D002_01:パッヘルベルのカノン 解説

【SJPOジュニアオーケストラ講座】 パッヘルベルのカノン

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[作曲者]

◇「パッヘルベルのカノン」の呼び名で知られるこの曲は、ドイツの作曲家のヨハン・パッヘルベル(Johann Pachelbel)(1653-1705)によって、1680年頃に作曲されました。正式な名称は「3つのバイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグニ長調」の4/4拍子で書かれた第1曲目にあたります。作品番号[PWC 37, T. 337, PC 358]

※パッヘルベルについては、「資料C003:パッヘルベルを知ろう」を参照。

[カノンとは?]

カノン[canon]とは、複数の声部(パート)が同じ旋律(メロディ)を、違うタイミングで開始して演奏する様式の曲を指します。

◆日本語で一般に輪唱と訳されることが多いですが、輪唱が全く同じメロディを追唱(追いかける)のに対して、カノンでは違う音から始まって同じ動きをしたり、リズムが2倍になったり、楽譜を上下逆にしたものや、さらには反対から演奏するようなものも含まれます。

◆『パッヘルベルのカノン』では、3つの声部が全く同じ旋律を2小節ごとに遅れて演奏して、それに伴奏が付けられています。このように同じ音の高さで追いかけるカノンを同度カノンとよびます。

◆似たような言葉にフーガ[Fuga]がありますが、フーガは主唱(テーマ:主要なメロディ)を後から演奏する声部(パート)が繰り返すところはカノンと一緒ですが、主題以外の旋律に自由が許されているフーガに対して、カノンは基本的にずっと同じ動きで追いかけます。

[曲の構成]

◆原曲はカノンとジーグで1組になっていて、

カノンの次にジーグが演奏されます。

◆編成はヴァイオリン3本と通奏低音(チェロ・コントラバス・チェンバロで奏する)のために書かれています。

◆最初に1stVn、2小節ごとに2ndVn、3rdVnがまったく同じメロディを演奏しているのが楽譜から読み取れます。

◆2小節ごとにひとかたまりのメロディになっているのも、同じ番号のところは同じ旋律であることから分かりますね。

◆通奏低音は下記の2小節の大逆循環と呼ばれる和声進行を28回繰り返して演奏します。

[大逆循環]

◇パッヘルベルのカノンにおける2小節単位の和声進行は大逆循環と呼ばれます。

非常に快く耳に響くため美しい曲を作りやすく「黄金コード」とも呼ばれ、バロック期から現代に至るまで400年以上も

多くの作曲家に愛用されています。

◇大逆循環の和声進行をハ長調に置き換えてコードで表すと下記のようになります。

C-G-Am-Em-F-C-Dm/F-G

◇大逆循環はクラシックだけでなくポピュラー曲にもたくさん応用されています。

下記に代表的な曲を紹介しますので、どこで大逆循環が使われているか探してみましょう。

・大塚愛:さくらんぼ

・赤い鳥:翼をください

・ZARD:負けないで

・山下達郎:クリスマス・イブ

・井上陽水:夏休み

・KAN:愛は勝つ

・松田聖子:あなたに逢いたくて

・ヴィレッジ・ピープル:Go West

・アリス:遠くで汽笛を聞きながら

・松任谷由実:守ってあげたい

・岡村孝子:夢をあきらめないで

・大事MANブラザーズバンド 『それが大事』

・岡本真夜:TOMORROW

・Mr.Children:終わりなき旅

・Every Little Thing:出逢った頃のように

・河村隆一:Love is...

・光GENJI 『勇気100%』

[通奏低音(つうそうていおん)]

◇通奏低音とは、主にバロック音楽において行われる伴奏の形態で、楽譜上では低音部の旋律のみが書かれていて、

演奏者はそれに適切な和音を付けて演奏します。

◇イタリア語のバッソ・コンティヌオ (Basso continuo) の訳語で、省略してコンティヌオと呼ぶこともあります。