさに、わたしは、自己を見る──すなわち、〔わたしが〕求めたとおり、そのとおりに、〔わたしは〕成ったのだ。

 

135. 人は、まさしく、願望するべきである。賢者は、厭離するべきにあらず。まさに、わたしは、自己を見る──水から陸に引き上げられた〔自己〕を。

 

136. 人は、まさしく、努力するべきである。賢者は、厭離するべきにあらず。まさに、わたしは、自己を見る──すなわち、〔わたしが〕求めたとおり、そのとおりに、〔わたしは〕成ったのだ。

 

137. 人は、まさしく、努力するべきである。賢者は、厭離するべきにあらず。まさに、わたしは、自己を見る──水から陸に引き上げられた〔自己〕を。

 

138. たとえ、〔今は〕苦に導かれたとして、智慧を有する人は、楽が至り来るために、願望を断ち切るべきにあらず。まさに、多くの、益なき接触(苦痛の感受)があり、さらに、益ある〔接触があり〕、思いもよらないものとして、死すべき者(人間)のもとに訪れる。

 

139. 思っていなかったこともまた有り、思っていたこともまた滅し去る。まさに、諸々の財物は、思いから作られるものにあらず──女にとっても、あるいは、男にとっても」〔と〕。

 

140. 〔婆羅門が言った〕「すなわち、かつて、あなたは、山の難所において、サラバ〔鹿〕を追跡したのですが、〔今の〕あなたは、畏縮なき心の者(サラバ鹿)の勇猛なる〔行動〕に依拠して生きています。

 

141. すなわち、サラバ〔鹿〕は、巌のうえで奮闘〔努力〕を為して、難所から、奈落から、あなたを救い取ったのです。苦に導かれた〔あなた〕を、死魔の口から解き放ったのです。その鹿のことを、畏縮なき心の者と、〔あなたは〕説かれます」〔と〕。

 

142. 〔王が尋ねた〕「はてさて、どうでしょう、あなたは、そのとき、まさしく、その場に有ったのですか、それとも、誰かしらが、それを、このことを、あなたに告げ知らせたのですか。はてさて、〔あなたは、迷妄の〕覆いが開かれた方として、一切を見る方として、存しているのですか。婆羅門よ、はてさて、あなたには、恐るべき形態の知恵があるのですか」〔と〕。

 

143. 〔婆羅門が答えた〕「まさしく、そして、わたしは、そのとき、まさしく、その場に有ったのではなく、さらに、また、誰かしらが、それを、このことを、わたしに告げ知らせたのでもありません。人のインダよ、しかしながら、慧者たちは、諸々の見事に語られた詩偈の句の、〔まさに〕その、義(意味)を、〔正しく〕導き取るのです」〔と〕。

 

144. 〔婆羅門に憑依した帝釈天が言った〕「他の勇ある者を殲滅する、羽ある矢を、弓に構えて、あなたは、何を疑うのですか。放たれた矢は、サラバ〔鹿〕を殺せ──すみやかに。優れた智慧ある方よ、まさに、これは、王の食べ物です」〔と〕。

 

145. 〔王が言った〕「たしかに、わたしもまた、このことを覚知しています。婆羅門よ、鹿は、士族の食べ物です。しかしながら、過去に為されたことを敬いつつ、それゆえに、〔わたしは〕サラバ鹿を殺さないのです」〔と〕。

 

146. 〔婆羅門に憑依した帝釈天が言った〕「大王よ、これは、鹿ではありません。方角の長(王)よ、これは、阿修羅です。人間のインダよ、これを殺して、不死なる君主と成りたまえ。

 

147. 王よ、そして、それで、もし、あなたが、道友のサラバ鹿を殺すことを疑うなら、人のなかの最勝の勇者よ、子と妻と共に、あなたは、夜魔〔の国〕のヴェータラニー〔川〕に赴くのです(※)」〔と〕。

 

※ テキストには gantvā とあるが、PTS版により gantā と読む。

 

148. 〔王が言った〕「むしろ、わたしは、かつまた、全ての地方の者たちも、そして、子たちも、さらに、妻たちも、道友たちの群れも、〔まさに〕その、夜魔〔の国〕のヴェータラニー〔川〕に赴くのだ。まさしく、しかし、殺すべきにあらず。彼は、わたしにとって、命の恩人なのだ。

 

149. この鹿は、おぞましき荒野において、独り、苦難に至ったわたしにとっての、〔恩義ある〕為し手であり、彼を、そのような者を、過去の恩恵を思い浮かべながら、〔それを〕知りながら、大いなる梵(婆羅門)よ、どうして、殺せるというのでしょう」〔と〕。

 

150. 〔婆羅門から離脱した帝釈天が言った〕「朋友を満悦させる者として、まさしく、長きにわたり、〔あなたは〕生きよ。法(正義)の徳のもと、この王国を統治せよ。女たちの群れに世話されながら、三十三〔天〕において、ヴァーサヴァ(帝釈天)が〔喜び楽しむ〕ように、王国において歓喜せよ。

 

151. 忿激せず、常に清信した心で、全ての客の乞いに応じる者と成って、〔自らの〕威力のままに、そして、〔他者に〕施して、さらに、〔自ら正しく〕受益して、〔誰からも〕非難されることなく、天上の境位へと近しく至れ」〔と〕。ということで──

 

 サラバミガ・ジャータカが、第十となる。

 

 十三なるものの集まりは〔以上で〕終了となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「優れたアンバと斧(パンダナ)と優れた鵞鳥(疾走する鵞鳥)を有するものがあり、そこで、『林地に』(小なるナーラダ)と第五のものとして使者なるものがあり、そこで、菩提(カーリンガの菩提)とアキッティと善きタッカーリン(タッカーリヤ)とともに、そこで、ルル鹿とともに、他にサラバがあり、〔それらの十がある〕」と。

 

14. 雑駁なるものの集まり

 

14. 1. 稲田の章

 

14. 1. 1. サーリケーダーラ・ジャータカ(稲田・本生物語484)

 

1. 〔田の番人が言った〕「コーシヤ(婆羅門)よ、実った稲田を、鸚鵡(おうむ)たちが食べます。梵よ、あなたにお知らせします。彼らを阻止することができません。

 

2. そして、そこにおいて、すなわち、彼らのなかの全てに美しい或る鳥が、欲するままに米を食べては、嘴で取って去り行きます」〔と〕。

 

3. 〔婆羅門が言った〕「諸々の尾毛の罠を仕掛けよ。すなわち、その鳥(菩薩)が捕縛されるように。そして、その〔鳥〕を、生きたまま捕捉して、わたしの前に連れてこい」〔と〕。

 

4. 〔捕捉された菩薩は言った〕「これらの鳥たちは、食べて、さらに、飲んで、立ち去ります。〔わたしは〕独り、罠に捕縛された者として存しています。どのような悪しき〔行為〕が、わたしによって為されたのですか」〔と〕。

 

5. 〔婆羅門が尋ねた〕「鸚鵡よ、まちがいなく、他の者たちの腹より、おまえの腹は大きい。〔おまえは〕欲するままに米を食べては、嘴で取って去り行く。

 

6. はてさて、そこにおいて、蔵を満たすのか。鸚鵡よ、はてさて、おまえには、わたしゆえの怨みがあるのか。友よ、〔問いを〕尋ねられた者として、わたしに告げ知らせよ。どこに、米を貯えるのか」〔と〕。

 

7. 〔菩薩は答えた〕「わたしには、あなたを相手に、怨みがあるのではありません。わたしには、蔵は見出されません。シンバリ〔樹〕の突端に至り得た〔わたし〕は、負債を解き放ち、負債を与え、そこにおいて、財宝もまた貯えます。コーシヤよ、このように知りたまえ」〔と〕。

 

8. 〔婆羅門が尋ねた〕「おまえにとって、どのようなことが、負債を与えることなのだ。さらに、どのようなことが、負債を解き放つことなのだ。財宝の貯蔵を、〔わたしに〕告げ知らせよ。そこで、〔おまえは〕罠から解き放たれるであろう」〔と〕。

 

9. 〔菩薩は答えた〕「コーシヤよ、わたしには、〔いまだ〕翼が生じていない、幼い子供たちがいます。〔わたしに〕養われた彼らは、〔いずれ〕わたしを養うでしょう。それゆえに、彼らに、負債を与えます。

 

10. わたしの、母は、さらに、父は、年長け、若さ〔の盛り〕が去り、老い朽ちた者たちです。彼らに、嘴で〔食べ物を〕運んで、過去に作り為された負債を解き放ちます。

 

11. そこにおいては、他の鳥たちもまたいます。翼が滅尽し、極めて力弱き者たちです。彼らに、功徳を義(目的)とする者として、〔食べ物を〕与えます。賢者たちは、それを、財宝と言います。

 

12. わたしにとって、このようなことが、負債を与えることなのです。さらに、このようなことが、負債を解き放つことなのです。〔このようなものとして〕財宝の貯蔵を、〔あなたに〕告げ知らせます。コーシヤよ、このように知りたまえ」〔と〕。

 

13. 〔婆羅門が言った〕「幸いなるは、まさに、この鳥である。最高の法(正義)にかなう鳥である。人間たちの一部にも、この法(真理)は見出されない。

 

14. 欲するままに米を食べたまえ──全ての親族たちと共に。鸚鵡よ、ふたたび、また、お目にかかりたいもの。わたしにとって愛しきは、あなたと会うこと」〔と〕。

 

15. 〔菩薩は言った〕「あなたの庵所において、そして、食べもしましたし、さらに、飲みもしました──コーシヤよ、そして、夜のあいだ、あなたの現前において、わたしたちによって。棒(武器)を置いた者たちにたいし、布施を施したまえ。そして、老いた母と父を養いたまえ」〔と〕。

 

16. 〔婆羅門が言った〕「今日、まさに、わたしに、幸運が生起した。すなわち、鳥たちのなかの最も優れた者を、〔わたしは〕見たのだ。鸚鵡の諸々の見事に語られた〔言葉〕を聞いて、諸々の少なからざる功徳を、〔わたしは〕作り為すのだ」〔と〕。

 

17. 〔世尊は言った〕「彼は、コーシヤは、勇躍する者となり、わが意を得た者となり、そして、食べ物を〔準備して〕、さらに、飲み物を準備して、清信した心の者となり、食べ物と飲み物によって、そして、沙門や婆羅門たちを満足させた」〔と〕。ということで──

 

 サーリケーダーラ・ジャータカが、第一となる。

 

14. 1. 2. チャンダキンナリー・ジャータカ(チャンダキンナリー・本生物語485)

 

18. 〔菩薩は言った〕「チャンダーよ、思うに、この〔身体〕は、血の蹂躙のうちに連行された。今日、〔わたしは〕生命を捨棄する。チャンダーよ、わたしの諸々の気息は止滅する。

 

19. わたしの心臓は、苦に沈んだ。わたしの〔心臓は〕焼かれる。〔わたしは〕息絶える──あなたの、チャンダーの、憂い悲しみによって。それは、他の諸々の憂いによってにあらず。

 

20. 草のように、林のように、〔わたしは〕干涸び、遍く満ちることなき川のように、〔わたしは〕干上がる──あなたの、チャンダーの、憂い悲しみによって。それは、他の諸々の憂いによってにあらず。

 

21. 山麓の池に雨が〔降る〕ように、わたしに、これらの涙が転起する──あなたの、チャンダーの、憂い悲しみによって。それは、他の諸々の憂いによってにあらず」〔と〕。

 

22. 〔チャンダーが言った〕「王子よ、悪しき者として、まさに、〔おまえは〕存している。すなわち、惨めなわたしの、好ましき亭主(菩薩)を、林の〔木の〕根元において、〔矢で〕貫いたのだ。〔まさに〕その、この者は、〔矢に〕貫かれ、〔地に〕臥す。

 

23. 王子よ、〔まさに〕この、わたしの心臓の憂いを、おまえの母が味わえ。すなわち、妖精(夫)を慕うわたしの心臓の憂いだ。

 

24. 王子よ、〔まさに〕この、わたしの心臓の憂いを、おまえの妻が味わえ。すなわち、妖精を慕うわたしの心臓の憂いだ。

 

25. 王子よ、おまえの母は、そして、子と〔会っては〕ならない、さらに、亭主と会ってはならない。すなわち、まさに、わたしへの欲望から、〔おまえは〕汚れなき妖精(夫)を打ち殺したのだ。

 

26. 王子よ、おまえの妻は、そして、子と〔会っては〕ならない、さらに、亭主と会ってはならない。すなわち、まさに、わたしへの欲望から、〔おまえは〕汚れなき妖精を打ち殺したのだ」〔と〕。

 

27. 〔王子が言った〕「チャンダーよ、あなたは泣き悲しんではならない。林の漆黒ほどの眼をした方よ、憂い悲しんではならない。あなたは、わたしの妻と成るのです。王家にて、女たちに供養される者と〔成るのです〕」〔と〕。

 

28. 〔チャンダーが言った〕「さてまた、もはや、わたしは、死ぬであろう。王子よ、わたしは、あなたのものには成らない。すなわち、まさに、わたしへの欲望から、〔おまえは〕汚れなき妖精を打ち殺したのだ」〔と〕。

 

29. 〔王子が言った〕「さてまた、恐怖する者よ、さてまた、生きることを欲する者よ、妖精よ、ヒマヴァント(ヒマラヤ)に去り行きなさい。ターリーサやタガラ(香料)を食料とする他の獣たちは、あなたを喜ぶであろう」〔と〕。

 

30. 〔瀕死の菩薩に、チャンダーが言った〕「それらの山は、そして、それらの峡谷も、さらに、それらの山の洞窟も、まさしく、そのように、〔以前のままに〕止住するも、まさしく、そこにおいて、あなたを見ることなく、妖精よ、わたしは、どのように為すというのでしょう。

 

31. それらは、葉が広がり、喜ばしく、猛々しい獣たちが歩み行くも、まさしく、そこにおいて、あなたを見ることなく、妖精よ、わたしは、どのように為すというのでしょう。

 

32. それらは、花が広がり、喜ばしく、猛々しい獣たちが歩み行くも、まさしく、そこにおいて、あなたを見ることなく、妖精よ、わたしは、どのように為すというのでしょう。

 

33. 諸々の澄んだ山林の川が流れ行き、花々が散在する諸々の流れがあるも、まさしく、そこにおいて、あなたを見ることなく、妖精よ、わたしは、どのように為すというのでしょう。

 

34. ヒマヴァントの山嶺の青き峰々は美しくあるも、まさしく、そこにおいて、あなたを見ることなく、妖精よ、わたしは、どのように為すというのでしょう。

 

35. ヒマヴァントの山嶺の黄なる峰々は美しくあるも、まさしく、そこにおいて、あなたを見ることなく、妖精よ、わたしは、どのように為すというのでしょう。

 

36. ヒマヴァントの山嶺の赤き峰々は美しくあるも、まさしく、そこにおいて、あなたを見ることなく、妖精よ、わたしは、どのように為すというのでしょう。

 

37. ヒマヴァントの山嶺の高き峰々は美しくあるも、まさしく、そこにおいて、あなたを見ることなく、妖精よ、わたしは、どのように為すというのでしょう。

 

38. ヒマヴァントの山嶺の白き峰々は美しくあるも、まさしく、そこにおいて、あなたを見ることなく、妖精よ、わたしは、どのように為すというのでしょう。

 

39. ヒマヴァントの山嶺の彩りあざやかな峰々は美しくあるも、まさしく、そこにおいて、あなたを見ることなく、妖精よ、わたしは、どのように為すというのでしょう。

 

40. 夜叉たちの群れが慣れ親しむガンダマーダナ〔山〕は、諸々の薬草に等しく覆われているも、まさしく、そこにおいて、あなたを見ることなく、妖精よ、わたしは、どのように為すというのでしょう。

 

41. 妖精たちが慣れ親しむガンダマーダナ〔山〕は、諸々の薬草に等しく覆われているも、まさしく、そこにおいて、あなたを見ることなく、妖精よ、わたしは、どのように為すというのでしょう」〔と〕。

 

42. 〔菩薩を蘇生させた帝釈天に、チャンダーが言った〕「聖なる梵(帝釈天)よ、あなたを敬拝します。すなわち、惨めなわたしの、好ましき亭主に、〔あなたは〕不死〔の甘露〕を降り注いだのです(夫の命を取り戻してくれた)。〔わたしは〕存しています──最も愛しい者と〔ふたたび〕出会えた者として」〔と〕。

 

43. 〔蘇生した菩薩に、チャンダーが言った〕「今や、〔わたしたちは〕諸々の山林の川を渡り歩くのです──花々が散在する諸々の流れを、種々なる木々が茂るところを、互いに他と愛語ある者たちとして」〔と〕。ということで──

 

 チャンダキンナリー・ジャータカが、第二となる。

 

14. 1. 3. マハーウックサ・ジャータカ(大なる鶚・本生物語486)

 

44. 〔雄鷹に、雌鷹が言った〕「土民たちは、島のなかで諸々の松明を結び縛ります。人々は、わたしの〔子供たちを〕喰うことを望み求めます。鷹(夫)よ、朋友に、さらに、道友に、説いてください。親族の災厄を、鳥たちに告げ知らせてください」〔と〕。

 

45. 〔鶚王に、雄鷹が言った〕「鳥よ、〔あなたは〕鳥たちのなかの最も優れた鳥として存しています。鶚(みさご)の王よ、帰依所として、あなたのもとへと、〔わたしたちは〕近しく至ります。人々は、わたしの〔子供たちを〕喰うことを望み求めます。残忍な土民たちです。わたしの安楽のために成ってください」〔と〕。

 

46. 〔鶚王が言った〕「賢者たちは、朋友を、さらに、道友を、作る──時において、時ならざるにおいて、〔彼の〕安楽を探し求めながら。鷹よ、あなたのために、〔わたしは〕この義(利益)を為す。なぜなら、聖者は、聖者のために、為すべきことを為すからである」〔と〕。

 

47. 〔鷹の子を救うために努め励む鶚王に、雄鷹が言った〕「それが、慈しみ〔の思い〕によって為すべきこととして有るなら、このことは、聖者であるあなたによって、聖者のために為されました。自己を守る者と成ってください。〔自己を〕消耗してはいけません。〔わたしたちは〕子供たちを得るでしょう──あなたが生きているなら」〔と〕。

 

48. 〔鶚王が言った〕「まさしく、あなたのために、守護と防護を為しつつ、たとえ、肉体の破壊あるも、〔わたしは〕恐慌せず。まさに、或る者たちは、友人たちのために、友人たちとして、〔為すべきことを〕為す。〔彼らが〕命を捨てつつあるも、これは、正しくある者たちの法(教え)である」〔と〕。

 

49. 〔世尊は言った〕「この宙を赴く鳥(鶚王)は、極めて為し難き行為を為した──鶚は、〔鷹の〕子供にたいする義(利益)のために、真夜中に至るまで」〔と〕。

 

50. 〔亀に、雄鷹が言った〕「まさに、或る者たちは、自らの行為によって、たとえ、死滅し、零落したとして、朋友への慈しみ〔の思い〕によって立ち上がります。わたしの子供たちは、苦悩しています。〔わたしは〕存しています──〔あなたを〕赴く所として〔あなたに〕至り着いた者として。水を歩む者(亀)よ、わたしのために、義(道理)を歩まれますように」〔と〕。

 

51. 〔亀が言った〕「財産によって、そして、穀物によって、さらに、自己によって、賢者たちは、朋友を、さらに、道友を、作る。鷹よ、あなたのために、〔わたしは〕この義(道理)を為す。なぜなら、聖者は、聖者のために、為すべきことを為すからである」〔と〕。

 

52. 〔亀の子が言った〕「父よ、あなたは、思い入れ少なき者となり、お坐りください。子が、父のために、義(道理)の歩みを歩みます。わたしが、あなたのために、この義(道理)を歩みましょう──鷹の子供たちを救護しながら」〔と〕。

 

53. 〔亀が言った〕「息子よ、まさに、たしかに、これは、正しくある者たちの法(教え)である。すなわち、子が、父のために、義(道理)の歩みを歩むのは。まさしく、しかし、増大した身体あるわたしを見て〔はじめて〕、鷹の子供たちは悩み苦しめられなくなるのだ」〔と〕。

 

54. 〔獅子に、雄鷹が言った〕「獣のなかの最勝の勇者(菩薩)よ、家畜たちは、人間たちは、恐怖に苦悩したなら、最勝者のところを訪れます。わたしの子供たちは、苦悩しています。〔わたしは〕存しています──〔あなたを〕赴く所として〔あなたに〕至り着いた者として。あなたは存しています──わたしたちの王として。わたしの安楽のために成ってください」〔と〕。

 

55. 〔菩薩は言った〕「鷹よ、あなたのために、〔わたしは〕この義(道理)を為す。あなたのために、その敵軍を打破するために、〔わたしは〕行く。まさに、どのように、識者たる者が、可能なる者が、正知している者が、自己の人民を守るために努めずにいられるというのだろう」〔と〕。

 

56. 〔雌鷹が言った〕「そして、朋友を、さらに、善き心の者を、作るべきです。そして、聖者を、〔友人として〕作るべきです──安楽に至るために。鎧を装着した者のように、諸々の矢を打ち破って、〔安楽を〕保有する者と成った〔わたしたち〕は、子供たちとともに歓喜します。

 

57. 自らの朋友の行為によって、道友の〔行為によって〕、逃げることなき者たちとなり、毛ある者(小鳥)たちは、心臓に至る鳴き声で鳴きます。

 

58. 朋友に〔到達して〕、道友に到達して、賢者は、彼は、子供や家畜を〔受益し〕、あるいは、財産を受益します。そして、わたしは、さらに、子供たちは、かつまた、わたしの亭主は、朋友への慈しみ〔の思い〕によって、〔安楽を〕保有する者と成ったのです。

 

59. 王あるがゆえに、さらに、勇士あるがゆえに、義(利益)が〔有ります〕。友誼を成就した者には、まさに、これらの者たちが有ります。彼は、朋友ある者であり、福徳ある者であり、昇り行く者であり、ここに、この世において、欲するままに欲する者となり、歓喜します。

 

60. 鷹(夫)よ、貧者ともまた、諸々の友情が作り為されるべきです。見てください──朋友への慈しみ〔の思い〕によって和合あることから、親族(子)と共にある〔わたしたち〕を。

 

61. その鳥が、朋友たちを作るなら、勇士によって、力ある者によって、このように、その〔鳥〕は、安楽の者と成ります──鷹よ、すなわち、わたしのように、そして、あなたのように」〔と〕。ということで──

 

 マハーウックサ・ジャータカが、第三となる。

 

14. 1. 4. ウッダーラカ・ジャータカ(ウッダーラカ・本生物語487)

 

62. 〔王が尋ねた〕「粗い鹿皮と泥の歯の結髪者たちが、すなわち、汚い身なりと形姿の者たちが、呪文を詠唱するとして、はてさて、どうでしょう、彼らは、人間としての専念〔努力〕について、これを知る者たちなのですか、悪所から完全に解き放たれた者たちなのですか」〔と〕。

 

63. 〔菩薩は答えた〕「王よ、もし、多聞の者が、諸々の悪しき行為を為すなら、法(正義)〔の道〕を歩まないなら、たとえ、千の知(ヴェーダ)ある者でも、それを縁として、苦しみから解き放たれない──〔善き〕行ないに至り得ずしては」〔と〕。

 

64. 〔ウッダーラカが言った〕「『たとえ、千の知ある者でも、それを縁として、苦しみから解き放たれない──〔善き〕行ないに至り得ずしては』〔と、あなたは言う〕。〔わたしは〕思う──『諸々の知は、果なきものとして有り、自制を有する行ないだけが、真理である』」〔と〕。

 

65. 〔菩薩は言った〕「まさしく、まさに、諸々の知が、果なきものとして有り、自制を有する行ないだけが、真理であるのではない。なぜなら、諸々の知を学得して、名誉に至り得るからである(諸々の知には名誉という果がある)。〔心の〕寂静に至り得るのは、〔善き〕行ないによって調御された者であるとして」〔と〕。

 

66. 〔ウッダーラカが言った〕「母は、父は、眷属たちは、養われるべき者たちです。その者によって生まれた者は、まさしく、自ら、その者なのです。わたしは、貴君の〔子である〕ウッダーラカです、聞経者(婆羅門)の家系と伝統ある者です」〔と〕。

 

67. 〔菩薩は尋ねた〕「君よ、どのように、〔人は〕婆羅門と成るのか。どのように、〔人は〕全一者と成るのか。さらに、どのように、完全なる涅槃があるのか。『法(正義)に依って立つ者である』〔と〕、どのようなわけで説かれるのか」〔と〕。

 

68. 〔ウッダーラカが答えた〕「〔俗事を〕捨てて、祭火を取って、婆羅門は、水を注ぎつつ、祭祀をしながら、祭柱を掲げます。このように為す者は、婆羅門と成り、平安ある者と〔成ります〕。それによって、〔彼のことを、人々は〕法(正義)に依って立つ者と認定したのです」〔と〕。

 

69. 〔菩薩は言った〕「〔水を〕注ぐことで、清浄は存在せず、全一者にも婆羅門にもまた〔成ら〕ず、忍耐は〔存在せ〕ず、温和もまた〔存在せ〕ず、彼は、完全なる涅槃に到達した者にもまた〔成ら〕ない」〔と〕。

 

70. 〔ウッダーラカが尋ねた〕「それでは、どのように、〔人は〕婆羅門と成るのですか。どのように、〔人は〕全一者と成るのですか。さらに、どのように、完全なる涅槃があるのですか。『法(正義)に依って立つ者である』〔と〕、どのようなわけで説かれるのですか」〔と〕。

 

71. 〔菩薩は答えた〕「田畑と眷属なく、我執なく、願望なく、貪欲と悪なく、生存の貪欲が滅尽した者は、このように為す者は、婆羅門と成り、平安ある者と〔成る〕。それによって、〔彼のことを、人々は〕法(正義)に依って立つ者と認定したのだ」〔と〕。

 

72. 〔ウッダーラカが尋ねた〕「士族たちも、婆羅門たちも、庶民たちも、隷民たちも、チャンダーラ(賎民)やプックサ(非人)たちも、まさしく、全ての者たちが、温和な者たちであり、調御された者たちであり、まさしく、全ての者たちが、完全なる涅槃に到達した者たちであるとして、全ての〔心が〕清涼と成った者たちのなかに、より勝る者は存在するのですか、そして、より悪しき者は〔存在するのですか〕」〔と〕。

 

73. 〔菩薩は答えた〕「士族たちも、婆羅門たちも、庶民たちも、隷民たちも、チャンダーラ(賎民)やプックサ(非人)たちも、まさしく、全ての者たちが、温和な者たちであり、調御された者たちであり、まさしく、全ての者たちが、完全なる涅槃に到達した者たちであるとして、全ての〔心が〕清涼と成った者たちのなかに、より勝る者は存在せず、そして、より悪しき者は〔存在せず〕」〔と〕。

 

74. 〔ウッダーラカが言った〕「『士族たちも、婆羅門たちも、庶民たちも、隷民たちも、チャンダーラ(賎民)やプックサ(非人)たちも、まさしく、全ての者たちが、温和な者たちであり、調御された者たちであり、まさしく、全ての者たちが、完全なる涅槃に到達した者たちであるとして──

 

75. 全ての〔心が〕清涼と成った者たちのなかに、より勝る者は存在せず、そして、より悪しき者は〔存在せず〕』〔と、あなたは説きます〕。いっぽう、義(利益)あるものとして、梵の資質を、聞経者(婆羅門)の家系と伝統を、〔あなたは〕歩みます」〔と〕。

 

76. 〔菩薩は言った〕「宮殿が、種々に染まった諸々の衣に覆われたものと成るも、その染めは、それらの衣の影に随起せず。

 

77. まさしく、このように、人間たちにおいて、人々が清まる、そのとき、彼らは、有する生まれを解き放つ──法(真理)を了知して、善き掟の者たちとなり」〔と〕。ということで──

 

 ウッダーラカ・ジャータカが、第四となる。

 

14. 1. 5. ビサ・ジャータカ(蓮根・本生物語488)

 

78. 〔第一の者が言った〕「彼は、馬を、牛を、銀を、金を、さらに、妻を、ここに得よ──意に適うものとして。子たちを、妻たちを、保有する者と成れ。婆羅門よ、その者が、あなたの諸々の蓮根を持ち去ったなら」〔と〕。

 

79. 〔第二の者が言った〕「彼は、そして、花飾を、さらに、カーシ産の栴檀を、〔身に〕付けよ。彼には、多くの子供たちが有れ。諸々の欲望〔の対象〕にたいし、強き期待〔の思い〕を為せ。婆羅門よ、その者が、あなたの諸々の蓮根を持ち去ったなら」〔と〕。

 

80. 〔第三の者が言った〕「多大なる穀物があり、耕地があり、盛名があり、財産がある、在家者となり、子供たちを、一切の欲望〔の対象〕を、〔得よ〕。衰失を見ることなく、家に住せ。婆羅門よ、その者が、あなたの諸々の蓮根を持ち去ったなら」〔と〕。

 

81. 〔第四の者が言った〕「彼は、〔敵を〕打ち負かして為す士族と成れ。活力があり、盛名がある、王のなかの王と〔成れ〕。彼は、四辺を、大地を、占拠せよ。婆羅門よ、その者が、あなたの諸々の蓮根を持ち去ったなら」〔と〕。

 

82. 〔第五の者が言った〕「彼は、貪欲を離れない婆羅門と成れ。刻限と星宿の諸道に専念する者と〔成れ〕。盛名ある国土の長は、彼を供養せよ。婆羅門よ、その者が、あなたの諸々の蓮根を持ち去ったなら」〔と〕。

 

83. 〔第六の者が言った〕「一切遍きにわたるヴェーダ(ヴェーダ聖典)の読誦者にして苦行者と、一切の世〔の人々〕は、〔彼のことを〕思い考えよ。地方の者たちは、共に赴いて、彼を供養せよ。婆羅門よ、その者が、あなたの諸々の蓮根を持ち去ったなら」〔と〕。

 

84. 〔第七の者が言った〕「彼は、四つの増長ある富み栄える優れた村を、まさに、ヴァーサヴァ(帝釈天)によって施された〔村〕を、受益せよ。貪欲を離れない者となり、死へと近しく至れ。婆羅門よ、その者が、あなたの諸々の蓮根を持ち去ったなら」〔と〕。

 

85. 〔第八の者が言った〕「彼は、道友の中で、頭目と成れ。諸々の舞踏によって、諸々の歌詠によって、歓喜する者と〔成れ〕。彼は、何であれ、王から災厄を得てはならない。婆羅門よ、その者が、あなたの諸々の蓮根を持ち去ったなら」〔と〕。

 

86. 〔第一の女が言った〕「彼女を、一なる王は、地を征圧して〔そののち〕、千の女たちのなかの至高の者に据え置け。境界の内にある者たちのなかの最も優れた〔女〕と成れ。婆羅門よ、その者が、あなたの諸々の蓮根を持ち去ったなら」〔と〕。

 

87. 〔第二の女が言った〕「まさに、彼女は、集いあつまった全ての聖賢たちのなかで動揺することなく、美味なるものを食べるがよい。〔その〕利得によって誇示しながら、〔世を〕歩め。婆羅門よ、その者が、あなたの諸々の蓮根を持ち去ったなら」〔と〕。

 

88. 〔天神が言った〕「大いなる精舎における居住者と成れ。ガジャンガラーにおける新築者と成れ。昼に、明かり窓を作れ。婆羅門よ、その者が、あなたの諸々の蓮根を持ち去ったなら」〔と〕。

 

89. 〔象が言った〕「彼は、六百の索縄によって結縛されよ。喜ばしき林から王都へと連行されよ。彼は、諸々の刺し棒や刺し串によって殺害されよ。婆羅門よ、その者が、あなたの諸々の蓮根を持ち去ったなら」〔と〕。

 

90. 〔猿が言った〕「アラッカの花飾をつけ、錫〔の耳飾〕を耳に通され、鞭で打たれ、蛇の口へと近しく至れ。彼は、脇を縛られ、道を歩め。婆羅門よ、その者が、あなたの諸々の蓮根を持ち去ったなら」〔と〕。

 

91. 〔彼らに、菩薩は言った〕「まさしく、消失していないのに、『消失したのだ』〔と〕、そして、その者が、まさに、かくのごとく言ったなら、彼は、まさしく、諸々の欲望〔の対象〕を、得よ、さらに、享受せよ。家の中で、死へと近しく至れ。諸君よ、あるいは、その者が、まさしく、誰かを疑うなら」〔と〕。

 

92. 〔菩薩に、帝釈天が尋ねた〕「それを探し求めながら、〔人々が〕世を渡り歩く、〔まさに〕この、多くの者にとっての、そして、好ましいものがあり、さらに、愛らしいものがあり、ここに、生あるものの世において、愛しいものがあり、さらに、美しいものがある。何ゆえに、聖賢たちは、諸々の欲望〔の対象〕を賞賛しないのか」〔と〕。

 

93. 〔菩薩は答えた〕「諸々の欲望〔の対象〕にたいし、まさに、〔人々は〕打破され、かつまた、結縛される。諸々の欲望〔の対象〕にたいし、そして、苦痛が、さらに、恐怖が、生じたのだ。生類の君主(帝釈天)よ、諸々の欲望〔の対象〕にたいし、〔気づきを〕怠る迷妄の者たちは、諸々の悪しき行為を為す。

 

94. 彼らは、悪しき法(性質)の者たちであり、悪を生み出して、身体の破壊ののち、地獄に行く。〔この〕危険を、〔五つの〕欲望の属性(妙欲:色・声・香・味・触)のうちに見て、それゆえに、聖賢たちは、諸々の欲望〔の対象〕を賞賛しないのだ」〔と〕。

 

95. 〔帝釈天が言った〕「〔わたしは、聖賢たちのことを〕審査しつつ、聖賢の諸々の蓮根を、岸で収め取って、陸に置いた。信ある者たちとして、悪なき者たちとして、聖賢たちは住する。梵行者(菩薩)よ、これらが、あなたの蓮根である」〔と〕。

 

96. 〔菩薩は尋ねた〕「わたしたちは、あなたの、芸人たちではなく、また、遊び相手たちでもなく、眷属たちではなく、また、道友たちでもない。千の眼ある者よ、天の王よ、何にもとづいて、あなたは、聖賢たちと遊び戯れるのか」〔と〕。

 

97. 〔帝釈天が答えた〕「わたしの師匠として、かつまた、わたしの父として、〔あなたは〕存しています。梵(婆羅門)よ、これは、躓いた〔わたし〕が立脚するところ。広き智慧ある方よ、一なる非礼を許したまえ。賢者たちは、忿激を力とする者たちと成らず」〔と〕。

 

98. 〔菩薩は言った〕「聖賢たちの一夜は、善く住するところとなった。すなわち、ヴァーサヴァ(帝釈天)を、生類の長を、〔わたしたちは〕見たのだ。諸君よ、まさしく、全ての者たちが、悦意の者たちと成れ。すなわち、婆羅門(菩薩)が〔あなたたちの前に〕現われたところ、〔それらの〕蓮根も〔出現したのだ〕」〔と〕。

 

99. 〔世尊は言った〕「そして、わたしは、かつまた、サーリプッタは、さらに、モッガッラーナとカッサパは、アヌルッダとプンナとアーナンダは、そのとき、七者の兄弟として、〔世に〕存した。

 

100. そして、そのとき、ウッパラヴァンナーは、妹として、クッジュッタラーは、奴婢として、〔世に存した〕。そのとき、チッタ家長は、奴隷として、サーターギラは、夜叉として、〔世に存した〕。

 

101. そのとき、パーリレイヤは、象として、マドゥダは、最勝の猿として、〔世に存した〕。そのとき、カールダーインは、帝釈〔天〕として、〔世に存した〕。このように、ジャータカを保持しなさい」〔と〕。ということで──

 

 ビサ・ジャータカが、第五となる。

 

14. 1. 6. スルチ・ジャータカ(スルチ・本生物語489)

 

102. 〔王妃が言った〕「わたしは、スルチ〔王〕の妻であり、最初に迎え入れられた王妃です。すなわち、わたしを、スルチ〔王〕は、一万年のあいだ思慕しました。

 

103. 婆羅門よ、〔まさに〕その、わたしは、ミティラーを収め取るヴエーデーハ〔国〕の王(スルチ)を、身体によって、言葉によって、あるいは、心によって、軽んじたことを証知しません(記憶しない)──もしくは、公然であろうが、内密であろうが。

 

104. 聖賢よ、この真なる言葉によって、子が生まれ来よ。わたしが虚偽を話しているなら、わたしの頭は、七様に裂けてしまえ。

 

