要旨
メリーランド州監察医局(Office of the Chief Medical Examiner)は州保健部の附属機関であり、州内で発生した殺人、自殺、事故等の死体解剖を行っている。解剖は1日約20件(うち1-2件は殺人)あり、銃創やフェンタニル中毒が多い。
一件の死亡の背景には、その地域が抱える公衆衛生上の課題が凝縮されている。たとえば、ある子どもの虐待死では、親がアルコール依存症であったこと、不法移民で英語がわからなかったこと等があった。こうした背景を調査し、防ぎうる死を減らすことは衛生行政の責務である。
本講演では、監察医局の実務を紹介しつつ、死者の声をどのように政策に活かすか、法医学と公衆衛生学の接点を考える。
略歴
広島大卒、東京女子医科大学病院臨床研修医、同大医学部法医学講座を経て厚生労働省入省。医政局医事課、総務課医療安全推進室、内閣府死因究明等施策推進室、高知県健康対策課、厚生労働省健康局難病対策課を経て、現職。