第77回JSSBセミナーのお知らせです。
<演者>犬塚 義 先生 (National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases/NIH)
<講演要旨>
B型肝炎ウイルス (HBV) はヒトやチンパンジーにしか感染せず、宿主のレンジが限られていることは、HBV 研究発展の幅を狭めています。渡米後、研究テーマが決まっていなかった自分は、「如何にして HBV をマウスに感染させるか」というテーマに取り組むことに決めました。そこで近年、様々なウイルスの宿主因子の同定に成功し注目を浴びている「ゲノムワイドCRISPRスクリーニング」に着目しました。
初めにCRISPRスクリーニングに必要な蛍光タンパク質RFP遺伝子をゲノムに組み込んだ HBV レポーターウイルス(HBV-RFP) を開発しました。HBV-RFP を用いたゲノムワイド loss-of-function CRISPRスクリーニング手法を確かなものとするため、マウス細胞で始める前にHBV感染が確立しているヒト肝癌細胞株であるHepG2NTCP細胞を用いて遺伝子スクリーニングを行い、これまで報告のない未知のHBV宿主依存性因子を同定することを目的としました。Inducible Cas9 system を用いた HepG2NTCP/Cas9 細胞に、19,114個のヒト遺伝子を標的とするgRNAライブラリを形質導入してゲノム編集をし、HBV-RFP に感染させRFP陰性の非感染細胞を FACS でソーティングしました。次世代シークエンスとバイオインフォマティクス解析を行い、HBV感染の宿主依存因子として上位100遺伝子の中から肝細胞で発現を認める63遺伝子を決定[AY1] しました。この中には、HBV のレセプターとして知られる NTCP を代表とする既知の HBV プロウイルス因子が複数含まれていました。検証のため、CRISPR-Cas9 により63遺伝子の遺伝子ノックアウト細胞を作製し野生型HBVを感染させ、親細胞に比して有意に細胞内 HBV RNAの減少を認めた14遺伝子を同定しました。さらに初代ヒト肝細胞を用いてsiRNA によるノックダウンと HBV 感染実験を行い複数の HBV プロウイルス遺伝子を絞り込み、未知の新たな因子を見つけました。
発表当日は上記の研究を中心にお話しいたしますが、このスクリーニング法は「マウスに HBV を感染させる」ために開発したものであり、現在マウスの HBV 感染に必要な因子を同定するための研究を進めているところですが、当日は時間の許す限りこれらの取り組みもお話しできたらと思います。
協賛:
開始時間:2023年1月13日(金)17時30分 -
会場:Rangos 490
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