105. わたしの夫の、母である姑は、さらに、また、父である舅も、梵(婆羅門)よ、彼らは、すなわち、生あるかぎり、わたしの教導者たちとして〔世に〕存しました。

 

106. 〔まさに〕その、わたしは、不害を喜ぶ者として、欲するままに法(正義)〔の道〕を歩む者として、恭しく、彼らに奉仕しました──夜に、昼に、休みなく。

 

107. 聖賢よ、この真なる言葉によって、子が生まれ来よ。わたしが虚偽を話しているなら、わたしの頭は、七様に裂けてしまえ。

 

108. 婆羅門よ、一万六千の側室たちがいますが、彼女たちにたいし、あるいは、嫉妬〔の思い〕も、あるいは、忿激〔の思い〕も、わたしには、いついかなる時も有りませんでした。

 

109. 彼女たちに利益があるなら、〔それを〕喜び、そして、わたしにとって、誰であれ、愛しからざる者はなく、亭主を共にする者たちの全てを、常に、自己のように慈しみます。

 

110. 聖賢よ、この真なる言葉によって、子が生まれ来よ。わたしが虚偽を話しているなら、わたしの頭は、七様に裂けてしまえ。

 

111. 奴隷たちに、労夫たちに、召使たちに、さらに、すなわち、他の従僕たちに、法(正義)と共に命じます──常に、〔感官の〕機能()が歓喜している者となり。

 

112. 聖賢よ、この真なる言葉によって、子が生まれ来よ。わたしが虚偽を話しているなら、わたしの頭は、七様に裂けてしまえ。

 

113. 沙門たちを、さらに、また、婆羅門たちを、さらに、また、他の乞食者たちを、食べ物と飲み物によって満足させます──常に、手を洗い清めた者となり。

 

114. 聖賢よ、この真なる言葉によって、子が生まれ来よ。わたしが虚偽を話しているなら、わたしの頭は、七様に裂けてしまえ。

 

115. 十四日と十五日に、そして、すなわち、半月〔ごと〕の第八日に、さらに、神変月には、八つの支分が見事に備わった斎戒に入ります──諸戒において、常に統御された者となり。

 

116. 聖賢よ、この真なる言葉によって、子が生まれ来よ。わたしが虚偽を話しているなら、わたしの頭は、七様に裂けてしまえ」〔と〕。

 

117. 〔菩薩は言った〕「福徳ある王女(王妃)よ、それらの法(正義)の徳は、まさしく、全てが、幸いなる者よ、あなたのうちに等しく見出される──すなわち、あなたが、自己について述べ伝えた、〔それらのものは〕。

 

118. 生まれを成就した士族が、善き生まれの盛名ある者が、ヴィデーハ〔国〕の法(正義)の王が、あなたの子として生まれ来る」〔と〕。

 

119. 〔王妃が尋ねた〕「〔あなたは〕みすぼらしい身なりで、塵や埃を〔身に〕保ち、無蓋なる宙空に立っています。〔あなたは〕快意なる言葉を語ります──すなわち、わたしの心臓に至る〔言葉〕を。

 

120. いったい、〔あなたは〕天上からの天神として存しているのですか、あるいは、大いなる神通ある聖賢として存しているのですか、あるいは、どのような者として存しているのですか──〔ここに〕至り得たあなたは。わたしに、自己のことを知らせてください」〔と〕。

 

121. 〔菩薩は答えた〕「すなわち、スダンマー〔の集会場〕(善法講堂)に集いあつまった天〔の神々〕たちの群れが敬拝する、〔まさに〕その、わたしは、千の眼ある帝釈〔天〕であり、あなたの前に到来した者として存している。

 

122. 生あるものの世には、諸々の婦女たちがいる。その者が、励行ある者として〔世に〕有るなら、思慮ある者として、戒ある者として、舅を天とする者として、亭主に掟ある者として、〔世に有るなら〕──

 

123. そのような思慮ある清らかな行為の女と会うために、天〔の神々〕たちは至り来る──人間ならざる者たちが、人間〔の女〕と〔会うために〕。

 

124. 幸いなる者よ、そして、あなたは、善き行ないによって、さらに、過去における善き行ないによって、一切の欲望が等しく実現する者となり、この〔世において〕、王家に生まれたのだ。

 

125. 王女よ、そして、あなたには、両所において、この幸運がある。そして、天の世への再生であり、さらに、この〔世の〕生命における名誉である。

 

126. 思慮ある者よ、長きに安楽の者として、法(正義)を、自己において守りたまえ。〔まさに〕この、わたしは、三十三〔天〕へと行く。わたしにとって愛しきは、あなたと会うこと」〔と〕。ということで──

 

 スルチ・ジャータカが、第六となる。

 

14. 1. 7. パンチュポーサティカ・ジャータカ(五者の斎戒者・本生物語490)

 

127. 〔菩薩は尋ねた〕「鳩よ、思い入れ少なき者として、今や、あなたは〔存している〕。宙を赴く者よ、あなたには、食べることに義(目的)はない。鳩よ、飢えと渇きに耐えながら、何ゆえに、〔あなたは〕斎戒者として有るのか」〔と〕。

 

128. 〔鳩が答えた〕「かつて、わたしは、雌鳩にたいし貪求〔の思い〕に陥り、この地において、両者ともに喜び楽しむも、そこで、雌鳩を、捕鳥者が捕捉しました。彼女なくして、〔わたしは〕欲なき者と成りました。

 

129. 種々なる生存あるがゆえに、彼女との別離によって、意によって作られる〔苦痛の〕感受()を、〔わたしは〕感受します。それゆえに、わたしは、斎戒を守ります。貪り〔の思い〕が、わたしに、ふたたび至り来てはなりません」〔と〕。

 

130. 〔菩薩は尋ねた〕「蛇行する者よ、腹で行く者よ、二つの舌ある者よ、蛇よ、牙を武器とする者として、おぞましき毒ある者として、〔あなたは〕存している。長き者よ、飢えと渇きに耐えながら、いったい、何ゆえに、〔あなたは〕斎戒者として有るのか」〔と〕。

 

131. 〔蛇が答えた〕「村の者の雄牛で、力ある者が有りました。震えるこぶがあり、色艶と活力を具有した者です。彼が、わたしを踏みました。〔わたしは〕怒り、彼を咬みました。〔彼は〕苦痛に征圧され、死へと近しく赴きました。

 

132. そののち、人たちは、村から出て、泣き叫んで、泣き悲しんで、立ち去りました。それゆえに、わたしは、斎戒を守ります。忿激〔の思い〕が、わたしに、ふたたび至り来てはなりません」〔と〕。

 

133. 〔菩薩は尋ねた〕「墓場には、死者たちの肉が多くある。それは、あなたにとって、食における快意なる形態である。野狐よ、飢えと渇きに耐えながら、何ゆえに、〔あなたは〕斎戒者として有るのか」〔と〕。

 

134. 〔野狐が答えた〕「死骸を喜び、諸々の象の肉にたいし貪求ある〔わたし〕は、大象の腹に入りました。そして、熱風が、さらに、諸々の強い光が、それらが、その〔象〕の糞の道(肛門)を乾かしました。

 

135. 幸甚なる方よ、わたしは、そして、痩せ細り、さらに、青ざめるも、わたしに、出るための道は有りませんでした。そして、大雨が、一気に雨を降らせ、それは、その〔象〕の糞の道を潤しました。

 

136. 幸甚なる方よ、そののち、わたしは、〔象の腹から〕出ました──あたかも、ラーフ(阿修羅の一類で日蝕や月蝕を引き起こすとされる)の口から解き放たれた月のように。それゆえに、わたしは、斎戒を守ります。貪欲〔の思い〕が、わたしに、ふたたび至り来てはなりません」〔と〕。

 

137. 〔菩薩は尋ねた〕「蟻塚の塔にいる蟻たちを叩き潰しながら、かつて、あなたは、〔世を〕歩んできた。熊よ、飢えと渇きに耐えながら、いったい、何ゆえに、〔あなたは〕斎戒者として有るのか」〔と〕。

 

138. 〔熊が答えた〕「〔わたしは〕自らの家を極めて蔑みながら、過度の欲求によって、マッラ〔族〕の村に赴きました。そののち、人たちは、村から出て、石弓で、わたしを遍く叩き潰しました。

 

139. 〔まさに〕その〔わたし〕は、破断した頭で、血にまみれた肢体で、自らの家に戻りました。それゆえに、わたしは、斎戒を守ります。過ぎたる求めが、わたしに、ふたたび至り来てはなりません」〔と〕。

 

140. 〔四者が尋ねた〕「幸甚なる方よ、〔まさに〕その、あなたが、わたしたちに尋ねたことですが、まさしく、全ての者たちが、〔あなたに〕説き明かしました──覚知している、そのとおりに。幸甚なる方よ、わたしたちもまた、あなたに尋ねます。梵(婆羅門)よ、いったい、何ゆえに、〔あなたは〕斎戒者として有るのですか」〔と〕。

 

141. 〔菩薩は答えた〕「汚れなき独覚が、わたしの庵所において、寸時のあいだ坐った。彼は、わたしに知らせた──そして、赴く所と帰る所を、かつまた、名と姓を、さらに、行ないの全てを。

 

142. たとえ、このようにあるも、わたしは、彼の〔両の〕足を敬拝しなかった。さらに、また、〔我想の〕思量(:思い上がりの心)に陥ったことで、彼に尋ねなかった。それゆえに、わたしは、斎戒を守る。〔我想の〕思量が、わたしに、ふたたび至り来てはならない」〔と〕。ということで──

 

 パンチュポーサティカ・ジャータカが、第七となる。

 

14. 1. 8. マハーモーラ・ジャータカ(大なる孔雀・本生物語491)

 

143. 〔菩薩は言った〕「まさに、それで、もし、かくのごとく、わたしが、財を因として捕捉されたとして、わたしを打ち殺してはならない。生け捕りのまま捕捉して、友よ、そして、わたしを、王の近前へと連れ行きたまえ。〔わたしは〕思う──少なからざる形態の財を、〔あなたは〕得るであろう」〔と〕。

 

144. 〔猟師が言った〕「今日、弓に定められた、わたしのこの矢は、あなたを打ち殺すためのものではありません。そして、わたしは、あなたのために、罠を打ち落とします(矢で罠の縄を切断し、あなたを罠から解き放つ)。孔雀の王よ、安楽なるままに去り行きたまえ」〔と〕。

 

145. 〔菩薩は言った〕「すなわち、七年のあいだ、〔あなたは〕わたしを追跡した──夜に、昼に、飢えと渇きに耐えながら。そこで、どうして、罠の支配に導かれたわたしを結縛から解き放つことを求めるのか。

 

146. はてさて、今日、〔あなたは〕命あるものを殺すことから離れた者として存しているのか。はてさて、あなたによって、一切の生類にたいし、恐怖なき〔平安〕が与えられたのか。すなわち、あなたは、罠の支配に導かれたわたしを結縛から解き放つことを求める」〔と〕。

 

147. 〔猟師が言った〕「命あるものを殺すことから離れた者の〔未来の境遇を〕説いてください。そして、その者が、一切の生類にたいし、恐怖なき〔平安〕を与えるなら、ここ(現世)から死滅した彼は、どのような安楽を得るのですか。孔雀の王よ、この義(意味)を、〔わたしは〕あなたに尋ねます」〔と〕。

 

148. 〔菩薩は言った〕「命あるものを殺すことから離れた者の〔未来の境遇を〕説く。そして、その者が、一切の生類にたいし、恐怖なき〔平安〕を与えるなら、まさしく、所見の法(現法:現世)において、賞賛を得る。そして、彼は、肉体の破壊(死)ののち、天上に行く」〔と〕。

 

149. 〔猟師が言った〕「かくのごとく、或る者たちは言います。『天〔の神々〕たちは存在しない。まさしく、この〔世において〕、生ある者は、虚無(非有)へと近しく至る』〔と〕。そのように、諸々の善行と悪行の果を、さらに、布施を、愚者のために設けられた〔教え〕と説きます。彼らの、阿羅漢たちの、〔その〕言葉を信じつつ、それゆえに、わたしは、鳥たちを捕縛します」〔と〕。

 

150. 〔菩薩は言った〕「そして、月は、さらに、日は、両者ともに、善き見た目にして、〔大地を〕照らしながら、空中を赴く。それらは、この世のものであるのか、あるいは、他〔の世〕のものであるのか。それらのことを、人間の世において、いったい、どのように、〔人々は〕言うのか」〔と〕。

 

151. 〔猟師が言った〕「そして、月は、さらに、日は、両者ともに、善き見た目にして、〔大地を〕照らしながら、空中を赴きます。それらは、この世のものでも、他〔の世〕のものでも、ありません。それらのことを、人間の世において、〔人々は〕『天〔の神々〕たちである』と言います」〔と〕。

 

152. 〔菩薩は言った〕「まさしく、ここにおいて、それらの下劣なる論者たちは、打ち倒されたのだ。すなわち、因なき者たちであり、行為()を説かない、〔それらの者たちは〕。すなわち、そのように、諸々の善行と悪行の果を、さらに、布施を、愚者のために設けられた〔教え〕と説く、〔それらの者たちは〕」〔と〕。

 

153. 〔猟師が言った〕「まさに、たしかに、あなたの、この言葉は、真理です。まさに、どのように、布施が、果なきものと成るというのでしょう。そのように、諸々の善行と悪行の果が、そして、どのように、愚者のために設けられた〔教え〕と成るというのでしょう。

 

154. どのように為す者が、どのようなものとして為す者が、どのようなものを習行しながら、どのようなものを習修しながら、どのような苦行の徳によって、〔地獄に落ちないのですか〕。孔雀の王よ、この義(意味)を、わたしに告げ知らせてください。すなわち、わたしが、地獄に落ちないように」〔と〕。

 

155. 〔菩薩は言った〕「彼らが誰であれ、地に存在する沙門たちであるなら、彼らは、黄褐色の衣(袈裟)をまとい、家なき者たちとして、まさしく、早朝に、〔正しい〕時に、〔行乞の〕食のために歩みます。なぜなら、〔正しからざる〕非時の歩みから離れた者たちとして、正しくある者たちはあるからです。

 

156. 彼らに、そこにおいて、〔正しい〕時に、近づいて行って尋ねなさい──それが、あなたの意にとって、愛しきものとして存するなら。彼らは、あなたに言示するでしょう──覚知している、そのとおりに、この世のものも、さらに、他〔の世〕のものも、〔その〕義(意味)を」〔と〕。

 

157. 〔猟師が言った〕「蛇が、老化した旧皮を〔捨て去る〕ように、緑の木が、枯れ葉を〔捨て去る〕ように、わたしの、この猟師の状態は捨棄された。わたしは、今日、猟師の状態を捨棄する。

 

158. さらに、また、それらの、わたしに捕縛された、幾百の鳥たちが住居地に存するが、彼らにもまた、わたしは、今日、生命を与えよう──さらに、解放を。彼らは、自らの家に至り得たのだ」〔と〕。

 

159. 〔世尊は言った〕「猟師は、罠を手に、林を歩んだ──福徳ある孔雀の君主を捕縛するために。福徳ある孔雀の君主を捕縛して〔そののち〕、彼は、苦しみから解き放たれた──すなわち、わたしが解き放たれたように」〔と〕。ということで──

 

 マハーモーラ・ジャータカが、第八となる。

 

14. 1. 9. タッチャスーカラ・ジャータカ(タッチャスーカラ・本生物語492)

 

160. 〔タッチャスーカラが言った〕「諸々の山を、さらに、諸々の林を、すなわち、探し求めながら、〔わたしたちは〕渡り歩いた。親族たちを尋ね求めながら、〔わたしは〕渡り歩いた。彼らは、これら〔の猪たち〕は、〔今や〕わたしの到達するところとなった。

 

161. そして、この、多くの根や果があり、かつまた、この、少なからざる食物があり、さらに、これらの、喜ばしき山や川がある。平穏な暮らしと成るであろう。

 

162. まさしく、ここに、わたしは住するのだ──全ての親族たちと共に、思い入れ少なき者となり、危惧なき者となり、憂いなき者となり、何も恐れない者となり」〔と〕。

 

163. 〔猪たちが言った〕「他のまた避難所を遍く探し求めたまえ。ここに、わたしたちに、賊が見出される。タッチャよ、彼は、猪たちを殺す──ここにやってきては、優れたもの、優れたものを」〔と〕。

 

164. 〔タッチャスーカラが尋ねた〕「いったい、誰が、ここに、わたしたちに、賊となるのだ。誰が、親族たちを、見事に集いあつまり倒し難き者たちを、倒すのだ。〔問いを〕尋ねられた者たちとして、それを、わたしに告げ知らせよ」〔と〕。

 

165. 〔猪たちが答えた〕「見事な縞ある獣の王が、力があり牙を武器とする獣(虎)が、タッチャよ、彼が、猪たちを殺す──ここにやってきては、優れたもの、優れたものを」〔と〕。

 

166. 〔タッチャスーカラが言った〕「わたしたちに、諸々の牙が見出されないのではない。身体には、力が宿っている。全ての者たちが、和合の者たちと成って、一なる支配を作り為すのだ」〔と〕。

 

167. 〔猪たちが言った〕「タッチャさんよ、心臓に至る〔言葉〕を、耳に楽しき言葉を、〔あなたは〕語る。すなわち、また、〔その虎が〕戦いにおいて逃げ去るなら、彼を、また、そのあとで殺すのだ」〔と〕。

 

168. 〔獲物なき虎に、結髪者が尋ねた〕「はてさて、今日、〔あなたは〕命あるものを殺すことから離れたのか。はてさて、あなたによって、一切の生類にたいし、恐怖なき〔平安〕が与えられたのか。獣(虎)よ、はてさて、あなたに、殺戮のための諸々の牙は存在しないのか。すなわち、〔猪たちの〕群れに至り得たのに、〔あなたは〕貧者のように思い惑う」〔と〕。

 

169. 〔虎が答えた〕「わたしに、諸々の牙が見出されないのではない。身体には、力が宿っている。しかしながら、一緒になり、和合する〔猪の〕親族たちを見て、そして、それゆえに、〔わたしは〕独りある者となり、林のなかで思い惑う。

 

170. かつて、これらの者たちは、まさに、方々へと至り行く──恐怖に苦悩し、多々に避難所を探し求める者たちとなり。今や、彼らは、集いあつまって、一緒に暮らす。そこにおいて、安立した者たちとなり、今日、彼らは、わたしには打ち負かし難くある。

 

171. 完全なる導き手を成就した者たちであり、利益を共にする者たちであり、一なる論ある者たちであり、彼らは、和合者たちとなり、わたしを害するであろう。それゆえに、〔わたしは〕彼らを望み求めない」〔と〕。

 

172. 〔結髪者が言った〕「まさしく、独りで、インダ(インドラ神・帝釈天)は、阿修羅たちに勝つ。まさしく、独りで、鷹は、鳥たちを打ち負かして殺す。まさしく、独りで、虎は、獣たちの群れに至り得たなら、優れたもの、優れたものを殺す。まさに、力は、そのようなもの」〔と〕。

 

173. 〔虎が言った〕「まさしく、まさに、インダにあらず、鷹にあらず、また、獣の君主たる虎にもあらず──和合者たちとなり、利益を共にする親族たちを〔殺すことができるのは〕──虎なるも、諸々の支配を為さず」〔と〕。

 

174. 〔結髪者が言った〕「クンビーラカ鳥たちは、群れつどい、衆として歩み、一所において、共に歓喜しながら、飛び上がり、かつまた、飛び回る。

 

175. そして、彼らが飛び回っていると、ここにおいて、或る者が離脱する。そして、鷹は、彼を襲撃する。まさしく、虎においても、それが赴く所となる」〔と〕。

 

176. 〔世尊は言った〕「残忍にして財貨に眼ある結髪者に催促され、牙ある者(虎)は、牙ある者(猪)たちに飛び掛かった──すなわち、かつてのように思い考えながら」〔と〕。

 

177. 〔菩薩は言った〕「善きかな、大勢の親族たちは、林に生じる木々もまた。猪たちによって、和合者たちによって、虎は、一なる道において殺された」〔と〕。

 

178. 〔世尊は言った〕「まさしく、そして、婆羅門(結髪者)を、さらに、虎を、両者を殺して、猪たちは、歓嘆の者たちとなり、歓喜した者たちとなり、大いなる咆哮を挙げた。

 

179. まさに、それらの猪たちは、ウドゥンバラ〔樹〕の根元に集いあつまり、タッチャカを灌頂した。『あなたは、わたしたちの王として存しています──イッサラ(イーシュヴァラ神・自在神)として』」〔と〕。ということで──

 

 タッチャスーカラ・ジャータカが、第九となる。

 

14. 1. 10. マハーヴァーニジャ・ジャータカ(大なる商人・本生物語493)

 

180. 〔世尊は言った〕「商人たちは、種々なる国土からやってきた者たちは、集を為して、或る者を頭目と為して、財を運び来る者たちは出発した。

 

181. 彼らは、食物少なく、水なき、その砂漠にやってきて、意が喜びとする涼やかな影ある、大いなるニグローダ〔樹〕を見た。

 

182. そして、彼らは、そこにおいて、その木の影に坐って、商人たちは、迷妄に包着された愚者たちは、等しく思い考えた。

 

183. 『この木は、水気がある。まさしく、水もまた流れている。商人たちよ、さあ、わたしたちは、この〔木〕の東の枝を断ち切るのだ』〔と〕。

 

184. そして、まさしく、断ち切られたその〔枝〕は、濁りなく澄んだ水を流出した。彼らは、そこにおいて、〔身体を〕洗って、〔水を〕飲んで、商人たちは、あるかぎりを求めた。

 

185. 再度、迷妄に包着された愚者たちは、等しく思い考えた。『商人たちよ、さあ、わたしたちは、この〔木〕の南の枝を断ち切るのだ』〔と〕。

 

186. そして、まさしく、断ち切られたその〔枝〕は、多くの米や肉や飯を流出した──諸々の水少なく色艶ある粥を、生姜を、諸々の豆汁を。

 

187. 彼らは、そこにおいて、食べて、喰って、商人たちは、あるかぎりを求めた。三度、迷妄に包着された愚者たちは、等しく思い考えた。『商人たちよ、さあ、わたしたちは、この〔木〕の西の枝を断ち切るのだ』〔と〕。

 

188. そして、まさしく、断ち切られたその〔枝〕は、〔装いを〕十二分に作り為した女たちを流出した──様々な彩りの衣と装飾品をまとい、宝珠の耳飾を付けた〔女〕たちを。

 

189. さてまた、まさに、一者の商人に二十五の女たちが、その〔木〕の影のもと、遍きにわたり取り囲んだ。

 

190. 彼らは、彼女たちに世話させて、商人たちは、あるかぎりを求めた。四度、迷妄に包着された愚者たちは、等しく思い考えた。『商人たちよ、さあ、わたしたちは、この〔木〕の北の枝を断ち切るのだ』〔と〕。

 

191. そして、まさしく、断ち切られたその〔枝〕は、多くの真珠と瑠璃を流出した──そして、銀を、金を、さらに、諸々の敷物を、諸々の白毛布を──

 

192. かつまた、諸々のカーシ産の衣を、かつまた、諸々の北国〔産〕の毛布を。彼らは、そこにおいて、諸々の荷を結縛して、商人たちは、あるかぎりを求めた。

 

193. 五度、迷妄に包着された愚者たちは、等しく思い考えた。『商人たちよ、さあ、わたしたちは、この〔木〕の根を断ち切るのだ。さらに、より一層、得るであろう』〔と〕。

 

194. そこで、隊商の長(菩薩)は、乞い求めながら合掌を為し、立った。〔彼は言った〕『〔恩ある〕ニグローダ〔樹〕が、どうして、失われることになるのでしょう。商人たちよ、あなたに、幸せが存せ。

 

195. 東の枝は、水を与え、そして、南〔の枝〕は、食べ物と飲み物を〔与え〕、西の枝は、女を与え、さらに、北の枝は、一切の欲望〔の対象〕を〔与えてくれた〕。〔恩ある〕ニグローダ〔樹〕が、どうして、失われることになるのでしょう。商人たちよ、あなたに、幸せが存せ。

 

196. その木の影に、坐るなら、あるいは、臥すなら、その〔木〕の枝を折るべきではありません。まさに、朋友を裏切る者は、悪しき者です』〔と〕。

 

197. しかしながら、多者である彼らは、一者である彼の言葉を取らずして、諸々の鋭利な斧で、根元から、その〔木〕に襲い掛かった。

 

198. そののち、龍たちが出てきた──二十五の〔鎧を〕装着した者たちが、三百の弓の使い手たちが、さらに、六千の武装者たちが。

 

199. 〔龍の王が言った〕『これらの者たちを、殺せ、縛れ、まさに、命あるまま解き放ってはならない。隊商の長だけを除いて、彼らの全てを、灰と為せ』〔と〕。

 

200. まさに、それゆえに、賢者たる人は、自己の義(利益)を正しく見ながら、貪欲の支配に赴かないように。自らの敵となる〔悪しき〕意を殺すように。

 

201. このように、危険を知って、渇愛〔の思い〕を苦しみの発生と〔知って〕、渇愛〔の思い〕を離れ、執取〔の思い〕なく、〔常に〕気づきある比丘として、遍歴遊行するがよい」〔と〕。ということで──

 

 マハーヴァーニジャ・ジャータカが、第十となる。

 

14. 1. 11. サーディナ・ジャータカ(サーディナ・本生物語494)

 

202. 〔人々が言った〕「まさに、世における、未曾有のことである。身の毛のよだつことが生起した。天の車が、盛名あるヴェーデーハ〔王〕(菩薩)のもとに出現した」〔と〕。

 

203. 〔世尊は言った〕「天子にして大いなる神通ある者は、天の馭者たるマータリ(帝釈天の馭者)は、ミティラーを収め取るヴェーデーハ王を招いた」〔と〕。

 

204. 〔マータリが言った〕「最勝の王よ、方角の長よ、さあ、この車に乗ってください。天〔の神々〕たちは、インダを含む三十三〔天の神々〕たちは、あなたと会うことを欲しています。まさに、天〔の神々〕たちは、あなたのことを思い浮かべながら、スダンマー〔の集会場〕に共に坐しています」〔と〕。

 

205. 〔世尊は言った〕「そして、そののち、ミティラーを収め取るヴェーデーハ王のサーディナは、千〔の馬〕を設えた〔車〕に乗って、天〔の神々〕たちの現前に赴いた。天〔の神々〕たちは、王がやってきたのを見て、彼を歓迎した」〔と〕。

 

206. 〔神々が言った〕「大王よ、あなたにとって、善き訪問と〔成れ〕。さらに、あなたにとって、悪しき訪問ならざるものと〔成れ〕。聖賢たる王よ、坐りたまえ、今や、天の王(帝釈天)の現前に」〔と〕。

 

207. 〔世尊は言った〕「帝釈〔天〕もまた、ミティラーを収め取るヴェーデーハ〔王〕を歓迎した。ヴァーサヴァ(帝釈天)は、諸々の欲望〔の対象〕をもって、さらに、坐をもって、〔彼を〕招いた」〔と〕。

 

208. 〔帝釈天が言った〕「善きかな、まさに、〔あなたは〕存している──自在の転起ある者たちの住居に至り得た者として。聖賢たる王よ、一切の欲望が等しく実現する天〔の神々〕たちのなかで住したまえ。三十三天において、人間のものならざる諸々の欲望〔の対象〕を享受したまえ」〔と〕。

 

209. 〔天の住人となり、七百年を過ごした菩薩は、帝釈天に尋ねた〕「天上に赴いたわたしは、諸々の舞踏によって、そして、諸々の歌詠によって、諸々の音楽によって、かつては喜び楽しむも、その〔わたし〕は、今や、今日、天上において喜び楽しむことがありません。人のなかの最勝のインダ(帝釈天)よ、はてさて、寿命が、滅尽したのでしょうか。はてさて、死が、現前にあるのでしょうか、それとも、〔わたしは〕迷乱した者として存しているのでしょうか」〔と〕。

 

210. 〔帝釈天が答えた〕「人のなかの最勝の勇者よ、あなたの寿命は、滅尽していません。かつまた、死は、遠くにあります。さらに、また、〔あなたは〕迷乱した者でもありません。しかしながら、あなたの諸々の功徳は、〔もはや〕ほんの僅かです。それら〔の功徳〕の報いを、ここに、〔これまでのあいだ、あなたは〕感受してきたのです。

 

211. 最勝の王よ、方角の長よ、天〔の神〕の威力によって住したまえ(わたしの力であなたを天に住ませよう)。三十三天において、人間のものならざる諸々の欲望〔の対象〕を享受したまえ」〔と〕。

 

212. 〔菩薩は言った〕「あたかも、借り物の乗物のように、あたかも、借り物の財産のように、このように、まさしく、〔この喩えと〕同様のものとして、これ(功徳なき欲望の享受)はあります──すなわち、他者からの施しを縁とするがゆえに。

 

213. そして、わたしは、これ(功徳なき欲望の享受)を求めません──すなわち、他者からの施しを縁とするがゆえに。自ら作り為したものとして、諸々の功徳があるなら、それは、わたしにとって、固有の財産となります。

 

214. 〔まさに〕その、わたしは、〔ここから〕去って、人間たち〔の世〕において、多くの善なる〔功徳〕を作り為すでしょう──布施によって、正しい性行によって、自制によって、さらに、調御によって。それを為して、〔世の人々が〕安楽の者たちと成り、そして、のちに悩み苦しまない、〔多くの善なる功徳を〕」〔と〕。

 

215. 〔人間界に戻り、菩薩は言った〕「これら〔の田畑〕は、〔かつて見たとおりの〕それらの田畑である(姿形は昔のままである)。この〔水路〕は、〔かつて見たとおりの〕美しく曲がりくねった水路である。これら〔の緑の岸辺〕は、〔かつて見たとおりの〕それらの緑の岸辺である。これら〔の流れ行く川〕は、〔かつて見たとおりのそれらの〕流れ行く川である。

 

216. これら〔の蓮池〕は、〔かつて見たとおりの〕それらの喜ばしき蓮池である。鴛鴦たちが鳴き、諸々のマンダーラカ〔蓮〕に等しく覆われ、さらに、諸々の赤蓮や青蓮に〔等しく覆われている〕。まさに、これらのものをわがものとした、それらの者たちは──彼らは、いったい、どの方角に赴いたのだ(知っている人間は一人もいない)。

 

217. ここに、〔かつて見たままの〕それらの田畑が、その土地の区画が、まさしく、それらの、園や林や近郊があるのに、まさしく、その、わたしの人民を、見ずにいるなら、ナーラダ(菩薩の子孫)よ、わたしにとって、方角は、空であるかのように思えるのだ。

 

218. わたしは、四方を照らす諸々の宮殿を見た──天の王の面前にて、さらに、三十三〔天の神々〕たちの面前にて。

 

219. わたしは、天の居所に住し、人間のものならざる諸々の欲望〔の対象〕を享受した──三十三天において、一切の欲望が等しく実現する天〔の神々〕たちのなかで。

 

220. 〔まさに〕その、わたしは、このような〔天の悦楽〕を捨棄して、功徳のために、ここに帰還した者として存している。まさしく、法(正義)〔の道〕を歩むのだ。わたしは、王権を義(目的)とする者にあらず。

 

221. 正等覚者によって説示された、棒(罰)なき行境の道を──その〔道〕によって、善き掟の者たちが赴く、〔まさに〕その道を、実践するのだ」〔と〕。ということで──

 

 サーディナ・ジャータカが、第十一となる。

 

14. 1. 12. ダサブラーフマナ・ジャータカ(十者の婆羅門・本生物語495)

 

222. 〔世尊は言った〕「法(正義)を欲するユディッティラ王は、ヴィドゥラ(菩薩)に言った」〔と〕。〔王が言った〕「ヴィドゥラよ、婆羅門たちを遍く探し求めよ──戒ある多聞の者たちを。

 

223. 淫事の法(性質)から離れた者たちだ。わたしの食を受けるべき、それらの者たちだ。友よ、そこにおいて、施されたものが、大いなる果となるところに、〔わたしたちは〕施物を施すのだ」〔と〕。

 

224. 〔菩薩は言った〕「陛下よ、得難きは、戒ある多聞の婆羅門たちです。淫事の法(性質)から離れた者たちです。あなたの食を受けるべき、それらの者たちです。

 

225. 大王よ、まさに、十のものがあります。すなわち、婆羅門の生まれとなる、それらのものです。それらについての、わたしの、詳細〔の観点〕による区分と判別をお聞きください。

 

226. 〔或る婆羅門たちは〕根元が結ばれ〔物品に〕満ちた諸々の袋を収め取って、諸々の薬草を結び束ね、沐浴し、さらに、詠唱します。

 

227. 王よ、〔彼らは〕医師に等しき者たちです。彼らもまた、婆羅門と呼ばれます。大王よ、彼らが、〔第一の者たちとして〕告げ知らされました。〔わたしたちは〕そのような者たちに平伏します」〔と〕。

 

228. 「さてまた、彼らは、婆羅門の資質から離れた者たちである」〔と〕、かくのごとく、コーラブヤ王(ユディッティラ)が〔言った〕。「彼らは、婆羅門と呼ばれない。ヴィドゥラよ、他の者たちを遍く探し求めよ──戒ある多聞の者たちを。

 

229. 淫事の法(性質)から離れた者たちだ。わたしの食を受けるべき、それらの者たちだ。友よ、そこにおいて、施されたものが、大いなる果となるところに、〔わたしたちは〕施物を施すのだ」〔と〕。

 

230. 〔菩薩は言った〕「〔或る婆羅門たちは〕諸々の鈴を収め取って、あなたの前からもまた布告します。使者たちとしてもまた赴き、諸々の車の性行について学びます。

 

231. 王よ、〔彼らは〕侍者に等しき者たちです。彼らもまた、婆羅門と呼ばれます。大王よ、彼らが、〔第二の者たちとして〕告げ知らされました。〔わたしたちは〕そのような者たちに平伏します」〔と〕。

 

232. 「さてまた、彼らは、婆羅門の資質から離れた者たちである」〔と〕、かくのごとく、コーラブヤ王が〔言った〕。「彼らは、婆羅門と呼ばれない。ヴィドゥラよ、他の者たちを遍く探し求めよ──戒ある多聞の者たちを。

 

233. 淫事の法(性質)から離れた者たちだ。わたしの食を受けるべき、それらの者たちだ。友よ、そこにおいて、施されたものが、大いなる果となるところに、〔わたしたちは〕施物を施すのだ」〔と〕。

 

234. 〔菩薩は言った〕「〔或る〕婆羅門たちは水瓶を収め取って、さらに、曲がった棒を〔収め取って〕、王たちのもとに向かい行くでしょう──村々において、さらに、町々において。『施されないうちは、〔わたしどもは〕出起しないでありましょう──あるいは、村においても、あるいは、林においても』〔と〕。

 

235. 王よ、〔彼らは〕圧制者に等しき者たちです。彼らもまた、婆羅門と呼ばれます。大王よ、彼らが、〔第三の者たちとして〕告げ知らされました。〔わたしたちは〕そのような者たちに平伏します」〔と〕。

 

236. 「さてまた、彼らは、婆羅門の資質から離れた者たちである」〔と〕、かくのごとく、コーラブヤ王が〔言った〕。「彼らは、婆羅門と呼ばれない。ヴィドゥラよ、他の者たちを遍く探し求めよ──戒ある多聞の者たちを。

 

237. 淫事の法(性質)から離れた者たちだ。わたしの食を受けるべき、それらの者たちだ。友よ、そこにおいて、施されたものが、大いなる果となるところに、〔わたしたちは〕施物を施すのだ」〔と〕。

 

238. 〔菩薩は言った〕「〔或る婆羅門たちは〕脇毛や爪や体毛を長くし、歯には泥、頭には塵の者たちとなり、諸々の塵や芥が振りつもり、彼らは、乞い求める者たちとして渡り歩きます。

 

239. 王よ、〔彼らは〕木こりに等しき者たちです。彼らもまた、婆羅門と呼ばれます。大王よ、彼らが、〔第四の者たちとして〕告げ知らされました。〔わたしたちは〕そのような者たちに平伏します」〔と〕。

 

240. 「さてまた、彼らは、婆羅門の資質から離れた者たちである」〔と〕、かくのごとく、コーラブヤ王が〔言った〕。「彼らは、婆羅門と呼ばれない。ヴィドゥラよ、他の者たちを遍く探し求めよ──戒ある多聞の者たちを。

 

