D003_01:行進曲集[威風堂々]

作品39 解説

【SJPOジュニアオーケストラ講座】 E.エルガー:行進曲集「威風堂々」作品39

E.エルガーについてはこちらC003:エルガーを知ろう

【あっという間に世界中で有名になった「威風堂々第1番ニ長調」】

◇最も有名な第1番は、初演の3日後にロンドンのクイーンズホールで演奏された際には、観客が感動して2度もアンコールが演奏されましたが、管弦楽曲としては現在までこのときのみだそうです。

◇この曲を絶賛した当時の皇太子であったエドワード7世から、翌年の戴冠式の曲に歌詞をつけてほしいとの要望で、エルガーが作曲した「戴冠式頌歌」の第6曲目は、第1番の有名な中間部のトリオのメロディーを用いて歌詞を付けて演奏され、大評判となりました。

◇その後、ロンドンで開催される世界最大級の音楽祭である「プロムス」の最終日の演奏会で毎年演奏されるようになり、現在はイギリスの「第二の国歌」として親しまれています。

◇現在では、イギリスやアメリカのほぼすべての大学の卒業式で必ずといってよいほど演奏されています。

【BBCプロムスとは?】

◇毎年夏に、ロンドン郊外で8週間に渡り100以上のイベントが行われる世界最大の音楽祭です。1895年に第1回が開催され、1927年からはBBC(英国放送協会:日本でいえばNHKのようなもの)が、運営を引き継いで開催しています。

◇プロムスとは、「プロムナード・コンサート」の略で、聴衆が気楽に歩きまわりながら様々な演奏会を楽しめるように、と始められた音楽祭です。、

◇最終日の夜の演奏会の第2部の最後に、エルガーの威風堂々第1番が演奏されるのが習わしとなっています。

【「威風堂々」の名前の由来】

◇英語名の[Pomp and Circumstance]というタイトルは、シェイクスピアの戯曲「オセロー」の第3幕第3場の、

"Pride, pomp and circumstance of glorious war"

(誉れある戦いの、誇りよ、飾りよ、立派さよ)から引用しています。

◇[Pomp]は「華やかさ」や「壮麗」、[Circumstance]は「儀式」や「物々しさ」という意味で、[Pomp and Circumstance]と二語セットで「正式で印象的な儀式」という意味になります。

◇当時のイギリスは世界中に植民地を持ち、全世界の1/4の領土を占める大英帝国のもっとも栄華を極めていた時代でした。そうした背景にもぴったりのタイトルということもあり、曲とともにタイトルも一気に有名になりました。

◇日本語の「威風堂々」は、実は誰の訳かははっきり分かっていません。明治39年にシェイクスピア全集が日本で初めて出版された時は、オセロの三幕の例の台詞は「威武堂々の軍装束」と訳されていました。

◇日本での初演といわれている大正5年に陸軍軍楽隊が威風風堂々第1番を演奏したときには、「正々堂々たる軍容」と記されました。以後、昭和初期まで軍楽隊によって盛んに演奏されましたが、戦後は戦争をイメージする言葉は避けられて、現在の「威風堂々」というタイトルに定着しました。

【様々なところで使われる有名なトリオの荘厳なメロディ】

◇栄光と希望の国[Land of Hope and Glory]

・エドワード7世の戴冠式の曲の作曲を頼まれたエルガーは、6曲からなる『戴冠式頌歌 Coronation Ode』を作曲しました。この最終曲は威風堂々第1番の中間部のトリオの荘厳なメロディに友人の詩人アーサー・クリストファー・ベンソンに作詞を依頼して「栄光と希望の国」が完成しました。この曲はイギリス愛国歌として独立してあちこちで演奏され「第2の国歌」と言われています。

◇サッカー

・イングランド代表サポーターが、試合中やハーフタイムなどに応援歌として歌うほか、日本ではJリーグ・浦和レッズの応援チャンツ(チャンステーマ)として使われています。

◇ディズニー映画「ファンタジア2000」

・「ノアの方舟」を題材としたドナルドダックのシーンで一部が用いられてます。

◇イギリス保守党

・党大会の最終日の党員の退場のBGMとして使われています。

※エルガーは保守党のみに使用を許可していて、自由党と労働党での使用を認めていません