要旨:加齢は脳の脆弱性を高め、外科手術や社会的孤立といった環境ストレスによって認知障害が顕在化する。特に周術期認知機能障害(perioperative neurocognitive disorder, PND)は高齢者における代表的な術後合併症であり、その背景には脳内老廃物クリアランス機構であるグリンパティックシステムの脆弱化が関与すると考えられている。本講演では、加齢マウスに腹部手術を施し、分子神経科学的手法を用いて得られた結果を報告するとともに、環境ストレスに伴う神経免疫シグナルの変化が脳機能に及ぼす影響を紹介する。さらに、将来的な展望として、社会的孤立ストレスモデルに対する生成AIを用いた仮想社会刺激による新規介入の可能性を示し、「AI x 生物精神医学」という新たな融合領域の展開についても議論する。
略歴:
2010年 東北大学 工学部 化学バイオ工学科 卒業
2012年 東京大学大学院 医学系研究科 医科学修士課程 終了
2014年 東京大学大学院 医学系研究科 脳神経医学専攻 医学博士課程 修了
2016年 マサチューセッツ州立大学 医学部 博士研究員
2017年 ジョンズホプキンス大学 医学部 博士研究員
2022年 ジョンズホプキンス大学 医学部 Research Associate (現在)
演者: 長谷川祐人 (JHU)
演題:加齢と環境ストレスがもたらす脳の脆弱性:神経免疫シグナルを基盤としたAI介入への展望
開始時間:2025/10/17(金)17時~
会場:Rangos 590