241. 淫事の法(性質)から離れた者たちだ。わたしの食を受けるべき、それらの者たちだ。友よ、そこにおいて、施されたものが、大いなる果となるところに、〔わたしたちは〕施物を施すのだ」〔と〕。

 

242. 〔菩薩は言った〕「〔或る婆羅門たちは〕ハーリタカ〔の果〕やアーマラカ〔の果〕やアンバ〔の果〕やジャンブ〔の果〕やヴィビータカ〔の果〕やラブジャ〔の果〕や諸々の楊枝や諸々の栃の実を、さらに、諸々の棗を──

 

243. ラージャーヤタナ〔樹〕や甘蔗の袋や煙突や蜜や塗薬を、人の君主よ、高下諸々の商品を売り捌きます。

 

244. 王よ、〔彼らは〕商人に等しき者たちです。彼らもまた、婆羅門と呼ばれます。大王よ、彼らが、〔第五の者たちとして〕告げ知らされました。〔わたしたちは〕そのような者たちに平伏します」〔と〕。

 

245. 「さてまた、彼らは、婆羅門の資質から離れた者たちである」〔と〕、かくのごとく、コーラブヤ王が〔言った〕。「彼らは、婆羅門と呼ばれない。ヴィドゥラよ、他の者たちを遍く探し求めよ──戒ある多聞の者たちを。

 

246. 淫事の法(性質)から離れた者たちだ。わたしの食を受けるべき、それらの者たちだ。友よ、そこにおいて、施されたものが、大いなる果となるところに、〔わたしたちは〕施物を施すのだ」〔と〕。

 

247. 〔菩薩は言った〕「〔或る婆羅門たちは〕耕作や商売に従事します。山羊や羊たちを養い育てます。少女たちを贈与します──婚姻させ、かつまた、婚姻します。

 

248. 〔彼らは〕混血や庶民に等しき者たちです。彼らもまた、婆羅門と呼ばれます。大王よ、彼らが、〔第六の者たちとして〕告げ知らされました。〔わたしたちは〕そのような者たちに平伏します」〔と〕。

 

249. 「さてまた、彼らは、婆羅門の資質から離れた者たちである」〔と〕、かくのごとく、コーラブヤ王が〔言った〕。「彼らは、婆羅門と呼ばれない。ヴィドゥラよ、他の者たちを遍く探し求めよ──戒ある多聞の者たちを。

 

250. 淫事の法(性質)から離れた者たちだ。わたしの食を受けるべき、それらの者たちだ。友よ、そこにおいて、施されたものが、大いなる果となるところに、〔わたしたちは〕施物を施すのだ」〔と〕。

 

251. 〔菩薩は言った〕「〔或る婆羅門たちは〕下げ置かれた食物を食べます。村々において、或る者たちは司祭たちとしてあります。多くの者たちが、彼らに遍く問い尋ねます。〔家畜の〕睾丸を断つ者たちであり、〔家畜を〕去勢する者たちです。

 

252. そこにおいて、家畜たちをもまた殺します──水牛たちを、猪たちを、山羊たちを。王よ、〔彼らは〕屠牛者に等しき者たちです。彼らもまた、婆羅門と呼ばれます。大王よ、彼らが、〔第七の者たちとして〕告げ知らされました。〔わたしたちは〕そのような者たちに平伏します」〔と〕。

 

253. 「さてまた、彼らは、婆羅門の資質から離れた者たちである」〔と〕、かくのごとく、コーラブヤ王が〔言った〕。「彼らは、婆羅門と呼ばれない。ヴィドゥラよ、他の者たちを遍く探し求めよ──戒ある多聞の者たちを。

 

254. 淫事の法(性質)から離れた者たちだ。わたしの食を受けるべき、それらの者たちだ。友よ、そこにおいて、施されたものが、大いなる果となるところに、〔わたしたちは〕施物を施すのだ」〔と〕。

 

255. 〔菩薩は言った〕「〔或る〕婆羅門たちは剣と盾を収め取って、刀を突き上げて、諸々の庶民の道(街頭)に立ち、刃をもまた引き抜きます。

 

256. 〔彼らは〕牛飼いや非人たちに等しき者たちです。彼らもまた、婆羅門と呼ばれます。大王よ、彼らが、〔第八の者たちとして〕告げ知らされました。〔わたしたちは〕そのような者たちに平伏します」〔と〕。

 

257. 「さてまた、彼らは、婆羅門の資質から離れた者たちである」〔と〕、かくのごとく、コーラブヤ王が〔言った〕。「彼らは、婆羅門と呼ばれない。ヴィドゥラよ、他の者たちを遍く探し求めよ──戒ある多聞の者たちを。

 

258. 淫事の法(性質)から離れた者たちだ。わたしの食を受けるべき、それらの者たちだ。友よ、そこにおいて、施されたものが、大いなる果となるところに、〔わたしたちは〕施物を施すのだ」〔と〕。

 

259. 〔菩薩は言った〕「〔或る婆羅門たちは〕林に小屋を作って、諸々の奸計に従事します。彼らは、兎や猫たちを、蜥蜴たちを、魚や亀を、捕縛します。

 

260. 王よ、彼らは猟師に等しき者たちです。彼らもまた、婆羅門と呼ばれます。大王よ、彼らが、〔第九の者たちとして〕告げ知らされました。〔わたしたちは〕そのような者たちに平伏します」〔と〕。

 

261. 「さてまた、彼らは、婆羅門の資質から離れた者たちである」〔と〕、かくのごとく、コーラブヤ王が〔言った〕。「彼らは、婆羅門と呼ばれない。ヴィドゥラよ、他の者たちを遍く探し求めよ──戒ある多聞の者たちを。

 

262. 淫事の法(性質)から離れた者たちだ。わたしの食を受けるべき、それらの者たちだ。友よ、そこにおいて、施されたものが、大いなる果となるところに、〔わたしたちは〕施物を施すのだ」〔と〕。

 

263. 〔菩薩は言った〕「他の者たちは、まさに、財を欲する者たちです。〔彼らは〕臥床の下に入り込み、王たちは、上で沐浴します──ソーマの祭祀が催されたとき。

 

264. 王よ、〔彼らは〕垢取りに等しき者たちです。彼らもまた、婆羅門と呼ばれます。大王よ、彼らが、〔第十の者たちとして〕告げ知らされました。〔わたしたちは〕そのような者たちに平伏します」〔と〕。

 

265. 「さてまた、彼らは、婆羅門の資質から離れた者たちである」〔と〕、かくのごとく、コーラブヤ王が〔言った〕。「彼らは、婆羅門と呼ばれない。ヴィドゥラよ、他の者たちを遍く探し求めよ──戒ある多聞の者たちを。

 

266. 淫事の法(性質)から離れた者たちだ。わたしの食を受けるべき、それらの者たちだ。友よ、そこにおいて、施されたものが、大いなる果となるところに、〔わたしたちは〕施物を施すのだ」〔と〕。

 

267. 〔菩薩は言った〕「陛下よ、まさに、戒ある多聞の婆羅門たちは存在します。淫事の法(性質)から離れた者たちです。あなたの食を受けるべき、それらの者たちです。

 

268. 彼らは、そして、〔一日に〕一食を受け、さらに、酔わせるもの(酒類)を飲みません。大王よ、彼らが、〔真の婆羅門たちとして〕告げ知らされました。〔わたしたちは〕そのような者たちに平伏します」〔と〕。

 

269. 〔王が言った〕「ヴィドゥラよ、これらの者たちは、まさに、戒ある多聞の婆羅門たちである。ヴィドゥラよ、これらの者たちを遍く探し求めよ。そして、すみやかに、彼らを招き入れよ」〔と〕。ということで──

 

 ダサブラーフマナ・ジャータカが、第十二となる。

 

14. 1. 13. ビッカーパランパラ・ジャータカ(行乞の相伝・本生物語496)

 

270. 〔王に、施主が尋ねた〕「繊細なる形姿ある方を見て、国土から荒野にやってきた〔王〕を〔見て〕、優れた楼閣を具した大いなる臥所において近侍される〔王〕を〔見て〕──

 

271. 〔まさに〕その、あなたへの、愛慕〔の思い〕によって、わたしは、とびきりの御飯を施しました。諸々の米のなかから選り分けられた食事を、肉汁を注いだ上等の〔食事〕を。

 

272. あなたは、その食事を受け取って、婆羅門に施しました──自己みずからは食べずして。これは、どのような法(性質)なのですか。あなたに、礼拝が存せ」〔と〕。

 

273. 〔王が答えた〕「わたしの師匠である婆羅門は、諸々の為すべきことと為すべきではないことに懸命なる者である。かつまた、尊重される者であり、かつまた、招請されるべき者である。〔彼に〕食を施すのが、〔わたしに〕値するのだ」〔と〕。

 

274. 〔婆羅門に、施主が尋ねた〕「今や、婆羅門に尋ねます──王に供養されるゴータマ〔姓の婆羅門〕に。王は、あなたに、食事を施しました──肉汁を注いだ上等の〔食事〕を。

 

275. あなたは、その食事を受け取って、聖賢(菩薩)に、食を施しました。布施の田畑を知らない者として、〔あなたは〕存しているのですか。これは、どのような法(性質)なのですか。あなたに、礼拝が存せ」〔と〕。

 

276. 〔婆羅門が答えた〕「諸々の家屋において拘束された者として、わたしはあり、そして、子や妻たちを養い、人間のものである諸々の欲望〔の対象〕を享受し、王に〔諸事について〕教示します。

 

277. 聖賢に、林にある者に、長夜にわたる苦行者に、自己を修めた年長者に、〔彼に〕食を施すのが、〔わたしに〕値するのです」〔と〕。

 

278. 〔菩薩に、施主が尋ねた〕「そして、今や、聖賢に尋ねます──痩せ細り、〔浮き出た〕血管が〔身体中に〕広がった〔聖賢〕に──脇毛や爪や体毛を長くし、歯には泥、頭には塵の〔聖賢〕に。

 

279. 〔あなたは〕独り、林に住み、生命を希求しません。比丘(独覚)は、何によって、あなたよりも、より勝っているのですか。あなたは、彼に、食を施しました」〔と〕。

 

280. 〔菩薩は答えた〕「諸々のアールやカランバ〔の球根〕を掘りながら、さらに、諸々のビラーリやタッカラ〔の球根〕を〔掘りながら〕、粟や野生米を払い落とし、打ち叩き、差し伸ばしながら──

 

281. 野菜を、蓮根を、蜜を、肉を、さらに、諸々の棗やアーマラカ〔の果〕を、それらを運び込んで、〔わたしは〕食べます。わたしには、〔まさに〕その、執持〔の対象〕が存在します。

 

282. 調理する者は、調理しない者に、所有ある者は、我執なき者に、執取を有する者は、執取なき者に、〔彼に〕食を施すのが、〔わたしに〕値するのです」〔と〕。

 

283. 〔独覚に、施主が尋ねた〕「そして、今や、比丘に尋ねます──沈黙し端坐する善き掟ある〔比丘〕に。聖賢は、あなたに、食事を施しました──肉汁を注いだ上等の〔食事〕を。

 

284. あなたは、その食事を受け取って、独りある者となり、沈黙のままに食べました。誰であれ、他の者を招きませんでした。これは、どのような法(性質)なのですか。あなたに、礼拝が存せ」〔と〕。

 

285. 〔独覚が答えた〕「〔わたしは〕調理しません。〔わたしは〕調理させません。〔わたしは〕切断しません。〔わたしは〕切断させません。〔まさに〕その、わたしのことを、無一物の者と知って、一切の悪から離れた者と〔知って〕──

 

286. 左〔の手〕で行乞〔の施食〕を取って、右〔の手〕で水瓶を〔取って〕、聖賢は、わたしに、食事を施しました──肉汁を注いだ上等の〔食事〕を。

 

287. まさに、これらの者たちは、我執〔の対象〕を有する者たちであり、執持〔の対象〕を有する者たちであり、〔わたしに〕食を施すのが、〔彼らに〕値するのです。すなわち、〔わたしが〕施す者を招くなら、〔それこそは〕正反対のことと、わたしは思うのです」〔と〕。

 

288. 〔施主が言った〕「まさに、わたしの義(利益)のために、今日、車上の雄牛(王)は、ここにやってきたのです。〔まさに〕その、わたしは、今日、覚知します──そこにおいて、施されたものが、大いなる果となるところを。

 

289. 諸々の国土にたいし貪求あるのが、王たちである。諸々の為すべきことと為すべきではないことにたいし〔貪求あるのが〕、婆羅門たちである。根や果にたいし貪求あるのが、聖賢たちである。そして、〔それらの全てから〕解脱しているのが、比丘たちである」〔と〕。ということで──

 

 ビッカーパランパラ・ジャータカが、第十三となる。

 

 雑駁なるものの集まりは〔以上で〕終了となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「鸚鵡(稲田)と妖精(チャンダキンナリー)と松明(大なる鶚)と粗い鹿皮(ウッダーラカ)があり、蓮根の本生と王妃(スルチ)と優れた鳩(五者の斎戒者)があり、そこで、孔雀(大なる孔雀)とタッチャなるもの(タッチャスーカラ)を有するものと商人なるもの(大なる商人)があり、そこで、王(サーディナ)と婆羅門(十者の婆羅門)を有するものと行乞の相伝があり、〔それらの〕十三がある」と。

 

15. 二十なるものの集まり

 

15. 1. マータンガの章

 

15. 1. 1. マータンガ・ジャータカ(マータンガ・本生物語497)

 

1. 〔マンダブヤが言った〕「汚い身なりの者よ、いったい、どこから、やってきたのだ。卑しい泥鬼のようだ。塵芥のぼろ布を首に結んでいる。おい、誰なのだ。施与されるべきではない者として、おまえは有る(おまえに与える施物はない)」〔と〕。

 

2. 〔菩薩は言った〕「福徳ある者よ、あなたのために作られた、この食べ物を、それを、〔施与されるべき者たちは、施物として〕咀嚼し、食べ、さらに、飲みます。あなたは、わたしのことを、他者の施しに依拠して生きる者と知っています。卑賎の者は、残食を得よ」〔と〕。

 

3. 〔マンダブヤが言った〕「わたしのために作られた、この食べ物は、婆羅門たちのものである──自己の義(利益)のために、信を置いているわたしの、この〔食べ物〕は。ここから、離れ去れ。どうして、ここに立つ者として、〔おまえは〕存しているのだ。卑しむべき者よ、わたしのような者たちは、おまえには施さない」〔と〕。

 

4. 〔菩薩は言った〕「かつまた、高地においても、かつまた、低地においても、〔人々は〕種を巻く──湿潤なる田畑において、果を願い求めながら。この信によって、施しを施したまえ。まさしく、おそらく、施与されるべき者たちに達するであろう」〔と〕。

 

5. 〔マンダブヤが言った〕「世に知られたものとして、わたしの諸々の田畑はある──わたしは、それら〔の田畑〕において、種を据え付ける。それらの婆羅門たちが、出生と呪文を具有した者たちであるなら、それらの田畑は、ここに、いとも愛すべきものとなる」〔と〕。

 

6. 〔菩薩は言った〕「かつまた、出生の驕慢が、かつまた、高慢あることが、かつまた、貪欲()が、かつまた、憤怒()が、かつまた、驕慢()が、かつまた、迷妄()が──これらの徳ならざるものの全てが、そして、それら〔の田畑〕において存在するなら、それらの田畑は、ここに、愛すべきではないものとなる。

 

7. かつまた、出生の驕慢が、かつまた、高慢あることが、かつまた、貪欲が、かつまた、憤怒が、かつまた、驕慢が、かつまた、迷妄が──これらの徳ならざるものの全てが、それら〔の田畑〕のうちに存在しないなら、それらの田畑は、ここに、いとも愛すべきものとなる」〔と〕。

 

8. 〔マンダブヤが言った〕「誰がいるのだ、ここにおいて、〔人々は、どこに〕赴いたのだ、そして、ウパジョーティヤは、さらに、ウパッジャーヤは、さらに、あるいは、ガンダクッチは。そして、棒を、さらに、殴打を、この者に与えて、喉元を掴んで、卑しむべき者を打ち倒せ」〔と〕。

 

9. 〔菩薩は言った〕「〔あなたは〕爪で山を掘る。〔あなたは〕諸々の歯で鉄を咬む。〔あなたは〕火を玩ぶ。すなわち、〔あなたは〕聖賢を誹謗する」〔と〕。

 

10. 〔世尊は言った〕「マータンガ(菩薩)は、真理に勤しむ聖賢は、この〔言葉〕を説いて、婆羅門たちが見守るなか、空中に立ち去った」〔と〕。

 

11. 〔人々に、マンダブヤの母が尋ねた〕「背中から上の部分が巻き上がっている。腕を伸ばすが、行為に適さない。死者のものであるかのように、〔両の〕眼は白い。誰が、わたしのこの子を、このように為したのですか」〔と〕。

 

12. 〔人々が答えた〕「汚い身なりの沙門が、ここにやってきました。卑しい泥鬼のような者です。塵芥のぼろ布を首に結んでいます。彼が、あなたのこの子を、このように為したのです」〔と〕。

 

13. 〔マンダブヤの母が尋ねた〕「広き智慧ある方(菩薩)は、どの方角に赴いたのですか。学徒たちよ、この義(意味)を、わたしに告げ知らせてください。〔その方角に〕赴いて、彼のことを、〔犯した〕過誤を、懺悔したいのです。まさしく、おそらく、彼を、子を、〔以前の〕生命を、得るでしょう」〔と〕。

 

14. 〔人々が答えた〕「広き智慧ある方は、旅路にある十五〔夜〕の月のように、宙空に赴きました。さらに、そして、また、彼は、真理を明言する方は、聖賢は、形姿善き方は、東の方角に赴きました」〔と〕。

 

15. 〔菩薩に、マンダブヤの母が尋ねた〕「背中から上の部分が巻き上がっている。腕を伸ばすが、行為に適さない。死者のものであるかのように、〔両の〕眼は白い。誰が、わたしのこの子を、このように為したのでしょう」〔と〕。

 

16. 〔菩薩は答えた〕「まさに、大いなる威力ある者たちである、夜叉たちが存在する。形姿善き聖賢たちに従い行く者たちである。汚れた心の者を、怒り狂った者を、それら〔の夜叉たち〕が見出して、まさに、彼らが、あなたの子を、このように為したのだ」〔と〕。

 

17. 〔マンダブヤの母が言った〕「梵行者よ、そして、夜叉たちが、わたしの子を、このように為したとして、まさしく、あなたが、わたしに忿激することがあってはなりません。比丘よ、まさしく、あなたの、〔両の〕足を帰依所に赴いた者として、〔わたしは〕存しています──子の憂い悲しみによって、〔あなたに〕従い行く者として」〔と〕。

 

18. 〔菩薩は言った〕「まさに、まさしく、そのときも、さらに、今現在も、わたしの憤怒の意は、何であれ、わたしには存在しない。しかしながら、ヴェーダ(ヴェーダ聖典)の驕慢によって驕慢した、あなたの子は、諸々のヴェーダを学得しても、義(道理)を知らない」〔と〕。

 

19. 〔マンダブヤの母が言った〕「比丘よ、まさに、たしかに、寸時をもって、まさしく、迷乱するのが、人の表象()です。広き智慧ある方よ、一なる非礼を許したまえ。賢者たちは、忿激を力とする者たちに有らず」〔と〕。

 

20. 〔菩薩は言った〕「では、わたしのこの残食を、あなたの智慧少なきマンダブヤが食べるのだ。かつまた、夜叉たちは、あなたのその〔子〕を悩まさないであろうし、かつまた、あなたのその子は、無病の者と成るであろう」〔と〕。

 

21. 〔マンダブヤに、マンダブヤの母が言った〕「マンダブヤよ、〔あなたは〕智慧僅かな愚者として存しています。すなわち、諸々の功徳の田畑に熟知なき者として、〔あなたは〕存しています。汚れた行為ある者たちにたいし、自制なき者たちにたいし、大いなる汚濁ある者たちにたいし、〔あなたは〕布施を施しました。

 

22. そして、諸々の髪を結髪し、皮衣を着衣し、顔は〔結髪で〕長くなり、古井戸のようです。この汚い形姿の人々を見なさい。結髪や皮衣は、智慧少なき者を救いません。

 

23. 彼らの、そして、貪欲が、かつまた、憤怒が、さらに、無明が──〔それらが〕離貪されたなら、〔彼らは〕煩悩の滅尽者たる阿羅漢たちであり、彼らにおいて、施されたものは、大いなる果となります」〔と〕。ということで──

 

 マータンガ・ジャータカが、第一となる。

 

15. 1. 2. チッタサンブータ・ジャータカ(チッタとサンブータ・本生物語498)

 

24. 〔王が尋ねた〕「人たちの善き行ないは、全てが果を有し、行為によるもので、無駄なるものは、何ひとつ存在しない。〔わたしは〕見る──大いなる威力あるサンブータを、自らの行為による功徳の果を具有した者を。

 

25. 人たちの善き行ないは、全てが果を有し、行為によるもので、無駄なるものは、何ひとつ存在しない。はてさて、どうであろう、チッタ(菩薩)のばあいもまた、まさしく、このようにあるのだろうか。彼の意は、実現したのだろうか。すなわち、また、わたしの〔意の〕ように」〔と〕。

 

26. 〔少年が答えた〕「人たちの善き行ないは、全てが果を有し、行為によるもので、無駄なるものは、何ひとつ存在しません。陛下よ、チッタのこともまた、まさしく、そのように知りたまえ。彼の意は、実現したのです。すなわち、また、あなたの〔意〕のように」〔と〕。

 

27. 〔王が尋ねた〕「はてさて、貴君は、チッタであるのか、あなたは、他の者から聞いたのか、それとも、誰かが、〔まさに〕その、このことを、あなたに告げ知らせたのか。詩偈は、見事に歌われた。わたしに、疑いは存在しない。そして、あなたに、百の優れた村を与えよう」〔と〕。

 

28. 〔少年が答えた〕「さてまた、わたしは、チッタではなく、わたしは、他の者から聞きました。そして、聖賢(チッタ)が、この義(意味)を、わたしに指示しました。『赴いて、王の詩偈に返歌せよ。さらに、わが意を得た〔王〕は、あなたに、優れたものを与えるであろう』」〔と〕。

 

29. 〔家来たちに、王が言った〕「美しく作られ彩りあざやかな刺繍ある、まさに、諸々の王車を設えよ。象たちに飾紐を結べ。首飾を付けよ。

 

30. 諸々の太鼓や小鼓や法螺貝を打ち鳴らせ。さらに、諸々の速い乗物を設えよ。まさしく、今日、わたしは、その庵所に赴くのだ。まさしく、そこにおいて、坐っている聖賢と会見するのだ」〔と〕。

 

31. 〔菩薩に、王が言った〕「見事に得られた利得が、まさに、わたしに有りました。歌詠は、衆の中で見事に歌われました。〔まさに〕その、わたしは、戒と掟を具有した聖賢を見て──わたしは、満足した者となり、悦意の者となり、〔ここに〕存しているのです。

 

32. 坐を、水を、足に塗る油を、貴君は、わたしたちのために納受したまえ。供物について、貴君に尋ねます。貴君は、供物〔の報い〕を、わたしたちのために作り為したまえ(供物を納受してください)。

 

33. 〔人々は〕喜ばしき住居を、あなたのために作れ。〔あなたは〕女たちの群れに世話されよ。〔あなたは〕資助のための機会を作りたまえ(一緒に住んでください)。〔わたしたちは〕両者ともどもに、この権力を為すのです」〔と〕。

 

34. 〔菩薩は言った〕「王よ、悪しき行ないの果を見て、さらに、善き行ないの大いなる報いを〔見て〕、まさしく、自己を、〔わたしは〕自制した。子供や家畜を、あるいは、財産を、〔わたしは〕望み求めない。

 

35. まさしく、この百年が、ここに、人間たちに生命としてあり、まさしく、その限界に至り得ることなく、断たれた葦のように、〔生命は〕干上がる。

 

36. そこにおいて、何の愉悦があるというのだ。何の遊興があるというのだ。何の歓楽があるというのだ。何の求財があるというのだ。子たちが、妻たちが、わたしにとって、何になるというのだ。王よ、〔わたしは〕結縛から解き放たれた者として〔世に〕存している。

 

37. 〔まさに〕その、わたしは、このように覚知する。死魔は、わたしのことを怠らない。死神に囚われた者にとって、何の歓楽があるというのだ。何の求財があるというのだ。

 

38. 人のインダ(国王)よ、チャンダーラ(賎民)の胎は、人たちのなかの最低の生まれにして、二足者たちのなかの最後のもの。自らの極めて悪しき諸々の行為によって、過去において、〔わたしたちは〕チャンダーラの胎に住した。

 

39. アヴァンティ〔国〕において、〔わたしたちは〕チャンダーラたちとして〔世に〕有った。ネーランジャラー〔川〕の河畔において、〔わたしたちは〕鹿たちとして〔世に有った〕。ナンマダー〔川〕の岸辺において、〔わたしたちは〕鶚(みさご)たちとして〔世に有った〕。〔まさに〕その〔わたしたち〕が、今日、婆羅門と士族として〔世に有る〕。

 

40. 生命は、〔老によって〕導かれる。寿命は、僅かである。老によって導かれた者に、諸々の救護所は存在しない。パンチャーラ〔王〕よ、わたしの、この言葉を為せ。苦しみを生成する諸々の行為を為してはならない。

 

41. 生命は、〔老によって〕導かれる。寿命は、僅かである。老によって導かれた者に、諸々の救護所は存在しない。パンチャーラ〔王〕よ、わたしの、この言葉を為せ。苦しみを結果する諸々の行為を為してはならない。

 

42. 生命は、〔老によって〕導かれる。寿命は、僅かである。老によって導かれた者に、諸々の救護所は存在しない。パンチャーラ〔王〕よ、わたしの、この言葉を為せ。塵の頭となる諸々の行為を為してはならない。

 

43. 生命は、〔老によって〕導かれる。寿命は、僅かである。老によって導かれた者に、諸々の救護所は存在しない。パンチャーラ〔王〕よ、わたしの、この言葉を為せ。地獄に再生するための行為を為してはならない」〔と〕。

 

44. 〔王が言った〕「まさに、たしかに、あなたの、この言葉は、真理です。このことは、そのとおりです。聖賢よ、すなわち、〔あなたが〕語るとおりです。しかしながら、わたしにとって、諸々の欲望〔の対象〕は、少なからざる形態のものとして存在します。比丘よ、それらは、わたしのような者には捨て去り難くあるのです。

 

45. たとえば、汚泥の中に沈み込んだ象が、陸地を見ながら、赴くことができないように、このように、また、わたしは、欲望の汚泥に沈み込み、比丘の道に従えないのです。

 

46. たとえば、また、そして、母が、さらに、父が、子に、どのようにすると、安楽の者と成れるのか、教え示すように、尊き方よ、このように、また、あなたは、わたしに教え示してください。すなわち、死してのち、長きにわたり、〔わたしが〕安楽の者と成れるように」〔と〕。

 

47. 〔菩薩は言った〕「人のインダよ、もし、あなたが、人間のものであるこれらの欲望〔の対象〕を捨棄することができないなら、王よ、法(正義)にかなう租税を確立するのだ。あなたの国土において、法(正義)ならざることを為す者が有ってはならない。

 

48. 沙門や婆羅門たちを招く使者たちを、四方に走らせよ。食べ物や飲み物によって、衣によって、さらに、臥坐具や日用品(薬)によって、彼らに奉仕するのだ。

 

49. 清信した心の者となり、食べ物と飲み物によって、そして、沙門や婆羅門たちを満足させよ。〔自らの〕威力のままに、そして、〔他者に〕施して、さらに、〔自ら正しく〕受益して、〔誰からも〕非難されることなく、天上の境位へと近しく至れ。

 

50. 王よ、そして、それで、もし、女たちの群れに世話されているあなたを、驕慢〔の思い〕が打ち負かすなら、まさしく、この詩偈に、意を為せ。そして、これを、衆の中で語らせよ(※)。

 

※ テキストには bhāsesi とあるが、PTS版により bhāsehi と読む。

 

51. 〔すなわち〕『野外に臥す人が、〔旅を〕行く〔母〕に乳を飲ませられた者が、犬たちにまとわりつかれた者が、彼が、今日、「王」と呼ばれる』」〔と〕。ということで──

 

 チッタサンブータ・ジャータカが、第二となる。

 

15. 1. 3. シヴィ・ジャータカ(シヴィ・本生物語499)

 

52. 〔老いた婆羅門に姿を変えた帝釈天が言った〕「遠くにおいて、まさしく、〔眼が〕見えずにいる長老が、眼を乞い求めるためにやってきたのです。〔わたしたちは〕一眼の者たちと成るのです。乞い求められた者として、わたしに、〔一つの〕眼を施したまえ」〔と〕。

 

53. 〔菩薩は尋ねた〕「〔あなたは〕誰に教示され、ここにやってきた者として存しているのですか。乞い願う者よ、〔あなたは〕諸々の眼の道(視力)を乞い求めるために〔やってきました〕。〔あなたは〕極めて捨て去り難い最上の〔肉体の〕部分を乞い求めます。〔まさに〕その、眼のことを、〔人々は〕『人には捨て去り難きもの』と言います」〔と〕。

 

54. 〔帝釈天が答えた〕「彼のことを、天〔の神々〕たちにおいて、『スジャーの亭主』と言うなら、その者のことを、人間の世においては、『マガヴァント』と言います。〔わたしは〕彼に教示され、ここにやってきた者として存しています。乞い願う者となり、〔わたしは〕諸々の眼の道を乞い求めるために〔やってきました〕。

 

55. 乞い願っているわたしの無上なる乞い願いを、あなたの諸々の眼の道を、乞い求められた者として、〔わたしに〕施したまえ。無上なる眼の道を、わたしに施したまえ。〔まさに〕その、眼のことを、〔人々は〕『人には捨て去り難きもの』と言います」〔と〕。

 

56. 〔菩薩は言った〕「その義(目的)によってやってきたなら、その義(目的)を望み求めているなら、それらの思惟が、あなたに実現せよ。婆羅門よ、〔両の〕眼を得たまえ。

 

57. 一つ〔の眼〕を、あなたが乞い求めているなら、両〔の眼〕を、わたしは施しましょう。〔まさに〕その〔あなた〕は、眼ある者となり、人が眺め見ているなか、赴きたまえ。それを、あなたが求めるなら、それが、あなたに等しく実現せよ」〔と〕。

 

58. 〔人々が言った〕「陛下よ、まさに、眼を施してはいけません。まさに、一切を摘出してはいけません。大王よ、財を、多くの真珠と瑠璃を、施したまえ。

 

59. 陛下よ、諸々の設えられた車を、さらに、〔装いを〕十分に作り為した良馬たちを、施したまえ。大王よ、金の鞍かけを装着する象たちを、施したまえ。

 

60. すなわち、あなたを、全てのシヴィ〔国〕の者たちが、車馬と共に、車兵と共に、常に、遍きにわたり取り囲むままに、車上の雄牛(王)よ、このように、施したまえ」〔と〕。

 

61. 〔菩薩は言った〕「彼が、まさに、『施そう』と言って〔そののち〕、施さないことに意を為すなら、彼は、地に落ちている罠に、首を嵌め込む。

 

62. 彼が、まさに、『施そう』と言って〔そののち〕、施さないことに意を為すなら、彼は、悪しき者よりも、より悪しき者と成る──夜魔の王国に至り得た者となり。

 

63. まさに、それを、〔彼が〕乞い求めるなら、まさに、それを、〔わたしは〕施す。それを、〔彼が〕乞い求めないなら、それを、〔わたしは〕施さない。〔まさに〕その、わたしは、まさしく、それを、施すであろう。それを、婆羅門が、わたしに乞い求めるなら」〔と〕。

 

64. 〔人々が言った〕「寿命でしょうか、さてまた、色艶でしょうか、さてまた、安楽でしょうか、さてまた、活力でしょうか、人のインダよ、いったい、何を切望しながら、〔あなたは〕施すのですか。まさに、どうして、シヴィ〔国〕の無上なる王が、他の世を因として、〔両の〕眼を施すというのでしょう」〔と〕。

 

65. 〔菩薩は言った〕「あるいは、わたしは、これを、盛名ゆえに施すのではない。〔わたしは〕子を求めない。財を〔求め〕ない。国土を〔求め〕ない。しかしながら、正しくある者たちの法(正義)〔の道〕は、過去からのものとして歩まれてきたのであり、まさしく、かくのごとく、わたしの意は、布施を喜ぶ。

 

66. シーヴィカ(王医)よ、わたしの、かつまた、友人として、かつまた、朋友として、〔あなたは〕存している。わたしの言葉を、〔医術に〕手練の者として、善くしっかりと為したまえ。求め願うわたしの〔両の〕眼を引き抜いて、乞い願う者の〔両の〕手のうえに置くのだ」〔と〕。

 

67. 〔世尊は言った〕「シヴィ王に促されたシーヴィカは、〔王の〕言葉を為す者となり、王の〔両の〕眼を引き抜いて、婆羅門に差し出した。婆羅門は、眼を有する者として存した。王は、盲者となり、近坐した。

 

68. そののち、数日して、彼は、〔両の〕眼〔の傷〕が回復したので、王は、シヴィ〔国〕の国土を繁栄させる者は、馭者に告げた。

 

69. 〔菩薩は言った〕『馭者よ、車を設えよ。そして、設えたなら、知らせよ。庭園の地に、〔わたしたちは〕赴くのだ──諸々の蓮池に、そして、諸々の林に』〔と〕。

 

70. そして、彼は、蓮池の岸辺において、結跏をもって近坐した。彼のもとに、帝釈〔天〕が、天の王たるスジャーの亭主が、出現した」〔と〕。

 

71. 〔帝釈天が言った〕「わたしは、天のインダたる帝釈〔天〕として存している。あなたの前に到来した者として存している。聖賢たる王よ、願い事を願うのだ。それが何であれ、〔あなたが〕意に求めるなら」〔と〕。

 

72. 〔菩薩は言った〕「帝釈〔天〕よ、わたしには、多大なる財があります。力があり、さらに、少なからざる蔵があります。今や、盲者として存しているわたしにとって、死こそは、好ましくあります」〔と〕。

 

73. 〔帝釈天が言った〕「二足者のインダよ、それらが真なるものであるなら、士族よ、それらを語るのだ。あなたが、真なる〔言葉〕を話しているなら、ふたたび、眼が有るであろう」〔と〕。

 

74. 〔菩薩は言った〕「それらの者たちが、わたしに乞い求めるために至り来るなら、乞い願う者たちは、種々なる氏姓の者たちとしてある。その者がまた、そこにおいて、わたしに乞い求めるなら、その者はまた、わたしにとって、意に愛しき者となる。この真なる言葉によって、わたしの眼は、再生せよ。

 

75. すなわち、わたしに乞い求めるために、『〔両の〕眼を施したまえ』と、その婆羅門はやってきた。乞い願っている、その婆羅門に、〔わたしは、両の〕眼を施した。

 

76. より一層の喜悦が、さらに、少なからざる悦意が、わたしを侵した。この真なる言葉によって、わたしの眼は、再生せよ」〔と〕。

 

77. 〔帝釈天が言った〕「シヴィ〔国〕の国土を繁栄させる者よ、法(正義)によって、詩偈が語られた。あなたには、これらの天の眼が現われる。

 

78. 壁を超え、岩を超え、山を超え去って、百ヨージャナ(由旬:長さの単位・軛牛の一日の旅程距離)の遍きにわたる見を、あなたの〔両の眼は〕受領せよ」〔と〕。

 

79. 〔菩薩は言った〕「いったい、誰が、ここに、富を施さないというのだろう──たとえ、殊勝のものであれ、たとえ、自己にとって極めて愛しきものであれ、乞い求められたなら。それでは、さあ、集いあつまった全てのシヴィ〔国〕の者たちよ、今日、わたしの〔両の〕天の眼を見よ。

 

80. 壁を超え、岩を超え、山を超え去って、百ヨージャナの遍きにわたる見を、わたしの〔両の眼は〕受領する。

 

81. ここに、人間たちの生命において、施捨ほどに最高のものは、何であれ、存在しない。人間の眼を施して、わたしによって、人間のものならざる眼が得られたのだ。

 

82. シヴィ〔国〕の者たちよ、このことをもまた見て、諸々の布施を施せ、〔そののち、自ら正しく〕受益せよ。〔自らの〕威力のままに、そして、〔他者に〕施して、さらに、〔自ら正しく〕受益して、〔誰からも〕非難されることなく、天上の境位へと近しく至れ」〔と〕。ということで──

 

 シヴィ・ジャータカが、第三となる。

 

