コーヒーブレイク

メーヴェのいれるコーヒーはおいしいと相場が決まっている。

ジーナが砂糖をたくさん入れる様子を見て、エレニアは何か思いついたらしい。いつもの表情を浮かべた。

「ジーナ、コーヒーは宇宙成立の概念を的確に表現できる論理モデルなのよ」

「そうなの?」

興味がわいた。

ジーナがコーヒーを飲み終わると、そのカップに新しいコーヒーを注ぐ。

「まず、宇宙は一点から始まった。ビッグバン理論ね」

コーヒーがカップを満たした。

「宇宙は大きくなりながらいろいろな物質を作ったわ」

おもむろに角砂糖を四個入れるエレニア。

「宇宙は四つの力に支配されてるの。細かいことは省くけれど、目に見えない力なのは間違いないわ」

「難しいわね」

「もう百億年は説明したわよ」

エレニアがほほえむ。

「目に見えなかった力は、物質を目に見える大きさまで固めた。そして、銀河の発生」

エレニアはティースプーンで中身を混ぜた。

「このミルクが、目に見える物質ね」

渦を巻くミルク。恒星の周りを惑星が廻るような渦を描いた。

「すごいわ、エレニア」

ジーナは近所の子供たちにだって自慢できると思った。

「宇宙も全てが均一化するとおしまいなの。最後、ジーナに飲まれておしまいというわけ」

「マジ? これを飲むの?」

「勿論。最後、宇宙は再び一点の存在に戻ると言われているの。つまり、消滅ね」

甘すぎるコーヒーを飲ませようとするエレニアをやはりいじわるだ、とジーナは思った。

―幕―