2012/09/24 第6回 "Junk + RNA = Protein / TRPチャネルを介したケラチノサイトと感覚神経の情報伝達機構について" (相澤康則/坂本考司)
投稿日: Sep 11, 2012 2:30:1 PM
1.Dr.相澤康則
JHU, Dpt. Molecular Biology and Genetics, Laboratory of Jef Boeke
タイトル:Junk + RNA = Protein ~ヒトゲノム・機能未知RNAの探究~
要旨:
私達の研究室では、Long intergenic and noncoding RNA (lincRNA)と今日呼ばれるRNAを転写するヒトゲノム領域を研究対象にしている。その数が哺乳類ゲノムでは数千カ所にも上ることがトランスクリプトーム解析によって明らかになった以降、新しいRNAによる生体制御機構の存在が期待されている。しかし我々は、全てのlincRNAがノンコーディングであるとは仮定せず、これら機能の分からないヒトゲノムの転写領域を"human intergenic and transcribable region (HIT領域)"と敢えて中立的な名前で呼び、RNAレベルではなくゲノムレベルの視点でHIT領域の存在意義や機能的役割を探究している。我々はこれまでに数千カ所あるHIT領域を、全く異なる2つの方法でスクリーニングし、得られた数カ所のHIT領域を多角的に精査するという戦略をとってきた。本講演では、我々が見てきたヒトゲノムのDark Matterの一端をご紹介する。
2.坂本考司さん
JHU, Dpt. Biological Chemistry, Laboratory of Michael Caterina
タイトル:TRPチャネルを介したケラチノサイトと感覚神経の情報伝達機構について
要旨:
ヒトは温度、痛み、痒み、圧力等の外部刺激を、皮膚や毛包等に投射している感覚神経に発現する受容体を介して認識している。一方で、皮膚組織が外部刺激に初めに暴露されるため、皮膚表層を構成する細胞(ケラチノサイト)から、刺激情報が感覚神経へ伝達されることも示唆されている。しかし、ケラチノサイトにはシナプス構造が確認されないため、ケラチノサイトが情報伝達物質を産生し、間接的に感覚神経と相互作用すると考えられている。
近年、ケラチノサイトや皮膚組織への温熱刺激により、様々な生理活性物質の産生が誘導されると報告された。一方で、温度感受性チャネルとして機能を有するTRPチャネルが同定され、その中でもTRPVファミリーに属している、TRPV1(42℃以上の熱を受容)、TRPV3(32℃以上)、TRPV4 (27℃以上)は、感覚神経だけでなく、ケラチノサイトにも発現している。これらのことから、温熱等の皮膚への外部刺激情報が、ケラチノサイトのTRPチャネルを介して、感覚神経、そして中枢へ伝達されると考えられるが、未だ明確なエビデンスは明らかにされていない。そこで今回、TRPV1を1つのモデルとして、TRPV1の遺伝子欠損マウスから、皮膚表層の表皮組織にTRPV1を発現するマウスを作製し、ケラチノサイトと感覚神経のTRPチャネルを介した情報伝達機構について詳細な検討を行ったので、報告する。