15. 1. 4. シリーマンタ・ジャータカ(吉祥なる助言・本生物語500)

 

83. 〔王が尋ねた〕「吉祥に劣るも智慧(慧・般若)を具した者のことを、あるいは、また、盛名あるも智慧を離れた者のことを、セーナカよ、この義(意味)を、〔わたしは〕あなたに尋ねる。誰を、ここにおいて、より勝ると、智者たちは説くのか」〔と〕。

 

84. 〔セーナカが答えた〕「人のインダよ、まさに、そして、慧者たちがいて、さらに、愚者たちがいます。そして、技能を具有した者たちがいて、さらに、技能なき者たちがいます。たとえ、善き生まれの者たちでも、生まれなき者の、盛名ある者の、下僕たちと成ります。このことをもまた見て、わたしは説きます。智慧ある者は、劣る者。吉祥ある者こそは、より勝る者」〔と〕。

 

85. 〔王が尋ねた〕「至上の智慧ある者よ、マホーサダ(菩薩)よ、全一なる法(真理)を見る者よ、あなたにもまた、〔わたしは〕尋ねる。盛名ある愚者を、財物少なき賢者を、誰を、ここにおいて、より勝ると、智者たちは説くのか」〔と〕。

 

86. 〔菩薩は答えた〕「諸々の悪しき行為を、愚者は為します。まさしく、この〔世において〕、『より勝る』と思い考えながら。〔彼は〕この世を見る者であり、他の世を見る者ではありません。愚者は、両所において、〔悪しき〕賽の目を掴み取りました。このことをもまた見て、わたしは説きます。智慧ある者こそは、より勝る者。盛名ある愚者は、さにあらず」〔と〕。

 

87. 〔セーナカが言った〕「財物を遣わすのは、これは、技能にあらず、眷属にあらず、すなわち、肉体の色艶ある者にあらず。見よ──安楽に満ち栄えている聾唖者を。まさに、吉祥は、彼に、ゴーラヴィンダに、親近します。このことをもまた見て、わたしは説きます。智慧ある者は、劣る者。吉祥ある者こそは、より勝る者」〔と〕。

 

88. 〔菩薩は言った〕「智慧少なき者は、安楽を得て〔そののち〕、驕慢し、さてまた、苦痛に触れたなら、迷妄に至ります。至り来た苦と楽に触れたなら、炎暑のなかの魚のように動揺します。このことをもまた見て、わたしは説きます。智慧ある者こそは、より勝る者。盛名ある愚者は、さにあらず」〔と〕。

 

89. 〔セーナカが言った〕「たとえば、林のなかの美味なる果ある木に、遍きにわたり、鳥たちが集まってくるように、このように、また、財産を有し財物を有する富者に、多くの人々は、義(利益)を因として親近します。このことをもまた見て、わたしは説きます。智慧ある者は、劣る者。吉祥ある者こそは、より勝る者」〔と〕。

 

90. 〔菩薩は言った〕「力ある愚者が、無理強いで財を見出すのは、善きことにあらず。泣き叫んでいる、この思慮浅き者を、〔獄卒たちは〕過酷なる地獄に引き立てます。このことをもまた見て、わたしは説きます。智慧ある者こそは、より勝る者。盛名ある愚者は、さにあらず」〔と〕。

 

91. 〔セーナカが言った〕「それらが何であれ、諸々の川は、ガンガー〔川〕へと流れ行きます。それら〔の川〕は、まさしく、全てが、名と姓を捨棄します。ガンガー〔川〕は、海へと行きつつ、見えなくなり、世における智慧ある者もまた、繁栄ある者に〔赴きます〕。このことをもまた見て、わたしは説きます。智慧ある者は、劣る者。吉祥ある者こそは、より勝る者」〔と〕。

 

92. 〔菩薩は言った〕「すなわち、〔彼が〕告げ知らせた、この大海原に、諸々の川は流れ行きます──全ての時に、数かぎりなく。その海洋は、常に巨万の衝撃ある大海なるも、限度を超え行くことはありません。

 

93. このように、また、愚者には、諸々の渇望するものがあります。吉祥は、いついかなる時も、智慧を超え行くことはありません。このことをもまた見て、わたしは説きます。智慧ある者こそは、より勝る者。盛名ある愚者は、さにあらず」〔と〕。

 

94. 〔セーナカが言った〕「たとえ、もし、自制なくも盛名ある者が、他者たちのために、調停に至り、義(利益)あることを話すなら、まさしく、彼のその〔言葉〕は、親族たちの中で広まります。まさに、吉祥は、その〔言葉〕を執行します。智慧は、さにあらず。このことをもまた見て、わたしは説きます。智慧ある者は、劣る者。吉祥ある者こそは、より勝る者」〔と〕。

 

95. 〔菩薩は言った〕「あるいは、他者を〔因として〕、あるいは、また、自己を因として、智慧少なき愚者は、偽りを語ります。彼は、衆の中において、非難される者と成ります。のちにまた、彼は、悪しき境遇に至る者と成ります(死後に悪趣に赴く)。このことをもまた見て、わたしは説きます。智慧ある者こそは、より勝る者。盛名ある愚者は、さにあらず」〔と〕。

 

96. 〔セーナカが言った〕「たとえ、もし、広き智慧ある者が、義(利益)あることを語るとして、富裕ならず、財少なく、貧しくあるなら、彼のその〔言葉〕は、親族たちの中で広まりません。そして、吉祥は、智慧ある者には有りません。このことをもまた見て、わたしは説きます。智慧ある者は、劣る者。吉祥ある者こそは、より勝る者」〔と〕。

 

97. 〔菩薩は言った〕「あるいは、他者を〔因として〕、あるいは、また、自己を因として、広き智慧ある者は、偽りを語りません。彼は、衆の中において、供養される者と成ります。のちにまた、彼は、善き境遇に至る者と成ります(死後に善趣に赴く)。このことをもまた見て、わたしは説きます。智慧ある者こそは、より勝る者。盛名ある愚者は、さにあらず」〔と〕。

 

98. 〔セーナカが言った〕「象や牛や馬たちは、そして、諸々の宝珠の耳飾は、さらに、婦女たちも、繁栄する家々に生じたものであり、それらは、まさしく、全てが、神通なくも繁栄する人の諸々の受益物として〔世に〕有ります。このことをもまた見て、わたしは説きます。智慧ある者は、劣る者。吉祥ある者こそは、より勝る者」〔と〕。

 

99. 〔菩薩は言った〕「生業が差配されざる者を、愚者を、思慮浅き助言者を、思慮浅き者を、吉祥は捨棄します──蛇が、老化した皮を〔捨て去る〕ように。このことをもまた見て、わたしは説きます。智慧ある者こそは、より勝る者。盛名ある愚者は、さにあらず」〔と〕。

 

100. 〔セーナカが言った〕「五者の賢者たるわたしたちの全てが、〔王であるあなたに〕合掌し奉仕する者たちとして〔存しています〕。あなたに、幸せ〔有れ〕。あなたは、わたしたちを征服して、イッサラ(イーシュヴァラ神・自在神)として存しています──生類の長にして、天の王たる、帝釈〔天〕のように。このことをもまた見て、わたしは説きます。智慧ある者は、劣る者。吉祥ある者こそは、より勝る者」〔と〕。

 

101. 〔菩薩は言った〕「盛名ある愚者は、智慧ある者の奴隷のようなもの。そのように、諸々の種類の義(事態)が生じたとき、賢者は、それを、精緻に差配し、愚者は、そこにおいて、等しき迷妄を惹起します。このことをもまた見て、わたしは説きます。智慧ある者こそは、より勝る者。盛名ある愚者は、さにあらず。

 

102. まさに、たしかに、智慧こそは、正しくある者たちに賞賛され、吉祥は、財物を喜ぶ人間たちの欲するところ。そして、覚者たちの知恵()は、無比なる形態あるもの。吉祥は、いついかなる時も、智慧を超え行くことはありません」〔と〕。

 

103. 〔王が言った〕「〔まさに〕その、〔わたしたちが〕あなたに尋ねたことだが、〔あなたは〕わたしたちに述べ伝えてくれた。マホーサダよ、全一なる法(真理)を見る者よ、千の、牛を、さらに、雄牛を、象を、さらに、これらの十の良馬を設えた車を、十六の優れた村を、問いの説明に満足した者として、〔わたしは〕あなたに与えよう」〔と〕。ということで──

 

 シリーマンタ・ジャータカが、第四となる。

 

15. 1. 5. ローハナミガ・ジャータカ(ローハナ鹿・本生物語501)

 

104. 〔菩薩は言った〕「チッタカ(弟鹿)よ、これらの群れは、死を恐れ、引き返す。おまえもまた、去れ、躊躇してはならない。おまえと共に、〔彼らは〕生きるであろう」〔と〕。

 

105. 〔弟鹿が言った〕「ローハナ(菩薩)よ、わたしは去りません。〔憂いは〕わたしの心臓を引き離します。わたしは、あなたを捨棄しません。ここに、生命を捨棄します」〔と〕。

 

106. 〔菩薩は言った〕「まさに、彼ら(両親)は、まちがいなく、死ぬであろう。遍き導き手なく、盲目の者たちなのだ。おまえもまた、去れ、躊躇してはならない。おまえと共に、〔彼らは〕生きるであろう」〔と〕。

 

107. 〔弟鹿が言った〕「ローハナよ、わたしは去りません。〔憂いは〕わたしの心臓を引き離します。捕縛されたあなたを捨棄しません。ここに、生命を捨棄します」〔と〕。

 

108. 〔菩薩は言った〕「恐怖する者(妹)よ、去れ。逃げなさい。鉄の奸計に捕縛された者として、〔わたしは〕存している。おまえもまた、去れ、躊躇してはならない。おまえと共に、〔彼らは〕生きるであろう」〔と〕。

 

109. 〔妹鹿が言った〕「ローハナよ、わたしは去りません。〔憂いは〕わたしの心臓を引き離します。わたしは、あなたを捨棄しません。ここに、生命を捨棄します」〔と〕。

 

110. 〔菩薩は言った〕「まさに、彼ら(両親)は、まちがいなく、死ぬであろう。遍き導き手なく、盲目の者たちなのだ。おまえもまた、去れ、躊躇してはならない。おまえと共に、〔彼らは〕生きるであろう」〔と〕。

 

111. 〔妹鹿が言った〕「ローハナよ、わたしは去りません。〔憂いは〕わたしの心臓を引き離します。捕縛されたあなたを捨棄しません。ここに、生命を捨棄します」〔と〕。

 

112. 〔菩薩は言った〕「この者が、武器を有し、残忍な形質の、〔まさに〕その猟師が、至り来る。彼は、今日、わたしたちを打ち殺すであろう──矢によって、刃によってもまた」〔と〕。

 

113. 〔世尊は言った〕「彼女は、恐怖に苦悩し、恐怖に怯え、寸時のあいだ逃げ去って〔そののち〕、恐怖する者は、極めて為し難きことを為した。死ぬために戻ってきたのだ」〔と〕。

 

114. 〔猟師が尋ねた〕「あなたにとって、これらの鹿たちは、いったい、どのようなものと成るのですか。〔彼らは〕解き放たれているのに、捕縛された者に近侍します。〔彼らは〕あなたを捨て去ることを求めません──たとえ、生命を契機としても」〔と〕。

 

115. 〔菩薩は答えた〕「猟師よ、わたしにとって、一なる母をもつ同腹の兄弟たちと成ります。〔彼らは〕解き放たれているのに、捕縛された者に近侍します。〔彼らは〕わたしを捨て去ることを求めません──たとえ、生命を契機としても」〔と〕。

 

116. 〔弟鹿が言った〕「まさに、彼ら(両親)は、まちがいなく、死ぬでしょう。遍き導き手なく、盲目の者たちなのです。〔わたしたちの〕五者に、生命を与えてください。猟師よ、兄を解き放ってください」〔と〕。

 

117. 〔猟師が言った〕「それなら、まさに、わたしは解き放ちましょう──母と父を養う鹿を。母と父は喜びたまえ──解き放たれた大鹿を見て」〔と〕。

 

118. 〔弟鹿が言った〕「猟師よ、このように、全ての親族たちと共に、喜びたまえ。すなわち、解き放たれた大鹿を見て、今日、わたしが喜ぶように」〔と〕。

 

119. 〔母鹿と父鹿が尋ねた〕「どのように、おまえは、解き放たれた者として存しているのですか──生命が〔死に〕導かれたのに。子よ、どのように、猟師は、奸計の索縄から〔おまえを〕解き放ったのですか」〔と〕。

 

120. 〔菩薩は答えた〕「心臓を部分とし、心臓に依拠する、耳に安楽なる言葉を話しながら、諸々の見事に語られた言葉によって、チッタカ(弟鹿)は、わたしを解き放ちました。

 

121. 心臓を部分とし、心臓に依拠する、耳に安楽なる言葉を話しながら、諸々の見事に語られた言葉によって、スタナー(妹鹿)は、わたしを解き放ちました。

 

122. 心臓を部分とし、心臓に依拠する、耳に安楽なる言葉を聞いて、諸々の見事に語られた〔言葉〕を聞いて、猟師は、わたしを解き放ちました」〔と〕。

 

123. 〔母鹿と父鹿が言った〕「このように、猟師は、妻たちと共に、喜びある者と成れ。すなわち、ローハナ(菩薩)が帰り来たのを見て、今日、わたしたちが喜ぶように」〔と〕。

 

124. 〔王が尋ねた〕「猟師よ、まさに、おまえは言ったではないか。『諸々の鹿の皮を持ってきます』〔と〕。そこで、いったい、何を理由に、諸々の鹿の皮を持ってこなかったのか」〔と〕。

 

125. 〔猟師が答えた〕「まさしく、そして、〔鹿は〕手中に至り着きました──さらに、奸計の索縄に。その鹿は捕縛されました。その鹿の王に、そして、彼に、解き放たれている者たちが近侍するのです。

 

126. 〔まさに〕その、わたしには、未曾有にして身の毛のよだつ、畏怖〔の思い〕が有りました。『もし、わたしが、この鹿を殺すなら、今日、生命を捨棄するだろう』」〔と〕。

 

127. 〔王が尋ねた〕「猟師よ、それらの鹿たちは、どのような者たちであり、どのような法(正義)にかなう鹿たちであるのか。どのように色艶があり、どのように戒があるのか。甚だしく、まさに、彼らのことを、〔おまえは〕賞賛する」〔と〕。

 

128. 〔猟師が答えた〕「白い角があり、清らかな尾毛があり、黄金の如き皮膚があります。彼らの、〔四つの〕足は赤く、艶やかな〔両の〕眼は意が喜びとするものです。

 

129. 陛下よ、それらの鹿たちは、このような者たちであり、このような法(正義)にかなう鹿たちです。陛下よ、〔彼らは〕母と父を養う者たちです。それで、彼らを持参せずにいるのです(※)」〔と〕。

 

※ テキストには abhihārituṃ とあるが、PTS版により abhihārayaṃ と読む。

 

130. 〔王が言った〕「猟師よ、百の金貨を与えよう──そして、巨大なる宝珠の耳飾を、さらに、亜麻の花に似た、四つの枕ある寝台を──

 

131. さらに、〔おまえに〕似合いの二者の妻を、さらに、雄牛を、百の牛を。〔わたしは〕法(正義)によって、王権を為すであろう。猟師よ、〔おまえは〕存している──わたしのために多く〔の利益〕を作り為す者として。

 

132. 猟師よ、耕作や商売、金融、そして、残飯行──この〔生業〕によって、妻を養いなさい。ふたたび、悪を為してはならない」〔と〕。ということで──

 

 ローハナミガ・ジャータカが、第五となる。

 

15. 1. 6. チューラハンサ・ジャータカ(小なる鵞鳥・本生物語502)

 

133. 〔菩薩は言った〕「これらの鵞鳥たちは、立ち去る──恐怖に動揺した、鳥たちは。黄金の皮膚ある者よ、金の色艶ある者よ、スムカよ、欲するままに立ち去れ。

 

134. 独り、罠の支配に赴いた、わたしを捨棄して、親族たちの群れは、期すことなく去り行く。どうして、独り、〔おまえは〕残るのか。

 

135. 飛ぶ者たちのなかの最勝者よ、まさしく、飛べ。捕縛された者にたいし、道友たることは存在しない。煩悶なき〔境遇〕から退失してはならない。スムカよ、欲するままに立ち去れ」〔と〕。

 

136. 〔スムカが言った〕「ダタラッタ(菩薩)よ、わたしは、『苦しみに打ち負かされた者である』と、あなたを捨棄できません。わたしに、生あるも、あるいは、死あるも、〔わたしは〕あなたと共に有るでしょう」〔と〕。

 

137. 〔菩薩は言った〕「これは、聖者の善である。スムカよ、すなわち、おまえが語る、〔そのことは〕。そして、わたしは、おまえを審査しつつ、『飛べ』と、この〔言葉〕を投げ放ったのだ」〔と〕。

 

138. 〔猟師が言った〕「虚空を歩む鳥は、足跡なくして足を進めます。鵞鳥たちのなかの最も優れた最上なる方よ、あなたは、遠くから罠を覚りませんでした」〔と〕。

 

139. 〔菩薩は言った〕「すなわち、生命の消滅あるときに、人が、滅びの者と成るとき、そこで、かつまた、網も、かつまた、罠も、〔それらに〕近づいてもなお、〔それらを〕覚らないのです」〔と〕。

 

140. 〔スムカに、猟師が尋ねた〕「これらの鵞鳥たちは、立ち去ります──恐怖に動揺した、鳥たちは。黄金の皮膚ある者よ、金の色艶ある者よ、あなただけが残ります。

 

141. これらの鳥たちは、そして、食べて、さらに、飲んで、立ち去ります──期すことなく、鳥たちは。あなただけが、独り、〔捕縛された者に〕近侍します。

 

142. あなたにとって、この鳥は、いったい、どのようなものと成るのですか。〔あなたは〕解き放たれているのに、捕縛された者に近侍します。〔他の〕鳥たちは、〔彼を〕捨棄して行くのに、どうして、〔あなたは〕独り、残るのですか」〔と〕。

 

143. 〔スムカが答えた〕「その鳥は、わたしにとって、王であり、朋友なのです。そして、わたしにとって、友であり、命に等しき者なのです。彼を捨棄することは、まさしく、ありません。時に転機がある、そのかぎりは」〔と〕。

 

144. 〔猟師が言った〕「そして、すなわち、あなたは、友を因として、命を捨てることを求めます。それなら、あなたの道友を解き放ちましょう。王は、あなたに従い行く者と成れ」〔と〕。

 

145. 〔スムカが言った〕「猟師よ、このように、全ての親族たちと共に、喜びたまえ。すなわち、解き放たれた鳥の君主を見て、今日、わたしが喜ぶように」〔と〕。

 

146. 〔猟師を派遣した人間の王に、菩薩は尋ねた〕「はてさて、どうでしょう、貴君には、健やかにあられますか。どうでしょう、貴君には、悩みなくあられますか。どうでしょう、この国土は興隆し、法(正義)によって、〔あなたは〕統治しますか」〔と〕。

 

147. 〔王が答えた〕「鵞鳥よ、まさしく、そして、わたしには、健やかにあります。鵞鳥よ、さらに、悩みなくあります。そこで、この国土は興隆し、法(正義)によって、わたしは統治します」〔と〕。

 

148. 〔菩薩は尋ねた〕「どうでしょう、貴君の家臣たちにおいては、何であれ、汚点は見出されないですか。どうでしょう、朋友ならざる者たちは、あなたから遠く離れていますか──影が、南から〔遠く離れている〕ように」〔と〕。

 

149. 〔王が答えた〕「そこで、また、わたしの家臣たちにおいては、何であれ、汚点は見出されません。そこで、朋友ならざる者たちは、わたしから遠く離れています──影が、南から〔遠く離れている〕ように」〔と〕。

 

150. 〔菩薩は尋ねた〕「どうでしょう、あなたの妻は、〔あなたに〕似合いの者であり、従順で愛しき話し手として、子供と形姿と福徳を具し、あなたの欲〔の思い〕の支配に従い行く者ですか」〔と〕。

 

151. 〔王が答えた〕「そこで、わたしの妻は、〔わたしに〕似合いの者であり、従順で愛しき話し手として、子供と形姿と福徳を具し、わたしの欲〔の思い〕の支配に従い行く者です」〔と〕。

 

152. 〔菩薩は尋ねた〕「国土を繁栄させる者よ、どうでしょう、あなたの子供たちは、多くあり、善き生まれにして、智慧の疾走を成就し、そこかしこに喜び合いますか」〔と〕。

 

153. 〔王が答えた〕「ダタラッタ(菩薩)よ、わたしの聞くところとして、わたしには、さてまた、百と一者の子供たちがいます。あなたは、彼らに、為すべきことを告げ知らせてください。あなたの言葉を、〔彼らは〕放下しません」〔と〕。

 

154. 〔菩薩は言った〕「たとえ、もし、生まれの〔具有者として〕、あるいは、規律の具有者として、〔世に〕有るも、そこで、のちに、専念〔努力〕を為すなら(精進を先延ばしにするなら)、苦難あるとき、諸々の災難のうちに沈む。

 

155. 彼には、智慧が動揺する者には、大いなる裂け目が生じる──夜に、盲者が、諸々の形態あるものを、粗大なるものとして随観するように。

 

156. 真髄なきものについて、真髄と専念〔努力〕を知る者は、まさしく、しかし、思慧を見出さない──鹿が、山の難所において、まさしく、中途に沈むように。

 

157. たとえ、もし、生まれに劣る者として〔世に〕有るも、奮起する〔道心〕堅固の人であるなら、〔正しい〕習行と戒を成就した者となる──夜に、火が、光り輝くように。

 

158. わたしのこの〔言葉〕を、喩えと為して、子供たちに、諸々の学知について教えなさい。思慮ある者となり、立派に成長するでしょう──田畑の種が、雨によって〔育つ〕ように」〔と〕。ということで──

 

 チューラハンサ・ジャータカが、第六となる。

 

15. 1. 7. サッティグンバ・ジャータカ(サッティグンバ・本生物語503)

 

159. 〔世尊は言った〕「パンチャーラ〔国〕の車上の雄牛たる大王は、狩猟者となり、軍団と共に出立したところ、衆を離れ、林に至り来た。

 

160. そこにおいて、林のなか、盗賊たちの小屋が作られているのを見た。その小屋から、鸚鵡(サッティグンバ)が出て来て、諸々の凶事を語る」〔と〕。

 

161. 〔サッティグンバが言った〕「若き男は、車両を伴い、磨き抜かれた耳飾をつけ、赤き王冠をかぶり、美しく輝く──昼に、太陽が、光り輝くように。

 

162. 正午の今、王は、馭者と共に、眠りについている。さあ、彼の全ての装飾品を、わたしたちは、無理やり収め取るのだ。

 

163. 深夜のようにもまた、静かに、今や、王は、馭者と共に、眠りについている。さあ、彼の全ての装飾品を、わたしたちは、無理やり収め取るのだ」〔と〕。

 

164. 〔小屋に残る料理人のパティコーランバが言った〕「サッティグンバよ、いったい、どうして、狂者の形態あるかのように語るのだ。まさに、近づき難きは、王たちである。あたかも、燃え盛る火のようなもの」〔と〕。

 

165. 〔サッティグンバが言った〕「パティコーランバよ、そこで、おまえは、逆上し、諸々の粗雑なることを喚き立てる。わたしの母が裸でいるのに、おまえは、いったい、どうして、〔躊躇し〕忌避するのだ」〔と〕。

 

166. 〔目覚めた王が言った〕「友よ、急ぎ、起きよ。馭者よ、車を設えよ。鳥(サッティグンバ)は、わたしにとって好ましからず。他の庵所に、〔わたしたちは〕赴くのだ」〔と〕。

 

167. 〔馭者が言った〕「大王よ、車が設えられました。そして、力ある運び手が設えられました。大王よ、お乗りください。他の庵所に、〔わたしたちは〕赴くのです」〔と〕。

 

168. 〔サッティグンバが言った〕「まさしく、いったい、誰がいるのだ。すなわち、この〔庵所〕において〔わたしを〕世話する者たちは、全ての者たちは、〔いったい、どこに〕赴いたのだ。この者は、パンチャーラ〔王〕は、〔他所へと〕去り行く。〔死地から〕解き放たれたのだ──彼らを見ないことから。

 

169. 諸々の弓を、諸々の刃を、さらに、諸々の槍を、収め取れ。この者は、パンチャーラ〔王〕は、〔他所へと〕去り行く。おまえたちは、〔王の〕生命を解き放ってはならない」〔と〕。

 

170. 〔世尊は言った〕「そこで、他の、赤き嘴をした鸚鵡(菩薩)は、〔王を〕歓迎した」〔と〕。〔菩薩は言った〕「大王よ、あなたにとって、善き訪問と〔成れ〕。さらに、あなたにとって、悪しき訪問ならざるものと〔成れ〕。おいでになられた〔あなた〕は、イッサラ(イーシュヴァラ神・自在神)として存しておられます。それが、ここに存するものであるなら、〔何なりと〕お申し付けください。

 

171. 諸々のティンドゥカ〔の果〕を、諸々のピヤーラ〔の果〕を、諸々のマドゥカ〔の果〕を、諸々のカースマーリー〔の果〕を、小さく少なきものではありますが、諸々の果を、王よ、優れたもの、優れたものを、お食べください。

 

172. 山窟から運び込んだ、冷たい、この飲み物をもまた、大王よ、それで、もし、あなたがお望みなら、そののち、お飲みください。

 

173. すなわち、この〔庵所〕において〔わたしを〕世話する者たちは、落穂集めのために、林に赴いたのです。自ら、立ち上がって、収め取りください。わたしには、与えるための〔両の〕手は存在しません」〔と〕。

 

174. 〔王が言った〕「幸いなるは、まさに、この鳥である。最高の法(正義)にかなう鳥である。そこで、他の鳥は、あの鸚鵡は、諸々の凶事を語る。

 

175. 『この者を、殺せ、縛れ。おまえたちは、〔彼の〕生命を解き放ってはならない』〔と〕。かくのごとく、このように、〔あの鸚鵡が〕喚いているあいだに、安穏なる庵所に至り得た者として、〔わたしは〕存している」〔と〕。

 

176. 〔菩薩は言った〕「大王よ、〔彼とわたしは〕一なる母の同腹の兄弟たちとして存しています。一なる木に育つも、両者は、別々の国土に赴いたのです。

 

177. そして、サッティグンバは、盗賊たちのところに、そして、わたしは、ここに、聖賢たちのところに。彼は、正しからざるたちのところに、わたしは、正しくある者たちのところに。その法(性質)によって、わたしたちは、別々なのです。

 

178. そこにおいては、そして、殺戮があり、かつまた、結縛があり、さらに、諸々の欺きがあり、諸々の騙しがあり、諸々の強奪があり、諸々の強制があります。そこにおいて、彼は、それらを学びます。

 

179. ここには、かつまた、真理があり、かつまた、法(正義)があり、不害があり、自制があり、調御があります。バーラダ(王)よ、坐と水を与えてくれる者たちの膝のうえで育った者として、〔わたしは〕存しています。

 

180. 王よ、まさに、その者、その者に、親近するなら──もしくは、正しくある者であろうが、正しからざる者であろうが、あるいは、戒ある者であれ、戒を離れる者であれ──まさしく、彼の支配に赴きます。

 

181. そのような者を朋友と為し、かつまた、そのような者に仕え親しむなら、彼もまた、そのような者と成ります。まさに、そのようなものとして、共に住むこと(他者との付き合い)はあります。

 

182. 〔他者と〕慣れ親しんでいる〔愚者〕は、慣れ親しんでいる〔他者〕を〔汚します〕。〔他者と〕接触した〔愚者〕は、〔他者と〕接触しながら、他者を〔汚します〕。毒塗りの矢が〔他の〕矢束を〔汚す〕ように、〔汚れある者は〕汚れなき者を汚します。慧者は、汚れの恐怖あることから、悪しき者の友として存することは、まさしく、ありません。

 

183. その人が、草の葉先で、腐った魚を包むなら、〔それらの〕草もまた、腐〔臭〕を放ちます。このように、愚者に仕え親しむことはあります。

 

184. しかしながら、その人が、パラーサ〔樹の葉〕で、タガラ(香料)を包むなら、〔それらの〕葉もまた、芳〔香〕を放ちます。このように、慧者に仕え親しむことはあります。

 

185. それゆえに、葉の器のように、自己の報いとなるものを知って、賢者は、正しからざる者たちには仕え親しまず、正しくある者たちと慣れ親しむべきです。正しからざる者たちは、〔人を〕地獄に導き、正しくある者たちは、〔人を〕善き境遇に至り得さます」〔と〕。ということで──

 

 サッティグンバ・ジャータカが、第七となる。

 

15. 1. 8. バッラーティヤ・ジャータカ(バッラーティヤ・本生物語504)

 

186. 〔世尊は言った〕「バッラーティヤという名の王(菩薩)が、〔世に〕有った。国土を捨棄して、狩猟を歩んだ、彼は、美しく花ひらき、妖精たちが歩み行くところ、優美なる山、ガンダマーダナに至った。

 

187. そして、犬たちの群れを制して、弓を、さらに、矢束を、彼は、〔その場に〕置いて、言葉を交わそうと欲し、近しく赴いた──すなわち、妖精たちが、〔そこに〕立ち、〔そこに〕有ったところへと」〔と〕。

 

188. 〔菩薩は尋ねた〕「雪〔の季節〕が過ぎた、雪山の岸辺で、〔あなたたちは〕ここに立ち、ひっきりなしに、何を話し合うのですか。人間の肉身と色艶ある、あなたたちに、〔わたしは〕尋ねます。人間の世において、あなたたちのことを、〔人々は〕どのように知るのですか」〔と〕。

 

189. 〔妻の妖精が答えた〕「マッラ山を、パンダラカ〔山〕を、ティクータ〔山〕を、諸々の水冷たき川を、〔わたしたちは〕渡り歩きます。人間のような似姿と色艶ある獣たちです。猟師よ、わたしたちのことを、〔人々は〕『妖精たち』と知ります」〔と〕。

 

190. 〔菩薩は尋ねた〕「〔あなたたちは〕極めて苦難の様子で嘆き悲しみます。そして、愛しき者は、愛しき者と抱き合い、〔ここに〕存していました。人間の肉身と色艶ある、あなたたちに、〔わたしは〕尋ねます。どうして、ここに、林のなかで、満足することなく、泣き叫ぶのですか。

 

191. 〔あなたたちは〕極めて苦難の様子で嘆き悲しみます。そして、愛しき者は、愛しき者と抱き合い、〔ここに〕存していました。人間の肉身と色艶ある、あなたたちに、〔わたしは〕尋ねます。どうして、ここに、林のなかで、満足することなく、泣き喚くのですか。

 

192. 〔あなたたちは〕極めて苦難の様子で嘆き悲しみます。そして、愛しき者は、愛しき者と抱き合い、〔ここに〕存していました。人間の肉身と色艶ある、あなたたちに、〔わたしは〕尋ねます。どうして、ここに、林のなかで、満足することなく、憂い悲しむのですか」〔と〕。

 

193. 〔妻の妖精が答えた〕「猟師よ、わたしたちは、互いに他のことを思い浮かべながら、欲することなく、一夜を離れて住みました。その一夜のことを悩み苦しみながら、憂い悲しむのです。『その夜が、ふたたび有りはしないだろうか』」〔と〕。

 

194. 〔菩薩は尋ねた〕「消失した財産のことを〔悩み苦しむ〕ように、亡者となった父のことを〔悩み苦しむ〕ように、すなわち、この一夜のことを、〔あなたたちは〕悩み苦しみます。人間の肉身と色艶ある、あなたたちに、〔わたしは〕尋ねます。どのように、別々の住を営むことになったのですか」〔と〕。

 

195. 〔妻の妖精が答えた〕「すなわち、〔あなたが〕見ている、この川は、流れ激しく、種々なる木々が覆い、斜面が岩になっています。その〔川〕を、わたしの愛しき方は、雨の時に超え渡ったのです。そして、わたしのことを、『ついてくる』と思いながら。

 

196. そして、わたしは、アンコーラカ〔の花〕を摘みます──アティムッタカ〔の花〕を、さらに、サッタリヨーティカ〔の花〕を。『そして、わたしの愛しき方は、花飾を積荷とする者と成るでしょう。さらに、わたしも、花飾ある者となり、彼を見つめるでしょう』〔と〕。

 

197. そして、わたしは、このクラヴァカ〔の花〕を摘みます──ウッダーラカやパータリーやシンドゥヴァーラカー〔の花々〕を。『そして、わたしの愛しき方は、花飾を積荷とする者と成るでしょう。さらに、わたしも、花飾ある者となり、彼を見つめるでしょう』〔と〕。

 

198. そして、わたしは、美しく花ひらいたサーラ〔樹〕の花々を摘んで、花飾を作ります。『そして、わたしの愛しき方は、花飾を積荷とする者と成るでしょう。さらに、わたしも、花飾ある者となり、彼を見つめるでしょう』〔と〕。

 

199. そして、わたしは、美しく花ひらいたサーラ〔樹〕の花々を摘んで、積荷を作ります。『そして、これは、わたしたちにとって、敷物として義(利益)あるものと成るでしょう。そこにおいて、今日、この夜を、〔わたしたちは〕過ごすでしょう』〔と〕。

 

200. そして、わたしは、まさに、沈香を、さらに、栴檀を、石で砕きます──怠りの形質ある者となり。『そして、わたしの愛しき方は、〔それらを〕肢体に塗った者と成るでしょう。さらに、わたしも、〔それらを〕塗った者となり、彼を見つめるでしょう』〔と〕。

 

201. そこで、流れ激しく、水がやってきたのです──サーラやサララやカンニカーラ〔の花々〕を流し去りながら。それによって、寸時に満ち行き、この川は、それは、わたしによっては、極めて超え難きものとして存したのです。

 

202. そのとき、両岸に立つ、わたしたちの両者は、互いに他を見合いながら、一度はまた泣き、一度は笑います。苦難とともに、わたしたちの、その夜はやってきたのです。

 

203. 猟師よ、まさしく、早朝となり、まさに、日が昇ったとき、浅くなった川を超え渡って、わたしたちの両者は、互いに他を抱き合い、一度はまた泣き、一度は笑います。

 

204. 猟師よ、三〔年〕を欠くこと、七百〔年〕となります。すなわち、過去において、ここに、わたしたちが離れ住んだのは(その夜から今日に至るまで、七百年近くの年月が過ぎ去った)。地上の警護者(王)よ、年月を一つとする、この生命なのです。いったい、誰が、ここに、愛らしい方と別れて住せるというのでしょう」〔と〕。

 

205. 〔菩薩は尋ねた〕「友よ、では、いったい、あなたたちの寿命は、どれだけのものなのですか。それで、もし、また、お知りなら、寿命のことを説いてください。聞き伝え〔の言葉〕から、年長者〔の言葉〕から、あるいは、聖教〔の言葉〕から、それを、動揺することなく〔ためらわずに〕、わたしに告げ知らせてください」〔と〕。

 

206. 〔妻の妖精が答えた〕「猟師よ、そして、わたしたちの寿命は、千年です。さらに、中途において、悪しき病は存在せず、かつまた、苦痛は少なく、まさしく、安楽は、より一層のものとなり、貪り〔の思い〕を離れていない者たちとして、〔わたしたちは〕生命を捨棄します」〔と〕。

 

207. 〔世尊は言った〕「そして、人間ならざる者たちのこの〔言葉〕を聞いて、バッラーティヤ(菩薩)は、『生命は、暫しのもの』と〔知り〕、引き返した。〔もはや〕狩猟を歩むことはなかった。諸々の布施を施し、〔そののち〕諸々の財物を受益した。

 

208. そして、人間ならざる者たちの、この〔言葉〕を聞いて、〔互いに〕喜び合いなさい。紛争を為してはならない。自己の行為の罪科が、あなたたちを苦しめてはならない。あたかも、また、それらの妖精が、一夜を〔苦しんだ〕ように。

 

209. そして、人間ならざる者たちの、この〔言葉〕を聞いて、〔互いに〕喜び合いなさい。論争を為してはならない。自己の行為の罪科が、あなたたちを苦しめてはならない。あたかも、また、それらの妖精たちが、一夜を〔苦しんだ〕ように」〔と〕。

 

210. 〔世尊に、マッリカー王妃が言った〕「卓越の意図ある者となり、わたしは聞きます──あなたの、種々様々な言葉の用途ある義(利益)を伴った〔教えの言葉〕を。〔あなたは〕言葉を放ちながら、わたしの懊悩を、まさしく、除き去ります。沙門よ、安楽をもたらす方よ、わたしのために、長きに生きたまえ」〔と〕。ということで──

