2023/11/10
第81回ドーパミンD1受容体における薬理バイアス
―パーキンソン病新薬への可能性―
矢野秀明(Northeastern University)
矢野秀明(Northeastern University)
講演要旨
ドーパミンD1受容体(D1R)は、運動、報酬、認知において中心的な役割を果たしており、神経精神疾患、特にパーキンソン病(PD)において重要な治療薬ターゲットとなっています。2つのD1R結合G蛋白αサブユニットである、GsとGolfの発現パターンが非常に異なること(Gs –大脳皮質、Golf – 線条体)に着目し、GsとGolfの結合を区別できる新しい薬物スクリーニング方法を、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)を利用して開発しました。この実験方法を使用して、様々なD1Rリガンドの特性付け、更にはAnti-PD Phase III 治験中の新薬にGolf経路へのバイアスが存在することを明らかにしました。この活性バイアスを詳細に評価するために、Golfが局在発現する線条体とGsが発現する内側前頭前野において電気生理学、行動実験を行い、 活性差異を確認しました。Golfにおける完全効力とGsにおける部分的効力の組み合わせは、脳別領域や末梢におけるGsシグナリングを低活性に抑え、副作用が少ない新しい治療アプローチとして可能性があります。神経薬理という観点からも、今研究でG蛋白サブタイプにおいてバイアス活性、そして脳領域の選択的標的化が明らかになりました。
演者: 矢野秀明先生(Northeastern University)
演題:ドーパミンD1受容体における薬理バイアス ―パーキンソン病新薬への可能性―
協賛: Sysmex Inostics Inc.
開始時間:2023/11/10(金)17時30分~
会場:Rangos 490 (https://sites.google.com/a/jssbaltimore.com/jssb/seminars/seminar-location?authuser=0)