 

 バッラーティヤ・ジャータカが、第八となる。

 

15. 1. 9. ソーマナッサ・ジャータカ(ソーマナッサ・本生物語505)

 

211. 〔王が尋ねた〕「誰が、あなたを、害し、傷つけるのですか。どうして、満足することなく、失意の者となり、憂い悲しむのですか。今日、誰の、母と父が泣き叫ぶのですか(誰が、罰せられるべきなのですか)。今日、誰が、打ち倒され、地に臥すのですか」〔と〕。

 

212. 〔婆羅門が答えた〕「陛下よ、〔わたしは〕存しています──あなたを見ることで、満足した者として。地上の警護者(王)よ、長きのはてに、あなたを見ます。レーヌよ、陛下よ、〔わたしは〕存しています──害なき者でありながら、あなたの子(菩薩)によって、押し入って傷つけられた者として(王子こそは、罰せられるべきです)」〔と〕。

 

213. 〔王が言った〕「剣を装着する門番たちよ、行くのだ、死刑執行者たちよ、行くのだ、その宮殿に。ソーマナッサ王子を、彼を殺して、優美なる頭を断ち切って、持ってくるのだ」〔と〕。

 

214. 〔世尊は言った〕「命じられた王の使者たちは、王子に、この〔言葉〕を説いた。『〔あなたは〕存しています──イッサラ(王)に否認された者として。士族(王子)よ、〔あなたは〕存しています──殺戮に至り得た者として』〔と〕。

 

215. 彼は、王子は、嘆き悲しみながら、十指の合掌を差し出して〔言った〕。『わたしもまた、人のインダ(国王)と会うことを求める。生あるまま、わたしを連れて行って、〔王に〕会わせるのだ』〔と〕。

 

216. 彼の、その言葉を聞いて、〔使者たちは〕子を王と会わせた。そして、子は、父を見て、はるか遠くから語りかけた」〔と〕。

 

217. 〔菩薩は言った〕「人のインダよ、剣を装着する門番たちが、死刑執行者たちが、わたしを殺すためにやってきました。〔問いを〕尋ねられた者として、この義(意味)を、わたしに告げ知らせてください。いったい、どのような罪科が、ここに、今日、わたしに存するのですか」〔と〕。

 

218. 〔王が尋ねた〕「そして、夕に、朝に、水に入り、〔彼は〕怠ることなく、常に、祭火を世話する。彼(婆羅門)を、そのような者を、〔心身が〕自制された梵行者を、何ゆえに、おまえは、『家長よ(俗人よ)』と説くのか」〔と〕。

 

219. 〔菩薩は答えた〕「陛下よ、そして、諸々のターラ〔樹〕が、さらに、諸々の根が、かつまた、諸々の果が、様々な種類の執持〔の対象〕(所有物)が、彼には存在します。〔彼は〕怠ることなく、それらを守護し保護します。それゆえに、わたしは、『家長よ』と説きます」〔と〕。

 

220. 〔王が言った〕「王子よ、真理として、まさに、このことを、〔おまえは〕説く。様々な種類の執持〔の対象〕が、彼には存在する。〔彼は〕怠ることなく、それらを守護し保護する。彼は、婆羅門は、それによって、家長として〔世に〕有る(似非婆羅門である)」〔と〕。

 

221. 〔人々に、菩薩は言った〕「集いあつまった衆たちは、町の者たちと共に、そして、全ての地方の者たちは、わたしの〔言葉を〕聞け。この者は、人のインダは、愚者であり、愚者の言葉を信用して、因なくして、わたしを殺そうとする」〔と〕。

 

222. 〔王に、菩薩は言った〕「堅固に根が広がり、成長したなら、竹は、小枝が生じ、滅し難くなります。人のインダよ、〔わたしは〕あなたの〔両の〕足を敬拝します。陛下よ、わたしをお許しください。〔わたしは〕出家するでありましょう」〔と〕。

 

223. 〔王が言った〕「王子よ、諸々の広大なる財物を受益しなさい。そして、全ての権力を、おまえに与えよう。まさしく、今日、おまえは、クル〔国〕の王と成るのだ。出家してはならない。まさに、出家は苦しみである」〔と〕。

 

224. 〔菩薩は言った〕「陛下よ、いったい、どうして、ここに、諸々の財物が、あなたに存在するというのでしょう。まさしく、過去(前世)において、わたしは、天の世において喜び楽しみました──諸々の形態によって、諸々の音声によって、さらに、諸々の味感によって、諸々の臭気によって、諸々の接触によって、諸々の意に適うものによって。

 

225. 陛下よ、そして、三十三〔天〕において、諸々の財物が、わたしによって受益されたのです──仙女たちの群れに取り囲まれたものとして。そして、あなたのことを、他者に導かれる愚者と見出して〔そののちは〕、そのような王の家には住するべきにあらず」〔と〕。

 

226. 〔王が言った〕「それで、もし、わたしが、他者に導かれる愚者として存しているなら、子よ、わたしの一なる罪科を許してくれ。もし、ふたたび、また、このようなことが有るなら、ソーマナッサよ、思いのままに為しなさい」〔と〕。

 

227. 〔菩薩は言った〕「〔注意深く〕真摯に行為が為されず、思い考えたことを確立せずして、薬の失敗(病気の悪化)のように、悪しき報いと成る。

 

228. しかしながら、〔注意深く〕真摯に行為が為され、思い考えたことを正しく確立して、薬の得達(病気の治癒)のように、幸いなる報いと成る。

 

229. 欲望〔の対象〕を享受する、怠け者の在家者は、善きにあらず。自制なき出家者は、善きにあらず。〔注意深く〕真摯に為す者ならざる王は、善きにあらず。彼が、賢者であるも、忿激する者であるなら、それは、善きにあらず。

 

230. 方角の長(王)よ、士族は、真摯ならざることなく、〔注意深く〕真摯に為すがよい。王よ、〔注意深く〕真摯に為す者の、盛名は、そして、名誉は、〔自ずと〕増え行く。

 

231. 権力者は、〔注意深く〕真摯に棒(刑罰)を課すがよい。地上の警護者(王)よ、勢いから為された〔裁定〕に、〔人は〕悩み苦しむ。しかしながら、諸々の正しい志向ある〔裁定〕は、人の諸々の義(利益)と〔成り〕、それら〔の裁定〕は、のちに悩み苦むものと成らない。

 

232. 世において、諸々の行為の場所を区分して〔そののち〕、まさに、すなわち、諸々の悩み苦しみなき〔行為〕を為すなら、それら〔の行為〕は、識者たちによって賞賛された、安楽を生成するものであり、覚者によって許認されるものと成る。

 

233. 人のインダよ、剣を装着する門番たちが、死刑執行者たちが、わたしを殺すためにやってきました。陛下よ、そして、母の膝のうえに坐っていたわたしは、彼らによって、無理やり引き立てられたのです。

 

234. まさに、辛きことに、煩わしきことに、極めて苦難なることに、至り得たのです。王よ、甘美にして愛しき(※)生命を得て、わたしは、今日、苦難をもって、殺戮から解き放たれたのです。わたしは、出家だけに意念ある者として〔世に〕存しています」〔と〕。

 

※ テキストには madhurampi yaṃ とあるが、PTS版により madhuraṃ piyaṃ と読む。

 

235. 〔王が言った〕「スダンマー(王妃)よ、おまえの、幼いこの子は、ソーマナッサ王子は、慈しみ〔の思い〕ある者である。まさに、今日、彼に乞い求めつつも、〔承諾を〕得ない。おまえもまた、彼に乞い求めるに値する(わたしと一緒に乞い求めるのだ)」〔と〕。

 

236. 〔王妃が言った〕「子よ、行乞の行を喜び楽しみなさい。諸々の法(正義)において、〔注意深く〕真摯に遍歴遊行しなさい。一切の生類にたいし、棒(武器)を置いて、〔誰からも〕非難されることなく、梵の境位へと近しく至りなさい」〔と〕。

 

237. 〔王が言った〕「稀有なる形態は、さてまた、まさに、そのようなこと。スダンマーよ、〔あなたは〕苦しんでいるわたしを苦しめる。〔あなたは〕『子に乞い求めよ』と説かれながら、まさしく、より一層、王子に〔出家を〕催促する」〔と〕。

 

238. 〔王妃が言った〕「すなわち、罪過なき〔施物〕を遍く受益する解脱者たちは、完全ある涅槃に到達した者たちとして、この世を歩みます。彼を、聖なる道を実践している王子を、阻止することはできません」〔と〕。

 

239. 〔王が言った〕「まさに、たしかに、慣れ親しむべきは、智慧を有する者たちであり、多聞の者たちであり、すなわち、多くの境位に思弁ある者たちである。彼らの、諸々の見事に語られた〔言葉〕を聞いて、この者は、スダンマーは、思い入れ少なくあり、憂いを離れたのだ」〔と〕。ということで──

 

 ソーマナッサ・ジャータカが、第九となる。

 

15. 1. 10. チャンペイヤ・ジャータカ(チャンペイヤ・本生物語506)

 

240. 〔王が尋ねた〕「いったい、誰なのだ。雷光のように、明けの明星のように、〔あなたは〕輝く。いったい、〔あなたは〕天神として存しているのか、音楽神として〔存しているのか〕。〔わたしは〕あなたを人間とは思わない」〔と〕。

 

241. 〔龍の少女が答えた〕「大王よ、〔わたしは〕天女として存しているのではありません。音楽神でもなく、人間でもなく、龍の少女として存しています。あなたに、幸せ〔有れ〕。義(目的)によって、ここにやってきた者として存しています」〔と〕。

 

242. 〔王が尋ねた〕「心が混迷した者として、〔感官の〕機能が動乱した者として、〔あなたは〕存している。あなたの〔両の〕眼からは、数多の涙が流れ出る。あなたの、何が消失したのか。また、何を切望しているのか。女よ、ここにやってきたからには、さあ、それを説きなさい」〔と〕。

 

243. 〔龍の少女が答えた〕「人のインダよ、そして、すなわち、彼のことを、人たちは、『烈火の蛇』と言い、『龍』と言うのですが、彼を、生計を義(目的)とする男(猟師)が捕捉したのです。彼を、結縛から解き放ってください。この者は、わたしの亭主なのです」〔と〕。

 

244. 〔王が尋ねたた〕「いったい、どのように、活力と精進を具有した、この者が、乞食者(猟師)の手中に至り着いたのだ。龍の少女よ、その義(意味)を、わたしに告げ知らせよ。どのように、龍が捕捉されたのかを、〔わたしたちは〕識知したいのだ」〔と〕。

 

245. 〔龍の少女が答えた〕「龍は、城市さえをも灰に為します。まさに、そのように、彼は、活力と精進を具有した者です。かつまた、龍は、法(正義)を敬恭している者です。それゆえに、勤しんで苦行を為します。

 

246. 王よ、十四〔日〕に、さらに、十五〔日〕に、龍の王は、〔斎戒のために〕四つ辻に在します。彼を、生計を義(目的)とする男(猟師)が捕捉したのです。彼を、結縛から解き放ってください。この者は、わたしの亭主なのです。

 

247. 一万六千の、宝珠の耳飾を付けた、水の家に依拠する女たちが、彼女たちもまた、あなたを帰依所に赴いたのです。

 

248. 法(正義)によって、〔龍を〕解き放ってください──無理強いではなく、村をもってして、金貨をもってして、百の牛をもってして。龍は、放免の身となり、〔世を〕歩むのです。功徳を義(目的)とする者であるなら、〔龍を〕結縛から解き放つのです」〔と〕。

 

249. 〔猟師に、王が言った〕「法(正義)によって、〔龍を〕解き放つ──無理強いではなく、村をもってして、金貨をもってして、百の牛をもってして。龍は、放免の身となり、〔世を〕歩むのだ。功徳を義(目的)とする者であるなら、〔龍を〕結縛から解き放つのだ。

 

250. 猟師よ、百の金貨を与えよう──そして、巨大なる宝珠の耳飾を、さらに、亜麻の花に似た、四つの枕ある寝台を──

 

251. さらに、〔おまえに〕似合いの二者の妻を、さらに、雄牛を、百の牛を。龍は、放免の身となり、〔世を〕歩むのだ。功徳を義(目的)とする者であるなら、〔龍を〕結縛から解き放つのだ」〔と〕。

 

252. 〔猟師が言った〕「人のインダよ、たとえ、お与えのものがなくても、あなたの言葉です。彼を、龍を、〔わたしどもは〕結縛から解き放ちましょう。龍は、放免の身となり、〔世を〕歩むのです。功徳を義(目的)とする者であるなら、〔龍を〕結縛から解き放つのです」〔と〕。

 

253. 〔世尊は言った〕「解き放たれたチャンペイヤ(菩薩)は、龍は、王に、この〔言葉〕を説いた」〔と〕。〔菩薩は言った〕「カーシ〔国〕の王よ、あなたに、礼拝が存せ。カーシ〔国〕を繁栄させる者よ、あなたに、礼拝が〔存せ〕。あなたに、合掌を差し出します。わたしの住居地をお見せしましょう」〔と〕。

 

254. 〔王が言った〕「まさに、たしかに、このことを、〔人々は〕信頼するに難きことと言う。すなわち、人間が、人間ならざる者にたいし信頼することである。そして、それで、もし、この義(意味)を、〔あなたが〕わたしに乞い求めるなら、龍よ、あなたの諸々の住居地を拝見しましょう」〔と〕。

 

255. 〔菩薩は言った〕「それで、もし、また、風が山をもたらし、そして、月が、さらに、日が、地に落ち、さらに、全ての川が流れに反し逆流するとして、王よ、まさしく、しかし、わたしは、虚偽を話しません。

 

256. 天空が裂け、大洋さえもが干上がり、地を保つ大地が展転し、メール(須弥山)の連山が根ごと舞い上がるとして、王よ、まさしく、しかし、わたしは、虚偽を話しません」〔と〕。

 

257. 〔王が言った〕「まさに、たしかに、このことを、〔人々は〕信頼するに難きことと言う。すなわち、人間が、人間ならざる者たいし信頼することである。そして、それで、もし、この義(意味)を、〔あなたが〕わたしに乞い求めるなら、龍よ、あなたの諸々の住居地を拝見しましょう。

 

258. あなたたちは、まさに、ここにおいて、おぞましき毒ある者たちとして、巨大なる者たちとして、大いなる威光ある者たちとして、かつまた、短気の者たちとしてもまた、〔世に〕有ります。わたしを契機として、結縛から説き放たれた〔あなた〕は、わたしたちによって為された諸々のことを知るに値します(受けた恩義を忘れないでほしい)」〔と〕。

 

259. 〔菩薩は言った〕「その者は、〔悪しき行為の報いによって〕煮られている者たちの、おぞましき形態の地獄において、何であれ、身体の快楽を得てはならず、籠のなかに結縛された〔その者〕は、死へと近しく至れ──その者が、そのような〔恩義の行為〕を、為された〔恩義の〕行為を、知ることなくあるなら」〔と〕。

 

260. 〔王が言った〕「あなたの、わたしへのこの申し出は、真なるものと成れ。〔あなたは〕憤怒せず怨恨なき者と成れ。そして、それらの金翅鳥たちは、全ての龍の族種を避けよ──諸々の夏〔の季節〕に、火を〔避ける〕ように」〔と〕。

 

261. 〔菩薩は言った〕「人のインダよ、〔あなたは〕龍の族種を慈しむ──あたかも、母が、極めて愛しい独り子を〔慈しむ〕ように。そして、わたしも、龍の族種と共に、あなたのために巨万の支援を為しましょう」〔と〕。

 

262. 〔王が言った〕「まさに、美しく彩りあざやかな諸々の王車を設えよ──見事に調御されたカンボージャ〔産〕の騾馬たちを、さらに、金の鞍かけの象たちを。龍の諸々の住居地を見に行くのだ」〔と〕。

 

263. 〔世尊は言った〕「諸々の太鼓を、諸々の小鼓を、さらに、諸々の銅鼓を、諸々の法螺貝を、ウッガセーナ王のために、〔人々は〕奏でた。王は出発した──女たちの群れの中央において傅かれ、多いに美しく輝きながら。

 

264. 黄金が積み上げられた地を、カーシ〔国〕を繁栄させる者は見た──瑠璃の延べ板が張られ、黄金で作られている諸々の高楼を。

 

265. 彼は、王は、宮殿に入った──チャンペイヤの住居地に、太陽の色艶の似姿ある〔宮殿〕に、赤銅の雷光の光輝ある〔宮殿〕に。

 

266. 種々なる木々に等しく覆われた〔住居地〕に、種々なる香りが等しくただよう〔住居地〕に──彼は、カーシ〔国〕の王は、チャンペイヤの住居地に入った。

 

267. カーシ〔国〕の王が、チャンペイヤの住居地に入ったとき、諸々の天の楽器が奏でられ、そして、龍の少女たちが舞った。

 

268. その〔宮殿〕に、龍の少女たちが歩む〔宮殿〕に、衆とともに、カーシ〔国〕の王は登った──清信した者となり。黄金で作られている椅子に、寄り掛かりを有し栴檀の真髄を塗った〔椅子〕に、〔彼は〕坐った。

 

269. 彼は、そこにおいて、そして、食べて、さらに、喜び楽しんで、カーシ〔国〕の王は、チャンペイヤに言った」〔と〕。〔王が尋ねた〕「あなたの、これらの最勝の宮殿は、太陽の色艶があり、光輝があります。人間の世においては、このようなものは存在しません。龍よ、何を切望しながら、〔あなたは〕苦行を為すのですか。

 

270. 彼女たちは、指輪や腕飾を〔身に〕付け、美しい衣で、丸い指があり、赤い手のひらを具有し、至上の色艶があり、〔天の飲み物を〕差し出して飲ませてくれます。人間の世においては、このようなものは存在しません。龍よ、何を切望しながら、〔あなたは〕苦行を為すのですか。

 

271. そして、これらの川があり、それらは、多毛魚たちがいて、アータ鳥の鳴き声がして、美しい渡し場があります。人間の世においては、このようなものは存在しません。龍よ、何を切望しながら、〔あなたは〕苦行を為すのですか。

 

272. 白鷺たちが、孔雀たちが、さらに、天の鵞鳥たちが、麗しき声のコーキラ〔鳥〕たちが、飛び回ります。人間の世においては、このようなものは存在しません。龍よ、何を切望しながら、〔あなたは〕苦行を為すのですか。

 

273. そして、諸々のアンバ〔樹〕が、諸々のサーラ〔樹〕が、さらに、諸々のティラカ〔樹〕が、諸々のジャンブ〔樹〕が、諸々のウッダーラカ〔樹〕が、かつまた、諸々のパータリー〔樹〕が、咲き誇っています。人間の世においては、このようなものは存在しません。龍よ、何を切望しながら、〔あなたは〕苦行を為すのですか。

 

274. さらに、これらの蓮池があり、それらは、遍きにわたり、そして、諸々の天の香りが、常に香り行きます。人間の世においては、このようなものは存在しません。龍よ、何を切望しながら、〔あなたは〕苦行を為すのですか」〔と〕。

 

275. 〔菩薩は答えた〕「人のインダよ、子を因としてにあらず、財を因としてにあらず、さらに、また、寿命を因としてにあらず。人間の胎〔に生まれること〕を切望しながら、それゆえに、勤しんで、〔わたしは〕苦行を為します」〔と〕。

 

276. 〔王が尋ねた〕「あなたは、眼は赤く、肩は間隔が広く、〔装いを〕十分に作り為し、髪と髭は整えられ、〔身体は〕赤の栴檀で美しく塗られ、音楽神の王のように、方々に光り輝きます。

 

277. 〔あなたは〕天の神通に至り得た者として存しています。大いなる威力ある者です。一切の欲望〔の対象〕の保有者と成った者です。龍の王よ、この義(意味)を、〔わたしは〕あなたに尋ねます。何によって、ここより、人間の世は、より勝っているのですか」〔と〕。

 

278. 〔菩薩は答えた〕「人のインダよ、人間の世より他に、あるいは、清浄は、あるいは、自制は、等しく見出されません。そして、わたしは、人間の胎を得て、生と死の終極を為すのです」〔と〕。

 

279. 〔王が言った〕「まさに、たしかに、慣れ親しむべきは、智慧を有する者たちであり、多聞の者たちであり、すなわち、多くの境位に思弁ある者たちです。龍よ、そして、〔龍の〕女たちを見て、さらに、あなたを〔見て〕、諸々の少なからざる功徳を、〔わたしは〕作り為すでしょう」〔と〕。

 

280. 〔菩薩は言った〕「まさに、たしかに、慣れ親しむべきは、智慧を有する者たちであり、多聞の者たちであり、すなわち、多くの境位に思弁ある者たちです。王よ、そして、〔龍の〕女たちを見て、さらに、わたしを〔見て〕、諸々の少なからざる功徳を、〔あなたは〕作り為したまえ。

 

281. そして、この多大なる黄金は、わたしのものです──さらに、ターラ〔樹の高さ〕ほどの金の集積物も。ここから運び去って、諸々の金の家を作りたまえ。銀の城壁を作りたまえ。

 

282. さらに、諸々の真珠を、瑠璃が混ざった五千の車両を、ここから運び去って、内宮の地に敷きたまえ。泥土なきものと成るでしょう。さらに、塵なきものと〔成るでしょう〕。

 

283. 最勝の王よ、このような、多いに美しく輝く、最勝の宮殿に居住したまえ。繁栄し、興隆する、バーラーナシーの城市に〔居住し〕、至上の智慧ある者よ、そして、王権を為したまえ」〔と〕。ということで──

 

 チャンペイヤ・ジャータカが、第十となる。

 

15. 1. 11. マハーパローバナ・ジャータカ(大なる誘惑・本生物語507)

 

284. 〔世尊は言った〕「大いなる神通ある天子(菩薩)は、梵の世から死滅して、一切の欲望が等しく実現するところに、王の子として生起した(愛欲に満ちた王宮に再生した)。

 

285. あるいは、諸々の欲望〔の対象〕は、あるいは、欲望の表象は、梵の世においては見出されず、彼は、まさに、まさしく、その表象から、諸々の欲望〔の対象〕から、忌避した(愛欲を嫌悪した)。

 

286. そして、彼の内宮には、見事に造作された瞑想堂が存した。彼は、そこにおいて静坐者となり、独り、静所にあり、瞑想した。

 

287. 王は、子の憂いに苦悩する者となり、彼は、嘆き悲しんだ。『さてまた、わたしには、この独り子がいるも、しかしながら、〔彼は〕諸々の欲望〔の対象〕を享受しない(愛欲に興味がない)。

 

288. いったい、誰が、まさに、ここにおいて、その手段となるのか。あるいは、誰が、何らか〔の手段〕を知るのか。すなわち、わたしの子を誘惑するであろう、〔誘惑者は誰なのか〕。すなわち、〔彼が〕諸々の欲望〔の対象〕を切望するようになる、〔誘惑者は誰なのか〕』〔と〕。

 

289. まさしく、そこにおいて、色艶と形姿を伴った少女が有った──舞踏と歌詠に巧みで、かつまた、音楽に才ある〔少女〕が。

 

290. 彼女は、近づいて行って、そこにおいて、王に、この〔言葉〕を説いた。『わたしが、まさに、彼を誘惑しましょう。それで、もし、〔わたしの〕夫に成るであろうなら』」〔と〕。

 

291. 王は、彼女に、そのように説く少女に、この〔言葉〕を説いた。『まさしく、おまえは、彼を誘惑せよ。おまえの夫に成るであろう』〔と〕。

 

292. そして、彼女は、多くの欲望〔の対象〕を伴った内宮に赴いて、心臓に至る愛すべき様々な詩偈を語った。

 

293. そして、彼女が歌っていると、女の声を聞いて、彼に、欲望〔の対象〕にたいする欲〔の思い〕が生起した。彼は、人々に遍く問い尋ねた。

 

294. 〔菩薩は尋ねた〕『この声は、誰のものなのか。あるいは、それは、誰なのか。高下に多くを話す──心臓に至る愛すべきことを、ああ、わたしの耳に安楽なることを』〔と〕。

 

295. 〔人々が答えた〕『陛下よ、これは、まさに、女人です。この遊興は、少なからざるものです。それで、もし、あなたが、諸々の欲望〔の対象〕を享受するなら、より一層、より一層に、あなたを喜ばせるでしょう』〔と〕。

 

296. 〔菩薩は言った〕『さあ、此方にやってくるのだ。遠く離れていないところで歌うのだ。庵所の近くで、わたしの現前において、歌うのだ』〔と〕。

 

297. 〔少女は〕壁越しに歌って、瞑想堂のなかに入り、林のなかの象を〔捕縛する〕ように、彼を順次に結縛した。

 

298. 欲望の味を知って、彼に、嫉妬の法(性質)が生じた。『わたしだけが、諸々の欲望〔の対象〕を享受するべきである。他の男が有ってはならない』〔と〕。

 

299. そののち、〔彼は〕剣を掴んで、男たちを殺すべく襲い掛かった。『わたしだけが、独り、享受するのだ。他の男が存してはならない』〔と〕。

 

300. そののち、地方の者たちは、全ての者たちが集いあつまり、泣き叫んだ。『大王よ、あなたの、この子は、汚れなき人々を傷つけます』〔と〕。

 

301. そして、彼を、王は、士族は、さてまた、自らの国土から放逐した。『およそ、わたしの領土であるかぎり、そのかぎりは、おまえが住するべきにあらず』〔と〕。

 

302. そののち、彼は、妻を携えて、海へと近づいて行った。草庵を作って、落穂集めのために、林に入った。

 

303. そこで、ここにおいて、〔或る〕聖賢がやってきた──海を、上に上にと〔飛び超えて〕。彼は、彼(菩薩)の家に入った──食事の時がやってきたので。

 

304. そして、彼を、妻は誘惑した。見よ──それこそは、極めて凶悪なることを。彼は、梵行から死滅し、神通から遍く衰退した。

 

305. そして、王子は、多くの、林の根や果を回収し、夕方には、天秤棒を担いで、庵所へと近づいて行った。

 

306. そして、聖賢は、士族を見て、海へと近づいて行った。『宙を赴くのだ』と。彼は、大海に沈む。

 

307. そして、士族は、大海に沈みつつある聖賢を見て、まさしく、彼への慈しみ〔の思い〕によって、これらの詩偈を語った。

 

308. 〔菩薩は言った〕『水を破ることなく(水に沈まずに)、神通によって、自ら、やってきて、婦女と混合の状態に至って(女と性交して)、〔あなたは〕大海に沈む

 

309. 誘引する大いなる幻想にして、梵行を動乱させる〔女〕たちは、〔悪所に〕沈む。それを見出して、遠く離れ、遍く避けるがよい。

 

310. 柔和な会話では十分ならず、川に等しき満ち難さ、彼女たちは、〔悪所に〕沈む。それを見出して、遠く離れ、遍く避けるがよい。

 

311. あるいは、欲によって、あるいは、財によって、これらの者たちが、彼に仕え親しむなら、火が、燃料を〔焼き尽くす〕ように、すみやかに、彼を焼き尽くす』〔と〕。

 

312. 士族の言葉を聞いて、聖賢には、厭離〔の思い〕が有った。過去の道を得て、彼は、宙に赴く。

 

313. そして、士族は、宙に赴きつつある聖賢を見て、畏怖〔の思い〕を得た。慧者は、出家〔の道〕を選んだ。

 

314. そののち、彼は、出家して、欲望〔の対象〕にたいする貪り〔の思い〕を離貪させた。欲望〔の対象〕にたいする貪り〔の思い〕を離貪させて、梵の世へと近しく赴く者と成った」〔と〕。ということで──

 

 マハーパローバナ・ジャータカが、第十一となる。

 

15. 1. 12. パンチャパンディタ・ジャータカ(五者の賢者・本生物語508)

 

315. 〔王が尋ねた〕「五者の賢者が、集いあつまった。わたしに、問いが明白となる。それを聞け。非難されるべき義(意味)であれ、あるいは、賞賛されるべき〔義〕であれ、まさしく、誰に、秘密の義(意味)を打ち明けるべきなのか」〔と〕。

 

316. 〔セーナカが言った〕「地上の警護者(王)よ、〔まずは〕あなたが打ち明けたまえ。夫として、重荷に耐える者として、〔まずは〕あなたが、それを知らせたまえ。人のインダよ、あなたの、諸々の欲と好みを触知して、そこで、五者の慧者は説くでしょう」〔と〕。

 

317. 〔王が答えた〕「彼女が、戒ある者であり、他〔の男〕に盗られるべくもなく、夫の欲〔の思い〕の支配に従い行き、愛しく意に適う者であるなら、非難されるべき義(意味)であれ、あるいは、賞賛されるべき〔義〕であれ、妻に、秘密の義(意味)を打ち明けるべきである」〔と〕。

 

318. 〔セーナカが答えた〕「彼が、苦難に陥った病める者の、帰依所と成るなら、赴く所と〔成り〕、さらに、行き着く所と〔成るなら〕、非難されるべき義(意味)であれ、あるいは、賞賛されるべき〔義〕であれ、友に、秘密の義(意味)を打ち明けるべきです」〔と〕。

 

319. 〔プックサが答えた〕「上の者であれ、さらに、中の者であれ、末の者であれ、もし、彼が、戒によって〔心が〕定められた者であり、自己が安立した者であるなら、非難されるべき義(意味)であれ、あるいは、賞賛されるべき〔義〕であれ、兄弟に、秘密の義(意味)を打ち明けるべきです」〔と〕。

 

320. 〔カーミンダが答えた〕「その者が、まさに、父の心臓(心)に仕え行く者であり、父に従い生まれた至上の智慧ある者であるなら、非難されるべき義(意味)であれ、あるいは、賞賛されるべき〔義〕であれ、子に、秘密の義(意味)を打ち明けるべきです」〔と〕。

 

321. 〔デーヴィンダが答えた〕「二足者たる人のなかの最勝なるインダよ、すなわち、母として、欲するままに、愛しいままに、その者を養うなら、非難されるべき義(意味)であれ、あるいは、賞賛されるべき〔義〕であれ、母に、秘密の義(意味)を打ち明けるべきです」〔と〕。

 

322. 〔菩薩は答えた〕「まさに、秘密であるなら、秘密であることこそは、善きことです。まさに、秘密であるなら、打ち明ける行為は、賞賛されません。〔いまだ〕完遂されざるなら、慧者は、〔話すことを〕耐えるべきです。まさしく、完遂されたなら、安楽なるままに話すべきです」〔と〕。

 

323. 〔王に、王妃が尋ねた〕「最勝の王よ、どうして、あなたは、意が離れる者として存しているのですか。二足者たる人のインダよ、〔あなたの〕言葉を聞きましょう。わたしに、このことを〔説いてください〕。〔あなたは〕何を思い考えながら、失意の者として存しているのですか。陛下よ、まちがいなく、わたしに、罪科が存するのです」〔と〕。

 

324. 〔王が答えた〕「『早朝に、マホーサダ(菩薩)は屠殺されるべきである』と、広き智慧ある者が屠殺されるべく、わたしによって命じられたのだ。〔わたしは〕それを思い考えながら、失意の者として存している。王妃よ、まさに、あなたに、罪科が存するのではない」〔と〕。

 

325. 〔菩薩に、王が尋ねた〕「前夜は去り行き、今や、〔あなたは〕至り行く。何を聞いて、何を疑うのか、あなたの意は。広き智慧ある者よ、誰が、何を、あなたに言ったのか。さあ、〔あなたの〕言葉を聞こう。わたしに、このことを説くのだ」〔と〕。

 

326. 〔菩薩は答えた〕「『早朝に、マホーサダは屠殺されるべきである』と、〔セーナカたちと〕話し合ったのが、人のインダよ、すなわち、あなたの汚点であるとして(セーナカたち四者と菩薩の殺害を密談した)、静所に赴いた〔あなた〕は、妻に、〔そのことを〕伝えたのです。秘密は、明らかと為され、このことは、わたしの聞くところとなりました。

 

327. すなわち、サーラ〔樹〕の林のなかで、セーナカは、卑劣なる形質の悪しき行為を為しました。静所に赴いた〔彼〕は、まさしく、友に、〔そのことを〕伝えたのです。秘密は、明らかと為され、このことは、わたしの聞くところとなりました。

 

328. 人のインダよ、あなたの家来のプックサに、癩の病が生起したのです。そして、静所に赴いた〔彼〕は、兄弟に、〔そのことを〕伝えたのです。秘密は、明らかと為され、このことは、わたしの聞くところとなりました。

 

329. この者は、カーミンダは、卑劣なる形質の病苦ある者であり、鬼神に取り付かれました。静所に赴いた〔彼〕は、子に、〔そのことを〕伝えたのです。秘密は、明らかと為され、このことは、わたしの聞くところとなりました。

 

330. 八面の秀逸なる宝珠の宝を、帝釈〔天〕は、あなた(王)の祖父に与えました。それが、今日、デーヴィンダの手に落ちたのです。そして、静所に赴いた〔彼〕は、母に、〔そのことを〕伝えたのです。秘密は、明らかと為され、このことは、わたしの聞くところとなりました。

 

331. まさに、秘密であるなら、秘密であることこそは、善きことです。まさに、秘密であるなら、打ち明ける行為は、賞賛されません。〔いまだ〕完遂されざるなら、慧者は、〔話すことを〕耐えるべきです。まさしく、完遂されたなら、安楽なるままに話すべきです。

 

332. 秘密の義(意味)を漏らすべきではありません。あたかも、財宝を〔守る〕ように、それを守るべきです。覚知している者によって、秘密の義(意味)が明らかと為されたなら、まさに、〔それは〕善きにあらず。

 

333. 賢者は、女には、かつまた、朋友ならざる者には、秘密を伝えるべきではありません──そして、その〔人〕が、財貨によって動揺する者であるなら、さらに、その人が、心臓(心)を惑わす者であるなら。

 

334. その人が、〔いまだ〕等しく覚られていない秘密の義(意味)を、〔他者に〕等しく覚らせるなら、密談の露呈の恐怖あることから、彼の奴隷と成り、忍受することになります。

 

335. およそ、〔その〕人の義(利益)となる秘密や密談を知る者たちがいる、そのかぎりは、彼に、怯えがあります。それゆえに、秘密を捨て去るべきではありません。

 

336. 昼は、遠離して、密事を語るべきです。夜は、限度を超えて、言葉を解き放つべきではありません。なぜなら、近くに聞く者たちがいて、密談を聞くからです。それゆえに、密談は、すみやかに露呈へと近しく至るのです」〔と〕。ということで──

 

 パンチャパンディタ・ジャータカが、第十二となる。

 

15. 1. 13. ハッティパーラ・ジャータカ(ハッティパーラ・本生物語509)

 

337. 〔菩薩は言った〕「長きのはてに、まさに、天の色艶ある婆羅門を、〔わたしたちは〕見ます──結髪は大きく、天秤を保持し、歯には泥、頭には塵の者を。

 

338. 長きのはてに、まさに、法(正義)の徳を喜ぶ聖賢を、〔わたしたちは〕見ます──黄褐色の衣(袈裟)を着衣し、樹皮の衣を覆い被る者を。

 

339. 坐を、水を、足に塗る油を、貴君は、わたしたちのために納受したまえ。供物について、貴君に尋ねます。供物〔の報い〕を、貴君は、わたしたちのために作り為したまえ(供物を納受してください)」〔と〕。

 

340. 〔父の婆羅門が言った〕「諸々のヴェーダを学得して、富を遍く探し求めよ。息子よ、子供たちを家に確立させて〔そののち〕、香りと味における全てを経験して〔そののち〕、林にあるのは、善きことである。牟尼として、彼は、賞賛される者となる」〔と〕。

 

341. 〔菩薩は言った〕「諸々のヴェーダは、真理ではありません。かつまた、富を得ることも、〔真理では〕ありません。子を得ることによって、老を打破することはありません。香りと味における解き放ちを、正しくある者たちは言います。自らの行為によって、果と再生が有ります」〔と〕。

 

342. 〔王が言った〕「まさに、たしかに、おまえの、この言葉は、真理である。自らの行為によって、果と再生が有る。しかしながら、おまえの、これらの老いた母と父は、おまえを、百年のあいだ、無病の者として見たいのだ」〔と〕。

 

343. 〔菩薩は言った〕「王よ、人のなかの最勝の勇者よ、すなわち、彼に、死との友誼があり、老との友情があるなら、そして、また、彼が、『いついかなる時も、〔わたしは〕死なないのだ』〔と〕知るであろうなら、彼を、百年のあいだ、無病の者として見るでしょう。

 

344. たとえば、また、舟を、人が、もし、水のうえで動かすなら、彼を岸に導くように、このように、また、病は、さらに、老は、死すべき者(人間)を、常に、死神の支配に導きます」〔と〕。

 

345. 〔弟のアッサパーラが言った〕「そして、諸々の欲望〔の対象〕は、汚泥です。そして、諸々の欲望〔の対象〕は、泥沼です。死魔の領域にして、超え難く、意を奪い去るものです。この汚泥と泥沼に沈み込んだ者たちは、下劣なる形質の者たちであり、彼岸へと超え渡ることはありません。

 

346. かつて、この〔わたし〕は、残忍な行為を為しました。〔まさに〕その、この〔わたし〕は、〔行為の報いに〕捕捉されたのです。まさに、わたしには、ここ(現世)からの解脱はありません。その〔わたし〕を、〔悪しき行為から〕遮って、〔わたしは〕遍く守るのです。この〔わたし〕が、ふたたび、残忍な行為を為すことがあってはなりません」〔と〕。

 

347. 〔弟のゴーパーラが言った〕「王よ、たとえば、林のなか、まさしく、消失した牛を、人が、見ることなくあるなら、〔その牛を〕尋ね求めるように、エースカーリンよ、王よ、このように、わたしの義(目的)は消失したのです。〔まさに〕その、わたしが、どうして、〔その義を〕探し求めないというのでしょう。

 

348. 『明日には』と、『明日には』と、人は、『他日において』と、遍く衰退します。『未来は、これは、存在しないのだ』と知って、慧者であるなら、誰が、生起した欲〔の思い〕(出家への意欲)を除き去るというのでしょう」〔と〕。

 

349. 〔弟のアジャパーラが言った〕「まさに、わたしは見ます──酔者の如き、ケーサカの花の眼をした、年少の少女を。享受が享受されざる最初の年代において、少女を、死魔が取って去り行くのです。

 

350. 若く善き生まれの者が、善き顔立ちの善き見た目ある者が、褐色〔の肌〕の者が、紅花を巻き散らした〔如き〕髭の者が、〔死に行くのです〕。陛下よ、わたしをお許しください。〔わたしは〕出家するでありましょう──諸々の欲望〔の対象〕を、家を、前もって捨棄して〔そののち〕」〔と〕。

 

351. 〔父の婆羅門が言った〕「諸々の枝あるによって、木は、〔その〕呼称を得る。いっぽう、枝を捨棄したものを、〔人々は〕『切り株』と言う。尊女よ、ヴァーセッティーよ、今日、子を捨棄したわたしにとって、行乞を歩むための時となる(わたしも出家する)」〔と〕。

 

352. 〔母の婆羅門が言った〕「あたかも、冬が過ぎて、白鷺たちが空に〔去り行く〕ように、諸々の張られた網を破って、白鳥たちが〔去り行くように〕、わたしの、子たちも、〔子たちの〕父も、去り行く。〔まさに〕その、わたしは、〔そのことを〕覚知しながら、どうして、〔彼らに〕従い行かないというのでしょう(わたしも出家する)」〔と〕。

 

353. 〔王に、王妃が言った〕「これらの鳥たちは、食べて〔そののち〕、そして、吐き捨てて、立ち去ります。しかしながら、それら〔の鳥たち〕は、食べて〔そののち〕、吐き出さなかったので、彼らは、わたしの手中に至り着いたのです。

 

354. 婆羅門は、諸々の欲望〔の対象〕を吐き捨てました。〔まさに〕その、あなたは、〔それらを〕飲み戻そうとするのです。王よ、吐き出したものを食べる人は、彼は、賞賛されるべき者には成りません」〔と〕。

 

355. 〔王が言った〕「そして、汚泥と泥沼に沈み込んだ人を、あたかも、力ある者が、力弱き者を引き上げるように、尊女よ、パンチャーリーよ、このように、また、あなたは、諸々の見事に語られた詩偈によって、わたしを引き上げてくれた」〔と〕。

 

356. 〔世尊は言った〕「エースカーリン大王は、方角の長は、この〔言葉〕を説いて、国土を捨棄して、出家した──象が、結縛を断ち切って〔去り行く〕ように」〔と〕。

 

357. 〔王妃に、人々が言った〕「そして、王は、人のなかの最勝の勇者は、国土を捨棄して、出家〔の道〕を選びました。あなたもまた、わたしたちのために、まさしく、王のように有り、わたしたちに守られ、王国を統治してください」〔と〕。

 

358. 〔王妃が言った〕「そして、王は、人のなかの最勝の勇者は、国土を捨棄して、出家〔の道〕を選びました。わたしもまた、独り、世を歩みます──意が喜びとする諸々の欲望〔の対象〕を捨棄して。

 

359. そして、王は、人のなかの最勝の勇者は、国土を捨棄して、出家〔の道〕を選びました。わたしもまた、独り、世を歩みます──限りあるかぎりの諸々の欲望〔の対象〕を捨棄して。

 

360. 諸々の時は過ぎ行き、諸々の夜を超え渡ります。諸々の青春の属性は、〔その持ち主を〕順次に捨棄します。わたしもまた、独り、世を歩みます──意が喜びとする諸々の欲望〔の対象〕を捨棄して。

 

361. 諸々の時は過ぎ行き、諸々の夜を超え渡ります。諸々の青春の属性は、〔その持ち主を〕順次に捨棄します。わたしもまた、独り、世を歩みます──限りあるかぎりの諸々の欲望〔の対象〕を捨棄して。

 

362. 諸々の時は過ぎ行き、諸々の夜を超え渡ります。諸々の青春の属性は、〔その持ち主を〕順次に捨棄します。わたしもまた、独り、世を歩みます──〔心が〕清涼と成った者となり、一切の執着を超え行って」〔と〕。ということで──

 

 ハッティパーラ・ジャータカが、第十三となる。

 

15. 1. 14. アヨーガラ・ジャータカ(アヨーガラ・本生物語510)

 

363. 〔菩薩は言った〕「すなわち、或る夜、最初に、小児が、〔母の〕胎に住すると、彼は、立ちのぼる雲のように進みます。彼は、〔生の道を〕赴きつつ、〔もはや〕引き返すことはありません。

 

364. 人たちが、老いることなく、さらに、また、死ぬことなくあるのは、戦いながらもありはせず、力に溢れていてもありません。まさに、この一切は、生と老に悩まされています。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

365. 四つの支分(象兵・馬兵・車兵・歩兵)ある、極めて禍々しき形態の軍団を、国土の君主たちは、打ち負かして勝利するも、死魔のばあい、勝利することはできません。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

366. 象〔兵〕たちによって、馬〔兵〕たちによって、車〔兵〕たちによって、歩〔兵〕たちによって、取り囲まれたとして、一部の者たちは、〔彼らから〕解き放たれるも、死魔のばあい、解き放たれることはできません。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

367. 象〔兵〕たちによって、馬〔兵〕たちによって、車〔兵〕たちによって、歩〔兵〕たちによって、勇士たちは、〔敵を〕破壊し砕破するも、死魔のばあい、打ち砕くことはできません。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

368. 発情し、腫物が破れ、狂った象たちは、諸々の城市を蹂躙し、人々を殺すも、死魔のばあい、蹂躙することはできません。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

369. 射手たちは、手練の勇者なるもまた、遠くを射落とし瞬時に貫くもまた、死魔のばあい、貫くことはできません。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

370. 諸々の池は滅尽します──岩や森を有する〔大地もまた〕。まさに、この一切は、長きの間に滅尽します。まさに、この一切は、時の末路に破壊します。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

371. まさに、このように、男たちも、女たちも、全ての者たちには(※)、この〔世において〕、種々に動揺するものとして、命ある生類の生命はあります──質悪き者の外衣のように、岸辺に生える木のように。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

※ テキストには Sabbe samevaṃ とあるが、PTS版により Sabbesam evaṃ と読む。

 

372. 諸々の木の果のように、人間たちは落ちます──そして、年少者たちも、さらに、年長者たちも、肉体の破壊ある者たちとして──女たちも、男たちも、さらに、中性の人たちも。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

373. この青春は、星の王(月)に似ることなく、それが、過去となったものであるなら、今や、それは、まさしく、去り行ったものとしてあります。まさに、老いた者に、喜びは存在せず、どうして、楽しみがあるというのでしょう。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

374. 夜叉たちは、魔物たちは、さらに、あるいは、また、餓鬼たちは、彼らが怒り狂ったなら、人間たちを吹き飛ばすも、死魔のばあい、吹き飛ばすことはできません。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

375. 夜叉たちを、魔物たちを、さらに、あるいは、また、餓鬼たちを、たとえ、彼らが怒り狂ったとして、〔人間たちは〕納得させることを為すも、死魔のばあい、納得させることを為しません。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

376. 反する者たちを、汚す者たちを、さらに、傷つける者たちを、王たちは、〔彼らの〕汚点を見出して罰するも、死魔のばあい、罰することはできません。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

377. 反する者たちは、汚す者たちは、さらに、傷つける者たちは、彼らは、王たちを納得させることを得るも、死魔のばあい、納得させることを為しません。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

378. 『士族である』ということでは、さにあらず──さらに、『婆羅門である』ということでも、さにあらず──富者たちも、勢力ある者も、威光ある者もまた、さにあらず──死魔の王に、期待〔の思い〕が存在しないのは(誰であれ、死魔の王の期待するところとなる)。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

379. そして、獅子たちは、さらに、虎たちは、さらに、また、豹たちも、もがいている者を打ち負かして喰うも、死魔のばあい、喰うことはできません。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

380. 幻術師は、舞台の中央で〔幻術を〕為している、まさしく、そのあいだは、人の〔両の〕眼を迷わすも、死魔のばあい、迷わすことはできません。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

381. 怒り狂った烈火の毒蛇たちは、彼らは、人間たちを、咬み、死なせるもまた、死魔のばあい、咬むことはできません。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

382. 怒り狂った毒蛇たちが、或る者を咬むなら、医師たちは、彼らの毒を打ち砕くも、死魔のばあい、咬まれた毒を打ち砕くことはありません。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

383. ダンマンタリーは、さらに、ヴェッタラニーは、ボージャは、蛇たちの毒を打ち砕いても、彼らは、まさしく、そのように、命を終えたと伝え聞かれます。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

384. 呪術の保持者たちは、恐ろしい〔呪術〕を学得している者たちであり、諸々の薬によって、〔姿を〕見られずに逃れ行くも、死魔の王のばあい、〔姿を〕見られずに逃れ行くことはありません。それが、わたしの思いとして有ります。〔わたしは〕法(正義)〔の道〕を歩みます。

 

385. 法(正義)は、まさに、法(正義)〔の道〕を歩む者を守ります。善き歩みある法(正義)は、安楽をもたらします。これは、善き歩みある法(正義)における福利です。法(正義)〔の道〕を歩む者は、悪しき境遇に赴きません。

 

386. まさに、法(正義)は、そして、法(正義)ならざるものは、両者は、報いを等しくせず、法(正義)ならざるものは、地獄へと導き、法(正義)は、善き境遇へと至り得させます」〔と〕。ということで──

 

 アヨーガラ・ジャータカが、第十四となる。

 

 二十なるものの集まりは〔以上で〕終了となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「マータンガとサンブータ(チッタとサンブータ)とシヴィと吉祥なる助言があり、ローハナ(ローハナ鹿)と鵞鳥(小なる鵞鳥)とサッティグンバがあり、バッラーティヤとソーマナッサとチャンペイヤと梵(大なる誘惑)と五者の賢者と『長きのはてに、まさに』(ハッティパーラ)とアヨーガラがあり、〔それらの十四がある〕」と。

 

16. 三十なるものの集まり

 

16. 1. 『何を欲〔の思い〕として』の章

 

16. 1. 1. キンチャンダ・ジャータカ(何を欲〔の思い〕として・本生物語511)

 

1. 〔天神が尋ねた〕「何を欲〔の思い〕(意欲)として、何を志向として、炎暑のなか、独り、在するのですか──婆羅門よ、何を切望しながら、何を探求しながら、何を義(目的)とすることで」〔と〕。

 

2. 〔菩薩は答えた〕「すなわち、大きくて水を保つ真円の瓶のような、その喩えのような、最上の色と香りと味ある、熟したアンバ〔の果〕(マンゴー)です。

 

3. 無垢にしてくびれた胴ある方よ、それが流れに運ばれているのを見て、それを〔両の〕手で収め取って、祭火の場所に持ち運びました。

 

4. そののち、諸々の芭蕉の葉のうえに置いて、わたしは、自ら、それを刃で処理して、わたしの飢えと渇きを消し去りました。

 

5. 〔まさに〕その、わたしは、懊悩を離れた者となるも、〔その果が〕終息と成ったのは耐え難く、諸他の果においては、何であれ、美味なるものに到達しません。

 

6. その〔果〕は、わたし〔の心身〕を乾かして、まちがいなく、死をもたらすでしょう。〔まさに〕その〔わたし〕にとって、アンバの果は、美味であり、至高の甘さがあり、意が喜びとするものであり、〔流れに〕運ばれている、〔まさに〕その〔果〕を、大いなる川のなか、水流から引き上げたのです。

 

7. わたしによって、一切が、あなたに告げ知らされました。それゆえに、わたしは、〔断食に〕入っているのであり、多毛〔魚〕たちが群れつどう、広く、喜ばしき〔川〕に対坐している者として、〔わたしは〕存しているのです」〔と〕。

 

8. 〔菩薩は尋ねた〕「そして、まさに、あなたも、まさしく、わたしに告げ知らせてください──逃げることなく、自己のことを。美しい方よ、あなたは、あるいは、どのような者として存しているのですか。美しいくびれた胴ある方よ、あなたは、あるいは、誰の〔子なのですか〕。

 

9. 艶やかに磨かれた金の板のような、山の背に生まれる虎のような、それらの女たちが、天〔の神々〕たちを世話する者たちとして、諸天に存在します。

 

10. さらに、人間の世にも、それらの形姿に恵まれた婦女たちがいますが、諸天において、音楽神と人間の世において、形姿をもってして、あなたと同等の者は存在しません。全ての肢体が典雅なる方よ、〔問いを〕尋ねられた者として、〔あなたは〕存しています。そして、名前を、眷属たちのことを、わたしに説いてください」〔と〕。

 

11. 〔天神が答えた〕「婆羅門よ、すなわち、喜ばしきコーシーキー〔川〕に対坐している者として、あなたは存しています。〔まさに〕その、わたしは、優美なる水流が激流となり、激しく集まる場所に住している者です。

 

12. 種々なる木々の群れが散在する、多くの山の渓谷が、まさしく、わたしの面前に有り、雨期には、〔水を〕降り注ぎます。

 

13. そこで、林からの多くの水が、青き水流を保ち、龍がいる水豊かな多く〔の支流〕が、水を降り注ぎます。

 

14. それら〔の支流〕は、諸々のアンバ〔樹〕やジャンブ〔樹〕やラブジャ〔樹〕があり、さらに、諸々のニーパ〔樹〕やターラ〔樹〕やウドゥンバラ〔樹〕があり、多くの果の類を間断なくもたらします。

 

15. それが何であれ、両岸において、果が、水に落ちるなら、その果は、疑念〔の余地〕なく、流れの支配に従い行くものと成ります。

 

16. 思慮ある者よ、多々なる智慧ある者よ、このことを了知して、わたしの〔言葉を〕聞きなさい。執着を喜んではいけません。人の君主(王)よ、〔執着を〕制止しなさい。

 

17. 国土を繁栄させる者よ、わたしは、〔まさに〕その、あなたのことを、繁栄ある者とは、まさしく、思わないのです。聖賢たる王よ、〔悪を〕蓄積しながら、〔あなたは〕死を待ち望みます。

 

18. 祖霊たちも、さらに、天〔の神〕を含む音楽神たちも、〔まさに〕その、〔あなたの執着を〕知ります。さらに、また、すなわち、自己が自制された苦行者たちである、世における聖賢たちも、福徳があり、際立つ生類たちである、彼らもまた、疑念〔の余地〕なく、〔あなたの執着を〕知ります」〔と〕。

 

19. 〔菩薩は言った〕「このように、知者が、一切の法(事象)を、生命に砕破と死滅あることを、知って〔そののち〕、それで、もし、その〔生命〕の殺戮のために思い考えないなら、その人には、悪が蓄積されることはありません。

 

20. 聖賢の集団に認められた者においては、このように、世理として知られた気づき()があります。聖ならざる会話において、〔あなたは〕悪しき行為を求め願います。

 

21. 広く可愛いお尻をした方よ、それで、もし、わたしが、あなたの岸において、死ぬことになるなら、名声ならざるものが、わたしが亡者となるとき、疑念〔の余地〕なく、あなたにやってくるでしょう。

 

22. 美しいくびれた胴ある方よ、まさに、それゆえに、悪しき行為を、まさしく、守り押さえるのです。のちに、わたしが死んだとき、全ての人があなたを非難することがあってはなりません」〔と〕。

 

23. 〔天神が言った〕「可能ならざることを成し遂げる者よ、このことは了知されました。自己を、さらに、アンバ〔の果〕を、それを、あなたに与えましょう。〔まさに〕その〔あなた〕は、諸々の捨て去り難き欲望の属性(妙欲)を捨棄して、そして、寂静を、さらに、法(正義)を、確立した者として〔世に〕存しています。

 

24. すなわち、過去の束縛を捨棄して、のちに、束縛するもののうちに止住する者となるなら、まさしく、そして、法(正義)ならざる〔道〕を歩み、かつまた、彼に、悪は増大します。

 

25. 来なさい。それに至り得させてあげましょう。欲するままに、思い入れ少なき者と成りなさい。連れて行ってあげましょう。涼やかなところで、思い入れなき者となり、〔世に〕住みなさい。

 

26. 敵の調御者よ、それに〔至り得させてあげましょう〕。花の味に酔う鳥たちとともに、天の、白鷺たちが、孔雀たちが、コーラッティ〔鳥〕や甘美なる九官鳥たちがいます。ここにおいて、白鳥たちの集団とともに、郭公たちが鳴き、〔聞く者を〕目覚めさせます。

 

27. ここにおいて、諸々のアンバ〔の果〕は、枝の先端に連なり、脱穀する稲穂に似ています。諸々の蔦を有するコーサンバ〔樹〕があり、諸々のニーパ〔樹〕があり、諸々の熟したターラ〔の果〕が垂れ下がっています」〔と〕。

 

28. 〔餓鬼に、菩薩は尋ねた〕「花飾をつけ、天衣をつけ、腕飾をつけ、腕輪をつけ、栴檀〔の香り〕芳しく、あなたは、夜には、〔女たちに〕世話され、昼には、〔苦痛の〕感受を感受します。

 

29. すなわち、あなたには、これらの一万六千の世話する女たちがいます。このように、未曾有にして身の毛のよだつ、大いなる威力ある者として、〔あなたは、夜には〕存しています。

 

30. 〔あなたは〕過去(前世)において、〔未来の〕自己に苦痛をもたらす、どのような悪しき行為を為したのですか──すなわち、〔悪しき行為を〕為して、〔あなたは、昼には〕人間たちにおいて、〔自己の〕諸々の背の肉を喰います」〔と〕。

 

31. 〔餓鬼が答えた〕「諸々の学問を納受して〔そののち〕、わたしは、諸々の欲望〔の対象〕に拘束されました。わたしは、長時にわたり、他者たちにとって益なきことのために歩みました。

 

32. その者が、陰口を言う者として〔世に〕有るなら、このように、〔自己の背を〕切り取って喰います──すなわち、わたしが、今日、自己の諸々の背の肉を喰うように」〔と〕。ということで──

 

 キンチャンダ・ジャータカが、第一となる。

 

16. 1. 2. クンバ・ジャータカ(瓶・本生物語512)

 

33. 〔王が尋ねた〕「誰なのですか、三十三〔天〕から、天空に出現したのですか──夜に〔四方を〕輝き照らす月のようです。あなたの五体から、諸々の光が放たれます──空中における雷光のきらめきのように。

 

34. 〔まさに〕その〔あなた〕は、空において、風を切り、進み行きます。宙を赴き、かつまた、〔宙に〕立ちます。はてさて、あなたには、基盤が作り為され、善く修められた、諸々の神通があるのですか──さてまた、旅程なく赴く天神たちのものとして。

 

35. 〔あなたは〕宙を往来して、〔宙に〕立ちます。すなわち、『瓶を買え』という、この義(意味)を、〔わたしに告げ知らせたまえ〕。あるいは、あなたは、誰なのですか。あるいは、何のための、あなたの瓶なのですか。婆羅門よ、この義(意味)を、わたしに告げ知らせたまえ」〔と〕。

 

36. 〔菩薩は答えた〕「酥のための瓶にあらず。また、油のための瓶にもあらず。糖のための〔瓶〕にあらず。蜜のための瓶にあらず。瓶にあるのは、諸々の少なからざる罪ある〔悪しき飲み物〕である。瓶に在する〔悪しき飲み物〕の多くの汚点を聞きたまえ(飲酒の弊害を聞け)。

 

37. それを飲んでは他出し、淵に、溝に、洞に、どぶ池や水たまりに、落ちることになる。また、多くの食べるべきではないものを食べることになる。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

38. それを飲んでは、心に不当に求めつつ、牛のように食物を愛用し、〔町中を〕逍遥する。孤独の者は、歌い、かつまた、踊る。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

39. まさに、それを飲んでは、無衣行者のように裸となり、村々を、道の間々を、歩むことになる。心が等しく迷乱し、限度を超えて臥す者となる。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

40. それを飲んでは、立ち上がってはよろめきつつ、かつまた、頭を、かつまた、腕を、揺れ動かしながら、彼は、木の操り人形のように踊る。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

41. まさに、それを飲んでは、〔人々は〕火に焼かれ、〔地に〕臥す。そこで、野狐たちにもまた喰われ、結縛へと、殴打へと、さらに、財物の衰退へと、近しく至る。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

42. それを飲んでは、語るべきではないことを語ることになる。集会のなかに坐し、衣を脱ぎ、吐いたもののうちに至り、沈み込み、等しく塗布される。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

43. まさに、それを飲んでは、有頂天になり、眼は混濁し、『全ての地は、まさしく、わたしのものである。四辺の王もまた、わたしと等しき者はいない』と思いなすことになる。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

44. 諸々の思量()と高慢(過慢)があり、諸々の紛争があり、諸々の中傷がある。醜き色艶となり、裸となり、逃げ去る者となる。盗賊たちや博徒たちの、赴く所となり、家となる。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

45. 繁栄し、興隆し、幾千の財ある家々が世に存するも、これによって、遺産の断絶が為されたのだ。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

46. 穀物を、財産を、銀を、金を、田畑を、牛を、そこにおいて、富ある家々を断絶させる者たちとなり、消失させるのだ。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

47. まさに、それを飲んでは、男は、まさしく、倨傲なる形態の者となり、母を、さらに、父を、罵倒する。姑をもまた抱き、さらに、嫁をもまた〔抱くことになる〕。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

48. まさに、それを飲んでは、女は、まさしく、倨傲なる形態の者となり、姑を、さらに、主人を、罵倒する。奴隷をもまた抱き、さらに、侍者をもまた〔抱くことになる〕。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

49. まさに、それを飲んでは、男は、法(正義)に依って立つ沙門を、あるいは、婆羅門を、殺すことになり、その因縁から、悪所にさえも赴くことになる。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

50. まさに、それを飲んでは、〔人々は〕悪しき行ないを行なう──身体によって、かつまた、言葉によって、さらに、心によって。悪しき行ないを行なって、〔彼らは〕地獄に行く。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

51. 〔人々は〕それを乞い求めつつ、多くの黄金をもまた、遍く捨て去りながら、過去において、〔満足を〕得ない。彼は、それを飲んでは、偽りを話す。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

52. まさに、それを飲んでは、使いに使わされつつ、非常の為すべきことが生じたとき、言われた彼は、義(意味)さえも覚知しない。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

53. 恥の意ある者たちでさえも、酔ったなら、酔いのために飲むべく、恥なき状態を作り為す。寂静なる慧者たちでさえも、多くを話す。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

54. まさに、それを飲んでは、〔人々は〕一緒くたに臥す(雑魚寝をする)。〔何も〕食べずに、苦痛なる野臥を〔営み〕、醜き色艶へと、かつまた、福徳なき〔境遇〕へと、近しく至る。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

55. まさに、それを飲んでは、〔人々は〕肩を落とし、槌で打たれた牛たちのように、〔地に〕臥す。まさに、酒の勢いは、人が容易に耐え得るようなものではない。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

56. すなわち、おぞましき毒ある蛇を、人間たちが避けるように、〔まさに〕その、世における毒に等しきものを、どのような人が、飲むに値するというのだろう。

 

57. まさに、それを飲んでは、アンダカヴェンダ族の者たちは、海岸を歩き回りながら、互いに他を、諸々の棍棒で攻撃した。〔まさに〕その〔悪しき飲み物〕のために満ちている、この瓶を買いたまえ。

 

58. まさに、それを飲んでは、酔い痴れた過去の天〔の神々〕(阿修羅)たちは、三十三〔天〕から、常久に等しく、死滅したのだ。〔まさに〕その、そのような〔悪しき飲み物〕を、〔人を〕酔わせるものを、〔まさに〕この、義(利益)なきものを、大王よ、〔その害毒を〕知りながら、どうして、飲むのというのだろう。

 

59. あるいは、乳酪は、あるいは、蜜は、この瓶のなかになく、王よ、このように証知して買いたまえ。まさに、このように、この〔瓶〕はあり、瓶に在する〔悪しき飲み物〕のそれら〔の汚点〕が、わたしによって、サッバミッタ(王)よ、あなたに告げ知らされた形となる」〔と〕。

 

60. 〔王が言った〕「わたしの、あるいは、父も、さらに、あるいは、また、母も、このような者にあらず──すなわち、〔ここに〕存する、あなたのような、〔わたしに〕利益と慈しみ〔の思い〕ある者でも、〔わたしの〕最高の義(利益)を欲する者でも。〔まさに〕その、わたしは、今日、あなたの言葉を為しましょう。

 

61. あなたに施しましょう──五つの優れた村を、百の奴婢を、七百の牛を、さらに、良馬を設えた、これらの十の車を。〔あなたは〕わたしの義(利益)を欲する師匠として〔世に〕有ります」〔と〕。

 

62. 〔菩薩は言った〕「王よ、百の奴婢は、まさしく、あなたのものとして存せ。そして、〔五つの〕村も、かつまた、〔七百の〕牛も、まさしく、あなたのものとして有れ。さらに、良馬を設えた〔十の〕車も、まさしく、あなたのものとして〔有れ〕。わたしは、帝釈〔天〕として、三十三〔天の神々〕たちのインダ(インドラ神)として、〔世に〕存している。

 

63. 肉と飯を、酥と粥を、受益せよ。そして、あなたは、諸々の蜜の豆菓子を咀嚼せよ。人のインダよ、このように、あなたは、法(正義)を喜ぶ者となり、〔誰からも〕非難されることなく、天上の境位へと近しく至れ」〔と〕。ということで──

 

 クンバ・ジャータカが、第二となる。

 

16. 1. 3. ジャヤッディサ・ジャータカ(ジャヤッディサ・本生物語513)

 

64. 〔食人鬼が尋ねた〕「長きのはてに、まさに、今日、第七の食事の時において、わたしに、大いなる食物が現われた。どうして、〔おまえは〕存しているのだ。あるいは、どのような者として、〔おまえは〕存しているのだ。さあ、それを説け。生まれを告げよ。〔世に〕知られ、〔おまえが〕存しているとおりに」〔と〕。

 

65. 〔王が答えた〕「パンチャーラ〔国〕の王である。狩猟にやってきたのだ。もしくは、おまえが聞くところとしては、ジャヤッディサという名の者である。諸々の沼地を、さらに、諸々の林を、わたしは歩む。この斑〔の鹿〕を喰え。今日は、わたしを解き放て」〔と〕。

 

66. 〔食人鬼が言った〕「おまえは、害される者でありながら、まさしく、〔わたしの〕所有するもので取り引きをする。すなわち、〔おまえは〕説く──この斑〔の鹿〕は、わたしの食物である、〔と〕。その斑〔の鹿〕を喰っても飢えているなら、そのあとで、おまえを喰おう。〔今は〕駄弁の時にあらず」〔と〕。

 

67. 〔王が言った〕「さてまた、〔鹿を〕代償に、わたしの解き放ちが存するのではない。〔自らの都に〕赴いて、早朝に〔ふたたび〕戻るためである。その約束〔の施物〕を、婆羅門に施して〔そののち〕、真なる〔言葉〕を守る者として、ふたたび〔ここに〕戻り行くであろう」〔と〕。

 

68. 〔食人鬼が尋ねた〕「王よ、どのような行為の類が、死の近くに至り得たおまえを悩み苦めるのか。それをもまた、わたしに告げよ。早朝に帰還することの許可を可能とするべく」〔と〕。

 

69. 〔王が答えた〕「わたしによって、婆羅門に財〔を施すこと〕の願い求めが為されたが、その約束が、面前にて果たされていないのだ。その約束〔の施物〕を、婆羅門に施して〔そののち〕、真なる〔言葉〕を守る者として、ふたたび〔ここに〕戻り行くであろう」〔と〕。

 

70. 〔食人鬼が言った〕「すなわち、おまえによって、婆羅門に財〔を施すこと〕の願い求めが為されたが、その約束が、面前にて果たされていないなら、その約束〔の施物〕を、婆羅門に施して〔そののち〕、真なる〔言葉〕を守る者として、ふたたび戻り行くのだ」〔と〕。

 

71. 〔世尊は言った〕「そして、食人鬼の手から解き放たれた彼は、自らの都に赴いて、欲するままに欲する者となり、その約束〔の施物〕を、婆羅門に施して〔そののち〕、子のアリーナサッタ(菩薩)に告げた」〔と〕。

 

72. 〔王が言った〕「まさしく、今日、王権を灌頂せよ(即位せよ)。法(正義)〔の道〕を歩め。自分たちにたいし、さらに、また、他者たちにたいし。そして、おまえの国土において、法(正義)ならざることを為す者が有ってはならない。わたしは、食人鬼の元に赴く」〔と〕。

 

73. 〔菩薩は尋ねた〕「陛下よ、どのような行為を、〔わたしが〕為し、あなたに説き、あなたを喜ばせなかったのですか。それを聞くことを求めます。すなわち、今日、あなたは、〔わたしを〕王権に就かせます。たとえ、王権であれ、あなたなくして、わたしは求めません」〔と〕。

 

74. 〔王が答えた〕「息子よ、あるいは、行為によっても、あるいは、言葉によっても、『非礼である』〔と〕、おまえについて、わたしは思い浮かばない。しかしながら、食人鬼と関わりを作って〔約束したからには〕、真なる〔言葉〕を守る者として、わたしは、ふたたび赴くであろう」〔と〕。

 

75. 〔菩薩は言った〕「わたしが赴きましょう。まさしく、ここに、〔あなたは〕有れ。彼から生きたまま解き放たれる者は存在しません。王よ、それで、もし、あなたが、まさしく、赴くなら、わたしもまた、赴きます。両者ともに、〔ここに〕有ることなく」〔と〕。

 

76. 〔王が言った〕「息子よ、まさに、たしかに、これは、正しくある者たちの法(教え)である。しかしながら、それは、わたしにとって、死よりもより苦しきものとして存するであろう。足に斑点ある者(食人鬼)が、おまえを、木の串に刺し、焼いて無理やり喰うことになる、そのときは」〔と〕。

 

77. 〔菩薩は言った〕「あなたの命を、わたしは、〔自らの〕命と交換します。あなたは、食人鬼の元に赴いてはいけません。そして、〔まさに〕この、あなたの命を、わたしは、〔自らの命と〕交換します。それゆえに、〔父の〕生命のために死ぬことを、〔わたしは〕栄誉とします」〔と〕。

 

78. 〔世尊は言った〕「そののち、まさに、〔道心〕堅固なる王子は、そして、母の、さらに、父の、〔両の〕足を敬拝して、〔食人鬼の元に赴いた〕。苦しみの者となった彼の母は、地に倒れ落ち、彼の父は、〔両の〕腕を突き上げて泣き叫ぶ。

 

79. 父は、まずは、彼が〔食人鬼の元に〕赴きつつあると知って、顔が彼方になるや、合掌の者となり、敬拝する。〔父が言った〕『そして、ソーマ王が、さらに、ヴァルナ王がいる。造物主が、月〔の神〕が、かつまた、日〔の神〕がいる。これらの者たちによって守られ、食人鬼のところから、息子よ、許され、〔無事〕安穏に戻りたまえ』〔と〕。

 

80. すなわち、母は、〔天の神に〕善く守られた者は、ダンダカの林に赴いたラーマ〔神〕に、安穏〔の願い〕を為した。〔母が言った〕『それでは、わたしは、あなたに、安穏〔の願い〕を為します。この真なる〔言葉〕によって、天〔の神々〕たちは思念せよ。子よ、許され、〔無事〕安穏に戻りたまえ』〔と〕。

 

81. 〔妹が言った〕『公然であれ、あるいは、また、内密であれ、意の汚点を、わたしは、アリーナサッタ(菩薩)に、けっして思念しません。この真なる〔言葉〕によって、天〔の神々〕たちは思念せよ。兄よ、許され、〔無事〕安穏に戻りたまえ』〔と〕。

 

82. 〔妻が言った〕『主人よ、すなわち、そして、わたしにとって、〔あなたは〕意に傾きなき者として存しています。さらに、また、わたしにとって、〔あなたは〕意に愛しからざる者として存することはありません。この真なる〔言葉〕によって、天〔の神々〕たちは思念せよ。主人よ、許され、〔無事〕安穏に戻りたまえ』」〔と〕。

 

83. 〔食人鬼が尋ねた〕「偉丈夫で、〔身体が〕真っすぐで、典雅な顔の者として、どうして、〔おまえは〕存しているのだ。林に住しているわたしのことを、〔おまえは〕覚知しない。残忍なわたしのことを、『食人鬼』と知って、ここに、誰が、〔無事〕安穏を了知しつつ、戻り行くというのだろう」〔と〕。

 

84. 〔菩薩は答えた〕「残忍な者よ、〔わたしは〕知る。おまえは、食人鬼だ。林に住しているおまえのことを、知らなくもない。そして、わたしは、ジャヤッディサの子として〔世に〕存している。父の解き放ちゆえに、今日、わたしを喰え」〔と〕。

 

85. 〔食人鬼が言った〕「〔わたしは〕知る。『ジャヤッディサの子である』と。おまえたちの顔の作りは、両者ともに、まさに、そのままだ。まさしく、極めて為し難きことが、おまえのこの〔行為〕が、為された。すなわち、父の解き放ちゆえに、〔おまえは〕死ぬことを求めるのだ」〔と〕。

 

86. 〔菩薩は言った〕「ここにおいて、わたしは思う。何であれ、為し難きにあらず。すなわち、父の解き放ちゆえに、〔わたしが〕死ぬことを求めるとして。さらに、母を因として、他の世に赴いて、そして、天上の安楽に相応しい者となる。

 

87. そして、わたしは、まさに、自己の悪行を、公然であれ、あるいは、また、内密であれ、けっして思念しない。生と死を究めた者として、わたしは存している。わたしにとっては、まさしく、すなわち、ここにあるとおり、そのとおりに、他所はある。

 

88. 大いなる威力ある者よ、今や、今日、わたしを喰え。諸々の為すべきことを為すのだ。この肉体を〔喰え〕。あるいは、おまえのために、木の先端から落ちようか。おまえは喜びながら、わたしの肉を食するのだ」〔と〕。

 

89. 〔食人鬼が言った〕「王子よ、そして、これは、おまえにとって好ましくある。父の解き放ちゆえに、〔おまえは〕命を捨てるのだ。まさに、それゆえに、それなら、おまえは、急ぎ至急、諸々の薪を折れ、火を燃やせ」〔と〕。

 

90. 〔世尊は言った〕「そののち、まさに、〔道心〕堅固なる王子は、木を集めて、大いなる火を燃え上がらせて、〔食人鬼に〕知らせた。『今や、この火は、大いなるものとなり、燃えている』」〔と〕。

 

91. 〔菩薩は言った〕「無理強いを為す者よ、今や、今日、わたしを喰え。どうして、身の毛をよだて、まじまじと、わたしを見るのだ。そのとおり、そのとおりに、わたしは、おまえのために為す。〔おまえが〕喜びながら、わたしを食する、そのとおり、そのとおりに」〔と〕。

 

92. 〔食人鬼が言った〕「法(正義)に依って立ち、真理を説く、寛容なる者を、そのような者を、誰が、喰うに値するというのだろう。真理を説く、そのような者を、彼が食するなら、彼の頭もまた、七様に引き裂けるであろう」〔と〕。

 

93. 〔菩薩は言った〕「まさに、この〔事例〕がある。その兎は、〔帝釈天を〕婆羅門と思い考えながら、自らの肉体を食べさせた。夜叉よ、まさしく、その〔行為〕によって、その兎は奉賛され、月の天子となり、今日、欲するものを授かる者となる」〔と〕。

 

94. 〔食人鬼が言った〕「あたかも、ラーフ(阿修羅の一類で日蝕や月蝕を引き起こすとされる)の口から解き放たれた月が、まさしく、十五〔夜〕に光り輝き、太陽が〔光り輝く〕ように、このように、カピラ〔国〕の大いなる威力ある方よ、あなたは、食人鬼から解き放たれ、光り輝け──父を、さらに、母を、喜ばせながら。そして、あなたの親族の徒は、〔その〕全てが、喜ぶのだ」〔と〕。

 

95. 〔世尊は言った〕「そののち、まさに、〔道心〕堅固なる王子は、食人鬼〔の心〕を探知して、合掌を為したのだった。アリーナサッタは許され、〔無事〕安穏に、安楽にして無病なるまま、カピラ〔国〕に帰還した。

 

96. 彼のもとへと、町の者たちは、そして、全ての地方の者たちも、象兵たちも、車兵たちも、さらに、歩兵たちも、合掌の者たちとなり、礼拝しながら、近しく赴いた。〔彼らは言った〕『あなたに、礼拝が存せ。為し難きを為す者として、〔あなたは〕存しています』」〔と〕。ということで──

 

 ジャヤッディサ・ジャータカが、第三となる。

 

16. 1. 4. チャッダンタ・ジャータカ(六つの牙・本生物語514)

 

97. 〔王が尋ねた〕「麗しき肢体ある方よ、いったい、どうして、憂い悲しむのか。優れた色艶ある方よ、〔あなたは〕存している──青ざめた者として。大きな眼をした方よ、〔あなたは〕萎れている──圧し潰された花飾のように」〔と〕。

 

98. 〔王妃が答えた〕「大王よ、わたしに、〔妊婦の〕異常嗜好があります。夢の中で近しく到達したのです。それは、まさしく、得易き形態のものではありません。そのようなものとして、わたしに、〔妊婦の〕異常嗜好があります」〔と〕。

 

99. 〔王が言った〕「それらが何であれ、人間の欲望〔の対象〕は、ここに、喜びの世において、それらの一切が、多岐にわたり、わたしのものとしてある。わたしは、おまえに、〔妊婦の〕異常嗜好を与えよう(おまえの願いを叶えよう)」〔と〕。

 

100. 〔王妃が言った〕「陛下よ、猟師たちを集結させるのです。彼らが誰であれ、あなたの領土にいるなら、これらの者たちに、わたしは告げ知せるでありましょう。そのようなものとして、わたしに、〔妊婦の〕異常嗜好があります」〔と〕。

 

101. 〔王が言った〕「王妃よ、これらの猟師たちは、彼らは、鍛え上げられた熟達者たちである。そして、林を知る者たちであり、かつまた、鹿を知る者たちであり、さらに、わたしの義(利益)にたいし自己の生命ある者たちである(わたしのために命を捨てる者たちである)」〔と〕。

 

102. 〔王妃が言った〕「猟師の子たちよ、こころして聞きなさい──ここにおいて集いあつまった、そのかぎりの者たちは。六つの牙ある白い象を、わたしは、夢に見た。彼の〔六つの〕牙に、わたしの義(目的)はある。得ることなくあるなら、生命は存在しない」〔と〕。

 

103. 〔猟師たちが尋ねた〕「六つの牙ある象が見られ聞かれたことは、わたしたちの、父たちにもなく、祖父たちにもありません。その〔象〕を、王女様が夢に見たのでしたら、『そのようなものとして、巨象はある』〔と〕、わたしたちに告げ知らせてください。

 

104. 四方(東西南北)に、四維(北西・南西・南東・北東の四隅)に、上に、下に──これらの十の方角で、どの方角に、象の王は止住しているのですか。その〔象〕を、夢に見たのでしたら、六つの牙ある〔象〕のことを、〔わたしたちに告げ知らせてください〕」〔と〕。

 

105. 〔王妃が答えた〕「ここから真っすぐ、北の方角に、高大なる七つの山を超え行って、〔まさに〕その、スヴァンナパッサという名の、巨大なる山がある。美しく花ひらき、妖精たちが歩み行くところである。

 

106. 妖精たちが居所とする巌に登って、山の麓の根元を眺めなさい。そこで、雲に等しき色艶をした、八千の足ある(※)ニグローダ〔樹〕の王を見る。

 

※ テキストには atha sahassapādaṃ とあるが、PTS版により aṭṭhasahassapādaṃ と読む。

 

107. そこにおいて、六つの牙ある象は暮らす──他の者たちには打ち負かし難き、純白の〔象〕は。その〔象〕を、八千の象たちが守る──轅の牙ある、風の速さの打撃ある〔象〕たちが。

 

108. 彼らは、騒がしく息をしながら、〔そこに〕止住し、風の揺らぎにさえも怒り狂う。また、そこにおいて、人間たる生類を見ては灰と為し、彼の塵でさえも存さない」〔と〕。

 

109. 〔或る猟師が言った〕「王妃よ、まさに、多くの、これらの黄金の飾りものが、王の家には存します──さらに、諸々の真珠や諸々の宝珠や諸々の瑠璃で作られているものが。牙の飾りもので、何を為すのですか──六つの牙ある象を殺すことを欲する〔あなた〕は。それとも、猟師の子たちを殺したいのですか」〔と〕。

 

110. 〔王妃が言った〕「猟師よ、〔まさに〕その〔わたし〕は、嫉妬する者として、さらに、苦しみの者として、〔世に〕存している。かつまた、加えて、〔その象のことを〕随念しながら、〔わたしは、身が〕干上がる。猟師よ、この義(利益)を、わたしのために為せ。五つの優れた村を、おまえに与えよう」〔と〕。

 

111. 〔猟師が尋ねた〕「どこにおいて、〔その象は〕暮らすのですか。どこにおいて、拠点があり、近しく至るのですか。どのようなものが、沐浴に赴いたその〔象〕の道と成るのですか。まさに、どのように、その象の王は沐浴するのですか。どのように、〔わたしどもは〕象の赴く所を知るのですか」〔と〕。

 

112. 〔王妃が答えた〕「まさしく、そこにおいて、遠からざるところに、その蓮池はある。喜ばしく、そして、善き水場があり、さらに、多くの水があり、〔蓮の花が〕等しく花ひらき、蜜蜂たちの群れが渡り行くところである。まさに、ここにおいて、その象の王は沐浴する。

 

113. 頭を沐浴し、青蓮の花飾を荷とし、純白にして、白蓮のような皮膚と肢体ある〔象〕は、歓喜しながら、自らの家に赴く──王妃のサッババッダーを前にして」〔と〕。

 

114. 〔世尊は言った〕「まさしく、そこにおいて、彼は、〔王妃の〕言葉を収め取って、そして、矢筒を取って、さらに、弓を〔取って〕、猟師は、高大なる七つの山を超え渡る──スヴァンナパッサという名の、巨大なる山へと。

 

115. 妖精たちが居所とする巌に登って、山の麓の根元を眺めた。そこにおいて、雲に等しき色艶をした、八千の足あるニグローダ〔樹〕の王を見た。

 

116. そこにおいて、六つの牙ある象を見た──他の者たちには打ち負かし難き、純白の〔象〕を。その〔象〕を、八千の象たちが守る──轅の牙ある、風の速さの打撃ある〔象〕たちが。

 

117. そこにおいて、遠からざるところに、その蓮池を見た。喜ばしく、そして、善き水場があり、さらに、多くの水があり、〔蓮の花が〕等しく花ひらき、蜜蜂たちの群れが渡り行くところである。まさに、そこにおいて、その象の王は沐浴する。

 

118. 象の赴く所を〔見て〕、さらに、立つ所を見て、すなわち、沐浴に赴いたその〔象〕の道と成るところに、聖ならざる形質の者は、落とし穴をこしらえた──〔王妃の〕心の支配に従い行き従事する者となり。

 

119. 穴を掘って、諸々の延べ板で覆った。自己を定めて、さらに、弓を〔構えて〕、猟師は、脇にやってきた象を、太い矢で射抜いた──為し難き行為を為す者となり。

 

120. そして、〔矢に〕貫かれた象は、おぞましき雄叫びをあげた。さらに、全ての象たちも、おぞましき形態〔の雄叫び〕をあげた。そして、草を、さらに、木辺を、塵芥と為しながら、彼らは、遍きにわたり、八方を、〔敵を探しに〕走った。

 

121. 〔象の王は〕『この者を打つのだ』と執しつつ、聖賢たちの旗である黄褐色〔の衣〕を見た(袈裟をつけた猟師を見た)。苦しみ〔の思い〕に襲われた〔象の王〕に、表象が生起した。『阿羅漢の旗は、正しくある者たちによって打つべき形態のものにあらず』(袈裟をつけた者は打てない)」〔と〕。

 

122. 〔菩薩は言った〕「すなわち、無濁ならざる者が、黄褐色の衣をまとうとして、調御と真理から離れた者は、彼は、黄褐色〔の衣〕に値しない。

 

123. しかしながら、すなわち、汚濁を吐き捨てた者として〔世に〕存し、諸戒において〔心が〕善く定められたなら、調御と真理を具した者は、彼は、まさに、黄褐色〔の衣〕に値する」〔と〕。

 

124. 〔世尊は言った〕「太い矢に射抜かれた象は、汚れなき心で、猟師に語りかけた」〔と〕。〔菩薩は尋ねた〕「友よ、これは、何を義(目的)としてのことですか。あるいは、何を因として、わたしを打ったのですか。あるいは、これは、何を目的としてのことですか」〔と〕。

 

125. 〔猟師が答えた〕「幸いなる者よ、カーシ〔国〕の王の王妃が、王家において供養されるスバッダーが、彼女が、おまえを、〔夢に〕見た。そして、彼女は、わたしに指示した。そして、わたしに、『〔六つの〕牙を義(目的)とする』と言ったのだ」〔と〕。

 

126. 〔菩薩は言った〕「まさに、わたしには、巨大にして組なる牙が多くある。それらは、わたしの、そして、父たちにあり、祖父たちにある。忿激する王女は、彼女は、〔このことを〕知る。〔わたしを〕打つことを義(目的)として、愚者は、怨みを抱いたのだ。

 

127. 猟師よ、立ち上がれ。あなたは、鋸を掴んで、〔わたしが〕死ぬ前に、これらの牙を断ち切れ。忿激する王女に、彼女に、説くがよい。『象を殺しました。さあ、これらが、彼の牙です』」〔と〕。

 

128. 〔世尊は言った〕「立ち上がって、その猟師は、鋸を掴んで、最上の象の諸々の牙を断ち切って、麗しく美しく比類なき〔それらの牙〕を、地の主から取って、まさに、そののち、すみやかに立ち去った。

 

129. 恐怖に苦悩し、象が打たれたことで苦悩する、すなわち、八方に〔敵を探しに〕走った、それらの象たちは、象に仇なす男を見ずして、その象の王がいるところに帰還した。

 

130. そこにおいて、それらの象たちは、泣き叫んで、泣き悲しんで、自らの頭に砂を振りまいて、彼らの全てが、自らの家に赴いた──王妃のサッババッダーを先頭にして。

 

131. 諸々の黄金の輝きをもって遍きにわたり照り輝く、最上の象の諸々の牙を、麗しく美しく比類なき〔それらの牙〕を、地の主から取って、その猟師は、カーシ〔国〕の都へと近しく赴いた。彼は、王女に、〔それらの〕牙を差し出した。『象を殺しました。さあ、これらが、彼の牙です』〔と〕。

 

132. 過去の生における愛しき夫である最上の象の諸々の牙を見て、まさしく、そこにおいて、彼女の心臓は張り裂けた。まさしく、それによって、彼女は、愚者は、命を終えたのだった」〔と〕。

 

133. 〔補足の詩偈に言う〕「正覚に至り得た偉大なる威力ある方(ブッダ)は、彼は、衆の中で、笑みを為した。心が善く解脱した者たちは、比丘たちは、〔世尊に〕尋ねた。〔比丘たちが言った〕『覚者たちは、動機なくして〔笑みを〕浮かべることはありません』〔と〕。

 

134. 〔世尊は言った〕『すなわち、黄褐色の衣をまとい、家なき者となり、〔世を〕歩む、年少の少女を見たが、彼女は、まさに、そのとき、王女として〔世に〕有った。わたしは、そのとき、象の王として〔世に〕有った。

 

135. 最上の象の諸々の牙を、麗しく美しく比類なき〔それらの牙〕を、地の主から取って、その猟師は、カーシ〔国〕の都へと近しく赴いたが、デーヴァダッタは、まさに、そのとき、その〔猟師〕として〔世に〕有った』〔と〕。

 

136. 没することなく長夜にわたり輪廻した、過去のこの高下の所行を、懊悩を離れ憂いを離れ矢を抜いた方は、覚者は、自ら証知して語った。

 

137. 〔世尊は言った〕『比丘たちよ、まさに、その時にあって、そこにおいて、わたしは〔世に〕有った。そのとき、〔わたしは〕象の王として〔世に〕有る。このように、ジャータカを保持しなさい』」〔と〕。ということで──

 

 チャッダンタ・ジャータカが、第四となる。

 

16. 1. 5. サンバヴァ・ジャータカ(サンバヴァ・本生物語515)

 

138. 〔王が尋ねた〕「スチーラタよ、そして、〔わたしたちは〕君主たる王権〔の道〕を行く者たちとして〔世に〕存している。〔わたしは〕大いなるものに至り得ることを求める──〔すなわち〕この地を征圧することを。

 

139. 〔すなわち〕法(正義)〔の道〕によって〔征圧することを、わたしは求める〕──法(正義)ならざる〔道〕によって、ではなく。法(正義)ならざる〔道〕は、わたしにとって好ましからず。スチーラタよ、法(正義)〔の道〕を歩むことは、王にとって、まさしく、義務として有る。

 

140. それによって、まさしく、そして、この〔世において〕、非難されることなくあり、それによって、死してのち、非難されることなくあり、婆羅門よ、それによって、天〔の神々〕と人間たちにおいて、〔わたしたちは〕福徳に至り得るのだ。

 

141. 婆羅門よ、すなわち、わたしが、そして、義(道理)を、さらに、法(正義)を、為すことを求めるなら、婆羅門よ、あなたは、それを、そして、義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔問いを〕尋ねられた者として、〔わたしに〕告げ知らせよ」〔と〕。

 

142. 〔スチーラタが答えた〕「王よ、ヴィドゥラより他は、これを告げ知らせるに値せず。士族よ、あなたが、それを、そして、義(道理)を、さらに、法(正義)を、為すことを求めるなら」〔と〕。

 

143. 〔王が言った〕「さあ、まさに、〔王に〕派遣された者として、ヴィドゥラの近前に赴け。スチーラタよ、そして、この金の首飾を持参し、〔彼のもとに〕赴け。これを持参し、〔彼に〕施すのだ──義(道理)と法(正義)の教示のために」〔と〕。

 

144. 〔世尊は言った〕「彼は、バーラドヴァージャ(スチーラタ)は、ヴィドゥラの近前に向かった。大いなる梵(婆羅門)は、自らの家で食事をしている彼を見た」〔と〕。

 

145. 〔スチーラタが尋ねた〕「わたしは、〔王に〕派遣された者であり、クルの子孫にして盛名ある王の使者である。『義(道理)を、さらに、法(正義)を、尋ねるのだ』〔と〕、かくのごとく、ユディッティラ(王)は説いた。ヴィドゥラよ、あなたは、それを、そして、義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔問いを〕尋ねられた者として、〔わたしに〕告げ知らせよ」〔と〕。

 

146. 〔ヴィドゥラが答えた〕「婆羅門よ、わたしのために、〔人々が〕ガンガー〔川〕を塞き止めるとして、〔わたしは〕その大いなるシンドゥ〔川〕に蓋をすることはできない。それで、どうして、〔返答するための〕その〔余裕〕が有るというのだろう。

 

147. 義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔問いを〕尋ねられた者として、あなたに告げ知らせることはできない。しかしながら、わたしの実の子にして、わたしの正嫡である、バドラカーラがいる。婆羅門よ、あなたは、それを、そして、義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔彼のもとに〕赴いて、尋ねたまえ」〔と〕。

 

148. 〔世尊は言った〕「彼は、バーラドヴァージャは、バドラカーラの近前に向かった。大いなる梵は、自らの家で坐っている彼を見た」〔と〕。

 

149. 〔スチーラタが尋ねた〕「わたしは、〔王に〕派遣された者であり、クルの子孫にして盛名ある王の使者である。『義(道理)を、さらに、法(正義)を、尋ねるのだ』〔と〕、かくのごとく、ユディッティラは説いた。バドラカーラよ、あなたは、それを、そして、義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔問いを〕尋ねられた者として、〔わたしに〕説きなさい」〔と〕。

 

150. 〔バドラカーラが答えた〕「天秤棒の肉を捨棄して、大蜥蜴に従い行く、わたしです。義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔問いを〕尋ねられた者として、あなたに告げ知らせることはできません。

 

151. スチーラタよ、サンチャヤという名の、わたしの兄弟がいます。わたしの弟です。婆羅門よ、あなたは、それを、そして、義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔彼のもとに〕赴いて、尋ねたまえ」〔と〕。

 

152. 〔世尊は言った〕「彼は、バーラドヴァージャは、サンチャヤの近前に向かった。大いなる梵は、自らの家で坐っている彼を見た」〔と〕。

 

153. 〔スチーラタが尋ねた〕「わたしは、〔王に〕派遣された者であり、クルの子孫にして盛名ある王の使者である。『義(道理)を、さらに、法(正義)を、尋ねるのだ』〔と〕、かくのごとく、ユディッティラは説いた。サンチャヤよ、あなたは、それを、そして、義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔問いを〕尋ねられた者として、〔わたしに〕告げ知らせよ」〔と〕。

 

154. 〔サンチャヤが答えた〕「スチーラタよ、夕に、朝に、常に、死魔は、わたしを飲み込むのです。義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔問いを〕尋ねられた者として、あなたに告げ知らせることはできません。

 

155. スチーラタよ、サンバヴァという名の、わたしの兄弟がいます。わたしの弟です。婆羅門よ、あなたは、それを、そして、義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔彼のもとに〕赴いて、尋ねたまえ」〔と〕。

 

156. 〔スチーラタが言った〕「君よ、未曾有なるは、まさに、法(正義)である。これは、わたしたちにとって好ましからず。父と子の三人が、彼ら〔の全て〕が、まさに(※)、智慧において知者ならず。

 

※ テキストには tesu とあるが、PTS版により te su と読む。

 

157. 義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔問いを〕尋ねられた者たちとして、それを、〔わたしに〕告げ知らせることができない。いったい、どうして、義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔問いを〕尋ねられた者として、年少の者(サンバヴァ)が知るというのだろう」〔と〕。

 

158. 〔サンチャヤが言った〕「サンバヴァ(菩薩)に尋ねずして、彼を、『年少である』と、見下してはいけません。婆羅門よ、サンバヴァに尋ねて〔そののち〕、義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔あなたは〕知るでしょう。

 

159. たとえば、また、無垢なる月が、虚空の界域を赴きつつ、世における一切の星の群れに、光によって輝きまさるように──

 

160. このように、また、サンバヴァは、年少なるも、智慧との結合を具した者です。サンバヴァに尋ねずして、彼を、『年少である』と、見下してはいけません。婆羅門よ、サンバヴァに尋ねて〔そののち〕、義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔あなたは〕知るでしょう。

 

161. たとえば、また、婆羅門よ、諸々の夏〔の月〕にも喜ばしき月が有り、木々や花々によって、他の月よりも、あまりに極めて美しく輝くように──

 

162. このように、また、サンバヴァは、年少なるも、智慧との結合を具した者です。サンバヴァに尋ねずして、彼を、『年少である』と、見下してはいけません。婆羅門よ、サンバヴァに尋ねて〔そののち〕、義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔あなたは〕知るでしょう。

 

163. たとえば、また、梵(婆羅門)よ、雪あるガンダマーダナ山が、種々なる木々に等しく覆われ、大いなる精霊たちの群れが集まる所であり、かつまた、諸々の天の薬草によって、方々に輝き、かつまた、香りただようように──

 

164. このように、また、サンバヴァは、年少なるも、智慧との結合を具した者です。サンバヴァに尋ねずして、彼を、『年少である』と、見下してはいけません。婆羅門よ、サンバヴァに尋ねて〔そののち〕、義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔あなたは〕知るでしょう。

 

165. たとえば、また、梵よ、炎を花飾とし光輝ある火が、燃え盛りながら林を赴くも、十分ならずに、〔一切を〕黒き焼け跡とし──

 

166. 酪を食とし、煙を幟とし、最上の密林を焼き、大火となり、深夜、山頂において光り輝くように──

 

167. このように、また、サンバヴァは、年少なるも、智慧との結合を具した者です。サンバヴァに尋ねずして、彼を、『年少である』と、見下してはいけません。婆羅門よ、サンバヴァに尋ねて〔そののち〕、義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔あなたは〕知るでしょう。

 

168. 〔人々は〕速さによって賢馬を知り、さらに、運ぶものがあって荷牛を〔知り〕、乳によって乳牛を〔知り〕、そして、〔正しく〕語っている者を、賢者と〔知るように〕──

 

169. このように、また、サンバヴァは、年少なるも、智慧との結合を具した者です。サンバヴァに尋ねずして、彼を、『年少である』と、見下してはいけません。婆羅門よ、サンバヴァに尋ねて〔そののち〕、義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔あなたは〕知るでしょう」〔と〕。

 

170. 〔世尊は言った〕「彼は、バーラドヴァージャは、サンバヴァの近前に向かった。大いなる梵は、家の外で遊んでいる彼を見た」〔と〕。

 

171. 〔スチーラタが尋ねた〕「わたしは、〔王に〕派遣された者であり、クルの子孫にして盛名ある王の使者である。『義(道理)を、さらに、法(正義)を、尋ねるのだ』〔と〕、かくのごとく、ユディッティラは説いた。サンバヴァよ、あなたは、それを、そして、義(道理)を、さらに、法(正義)を、〔問いを〕尋ねられた者として、〔わたしに〕告げ知らせよ」〔と〕。

 

172. 〔菩薩は答えた〕「それでは、わたしは、あなたに告げ知らせましょう。たとえば、また、智者が〔告げ知らせる〕ように、そのように。そして、王は、まさに、それを知ります。もしくは、あるいは、為すことになるも、あるいは、さにあらずとも。

 

173. スチーラタよ、王に〔問いを〕尋ねられたなら、『今日、明日に』と指示するべきです。義(事態)が生じたとき、ユディッティラ王は、〔何も〕為さずして、〔無為に〕住してはなりません。

 

174. スチーラタよ、王に〔問いを〕尋ねられたなら、『まさしく、内に』と指示するべきです。すなわち、迷乱した、心なき者のように、邪道に入るべきではありません。

 

175. 自己を超え行くべきではありません。法(正義)ならざることを励行するべきではありません。渡し場ならざるところを超え渡るべきではありません。義(道理)なきことに専念する者として存するべきではありません。

 

176. そして、彼が、士族として、これらの境位を為すことを知るなら、その王は、常に繁栄するでしょう。白分(月が満ちる期間)における月のように。

 

177. そして、親族たちにとって、愛しき者と成り、さらに、朋友たちのなかで遍照します。彼は、智慧を有する者として、身体の破壊ののち、天上に再生します」〔と〕。ということで──

 

 サンバヴァ・ジャータカが、第五となる。

 

16. 1. 6. マハーカピ・ジャータカ(大なる猿・本生物語516)

 

178. 〔世尊は言った〕「バーラーナシーに、王が有った──カーシ〔国〕の国土を繁栄させる〔王〕が。朋友と家臣たちに取り囲まれた〔王〕は、ミガージナ〔の林園〕に赴いた。

 

179. そこにおいて、婆羅門を見た──〔肌の〕所々が白く、疱瘡があり、〔傷口が〕黒檀〔の花〕のように砕破し、痩せ細り、〔浮き出た〕血管が〔身体中に〕広がった〔婆羅門〕を。

 

180. 最高の悲しみに至り得た者を、苦難に陥った人を、見て〔そののち〕、驚き恐れた王は言った」〔と〕。〔王が尋ねた〕「夜叉たちのなかの、いったい、どのような者として、〔おまえは〕存しているのだ。

 

181. さてまた、おまえの手足は白く、頭は、それよりも、より白くある。おまえの五体は雑色で、そして、疱瘡多き者(癩病者)として、〔おまえは〕存している。

 

182. おまえの背は、環の列に似た凹凸がある。おまえの肢体は、黒い節だらけだ。このような者を、〔わたしは〕他に見ない。

 

183. 足は傷つき、恐れおののき、痩せ細り、〔浮き出た〕血管が〔身体中に〕広がり、飢え、熱苦の形態ある者として、〔おまえは〕存している。どこから〔やってきて、ここに〕存しているのだ。どこに、〔おまえは〕赴くのだ。

 

184. 見てくれ悪く、不具にして、醜き色艶で、恐ろしき見た目ある者として、〔おまえは〕存している。すなわち、おまえの生みの母でさえも、おまえを見ることを求めないであろう。

 

185. 過去において、どのような行為を為したのだ。どのような侵すべからざる者を殺害したのだ。すなわち、〔おまえは〕罪障を作り為して、ここ(現世)に、苦しみに近しく赴いたのだ」〔と〕。

 

186. 〔婆羅門が答えた〕「それでは、わたしは、あなたに告げ知らせましょう。たとえば、また、智者が〔告げ知らせる〕ように、そのように。なぜなら、世において、真理を説く者を、賢者たちは、ここに、賞賛するからです。

 

187. 〔わたしは〕牛を探し、独り、歩みながら、〔道に〕迷い、林のなかを流浪しました──種々なる象が慣れ親しむ、林地や荒地や荒野のなかを。

 

188. 猛々しい獣たちが歩み行く森のなか、遭難者として、〔わたしは〕存します。そこにおいて、飢えと渇きに引き渡された〔わたし〕は、七日のあいだ歩みました。

 

189. そこにおいて、毒物すらも食べたい〔わたし〕は、ティンドゥカ〔樹〕を見ました──落ちた〔果〕もあれば垂れ下がっている〔果〕もある〔ティンドゥカ樹〕を、実った果を保ち持つ〔ティンドゥカ樹〕を。

 

190. 諸々の風に依るもの(風が落とした果実)を、〔まずは〕食物としました。それらは、わたしにとって、とても好ましくありました。〔わたしは〕満足せず、木に登りました。『そこにおいて、満腹の者と成るのだ』〔と〕。

 

191. 一つが、わたしの食するところとして存しました。第二のものが、望み求めるところとなりました。そののち、その枝が折れました──斧によって切断されたかのように。

 

192. 〔まさに〕その、わたしは、まさしく、諸々の枝と共に、足を上に、頭を下に、依って立つところなく、支えるところなき、山の難所に落ちました。

 

193. そして、すなわち、水が深いことから、それゆえに、大事に至りませんでした。そこにおいて、欠くことなく十夜のあいだ、喜びなく、〔わたしは〕臥しました。

 

194. そこで、ここにおいて、猿(菩薩)が、わたしのところにやってきました──牛の尾をした、洞窟を行場とする〔猿〕が──まさに、枝から枝へ渡り歩きながら、木の果を喰っている〔猿〕が。

 

195. 彼は、痩せ細り青ざめたわたしを見て、わたしにたいし、同情を為しました。『おやまあ、誰なのですか、まさに、ここにおいて、このように、苦しみに苦悩している、その方は。

 

196. 人間なのですか、あるいは、人間ならざる者なのですか。わたしに、自己のことを知らせてください』〔と〕。彼に、合掌を手向けて、〔わたしは〕この言葉を説きました。

 

197. 〔すなわち〕『わたしは、人間です。災厄に至り得た者です。ここから赴く所が、それが、わたしには存在しません。あなたさまに、そのことを説きます。あなたさまに、幸せ〔有れ〕。そして、あなたは、わたしの帰依所と成ってください』〔と〕。

 

198. 猿は、〔体力をつけるために〕重い岩を抱えて、山を渡り歩きました。岩で訓練を為して、雄牛たる者(猿)は、この〔言葉〕を言いました。

 

199. 〔すなわち〕『さあ、わたしの背に登って、〔両の〕腕で首を掴みなさい。わたしは、あなたを、山の難所から、勢いよく引き上げましょう』〔と〕。

 

200. 猿のインダにして吉祥なる者の、彼の、その言葉を聞いて、慧者の背に登って、〔両の〕腕で首を掴みました。

 

201. 威光と活力ある猿は、彼は、わたしを、その〔難所〕から引き起こしました──苦難によって打ちのめされながらも、山の難所から、勢いよく。

 

202. わたしを引き上げて疲労し、雄牛たる者は、この〔言葉〕を言いました。〔すなわち〕『友よ、さあ、わたしを守りたまえ。しばらくのあいだ、〔わたしは〕眠ります。

 

203. 獅子たちが、そして、虎たちが、さらに、豹たちが、熊や狼や鬣狗(ハイエナ)たちが、彼らが、〔注意を〕怠っているわたしを害するでしょう。あなたは、彼らを見て、阻止してください』〔と〕。

 

204. このように、わたしに救護させて、しばらくのあいだ、彼は眠りました。そのとき、わたしは、悪しき見解を理ならずに得ました(悪心を抱いた)。

 

205. 〔すなわち〕『さてまた、すなわち、他の、林にいる獣たちのように、この〔猿〕も、人間たちの食物である。それなら、さあ、飢えた〔わたし〕は、この猿を打ち殺して、喰ったらどうであろう。

 

206. そして、〔糧食の〕依所なき〔わたし〕は、肉を糧食として取って、赴くであろう。〔わたしは〕砂漠を超え出るであろう。〔肉は〕わたしの〔旅の〕路銀と成るであろう』〔と〕。

 

207. そののち、岩を掴んで、〔猿の〕頭を打ち据えました。わたしの五体が疲弊していたので、〔その〕打撃は、力弱きものと成りました。

 

208. そして、血にまみれた猿は、彼は、勢いよく飛び上がり、涙に満ちた〔両の〕眼で、泣きながら、わたしを見つめます。

 

209. 〔すなわち〕『尊貴なる者は、これを為してはならない。あなたに、幸せが〔有れ〕。しかしながら、あなたは、まさに、このような〔悪しき行為〕を為した。そして、まさに、あなたは、まさに、寿命長き者となり、他者たち〔の悪しき行為〕を防ぐに値する。

 

210. 人よ、ああ、まさに、まあ、それほどまでに為し難きことを為す者よ、このような平坦ならざる難所の深淵から、わたしによって引き上げられたのに。

 

211. 〔あなたは〕他の世から連れてこられた者であるかのように、わたしを裏切ることを思い考えた。その〔悪しき行為〕が、その悪しき法(性質)によって──悪しきが、悪しきによって──思うところとなったのだ。

 

212. 法(正義)ならざるものに依って立つ者よ、まさしく、まさに、あなたが、辛辣なる〔苦痛の〕感受に触れることがあってはならない。まさしく、まさに、その悪しき行為が、〔竹の〕果が竹〔自身〕を〔滅ぼす〕ように、あなたを打ち殺すことがあってはならない。

 

213. 悪しき法(性質)の者よ、自制なき者よ、あなたにたいする、わたしの信頼は〔もはや〕存在しない。来たれ、わたしの背後から、赴きたまえ──まさしく、間近において見られながら、〔道のあるところまで〕。

 

214. 猛獣たちの手から解き放たれた者として、〔あなたは〕存している。人間の足跡に至り得た者として、〔あなたは〕存している。法(正義)ならざるものに依って立つ者よ、これが、道である。それでは、赴きたまえ──安楽なるままに』〔と〕。

 

215. 山を歩む者(猿)は、この〔言葉〕を言って、湖で頭を洗って、諸々の涙を拭い取って、そののち、山に登ってゆきました。

 

216. 〔まさに〕その、わたしは、それによって、呪われた者として、〔種々なる〕苦悶に苦悩する者として、〔そこに〕存します。五体が焼かれている〔状態〕となり、水に至り得るために、〔湖に〕近しく赴きました。

 

217. 火で熱せられたかのように、湖は、血にまみれていました。わたしにとって、一切は、膿と血に似たものとして現われました。

 

218. およそ、諸々の水滴が、わたしの身体に降りかかった、そのかぎりにおいて、栃の実の半分に等しき諸々の腫物が(※)生じました。

 

※ テキストには gaṇḍa とあるが、PTS版により gaṇḍū と読む。

 

219. 〔諸々の腫物が〕破れ、わたしの骸(身体)から、諸々の膿と血が流れ出ました。まさしく、どこそこに赴くなら、村々において、さらに、町々において──

 

220. 女たちは、さらに、男たちは、棒を手に、わたしを阻止します。『腐臭を振りまく奴だ。けっして、こちらに来てはならない』〔と〕。

 

221. このようなものが、これが、今や、七年のあいだの、わたしの苦しみなのです。〔わたしは〕自らの行為〔の報い〕を受領します──過去における自己の悪行〔の報い〕を。

 

222. 〔わたしは〕それを、あなたたちに説きます。あなたに、幸せ〔有れ〕──ここにおいて集いあつまった、そのかぎりの者たちは。けっして、朋友たちを裏切ってはいけません。まさに、朋友を裏切る者は、悪しき者です。

 

223. すなわち、朋友たちを裏切るなら、この〔世において〕、癩病の者と〔成り〕、疱瘡の者と成ります。朋友を裏切る者は、彼は、身体の破壊ののち、地獄に再生します」〔と〕。ということで──

 

 マハーカピ・ジャータカが、第六となる。

 

16. 1. 7. ダカラッカサ・ジャータカ(水棲の羅刹・本生物語517)

 

224. 〔長老尼が尋ねた〕「それで、もし、水ある所において、まさに、七者〔の人間〕を運んでいる舟を、人間の供物を探し求める羅刹が捕捉するとして、どのように、〔七者の人間を〕順次に与えて、水棲の羅刹から解放されますか」〔と〕。

 

225. 〔王が答えた〕「最初に、母を与えるであろう。妻を与えて、弟を〔与えるであろう〕。そののち、道友を与えて、第五に、婆羅門を与えるであろう。第六に、わたしは、自己を与えるであろう。マホーサダ(菩薩)を与えるであろうことは、まさしく、ない」〔と〕。

 

226. 〔長老尼が尋ねた〕「あなたにとって、養育者であり、かつまた、生母であり、長夜に慈しみ〔の思い〕ある方です。チャッビーは、あなたにたいし怒るでしょう。賢者にして義(利益)を見る方は、他の者を替玉と為して、あなたを、殺戮から解き放ったのです。

 

227. 彼女を、そのような命の恩人を、わが子を胎に保持する者を、母を、どのような汚点によって、水棲の羅刹に与えるというのですか」〔と〕。

 

228. 〔王が答えた〕「〔装いを〕十分に作り為す少女のように、装飾品を〔身に〕付け、門番にたいし、親兵にたいし、限度を超えて高笑する。

 

229. さらに、また、敵の王たちに、自ら、諸々の使者を送る。母を、その汚点によって、わたしは、水棲の羅刹に与えるであろう」〔と〕。

 

230. 〔長老尼が尋ねた〕「婦女たちの群れのなかの最も優れた方であり、徹底して愛しき話し手たる方であり、〔夫に〕従い行く方であり、戒ある方であり、影のように離れない方です。

 

231. 忿激せず智慧ある方であり、賢者にして義(利益)を見る方です。妻を、どのような汚点によって、水棲の羅刹に与えるというのですか」〔と〕。

 

232. 〔王が答えた〕「遊興と歓楽に没頭している〔わたし〕に、義(利益)なきものの支配に至り着いたわたしに、彼女は、自らの子供たちのために、乞うべからざる財を乞い求める。

 

233. 〔まさに〕その、わたしは、貪染の者となり、多くの高下の財を与える。極めて捨て難きものを捨て去って、のちに、失意の者となり、〔わたしは〕憂い悲しむ。妻を、その汚点によって、わたしは、水棲の羅刹に与えるであろう」〔と〕。

 

234. 〔長老尼が尋ねた〕「〔まさに〕その方によって、諸々の地方のものが集められ、かつまた、納受者のもとへと導かれました。他の諸々の国土から、〔敵を〕凌駕して、多くの財が運び込まれました。

 

235. 弓の使い手たちのなかの最も優れた勇士を、鋭敏なる助言者を、弟を、どのような汚点によって、水棲の羅刹に与えるというのですか」〔と〕。

 

236. 〔王が答えた〕「『〔まさに〕その〔わたし〕によって、諸々の地方のものが集められ、かつまた、納受者のもとへと導かれた。他の諸々の国土から、〔敵を〕凌駕して、多くの財が運び込まれた。

 

237. 弓の使い手たちのなかの最も優れた勇士である。かつまた、鋭敏なる助言者である。わたしによって、この王は、安楽の者となる』〔と〕、若輩者は、〔わたしを〕軽んじる。

 

238. 貴婦よ、わたしへの奉仕もまた、彼は、かつてのようには来ない。弟を、その汚点によって、わたしは、水棲の羅刹に与えるであろう」〔と〕。

 

239. 〔長老尼が尋ねた〕「まさしく、そして、あなたは、さらに、ダヌセーカは、両者ともに、一なる夜に、ここにおいて生まれた、パンチャーラ〔国〕の者たちであり、両者ともに、道友たちであり、強き結び付きある者たちです。

 

240. 〔国土の〕巡行において、あなたに付き従った方であり、あなたと一なる苦楽ある方です。あなたのために昼夜に邁進する方であり、一切の義務に懸命なる方です。道友を、どのような汚点によって、水棲の羅刹に与えるというのですか」〔と〕。

 

241. 〔王が答えた〕「貴婦よ、〔国土の〕巡行において、わたしに〔付き従った〕、この者は、わたしを相手に高笑したのだ。今日もまた、それを理由に、限度を超えて高笑する。

 

242. 貴婦よ、また、わたしが、静所に赴き、妻と話し合っていると、前もって知らせずに、声もかけずに入ってくる。

 

243. 門戸を得ては、機会を作っては、恥知らずのことを〔為し〕、礼を欠くことを〔為す〕。道友を、その汚点によって、わたしは、水棲の羅刹に与えるであろう」〔と〕。

 

244. 〔長老尼が尋ねた〕「一切の形相に巧みな智ある方であり、鳴き声〔の吉凶〕を知る精通者であり、天変地異と夢を結び付ける方であり、さらに、〔星の位置と〕出発と入城〔の時〕を〔結び付ける方です〕。

 

245. 地上と空中についての権威者であり、星の位置についての熟知者です。婆羅門を、どのような汚点によって、水棲の羅刹に与えるというのですか」〔と〕。

 

246. 〔王が答えた〕「貴婦よ、衆のなかであろうが、〔まじまじと眼を〕開いて、わたしを凝視する。それゆえに、澄ました眉の残忍な者を、わたしは、水棲の羅刹に与えるであろう」〔と〕。

 

247. 〔長老尼が尋ねた〕「海を周囲として有する〔大地〕を、海洋を耳飾とする大地を、富を保持する〔大地〕を、家臣たちに取り囲まれ、〔あなたは〕占拠します。

 

248. 四辺に大いなる国土ある方であり、征圧者にして大いなる勢力ある方です。地における一なる王として、〔あなたは〕存しています。あなたの盛名は、広く行き及んでいます。

 

249. 宝珠の耳飾を付けた一万六千の、種々なる地方の女たちは、天女の如き美しさです。

 

250. このように、一切の支分が成就した〔生命〕を、一切の欲望が等しく実現する〔生命〕を、士族よ、安楽の者たちの長き生命を、愛しきものと、〔人々は〕言います。

 

251. そこで、あなたは、何を理由に、あるいは、また、何を因として、賢者(マホーサダ)を守りつつ、捨て難き命を捨て去るのですか」〔と〕。

 

252. 〔王が答えた〕「貴婦よ、すなわち、また、マホーサダ(菩薩)が、わたしの手に至り着いたのち、慧者の悪行を、〔わたしは〕微量でさえも証知しない。

 

253. そして、それで、もし、何であれ、時において、わたしに、死が、〔マホーサダの死よりも〕前に存するとして、マホーサダは、彼は、わたしの、子たちを、さらに、孫たちを、安楽にしてくれるであろう。

 

254. 未来を、現在を、一切の義(利益)でさえも、〔彼は〕見る。罪科なき生業ある者を、水棲の羅刹に与えることはない」〔と〕。

 

255. 〔長老尼が言った〕「パンチャーラ〔国〕の者たちよ、これを聞きなさい──チューラネイヤ〔王〕の語るところを。〔彼は〕賢者(マホーサダ)を守りつつ、捨て難き命を捨て去ります。

 

256. 母、妻、そして、弟、友人、そして、婆羅門の、さらに、また、自己の──〔これらの〕六者の生命を、パンチャーラ〔王〕は捨て去ります。

 

257. このように、智慧は、大いなる義(利益)あるもの、精緻にして善き思弁あるもの──所見の法(現法:現世)の利益と義(目的)のために、さらに、未来の安楽のために」〔と〕。ということで──

 

 ダカラッカサ・ジャータカが、第七となる。

 

16. 1. 8. パンダラナーガラージャ・ジャータカ(パンダラ龍王・本生物語518)

 

258. 〔菩薩に、パンダラカが言った〕「雑駁なる言葉の者に、秘密ならざる密談の者に、自制なき者に、遍き目配りなき者に、覚ることなき者に、彼に、自ら、恐怖は従い行く──あたかも、金翅鳥(菩薩)が、龍のパンダラカ(自分)を〔捕捉した〕ように。

 

259. すなわち、迷妄の人が、遍く守るべき秘密の密談を笑いながら伝えるなら、彼に、密談が露呈した者に、すみやかに、恐怖は従い行く──あたかも、金翅鳥が、龍のパンダラカを〔捕捉した〕ように。

 

260. 単なる朋友は、重き義(意味)の秘密を知らせるに値しない。そして、仲良き朋友も、義(利益)なき者は、〔いまだ〕等しく覚られていないことを〔知らせるに値せず〕、あるいは、〔すでに〕等しく覚られていることを〔知らせるに値しない〕。

 

261. わたしは、無衣行者に信頼を起こした。『この者は、沙門である。〔他者に〕敬われている者であり、自己を修めた者である』〔と〕。わたしは、彼に、秘密の義(意味)を告げ、漏らした。義(道理)を超え行った〔わたし〕は、哀れに泣き叫ぶ。

 

262. 梵(菩薩)よ、わたしは、彼に、最高の秘密を、まさに、この言葉を、自制することができなかった。まさに、彼の側から、わたし〔の側〕へと、恐怖がやってきたのだ。義(道理)を超え行った〔わたし〕は、哀れに泣き叫ぶ。

 

263. その人が、まさに、〔相手のことを〕善き心の者と思い考えながら、秘密の義(意味)を、悪しき家系の者たちに伝えるなら、憤怒から、恐怖から、さらに、あるいは、貪欲〔の思い〕に染まったことから、その愚者は、疑念〔の余地〕なく、打ち伏すところとなる。

 

264. 罵詈雑言の者が、正しからざる者たちのなかに入り、彼が、諸々の出会いのなかで言葉を発するなら、その人のことを、〔人々は〕『毒蛇の悪しき口』と言う。そのような者からは、遠くの遠くにあり、自制するべきである。

 

265. 食べ物を、飲み物を、さらに、カーシ産の栴檀を、意に適う女たちを、花飾を、さらに、塗油を、一切の欲望〔の対象〕を捨棄して、〔わたしたちは〕赴きます──金翅鳥(菩薩)よ、まさしく、〔わたしたちが〕命を具した者たちとして存しているかぎり、あなたのもとへと(あなたに帰依する)」〔と〕。

 

266. 〔パンダラカに、菩薩は尋ねた〕「三者のなかの、いったい、誰が、ここに、非難へと近しく至るのか──龍の王よ、命ある生類として、ここに、この世において。沙門(無衣行者)なのか、金翅鳥(菩薩)なのか、さらに、あるいは、まさしく、おまえ(パンダラカ)なのか。何を契機として、パンダラカは捕捉されたのか」〔と〕。

 

267. 〔パンダラカが答えた〕「『沙門である』と、わたしによって、かくたるものと等しく思認され、〔彼は〕有りました──かつまた、わたしにとって、愛しき者であり、意によって自己を修めた者として。わたしは、彼に、秘密の義(意味)を告げ、漏らしました。義(道理)を超え行った〔わたし〕は、哀れに泣き叫びます」〔と〕。

 

268. 〔菩薩は言った〕「そして、不死なる有情は、地において存在しない。智慧には種類があり、非難されるべきものが存在しないこともない。真理によって、法(正義)によって、〔道心〕堅固によって、調御によって、人は、ここに、得られざるものを将来する。

 

269. 母と父は、眷属たちのなかの最高の者たちであり、彼にとって、第三の慈しみ〔の思い〕ある者は存在しない。彼らにさえも、最高の秘密を伝えるべきではない──密談の露呈を危惧しつつ。

 

270. 母と父も、姉妹たちも、さらに、兄弟たちも、あるいは、彼にとって同類たちとして〔世に〕有る、道友たちも──彼らにさえも、最高の秘密を伝えるべきではない──密談の露呈を危惧しつつ。

 

271. もし、妻が、〔その〕人に説くとして、〔その妻が〕年若く愛しき話し手であり、子供と形姿と福徳を具した者であり、親族たちの群れに尊ばれる者であるとして、彼女にさえも、最高の秘密を伝えるべきではない──密談の露呈を危惧しつつ。

 

272. 秘密の義(意味)を漏らすべきではない。あたかも、財宝を〔守る〕ように、それを守るべきである。覚知している者によって、秘密の義(意味)が明らかと為されたなら、まさに、〔それは〕善きにあらず。

 

273. 賢者は、女には、かつまた、朋友ならざる者には、秘密を伝えるべきではない──そして、その〔人〕が、財貨によって動揺する者であるなら──さらに、その人が、心臓(心)を惑わす者であるなら。

 

274. その人が、〔いまだ〕等しく覚られていない秘密の義(意味)を、〔他者に〕等しく覚らせるなら、密談の露呈の恐怖あることから、彼の奴隷と成り、忍受することになる。

 

275. およそ、人に、秘密の義(意味)があり、〔他者たちが〕密談ある者のことを知る、そのかぎりにおいて、彼には、怯えがある。それゆえに、秘密を捨て去るべきではない。

 

276. 昼は、遠離して、密事を語るべきである。夜は、限度を超えて、言葉を解き放つべきではない。なぜなら、近くに聞く者たちがいて、密談を聞いてしまうからである。それゆえに、密談は、すみやかに露呈へと近しく至る。

 

277. たとえば、また、大いなる城市が存するなら、門がなく鉄でできた立派な堂があり、遍きにわたり掘られた堀を具しているように、このように、また、わたしにとって、ここに、それらの秘密の密談はある。

 

278. 二つの舌ある者(龍)よ、すなわち、秘密の密談ある者たちが、雑駁ならざる言葉の者たちであり、諸々の自らの義(利益)に堅固なる人たちであるなら、朋友ならざる者たちは、彼らから、遠く去り行く──あるいは、毒蛇から、敵たちの群れから、〔離れ去る〕ように」〔と〕。

 

279. 〔パンダラカが尋ねた〕「家を捨棄して、出家した無衣行者が、裸で、剃髪し、食糧を因として、〔世を〕歩む。彼にたいし、今や、まさに、秘密の義(意味)を漏らしてしまった。そして、義(利益)から、さらに、法(正義)から、離れ去った者たちとして、〔わたしどもは〕存しています。

 

280. 金翅鳥の王よ、どのように為す者と成り、どのような戒ある者と〔成り〕、どのような掟によって行持しながら、沙門として〔世を〕歩みつつ、諸々のわがものと〔錯視〕されたもの(所有物)を捨棄して、どのように為す者が、天上の境位へと近しく至るのですか」〔と〕。

 

281. 〔菩薩は答えた〕「恥〔の思い〕と忍受と調御を具した者が、忿激する者ではなく、中傷〔の言葉〕を捨棄して、沙門として〔世を〕歩みつつ、諸々のわがものと〔錯視〕されたものを捨棄して、このように為す者が、天上の境位へと近しく至る」〔と〕。

 

282. 〔パンダラカが言った〕「母が、子を、幼き痩躯の者を、接触しながら全ての五体に抱きしめるように、鳥のインダよ、このように、また、あなたは、わたしに出現してくれました──母が、子を慈しんでいるかのように」〔と〕。

 

283. 〔菩薩は言った〕「二つの舌ある者よ、さあ、今日、おまえは、殺戮から解き放たれよ。まさに、三者の子がある。まさに、他は存在しない。内弟子であり、〔他から〕与えられた者であり、さらに、実子である。喜ぶのだ。〔おまえは〕わたしのいずれかの子と成った」〔と〕。

 

284. 〔世尊は言った〕「まさしく、かくのごとき言葉で、二生の者である金翅鳥は、地に立って、二つの舌ある者に答えた」〔と〕。〔菩薩は言った〕「今日、おまえは、一切の恐怖を超克し、解き放たれたのだ。水陸において、わたしに守られた者と成れ。

 

285. 病いある者たちにとっての巧みな智ある医師のように、渇きある者たちにとっての冷たい湖のように、冷たい雪に悩む者たちにとっての家のように、このように、また、わたしは、あなたにとっての帰依所と成ろう」〔と〕。

 

286. 〔パンダラカに、菩薩は尋ねた〕「胎生の者(パンダラカ)よ、卵生の者である朋友ならざる者(菩薩)と関係を為しておきながら、〔おまえは〕牙を顕わにして〔地に〕臥す(せっかく仲良くなったのに警戒を解かない)。どこから、おまえに、恐怖がやってきたのか」〔と〕。

 

287. 〔パンダラカが答えた〕「朋友ならざる者にたいしては、まさしく、疑うべきです。朋友にたいしてもまた、信頼するべきではありません。恐怖なきところから、恐怖が生起し、諸々の根をもまた折ります。

 

288. いったい、どうして、あなたにたいし、信頼するというのでしょう。〔まさに〕その〔あなた〕と、争いを為した者として、〔わたしは〕存したのです。準備あることで、〔心は〕安立できるのです。彼は、敵たちに染まりません。

 

289. 〔他者に〕信頼されるべきですが、かつまた、彼を信頼するべきではありません。〔他者に〕疑われない者として、かつまた、〔他者に〕疑いある者として、〔世に〕有るべきです。〔自己の〕状態を、他者が知ることにならない、そのように、そのように、そのとおり、そのとおりに、識者は勤しむべきです」〔と〕。

 

290. 〔世尊は言った〕「彼らは、天の色艶ある者たちであり、繊細なる形姿ある者たちであり、両者ともに等しく、善き勝利者たちであり、功徳の範疇ある者たちである。龍たちは、車両の馬たちのように合体の状態となり、カランピヤの無衣行者のもとへと近しく赴いた。

 

291. そののち、まさに、パンダラカは、無衣行者に、まさしく、自ら、近しく赴いて、この〔言葉〕を言った」〔と〕。〔パンダラカが言った〕「今日、わたしは、一切の恐怖を超克し、解き放たれたのだ。まさに、まちがいなく、おまえの意にとって、〔わたしたちは〕愛しき者たちとして存していない」〔と〕。

 

292. 〔無衣行者が言った〕「まさに、わたしにとって、金翅鳥の王は、愛しき者として存していた──疑念〔の余地〕なく、真に、パンダラカよりも。〔まさに〕その〔わたし〕は、まさしく、貪欲〔の思い〕に染まった者であり、悪しき行為と正知しつつ、この〔裏切りの行為〕を為した──迷妄からではなく」〔と〕。

 

293. 〔パンダラカが言った〕「この世を、さらに、他〔の世〕を、〔あるがままに〕正知している、わたしには、愛しき者も、あるいは、また、愛しからざる者も、有りません。自制なき〔あなた〕は、まさに、善き自制者たちの特徴によって〔偽装して〕、この世を歩みます。

 

294. 〔あなたは〕存しています──聖者の外見ある者として。〔あなたは〕存しています──まさしく、聖ならざる者として、自制なき者として、自制者に似た者として。〔あなたは〕存しています──黒き生まれの者として、聖ならざる形質の者として。悪しき〔行為の道〕を、多くの悪しき行ないを、〔あなたは〕歩みました。

 

295. あなたは、汚れなき者を裏切りました。〔あなたは〕存しています──そして、裏切り者として、さらに、中傷する者として。この真なる言葉によって、あなたの頭は、七様に裂けてしまえ」〔と〕。

 

296. 〔世尊は言った〕「まさに、それゆえに、朋友たちを裏切るべきではない。朋友を裏切る者よりも、より悪しき者は、他に存在しない。〔真なる言葉によって〕呪いをかけれた有情(無衣行者)は、地に打ち倒された(地獄に落ちた)。まさに、インダ(龍)の言葉によって、〔無衣行者の〕統御は打ち砕かれた」〔と〕。ということで──

 

 パンダラナーガラージャ・ジャータカが、第八となる。

 

16. 1. 9. サンブラー・ジャータカ(サンブラー・本生物語519)

 

297. 〔羅刹が尋ねた〕「誰なのですか、震えながら、山の峡谷にいるのは。あなたは、腿を合わせ、独り、立ちます。胴が手で量られる方(柳腰の女)よ、〔あなたは〕存しています──わたしに〔問いを〕尋ねられた者として。そして、名前を、さらに、眷属たちのことを、わたしに告げ知らせてください。

 

298. 獅子や虎が慣れ親しむ喜ばしき林を照らしながら、美しい方よ、あなたは、あるいは、どのような者として存しているのですか。美しいくびれた胴ある方よ、あなたは、あるいは、誰の〔子なのですか〕。幸いなる方よ、あなたを敬拝します。わたしは、魔人です。あなたに、礼拝が存せ」〔と〕。

 

299. 〔サンブラーが答えた〕「すなわち、カーシ〔国〕の王の子にして、彼のことを、〔人々は〕『ソッティセーナ』と知るのですが、わたしは、彼の妻、サンブラーです。魔人よ、このように知りたまえ。尊き方よ、あなたを敬拝します。わたしは、サンブラーです。あなたに、礼拝が存せ。

 

300. あなたに、幸せが〔存せ〕。ヴェーデーハ〔王〕の子は、病者となり、林に住します。病に罹患し、独りでいる彼に、わたしは、独り、奉仕します。

 

301. そして、わたしは、林のなかの獣の洞窟にある〔残り物の〕蜜や肉を回収して、それを、〔わたしが〕運び、それを、〔夫が〕食物とするのです。あろうことか、今日、彼の〔食物は〕足りません」〔と〕。

 

302. 〔羅刹が言った〕「サンブラーよ、世話される病者の王子と、林のなかで、何を為すというのでしょう。わたしが、あなたの夫に成りましょう」〔と〕。

 

303. 〔サンブラーが言った〕「憂いに苦悩する者に、悪しき自己ある者に、わたしに、どのような形姿が見出されるというのでしょう。あなたに、幸せが〔存せ〕。他の者を遍く探し求めたまえ──わたしよりも、より形姿麗しき者を」〔と〕。

 

304. 〔羅刹が言った〕「さあ、わたしの山に登って、わたしには四百の妻がいるが、あなたは、彼女たちのなかの最も優れた者として、一切の欲望が等しく実現する者と成りなさい。

 

305. 星の色艶と光輝ある方よ、まちがいなく、それが何であれ、〔あなたが〕意に求めるなら、その一切が、多岐にわたり、わたしのものとしてある。わたしと共に、今日、喜び楽しむのだ。

 

306. サンブラーよ、もし、あなたが、王妃の権を為さないなら、おまえは、朝食として十分である。早朝に、〔わたしの〕食物と成るであろう」〔と〕。

 

307. 〔世尊は言った〕「そして、残忍にして七つの結髪ある長牙の食人鬼は、彼女を、林のなかで頼りとなる者を見ずにいるサンブラーを、腕に掴んだ。

 

308. 残忍にして餌に眼ある魔物に囚われ、そして、賊の支配に至り得た彼女は、まさしく、亭主のことを憂い悲しむ」〔と〕。

 

309. 〔サンブラーが言った〕「すなわち、羅刹が、わたしを喰うとして、そのようなことは、これは、わたしにとって苦しみではありません。しかしながら、すなわち、わたしの主人の意が、他なるものに成るであろうなら、〔それこそは、わたしにとって苦しみなのです〕。

 

310. 天〔の神々〕たちは存在しないのですか。もはや、離れ住んでいるのですか。まさに、世の警護者たちは、もはや、ここに、存在しないのですか。無理やり為す自制なき者たちを、まさに、制止する者たちは、もはや、ここに、存在しないのですか」〔と〕。

 

311. 〔帝釈天が言った〕「この者は、女たちのなかの最も優れた者であり、福徳ある者である。寂静にして、平静で、火のように気高き威光ある者である。もし、羅刹のおまえが、その少女を食べるなら、そして、まさに、おまえの頭は、七様に裂けるであろう。おまえは、〔その女を〕拘留してはならない。亭主に掟ある者を解放せよ」〔と〕。

 

312. 〔世尊は言った〕「そして、彼女は、食人鬼から解き放たれ、庵所に帰還した──雛なき巣に〔戻った〕雌鳥のように、子牛が去った牛舎に〔戻った母牛の〕ように(そこに夫はいなかった)。

 

313. 福徳ある王女は、彼女は、そこにおいて、嘆き悲しんだ。サンブラーは、目頭を熱くし、林のなかで頼りとなる者を見ずにいる」〔と〕。

 

314. 〔サンブラーが言った〕「沙門たちを、婆羅門たちを、行ないを成就した聖賢たちを、〔わたしは〕敬拝します。王子を見ずにいる〔わたし〕は、まさに、あなたたちのもとに、帰依所として赴いたのです。

 

315. そして、獅子たちを、かつまた、虎たちを、さらに、すなわち、他の林のなかの獣たちを、〔わたしは〕敬拝します。王子を見ずにいる〔わたし〕は、まさに、あなたたちのもとに、帰依所として赴いたのです。

 

316. 草たちを、蔓たちを、薬草たちを、山たちを、さらに、林たちを、〔わたしは敬拝します〕。王子を見ずにいる〔わたし〕は、まさに、あなたたちのもとに、帰依所として赴いたのです。

 

317. 濃紺の青蓮にして、星宿を花飾とする夜を、〔わたしは〕敬拝します。王子を見ずにいる〔わたし〕は、まさに、あなたのもとに、帰依所として赴いたのです。

 

318. 諸々の流れを納受し、バーギーラタ〔王〕に由来するガンガー〔川〕を、〔わたしは〕敬拝します。王子を見ずにいる〔わたし〕は、まさに、あなたのもとに、帰依所として赴いたのです。

 

319. 山々の最勝の王たる、ヒマヴァント(ヒマラヤ)の連山を、わたしは敬拝します。王子を見ずにいる者であり、まさに、あなたのもとに、帰依所として赴いたのです」〔と〕。

 

320. 〔身を隠していた王子が現われ、サンブラーに尋ねた〕「福徳ある王女よ、夕方遅くに、まさに、〔あなたは〕帰ってきた。いったい、誰と、今日、出会っていたのだ。誰が、おまえにとって、わたしよりも、より愛しき者なのだ」〔と〕。

 

321. 〔サンブラーが答えた〕「その賊に捕捉された、まさに、わたしは、そのとき、この〔言葉〕を言いました。『すなわち、羅刹が、わたしを喰うとして、そのようなことは、これは、わたしにとって苦しみではありません。しかしながら、すなわち、わたしの主人の意が、他なるものに成るであろうなら、〔それこそは、わたしにとって苦しみなのです〕』」〔と〕。

 

322. 〔王子が言った〕「盗賊にして多くの思惑ある〔女〕たちには、彼女たちにあっては、真なるものは極めて得難きもの。婦女たちの情愛は、水のなかの魚の行方のように、了知し難きもの」〔と〕。

 

323. 〔サンブラーが言った〕「もし、わたしを、〔真なる言葉が〕守るであろうなら、そのように、真なるものは、わたしを守りたまえ。すなわち、わたしは、あなたよりも、より愛しき者を、他に証知しません。この真なる言葉によって、あなたの病は、止み静まりたまえ」〔と〕。

 

324. 〔王子の病が癒え、都に帰ったサンブラーに、王子の父である菩薩は尋ねた〕「すなわち、七百の秀逸なるクンジャラ〔象〕たちが、武器を装備した者たちが、夜に、昼に、〔あなたを〕守り、さらに、千六百の弓の使い手たちがいる。幸いなる者よ、どのような種類の敵たちを、〔あなたは〕見るのか」〔と〕。

 

325. 〔サンブラーが答えた〕「〔装いを〕十分に作り為し、最上の蓮華の皮膚をした、きらびやかで、白鳥の鳴き声ある者たちを、〔王子は〕見ます。彼女たちの均整な歌詠や音楽を聞いて、父(菩薩)よ、今や、わたしの〔王子は〕、かつてのように、そのようにありません。

 

326. 金の帯を〔身に〕付け、美形にして、〔装いを〕十分に作り為した、人間の仙女の如き者たちが、非難なき肢体の士族の少女たちが、父よ、臥所へと近しく至って、彼を誘惑します。

 

327. 父よ、それで、もし、わたしが、かつてのように、そのように、林のなかで、亭主たる彼を、残り物で養うなら、わたしを敬うでしょうし、さらに、わたしを軽蔑することもないでしょう。父よ、こののち、また、それより優れた〔方法〕が、わたしに存するでしょうか。

 

328. すなわち、広大なる食べ物と飲み物が備え置かれたなか、女として、艶やかな装飾品をつけ、〔装いを〕十分に作り為し、一切の支分を具すも、しかしながら、亭主にとって愛しからざる者であるなら、彼女にとって、それよりも優れているのは、〔首を〕縛られて死ぬことです。

 

329. また、もし、貧しく、困窮し、富裕ならず、筵を伴侶とするも、彼女が、そして、亭主にとって愛しき者であるなら、一切の支分を具した愛しからざる者よりもなお、この者こそは、より勝っているのです。たとえ、困窮していても、彼女が、〔亭主にとって〕愛しき者であるなら」〔と〕。

 

330. 〔王子に、菩薩は言った〕「極めて得難きものは、それは、男にとって益ある婦女である。そして、得難きものは、それは、婦女にとって益ある夫である。おまえにとって、妻は、かつまた、益ある者であり、かつまた、戒ある者である。人のインダ(王子)よ、サンブラーとともに、法(正義)〔の道〕を歩め」〔と〕。

 

331. 〔サンブラーに、王子が言った〕「それで、もし、あなたが、広大なる財物を得た者にたいする嫉妬〔の思い〕に沈み、死へと近しく至るなら、幸いなる方よ、そして、あなたのために、わたしは、これらの王女たちも、全ての者たちが、あなたの言葉を為す者たちと成ります」〔と〕。ということで──

 

 サンブラー・ジャータカが、第九となる。

 

16. 1. 10. ガンダティンドゥカ・ジャータカ(ガンダティンドゥカ・本生物語520)

 

332. 〔菩薩は言った〕「〔気づきを〕怠らないこと(不放逸)は、不死の境処である。怠ること(放逸)は、死魔の境処である。〔気づきを〕怠らない者たちは、死ぬことがない(常に目覚めている)。〔気づきを〕怠る者たちは、彼らは、死んだままである。

 

333. 〔心の〕驕りから、怠ることが生まれる。怠ることから、滅尽が生まれる。滅尽から、諸々の〔心の〕汚点(憎悪や悪意)が生まれる。怠ることがあってはならない。雄牛(王)よ、修養せよ。

 

334. まさに、多くの士族たちは、怠りある者たちとなり、義(利益)と国土を失い、さらに、また、村の者たちは、去り行く者たちとなり、家ある者たちは、家なき者たちとなる。

 

335. 国土を繁栄させる者(王)よ、士族が怠っていると、国土において、一切の財物が消失する。それは、王の罪と説かれる。

 

336. 大王よ、これは、法(正義)にあらず。〔あなたは〕限度を超えて怠る。繁栄し、興隆する、地方を、それを、盗賊たちが砕破する。

 

337. あなたに、子供たちは有りえない(子孫は滅亡する)──黄金もなく、穀物もない。国土が強奪されているあいだに、〔あなたは〕一切の財物を失う。

 

338. あるいは、また、一切の財物を遍く失った士族の王のことを、親族や朋友たちは、さらに、知人たちは、彼のことを、思慕するべき者と思わない。

 

339. 象兵たちは、親兵たちは、車兵たちは、歩兵たちは、まさしく、彼に依拠して生きる者たちは、彼のことを、思慕するべき者と思わない。

 

340. 生業が差配されざる者を、愚者を、思慮浅き助言者を、思慮浅き者を、吉祥は捨棄する──蛇が、老化した皮を〔捨て去る〕ように。

 

341. 生業が善く差配された者に、〔正しい〕時に起きる者に、休むことなき者に、一切の財物は増大する──〔長たる〕雄牛を有する牛たちのように。

 

342. 大王よ、〔民の声を〕聞くべく、国土を、地方を、歩まれよ。そこにおいて、そして、見て、さらに、聞いて、そののち、あなたは実践するのだ」〔と〕。

 

343. 〔王が聞いているとは知らずに、老人が言った〕「パンチャーラ〔王〕は、戦場で矢に突き刺され、このように、〔苦痛を〕感受せよ。すなわち、わたしが、今日、棘に刺され、〔苦痛を〕感受するように」〔と〕。

 

344. 〔王を擁護して、婆羅門が言った〕「老い朽ちた〔おまえ〕は、弱き視力の者として〔世に〕存している。〔おまえは〕形を善くしっかりと見ない。すなわち、棘が、おまえを狙うとして、そこにおいて、ブラフマダッタ(王)に、どのような〔罪科〕があるというのだ」〔と〕。

 

345. 〔老人が言った〕「ここにおいて、多く〔の罪〕が、ブラフマダッタにある。婆羅門よ、〔まさに〕その、わたしは、〔棘の〕道のなかにある。地方の者たちは守られず、法(正義)なく力ある者に打ち砕かれたのだ。

 

346. まさに、夜には、盗賊たちが喰いものにし、昼には、税吏たちが喰いものにする。国土に出鱈目な王がいると、多くは、法(正義)なき人々となる。

 

347. 親愛なる者よ、このような恐怖が生じたとき、人間たちは、恐怖に苦悩する者たちとなり、林のなかの棘あるものを運び込んで、諸々の隠れる所を作るのだ」〔と〕。

 

348. 〔老婆が言った〕「いったい、いつ、まさに、この王は、ブラフマダッタは、死ぬのだ。彼の国土の少女たちは、亭主なしに老い朽ちる」〔と〕。

 

349. 〔王を擁護して、婆羅門が言った〕「卑しむべき者よ、義(意味)なき句の熟知者よ、まさに、おまえには、諸々の悪語がある。どこの王が、少女たちのために、夫を遍く探し求めるというのだ」〔と〕。

 

350. 〔老婆が言った〕「梵(婆羅門)よ、わたしに、悪語はない。わたしは、義(意味)ある句の熟知者である。地方の者たちは守られず、法(正義)なく力ある者に打ち砕かれたのだ。

 

351. まさに、夜には、盗賊たちが喰いものにし、昼には、税吏たちが喰いものにする。国土に出鱈目な王がいると、多くは、法(正義)なき人々となる。妻が、生き難く、養い難きとき、夫は、どこから、少女たちを〔嫁として連れてくるというのだ〕」〔と〕。

 

352. 〔耕作者が言った〕「パンチャーラ〔王〕は、戦場で刃に打ち倒され、このように、〔地に〕臥せ。すなわち、この哀れな〔牛の〕サーリヤが、鋤で打ち倒され、〔地に〕臥すように」〔と〕。

 

353. 〔王を擁護して、婆羅門が言った〕「卑しむべき者よ、おまえは、法(正義)ならざる〔道〕によって、ブラフマダッタに怒る。すなわち、おまえは、自己のために、〔法に〕違反して、王を呪詛するのだ」〔と〕。

 

354. 〔耕作者が言った〕「婆羅門よ、わたしは、法(正義)〔の道〕によって、ブラフマダッタに怒る。地方の者たちは守られず、法(正義)なく力ある者に打ち砕かれたのだ。

 

355. まさに、夜には、盗賊たちが喰いものにし、昼には、税吏たちが喰いものにする。国土に出鱈目な王がいると、多くは、法(正義)なき人々となる。

 

356. 彼女が、飯炊き女が、あろうことか、ふたたび、まあ、おかしな時に、食事を運んできた(最初の食事を税吏に取り上げられた)。〔彼女が〕食事を運んでくるのを期待しつつ、〔牛の〕サーリヤは、鋤で打ち倒されたのだ」〔と〕。

 

357. 〔牛飼いが言った〕「パンチャーラ〔王〕は、戦場で剣に打ち倒され、このように、打ちのめされよ。すなわち、今日、わたしが〔雌牛に〕打たれ、そして、わたしの牛乳がひっくり返されたように」〔と〕。

 

358. 〔王を擁護して、婆羅門が言った〕「すなわち、家畜が、牛乳を捨て放ち、家畜番を害するとして、すなわち、貴様が、わたしたちを非難するとして、そこにおいて、ブラフマダッタに、どのような〔罪科〕があるというのだ。

 

359. 〔牛飼いが言った〕「梵よ、パンチャーラ〔王〕は、非難されるべき者である。ブラフマダッタの、王の、地方の者たちは守られず、法(正義)なく力ある者に打ち砕かれたのだ。

 

360. まさに、夜には、盗賊たちが喰いものにし、昼には、税吏たちが喰いものにする。国土に出鱈目な王がいると、多くは、法(正義)なき人々となる。

 

361. すなわち、かつて搾乳したことがない、狂暴な野生の雌牛がいるのだが、その〔牛〕を、今や、今日、〔わたしたちが〕搾乳するわけだ──牛乳を欲する者たちに悩まされる者たちとなり」〔と〕。

 

362. 〔子供たちが言った〕「パンチャーラ〔王〕は、このように、泣き叫べ。子を失い、乾き切ってしまえ。すなわち、この哀れな雌牛が、子を失い、遍く走り行くように」〔と〕。

 

363. 〔王を擁護して、婆羅門が言った〕「すなわち、家畜番の家畜が、混迷し、あるいは、絶叫するとして、ブラフマダッタに、王に、ここに、いったい、どのような罪科が存するというのだ」〔と〕。

 

364. 〔子供たちが言った〕「大いなる梵よ、罪科なのだ。ブラフマダッタの、王の、地方の者たちは守られず、法(正義)なく力ある者に打ち砕かれたのだ。

 

365. まさに、夜には、盗賊たちが喰いものにし、昼には、税吏たちが喰いものにする。国土に出鱈目な王がいると、多くは、法(正義)なき人々となる。まさに、どうして、乳を飲む生き物が、剣の鞘を義(目的)として打ちのめされるというのだ」〔と〕。

 

366. 〔蛙が言った〕「パンチャーラ〔王〕は、このように、喰われてしまえ。戦いのなか、子と共に打ち砕かれた者となり。すなわち、林に生まれるわたしが、今日、村〔の烏〕たちに喰われるように」〔と〕。

 

367. 〔王を擁護して、婆羅門が言った〕「蛙よ、人間の世において、王たちは、一切の生類にたいし守護を施すわけではない。このことから、王は、法(正義)ならざる〔道〕を歩む者にあらず。すなわち、おまえのような生命を、烏たちは食べるものなのだ」〔と〕。

 

368. 〔蛙が言った〕「まさに、法(正義)ならざる形態の梵行者だ。〔おまえは〕士族に甘言を語る。多々なる人々が強奪されているあいだに、最高の怠りある王を供養する。

 

369. 梵よ、それで、もし、これが、善き王国として存しているなら、歓喜し、清信し、興隆する国土として〔存しているなら〕、烏たちは、供物を、さらに、至高の餌団子を、食べて〔満足し〕、わたしのような生命を、烏たちは食べはしないのだ」〔と〕。ということで──

 

 ガンダティンドゥカ・ジャータカが、第十となる。

 

 三十なるものの集まりは〔以上で〕終了となる。

 

 その〔章〕のための摂頌となる。

 

 〔そこで、詩偈に言う〕「『何を欲〔の思い〕として』と瓶とジャヤッディサと六つの牙があり、そこで、賢者たるサンバヴァ(サンバヴァ)と吉祥なる猿(大なる猿)があり、水棲の羅刹と優れたパンダラ龍(パンダラ龍王)があり、そこで、サンブラーとティンドゥカ天の所聞(ガンダティンドゥカ)があり、〔それらの十がある〕」と。

 

 ジャータカ聖典の第一部は〔以上で〕終了となる。